説明

医療用バルーンの収縮

医療用バルーンは、所望の形状に収縮することを容易にする領域を形成するために、エネルギーにより処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用バルーンの収縮に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、動脈、他の血管及び他の体内管腔のような様々な通路を含んでいる。これらの通路は、例えば腫瘍によって閉塞したり、プラークによって狭窄したりすることがある。閉塞した体内管を広げるためには、バルーンカテーテルを、例えば血管形成術において使用することができる。
【0003】
バルーンカテーテルは、長く細いカテーテル本体によって担持される膨脹可能かつ収縮可能なバルーンを備えることができる。バルーンは、身体に挿入しやすくするために、当初はカテーテル本体の周りに折り畳まれて、バルーンカテーテルの径方向の輪郭が小さくされる。
【0004】
使用中に、折り畳まれたバルーンは、血管内に配置されたガイドワイヤ上をバルーンカテーテルに進ませることによって、血管内の標的位置、例えばプラークによって閉塞した部分に送達することができる。バルーンは、その後、例えばバルーンの内部に流体を導入することによって膨脹させられる。バルーンを膨脹させると、血管が径方向に拡張して、血管の血流量を増大させることができる。使用後、バルーンは収縮させられて、体内から抜去される。バルーンは、収縮させられると、バルーンを体内から抜去しやすくする予期可能な小さな輪郭の形態を形成することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所望の形状に収縮することを容易にする領域を形成するために、エネルギーにより処理される医療用バルーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、膨脹可能な医療用バルーンの製造方法が記載されている。該方法は、ほぼ円筒形をなす膨張可能な、ポリマーで形成されるバルーン壁又はバルーンパリソンを提供する工程と、壁の可撓性を高めるためにポリマーが除去される、融除された一連の第1領域を形成する工程と、融除された第1領域と交互に配置される、処理された一連の第2領域を形成する工程とを含み、処理された第2領域は、処理された第2領域が融除された第1領域よりも可撓性が低くなるように、UV照射への暴露、加熱、又はイオン注入により形成される。
【0007】
別の態様では、膨脹可能な医療用バルーンの製造方法が記載されている。該方法は、ほぼ円筒形をなす膨張可能な、ポリマーで形成されるバルーン壁又はバルーンパリソンを提供する工程と、一連の処理された第1領域を形成する工程とを含み、処理された第1領域は、ポリマーの結晶化度が高められているが、該処理された領域におけるバルーンからポリマーが除去されておらず、バルーンは、収縮すると、処理された一連の第1領域の位置にしたがって折り畳まれる。
【0008】
別の態様では、膨脹可能な医療用バルーン器具が記載されている。該器具は、ポリマーで形成されるほぼ円筒形のバルーン壁を備える。壁は、ポリマーが除去されて可撓性が高められた、融除された一連の第1領域と、該融除された領域と交互に配置される、処理された一連の第2領域と、第3領域とを備える。処理された第2領域は、融除された領域よりも可撓性が低いが、バルーンの第3領域よりも可撓性が高い。
【0009】
一態様では、ポリマーで形成されるほぼ円筒形の壁を有する膨脹可能なバルーンを備えた医療器具が記載されている。壁は、処理された一連の第1領域を備え、第1領域におけるポリマーの結晶化度は、ポリマーで形成される一連の第2領域におけるポリマーの結晶化度よりも高く、処理された第1領域は、第2領域とは異なる可撓性を有し、バルーン器具は、収縮すると、処理された第1位置の位置にしたがって折り畳まれる。
【0010】
一態様では、ポリマーで形成されるほぼ円筒形の壁を有する膨脹可能なバルーンを備えた医療器具が記載されている。壁は、融除された一連の溝領域を備える。溝領域は、壁厚の約1〜2%の深さを有する溝を備え、かつ、溝領域以外のポリマー領域よりもポリマーの結晶化度が少なくとも約4%高い。
【0011】
一態様では、本発明は、本願に記載される医療器具を提供する工程と、バルーンに突出部を配置して該突出部を巻き付ける工程と、バルーンを体内に送達する工程と、バルーンを膨張させる工程と、バルーンを収縮させることにより少なくとも3つの突出部を形成する工程とを含む方法を特徴とする。
【0012】
一態様では、ポリマーで形成されるほぼ円筒形の壁を有する膨脹可能なバルーンを備えた医療器具が記載されている。壁は一連の融除された溝領域を有し、該溝領域は、壁厚の約1〜2%の深さを有する溝を備え、かつ、溝領域以外のポリマー領域よりもポリマーの結晶化度が少なくとも約4%高い。
【0013】
一態様では、ポリマーで形成されるほぼ円筒形の壁を有する膨脹可能なバルーンを備えた医療器具が記載されている。壁は一連の領域を備え、該一連の領域は、該領域以外のポリマー領域よりもポリマーの結晶化度が少なくとも約4%高く、該一連の領域におけるバルーン表面は、隆起したポリマーノジュール(nodules) を有し、該ノジュールによって、前記一連の領域以外のポリマー領域が、前記一連の領域よりも厚い有効厚を有することになる。
【0014】
実施形態は、以下の利点のうち1つ以上を有することができる。バルーンは、膨張後において、血管形成術及び/又はステント送達の後に血管から抜去しやすくする小さな輪郭を有する所望の形態へと折り畳まれるように形成することができる。2つ以上の異なる工程を用いて処理されたバルーンは、バルーンの折り畳みの精度及び信頼性を高めることができる。複数の工程は、所望の折り畳みプロファイルを生じさせるために、異なる可撓性を有する領域を所望のパターンにて形成するために使用することができる。異なる工程においては、材料除去、架橋及び炭化のような異なる作用を引き起し得る、レーザアブレーション、加熱棒(ho t stick) 、COレーザ、及びイオンビーム処理のような異なる技術を用いることができる。
【0015】
更なる態様、特徴及び利点について以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】バルーン上において収束した状態にあるステントの送達を示す部分断面図。
【図1B】バルーンの膨張によるステントの拡張を示す部分断面図。
【図1C】バルーンの収縮及び抜去を示す部分断面図。
【図2A】図1Aに対応する条件のバルーンの断面図。
【図2B】図1Bに対応する条件のバルーンの断面図。
【図2C】図1Cに対応する条件のバルーンの断面図。
【図3A】膨脹状態にあるバルーンの側面図。
【図3B】図3Aのバルーンの壁の断面図。
【図3C】再び折り畳まれた収縮状態のバルーンの、図3Bと同様の断面図。
【図4A】第1処理工程中のバルーンの概略図。
【図4B】第2処理工程を経る図4Aのバルーンの概略図。
【図5A】第1及び第2処理工程で処理されたバルーンの概略図。
【図5B】折り畳まれた状態にあるバルーンの概略図。
【図6】改変された表面の走査型電子顕微鏡像。
【図7A】処理された領域の1タイプを有する膨脹させたバルーンの側面図。
【図7B】処理された領域の1タイプを有する膨脹させたバルーンの端面図。
【図8A】処理された領域の1タイプを有する膨脹させたバルーンの側面図。
【図8B】処理された領域の1タイプを有する膨脹させたバルーンの端面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面における類似する符号は類似する要素を示す。
図1A〜図1Cを参照すると、ステント10は、カテーテル14の先端近傍に担持されるバルーン12上に配置され、バルーンとステントを担持している部分が閉塞部18の領域に到達するまで(図1A)、管腔16内、例えば冠動脈のような血管内を移動させられる。ステント10はその後、バルーン12の膨脹によって径方向に拡張され、血管壁に押し付けられるため、閉塞部18が圧迫され、それを囲む血管壁が径方向に拡張する(図1B)。次いでバルーンから圧力が解放され、カテーテルが血管から抜去される(図1C)。
【0018】
図2A〜図2Cを参照すると、治療部位に送達される間、バルーンは、バルーン材料が3つのフラップ又は突出部20、22、24となるように配置されて、小さな輪郭を提供するように突出部がカテーテル本体の周りに巻き付けられた(図2A)、折り畳まれた状態にある。膨張中に、膨張流体がバルーンに導入されて突出部の巻きが解かれ、完全に膨張すると、バルーンは、血管形成術及び/又はステント送達術のような所望される治療を実施するために十分な径を有するほぼ円形の断面を形成する(図2B)。完全な拡張の後に、膨張流体がバルーンから回収され、バルーンは3つの突出部を形成する(図2C)。収縮時に2つ以上の突出部、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又はそれ以上の数の突出部を形成することは、バルーンの輪郭を小さくする。これにより、例えばステントが引っ掛かる可能性を低減し、体内管腔との摩擦又は体内管腔の擦過を最小限にすることにより、バルーンの回収が容易になる。
【0019】
図3A〜図3Cを参照すると、バルーンを処理して、その化学的及び/又は機械的特性(剛性又は曲げ強度など)を異なる領域において異なる様式で改変することにより、望ましい突出部形状を形成しやすくなる。図3A及び図3Bを特に参照すると、バルーン12に、他方の領域及び改変されていないバルーン材料の領域と交互に配置される改変された一連の領域26、28を有する。特性が互いに異なるように、領域26、28は異なる工程にて処理されている。図3Cも参照すると、図示される実施形態においては、領域26は、バルーンが収縮すると、突出部同士の間に谷を形成し、かつ領域28が突出部の山を形成するように改変されている。
【0020】
図4A及び図4Bを参照すると、領域26、28は、バルーン材料を融除し、バルーン材料の結晶化度を変更する別個の工程により形成される。材料を融除し、材料の結晶化度を高めるために、バルーンの領域26、28は、紫外放射に暴露される。図4Aを参照すると、領域26は、レーザフルエンスが材料の融除閾値を超えるように、暴露された領域にエネルギーを提供すべくコントローラ32によって制御されるレーザ30からの紫外放射に暴露される。化学結合が切断されて、材料は破壊されてエネルギーフラグメントとなり、融除域が残る。エネルギーのほとんどは放出された材料に蓄積されていると理論化されるため、周囲の材料にはほとんど熱による損傷がない。領域26への高エネルギー入力は、材料の厚さの一部を取除くため、これらの領域の剛性を、より低い総エネルギーに暴露された領域又は改変されていないポリマーよりも低くする。その結果、バルーンが収縮させられるにつれて、より可撓性の高い領域26がより急速に折れて潰れる傾向を示し、谷を形成する。図4Bを参照すると、領域28は、より低い(融除閾値よりも低い)フルエンスにて紫外放射に暴露されることにより形成される。低エネルギーで処理された領域28の結晶化度は高められていており、これにより、これらの領域の剛性又は係数を増大させる。高められた剛性により、処理された領域は、改変されていない領域よりも可撓性が低くなり、したがって、剛性の高い領域においては、改変されていない領域よりもバルーンが折れ曲がりにくい。剛性の高い領域28は、再度折り畳まれると、突出部の山を形成する。このため、バルーンは3つの領域を備え、該3つの領域のそれぞれは、各領域における材料の厚さ量又は結晶化度が異なるため、異なる可撓性を有する
UV放射への暴露は、ポリマーの結晶化度の上昇及び/又はポリマー材料の融除又は除去を可能にする。バルーンが融除される場合、除去される材料の量は、例えばバルーンの壁厚の約0.1〜15%(0.5〜2.5%など)とすることができる。バルーンの結晶化度が実質的な融除効果を生ずることなく変更される場合、ポリマーの結晶化度は、改変されていないポリマーに比較して、約2〜90%(例えば2〜5%、5〜10%、10〜20%、20〜40%、40〜60%、60〜70%、70〜80%、80〜90%、又は20〜80%)高めることができる。ある実施形態では、結晶化度のパーセントは、改変前に比べて改変後は2倍、3倍、又は4倍になり得る。結晶化度及び/又は材料除去の量は、精細にバルーンの再折り畳み特性を調整するように選択することができる。材料が除去されるか否かは、レーザのフルエンス及びバルーンの形成材料により決定される。結晶化度の変更量は、暴露された領域に提供されるエネルギーを制御することにより(例えば暴露時間、フルエンス及び/又は放射の波長を制御することにより)、制御することができる。結晶化度は、低フルエンスにて暴露時間を増大させることにより高めることができる。好適なレーザは、波長約193nmのマルチガスUVエキシマレーザである。紫外線アブレーションは、米国特許第4,911,711号明細書においてさらに説明されている。好適な融除及び制御システムは、ドイツ連邦共和国、ゲッティンゲン(Goettingen)に所在するコヒーレント・ラムダ・フィジックス社(Coherent Lambda Physiks) から入手できる。結晶化度は、WAX/SAX−X線回折によって測定することができる。結晶化度の測定は、ミネソタ大学シェパード特性解析研究室(Shepard characterization lab)のような専門業者において行うことができる。
【0021】
図5A及び図5Bを参照すると、別の実施形態においては、領域34、36は異なる改変技術を用いて形成することができる。領域34、36はともに結晶化度が高められているが、一方の領域34は、他方の領域36よりも高い結晶化度を有する。バルーンが潰れるときに、より高い結晶化度を有する領域34は、折り目の山を形成する。幾分高められた結晶化度を有する領域36(つまり改変されていないバルーン材料よりは高い結晶化度を有するが、最も高い結晶化度を有する領域34よりは低い結晶化度を有する領域)は、潰れた状態のバルーンの突出部の間の谷となるように折れ曲がる傾向にある。
【0022】
バルーンを2つの異なる処理方法で処理する代わりに、バルーンは、バルーンの表面から実質的に材料を除去することなく(つまり融除せずに)結晶化度を高める単一の処理方法のみで処理されてもよい。処理された領域と処理されていない領域とにおけるバルーンの厚さはほぼ同じであってもよい。結晶化度は、ガラス転移温度と溶融流動温度との間の温度にポリマー材料を熱することによって高めることができる。この温度範囲内では、結晶形成が開始されるか、又は既に存在していた結晶が大きく成長する。結晶化度は、表面でのみ変更してもよく、あるいは、バルーン壁の深さ全体にわたって変更してもよい。
【0023】
UVレーザのような、バルーンへ熱を入力するために好適な技術は、主としてバルーンの表面に作用する。例えば、UVレーザは、バルーンに1〜60オングストローム(0.1〜6nm)入り込むなど、ポリマー表面に一部だけ貫入することができる。他の加熱技術は、材料により深く入り込むことができる。エネルギーを付与する一部の方法については、エネルギーは、材料に貫入するのみならず、等方的に放射する。この加熱は、材料の表面のみよりも多く加熱されるため、材料の大規模な又はバルクでの加熱であると考えられる。COレーザ、IRレーザ、YAGレーザ、ダイオードレーザ、もしくは他の好適な光子源のようなレーザ、加熱棒(すなわち熱カートリッジに接続された伝導性材料)、又はRF発生器を使用して、バルーンに熱を付与することができる。RF発生器の場合には、金属粒子を有するゼリーを処理すべき領域に塗布することができる。バルーンに熱を付与するためにレーザが使用される場合、熱を吸収し、かつ、バルーンの他の部分が同時に処理されることを防ぐために、バルーンを流体で充填することができる。なお、結晶化度の量は、例えばエネルギーがバルーンに入力される時間を調整したり、エネルギー入力装置によって出力されるエネルギーを制御したりすることにより、調整することができる。バルーンの特定の領域に熱を集中させるために、マスキングしてもよく、あるいは熱を付与する装置を結晶化が望まれる領域にのみに集中させてもよい。バルーンを処理する一部の方法では、結晶化の深さが、処理された領域が折り目の山となるか谷となるかを決定することができる。UVレーザによる表面処理は、バルーンの折り目の谷となる処理された領域を形成する傾向にあり、COレーザ又は加熱棒による処理は、バルーンの折り目の山となる処理された領域を形成する。
【0024】
可撓性又は剛性の変化は、イオンビーム暴露やバルーン壁の領域の機械的な切断などのような他の技術によっても形成することができる。これらの技術すべては、バルーンに望ましい特性を付与するために、任意に組み合わせて使用することができる。イオンビーム処理については、2006年9月20日に出願された米国特許出願第11/533,588号明細書及び2006年2月16日に出願された米国特許出願第11/355,392号明細書に記載されている。処理された領域は、直接バルーンに対して、又は後に(例えば自由膨張又はブロー成形により)バルーンに形成される又は吹き込みされるポリマー管状パリソンに対してエネルギーを付与することによって、形成することができる。バルーンの形成は、米国特許第4,963,313号明細書でさらに説明されている。
【0025】
バルーンの形成に適したポリマーとしては、二軸配向ポリマー、熱可塑性エラストマー、エンジニアリング熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレン、ポリアミド(例えばナイロン66)、ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX(登録商標))、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリイソプレンゴム(PI)、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(BR)、熱可塑性ポリウレタン(PU)(例えば、PELLETHANE(登録商標)のような、グリコールエーテルとイソシアネートを含むもの)が挙げられる。特定の実施形態では、下記一般式を有するポリ(エーテル−アミド)ブロックコポリマーが用いられる。
【0026】
【化1】

そのようなポリマーは、商標名PEBAX(登録商標)にてアルケマ社(ARKEMA)から販売されている。バルーンは、単一のポリマーで形成されてもよく、あるいは、例えば共押出成形により複数のポリマーで形成されてもよい。
【0027】
上述したように、フルエンス閾値は、バルーン材料と材料に入力されるエネルギーの波長のタイプによって決まる。バルーンの処理に適したUVレーザは、約150〜450nm(例えば157nm、193nm、248nm、308nm、351nm)の波長を有する。PET又はPEBAX(登録商標)バルーンを193nmレーザで処理する場合、約150mJ/cm未満(例えば約60〜70mJ/cm)とすれば、バルーン材料の融除が回避される。材料及びレーザの他の組合せは、融除を回避するために異なるフルエンス閾値を有するであろう。
【0028】
説明されている直線状の処理された領域に加えて、処理された領域は、再折り畳み性を向上させるために、他の形状となるように構成されてもよい。一部の実施形態では、処理された領域は、バルーンの周りにおいて螺旋状をなす。一部の実施形態では、処理された領域は、バルーンの円錐部の周りのみ、バルーンの本体のみ、又はバルーンの本体及び円錐部の両方に配置される。別の実施形態では、処理された領域は、連続的な線状に形成されず、収縮時にバルーンが折り畳まれる場所を決定する一連の点、短線又は形状として形成される。
【0029】
バルーンは、2つ以上の、好ましくは3つ、4つ又はそれ以上の個数の突出部の形成を容易にするために処理することができる。バルーンが管腔での使用後に収縮させられたときに形成される突出部は、送達のために形成され、巻き付けられた突出部の位置に対応する位置に形成されてもよく、あるいは、突出部は、収縮時には異なる位置に形成されてもよい。バルーンが複数の突出部を有する輪郭へと潰れることができる場合、バルーンが扁平化され又はパンケーキ状にされるときよりも、潰れたバルーンの径が小さくなる。このより小さな輪郭は、ステント又は血管のような管腔から潰れたバルーンを除去しやすくすることができる。すなわち、除去時に管腔に張り付いたり引っ掛かったりするおそれを低減して、折り畳まれたバルーンを管腔からスムーズに除去することができる。バルーンの表面には、処理された領域のうち任意の数の領域、例えば4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つの処理された領域を形成することができる。バルーンは、冠状血管、末梢血管、頸動脈、食道又は尿道での適用を含む、血管及び非血管での適用に使用することができる。
【0030】
[例]
3.0×16mmのTAXUS(登録商標)Liberte(商標)OTW(PEBAX(登録商標)7233)ポリマーバルーン(米国マサチューセッツ州ナティックNatick)に所在するボストン・サイエンティフィック社(Boston Scitentific)より販売される)が、2psi(約13.9kPa)の圧力まで膨張させられて、パルス作用時間29ns、波長193nmにて作動し、30mJ/cm(PEBAX(登録商標)の融除閾値である約60〜70mJ/cmよりも低い)のフルエンスを提供するために減衰器が30VAに設定された、ラムダ201iマルチガスエキシマレーザ(ドイツ連邦共和国ゲッティンゲンに所在するコヒーレント・ラムダ・フィジックス社より販売される)を用いて紫外放射に暴露する。レーザからのビームは、約1mm幅及び約5mm長である。バルーンの周りに等距離だけ離間する幅約1mmの3つの直線状領域が暴露される。領域は、400ミクロン(400μm)のショット間隔で暴露される。暴露された領域は不透明になり、結晶化度が約22%であるのに対し、未処理の領域は結晶化度が約16%である。
【0031】
図6を参照すると、UVレーザの適用のような一部の熱付与の効果は、バルーンの表面で材料を再配列することである。UVレーザを使用して結晶化したバルーン表面の拡大図はノジュール52を示す。バルーンはTAXUS(登録商標)Liberte(商標)OTW(PEBAX(登録商標)7233)ポリマーバルーン(米国マサチューセッツ州ナティックに所在するボストン・サイエンティフィック社より販売される)であり、波長193nmにて作動し、30mJ/cmの出力を達成するために減衰器が30VAに設定された、ラムダ201iマルチガスエキシマレーザ(ドイツ連邦共和国ゲッティンゲンに所在するコヒーレント・ラムダ・フィジックス社より販売される)を用いてUV放射に暴露した。ノジュール52の形成は、バルーン壁からポリマー材料を除去しないが、バルーン表面の材料を再配列し、ノジュール間の有効壁厚を減じることができる。処理されていないバルーン壁は外観が平滑であり、ノジュールが存在しない。ノジュール52は、バルーンがUVレーザによって処理されると観察されるが、COレーザ又は加熱棒のような他の処理では観察されない。UVレーザによって処理される領域はまた、表面の改変により不透明になる。
【0032】
図7Aを参照すると、処理されたバルーンは、UVレーザを用いて形成された3つの縞部62を備える。すべての縞部は、バルーンの本体−円錐部移行領域を越えて、先端上及び基端上を延びる。各縞部は1mmの幅を有する。図7Bを参照すると、端面図は、バルーンの円錐部の3つの処理された領域を示す。図8A及び図8Bを参照すると、折り畳まれたバルーンは3つの突出部を形成する。3つに折り畳まれたバルーンの輪郭は、パンケーキ状のバルーン、すなわち処理されておらず、収縮時に折り畳まれず扁平なバルーンに比較して、約30%小さい。3.0×16mmTAXUS(登録商標)Liberte(商標)OTWバルーンは、再折り畳み性を向上させるために領域において処理され、折り畳まれたときの輪郭が2.85mmであった。処理されていないパンケーキ状の同様のバルーンの輪郭は4.16mmである。
【0033】
本願で参照されるすべての特許、特許出願及び刊行物はすべて、参照によりその全体が本明細書の一部を構成する。
さらなる実施形態は以下の請求項に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨脹可能な医療用バルーンの製造方法であって、
ポリマーで形成されるほぼ管状の膨張可能なバルーン又はバルーンパリソンを提供する工程と、
可撓性を高めるためにポリマーを除去して一連の第1領域を形成する工程と、
第1領域よりも可撓性が低くなるように、紫外放射への暴露、加熱又はイオン注入により処理された一連の第2領域を形成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記処理された第2領域を形成する工程が、実質的にポリマーを除去することなく、前記処理された第2領域の結晶化度を高めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
紫外放射へ暴露することによって前記処理された第1及び第2領域を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1領域のポリマーを融除し、かつ、前記処理された第2領域のポリマー結晶化度を高めるために、レーザフルエンスを制御する工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理された第2領域を加熱によって形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
赤外放射への暴露により加熱する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
熱源への直接暴露により加熱する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
イオンビーム暴露により前記処理された第2領域を形成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記処理された第1及び第2領域が前記バルーンの周りにおいて交互に放射状に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記処理された第1及び第2領域が、前記バルーンの周りにおいて処理されていない領域と交互に放射状に配置される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
膨脹可能な医療用バルーンの製造方法であって、
ポリマーで形成されるほぼ管状の膨張可能なバルーン又はバルーンパリソンを提供する工程と、
実質的にバルーンからポリマーを除去することなくポリマー結晶化度が高められた、処理された一連の第1領域を形成する工程と、バルーンが収縮すると、該処理された一連の第1領域の位置にしたがってバルーンが折り畳まれることと
を含む方法。
【請求項12】
前記処理された第1領域と交互に配置される処理された一連の第2領域を形成する工程をさらに含み、該処理された第2領域は、前記処理された第1領域とは異なる結晶化度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
レーザ照射、熱の直接付与又はイオン注入により前記第1及び第2領域を形成する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
UVレーザの照射により前記処理された第1及び第2領域を形成する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記処理された第1及び第2領域が、処理されていない領域と交互に放射状に配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
実質的にポリマーを除去することなく前記第1及び第2領域を形成する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
ポリマーで形成されるほぼ円筒形のバルーン壁を備え、該壁は、ポリマーが除去された、融除された一連の第1領域と、該融除された領域と交互に配置される、処理された一連の第2領域と、第3領域とを備え、前記処理された第2領域は、前記融除された領域よりも可撓性が低く、かつ、前記バルーンの第3領域よりも可撓性が高い、膨脹可能な医療用バルーン器具。
【請求項18】
前記処理された第2領域が、前記融除された第1領域よりも少ない材料が除去された、融除された領域である、請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記処理された第2領域が、前記第3領域に比較して結晶化度が高められた領域である、請求項17に記載の器具。
【請求項20】
膨脹可能な医療用バルーン器具であって、
ポリマーで形成されるほぼ円筒形のバルーン壁を備え、該壁は処理された第1の領域を備え、該第1領域では、ポリマーの結晶化度が、ポリマーで形成される一連の第2領域の結晶化度よりも高く、前記処理された第1領域は前記第2領域とは異なる可撓性を有し、前記バルーン器具は、収縮すると、前記処理された第1領域の位置にしたがって折り畳まれる、医療用バルーン器具。
【請求項21】
前記処理された第1及び第2領域がほぼ同じ厚さを有する、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項22】
前記バルーンが、収縮時に、前記処理された第1領域の位置にしたがって突出部を形成する、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項23】
前記第1領域が突出部の谷に位置する、請求項22に記載のバルーン器具。
【請求項24】
前記バルーンが収縮時に3つ以上の突出部を形成する、請求項22に記載のバルーン器具。
【請求項25】
前記バルーン上に配置されたステントを含む、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項26】
前記処理された第1領域は、前記第2領域の結晶化度の少なくとも2倍の結晶化度を有する、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項27】
前記処理された第1領域はポリマーノジュールを有する表面を備える、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項28】
前記処理された第1領域と交互に配置される処理された第3領域をさらに備え、該処理された第3領域と前記処理された第1領域は、前記バルーンの第2領域とは異なる可撓性を有する、請求項20に記載のバルーン器具。
【請求項29】
前記処理された第3領域は、収縮すると形成される突出部の山に位置する、請求項28に記載のバルーン器具。
【請求項30】
前記処理された第3領域は、融除された領域であり、かつ、前記第2領域におけるバルーン壁厚よりも薄い厚さを有する、請求項28に記載のバルーン器具。
【請求項31】
ポリマーで形成されるほぼ管状の壁を有する膨張可能なバルーンを備え、前記壁は、融除された一連の溝領域を備え、該溝領域は、壁厚の約1〜2%の深さを有する溝を備え、かつ、該溝領域以外のポリマー領域よりもポリマー結晶化度が少なくとも約4%高い、医療器具。
【請求項32】
前記溝領域よりも可撓性が低い処理された第2領域を備える、請求項31に記載の医療器具。
【請求項33】
前記バルーンが収縮時に3つ以上の突出部を形成する、請求項31に記載の医療器具。
【請求項34】
請求項21に記載の医療器具を提供する工程と、
前記バルーンが突出部を有するように配置し、該突出部を巻き付ける工程と、
前記バルーンを体内へ送達して、該バルーンを膨張させる工程と、
前記バルーンを収縮させる工程であって、該工程により、前記バルーンが少なくとも3つの突出部を形成することと
を含む方法。
【請求項35】
ポリマーで形成されたほぼ円筒形の壁を有する膨張可能なバルーンを備え、前記壁は一連の領域を備え、該一連の領域は、該領域以外のポリマー領域よりも少なくとも約4%高いポリマー結晶化度を有し、該一連の領域におけるバルーン表面は、ポリマーの隆起したノジュールを有する、医療器具。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate


【公表番号】特表2010−509028(P2010−509028A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537249(P2009−537249)
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/078671
【国際公開番号】WO2008/060750
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】