医薬組成物
本発明は、実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを有する粒子を含む医薬製剤に関する。また、本発明は、実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを含む粒子を形成する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを有する粒子を含む医薬製剤、ならびに実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを含む粒子を形成する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
本発明者他による先の出願であるWO 0069887は、タンパク質でコーティングされた微結晶に関する。しかしながら、医薬製剤または他の生物活性分子については具体的に開示されていない。WO 0069887において開示されているコーティングされた結晶は、一般的に、飽和溶液から共沈され、飽和に満たない溶液を用いるのが有利であろうということは開示されていない。
【0003】
WO 00/69887には、過剰の飽和水溶液を溶媒に添加することによるPCMCの製造について記載されている。記載されているPCMCは、薬学的使用に適していない。効率的な混合を得るためのWO 00/69887における好ましい方法は、激しく混合しながら水溶液を過剰の有機混和性溶媒に滴加することであった。しかしながら、このバッチ型プロセスには、以下のような多くの欠点がある。
【0004】
a)溶媒の含水量が終始増加しているため、沈殿条件が連続的に変化している。異なる初期含水量は、異なるサイズおよび形の結晶を生じることが判明している。
b)沈殿は、懸濁液中ですでに増加しつつある量の結晶を含む懸濁液中に行われる。このことは、すでに形成された結晶上に新たに形成する結晶が融合する可能性を増すことになる。
c)大規模なバッチを必要とする場合、過剰な剪断力なしに撹拌型バッチ反応器で高効率な攪拌を得ることは困難である。高効率な攪拌には、一般的に、結晶サイズを最小限に抑え、結晶が凝集塊中に接合するのを防ぐことが必要とされる。しかしながら、高剪断力は、タンパク質変性または核酸のニッキングなどの生物活性分子に対する損傷を惹起することがある。極めて小さな液滴を提供するために水性流入物を噴霧することなどの急速混合への代替アプローチも、剪断力および界面変性プロセスに起因する潜在的な問題を有している。
【0005】
まとめると、臨床試験および製造を支援できるように、大規模に一貫しかつ再現可能な粒子の医薬製剤を得るための改良法を開発することが必要である。
【0006】
今回、本発明者他は、上記の多くの問題点を、フロー式沈殿装置を用いて解決できることを発見した。これは、飽和水溶液の連続流および溶媒の連続流を、HPLCクロマトグラフィー用の溶媒グラジエントを作り出すために使用されるものと類似している小さな混合フロー室中で一緒に混合することによって動作する。共沈プロセスは、混合室中で開始され、次いで粒子は、溶媒流中の懸濁液として流出し、保持容器中に捕集される。驚いたことに、このプロセスは、このような共沈プロセスで予想されるような注入管を遮断することなく長期間動作できることが判明している。有利にも、混合室を出る粒子は、全動作サイクルにわたってサイズ、形状および収率が極めて一貫していることが判明し、共沈条件が一定のままであることを示している。他の利点は、このフロー式システムが、長時間にわたって無人で稼働し、その際、大量の粒子を生産できることである。
【0007】
全システムを密閉しかつ殺菌でき、各溶媒流を無菌濾紙で独立に濾過できるため、全プロセスを、医薬製剤製造に必要とされるように無菌にすることができる。
【0008】
(発明の概要)
本発明の第1の態様によれば、粒子を形成する連続法であって、
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であり、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)共沈剤および生物活性分子が溶液から共沈して上記粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子の溶液をより大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと、
(c)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離するステップとを含む方法を提供する。
【0009】
本明細書における連続プロセスとは、一定時間絶えず繰り返されるためバッチプロセスとは異なるプロセスを意味し、すなわち、連続プロセスは、水混和性有機溶媒による生物活性分子/共沈剤分子溶液の中断しない添加を意味する。連続プロセスの特徴は、粒子が、例えば、最小限の時間混合室内にあることである。このことは、融合を防ぎ、タンパク質分解を最小限に抑える可能性もある。
【0010】
連続プロセスにおいて、ステップ(a)および(b)は、循環的に繰り返される。
生物活性分子は、固体、例えば、共沈剤の水溶液中で溶解する粉末として提供することができる。あるいは、生物活性分子は、共沈剤の水溶液と混合する前に溶液または懸濁液中にあってもよい。通常、共沈剤は、実質的に飽和された、または高度に濃縮された溶液として調製することができる。生物活性分子と混合した後、共沈剤は通常、その水飽和溶解度の5〜100%である。飽和溶解度の20〜80%であることが好ましい。
【0011】
共沈剤は、溶液中の生物活性分子に対して適切な重量比が得られるように、水溶液に十分可溶性でなければならない。共沈剤は、水溶液におけるよりも混和性有機溶媒において実質的に低い溶解度を有することが好ましい。必要な共沈剤の濃度は、溶液中の生物活性分子の量および生物活性分子の分子量の関数である。
【0012】
当業者には当然のことながら、共沈剤は、生物活性分子と実質的に反応せず、かつ/または生物活性分子との有害な反応を引き起こさないように選択されなければならない。
【0013】
生物活性分子/共沈剤溶液は、実質的に水混和性の有機溶媒または溶媒の水混和性混合物、好ましくは溶媒または溶媒混合物が実質的に十分混和性である溶媒と混合される。通常、生物活性分子/共沈剤溶液は、過剰の水混和性有機溶媒に添加される。十分に水混和性の有機溶媒の過剰量は、溶媒/水溶液の最終含水量が、一般的には30%未満、通常は10〜20vol%未満、好都合には8vol%未満となるようにする。このように、有機溶媒は、0.5〜5vol%未満の水を初めに含有するか実質的に乾燥していることが好ましいが、必ずしも完全に乾燥していなくてもよい。
【0014】
典型的な水混和性有機溶媒は、例えば、メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオール、またはそれらの任意の組合せである。
【0015】
特定の環境では、有機溶媒を生物活性分子および/または共沈物で予め飽和することによって、水溶液を添加したときに、2成分が一緒に析出することを確実にすることができる。
【0016】
当然のことながら、用語「混合された」は、水溶液を添加しながら、水混和性有機溶媒を水溶液と混合または攪拌するプロセスステップを指す。混合は、生物活性分子が、中間組成物、すなわち水溶液と有機溶媒の、例えば25%〜60%溶媒の混合物と最小限の時間接触するように効率的である必要がある。したがって、水溶液は、連続した流れ、噴霧または霧などの広範な方法を用いて有機溶媒に添加することができる。通常、生物活性分子と共沈物溶液の混合は、生物活性分子および共沈物を一定量の溶媒と混合するプロセスで起こすことができる。
【0017】
今回、本発明者他は、バッチ式共沈とは対照的に、2つ以上の連続流を混合することによって動作することができる連続プロセスが有利であることを見いだした。すなわち、水混和性有機溶媒または溶媒の混合物の連続流を、例えば、小さな混合フロー室中で、生物活性分子/共沈剤溶液を含む連続水性流と混合することができる。水混和性溶媒流は、5vol%未満で水を含有し、かつ/または共沈を助けるための共沈剤で実質的に飽和されていてもよい。また、水性流または溶媒流も、緩衝液、塩および/または界面活性剤などの医薬製剤で通常用いられる他の賦形剤を含有することができる。共沈プロセスを、形成された粒子を混合溶媒流中の懸濁液として流し出す混合室中で開始させ、保持容器に捕集することができる。混合室を出る粒子は、サイズ、形状および収率が実質的に一貫していることが判明している。有利には、この連続プロセスを、0℃と周囲温度の間の温度ならびに高温を含む広範な温度範囲にわたって行うことができる。また、有利には、粒子を、大気圧を含む様々な圧力に保たれた保持容器を用い、溶媒中の懸濁液として捕集することができる。周囲に近い条件下で連続プロセスを実行すると、噴霧乾燥または超臨界流体処理などの医薬用途のための粒子を形成する従来の方法に比べ、資本および操業コストの軽減につながる。例えば、生物活性分子でコーティングされた大量の粒子を、このようにして工業規模で製造できることが想定される。
【0018】
あるいは、生物活性分子または共沈剤を、水性流およびコーティングされていな粒子を形成するのに使用されるプロセスから除くことができる。コーティングされていない粒子は、例えば、医薬製剤の目的に有用な賦形剤または薬物を含むことができる。このことは、コスト効率の良いプロセスで賦形剤または薬物の微結晶を製造するための好都合な方法を提供することができる。微結晶型で製造される賦形剤または薬物は、改良された流れ特性または圧縮特性などの強化された特性を示すことがある。
【0019】
連続共沈システムにおいて、一方のポンプは、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を連続的に送り、別のポンプは、共沈剤で飽和された溶媒相を送ることができる。粒子コーティング材料などの第3の成分が必要な場合には、他のポンプを使用することができる。
【0020】
ポンプは、様々な種類であってよいが、所定の流速で溶液を送り、用いられる生物活性分子と適合していなければならない。好都合には、一連の流速にわたって水溶液および水混和性溶媒を送るために最適化されていることから、HPLCポンプまたは同種のものを使用することができる。通常、水溶液は、0.1ml/min〜20ml/minの流速で送られる。水溶液用ポンプヘッドおよびラインは、生物活性分子が付着しないような材料で製作することができる。溶媒は、一般に水性よりも4〜100倍速く送ることができるため、より強力/効率的ポンプが必要である。通常、溶媒は、2ml/min〜200ml/minで送られる。
【0021】
混合装置は、沈殿がほぼ即時に起き始めるように、連続水性流を連続水混和性溶媒流と迅速かつ密に混合するための方法を提供することができる。
【0022】
混合装置は、2つの流れを迅速に混合することができる任意の装置であってよい。すなわち、例えば、入ってくる液体のフローパターンを形成/組み合わせることによって動作する静的装置か、あるいは2つの流体流れを一緒に活発に攪拌する動的装置であってもよい。動的装置であることが好ましい。2つの流れのかき混ぜは、撹拌、超音波処理、振盪または同種のものなどの様々な手段の使用によって行うことができる。撹拌の方法には、パドル撹拌機、スクリューおよび磁気撹拌機が含まれる。磁気撹拌を使用する場合には、例えば、単純な棒またはマルタ十字架などの異なる輪郭を持つ様々な撹拌子を使用することができる。混合装置の内部を裏打ちする材料は、その上に生物活性分子または粒子が著しく結合しないように選択することが好ましい。適当な材料には、316ステンレス鋼、チタン、シリコーンおよびテフロン(登録商標)が含まれる。
【0023】
必要な製造規模に応じて、混合装置は、様々なサイズおよび形状で製造することができる。必要な混合室のサイズは、2つの溶媒流に関する流速の関数である。水性が約0.025〜2ml/minで溶媒が2.5〜20ml/minの流速の場合、0.2mlの混合室を使用するのが好都合である。
【0024】
通常、連続プロセスにおいて、生物活性分子/共沈物溶液は、過剰の水混和性有機溶媒に添加される。これには、第1の態様による生物活性分子/共沈物溶液由来の水の有機溶媒中への急速な希釈が、随伴する生物活性分子の急速な脱水および粒子の形成によって起きるように、より小容量の生物活性分子/共沈物溶液を、より大容量の過剰な有機溶媒に添加することが必要である。沈殿を行う温度は変えることができる。例えば、水溶液および溶媒を加熱しても冷却してもよい。冷却は、生物活性分子が脆弱な場合に有用なことがある。あるいは、溶媒および水性混合物が異なる温度であってもよい。例えば、溶媒を、水性混合物の凝固点以下の温度に保つことができる。さらに、圧力も変えることができ、例えば、溶媒の揮発性を下げるために、より高い圧力が有用なことがある。
【0025】
生物活性分子/共沈剤溶液を過剰の水混和性有機溶媒に混合すると、生物活性分子および共沈剤の沈殿がほぼ即座に起こる。
【0026】
通常、沈殿した粒子は、少量の水を含有する新たな有機溶媒で洗浄することによってさらに脱水することができる。これは、共沈剤中に飽和している残留溶媒を除去するためにも有用なことがある。さもなければ、乾燥すると、この残留共沈剤は、粒子を接合するように働き、凝集塊の形成を引き起こすことがある。粒子上に他の賦形剤を導入するため、乾燥または保存に先立って、賦形剤を溶液による洗浄を使用することも可能である。
【0027】
有利なことに、沈殿した粒子を有機溶媒中に保存でき、生物活性分子は、長期間にわたり活性および安定性について極めて良好な保持を示すことが判明した。さらに、有機溶媒中に保存される沈殿した生物活性分子は、通常、細菌による攻撃に対して耐性を有するため、それらの保存期間が伸びることになる。
【0028】
時間と共に共沈物は沈降し、過剰の溶媒をデカントして除くことによって粒子の濃縮懸濁液を容易に回収することができる。しかしながら、沈殿した粒子をより迅速に回収するため、共沈物を、例えば、遠心分離および/または濾過にかけることができる。空気乾燥、真空乾燥または流動床乾燥などの当技術分野において知られている従来の乾燥手順を用い、残留溶媒を蒸発させ、無溶媒粒子を残すことができる。
【0029】
あるいは、超臨界CO2を用いる乾燥手順において粒子から溶媒を除去することができる。通常、連続プロセスで調製される溶媒中の粒子、およびバッチ型プロセスを用いてWO 0069887で定義されたように調製される溶媒中の非医薬粒子を、溶媒が(できる限り)除去されるまで、懸濁液を通って流れる超臨界流体CO2と共に高圧室中に装填することができる。この技法は、粒子からほぼすべての残留溶媒を除去する。これは、残留溶媒が予期せぬ生理学的効果を提供する可能性があるため、医薬製剤にとって特に有益である。懸濁液の超臨界流体乾燥での他の利点は、これを用い、他の単離技法によって得られるよりもかなり低い嵩密度の粉末および医薬製剤を製造できることである。通常、0.75g/ml未満の嵩密度が得られる。低い嵩密度の製剤は、強力に結合した凝集塊を一般的にほとんど含有しないため、生物活性分子の肺送達に特に有用である。臨界点乾燥は、当技術分野において知られている多くの様々な方法で行うことができる。
【0030】
したがって、連続共沈システムを組み立て、第1の態様による粒子、および実際は、他のタイプの粒子を形成し、次いで超臨界CO2を用いて粒子を乾燥することが可能である。
【0031】
医薬用途の場合、通常、乾燥沈殿粒子を、使用に先立って無菌条件下で無菌送達用具またはバイアル中に導入することができる。あるいは、無菌条件下で溶液中の懸濁液として無菌送達用具またはバイアル中に粒子を移すことができる。次いで、例えば必要に応じて、超臨界CO2乾燥を用いてその場で乾燥することができる。
【0032】
また、本明細書に記載の方法は、水溶液中に存在する有機可溶性成分を生物活性分子から分離することを可能にする。例えば、遊離塩基形でエタノールの様な有機溶媒に可溶であるTrisなどの緩衝液を、沈殿中に生物活性分子から分離することができる。しかしながら、水溶液または有機溶媒に別の有機可溶性塩基を添加することによってすべての緩衝液を遊離塩基に変換することが必要な場合もある。したがって、本発明は、生物活性分子から望ましくない成分を除去する方法であって、望ましくない成分が生物活性分子と共沈せず、有機相に溶解したままでいるような方法も開示する。これは、非吸湿性のコーティングされた粒子の生物活性分子沈殿に先立って、水性または有機溶媒中に酸、塩基、イオン対形成剤およびキレート化剤などの添加剤を含めることによって行うことができる。したがって、生物活性分子を、極めて純粋な形でコーティングすることができる。
【0033】
通常、本発明に記載の製剤は、多くの用量強度(dosage strength)で製造される。用量は、1粒子当たりの生物活性分子の重量百分率を0.1wt%以下から約50wt%まで変化させることによって好都合に変化させることができる。水溶液に低い溶解性を有するか、あるいは高い水性濃度で不安定である生物活性分子の場合、低濃度で飽和水溶液を形成する担体を使用するのが有利である。その場合、低濃度の生物活性分子を用いて高い装填量を得ることが可能である。担体溶解度は、医薬製剤の用量強度を好都合に変化させることができるように、50wt%から<0.1wt%の装填量で生物活性分子を含有する粒子を製造する可能性を提供することができる。室温における水溶液中の担体溶解度は、2〜200mg/mlの範囲であり、10〜150mg/mlの範囲であることがより好ましい。
【0034】
有利には、80mg/ml未満の濃度で溶けている担体を使用し、平均粒径が50ミクロン未満の狭い粒度分布にまたがる自由流動性粒子を含有する医薬製剤を製造することができる。狭い粒度分布のコーティングされた結晶を含有する製剤は、送達再現性の改善と、それによる良好な臨床性能を提供する。
【0035】
記載の医薬製剤は、含まれている無菌環境中で混合するのに先立ち、水溶液および有機溶液を0.2ミクロンのフィルターで予め濾過することによって、無菌の形で好都合に製造することができる。医薬製剤は、有害な残留溶媒を実質的に含まないことが求められ、本発明は通常、以下の従来型乾燥手順後に0.5wt%未満のクラス3溶媒を含有する粉末を提供する。実質的にそれよりも低い溶媒レベルは、乾燥した水混和性およびCO2混和性溶媒中の結晶の懸濁液を通して超臨界流体CO2を流すことによって得られる。
【0036】
また、この方法を用い、典型的な生体巨大分子よりもかなり小さな水溶性生物活性化合物を用いる医薬製剤に適した生物活性分子でコーティングされた微結晶を製造することができる。これらの製剤は、バッチあるいは連続プロセスによって製造することができ、有利にはD,L−バリンなどの非吸湿性担体を用いることができる。硫酸トブラマイシンなどの水溶性抗生物質および他の水溶性生物活性分子を用いることができる。生物活性分子は、極性があり、共沈に使用されるpHでイオン化する1個または複数の官能基を含むことが好ましい。また、生物活性分子は、結晶化でコア材料によって形成される単位格子を超える最大寸法を有していることが好ましい。このことは、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形成を助け、結晶格子内に生物活性分子が包接される可能性を最小限に抑えるはずである。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、粒子を含む医薬製剤であって、粒子は、
(a)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、上記共沈剤分子は4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(b)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含み、粒子は上記のコア形成共沈剤分子および上記の1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成され、粒子は約90℃以上の融点を有する医薬製剤が提供される。
【0038】
粒子は、第1の態様による連続プロセスあるいはバッチプロセスによって製造することができる。
【0039】
本明細書における実質的に非吸湿性とは、結晶コアが水分を容易に取り込んで保持しないことを意味する。通常、室温で約80%の相対湿度に暴露されても、粒子は凝集せず、コアは、形態または結晶化度に著しい変化を受けないはずである。
【0040】
結晶コアとは、構成分子またはイオンが、明確な融解転移温度に達するまでは加熱しても実質的に未変化のままである、反復対称の安定した3次元結晶格子中に組織化されていることを意味する。好都合なことに、分子は、高度な結晶化度を有する結晶コアを形成する。通常、明確な融解吸熱(すなわち、ガラス転移ではない)は、示差走査熱量計(DSC)において粒子を加熱して観察することができる。これは、結晶化度を示すよく知られている特性であり、結晶コアが一般に、室温および周囲湿度で熱力学的に安定である固体相で実質的に構成されていることを示している。また、本発明による粒子は、結晶化度の特徴でもある複屈折を示す。また、粒子は、この場合もまた結晶化度の証拠であるX線回折パターンを示す。
【0041】
単一ステップとは、結晶コアを提供する分子またはイオンおよび外部コーティングを提供する生物活性分子が、コーティングされた粒子の形態で、すなわち1ステップ手順で直接溶液から一緒に沈殿することを意味する。したがって、別々のコーティングまたは粉砕ステップを必要としない。粒子形成は、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥で行われるような蒸発プロセスを一切必要としないことも理解すべきである。
【0042】
粒子は、治療などの医学的用途、または例えば疾患の存在を検出するためのキット形態におけるような診断法において使用することができる。疾患には、肺癌、肺炎、気管支炎などの肺の疾患が含まれ、粒子を肺に送達し、肺気量/有効性をテストするか、あるいは病原体を同定することができる。粒子は、獣医学的使用に用いることができる。
【0043】
通常、生物活性分子のコーティングは実質的に連続的である。あるいは、生物活性分子のコーティングが実質的に非連続的である粒子を含む医薬製剤を得ることが有利なことがある。また、コーティングは、厚さが異なり、約0.01〜1000ミクロン、約1〜100ミクロン、約5〜50ミクロンまたは約10〜20ミクロンとさまざまである。
【0044】
医薬製剤は、狭い粒度分布の粒子を含むことが望ましい。したがって、医薬製剤は通常、一般に同一または類似サイズを有するかなりの数の粒子による実質的に均一なシステムを含む。
【0045】
通常、連続プロセスによって製造される微結晶および生物活性分子でコーティングされた微結晶は、スパンが5未満、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満の狭い粒度分布を示す。通常、共沈によって製造される生物活性分子でコーティングされた微結晶は、純粋な担体材料の共沈によって製造される微結晶よりも小さいことが有利である。このことは、微結晶表面上の生物活性分子のコーティングと整合する。スパン値は、以下の通り算出される。
【0046】
d(0.1)(μm)=粒子の10%は、この粒径より小さい
d(0.5)(μm)=粒子の50%は、この粒径より大きく、またそれより小さい
d(0.9)(μm)=粒子の90%は、この粒径より小さい
スパン=d(0.9)−d(0.1)/d(0.5)
粒子は、約80μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは20μm未満の最大断面寸法を有することができる。最大断面寸法とは、直径の対点間で測定可能な最大距離を意味する。
【0047】
通常、結晶コアを構成する分子は各々、2kDa未満の分子量を有する。結晶コアを構成する分子は各々、1kDa未満の分子量を有することが好ましい。結晶コアを構成する分子は各々、500ダルトン未満の分子量を有することがより好ましい。好ましい分子は、素早く核を形成し、沈殿を起こしながら結晶を形成する分子である。したがって、実質的に非晶質の凝集塊またはガラスからなる粒子を提供する分子は、一般にコア材料には適していない。
【0048】
通常、結晶コアを形成する分子は、150mg/ml未満、好ましくは80mg/ml未満の水溶性を有する。驚いたことに、本発明者他によって、溶解度がこれらの値未満である分子は、フロー特性が改善された結晶を生じる傾向があることが見いだされた。自由流動性粒子が多くの医薬品製造プロセスにとって一般的に好ましいのは、それらが、例えば正確な用量によるカプセル充填を容易にし、コーティングなどのさらなる操作に都合よく使用できるからである。一般的に、自由流動性粒子は、規則的なサイズおよび寸法であり、静電気力が低い。例えば、高アスペクト比の針状結晶は、一般に自由流動性ではないため、特定の製剤では好ましくない。
【0049】
結晶コアを構成する分子は、例えば、アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬物、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体もしくは任意の組合せである。通常、分子は、レシピエントへの投与後に有害な生理学的反応を最小限に抑えるように選択される。
【0050】
結晶コアを形成するのに適したアミノ酸は、純粋な鏡像体またはラセミ化合物の形態であってよい。例には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、D−バリン、L−バリン、D,L−バリンの混合物、メチオニン、フェニルアラニン、プロリンおよびセリンまたはそれらの任意の組合せが含まれる。特に、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−セリン、L−メチオニン、L−イソロイシン、L−バリンまたはD,L−バリンが好ましい。共沈条件下で実質的にイオン化する側鎖を有するアミノ酸については、溶解度が低く、非吸湿性である結晶性の塩を生成する対イオンを用いることが好ましい。結晶コアを形成するための他の分子および塩の例には、α−乳糖、β−乳糖、マンニトール、重炭酸アンモニウム、グルタミン酸ナトリウム、アルギニンリン酸およびベタインが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
通常、結晶コアを形成する分子は、約25℃で、例えば約12〜150mg/ml、好ましくは約20〜80mg/mlという低い水溶性を有する。また、水溶性が約150mg/mlよりも大きい分子を用い、自由流動性粒子を得ることができるが、ただし、飽和に満たない水溶液から共沈させる。150mg/ml以下、より好ましくは80mg/ml以下の濃度で共沈させることが好ましい。25℃で高い水溶解度の分子については、150mg/ml以下の濃度で飽和に近くなるように、10℃または4℃などのより低い共沈温度を用いることが有利なこともある。同様に、25℃であまり可溶性でないコア形成分子の共沈については、35℃または50℃などのより高温を用いることができる。
【0052】
結晶コアを形成する分子は、120℃超などの90℃を超える、好ましくは150℃超の融点を有する。高い融点を有することは、形成された結晶が高い格子エネルギーを有することを意味する。高い格子エネルギーは、生物活性分子によって表面がコーティングされた結晶コアを有する粒子が形成される可能性を高め、粒子の非晶質含量を最小限に抑える傾向があるはずである。非晶質材料を含有する粒子は、高い湿度または温度に暴露されると望ましくない物理的性質の変化を受けることがあり、それが、医薬製剤にとって望ましくない生物活性および溶解度の変化を生じることがある。したがって、より安定な医薬製剤を形成する傾向があることから、融点の高い粒子を生じる共沈剤を使用することが有利である。
【0053】
新たに形成された粒子の懸濁液における溶媒:H2O:担体:生物活性剤の典型的な重量比は、約1000:100:5:3〜約1000:100:5:0.03である。溶媒:H2Oの重量比は、約100:1〜約4:1である。
【0054】
好都合にも、結晶コア上にコーティングを形成する生物活性分子は、例えば活性製薬成分(API)などの治療効果または診断効果を生み出すことができる任意の分子から選択することができる。治療効果とは、人体または動物体の任意の障害または機能不全の症状を治癒、緩和、除去もしくは軽減する、またはそれらに罹患する可能性を阻止もしくは低減する任意の効果を意味し、したがって予防効果を包含する。
【0055】
また、生物活性分子のコーティングは、安定剤、界面活性剤、等張性調整剤およびpH/緩衝剤などの医薬製剤で一般的に使用される賦形剤を含むことができる。
【0056】
生物活性分子は、例えば、任意の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体または治療効果を生じる任意の組合せであってよい。
【0057】
生物活性分子の例には、抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、抗真菌剤などの薬物;天然または非天然ペプチド;インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、抗体などのタンパク質;遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNAおよびアンチセンスヌクレオチドなどの核酸;任意の単糖、二糖または多糖などの糖;およびプラスミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
核酸は、例えば、レシピエント中に導入されると直ぐに発現させることができる。したがって、核酸には、核酸の発現を制御するための適切な調節性制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)が含まれる。また、生物活性分子は、PEG−タンパク質などの天然または合成治療薬の化学的に修飾された誘導体であってもよい。
【0059】
核酸は、プラスミド、ファージミドなどのベクターまたはウイルスベクター内に含まれていてもよい。当業者に知られている任意の適当なベクターを用いることができる。
【0060】
例えば、ワクチンコーティング成分には、ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドなどの、病原体、例えば、細菌またはウイルスの抗原成分が含まれる。このようなワクチン製剤の特別な利点は、従来の液体製剤と比較した場合、高温に暴露されると、非常に強化された安定性を一般に示すことである。例えば、本発明に従って調製されるこのような製剤は、45℃を超える温度に48時間暴露することができ、in vivoで試験した場合、免疫応答を誘発する能力を維持するが、一般的に、標準的な液体試料は完全に不活化されることが判明している。高温安定性を示すワクチンは、冷蔵する必要がないため、保管および特に途上国における流通の容易さの点から見てかなりの費用節減を提供する。ワクチンは、ウイルス、真菌、原虫、アメーバおよび細菌感染などを含む病原性微生物によって引き起こされる感染症の予防および/または治療に有用である。本発明に従って調製することができるワクチン製剤の例には、ジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザが含まれるが、これらに限定されないサブユニット、弱毒化または不活微生物ワクチンが含まれる。
【0061】
例示的製剤は、ジフテリアタキソイド(diptheria taxoid)でコーティングされたD,L−バリンまたはL−グルタミン結晶からなる。本発明者他は、例えば、ジフテリアタキソイドでコーティングされたL−グルタミン結晶の試料は、一連の異なる条件下で保存でき、復元および接種後、マウスにおいて強い一次および二次免疫応答を誘発することを見いだした。ワクチンでコーティングされた結晶は、非経口、経肺および経鼻投与を含む多くの経路によるレシピエントへの送達のために製剤化することができる。肺送達は、若年小児にとって特に有効である。
【0062】
本発明による粒子は、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチンと、おたふく風邪、麻疹および風疹などの生ウイルスワクチンなどの、タンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である。本発明による粒子は、MVAベクターインフルエンザワクチンなどの最新のインフルエンザワクチン成分についても調製することができる。
【0063】
さらに、ワクチン成分でコーティングされた微結晶は、黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含む癌、特にヒト癌用に開発されるワクチンの製剤に有用である。本明細書に記載の経肺製剤は、肺癌の治療に特に適している。注目すべきは、タンパク質ベースのワクチン(すなわち、内部の実質的に非吸湿性の結晶コア上にコーティングされているタンパク質/ペプチド)の他に、核酸分子が、内部の実質的に非吸湿性の結晶コア上にコーティングされている核酸ベースのワクチン製剤も本発明に従って調製することができる。
【0064】
有利な特性を有することが判明している非吸湿性のコーティングされた粒子の例には、D,L−バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−グリシンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、D,L−バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよび破傷風タキソイドのコーティング、D,L−バリンの結晶コアならびにジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティングのある粒子が含まれる。
【0065】
通常、十分に制御された条件下で形成される粒子のバッチは、すべてが実質的に同一の形態および結晶形を示し、狭い粒度分布を有する個々の微結晶で構成されている。これは、SEM画像で好都合に観察し、粒径測定値によって確認することができる。通常、本発明による微結晶は、80ミクロン未満の最大断面寸法および最大寸法を有する。40ミクロン未満の最大断面寸法を有することが好ましく、20ミクロン未満であることがより好ましい。最大断面寸法が0.5〜20ミクロンである粒子が最も好ましい。あるいは、最大断面寸法が50ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満である類似サイズを有する微結晶の球状凝集塊の自由流動性粉末を形成することができる。好ましい共沈剤によって形成される粒子の注目すべき側面は、80%RHまでなどの高い湿度に暴露しても、それらのサイズおよび形態が実質的に一定のままであることである。さらに、それらの自由流動性および空気力学的特性は、再乾燥しても維持することができる。
【0066】
各粒子上にコーティングされる生物活性分子の量は、共沈に先立って、初期水溶液中の生物活性分子とコア分子の比を変えることによって好都合に変化させることができる。通常、生物活性分子は、コーティングされた各微結晶の0.1wt%〜50wt%を占めるものとする。粒子中の生物活性分子の装填量は、1wt%〜40wt%であることがより好ましい。
【0067】
通常、生物活性分子の少なくとも一部は、高い湿度への暴露後であっても高レベルの活性を維持する。
【0068】
通常、非吸湿性のコーティングされた粒子は、高温に暴露されても安定であり(すなわち、それらの生物活性を実質的に維持し)、60℃まで1週間程度は安定である。このことは、保存の助けとなり、非吸湿性のコーティングされた粒子から形成される医薬製剤は、非冷蔵条件下であっても長時間の有効期間を有すると予想されることを示している。
【0069】
通常、非吸湿性のコーティングされた粒子のコア材料は、80%までの相対湿度で5wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の水を吸収するはずである。通常、生体分子を含む粒子は、装填量に応じてwt%の高い水を吸収するはずである。
【0070】
通常、結晶コア上にコーティングされた生物活性分子は、自然のまたは自然に近い立体配置を維持する。すなわち、生物活性分子は、製造プロセス中に不可逆的には変性されない。また、結晶コア上の生物活性分子のコーティングは、周囲温度または高温における粒子の保存に対して安定性の向上を提供することが有利にも見いだされている。例えば、通常、生物活性分子は、水性媒体において復元される場合、その生物活性の大部分を維持することができる。生物活性分子は、25℃で6カ月間の保存後に初期の生物活性の50%超を維持することが好ましい。生物活性分子は、その生物活性の80%超を維持することがより好ましく、95%超の生物活性を維持することが最も好ましい。
【0071】
通常、記載の微細な自由流動性粒子または懸濁液は、ガラスバイアルの壁に付着しない。通常、粒子は、水、水溶液(復元のため一般に使用されるような緩衝液および塩を含有する)、あるいは生理液に急速かつ完全に再溶解する。一般的に、乾燥粉末または懸濁液の完全な再溶解は、2分未満、好ましくは60秒未満、最も好ましくは30秒未満で起こるはずである。通常、水性緩衝液中で復元された製剤は、透明度が15FNUを上回り、好ましくは6FNUを上回る低濁度の無色溶液である(FNU=ホルマジン比濁計単位)。
【0072】
一般に、生物活性分子は、緩衝化合物、塩、糖、界面活性剤および抗酸化剤などの水溶液に溶かされる場合、賦形剤または安定化剤が存在する必要がある。これらは、出発水溶液中に含め、共沈プロセス中に粒子に組み入れることができる。その場合、それらは、例えば医薬製剤として粒子の復元で存在することになる。通常、すべての成分の共沈後に、賦形剤は、粒子の外部表面で濃縮され、生物活性分子のコーティング中に浸透するはずである。典型的な抗酸化剤は、例えば、N−アセチルシステインなどの形態のシステインであり、典型的な界面活性剤は、Tweenであってよい。共沈中に、賦形剤と生物活性分子の相対比を、溶媒中への溶解のために変えることが可能である。これは、乾燥して望ましい比が粒子において得られるように、初期水溶液、共沈溶媒あるいは洗浄溶媒に、選択された賦形剤を予め添加することによって制御することができる。したがって、強化された保存安定性を得るため、例えば、有機可溶性糖またはポリマーを洗浄溶媒に含めることによって、タンパク質でコーティングされた粒子の表面上にコーティングすることができる。あるいは、粒子自体の物理的性質を改善するため、添加剤を洗浄溶媒に含め、粒子の外部表面上にコーティングすることができる。例えば、形成された微結晶を、乾燥する前にイソロイシンの2−プロパノール溶液で洗浄することによって、イソロイシンでコーティングされたインスリン−グリシン粒子を得ることが有利であることが判明している。これらの粒子は、コーティングされていない粒子に比べ、流動性および空気力学特性が強化される。
【0073】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に従って形成される粒子またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む肺送達用の医薬製剤が提供される。
【0074】
吸入を用いて薬物分子を血流中に投与するためには、薬物を、深部の肺まで送達することができる製剤にしなければならない。これには、乾燥粉末の場合、一般的に質量中位寸法(mass median dimension)が1〜5ミクロンである粒子が必要であるが、特別な空気力学的特性を持つ、より大きな粒子も使用できることが明らかにされている。本発明による粒子の特定の製剤が経肺製剤を形成するのに適しているのは、それらを用い、吸入による送達に適する微細な自由流動性粒子を作製することができるからである。生物活性分子がこれらの非吸湿性のコーティングされた粒子の表面上にあることを考えれば、粒子は一般に、予想外に低い静電気力を示し、送達用具中で乾燥粉末として取扱いかつ使用するのが容易である。あるいは、例えば、噴霧器中の懸濁液として使用することができる。
【0075】
特に、経肺医薬製剤の形成に適する生物活性分子には、以下のインスリン、α1−アンチトリプシン、インターフェロンなどの治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの医薬を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬物;水感受性薬物;脂質および界面活性剤;多糖;またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体が含まれるが、それらのいずれかに限定されるものではない。粒子を含む経肺製剤を吸入装置で直接使用し、高い放出用量(emitted doses)および高い細粒分画を得ることができる。すなわち、通常、MSLI(第1〜5段)で測定される放出用量は70%を超える。通常、MSLI(3〜5段)で測定される細粒分画は、20%を超え、30%を超えることが好ましい。細粒分画は、多段液体含有インピンジャー(MSLI)の下部段で捕集される分率と定義され、空気力学的特性が吸入による深部の肺への投与に適している、すなわち約3.3ミクロン未満の粒子に相当する。この経肺製剤は、例えば、乳糖などのより大きな担体粒子による他の製剤なしに、乾燥粉末送達用具中で使用することができる。
【0076】
経肺製剤の場合、空気力学的質量中位径が10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満である粒子が好ましい。通常、これらは、空気力学的質量中位径に類似している質量中位径を有するはずである。通常、最大断面直径が1〜5ミクロンの範囲にある自由流動性で非吸湿性の低帯電粒子が好ましい。これらは、例えば、L−グルタミンなどのアミノ酸を用いて結晶コアを形成することによって得られる。しかしながら、驚いたことに、発明者他は、高アスペクト比のフレークの形態をとる生物活性分子でコーティングされた粒子が、有利にも最大断面直径よりも小さな空気力学的質量中位径を有することを発見した。好適な形は、例えば、葉形またはタイル形であってよい。このような粒子に関して、最大断面直径の好ましい範囲は、1〜5ミクロンを超え、例えば、1〜10ミクロンであってもよい。この形の生物活性分子でコーティングされた結晶性粒子を通常形成する共沈剤には、ヒスチジン、およびD,L−バリンが含まれる。したがって、乾燥粉末経肺製剤の場合、高アスペクト比のフレークを生じる共沈剤で製造された粒子も好ましい。
【0077】
特に、経肺製剤は、バリン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシンまたはグルタミンなどのアミノ酸からなる結晶コアを有するように選択されることが好ましく、例えば、バリンの結晶コアおよびインスリンなどの治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンなどの酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングが含まれる。製剤用の粒子を形成する場合、高湿度に暴露されても凝集しない分離した粒子が得られる共沈剤を使用することが好ましい。さらに、共沈剤は、投与後に患者の口内に不快な味を残さないことが好ましい。したがって、グルタミンは、高湿度に暴露することができ、淡泊な味を有しているため、極めて好ましい。
【0078】
本発明の第4の態様によれば、第2の態様による粒子もしくは粒子の懸濁液またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む非経口製剤が提供される。このような製剤は、静脈内、皮下または筋肉内注射を含む様々な方法によって送達されるか、あるいは持続または制御放出製剤において使用することができる。粒子は、周囲温度において長時間の有効期限を示す無菌非経口製剤を提供するためのコスト効率の良いプロセスで有利に製造することができる。散剤または懸濁剤の形態である製剤は、60秒未満の間に水溶液中で復元され、注射に適する低濁度の溶液を提供することが好ましい。懸濁剤の復元は、生物活性分子が特に有毒または強力であるため、乾燥粉末として製造または取扱うのが困難である場合に好ましいことがある。あるいは、例えば、エタノールなどの溶媒中の粒子の濃縮懸濁剤は、復元することなく直接の非経口投与に使用することができる。これは、治療有効性を提供するため極めて高用量の形態で送達されることが必要な生物活性分子にとっての利点を提供することができる。このような生物活性分子には、治療用抗体およびそれらの誘導体が含まれる。これらは、復元によって凝集を受けるか、あるいは投与することが困難である極めて粘稠な溶液を形成することがある。したがって、高用量の生物活性分子を含有する粒子の濃縮懸濁剤を用い、このような分子を送達する代替的なより便利でかつ治療上有効な方法を提供することができる。生物活性分子でコーティングされた粒子が、この用途に特に適するのは、それらが極めて迅速に復元し、生物活性分子の最小限の凝集を示すからである。凝集塊の投与が望ましくないのは、有害な免疫応答の開始につながる可能性があるためである。
【0079】
非経口送達による投与に適する生物活性分子には、本発明の第3の態様に記載の分子が含まれる。さらに、非経口投与を用い、不十分な全身バイオアベイラビリティーのために肺を介する対象の血流中への投与に適していないワクチンまたは抗体などのより大きな生体分子を送達することができる。好ましい結晶コア材料には、マンニトールおよびショ糖などの非経口製剤において一般的に使用される賦形剤が含まれる。迅速に復元し、高温であっても安定であり、処理および取扱いが容易である粒子を形成するのに使用することができるL−グルタミンなどの天然アミノ酸も好ましい。また、L−グルタミンが好ましいのは、有害な副作用もなく高用量で患者に投与されてきているためである。
【0080】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様による、またはバッチプロセスにおける粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(または、デポ剤)が提供される。特定の用途の場合、非経口もしくは経肺製剤、または投与によって持続性もしくは長期の治療効果が得られる他の製剤を製造することが好ましい。例えば、対象の血流において得られる生物活性分子の最高濃度を制限するために使用するか、あるいは反復投与の間に必要な期間を延長するために使用することができる。あるいは、粒子の表面特性を変化させてそれらのバイオアベイラビリティーを改善することが必要なこともある。生物活性分子でコーティングされた粒子を好都合に使用し、持続または制御放出製剤を製造することができる。これは、粒子をコーティングすること、またはゲルもしくはポリマーなどの別のマトリックス材料中に粒子を組み入れることによって、または送達用具内に粒子を固定化することによって行うことができる。
【0081】
例えば、各々の粒子を、当技術分野において知られている技法を用い、粒子成分の放出または送達を変化させる材料で均一にコーティングすることができる。
【0082】
粒子をコーティングするのに使用することができる材料は、例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸およびそれらのコポリマーなどの低い水溶性の生物分解性ポリマー;ポリアミノ酸;ヒドロゲル;および生理的条件への暴露に反応して溶解性または架橋度を変化させることが当技術分野において知られている他の材料である。例えば、コーティングは、粒子の懸濁液をコーティング材料の溶液と接触させ、次いで得られる粒子を乾燥することによって施すことができる。必要に応じて、このプロセスを繰り返し、放出プロフィールを拡張することができる。コーティングされた粒子は、生物活性分子の溶液中への実質的に定速な放出を提供することが判明している。あるいは、複数の粒子を、例えば結合剤によって、例えば単一錠剤型に合体することができる。錠剤を維持している結合剤が一緒に徐々に溶解するため、結合剤が溶液に溶解すると直ちに、粒子が連続的に溶液中に放出される。
【0083】
当業者には当然のことながら、上記教示の組合せを用い、例えば、経鼻製剤、経口製剤および局所製剤などの他の医薬製剤を得ることが可能である。経鼻製剤および経口製剤は、例えば粘膜への付着を提供する代替材料による粒子のコーティングが必要なことがある。
【0084】
本発明の第6の態様によれば、第2の態様による、またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む肺の薬物送達用具が提供される。
【0085】
肺の薬物送達用具は、例えば、液体噴霧器、エアロゾル式定量吸入器または乾燥粉末分散装置である。
【0086】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら一例として説明する。
(注目すべきは、以下の実施例においてコーティングされた粒子をPCMCと見なすが、粒子は、必ずしもタンパク質でコーティングされている必要はなく、任意の生物活性コーティングを有していてもよいことである)
【0087】
(実施例セクション)
【実施例1】
【0088】
表1は、コーティングを形成する生物活性材料がインスリンであり、結晶コアが、D,L−バリン、L−バリン、L−ヒスチジンおよびL−グリシンから形成される、一連のタンパク質でコーティングされた微結晶(PCMC)を製造するのに使用される条件を示している。微結晶は、結晶化プロセスの下にある記入事項に従ってガラスのバイアルまたはフラスコ中で製造し、混合は、磁気撹拌によって行った。
【0089】
使用したインスリンは、ウシ膵臓インスリン(Sigma I5500)およびUSPウシインスリン(Sigma I8405)である。
結晶は、Durapore薄膜フィルター(0.4ミクロン)で濾過することによって単離し、次いで、換気フード中で空気乾燥した。
タンパク質装填量は、Bioradタンパク質アッセイを用いて測定した。細粒分画(FPF)の百分率は、多段液体含有インピンジャーを用いて測定した。
【表1】
【0090】
表1は、医薬製剤に適する自由流動性物理的特性を持つインスリンでコーティングされた粒子が、一連の様々な共沈剤によって製造できることを示している。最後のエントリーを除き、共沈はすべて、80mg/ml以下の賦形剤濃度で行った。後者の場合には、修正された洗浄手順を用い、イソロイシンで結晶をさらにコーティングした。一貫して高い細粒分画(FPF)および放出用量(データ省略)は、粒子の自由流動性を表し、かなりの割合が3ミクロンよりも小さい有効な空気力学的寸法を有していることを示している。また、表1から、プロセス条件を変化させ、インスリンの装填量および粒子の物理的特性を変化させることが可能であることは明らかである。
【実施例2】
【0091】
表2は、結晶コアがL−グリシン、L−アラニンおよびL−アルギニンから形成される、実施例1におけるように製造された一連の他のインスリンでコーティングされたPCMCを示している。
【0092】
使用したインスリンは、ウシ膵臓インスリン(Sigma I5500)およびUSPウシインスリン(Sigma I8405)である。
【表2】
【0093】
表2は、溶解度の高い共沈剤から製造された粒子は、MSLIにおいて劣った特性を有することを示している。以下で説明する粒径測定も、個々の結晶の大きな凝集塊の存在を示している。明らかになった別の点は、このような高い溶解度の化合物を飽和近くで使用した場合、生物活性分子(インスリン)の装填量が高い粒子を得ることができないことである。したがって、医薬製剤に有用な粒子を製造するためには、溶解度の低い共沈剤を使用し、かつ/または飽和に満たない溶液を使用することによってWO 0069887に記載のプロセスを修正することが好ましい。
【実施例3】
【0094】
表3は、D,L−バリンが結晶コアである一連のインスリンPCMCを示している。使用した水混和性溶媒は、プロパン−2−オールである。微結晶は、実施例1の方法に従って製造した。
【表3】
【0095】
したがって、用量強度が異なる医薬製剤を提供するために、粒子内のタンパク質の割合を変化させることは容易である。
【実施例4】
【0096】
表4は、D,L−バリンが結晶コアである一連のインスリンでコーティングされたPCMCを示している。微結晶は、実施例1に従って製造した。
【表4】
【0097】
これらの結果は、粒子を再現性良く製造できることを示している。
【実施例5】
【0098】
粒径分析
レーザー回折粒径分析は、マスターサイザー2000を用い、生物活性分子でコーティングされた粒子に対して行った。つまり、10〜20%のレーザーオブスキュレーション(obscuration)を確保するため、2−プロパノール60mlが入っているマスターサイザー2000の試料ホルダーに十分なPCMCを加えた。次いで、以前に設定した標準操作手順を用い、測定を行った。
【0099】
d(0.1)(μm)=粒子の10%は、この粒径より小さい
d(0.5)(μm)=粒子の50%は、この粒径より大きく、またそれより小さい
d(0.9)(μm)=粒子の90%は、この粒径より小さい
スパン=d(0.9)−d(0.1)/d(0.5)
スパンは、母集団均一性の良い指標を与える。したがって、5以下のスパン値が好ましく、2以下のスパン値が特に好ましい。
【0100】
グリシンおよびアラニンの飽和溶液をコア賦形剤として使用した場合に生じる典型的な粒度分布パターンを図1および2に示す。図1は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/グリシンの粒径分布を示している。図2は、プロパン−2−オール中で沈殿したキモトリプシン/アラニンの粒径分布を示している。
【0101】
図1および2は、WO 0069887に従って行われた共沈プロセスにおいて、コア材料として極めて溶解しやすい賦形剤(例えば、グリシンおよびアラニン)の飽和溶液または濃縮溶液を使用した場合の大きな粒径分布を示している。特に、一つの集団が粒子からなり、より大きな他の集団がそれよりも小さな粒子の凝集塊からなっている、2つの集団が存在することが分かる。このことは、均一な溶解性およびバイオアベイラビリティー特性を持つ医薬製剤の製造には望ましくない。
【0102】
対照的に、図3〜9は、D,L−バリン、L−グルタミンおよびL−ヒスチジンなどの溶解し難い賦形剤が粒子のコアを構成する場合に、はるかに狭い粒径分布が得られることを示している。また、これらの図は、大きな凝集塊がほとんどまたは全く形成されないことを示している。これらの粒子は、均一な溶解性およびバイオアベイラビリティー特性を持つ医薬製剤を提供することが期待される。
【0103】
図3は、キモトリプシン15mgを、50%飽和DL−バリン溶液3mlに溶かした場合に形成されるPCMCを示している。D,L−バリンで飽和された2−プロパノール35ml中で水溶液6mlを沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0104】
図4は、飽和D,L−バリン溶液0.2mlを、マスターサイザー試料室においてHamilton注射器を用い、撹拌機速度=2000rpmで、飽和されていない2−プロパノール60ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子をマスターサイザー内部で形成させ、直接測定した。この試料において見られる狭い粒度分布は、高い攪拌速度を用い、乾燥粉末の形態で粒子を単離しなかったために生じたと考えられる。通常、従来の単離技法を使用すると、より凝集した製剤となる。
【0105】
図5は、飽和L−ヒスチジン14mlを、磁気撹拌機を用いてL−ヒスチジンで飽和された2−プロパノール140ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0106】
図6は、飽和D,L−バリン溶液0.2mlを、マスターサイザー試料室において、撹拌機速度=1500rpmで、飽和されていない2−プロパノール60ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子をマスターサイザー内部で形成させ、直接測定した。
【0107】
図7は、L−グルタミン飽和溶液0.6mlを、高速撹拌下で5mlピペットを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール6ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0108】
図8は、L−グルタミン飽和溶液0.6mlを、高速撹拌下で小さなシリンジポンプを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール6ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0109】
図9は、5%装填量のアルブミン/L−グルタミンを、中程度の撹拌下、プロパン−2−オール中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。アルブミン1mgを、L−グルタミン飽和溶液0.6mlに溶かした。この溶液0.5mlを、中程度の撹拌下、シリンジポンプを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール5ml中で沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0110】
下掲の表5は、図1〜9で示された結果を要約している。
【表5】
【0111】
表5における結果は、粒度分布が比較的狭く、最小限度の凝集を示す製剤が、好ましい共沈剤を選択することによって、再現性良く得られることを示している。また、見ても分かるように、マスターサイザーによって測定されたこれらの粒子の体積中位径は、通常30ミクロン未満であり、10ミクロン未満のことがある。通常、粒子のSEM画像は、平均最大断面寸法が、マスターサイザーによって測定される平均質量寸法よりも定性的に小さいことを示している。
【0112】
通常、連続プロセスによって製造される微結晶および生物活性分子でコーティングされた微結晶は、スパンが5未満、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満の狭い粒度分布を示す。通常、共沈によって製造される生物活性分子でコーティングされた微結晶は、純粋な担体材料の沈殿によって製造される微結晶よりも有利に小さい。このことは、微結晶表面上の生物活性分子のコーティングと整合性がとれている。
【0113】
タンパク質装填量がすべて10%であるチトクロームCでコーティングされたD,L−バリン(Cytc/val)、グリシン(Cytc/gly)およびL−グルタミン(Cytc/gln)の微結晶は、実施例9に記載の連続流型沈殿装置を用い、イソプロパノール中への共沈によって調製した。表「粒度分布」は、得られた平均径およびスパンを示している。
【表6】
【0114】
これらの結果は、裸の微結晶に比べ、生物活性分子でコーティングされた微結晶のサイズが縮小していることを明確に示している。測定されたスパンは、いずれの場合にも5未満であり、1.5未満のことがある。粒子サイズのさらなる縮小は、温度などのプロセス条件を変化させることによって、または混合効率を高めることによって達成できる可能性がある。
【実施例6】
【0115】
(乾燥粉末吸入器からの用量放出)
乾燥粉末吸入器からの用量放出は、Astra Draco多段液体含有インピンジャー(MSLI)を用いて測定した。用量のうち有用な部分は、細粒分画(FPF)と呼ばれる。一般的に、細粒分画(FPF)は、以下の表6に示されるようにMSLIの低部段で捕集される。表6を用い、重要な各段のカットオフ寸法を決めた。
【表7】
【0116】
以下の実験において60l/minの流速(Q)を用い、第2、3および4段についてそれぞれ、6.8、3.1および1.7μmのカットオフ寸法を得た。
【0117】
すべてのMSLI実験において以下の手順を用いた。
(a)市販の硫酸サルブタモール製剤(例えば、ベントリン)についての初期研究には、受け入れたままの製剤を使用した。
(b)PCMC製剤については、サイズ3のカプセルを、一般的に10〜20mgの量の乾燥粉末PCMCで満たした。
(c)第1〜4段のクランピングに先立って、MSLIの第5段に濾紙を加える。第1〜4段の各々に水20mlを添加する。第1段の最上部にネック部を接続した後、アダプターピースをネックの末端部に接続する。ディスクへラーの場合はブリスター包装に、あるいはエアロへラー(aerohaler)の場合はサイズ3のカプセルに穴を開けることによって、乾燥粉末吸入器の使用を開始する。続いて、乾燥粉末吸入器をアダプター内に格納し、ポンプのスイッチを4秒間入れ、吸入器からMSLIまで製剤を送る。吸入器内の各ブリスターまたはカプセルについて作動を行った。
どの場合においても、PCMC製剤の用量放出は、エアロへラーを用いてMSLIに送った。
【0118】
MSLIに製剤を送った後、試料捕集を以下の通り行った。
(a)装置をアダプターから取り外してカプセルを取り出してペトリ皿に入れ、水20mlを添加した。
(b)アダプターをMSLIのネックから取り外し、ペトリ皿に入れ、水10mlを添加した。
(c)ネックをMSLIから取り外し、水20mlでペトリ皿に洗い出した。
(d)第1〜4段をフィルターステージから外し、第1段の開口部を水20mlで洗浄した。これを攪拌してすべての粉末を溶かした。
(e)MSLIからフィルターを取り外してペトリ皿に入れ、水10mlを添加した。
(f)各段から分量5mlを取り出し、HPLCによってアッセイし、硫酸サルブタモール濃度を測定した。Bio Radタンパク質微量検定法を用い、PCMCタンパク質濃度を測定した。
【0119】
(硫酸サルブタモール製剤を用いる初期研究)
ディスクへラー(表7および8)およびアエロへラー(吸入器)(表9および10)からの硫酸サルブタモール放出の結果を以下に示す。
【表8】
【0120】
用量のうち回収された総薬物量は、98%である
【表9】
【表10】
【表11】
【0121】
ベントリンディスクへラーは、MSLIにおいてほぼ26%の細粒分画(FPF)を提供した。ベントリンディスクへラーからの用量の約70%は、インパクターに送られた。Inhalator(Atrovent)は、MSLIにおいて約28%の細粒分画(FPF)を提供した。
【0122】
これらの値は、このような製剤および装置について文献中に報告されている値と一致し、MSLIが正確に較正され作動したことを示している。
【0123】
(MSLIにおけるPCMC用量放出)
(キモトリプシン製剤)
キモトリプシンPCMCは、以下の技法を用いて製造した。
キモトリプシンを飽和アミノ酸溶液に溶かし、濃度10mg/mlの水溶液を得た。この水溶液を、予め適切なアミノ酸(例えば、L−グリシン、L−アラニン、D,L−バリン、DL−セリン、L−ロイシンおよびDL−イソロイシン)で飽和され、水溶液の容量の15倍に相当する容量の2−プロパノール中で沈殿させた。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0124】
これらの結果は、25℃における水溶解度が20mg/ml〜80mg/mlの範囲にある結晶コア材料を用い、より高い細粒分画が得られる傾向にあることを示している。ロイシンは、はるかに低い細粒分画を示すが、比較的高い放出用量を生じる。高い放出用量は、ロイシンおよび他の好ましいアミノ酸の自由流動性の指標である。
【0125】
(インスリン製剤)
次いで、キモトリプシンPCMCと類似した方法でインスリンPCMCを製造した。
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0126】
これらの結果も、25℃における水溶解度が20mg/ml〜80mg/mlの範囲にある結晶コア材料を用い、高い細粒分画および自由流動性粉末が得られる傾向にあることを示している。グルタミン酸ナトリウムは、予想されたよりも高い細粒分画を示すが、これは、粒子上へのタンパク質の不十分なコーティングが起きて、別のタンパク質粒子の形成を生じたものと考えられる。このことは、凝集塊形成に起因するこの製剤についての不十分な放出用量によって立証される。
【0127】
(アルブミン製剤)
アルブミン75mgを、L−グルタミンの飽和溶液15mlに溶かし、溶解容器中の2−プロパノール150ml中にシリンジポンプによって500rpmで分注した。
【表25】
【0128】
全体的に、これらの結果は、コア材料として極めて溶解しやすい賦形剤(例えば、グリシン、アラニン、アルギニン)の濃縮溶液を用いると、凝集が原因で医薬製剤、特に経肺用薬物送達に適していない、生物活性分子でコーティングされた粒子につながるというマスターサイザー実験からの示唆を裏付けている。一方、溶解し難いアミノ酸(例えば、ヒスチジン、グルタミンおよびバリン)で製造された粒子は、自由流動性粉末を生じることが分かる。それらを用い、経肺用薬物送達に適した製剤を提供することができる。さらに、製造プロセスの改良を用い、細粒分画がさらに高い粒子を提供できることが予想される。
【実施例7】
【0129】
(制御放出実験)
ポリ乳酸(PLA)でコーティングされたアルブミン/L−グルタミンPCMCを制御放出実験で使用した。
以下の方法を行い、アルブミン/L−グルタミンPCMCをPLAでコーティングした。アルブミン/L−グルタミンPCMCは、アルブミン31mgを50%飽和L−グルタミン溶液6.2mlに溶かして調製した。次いで、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール40ml中で水溶液を沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。アルブミン/L−グルタミンPCMCを以下の通りコーティングした。
【0130】
実験A:アルブミン/L−グルタミンPCMC 20mgをアセトン/PLA溶液(50mg/ml)2mlに懸濁し、続いてアセトンを蒸発させた。得られた製剤は極めて高粘度のPLA溶液を形成し、完全に乾燥すると、極めて粘着性のある脆性沈殿を形成した。
実験B:アルブミン/L−グルタミンPCMC 20mgをアセトン/PLA溶液(50mg/ml)2mlに懸濁し、激しい撹拌下、2−プロパノール20ml中で沈殿させた。得られる製剤は、大きな不溶性ペレットを形成した。
実験C:アルブミン/L−グルタミンPCMC 10mgを2−プロパノール10mlに懸濁し、続いてアセトン/PLA溶液(50mg/ml)0.4mlを激しい撹拌下で添加した。
【0131】
タンパク質放出試験は、乾燥したコーティングされたPCMCについて以下の通り行った。
【0132】
コーティングされたPCMCをH2O 15mlに添加して攪拌した。規定された時間間隔で水溶液の分量0.8mlをBio Radタンパク質微量検定法0.2mlに添加し、595nmでUVによってアッセイし、放出されたタンパク質の量を測定した。コーティングされていないPCMC対照からのタンパク質放出も測定した。この試験の結果を以下の表25に示す。
【表26】
【0133】
表25から、1分以内に水溶液中に放出されたコーティングされていないPCMCに比べ、PLAコーティングによって持続放出プロフィールが得られたことは明らかである。コーティングを変化させることによって、タンパク質の放出を調整することも可能である。したがって、PCMCからのタンパク質の放出を特定の使用のためにカスタマイズすることが可能である。
【実施例8】
【0134】
(動的蒸気吸着(Dynamic Vapour Sorption)(DVS))
制御された加湿環境下での、本発明の共沈プロセスによって製造された生物活性分子でコーティングされた粒子による、および単独で沈殿させたコア材料の水の取り込みは、Dynamic Vapour Sorption1000(Surface Measurement Systems)を用い、動的蒸気吸着(DVS)によって行った。
【0135】
実験設定は以下の通りであった。
DVSは、相対湿度(RH)0%の初期乾燥ステージが含まれる2回のフルサイクル実験のSpecial Automatic Operation(SAO)プロトコルを用いた。これに、各ステージにおけるRHが、90%RHまで10%ずつ漸増し、95%RHへ最後に急上昇する吸着ステージを続けた。この後に、0%RHに至る同一の脱着サイクルを続けた。このサイクルを繰り返した。以下の基準、すなわち、質量増加の変化率、すなわちdm/dtが0.002まで降下するか、あるいは最大ステージ時間が2000分となるように、DVSステージ変化を制御した。
【0136】
試料の導入に先立ち、天秤の風袋を計り、安定なベースラインが観察されるまで機器を平衡化した。次いで、粒子を装填して初期重量を記録し、続いてSAOのスイッチを入れた。実験は、SAOの終了まで実行した。
【0137】
図10〜14はそれぞれ、L−グルタミン、L−グリシン、L−グリシン/インスリンPCMC、D,L−バリン/インスリンPCMC、およびD,L−バリンのDVS図である。
【0138】
図10〜14は、コア共沈剤が、80%までの相対湿度において極めて低い吸湿性を示すことを示している。80%RHを超えると、L−グリシン(図11)のように溶解しやすい共沈剤は、かなりの量の水を取り込み始める。コア材料表面上のタンパク質のコーティングは、コア材料単独よりも多くの水を取り込む製剤を生じることが分かる。このことは、結晶の外側にタンパク質がコーティングされているという理由から予想される。重要なことには、試料は通常、全サイクルを通過した後で蒸気吸着等温線に対して示す変化は最小限であり、すなわち、第2の吸着サイクルは一般に、第1のサイクルと極めて類似している。当業者には当然のことながら、これは、粒子が、ガラスのように水蒸気による結晶転移に至る有意な変化を受けないことを示している。したがって、粒子は、高湿度における保存に対して安定であることが予想される。
【0139】
別の実験では、初期乾燥相後に0%から80%まで相対湿度を上昇させ、同一の脱着ステージが続く単一サイクルSAO(SAO2)を用いた。これを図15に示す。試料は、上述の手順(MSLIの項)に従って捕集しMSLIを行った。
【0140】
アルブミン75mgを、L−グルタミンの飽和溶液15mlに溶かし、溶解容器中の2−プロパノール150ml中にシリンジポンプを用いて500rpmで分注した。SAO2を用いるDVSにおける加湿前後の乾燥粉末製剤10mgについてMSLIを行った。
【0141】
表26は、DVSにおけるインキュベーション前を示している
【表27】
【0142】
表27は、DVSにおけるインキュベーション後を示している
【表28】
【0143】
表26および27に示された結果は、粒子の自由流動性、細粒分画および凝集度が、DVS中の80%RHにおけるインキュベーションによって実質的に影響を受けないことを示している。このことは、送達用具では湿った雰囲気への暴露が起きる可能性があるため、医薬製剤、特に経肺製剤の製造にとって重要な利益がある。
【0144】
さらに、空気力学的特性の保持と合致して、高湿度に対して平衡化された生物活性分子でコーティングされた微結晶のSEM画像は、粒子が、乾燥条件下で保存された粒子と実質的に同じ形状およびサイズを維持することを示している。
【実施例9】
【0145】
(フロー式沈殿装置におけるPCMCの製造)
図16は、全体として10で表される連続流型沈殿機器を示している。フロー式沈殿機器10は、溶媒A12(例えば、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液)および溶媒B14(例えば、共沈剤飽和溶媒相)の供給源を含む。溶媒12、14は、ポンプ(図示せず)により、生体適合性チューブ16に沿って混合装置18まで送られる。混合装置18に入る溶媒12、14および出口ならびに放出パイプ20を示す混合装置18の断面も示す。懸濁液捕集容器22を用い、形成されたPCMCを捕集する。
【0146】
一方のポンプは、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を送り、もう一方のポンプは、共沈剤で飽和された溶媒相を送る。粒子コーティング材料などの第3の成分が必要な場合には、さらにポンプを使用することができる。
【0147】
ポンプは、様々に異なった種類であってよいが、所定の流速で溶液を正確に送り、用いられる生物活性分子と適合していなければならない。好都合には、一連の流速にわたって水溶液および水混和性溶媒を送るために最適化されていることから、HPLCポンプを使用することができる。通常、水溶液は、0.1ml/minから20ml/minの流速で送られる。水溶液用ポンプヘッドおよびラインは、生物活性分子が付着しないような材料で製作しなければならない。一般的に、溶媒は、水性よりも4〜100倍速く送られるため、より強力なポンプが必要なことがある。通常、溶媒は、2ml/minから200ml/minで送られる。
【0148】
混合装置18は、沈殿がほぼ即時に生じ始めるように、連続水性流を連続水混和性溶媒流と迅速かつ密に混合するための方法を提供する。図16における略図は、例示目的に過ぎず、様々に異なった構成を用いることができるであろう。
【0149】
混合装置18は、2つの流れの迅速な混合を達成する任意の装置でよい。すなわち、例えば、入ってくる液体のフローパターンを形成することによって動作する静的装置か、あるいは2つの溶媒流れを一緒に活発にかき混ぜる動的装置がある。動的装置であることが好ましい。2つの流れのかき混ぜは、撹拌、超音波処理、振盪または同種のものなどの様々な手段の使用によって達成することができる。撹拌の方法には、パドル撹拌機、スクリューおよび磁気撹拌機が含まれる。磁気撹拌を使用する場合には、例えば、単純な棒またはマルタ十字架などの異なる輪郭を持つ様々な撹拌子を使用することができる。混合装置の内部を裏打ちする材料は、その上に生物活性分子または粒子が著しく結合しないように選択することが好ましい。適当な材料には、316ステンレス鋼、チタン、シリコーンおよびテフロン(登録商標)が含まれる。
【0150】
必要な製造規模に応じて、混合装置は、様々なサイズおよび構成で製造することができる。必要な混合室のサイズは、2つの溶媒流に関する流速の関数である。水性が約0.025〜2ml/minで溶媒が2.5〜20ml/minの流速の場合、0.2mlなどの小さな混合室を使用するのが好都合である。
【0151】
(実験プロトコル)
(連続流型共沈殿装置)
連続共沈システムは、2台のHPLCポンプおよび再設計した動的溶媒混合室を用いて作り上げた。使用したポンプは、0.01〜9.99ml/minの可変流速が可能なGilson303HPLCポンプとした。従来はGilson811 C動的混合器であった再設計した混合室を改変し、急速混合および共沈剤の結晶化を可能にした。設計の目的は、生成物結晶の急速放出が可能な内部滞留容量(dwell volume)の小さなフローセルを作製することであった。
【0152】
Gilson 811 C混合室から内部静的混合器/フィルターエレメントを取り出し、PTFEから機械加工された特注の挿入物と取り替えた。この挿入物は、かなり少ない内部滞留容量を提供し、内部乱流を増やすように設計した。乱流の増加は、結晶サイズを縮小し、結晶が固まって凝集塊を形成するのを最小限に抑えることが期待される。また、内部動的混合器を改変することによって、内部乱流をさらに制御した。元々のエレメントを、マルタ十字架のような形をした代わりの磁気撹拌子と交換し、次いでそれを、0〜1500rpmの速度に達することを可能にした変速MINI MR標準磁気撹拌機モジュールに連結させた。
【0153】
放出管は、約0.5mmの内部寸法を有し、懸濁液を連続的に捕集して沈降させる密閉したガラスジャーに連結した。
【0154】
(薬理学的に有用な材料の連続流微結晶沈殿)
対象となる材料の飽和溶液は、必要に応じて若干の水混和性溶媒を含有していてもよい主に水溶液で調製した。同じ材料の飽和溶液を、主に水混和性溶媒または溶媒の混合物で調製した。主に水溶液を、一方のポンプによって動的混合器に送り、主に溶媒溶液を別のポンプによって送る。2台のポンプの流速を調整し、沈殿が生じるのに最も適した条件を得ることができる。一般的に、一方のポンプの流速は、混合室内で沈殿が生じ始める溶媒条件の変化が十分に迅速であるように、他方のポンプの少なくとも4倍を超えるものとする。言い換えれば、核生成は、微結晶(すなわちPCMC)が形成するためには急速である必要がある。
【0155】
(実施例:D,L−バリン微結晶)
基本手順は、2種の選択された溶媒をD,L−バリンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、2種の溶媒は、水およびイソプロパノールである。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給され、D,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1は、Fluka Chemikより供給された。両溶液は、過剰のD,L−バリンを一定量の溶媒中に入れることによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0156】
溶液調製後、ポンプAにタンパク質/D,L−バリン水溶液を入れ、ポンプBにD,L−バリン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、共沈を開始した。
【0157】
重力濾過および攪拌によって微結晶(すなわち、PCMC)を単離すると、自由流動性の乾燥粉末が得られた。結晶のSEM画像は、狭いサイズ分散および一貫した板状形態を示す。
【0158】
(L−グルタミン微結晶)
基本手順は、2種の選択された溶媒をL−グルタミンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、2種の溶媒は、水およびイソプロパノールである。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給され、D,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1は、Fluka Chemikより供給された。両溶液は、過剰のL−グルタミンを一定量の溶媒中に入れることによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0159】
溶液調製後、ポンプAにL−グルタミン水溶液を入れ、ポンプBにイソプロパノールL−グルタミン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、連続流共沈プロセスを開始させた。
【0160】
重力濾過によって微結晶を単離すると、ぎっしりと詰まった乾燥粉末が得られた。結晶のSEM画像は、狭いサイズ分散および一貫した細長い板状形態を示す。
【0161】
また、同様の手順を用い、飽和溶液からグリシンを沈殿させた。
【0162】
(生物活性分子微結晶共沈(すなわち、PCMCの形成))
以下に典型的な共沈実験を述べるが、その原理は、タンパク質でコーティングされた微結晶の前のミリグラムバッチ調製から得られた。
【0163】
試験プラットフォームとして、Europa Bioproducts Ltd.より供給されたカンジダシクリンドラセア(Candida cyclindracea)(ルゴサ(rugosa))製品番号EU122C、ロット番号LAY Y53−002から単離されたタンパク質Europaエステラーゼ1(Cc/F5)を、Fluka Chemikaより供給されたD,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1上に沈殿させた。次いで、共沈した生成物を濾過によって単離するとすぐ、走査型電子顕微鏡および酵素アッセイによって分析した。
【0164】
基本手順は、2種の溶媒溶液をD,L−バリンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、これら2種の溶液は、水およびイソプロパノールであった。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給された。両溶液は、過剰のD,L−バリンを一定量の溶媒中に装填することによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0165】
次いで、濾過した飽和水溶液に、緩衝液中で作製した所定量のエステラーゼタンパク質を添加した。
【0166】
溶液調製後、ポンプAにタンパク質/D,L−バリン水溶液を入れた。ポンプBにD,L−バリン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、共沈させた。
【0167】
共沈した結晶生成物(すなわち、PCMC)をフラスコ中に捕集し、一夜沈降させた。沈降後、上清溶液の90%をデカントして除いた。フラスコを新鮮なイソプロパノールで詰め替え、過剰のD,L−バリンの生成物を洗浄した。洗浄後、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターを用いて生成物を再度濾過した。
【0168】
(分析手順)
共沈した結晶の単離後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて結晶の特徴付けを行った。両技法は、製造された結晶のサイズおよび形状の測定を可能にした。
【0169】
共沈後のタンパク質の活性を評価することは、酵素アッセイによって行った。エステラーゼタンパク質酵素が、酪酸p−ニトロフェニルのブタノールおよびp−ニトロフェノールへの分解を触媒する特異的アッセイを用いた。
【0170】
Europaにより供給された純粋なエステラーゼとD,L−バリン上に共沈されたエステラーゼの間の並行試験から、実質的な量の活性が保持されていたことが立証された。
【0171】
沈殿した微結晶から溶媒を除去することができる。上記の連続流システムまたは前述のバッチプロセスによって製造された懸濁液を重力下で沈降させ、過剰の溶媒をデカントして約5〜20重量%の最終懸濁液を得ることができる。さらに、これらを、濾過、遠心分離または流動床などの標準的分離技法によってさらに濃縮し、かつ/または乾燥することができる。
【0172】
ごく少量の残留溶媒、低い嵩密度の医薬製剤および薬学的に有用な材料については、超臨界CO2を用いる臨界点乾燥によって、上記懸濁液から溶媒を除去することができる。この技法は、粒子から残留する低レベルの溶媒を除去するのに有用であることが知られている。我々は、驚いたことに、他の単離技法によって得られるよりも、嵩密度がかなり低い粉末および医薬製剤につながるという利点も有していることを発見した。低い嵩密度の製剤は、生物活性分子の肺送達に特に有用である。臨界点乾燥は、当技術分野において知られている多くの方法で行うことができる。
【0173】
(実施例)
イソプロパノール中のD,L−バリン結晶の2.5%w/v懸濁液(上記のように調製した)25mlを高圧室中に装填し、すべてのイソプロパノールが除去されるまで超臨界流体CO2を懸濁液に通過させた。圧力をゆっくりと解放し、低残留溶媒、低い嵩密度の粉末を密封した容器に移した。超臨界流体乾燥プロセスは、狭いサイズ分散に影響しない。
【実施例10】
【0174】
(DNAでコーティングされた微結晶)
(試験したDNAのタイプ)
・合成オリゴヌクレオチドDQA−HEX(Dept of Chemistry、Strathclyde University、UK)
5’HEX(T*C)6GTG CTG CAG GTG TAA ACT TGT ACC AG
HEX=2,5’,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−6−カルボキシフルオレセイン
T*=5−(3−アミノプロピニル)−2’−デオキシウリジン
医療用途:免疫応答に関係しているヒト白血球抗原であるクラスII主要組織適合抗原をコードするHLA−DQ領域中の第6染色体を検討するために一般的に使用される対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(D.Graham、B.J.Mallinder、D.Whitcombe、N.D.Watson、およびW.E Smith.Anal.Chem.2002、74、1069〜1074)。
【0175】
(人工肺におけるDNAでコーティングされた結晶の分布(MSLI))
オリゴヌクレオチドでコーティングされた結晶を調製し、経肺投与に適している粒子を形成することを明らかにした。
実験は、純粋な蛍光標識したオリゴヌクレオチドDQA−Hexおよびそれとニシンの精子から得られる粗製のオリゴヌクレオチド調製物との混合物について行った。混合実験は、DQA−Hexの供給が限られてもオリゴヌクレオチドの装填量を変化させることを可能にした。
【0176】
(方法)
1.OCMCの調製
試料1:DQA−HEXおよび粗製オリゴヌクレオチドの混合物
粗製オリゴヌクレオチド4.6mg
ニシンの精子由来のDNA(Sigma D−3159、Lot 51K1281は、50bp未満の「粗製オリゴ」と名付けられた「粗製オリゴヌクレオチド」に分解した)
飽和D,L−バリン溶液300μlを添加し、よく混合し1分間煮沸し、次いで氷の上に置く。
DQA−Hex100μl(=26.3μg)を添加し、1分間煮沸し、添加の前に氷の上に置く。
この溶液を、室温において500rpmで磁気撹拌機(Heidolph MR3000)を用いて混合しながら、D,L−バリンで飽和された2−PrOH 6ml中に滴加し(Gilsonピペッター、イエローチップ)、約30分間沈降させ、次いで濾過し(Durapore薄膜フィルター、HVLP04700型)、ガラスバイアル中に結晶を移して空気乾燥させる。
【0177】
試料2:DQA−HEXのみ
添加の前に1分間煮沸し(次いで、氷の上に置いた)DQA−Hex100μl(=26.3μg)を、飽和D,L−バリン溶液300μlに添加し、よく混合する。
上記のような沈殿。
【0178】
2.人工肺における粉末の分布
粉末15.41mg(試料1)または粉末13.52mg(試料2)を装填したカプセル。
【0179】
3.人工肺において捕集された分画中のオリゴヌクレオチドの濃度測定
(a)UV260nm−オリゴヌクレオチドの総量
Perkin Elmer−Lambda 3−UV/VIS Spectrometer、粗製オリゴヌクレオチドを用いる較正標準品。
(b)DQA−HEX中の蛍光マーカーHEXの蛍光(556/535nm)。
Perkin Elmer−LS45 Luminiscence Spectrometer、DQA−HEXを用いる較正標準品。
【0180】
(結果)
図17は、人工肺における微結晶の分布を示している。細粒分画(FPF)は、DQA−HEXと粗製オリゴの混合物でコーティングされた微結晶では29.9%であり、DQA−HEXのみでコーティングされた微結晶では24.4%であった。この結果は、オリゴヌクレオチド濃度を測定するために2種の異なる技法を用いて同様の結果が得られたことから、MSLIプロトコルが頑健性であることを示している。同様に、2つのタイプのオリゴヌクレオチドは密に混合され、粒子上のコーティングとして均一に分布されていると推測することができる。また、高い用量放出からは、粒子が自由流動性であること、および高いFPFからは、粒子が経肺製剤を調製するのに有用であることが見て分かる。
【0181】
PCRは、DQA−HEXでコーティングされた微結晶を水性に再溶解して得られるDQA−HEXをプライマーとして用いて行った。正しい遺伝子産物を増幅し、PCR産物の配列決定によって、DQA−プライマーの配列が変化していないことが分かった。この結果は、微結晶上にコーティングされたDNAが生物活性を保持し、検出可能な分解生成物が観察されないことを示している。このことは、医薬製剤の製造にとって有利である。
【実施例11】
【0182】
単層などのコーティングは極めて薄いことがあるため、生物活性分子が粒子の表面上にコーティングされていることを確認することが困難であることが多い。コーティングが形成されたかどうかをチェックする一つの方法は、結晶コア材料の飽和溶液に粒子を再溶解することである。生物活性分子がマトリックスに捕捉されていれば再溶解しないはずであるが、コーティングであれば、再溶解して、コーティングされていない結晶を残すはずである。この実施例は、オリゴヌクレオチドが結晶の表面上にコーティングされていることを示している。
【0183】
(再溶解実験)
1.OCMCの製造:粗製オリゴヌクレオチド2mgを、TRIS(10mM、pH=7.8)50μlおよびD,L−バリン溶液の飽和水溶液150μlに溶かした。この溶液を、磁気撹拌機で撹拌しながら、Gilsonピペット(イエローチップ、0〜200μl)を用いて、D,L−バリンで飽和された2−PrOH 3mlに添加した。撹拌せずに、少なくともさらに30分間、バイアルを放置した。
2.OCMC懸濁液の分量(160〜800μl)を、Eppendorfバイアルに移し、9000rpmで回転させた(沈降によって分離したA7/B7/C7以外)。上清を注意深く取り除き、残った結晶を空気乾燥した。
3.既知量の飽和または飽和に近いD,L−バリンの水溶液への結晶の再溶解。
4.再溶解後の水相におけるオリゴヌクレオチド濃度の測定。
(オリゴヌクレオチド標準品:10μg/ml:OD260nm=0.226またはOD260nm=1:44.25μg/ml;H2O(あまり良く溶けない:約2mg/ml)あるいは飽和D,L−バリン溶液に溶かした。
【0184】
表28は、条件および結果を要約している。結晶を完全に溶かした試料1(A1/B1/C1)および2(A2/B2/C2)から、我々は、84±2%という最高回収率を得た。試料番号3、4、6、7(D,L−バリン結晶を溶かしていない)について我々は、80±4%という平均回収率を見出している。このことから、我々は、オリゴヌクレオチドが飽和D,L−バリン溶液に完全に溶けたと結論付けることができる。このことは、オリゴヌクレオチドがマトリックス中でなく、結晶の表面上にあることを強く示している。同じことはPCMCにあてはまるであろう。
表28は、再溶解実験および条件を要約している。
【表29】
【実施例12】
【0185】
表29は、共沈プロセス中の酸化を防ぐための添加剤としてシステイン(Cys)およびN−アセチルシステイン(NA Cys)を使用したα1−アンチトリプシンでコーティングされたα−乳糖微結晶を形成する一連の条件を示している。
【0186】
プロパノール中への沈殿によるα1−アンチトリプシンでコーティングされたα−乳糖微結晶の調製は一般的に、生物活性の完全な喪失につながる。結果を、以下の表29に示す。
【表30】
【0187】
表29は、システインおよびN−アセチルシステインが、抗酸化剤なしに調製された微結晶よりも活性が高いα−アンチトリプシンでコーティングされた微結晶を作り出すことを示している。
【0188】
実験手順は、以下に定義する通りである。
(沈殿および溶解中のシステイン添加)
α1−アンチトリプシン16mgを、システイン10mg/mlを含有するTRIS緩衝液(20mM、pH8)0.4mlに溶かし、システイン10mg/mlを含有する乳糖で飽和されたTRIS緩衝液(20mM、pH8)1.2mlに添加した。この溶液0.4mlを、様々な量の水を含有するプロパノール6mlに滴加した。最終生成物中の活性およびタンパク質濃度は、システイン10mg/mlを含有するTRIS緩衝液0.8mlに結晶を溶かした後に測定した。
【0189】
(沈殿および溶解中のN−アセチルシステイン添加)
α1−アンチトリプシン10mgを、N−アセチルシステイン0.22mg/mlを含有する乳糖で飽和されたTRIS緩衝液(20mM、pH8)1mlに溶かし、この溶液0.4mlを、N−アセチルシステイン0.22mg/mlあるいは10mg/mlを含有するプロパン−2−オール6mlに滴加した。活性およびタンパク質濃度測定については、沈殿混合物と同じ濃度のN−アセチルシステインを含有するTRIS緩衝液0.4mlに結晶を溶かした。
これらは、生物活性を改善しかつ維持するために、添加剤または抗酸化剤などの賦形剤を共沈物に有利に添加できることを示している。
【実施例13】
【0190】
(ワクチンPCMC)
PCMCは、コア結晶材料としてのD,L−バリンあるいはL−グルタミンと共に、卵白アルブミン、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドを用いて作製した。
【0191】
(卵白アルブミン、ジフテリアトキソイド(DT)および破傷風トキソイド(TT)でコーティングされた微結晶)
すべての実験において、水溶液の半分の容量は、飽和アミノ酸溶液で構成した。卵白アルブミンは、粉末として供給された。コア材料上の理論的装填量が5、10、20および40%となるように、適切な量の粉末を量り分けた。これに、アミノ酸の50%飽和溶液が得られる量の水を添加するか、あるいは2−メチル−2,4−ペンタンジオールを水相に組み入れる場合には、アミノ酸の濃度を一定に保つため、添加されるジオールの容量で等しい容量の水を置き換えた。タンパク質と担体の共沈を、水溶液の10倍を超える容量の2−プロパノールまたは2−メチル−2,4−ペンタンジオール中で行い、ジオールを添加しない水溶液については9.1%の、水相にジオール20%を添加した場合は6.5%の沈殿溶媒中のH2Oの最終百分率を得た。
【0192】
水溶液は、磁気撹拌下で、小さなバイアルに入っている有機溶媒にシリンジポンプで送った。
【0193】
図18は、10%装填量のDT PCMCの画像である。DT PCMCは、L−グルタミンの結晶コアを有し、プロパン−2−オール中で沈殿させた。
【0194】
(混合ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)および卵白アルブミンでコーティングされた微結晶)
混合DT/TT PCMCについては、適切な容量のDTストック溶液(濃度=19.5mg/ml)およびTTストック溶液(濃度=27.5mg/ml)を、水溶液に添加して沈殿させ、必要な理論的装填量を得た。卵白アルブミン/TT PCMCについては、適切な量の卵白アルブミンを量り分け、これに必要な容量のTTを添加して必要な理論的装填量を得た。次いで、上述のように結晶を調製した。
【表31】
【0195】
共沈した卵白アルブミンは、最初の水性調製物中の卵白アルブミンに比べ、構造および凝集レベルの変化を示さなかった。
【表32】
【表33】
【表34】
【0196】
(マウス試験用に作製されたジフテリアトキソイド(DT)製剤)
DTの理論的装填量が5%であるワクチンでコーティングされた微結晶を製造した。L−グルタミンが結晶コア材料を構成し、水混和性有機溶媒として2−プロパノールを使用した。
DTは、14.5mg/mlの濃度で水溶液として供給された。DT溶液276μlを、飽和L−グルタミン溶液2313μlに添加した。これに、H2O 2037μlを添加し、混合物4.5mlを、磁気撹拌下、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール45ml中で共沈させた。DT−グルタミン結晶約80mgが回収され、マウスにおけるワクチンの試用に50mgを用いた。DT−グルタミン結晶は4℃で保存した。
【0197】
(投与前の保存条件の変化)
水性緩衝液中のDTの比較試料および乾燥DT−グルタミン微結晶の試料を以下の通り保存した。
4℃で2週間のインキュベーション、
室温で2週間のインキュベーション、
37℃で2週間のインキュベーション、および
45℃で2日間のインキュベーション。
【0198】
(DTを抗原として使用するin vivoの免疫学的実験)
マウスへの投与に先立って、インキュベートした微結晶をリン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁した。結晶1350マイクログラム(DT 50マイクログラム)をPBS 500マイクロリットルに懸濁した。1日目に、懸濁液50マイクロリットル(すなわち、DT5マイクログラム)を各マウスの左後肢に筋肉内投与した。
【0199】
21日目に、マウスから採血した。29日目に、前と同じ量のDTでマウスにブースター投与を行った。42日目に、マウスからもう一度採血した。血清は、ELISAアッセイを用いて分析した。
【0200】
一次および二次免疫応答は、DT−グルタミン微結晶の試料が、どのような保存プロトコルであっても抗体を生じさせる(体液性免疫)ことを示した。このことは、ワクチンでコーティングされた微結晶用の製造プロセスが、DT生物活性の良好な保持につながり、復元および筋肉内投与後に生物がDTを自由に利用可能であることを証明している。
【0201】
また、水性緩衝液中に保存したすべてのDT試料は、生物活性を示さなかった45℃で保存した試料を除き、一次および二次免疫応答を与えた。
【0202】
45℃で保存したDT−グルタミン微結晶についての一次および二次免疫応答の存在は、微結晶へのDTの製剤化が、溶液中に比べて著しく強化された高温における保存安定性を付与したことを示している。
【0203】
このような強化された安定性は、不良環境、緊急事態における、および発展途上国におけるワクチンの流通および投与にとって重要な利点である。
【0204】
したがって、ワクチンコーティングのあるPCMCを形成することは、ワクチンを保存および輸送しやすくする特別の安定性をワクチンに付与すると結論付けることができる。これは気温の高い諸国で有用となり得る。
【実施例14】
【0205】
(インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶上のインスリン生物活性のex−vivo測定)
(パート1)
インスリン生物活性アッセイは、7.4のpHを得るために加熱(37℃)および通気(95%O2/5%CO2)した生理的食塩溶液(PSS)において試験した12週齢の雄性ウィスターラットから摘出した抵抗動脈(寸法200μm未満)で行った。薬物の管腔適用を可能にする圧力ミオグラフは、感度の初期手段を提供した。圧力系において、反対のガラスカニューレ(外のり寸法80μm)上に載置した動脈を、15分間にわたって5mmHg未満から40mmHgまで徐々に加圧し、アッセイを開始する前にさらに15分間保った。応答は、専用のビデオ解析ソフトウエア(MyoView)を用いて測定した。圧力ミオグラフは、極めて低い濃度(1×10−10M)におけるインスリンの血管拡張作用を検出することができる。
【表35】
【0206】
(結果)
表34は、ノルアドレナリン前収縮(100=100%収縮)に対するインスリン媒介性弛緩を3例の平均(SD)で示しており、これらの値は、微結晶と対照との間に有意差がないことを示している(p>0.05)。
【表36】
【0207】
図19に示されるインスリンPCMCによって得られる弛緩の度合いは、USPインスリン製剤と同程度であり、PCMCの製造または室温保存中にインスリンが変性しないことを示している。
【0208】
(パート2)
(ワイヤーミオグラフ試験)
次いで、続く試験に向けてより高い処理能力を得るため、ワイヤーミオグラフを使用した(P110およびP660、Danish MyoTech、Aarhus)。ワイヤー系において、2本の40μmステンレス鋼線材の間に動脈を載置し、一方をマイクロメーターに連結し、他方を力変換器に連結し、既知の標準寸法に設定し、最適な薬理学的反応を作り出した。力産生は、専用のソフトウエア(MyoDaq)によって捕らえた。すべてのバイオアッセイは、123mM KClの2つの洗浄液から始め、動脈における収縮機能を刺激し、続いて血管収縮薬アゴニストのトロンボキサンミメティック[U44169]への暴露によって前収縮させた。次いで、動脈を、浴内に直接(ワイヤー)か、あるいは一定圧力で徐々に注入することによって、ガラスの取り付けカニューレの先端に挿入された胎児用マイクロカニューレを通して管腔内に直接(圧力)漸増濃度のインスリンに暴露させた。
【0209】
(試料調製)
使用したインスリンは、USPウシ膵臓インスリン(Sigma I8405)であった。混合は、常に磁気撹拌によって行った。
結晶は、Durapore薄膜フィルター(0.4ミクロン)で濾過することによって単離し、次いで、換気フード中で空気乾燥した。
タンパク質装填量は、結晶の収率から決定される最大値に基づいている。
【表37】
【0210】
(結果)
図19は、ミオグラフ結果の要約を示している。
トロンボキサンミメティック[U44169]による前収縮後、インスリン媒介性血管緊張低下プロフィールは、インスリンに特有であり、主に一酸化窒素シンターゼの活性化と、続く内皮一酸化窒素の放出を介してその効果を発揮する。
【0211】
インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶によって得られるインスリン媒介性血管緊張低下は、USPインスリン製剤と本質的に同じであった。D,L−バリンそのものは、生物活性を示さなかった。これらの結果は、インスリンの生物活性が、共沈プロセスによって、あるいはインスリンでコーティングされた微結晶の長期室温保存によって変化しないことを示している。このことは、インスリンが、処理または保存中に化学的に修飾されず、凝集されず、いかなる不可逆的な変性も受けなかったという確かな証拠である。分解がないことは、D,L−バリン微結晶の復元の直後に、90%を超えるインスリンが、共沈および6カ月を超える室温における粉末としての保存後に同じ形態で依然として存在することを示すHPLC分析によって裏付けられた。対照的に、共沈に使用されたものと同じ水溶液中に維持されたインスリンは、30分未満の間に著しい変化を受けた。我々は、インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶が、多段インピンジャー試験において高い細粒分画を示す自由流動性粉末であることを示したことから、生物活性分子でコーティングされた微結晶は、強化された特性を持つ医薬製剤を製造するのに極めて適していることは明らかである。
【実施例15】
【0212】
図20〜24は、本発明に従って製造されたえり抜きのPCMCのSEM画像である。
図20は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/D,L−バリンPCMCの倍率×1600におけるSEM画像である。図21は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/D,L−バリンの倍率×6400における他のSEM画像である。図20および21は、結晶がフレーク状であり、形状およびサイズが実質的に均一であること、ならびにインスリンの実質的に均一なコーティングが存在することを示している。
図22は、プロパン−2−オール中で沈殿したアルブミン/L−グルタミンPCMCのSEM画像である。この場合も、PCMCは均一であるが、針状である。
図23は、プロパン−2−オール中で沈殿した均一かつフレーク状のインスリン/L−ヒスチジンPCMCのSEM画像である。
図24は、プロパン−2−オール中で沈殿したα−アンチトリプシン/D,L−バリンPCMCのSEM画像である。PCMCは、形状およびサイズが実質的に均一であることが分かり、フレーク状である。
【実施例16】
【0213】
(硫酸トブラマイシンでコーティングされた微結晶)
この実施例において、我々は、驚いたことに、典型的な生体巨大分子よりもかなり小さい水溶性の生物活性化合物を用い、医薬製剤に適している生物活性分子でコーティングされた微結晶を製造するのにも共沈プロセスが使用できることを示す。これらの製剤は、バッチあるいは連続プロセスによって製造することができ、D,L−バリンなどの非吸湿性担体を有利に用いることができる。このプロセスを水溶性の抗生物質である硫酸トブラマイシンについて示すが、他の抗生物質および他の水溶性生物活性分子にも適用することができる。生物活性分子は、極性であり、共沈に使用するpHでイオン化する1個または複数の官能基を含むことが好ましい。このことは、水中での高い溶解度および水混和性有機溶媒中での溶解度の低下につながる傾向がある。また、化合物は、結晶化でコア材料によって形成される単位格子よりも大きな最大の寸法を有していることが好ましい。このことは、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形成を助け、結晶格子内に生物活性分子が包接される可能性を最小限に抑えるはずである。
【0214】
(実験)
(バッチプロセス)
D,L−バリン担体結晶上に様々な理論的装填量の生物活性分子を含有するバッチは、硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)3mg(4.8%w/w)、6mg(9.1%w/w)あるいは12mg(16.7%w/w)を用いることによって調製した。いずれの場合にも、秤量した硫酸トブラマイシンを、蒸留水中のD,L−バリン1ml(60mg/mlで)に溶かした。上記0.5mlを、1500rpmで混合しながら、D,L−バリンで飽和されたPr2OH 10mlへ1mlのピペットを用いて滴加した。結晶を真空中で直ちにDurapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、Pr2OH(1%H2Ov/v)10mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0215】
(連続プロセス)
(理論的装填量4.8%w/w)
硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)30mgを、蒸留水中のD,L−バリン10ml(60mg/mlで)に溶かした。水溶液5mlを、750rpmの動的混合器速度を用いて、流速が水溶液用ポンプについては0.5ml/minであり、溶媒用ポンプについては10ml/minである実施例9に記載の連続共沈システムで、D,L−バリンで飽和されたPr2OH(100ml)と混合した。理論的装填量が4.8%w/wの結晶を捕集し、真空中Durapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、プロパン−2−オール(1%H2Ov/vを含有する)50mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0216】
(理論的装填量1.6%w/w)
硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)20mgを、蒸留水中のD,L−バリン20ml(60mg/mlで)に溶かした。水溶液5mlを、750rpmの動的混合速度を用いて、流速が水溶液用ポンプについては0.5ml/minであり、溶媒用ポンプについては10ml/minである実施例9に記載の連続共沈システムで、D,L−バリンで飽和されたプロパン−2−オール(100ml)と混合した。結晶を捕集し、真空中Durapore 0.4ミクロンフィルターで濾過し、Pr2OH(1%H2Ov/v)50mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0217】
(結果)
上記で調製したトブラマイシンでコーティングされたバリン結晶は、自由流動性かつ非吸湿性であり、医薬製剤の製造に適している。バッチプロセスによって調製された粒子のSEM画像は、バリン微結晶に特有のフレーク状形態および肺送達に適当となる5ミクロン未満の平均最大直径を有していることを示している。装填量を変化させてもサイズまたは形態に明らかな違いは認められない。図26は、装填量が9.1%w/wであるバッチプロセスによって調製された試料を示している。連続プロセスによって調製された粒子も、自由流動性であり、滑らかで明確な形態である。連続混合器において使用した低い混合率および小さな羽根車は、図27に示すように、バッチプロセスにおけるよりも大きな粒子を提供する。
【0218】
(結論)
驚いたことに、活性剤が生体巨大分子ではない生物活性分子でコーティングされた微結晶を得ることができ、連続共沈プロセスによって製造することができる。
【実施例17】
【0219】
(生物活性分子でコーティングされた微結晶の形態および凝集特性を変えるための試剤)
例えば、針状形態の微結晶を、より大きく、より球状の粒子に凝集させることは、医薬製剤にとって有利なことがある。針状粒子は流動性に乏しいが、球体は、処理特性および薬物送達特性に優れた粉末を提供することができる。あるいは、微結晶針状晶の成長を変化させ、より短い棒状形態を作り出すことができれば、処理の改善も得ることができる。ここで、我々は、共沈剤よりもかなり低い濃度における無機、有機塩または緩衝塩などのある種の試剤の添加を用い、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形状および凝集特性を変えることができることを示す。復元された製剤においてpH緩衝作用または等張性などの第2の機能を有する薬学的に許容できる添加剤が特に有利である。このタイプの添加剤の使用は、最終製剤において必要とされる成分数を最小限に抑える。
【0220】
(サブチリシンCarlsberg/L−グルタミン微結晶の棒状晶および球状凝集塊)
(実験)
サブチリシンCarlsberg5mg(0.7%w/w装填量、G7)または25mg(6.4%w/w装填量、G10)を、緩衝液(50mMクエン酸ナトリウム、150 mM塩化ナトリウム、pH5.5)4mlおよび蒸留水6mlに溶かした。上記0.25mlに、蒸留水中のL−グルタミン0.75ml(24.3mg/mlにおいて)を添加した。次いで、水溶液を、1500rpmで混合しながら、L−グルタミンで飽和されたEtOH 10ml中に1mlのピペットを用いて滴加した。結晶の分量をSEMスタブに直接付け、乾燥前の形態を評価した(G7*、G10*)。直ちに、残りの結晶を、真空中Durapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、無水Pr2OH 5mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0221】
(結果)
通常、水からエタノール中への共沈によって製造されるタンパク質でコーティングされたL−グルタミン微結晶は、寸法が約5ミクロンの針状形態を示す。驚いたことに、低濃度のクエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム存在下での共沈は、針状晶の長さに著しい短縮を生じる。さらに、長さの変化は、タンパク質の濃度によって制御され、タンパク質装填量が増加するにつれて、より小さな棒状晶が製造される。図28および図30は、クエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム存在下で共沈した典型的な生物活性分子でコーティングされたL−グルタミン結晶のSEM画像を示している。6.4%w/wにおいては、棒状晶の長さは、主に3ミクロン未満であり、平均して2ミクロン未満である。このような生物活性分子でコーティングされた微結晶のエタノール懸濁液は、医薬製剤にとって有利な特性を有することがある。例えば、当技術分野において知られている吸入装置を用いる経肺経路によって懸濁液を送達できる可能性がある。さらにタンパク質装填量の増加を用い、微結晶のサイズをさらに縮小することができる。個々の結晶で構成される乾燥粉末としての棒状晶の単離は、臨界点乾燥によって行うことができる。従来の微結晶のフィルター膜上への濾過と、続いて空気乾燥を用いた場合、著しい変形が起こり、針状晶または棒状晶の球状凝集塊で構成される粒子が製造される。これらの極めて表面積の大きな球状粒子は、自由流動性粉末を有利に形成し、非吸湿性である。また、それらを、10〜20秒未満の間など、極めて迅速に水溶液に復元することができる。球状凝集塊を示すSEM画像を、図29および図31に示す。針状微結晶の球状凝集塊への変形は、球状晶が、医薬製剤における処理および使用がかなり容易であるため極めて有利である。ここで示される結果と極めて類似した結果は、治療用タンパク質を含む他のタンパク質について得ることができる。
【0222】
(結論)
共沈プロセスにおける緩衝液および塩などの薬学的に許容できる試剤の低濃度における使用は、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形態および凝集挙動に驚くほど大きく有用な違いを生じる。使用する調整剤の濃度は、最終製剤中に15%w/w未満、好ましくは10%w/w未満で存在するようにしなければならない。調整剤の濃度があまりに高い場合には、担体結晶からの相分離および第2のタイプの生物活性分子でコーティングされた結晶の形成に到ることがある。
【実施例18】
【0223】
(連続プロセスによって調製された担体微結晶およびタンパク質でコーティングされた微結晶の粉末X線回折測定)
L−グルタミン、D,L−バリンおよびグリシンの微結晶はそれぞれ、実施例9に記載の連続プロセスを用い、エタノール、イソプロパノールおよびイソプロパノール中への沈殿によって調製した。同じ材料および溶媒を用い、これも連続共沈プロセスによって、10%w/w装填量のアルブミンでコーティングされた微結晶を調製した。粉末X線回折を用い、タンパク質と共に、およびタンパク質なしに調製された乾燥粉末試料を比較した。
【0224】
(実験)
試料は、Bruker AXS D8 Advanceを用い、以下の操作パラメータでPSD−検出器によって解析した。
【表38】
【0225】
(結果)
アルブミンを含む試料と含まない試料の間で比較を行った。
【表39】
【0226】
(グルタミン)
タンパク質と共に、およびタンパク質なしにエタノール中で沈殿したグルタミンのPXRDデータは、お互いに、および既知の単結晶構造(斜方晶系 P212121、16.020、7.762、5.119−Koetzle他Acta Cryst.B 1973、29、2571を参照)と完全に一致していることが分かった。図32は、得られた典型的データを示している。12〜18°領域に観察される幅広いこぶは、非晶質材料に起因するか、あるいは実験プロセスの人為的結果である可能性がある。アルブミン試料のピークは、純粋なグルタミンのピークよりもわずかに高い角度に位置する。
【0227】
(バリン)
タンパク質を含む、および含まないPXRDパターンは本質的に一致している。2種の可能な既知の多形が存在する(単斜晶系 P21/c 5.21、22.10、5.41、β=109.2 Acta Cryst B 1969、25、296および三斜晶系 P−1 5.222、5.406、10.835、90.89、92.34、110.02 Acta Cryst C 1996、52、1759)。多形が存在することを確認することは、いくつかの要因によって複雑化される。試料の大きな好ましい配向は、3本の大きなピークを与え、パターンの残りはすべて比較的小さく、バックグラウンドから区別するのが困難である。したがって、これらのピークの位置はむしろ不正確である。三斜晶系試料は120Kで実行されている。したがって、PXRDを実行した室温とはわずかに異なる単位格子を有するはずであり、観察データとぴったり一致することは期待できないと思われる。2種の多形は、いくつかのむしろ類似したセル寸法を有し、かなり近い関係にあるため、よく似た予測ピークを与える。試料は単斜晶系多形である可能性が高いが、不確かである。
【0228】
(グリシン)
アルブミンと共沈したグリシンのPXRDは、純粋なグリシンのPXRDに比べて、余分なピークを示す。3形態のグリシンが報告されている(単斜晶系 P21/n、単斜晶系 P21および三方晶系−Acta Cryst 1972、28、1827;Acta Cryst 1960、13、35およびActa Cryst B 1980、36、115を参照)。どちらの試料にも三方晶系の証拠は存在しない。純粋なグリシンのPXRDは、P21/n多形とぴったり一致している。グリシン/Alb試料における余分なピークは、多少のP21多形の存在によって説明することができる。したがって、この試料は、かなりの量の両相が存在する2種の多形の混合物である。
【0229】
(結論)
PXRDデータは、粉末粒子のコアが、10%w/wのタンパク質との共沈後に高度に結晶性のままであることを示している。グルタミンおよびD,L−バリンの場合、タンパク質コーティングは、純粋な材料の沈殿と比較しても、コア結晶坦体の多形を変化させない。高度に結晶性のコアは、高湿度および高温に対して安定な医薬製剤を製造するのに有利である。グリシンに関しては、タンパク質は、異なる多形の部分的形成を促進するように見える。生体巨大分子との共沈によって水溶性薬物の多形が形成されるように誘導することは、例えば、多形が存在することが生物活性およびバイオアベイラビリティーに影響を及ぼすことがあるため、医薬製剤にとって有利である可能性がある。
【0230】
DSCを用いて融解温度を測定した。バリンおよびアルブミンでコーティングされたバリン微結晶試料、それぞれJV272/2/2およびJV272/2/3は、どちらも225℃を超える温度で融解することが分かった。グルタミンおよびアルブミンでコーティングされたグルタミン微結晶試料、それぞれJV272/5/2およびJV272/5/3は、どちらも160℃を超える温度で融解することが分かった。
【実施例19】
【0231】
(微結晶の溶媒懸濁液の臨界点CO2乾燥によって調製された生物活性分子でコーティングされた微結晶の乾燥粉末)
微結晶の懸濁液の濾過は、生成物の固化および圧縮につながることがある。これは可逆的であるが、別のプロセスステップを必要とする。臨界点乾燥を有利に用い、溶媒懸濁液から直接、無溶媒で低密度の生物活性分子でコーティングされた微結晶の粉末を得ることができる。これらの粉末は、非吸湿性であり、低い帯電を示すため、経肺製剤を調製するための極めて魅力的な特性を有している。臨界点CO2乾燥によって調製された粉末を用い、従来の濾過試料に比べて残留溶媒含量が極めて低く、細粒分画の増加した医薬製剤を製造することができる。超臨界CO2を使用する臨界点乾燥は、組織試料のための確立した技法である。それは、アセトン、イソプロパノールまたはエタノールなどの混和性溶媒中に予め浸漬または懸濁された試料中に、または試料を通して未臨界または超臨界CO2を送り込むものである。溶媒はCO2に溶け、その臨界点を超えて加熱し、液気界面の形成なしに排気口を通して膨張することができる流体中に浸漬された試料が残る。このことは、毛管力を最小限に抑え、粒子間凝集および圧縮を著しく低減する。臨界点乾燥が含水量の高い試料に適していないのは、水がCO2に十分可溶性でないためである。
【0232】
(実験)
サブチリシンCarlsbergを連続プロセスによって、2−プロパノール(D,L−バリンで飽和された)中にD,L−バリン(60mg/ml)と共沈させ、理論的タンパク質装填量10%および溶媒中の含水量3.9%v/vとした。懸濁液を沈降させ、過剰の溶媒をデカントし、残りの懸濁液をアセトンで順に洗浄して過剰の2−プロパノールを除去し、溶媒の含水量を0.5%v/vとした。懸濁液の1分量をDurapore 0.4ミクロンフィルター上の濾過によって乾燥し(SC/DLVal 2)、第2の試料は、臨界点乾燥によって乾燥した(SC/DLVal 3)。
【0233】
各試料50mgを、最小限の操作で別々のバイアル中に秤量し、穏やかな攪拌により落ち着かせた後、2個のバイアルの写真を撮り、図33に示す。臨界点乾燥によって調製された試料は左側であり、粉末は、右側の濾過試料よりも明らかにフワフワしタップ密度が低い。臨界点乾燥した試料は、濾過によって調製された試料に比べ、0.1g/ml未満のタップ密度を有することが好ましく、より好ましくは。低い粉末密度は、粒子間相互作用の低下の指標であり、肺への送達などの医薬用途には特に有利である。生物活性分子でコーティングされた微結晶の臨界点乾燥によって製造される乾燥粉末製剤の好ましい空気力学的特性は、それらを吸入装置内で直接使用できることを意味している。したがって、それらを大きな担体粒子と混合する必要はない。生物活性分子でコーティングされたD,L−バリン微結晶が特に好ましい。
【0234】
臨界点乾燥は、Polaron E3000を用いて行い、乾燥粉末を製造した。
【0235】
試料のSEM画像は、Jeol JSM 6400走査顕微鏡を用いて取得した。それらは、イソプロパノールからの沈殿で観察された典型的なフレーク状微結晶が、アセトン洗浄および臨界点乾燥後にも維持されていることを示した。復元した試料のタンパク質含量は、UV分光法に従い280nmで測定した。表「臨界乾燥」に示すように、10%という予想値に近い装填量が得られた。不一致は、280nmで吸収する溶媒可溶性不純物の除去または処理中のタンパク質の損失に起因する可能性がある。サブチリシンCarlsbergの活性は、UV/vis分光法を用い、酢酸ニトロフェニルの加水分解をモニターすることによって測定した。下表は、乾燥前のタンパク質の初期活性に対する割合として、処理および乾燥後にも活性が維持されていることを示している。SC/DLVal 1試料は、最初に得られるイソプロパノール懸濁液から直接単離した。活性値の測定は、二重に行った。見ても分かるように、臨界点乾燥は、直ちに濾過し乾燥した試料に比べて活性の低下を生じる。しかしながら、糖などのタンパク質乾燥で一般的に使用される典型的な安定化剤を添加することなく70%を超える活性を得ることができる。
【表40】
【実施例20】
【0236】
(ゼータ電位)
タンパク質でコーティングされた微結晶の特徴であるコア微結晶およびタンパク質コーティングは、単一の連続した自己集合プロセスによって生じる。生物活性分子の予め形成された微結晶との静電気的結合がこのプロセスの機構において重要であるか否かを評価するために、非水媒体中で微結晶の表面電位を測定することは興味深かった。荷電粒子を取り囲む液体層は、2つの部分、すなわちイオンが強力に結合している内部領域(シュテルン層)およびイオンがあまり堅固に会合していない外部(拡散)領域として存在する。拡散層内には、内部でイオンおよび粒子が安定な実体を形成する概念的境界が存在する。粒子が移動する場合(例えば、重力により)、境界内のイオンもまた移動する。これらのイオンは、境界を越えて粒子と共に移動することはない。この境界(流体力学的ずり面)における電位がゼータ電位である。ゼータ電位の符号および大きさは、粒子の表面電荷によって異なり、例えば、負のゼータ電位は、全体として負電荷の粒子を示す。レーザードップラー速度測定を用いるMalvern Zetasizerを使用し、一定pHで様々なコア材料の沈殿によって製造された微結晶のゼータ電位について符号およびおおよその大きさを測定した。測定は、希薄なアセトニトリル懸濁液として懸濁された予め調製された微結晶またはタンパク質でコーティングされた微結晶で行った。ポリスチレンラテックスを用いて機械を較正した。データを、表「ゼータ電位」に示す。タンパク質の非存在下で溶媒中に沈殿させたグリシン、グルタミンおよびバリン微結晶はすべて、負のゼータ電位を示す。静電気的結合が形成の機構にとって重要であれば、全体として正電荷の生体分子のみが、これらの負に荷電した材料上にコーティングを形成するであろうことが予想される。タンパク質上の電荷は、pHの関数である。電荷は、pI以上のpH値では負となり、pI以下のpHでは正となる。pIが4.85と報告されているタンパク質、アデノシンデアミナーゼ(ADM)を用い、pI以上のpHにおける共沈によって、上記担体材料を用いてタンパク質でコーティングされた微結晶が容易に調製されることが判明した。これらのタンパク質でコーティングされた微結晶のゼータ電位を表「ゼータ電位」に示す。負の残留値が結晶をコーティングしているアデノシンデアミナーゼと一致しているのは、共沈のpHにおいてタンパク質も負に荷電しているためである。pH7.02で調製されたアデノシンデアミナーゼでコーティングされたバリン結晶(ADM/バリン)については、負のタンパク質コーティングによってゼータ電位の明らかな増加が認められる。これらの結果は、共沈プロセスを介し、負に荷電したタンパク質を、同じ負の表面電荷を示す材料の微結晶上にコーティングできることを示している。このことは、コーティングの機構が、予め形成された微結晶への生物活性分子の静電気的結合に帰することができないことを示している。静電気的結合機構が存在しない別の指標は、核酸などのポリアニオンを用い、共沈によって微結晶を効率的にコーティングすることができるという事実によって得られる。例えば、裸のバリン結晶では負のゼータ電位が観察されるにもかかわらず、DNAでコーティングされたバリン微結晶を製造することができる。したがって、共沈は、生物活性分子でコーティングされた微結晶を得るための一般的プロセスを提供し、広範囲のpHおよび塩条件にわたって効率的に有利に行うことができる。
【表41】
【実施例21】
【0237】
(バッチ共沈装置および連続流型沈殿装置で調製された試料の生物活性の比較)
驚いたことに、連続流共沈によって調製され、復元された生物活性分子製剤は、すでに報告されているバッチプロセスによって調製された試料よりも高い生物活性を有利に示すことができることが見いだされた。ここで、その効果を酵素のブドウ糖酸化酵素および乳酸脱水素酵素について明らかにするのは、標準的酵素アッセイを用い、高い精度でそれらの生物活性を測定できるからである。フロー式共沈装置を使用する同様の改善は、治療用生体分子および他の生物活性分子についても得ることができる。連続流プロセスによって調製された製剤中の生物活性分子も、例えば高温および湿度の上昇で高い安定性を示すことができ、保存による凝集、化学的分解または変性に対して、より耐性を有する。以下の実施例において、試料は、バッチ共沈あるいは連続流沈殿法によって同一組成の出発材料を用いて調製し、それらの生物活性を比較した。
【0238】
連続流型沈殿装置システムは、実施例9と同様としたが、背圧調節を実施することによって改良した。HPLCポンプの逆止弁が適切に機能することを保証するためには、最低限100psi(約690kPa)の背圧が有利である。背圧は、ライン内のくびれとしての役割を果たす、かなり長い口径の狭い管を導入すること;Upchurchインラインチェックバルブなどの静的逆流調整器を導入すること;ポンプが受ける背圧をモニターする検圧モジュール、例えば、Gilson 302検圧モジュールを実装することを含む多くの方法によって導入することができる。検圧モジュールは、溶媒ラインおよび水性ライン上の口径の狭い管に使用することができる。通常、1%RSD未満のフロー精度が達成可能でなければならない。
【0239】
(イソプロパノール中にグリシンと共沈させたブドウ糖酸化酵素)
ブドウ糖酸化酵素(GO)、2.5mg/mlを、25℃で貧溶媒としてのイソプロパノール中にグリシンと共沈させた。バッチプロセスでは、GO/グリシン水溶液0.5mlを、750rpmで撹拌する25mmの撹拌子を用い、30mlのバイアル中、グリシン/イソプロパノール9.5ml中に滴加することによって共沈させた。連続流プロセスでは、GO/グリシン水溶液の流速は0.25ml/minであり、グリシン/イソプロパノールの流速は4.75ml/minであった。フローセルの羽根速度は750rpmであった。
【0240】
試料は、アッセイに先立って懸濁液として維持した。酵素活性は、標準的なブドウ糖酸化酵素アッセイを用いて測定し、ペルオキシダーゼ共役系によるo−ジアニシジンの酸化によって生じる460nmにおける吸光度の増加をモニターした。反応条件:o−ジアニシジン−緩衝液混合物2.5ml、18%ブドウ糖溶液300μl、0.2mg/mlペルオキシダーゼ溶液100μlおよび0.01mg/mlGO調製物100μl。
結果を、表37:ブドウ糖酸化酵素に示す。
【表42】
【0241】
(エタノール中の乳酸脱水素酵素/L−グルタミンの共沈)
ラクトバチルス属由来のD−乳酸脱水素酵素(LDH)をL−グルタミンと共沈させた。L−グルタミンの脱イオン水飽和溶液(約100ml)(約150mg/ml)は、40℃で一夜、インキュベーター中で撹拌して室温まで冷却し、0.45μmのDurapore(ミリポア)フィルターで濾過することによって調製した。この溶液のpHを塩酸でpH7.3に調整した。LDH(3.15mg)およびウシ血清アルブミン(16mg)をL−グルタミン水溶液10mlに溶かし、溶解を助けるため緩やかに回転させた。アルブミンは、タンパク質希釈剤およびLDHとの共沈物として使用した。LDH/L−グルタミン水溶液中の最終LDH濃度は、0.315mg/mlであった。バッチプロセスでは、LDH/L−グルタミン水溶液0.5mlを、25℃において750rpmで撹拌する25mmの撹拌子を用い、30mlのバイアル中、L−グルタミンで飽和されたエタノール9.5ml中に滴加することによって共沈させた。連続流型沈殿装置では、LDH/L−グルタミン水溶液の流速は0.25ml/minであり、L−グルタミン/エタノールの流速は4.75ml/minであった。フローセルの羽根速度は、25℃において750rpmであった。
【0242】
LDH活性は、0.2Mトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン緩衝液2.8ml、6.6mM NADH溶液100μlおよび30mMピルビン酸ナトリウム溶液100μl(NADHとピルビン酸ナトリウムは共に、0.2M Tris緩衝液で調製した)からなる反応混合物3ml中、25℃において測定した。LDH調製物(0.0005mg/mlを100μl)を反応混合物に加え、キュベットを3回反転させ、次いで、Beckmann Coulter DU800分光光度計で約30分間、340nmにおける吸光度増加をモニターした。PCMCの活性は、共沈から約24時間後に測定した。結果を、表38:乳酸脱水素酵素に示す。
【表43】
【0243】
(結論)
驚いたことに、これらの実施例において、連続流型沈殿装置で調製されたタンパク質試料の生物活性は、同一の出発組成物を使用しているにもかかわらず、バッチ反応器で調製された試料よりも高いことが判明した。何がその原因であるかは不明である。混合ステップ中、フロー式沈殿装置内の空気−溶媒界面がかなり相対的に低く、生物活性分子および得られるコーティングされた微結晶が混合から生じる剪断力に暴露される時間もより少ない。このことが、安定な元のまたは元に近い立体配座を保つ共沈分子の割合を最大限に高めた可能性がある。このことは、フロー式共沈装置を用いて調製された生体分子製剤の保存安定性で観察された改善と一致する。生物活性の良好な保持ならびに温度および湿度の上昇に対する安定性の強化は、生物医薬製剤にとって極めて有利な特性である。高い生物活性は、治療的効力の増大を生み出すことができ、一方、保存中の生物活性分子の安定性の強化は、ほんの少量の分解生成物の投与から生じることがある免疫反応などの有害な副作用の危険性を軽減するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/グリシンの粒径分布を示す図である。
【図2】プロパン−2−オール中で沈殿したα−キモトリプシン/L−アラニンの粒径分布を示す図である。
【図3】プロパン−2−オール中で沈殿したα−キモトリプシン/D,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図4】プロパン−2−オール中で沈殿したD,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図5】プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/L−ヒスチジンの粒径分布を示す図である。
【図6】プロパン−2−オール中で沈殿したD,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図7】プロパン−2−オール中で沈殿したL−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図8】プロパン−2−オール中で沈殿したL−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図9】プロパン−2−オール中で沈殿したアルブミン/L−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図10】L−グルタミンの示差蒸気吸着(Differential Vapour sorption)(DVS)グラフを示す図である。
【図11】L−グリシンのDVSグラフを示す図である。
【図12】L−グリシン/インスリンPCMCのDVSグラフを示す図である。
【図13】D,L−バリン/インスリンPCMCのDVSグラフを示す図である。
【図14】D,L−バリンのDVSグラフを示す図である。
【図15】アルブミン/L−グルタミンのDVSグラフを示す図である。
【図16】連続流型沈殿機器を示す図である。
【図17】人工肺におけるDQA−HEXおよび粗製オリゴヌクレオチド/D,L−バリンの分布を示す図である。
【図18】ジフテリアトキソイド(DT)PCMCの画像を示す図である。
【図19】USPインスリンの生物活性反応に類似しているインスリン/D,L−バリン粒子によって得られる生物活性反応を示す図である。
【図20】この場合もUSPインスリンの生物活性反応に類似しているインスリン/D,L−バリン粒子によって得られる生物活性反応を示すワイヤーミオグラフ試験を示す図である。
【図21】インスリン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図22】インスリン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図23】アルブミン/L−グルタミンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図24】インスリン/L−ヒスチジンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図25】α−アンチトリプシン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図26】バッチプロセスによって調製された理論的抗生物質装填量が9.1%w/wであるトブラマイシン/D,L−バリン結晶のSEM画像を示す図である。
【図27】連続プロセスによって調製された理論的抗生物質装填量が1.6%w/wであるトブラマイシン/D,L−バリン結晶のSEM画像を示す図である。
【図28】SEMスタブ上に直接溶媒から乾燥させた理論的タンパク質装填量が0.7%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図29】Durapore0.4ミクロンフィルター上の濾過後に空気乾燥させた理論的タンパク質装填量が0.7%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図30】SEMスタブ上に直接溶媒から乾燥させた理論的タンパク質装填量が6.4%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図31】Durapore0.4ミクロンフィルター上の濾過後に空気乾燥させた理論的タンパク質装填量が6.4%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図32】エタノール中で沈殿したグルタミン(下部トレース)および10%の理論的タンパク質装填量におけるアルブミン/グルタミン(上部トレース)について収集された粉末X線回折データを示す図である。
【図33】臨界点乾燥によって乾燥させたか(A)、あるいはDurapore0.4ミクロンフィルターで濾過し空気乾燥させた(B)サブチリシンでコーティングされたD,L−バリン微結晶の同量50mgが入った2mlバイアルを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを有する粒子を含む医薬製剤、ならびに実質的に非吸湿性の内部結晶コアおよび少なくとも1種の生物活性分子を含む外部コーティングを含む粒子を形成する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
本発明者他による先の出願であるWO 0069887は、タンパク質でコーティングされた微結晶に関する。しかしながら、医薬製剤または他の生物活性分子については具体的に開示されていない。WO 0069887において開示されているコーティングされた結晶は、一般的に、飽和溶液から共沈され、飽和に満たない溶液を用いるのが有利であろうということは開示されていない。
【0003】
WO 00/69887には、過剰の飽和水溶液を溶媒に添加することによるPCMCの製造について記載されている。記載されているPCMCは、薬学的使用に適していない。効率的な混合を得るためのWO 00/69887における好ましい方法は、激しく混合しながら水溶液を過剰の有機混和性溶媒に滴加することであった。しかしながら、このバッチ型プロセスには、以下のような多くの欠点がある。
【0004】
a)溶媒の含水量が終始増加しているため、沈殿条件が連続的に変化している。異なる初期含水量は、異なるサイズおよび形の結晶を生じることが判明している。
b)沈殿は、懸濁液中ですでに増加しつつある量の結晶を含む懸濁液中に行われる。このことは、すでに形成された結晶上に新たに形成する結晶が融合する可能性を増すことになる。
c)大規模なバッチを必要とする場合、過剰な剪断力なしに撹拌型バッチ反応器で高効率な攪拌を得ることは困難である。高効率な攪拌には、一般的に、結晶サイズを最小限に抑え、結晶が凝集塊中に接合するのを防ぐことが必要とされる。しかしながら、高剪断力は、タンパク質変性または核酸のニッキングなどの生物活性分子に対する損傷を惹起することがある。極めて小さな液滴を提供するために水性流入物を噴霧することなどの急速混合への代替アプローチも、剪断力および界面変性プロセスに起因する潜在的な問題を有している。
【0005】
まとめると、臨床試験および製造を支援できるように、大規模に一貫しかつ再現可能な粒子の医薬製剤を得るための改良法を開発することが必要である。
【0006】
今回、本発明者他は、上記の多くの問題点を、フロー式沈殿装置を用いて解決できることを発見した。これは、飽和水溶液の連続流および溶媒の連続流を、HPLCクロマトグラフィー用の溶媒グラジエントを作り出すために使用されるものと類似している小さな混合フロー室中で一緒に混合することによって動作する。共沈プロセスは、混合室中で開始され、次いで粒子は、溶媒流中の懸濁液として流出し、保持容器中に捕集される。驚いたことに、このプロセスは、このような共沈プロセスで予想されるような注入管を遮断することなく長期間動作できることが判明している。有利にも、混合室を出る粒子は、全動作サイクルにわたってサイズ、形状および収率が極めて一貫していることが判明し、共沈条件が一定のままであることを示している。他の利点は、このフロー式システムが、長時間にわたって無人で稼働し、その際、大量の粒子を生産できることである。
【0007】
全システムを密閉しかつ殺菌でき、各溶媒流を無菌濾紙で独立に濾過できるため、全プロセスを、医薬製剤製造に必要とされるように無菌にすることができる。
【0008】
(発明の概要)
本発明の第1の態様によれば、粒子を形成する連続法であって、
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であり、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)共沈剤および生物活性分子が溶液から共沈して上記粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子の溶液をより大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと、
(c)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離するステップとを含む方法を提供する。
【0009】
本明細書における連続プロセスとは、一定時間絶えず繰り返されるためバッチプロセスとは異なるプロセスを意味し、すなわち、連続プロセスは、水混和性有機溶媒による生物活性分子/共沈剤分子溶液の中断しない添加を意味する。連続プロセスの特徴は、粒子が、例えば、最小限の時間混合室内にあることである。このことは、融合を防ぎ、タンパク質分解を最小限に抑える可能性もある。
【0010】
連続プロセスにおいて、ステップ(a)および(b)は、循環的に繰り返される。
生物活性分子は、固体、例えば、共沈剤の水溶液中で溶解する粉末として提供することができる。あるいは、生物活性分子は、共沈剤の水溶液と混合する前に溶液または懸濁液中にあってもよい。通常、共沈剤は、実質的に飽和された、または高度に濃縮された溶液として調製することができる。生物活性分子と混合した後、共沈剤は通常、その水飽和溶解度の5〜100%である。飽和溶解度の20〜80%であることが好ましい。
【0011】
共沈剤は、溶液中の生物活性分子に対して適切な重量比が得られるように、水溶液に十分可溶性でなければならない。共沈剤は、水溶液におけるよりも混和性有機溶媒において実質的に低い溶解度を有することが好ましい。必要な共沈剤の濃度は、溶液中の生物活性分子の量および生物活性分子の分子量の関数である。
【0012】
当業者には当然のことながら、共沈剤は、生物活性分子と実質的に反応せず、かつ/または生物活性分子との有害な反応を引き起こさないように選択されなければならない。
【0013】
生物活性分子/共沈剤溶液は、実質的に水混和性の有機溶媒または溶媒の水混和性混合物、好ましくは溶媒または溶媒混合物が実質的に十分混和性である溶媒と混合される。通常、生物活性分子/共沈剤溶液は、過剰の水混和性有機溶媒に添加される。十分に水混和性の有機溶媒の過剰量は、溶媒/水溶液の最終含水量が、一般的には30%未満、通常は10〜20vol%未満、好都合には8vol%未満となるようにする。このように、有機溶媒は、0.5〜5vol%未満の水を初めに含有するか実質的に乾燥していることが好ましいが、必ずしも完全に乾燥していなくてもよい。
【0014】
典型的な水混和性有機溶媒は、例えば、メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオール、またはそれらの任意の組合せである。
【0015】
特定の環境では、有機溶媒を生物活性分子および/または共沈物で予め飽和することによって、水溶液を添加したときに、2成分が一緒に析出することを確実にすることができる。
【0016】
当然のことながら、用語「混合された」は、水溶液を添加しながら、水混和性有機溶媒を水溶液と混合または攪拌するプロセスステップを指す。混合は、生物活性分子が、中間組成物、すなわち水溶液と有機溶媒の、例えば25%〜60%溶媒の混合物と最小限の時間接触するように効率的である必要がある。したがって、水溶液は、連続した流れ、噴霧または霧などの広範な方法を用いて有機溶媒に添加することができる。通常、生物活性分子と共沈物溶液の混合は、生物活性分子および共沈物を一定量の溶媒と混合するプロセスで起こすことができる。
【0017】
今回、本発明者他は、バッチ式共沈とは対照的に、2つ以上の連続流を混合することによって動作することができる連続プロセスが有利であることを見いだした。すなわち、水混和性有機溶媒または溶媒の混合物の連続流を、例えば、小さな混合フロー室中で、生物活性分子/共沈剤溶液を含む連続水性流と混合することができる。水混和性溶媒流は、5vol%未満で水を含有し、かつ/または共沈を助けるための共沈剤で実質的に飽和されていてもよい。また、水性流または溶媒流も、緩衝液、塩および/または界面活性剤などの医薬製剤で通常用いられる他の賦形剤を含有することができる。共沈プロセスを、形成された粒子を混合溶媒流中の懸濁液として流し出す混合室中で開始させ、保持容器に捕集することができる。混合室を出る粒子は、サイズ、形状および収率が実質的に一貫していることが判明している。有利には、この連続プロセスを、0℃と周囲温度の間の温度ならびに高温を含む広範な温度範囲にわたって行うことができる。また、有利には、粒子を、大気圧を含む様々な圧力に保たれた保持容器を用い、溶媒中の懸濁液として捕集することができる。周囲に近い条件下で連続プロセスを実行すると、噴霧乾燥または超臨界流体処理などの医薬用途のための粒子を形成する従来の方法に比べ、資本および操業コストの軽減につながる。例えば、生物活性分子でコーティングされた大量の粒子を、このようにして工業規模で製造できることが想定される。
【0018】
あるいは、生物活性分子または共沈剤を、水性流およびコーティングされていな粒子を形成するのに使用されるプロセスから除くことができる。コーティングされていない粒子は、例えば、医薬製剤の目的に有用な賦形剤または薬物を含むことができる。このことは、コスト効率の良いプロセスで賦形剤または薬物の微結晶を製造するための好都合な方法を提供することができる。微結晶型で製造される賦形剤または薬物は、改良された流れ特性または圧縮特性などの強化された特性を示すことがある。
【0019】
連続共沈システムにおいて、一方のポンプは、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を連続的に送り、別のポンプは、共沈剤で飽和された溶媒相を送ることができる。粒子コーティング材料などの第3の成分が必要な場合には、他のポンプを使用することができる。
【0020】
ポンプは、様々な種類であってよいが、所定の流速で溶液を送り、用いられる生物活性分子と適合していなければならない。好都合には、一連の流速にわたって水溶液および水混和性溶媒を送るために最適化されていることから、HPLCポンプまたは同種のものを使用することができる。通常、水溶液は、0.1ml/min〜20ml/minの流速で送られる。水溶液用ポンプヘッドおよびラインは、生物活性分子が付着しないような材料で製作することができる。溶媒は、一般に水性よりも4〜100倍速く送ることができるため、より強力/効率的ポンプが必要である。通常、溶媒は、2ml/min〜200ml/minで送られる。
【0021】
混合装置は、沈殿がほぼ即時に起き始めるように、連続水性流を連続水混和性溶媒流と迅速かつ密に混合するための方法を提供することができる。
【0022】
混合装置は、2つの流れを迅速に混合することができる任意の装置であってよい。すなわち、例えば、入ってくる液体のフローパターンを形成/組み合わせることによって動作する静的装置か、あるいは2つの流体流れを一緒に活発に攪拌する動的装置であってもよい。動的装置であることが好ましい。2つの流れのかき混ぜは、撹拌、超音波処理、振盪または同種のものなどの様々な手段の使用によって行うことができる。撹拌の方法には、パドル撹拌機、スクリューおよび磁気撹拌機が含まれる。磁気撹拌を使用する場合には、例えば、単純な棒またはマルタ十字架などの異なる輪郭を持つ様々な撹拌子を使用することができる。混合装置の内部を裏打ちする材料は、その上に生物活性分子または粒子が著しく結合しないように選択することが好ましい。適当な材料には、316ステンレス鋼、チタン、シリコーンおよびテフロン(登録商標)が含まれる。
【0023】
必要な製造規模に応じて、混合装置は、様々なサイズおよび形状で製造することができる。必要な混合室のサイズは、2つの溶媒流に関する流速の関数である。水性が約0.025〜2ml/minで溶媒が2.5〜20ml/minの流速の場合、0.2mlの混合室を使用するのが好都合である。
【0024】
通常、連続プロセスにおいて、生物活性分子/共沈物溶液は、過剰の水混和性有機溶媒に添加される。これには、第1の態様による生物活性分子/共沈物溶液由来の水の有機溶媒中への急速な希釈が、随伴する生物活性分子の急速な脱水および粒子の形成によって起きるように、より小容量の生物活性分子/共沈物溶液を、より大容量の過剰な有機溶媒に添加することが必要である。沈殿を行う温度は変えることができる。例えば、水溶液および溶媒を加熱しても冷却してもよい。冷却は、生物活性分子が脆弱な場合に有用なことがある。あるいは、溶媒および水性混合物が異なる温度であってもよい。例えば、溶媒を、水性混合物の凝固点以下の温度に保つことができる。さらに、圧力も変えることができ、例えば、溶媒の揮発性を下げるために、より高い圧力が有用なことがある。
【0025】
生物活性分子/共沈剤溶液を過剰の水混和性有機溶媒に混合すると、生物活性分子および共沈剤の沈殿がほぼ即座に起こる。
【0026】
通常、沈殿した粒子は、少量の水を含有する新たな有機溶媒で洗浄することによってさらに脱水することができる。これは、共沈剤中に飽和している残留溶媒を除去するためにも有用なことがある。さもなければ、乾燥すると、この残留共沈剤は、粒子を接合するように働き、凝集塊の形成を引き起こすことがある。粒子上に他の賦形剤を導入するため、乾燥または保存に先立って、賦形剤を溶液による洗浄を使用することも可能である。
【0027】
有利なことに、沈殿した粒子を有機溶媒中に保存でき、生物活性分子は、長期間にわたり活性および安定性について極めて良好な保持を示すことが判明した。さらに、有機溶媒中に保存される沈殿した生物活性分子は、通常、細菌による攻撃に対して耐性を有するため、それらの保存期間が伸びることになる。
【0028】
時間と共に共沈物は沈降し、過剰の溶媒をデカントして除くことによって粒子の濃縮懸濁液を容易に回収することができる。しかしながら、沈殿した粒子をより迅速に回収するため、共沈物を、例えば、遠心分離および/または濾過にかけることができる。空気乾燥、真空乾燥または流動床乾燥などの当技術分野において知られている従来の乾燥手順を用い、残留溶媒を蒸発させ、無溶媒粒子を残すことができる。
【0029】
あるいは、超臨界CO2を用いる乾燥手順において粒子から溶媒を除去することができる。通常、連続プロセスで調製される溶媒中の粒子、およびバッチ型プロセスを用いてWO 0069887で定義されたように調製される溶媒中の非医薬粒子を、溶媒が(できる限り)除去されるまで、懸濁液を通って流れる超臨界流体CO2と共に高圧室中に装填することができる。この技法は、粒子からほぼすべての残留溶媒を除去する。これは、残留溶媒が予期せぬ生理学的効果を提供する可能性があるため、医薬製剤にとって特に有益である。懸濁液の超臨界流体乾燥での他の利点は、これを用い、他の単離技法によって得られるよりもかなり低い嵩密度の粉末および医薬製剤を製造できることである。通常、0.75g/ml未満の嵩密度が得られる。低い嵩密度の製剤は、強力に結合した凝集塊を一般的にほとんど含有しないため、生物活性分子の肺送達に特に有用である。臨界点乾燥は、当技術分野において知られている多くの様々な方法で行うことができる。
【0030】
したがって、連続共沈システムを組み立て、第1の態様による粒子、および実際は、他のタイプの粒子を形成し、次いで超臨界CO2を用いて粒子を乾燥することが可能である。
【0031】
医薬用途の場合、通常、乾燥沈殿粒子を、使用に先立って無菌条件下で無菌送達用具またはバイアル中に導入することができる。あるいは、無菌条件下で溶液中の懸濁液として無菌送達用具またはバイアル中に粒子を移すことができる。次いで、例えば必要に応じて、超臨界CO2乾燥を用いてその場で乾燥することができる。
【0032】
また、本明細書に記載の方法は、水溶液中に存在する有機可溶性成分を生物活性分子から分離することを可能にする。例えば、遊離塩基形でエタノールの様な有機溶媒に可溶であるTrisなどの緩衝液を、沈殿中に生物活性分子から分離することができる。しかしながら、水溶液または有機溶媒に別の有機可溶性塩基を添加することによってすべての緩衝液を遊離塩基に変換することが必要な場合もある。したがって、本発明は、生物活性分子から望ましくない成分を除去する方法であって、望ましくない成分が生物活性分子と共沈せず、有機相に溶解したままでいるような方法も開示する。これは、非吸湿性のコーティングされた粒子の生物活性分子沈殿に先立って、水性または有機溶媒中に酸、塩基、イオン対形成剤およびキレート化剤などの添加剤を含めることによって行うことができる。したがって、生物活性分子を、極めて純粋な形でコーティングすることができる。
【0033】
通常、本発明に記載の製剤は、多くの用量強度(dosage strength)で製造される。用量は、1粒子当たりの生物活性分子の重量百分率を0.1wt%以下から約50wt%まで変化させることによって好都合に変化させることができる。水溶液に低い溶解性を有するか、あるいは高い水性濃度で不安定である生物活性分子の場合、低濃度で飽和水溶液を形成する担体を使用するのが有利である。その場合、低濃度の生物活性分子を用いて高い装填量を得ることが可能である。担体溶解度は、医薬製剤の用量強度を好都合に変化させることができるように、50wt%から<0.1wt%の装填量で生物活性分子を含有する粒子を製造する可能性を提供することができる。室温における水溶液中の担体溶解度は、2〜200mg/mlの範囲であり、10〜150mg/mlの範囲であることがより好ましい。
【0034】
有利には、80mg/ml未満の濃度で溶けている担体を使用し、平均粒径が50ミクロン未満の狭い粒度分布にまたがる自由流動性粒子を含有する医薬製剤を製造することができる。狭い粒度分布のコーティングされた結晶を含有する製剤は、送達再現性の改善と、それによる良好な臨床性能を提供する。
【0035】
記載の医薬製剤は、含まれている無菌環境中で混合するのに先立ち、水溶液および有機溶液を0.2ミクロンのフィルターで予め濾過することによって、無菌の形で好都合に製造することができる。医薬製剤は、有害な残留溶媒を実質的に含まないことが求められ、本発明は通常、以下の従来型乾燥手順後に0.5wt%未満のクラス3溶媒を含有する粉末を提供する。実質的にそれよりも低い溶媒レベルは、乾燥した水混和性およびCO2混和性溶媒中の結晶の懸濁液を通して超臨界流体CO2を流すことによって得られる。
【0036】
また、この方法を用い、典型的な生体巨大分子よりもかなり小さな水溶性生物活性化合物を用いる医薬製剤に適した生物活性分子でコーティングされた微結晶を製造することができる。これらの製剤は、バッチあるいは連続プロセスによって製造することができ、有利にはD,L−バリンなどの非吸湿性担体を用いることができる。硫酸トブラマイシンなどの水溶性抗生物質および他の水溶性生物活性分子を用いることができる。生物活性分子は、極性があり、共沈に使用されるpHでイオン化する1個または複数の官能基を含むことが好ましい。また、生物活性分子は、結晶化でコア材料によって形成される単位格子を超える最大寸法を有していることが好ましい。このことは、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形成を助け、結晶格子内に生物活性分子が包接される可能性を最小限に抑えるはずである。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、粒子を含む医薬製剤であって、粒子は、
(a)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、上記共沈剤分子は4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(b)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含み、粒子は上記のコア形成共沈剤分子および上記の1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成され、粒子は約90℃以上の融点を有する医薬製剤が提供される。
【0038】
粒子は、第1の態様による連続プロセスあるいはバッチプロセスによって製造することができる。
【0039】
本明細書における実質的に非吸湿性とは、結晶コアが水分を容易に取り込んで保持しないことを意味する。通常、室温で約80%の相対湿度に暴露されても、粒子は凝集せず、コアは、形態または結晶化度に著しい変化を受けないはずである。
【0040】
結晶コアとは、構成分子またはイオンが、明確な融解転移温度に達するまでは加熱しても実質的に未変化のままである、反復対称の安定した3次元結晶格子中に組織化されていることを意味する。好都合なことに、分子は、高度な結晶化度を有する結晶コアを形成する。通常、明確な融解吸熱(すなわち、ガラス転移ではない)は、示差走査熱量計(DSC)において粒子を加熱して観察することができる。これは、結晶化度を示すよく知られている特性であり、結晶コアが一般に、室温および周囲湿度で熱力学的に安定である固体相で実質的に構成されていることを示している。また、本発明による粒子は、結晶化度の特徴でもある複屈折を示す。また、粒子は、この場合もまた結晶化度の証拠であるX線回折パターンを示す。
【0041】
単一ステップとは、結晶コアを提供する分子またはイオンおよび外部コーティングを提供する生物活性分子が、コーティングされた粒子の形態で、すなわち1ステップ手順で直接溶液から一緒に沈殿することを意味する。したがって、別々のコーティングまたは粉砕ステップを必要としない。粒子形成は、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥で行われるような蒸発プロセスを一切必要としないことも理解すべきである。
【0042】
粒子は、治療などの医学的用途、または例えば疾患の存在を検出するためのキット形態におけるような診断法において使用することができる。疾患には、肺癌、肺炎、気管支炎などの肺の疾患が含まれ、粒子を肺に送達し、肺気量/有効性をテストするか、あるいは病原体を同定することができる。粒子は、獣医学的使用に用いることができる。
【0043】
通常、生物活性分子のコーティングは実質的に連続的である。あるいは、生物活性分子のコーティングが実質的に非連続的である粒子を含む医薬製剤を得ることが有利なことがある。また、コーティングは、厚さが異なり、約0.01〜1000ミクロン、約1〜100ミクロン、約5〜50ミクロンまたは約10〜20ミクロンとさまざまである。
【0044】
医薬製剤は、狭い粒度分布の粒子を含むことが望ましい。したがって、医薬製剤は通常、一般に同一または類似サイズを有するかなりの数の粒子による実質的に均一なシステムを含む。
【0045】
通常、連続プロセスによって製造される微結晶および生物活性分子でコーティングされた微結晶は、スパンが5未満、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満の狭い粒度分布を示す。通常、共沈によって製造される生物活性分子でコーティングされた微結晶は、純粋な担体材料の共沈によって製造される微結晶よりも小さいことが有利である。このことは、微結晶表面上の生物活性分子のコーティングと整合する。スパン値は、以下の通り算出される。
【0046】
d(0.1)(μm)=粒子の10%は、この粒径より小さい
d(0.5)(μm)=粒子の50%は、この粒径より大きく、またそれより小さい
d(0.9)(μm)=粒子の90%は、この粒径より小さい
スパン=d(0.9)−d(0.1)/d(0.5)
粒子は、約80μm未満、好ましくは50μm未満、より好ましくは20μm未満の最大断面寸法を有することができる。最大断面寸法とは、直径の対点間で測定可能な最大距離を意味する。
【0047】
通常、結晶コアを構成する分子は各々、2kDa未満の分子量を有する。結晶コアを構成する分子は各々、1kDa未満の分子量を有することが好ましい。結晶コアを構成する分子は各々、500ダルトン未満の分子量を有することがより好ましい。好ましい分子は、素早く核を形成し、沈殿を起こしながら結晶を形成する分子である。したがって、実質的に非晶質の凝集塊またはガラスからなる粒子を提供する分子は、一般にコア材料には適していない。
【0048】
通常、結晶コアを形成する分子は、150mg/ml未満、好ましくは80mg/ml未満の水溶性を有する。驚いたことに、本発明者他によって、溶解度がこれらの値未満である分子は、フロー特性が改善された結晶を生じる傾向があることが見いだされた。自由流動性粒子が多くの医薬品製造プロセスにとって一般的に好ましいのは、それらが、例えば正確な用量によるカプセル充填を容易にし、コーティングなどのさらなる操作に都合よく使用できるからである。一般的に、自由流動性粒子は、規則的なサイズおよび寸法であり、静電気力が低い。例えば、高アスペクト比の針状結晶は、一般に自由流動性ではないため、特定の製剤では好ましくない。
【0049】
結晶コアを構成する分子は、例えば、アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬物、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体もしくは任意の組合せである。通常、分子は、レシピエントへの投与後に有害な生理学的反応を最小限に抑えるように選択される。
【0050】
結晶コアを形成するのに適したアミノ酸は、純粋な鏡像体またはラセミ化合物の形態であってよい。例には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、グリシン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、D−バリン、L−バリン、D,L−バリンの混合物、メチオニン、フェニルアラニン、プロリンおよびセリンまたはそれらの任意の組合せが含まれる。特に、L−グルタミン、L−ヒスチジン、L−セリン、L−メチオニン、L−イソロイシン、L−バリンまたはD,L−バリンが好ましい。共沈条件下で実質的にイオン化する側鎖を有するアミノ酸については、溶解度が低く、非吸湿性である結晶性の塩を生成する対イオンを用いることが好ましい。結晶コアを形成するための他の分子および塩の例には、α−乳糖、β−乳糖、マンニトール、重炭酸アンモニウム、グルタミン酸ナトリウム、アルギニンリン酸およびベタインが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
通常、結晶コアを形成する分子は、約25℃で、例えば約12〜150mg/ml、好ましくは約20〜80mg/mlという低い水溶性を有する。また、水溶性が約150mg/mlよりも大きい分子を用い、自由流動性粒子を得ることができるが、ただし、飽和に満たない水溶液から共沈させる。150mg/ml以下、より好ましくは80mg/ml以下の濃度で共沈させることが好ましい。25℃で高い水溶解度の分子については、150mg/ml以下の濃度で飽和に近くなるように、10℃または4℃などのより低い共沈温度を用いることが有利なこともある。同様に、25℃であまり可溶性でないコア形成分子の共沈については、35℃または50℃などのより高温を用いることができる。
【0052】
結晶コアを形成する分子は、120℃超などの90℃を超える、好ましくは150℃超の融点を有する。高い融点を有することは、形成された結晶が高い格子エネルギーを有することを意味する。高い格子エネルギーは、生物活性分子によって表面がコーティングされた結晶コアを有する粒子が形成される可能性を高め、粒子の非晶質含量を最小限に抑える傾向があるはずである。非晶質材料を含有する粒子は、高い湿度または温度に暴露されると望ましくない物理的性質の変化を受けることがあり、それが、医薬製剤にとって望ましくない生物活性および溶解度の変化を生じることがある。したがって、より安定な医薬製剤を形成する傾向があることから、融点の高い粒子を生じる共沈剤を使用することが有利である。
【0053】
新たに形成された粒子の懸濁液における溶媒:H2O:担体:生物活性剤の典型的な重量比は、約1000:100:5:3〜約1000:100:5:0.03である。溶媒:H2Oの重量比は、約100:1〜約4:1である。
【0054】
好都合にも、結晶コア上にコーティングを形成する生物活性分子は、例えば活性製薬成分(API)などの治療効果または診断効果を生み出すことができる任意の分子から選択することができる。治療効果とは、人体または動物体の任意の障害または機能不全の症状を治癒、緩和、除去もしくは軽減する、またはそれらに罹患する可能性を阻止もしくは低減する任意の効果を意味し、したがって予防効果を包含する。
【0055】
また、生物活性分子のコーティングは、安定剤、界面活性剤、等張性調整剤およびpH/緩衝剤などの医薬製剤で一般的に使用される賦形剤を含むことができる。
【0056】
生物活性分子は、例えば、任意の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体または治療効果を生じる任意の組合せであってよい。
【0057】
生物活性分子の例には、抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、抗真菌剤などの薬物;天然または非天然ペプチド;インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、抗体などのタンパク質;遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNAおよびアンチセンスヌクレオチドなどの核酸;任意の単糖、二糖または多糖などの糖;およびプラスミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
核酸は、例えば、レシピエント中に導入されると直ぐに発現させることができる。したがって、核酸には、核酸の発現を制御するための適切な調節性制御要素(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーターなど)が含まれる。また、生物活性分子は、PEG−タンパク質などの天然または合成治療薬の化学的に修飾された誘導体であってもよい。
【0059】
核酸は、プラスミド、ファージミドなどのベクターまたはウイルスベクター内に含まれていてもよい。当業者に知られている任意の適当なベクターを用いることができる。
【0060】
例えば、ワクチンコーティング成分には、ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドなどの、病原体、例えば、細菌またはウイルスの抗原成分が含まれる。このようなワクチン製剤の特別な利点は、従来の液体製剤と比較した場合、高温に暴露されると、非常に強化された安定性を一般に示すことである。例えば、本発明に従って調製されるこのような製剤は、45℃を超える温度に48時間暴露することができ、in vivoで試験した場合、免疫応答を誘発する能力を維持するが、一般的に、標準的な液体試料は完全に不活化されることが判明している。高温安定性を示すワクチンは、冷蔵する必要がないため、保管および特に途上国における流通の容易さの点から見てかなりの費用節減を提供する。ワクチンは、ウイルス、真菌、原虫、アメーバおよび細菌感染などを含む病原性微生物によって引き起こされる感染症の予防および/または治療に有用である。本発明に従って調製することができるワクチン製剤の例には、ジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザが含まれるが、これらに限定されないサブユニット、弱毒化または不活微生物ワクチンが含まれる。
【0061】
例示的製剤は、ジフテリアタキソイド(diptheria taxoid)でコーティングされたD,L−バリンまたはL−グルタミン結晶からなる。本発明者他は、例えば、ジフテリアタキソイドでコーティングされたL−グルタミン結晶の試料は、一連の異なる条件下で保存でき、復元および接種後、マウスにおいて強い一次および二次免疫応答を誘発することを見いだした。ワクチンでコーティングされた結晶は、非経口、経肺および経鼻投与を含む多くの経路によるレシピエントへの送達のために製剤化することができる。肺送達は、若年小児にとって特に有効である。
【0062】
本発明による粒子は、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチンと、おたふく風邪、麻疹および風疹などの生ウイルスワクチンなどの、タンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である。本発明による粒子は、MVAベクターインフルエンザワクチンなどの最新のインフルエンザワクチン成分についても調製することができる。
【0063】
さらに、ワクチン成分でコーティングされた微結晶は、黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含む癌、特にヒト癌用に開発されるワクチンの製剤に有用である。本明細書に記載の経肺製剤は、肺癌の治療に特に適している。注目すべきは、タンパク質ベースのワクチン(すなわち、内部の実質的に非吸湿性の結晶コア上にコーティングされているタンパク質/ペプチド)の他に、核酸分子が、内部の実質的に非吸湿性の結晶コア上にコーティングされている核酸ベースのワクチン製剤も本発明に従って調製することができる。
【0064】
有利な特性を有することが判明している非吸湿性のコーティングされた粒子の例には、D,L−バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、L−グリシンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、D,L−バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、D,L−バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよび破傷風タキソイドのコーティング、D,L−バリンの結晶コアならびにジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティング、L−グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティングのある粒子が含まれる。
【0065】
通常、十分に制御された条件下で形成される粒子のバッチは、すべてが実質的に同一の形態および結晶形を示し、狭い粒度分布を有する個々の微結晶で構成されている。これは、SEM画像で好都合に観察し、粒径測定値によって確認することができる。通常、本発明による微結晶は、80ミクロン未満の最大断面寸法および最大寸法を有する。40ミクロン未満の最大断面寸法を有することが好ましく、20ミクロン未満であることがより好ましい。最大断面寸法が0.5〜20ミクロンである粒子が最も好ましい。あるいは、最大断面寸法が50ミクロン未満、好ましくは20ミクロン未満である類似サイズを有する微結晶の球状凝集塊の自由流動性粉末を形成することができる。好ましい共沈剤によって形成される粒子の注目すべき側面は、80%RHまでなどの高い湿度に暴露しても、それらのサイズおよび形態が実質的に一定のままであることである。さらに、それらの自由流動性および空気力学的特性は、再乾燥しても維持することができる。
【0066】
各粒子上にコーティングされる生物活性分子の量は、共沈に先立って、初期水溶液中の生物活性分子とコア分子の比を変えることによって好都合に変化させることができる。通常、生物活性分子は、コーティングされた各微結晶の0.1wt%〜50wt%を占めるものとする。粒子中の生物活性分子の装填量は、1wt%〜40wt%であることがより好ましい。
【0067】
通常、生物活性分子の少なくとも一部は、高い湿度への暴露後であっても高レベルの活性を維持する。
【0068】
通常、非吸湿性のコーティングされた粒子は、高温に暴露されても安定であり(すなわち、それらの生物活性を実質的に維持し)、60℃まで1週間程度は安定である。このことは、保存の助けとなり、非吸湿性のコーティングされた粒子から形成される医薬製剤は、非冷蔵条件下であっても長時間の有効期間を有すると予想されることを示している。
【0069】
通常、非吸湿性のコーティングされた粒子のコア材料は、80%までの相対湿度で5wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の水を吸収するはずである。通常、生体分子を含む粒子は、装填量に応じてwt%の高い水を吸収するはずである。
【0070】
通常、結晶コア上にコーティングされた生物活性分子は、自然のまたは自然に近い立体配置を維持する。すなわち、生物活性分子は、製造プロセス中に不可逆的には変性されない。また、結晶コア上の生物活性分子のコーティングは、周囲温度または高温における粒子の保存に対して安定性の向上を提供することが有利にも見いだされている。例えば、通常、生物活性分子は、水性媒体において復元される場合、その生物活性の大部分を維持することができる。生物活性分子は、25℃で6カ月間の保存後に初期の生物活性の50%超を維持することが好ましい。生物活性分子は、その生物活性の80%超を維持することがより好ましく、95%超の生物活性を維持することが最も好ましい。
【0071】
通常、記載の微細な自由流動性粒子または懸濁液は、ガラスバイアルの壁に付着しない。通常、粒子は、水、水溶液(復元のため一般に使用されるような緩衝液および塩を含有する)、あるいは生理液に急速かつ完全に再溶解する。一般的に、乾燥粉末または懸濁液の完全な再溶解は、2分未満、好ましくは60秒未満、最も好ましくは30秒未満で起こるはずである。通常、水性緩衝液中で復元された製剤は、透明度が15FNUを上回り、好ましくは6FNUを上回る低濁度の無色溶液である(FNU=ホルマジン比濁計単位)。
【0072】
一般に、生物活性分子は、緩衝化合物、塩、糖、界面活性剤および抗酸化剤などの水溶液に溶かされる場合、賦形剤または安定化剤が存在する必要がある。これらは、出発水溶液中に含め、共沈プロセス中に粒子に組み入れることができる。その場合、それらは、例えば医薬製剤として粒子の復元で存在することになる。通常、すべての成分の共沈後に、賦形剤は、粒子の外部表面で濃縮され、生物活性分子のコーティング中に浸透するはずである。典型的な抗酸化剤は、例えば、N−アセチルシステインなどの形態のシステインであり、典型的な界面活性剤は、Tweenであってよい。共沈中に、賦形剤と生物活性分子の相対比を、溶媒中への溶解のために変えることが可能である。これは、乾燥して望ましい比が粒子において得られるように、初期水溶液、共沈溶媒あるいは洗浄溶媒に、選択された賦形剤を予め添加することによって制御することができる。したがって、強化された保存安定性を得るため、例えば、有機可溶性糖またはポリマーを洗浄溶媒に含めることによって、タンパク質でコーティングされた粒子の表面上にコーティングすることができる。あるいは、粒子自体の物理的性質を改善するため、添加剤を洗浄溶媒に含め、粒子の外部表面上にコーティングすることができる。例えば、形成された微結晶を、乾燥する前にイソロイシンの2−プロパノール溶液で洗浄することによって、イソロイシンでコーティングされたインスリン−グリシン粒子を得ることが有利であることが判明している。これらの粒子は、コーティングされていない粒子に比べ、流動性および空気力学特性が強化される。
【0073】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に従って形成される粒子またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む肺送達用の医薬製剤が提供される。
【0074】
吸入を用いて薬物分子を血流中に投与するためには、薬物を、深部の肺まで送達することができる製剤にしなければならない。これには、乾燥粉末の場合、一般的に質量中位寸法(mass median dimension)が1〜5ミクロンである粒子が必要であるが、特別な空気力学的特性を持つ、より大きな粒子も使用できることが明らかにされている。本発明による粒子の特定の製剤が経肺製剤を形成するのに適しているのは、それらを用い、吸入による送達に適する微細な自由流動性粒子を作製することができるからである。生物活性分子がこれらの非吸湿性のコーティングされた粒子の表面上にあることを考えれば、粒子は一般に、予想外に低い静電気力を示し、送達用具中で乾燥粉末として取扱いかつ使用するのが容易である。あるいは、例えば、噴霧器中の懸濁液として使用することができる。
【0075】
特に、経肺医薬製剤の形成に適する生物活性分子には、以下のインスリン、α1−アンチトリプシン、インターフェロンなどの治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの医薬を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬物;水感受性薬物;脂質および界面活性剤;多糖;またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体が含まれるが、それらのいずれかに限定されるものではない。粒子を含む経肺製剤を吸入装置で直接使用し、高い放出用量(emitted doses)および高い細粒分画を得ることができる。すなわち、通常、MSLI(第1〜5段)で測定される放出用量は70%を超える。通常、MSLI(3〜5段)で測定される細粒分画は、20%を超え、30%を超えることが好ましい。細粒分画は、多段液体含有インピンジャー(MSLI)の下部段で捕集される分率と定義され、空気力学的特性が吸入による深部の肺への投与に適している、すなわち約3.3ミクロン未満の粒子に相当する。この経肺製剤は、例えば、乳糖などのより大きな担体粒子による他の製剤なしに、乾燥粉末送達用具中で使用することができる。
【0076】
経肺製剤の場合、空気力学的質量中位径が10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満である粒子が好ましい。通常、これらは、空気力学的質量中位径に類似している質量中位径を有するはずである。通常、最大断面直径が1〜5ミクロンの範囲にある自由流動性で非吸湿性の低帯電粒子が好ましい。これらは、例えば、L−グルタミンなどのアミノ酸を用いて結晶コアを形成することによって得られる。しかしながら、驚いたことに、発明者他は、高アスペクト比のフレークの形態をとる生物活性分子でコーティングされた粒子が、有利にも最大断面直径よりも小さな空気力学的質量中位径を有することを発見した。好適な形は、例えば、葉形またはタイル形であってよい。このような粒子に関して、最大断面直径の好ましい範囲は、1〜5ミクロンを超え、例えば、1〜10ミクロンであってもよい。この形の生物活性分子でコーティングされた結晶性粒子を通常形成する共沈剤には、ヒスチジン、およびD,L−バリンが含まれる。したがって、乾燥粉末経肺製剤の場合、高アスペクト比のフレークを生じる共沈剤で製造された粒子も好ましい。
【0077】
特に、経肺製剤は、バリン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシンまたはグルタミンなどのアミノ酸からなる結晶コアを有するように選択されることが好ましく、例えば、バリンの結晶コアおよびインスリンなどの治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンなどの酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングが含まれる。製剤用の粒子を形成する場合、高湿度に暴露されても凝集しない分離した粒子が得られる共沈剤を使用することが好ましい。さらに、共沈剤は、投与後に患者の口内に不快な味を残さないことが好ましい。したがって、グルタミンは、高湿度に暴露することができ、淡泊な味を有しているため、極めて好ましい。
【0078】
本発明の第4の態様によれば、第2の態様による粒子もしくは粒子の懸濁液またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む非経口製剤が提供される。このような製剤は、静脈内、皮下または筋肉内注射を含む様々な方法によって送達されるか、あるいは持続または制御放出製剤において使用することができる。粒子は、周囲温度において長時間の有効期限を示す無菌非経口製剤を提供するためのコスト効率の良いプロセスで有利に製造することができる。散剤または懸濁剤の形態である製剤は、60秒未満の間に水溶液中で復元され、注射に適する低濁度の溶液を提供することが好ましい。懸濁剤の復元は、生物活性分子が特に有毒または強力であるため、乾燥粉末として製造または取扱うのが困難である場合に好ましいことがある。あるいは、例えば、エタノールなどの溶媒中の粒子の濃縮懸濁剤は、復元することなく直接の非経口投与に使用することができる。これは、治療有効性を提供するため極めて高用量の形態で送達されることが必要な生物活性分子にとっての利点を提供することができる。このような生物活性分子には、治療用抗体およびそれらの誘導体が含まれる。これらは、復元によって凝集を受けるか、あるいは投与することが困難である極めて粘稠な溶液を形成することがある。したがって、高用量の生物活性分子を含有する粒子の濃縮懸濁剤を用い、このような分子を送達する代替的なより便利でかつ治療上有効な方法を提供することができる。生物活性分子でコーティングされた粒子が、この用途に特に適するのは、それらが極めて迅速に復元し、生物活性分子の最小限の凝集を示すからである。凝集塊の投与が望ましくないのは、有害な免疫応答の開始につながる可能性があるためである。
【0079】
非経口送達による投与に適する生物活性分子には、本発明の第3の態様に記載の分子が含まれる。さらに、非経口投与を用い、不十分な全身バイオアベイラビリティーのために肺を介する対象の血流中への投与に適していないワクチンまたは抗体などのより大きな生体分子を送達することができる。好ましい結晶コア材料には、マンニトールおよびショ糖などの非経口製剤において一般的に使用される賦形剤が含まれる。迅速に復元し、高温であっても安定であり、処理および取扱いが容易である粒子を形成するのに使用することができるL−グルタミンなどの天然アミノ酸も好ましい。また、L−グルタミンが好ましいのは、有害な副作用もなく高用量で患者に投与されてきているためである。
【0080】
本発明の第5の態様によれば、第1の態様による、またはバッチプロセスにおける粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(または、デポ剤)が提供される。特定の用途の場合、非経口もしくは経肺製剤、または投与によって持続性もしくは長期の治療効果が得られる他の製剤を製造することが好ましい。例えば、対象の血流において得られる生物活性分子の最高濃度を制限するために使用するか、あるいは反復投与の間に必要な期間を延長するために使用することができる。あるいは、粒子の表面特性を変化させてそれらのバイオアベイラビリティーを改善することが必要なこともある。生物活性分子でコーティングされた粒子を好都合に使用し、持続または制御放出製剤を製造することができる。これは、粒子をコーティングすること、またはゲルもしくはポリマーなどの別のマトリックス材料中に粒子を組み入れることによって、または送達用具内に粒子を固定化することによって行うことができる。
【0081】
例えば、各々の粒子を、当技術分野において知られている技法を用い、粒子成分の放出または送達を変化させる材料で均一にコーティングすることができる。
【0082】
粒子をコーティングするのに使用することができる材料は、例えば、ポリ乳酸またはポリグリコール酸およびそれらのコポリマーなどの低い水溶性の生物分解性ポリマー;ポリアミノ酸;ヒドロゲル;および生理的条件への暴露に反応して溶解性または架橋度を変化させることが当技術分野において知られている他の材料である。例えば、コーティングは、粒子の懸濁液をコーティング材料の溶液と接触させ、次いで得られる粒子を乾燥することによって施すことができる。必要に応じて、このプロセスを繰り返し、放出プロフィールを拡張することができる。コーティングされた粒子は、生物活性分子の溶液中への実質的に定速な放出を提供することが判明している。あるいは、複数の粒子を、例えば結合剤によって、例えば単一錠剤型に合体することができる。錠剤を維持している結合剤が一緒に徐々に溶解するため、結合剤が溶液に溶解すると直ちに、粒子が連続的に溶液中に放出される。
【0083】
当業者には当然のことながら、上記教示の組合せを用い、例えば、経鼻製剤、経口製剤および局所製剤などの他の医薬製剤を得ることが可能である。経鼻製剤および経口製剤は、例えば粘膜への付着を提供する代替材料による粒子のコーティングが必要なことがある。
【0084】
本発明の第6の態様によれば、第2の態様による、またはバッチプロセスにおいて形成される粒子を含む肺の薬物送達用具が提供される。
【0085】
肺の薬物送達用具は、例えば、液体噴霧器、エアロゾル式定量吸入器または乾燥粉末分散装置である。
【0086】
次に、本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら一例として説明する。
(注目すべきは、以下の実施例においてコーティングされた粒子をPCMCと見なすが、粒子は、必ずしもタンパク質でコーティングされている必要はなく、任意の生物活性コーティングを有していてもよいことである)
【0087】
(実施例セクション)
【実施例1】
【0088】
表1は、コーティングを形成する生物活性材料がインスリンであり、結晶コアが、D,L−バリン、L−バリン、L−ヒスチジンおよびL−グリシンから形成される、一連のタンパク質でコーティングされた微結晶(PCMC)を製造するのに使用される条件を示している。微結晶は、結晶化プロセスの下にある記入事項に従ってガラスのバイアルまたはフラスコ中で製造し、混合は、磁気撹拌によって行った。
【0089】
使用したインスリンは、ウシ膵臓インスリン(Sigma I5500)およびUSPウシインスリン(Sigma I8405)である。
結晶は、Durapore薄膜フィルター(0.4ミクロン)で濾過することによって単離し、次いで、換気フード中で空気乾燥した。
タンパク質装填量は、Bioradタンパク質アッセイを用いて測定した。細粒分画(FPF)の百分率は、多段液体含有インピンジャーを用いて測定した。
【表1】
【0090】
表1は、医薬製剤に適する自由流動性物理的特性を持つインスリンでコーティングされた粒子が、一連の様々な共沈剤によって製造できることを示している。最後のエントリーを除き、共沈はすべて、80mg/ml以下の賦形剤濃度で行った。後者の場合には、修正された洗浄手順を用い、イソロイシンで結晶をさらにコーティングした。一貫して高い細粒分画(FPF)および放出用量(データ省略)は、粒子の自由流動性を表し、かなりの割合が3ミクロンよりも小さい有効な空気力学的寸法を有していることを示している。また、表1から、プロセス条件を変化させ、インスリンの装填量および粒子の物理的特性を変化させることが可能であることは明らかである。
【実施例2】
【0091】
表2は、結晶コアがL−グリシン、L−アラニンおよびL−アルギニンから形成される、実施例1におけるように製造された一連の他のインスリンでコーティングされたPCMCを示している。
【0092】
使用したインスリンは、ウシ膵臓インスリン(Sigma I5500)およびUSPウシインスリン(Sigma I8405)である。
【表2】
【0093】
表2は、溶解度の高い共沈剤から製造された粒子は、MSLIにおいて劣った特性を有することを示している。以下で説明する粒径測定も、個々の結晶の大きな凝集塊の存在を示している。明らかになった別の点は、このような高い溶解度の化合物を飽和近くで使用した場合、生物活性分子(インスリン)の装填量が高い粒子を得ることができないことである。したがって、医薬製剤に有用な粒子を製造するためには、溶解度の低い共沈剤を使用し、かつ/または飽和に満たない溶液を使用することによってWO 0069887に記載のプロセスを修正することが好ましい。
【実施例3】
【0094】
表3は、D,L−バリンが結晶コアである一連のインスリンPCMCを示している。使用した水混和性溶媒は、プロパン−2−オールである。微結晶は、実施例1の方法に従って製造した。
【表3】
【0095】
したがって、用量強度が異なる医薬製剤を提供するために、粒子内のタンパク質の割合を変化させることは容易である。
【実施例4】
【0096】
表4は、D,L−バリンが結晶コアである一連のインスリンでコーティングされたPCMCを示している。微結晶は、実施例1に従って製造した。
【表4】
【0097】
これらの結果は、粒子を再現性良く製造できることを示している。
【実施例5】
【0098】
粒径分析
レーザー回折粒径分析は、マスターサイザー2000を用い、生物活性分子でコーティングされた粒子に対して行った。つまり、10〜20%のレーザーオブスキュレーション(obscuration)を確保するため、2−プロパノール60mlが入っているマスターサイザー2000の試料ホルダーに十分なPCMCを加えた。次いで、以前に設定した標準操作手順を用い、測定を行った。
【0099】
d(0.1)(μm)=粒子の10%は、この粒径より小さい
d(0.5)(μm)=粒子の50%は、この粒径より大きく、またそれより小さい
d(0.9)(μm)=粒子の90%は、この粒径より小さい
スパン=d(0.9)−d(0.1)/d(0.5)
スパンは、母集団均一性の良い指標を与える。したがって、5以下のスパン値が好ましく、2以下のスパン値が特に好ましい。
【0100】
グリシンおよびアラニンの飽和溶液をコア賦形剤として使用した場合に生じる典型的な粒度分布パターンを図1および2に示す。図1は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/グリシンの粒径分布を示している。図2は、プロパン−2−オール中で沈殿したキモトリプシン/アラニンの粒径分布を示している。
【0101】
図1および2は、WO 0069887に従って行われた共沈プロセスにおいて、コア材料として極めて溶解しやすい賦形剤(例えば、グリシンおよびアラニン)の飽和溶液または濃縮溶液を使用した場合の大きな粒径分布を示している。特に、一つの集団が粒子からなり、より大きな他の集団がそれよりも小さな粒子の凝集塊からなっている、2つの集団が存在することが分かる。このことは、均一な溶解性およびバイオアベイラビリティー特性を持つ医薬製剤の製造には望ましくない。
【0102】
対照的に、図3〜9は、D,L−バリン、L−グルタミンおよびL−ヒスチジンなどの溶解し難い賦形剤が粒子のコアを構成する場合に、はるかに狭い粒径分布が得られることを示している。また、これらの図は、大きな凝集塊がほとんどまたは全く形成されないことを示している。これらの粒子は、均一な溶解性およびバイオアベイラビリティー特性を持つ医薬製剤を提供することが期待される。
【0103】
図3は、キモトリプシン15mgを、50%飽和DL−バリン溶液3mlに溶かした場合に形成されるPCMCを示している。D,L−バリンで飽和された2−プロパノール35ml中で水溶液6mlを沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0104】
図4は、飽和D,L−バリン溶液0.2mlを、マスターサイザー試料室においてHamilton注射器を用い、撹拌機速度=2000rpmで、飽和されていない2−プロパノール60ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子をマスターサイザー内部で形成させ、直接測定した。この試料において見られる狭い粒度分布は、高い攪拌速度を用い、乾燥粉末の形態で粒子を単離しなかったために生じたと考えられる。通常、従来の単離技法を使用すると、より凝集した製剤となる。
【0105】
図5は、飽和L−ヒスチジン14mlを、磁気撹拌機を用いてL−ヒスチジンで飽和された2−プロパノール140ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0106】
図6は、飽和D,L−バリン溶液0.2mlを、マスターサイザー試料室において、撹拌機速度=1500rpmで、飽和されていない2−プロパノール60ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子をマスターサイザー内部で形成させ、直接測定した。
【0107】
図7は、L−グルタミン飽和溶液0.6mlを、高速撹拌下で5mlピペットを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール6ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0108】
図8は、L−グルタミン飽和溶液0.6mlを、高速撹拌下で小さなシリンジポンプを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール6ml中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0109】
図9は、5%装填量のアルブミン/L−グルタミンを、中程度の撹拌下、プロパン−2−オール中で沈殿させた場合に形成されるPCMCを示している。アルブミン1mgを、L−グルタミン飽和溶液0.6mlに溶かした。この溶液0.5mlを、中程度の撹拌下、シリンジポンプを用い、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール5ml中で沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。
【0110】
下掲の表5は、図1〜9で示された結果を要約している。
【表5】
【0111】
表5における結果は、粒度分布が比較的狭く、最小限度の凝集を示す製剤が、好ましい共沈剤を選択することによって、再現性良く得られることを示している。また、見ても分かるように、マスターサイザーによって測定されたこれらの粒子の体積中位径は、通常30ミクロン未満であり、10ミクロン未満のことがある。通常、粒子のSEM画像は、平均最大断面寸法が、マスターサイザーによって測定される平均質量寸法よりも定性的に小さいことを示している。
【0112】
通常、連続プロセスによって製造される微結晶および生物活性分子でコーティングされた微結晶は、スパンが5未満、好ましくは2未満、より好ましくは1.5未満の狭い粒度分布を示す。通常、共沈によって製造される生物活性分子でコーティングされた微結晶は、純粋な担体材料の沈殿によって製造される微結晶よりも有利に小さい。このことは、微結晶表面上の生物活性分子のコーティングと整合性がとれている。
【0113】
タンパク質装填量がすべて10%であるチトクロームCでコーティングされたD,L−バリン(Cytc/val)、グリシン(Cytc/gly)およびL−グルタミン(Cytc/gln)の微結晶は、実施例9に記載の連続流型沈殿装置を用い、イソプロパノール中への共沈によって調製した。表「粒度分布」は、得られた平均径およびスパンを示している。
【表6】
【0114】
これらの結果は、裸の微結晶に比べ、生物活性分子でコーティングされた微結晶のサイズが縮小していることを明確に示している。測定されたスパンは、いずれの場合にも5未満であり、1.5未満のことがある。粒子サイズのさらなる縮小は、温度などのプロセス条件を変化させることによって、または混合効率を高めることによって達成できる可能性がある。
【実施例6】
【0115】
(乾燥粉末吸入器からの用量放出)
乾燥粉末吸入器からの用量放出は、Astra Draco多段液体含有インピンジャー(MSLI)を用いて測定した。用量のうち有用な部分は、細粒分画(FPF)と呼ばれる。一般的に、細粒分画(FPF)は、以下の表6に示されるようにMSLIの低部段で捕集される。表6を用い、重要な各段のカットオフ寸法を決めた。
【表7】
【0116】
以下の実験において60l/minの流速(Q)を用い、第2、3および4段についてそれぞれ、6.8、3.1および1.7μmのカットオフ寸法を得た。
【0117】
すべてのMSLI実験において以下の手順を用いた。
(a)市販の硫酸サルブタモール製剤(例えば、ベントリン)についての初期研究には、受け入れたままの製剤を使用した。
(b)PCMC製剤については、サイズ3のカプセルを、一般的に10〜20mgの量の乾燥粉末PCMCで満たした。
(c)第1〜4段のクランピングに先立って、MSLIの第5段に濾紙を加える。第1〜4段の各々に水20mlを添加する。第1段の最上部にネック部を接続した後、アダプターピースをネックの末端部に接続する。ディスクへラーの場合はブリスター包装に、あるいはエアロへラー(aerohaler)の場合はサイズ3のカプセルに穴を開けることによって、乾燥粉末吸入器の使用を開始する。続いて、乾燥粉末吸入器をアダプター内に格納し、ポンプのスイッチを4秒間入れ、吸入器からMSLIまで製剤を送る。吸入器内の各ブリスターまたはカプセルについて作動を行った。
どの場合においても、PCMC製剤の用量放出は、エアロへラーを用いてMSLIに送った。
【0118】
MSLIに製剤を送った後、試料捕集を以下の通り行った。
(a)装置をアダプターから取り外してカプセルを取り出してペトリ皿に入れ、水20mlを添加した。
(b)アダプターをMSLIのネックから取り外し、ペトリ皿に入れ、水10mlを添加した。
(c)ネックをMSLIから取り外し、水20mlでペトリ皿に洗い出した。
(d)第1〜4段をフィルターステージから外し、第1段の開口部を水20mlで洗浄した。これを攪拌してすべての粉末を溶かした。
(e)MSLIからフィルターを取り外してペトリ皿に入れ、水10mlを添加した。
(f)各段から分量5mlを取り出し、HPLCによってアッセイし、硫酸サルブタモール濃度を測定した。Bio Radタンパク質微量検定法を用い、PCMCタンパク質濃度を測定した。
【0119】
(硫酸サルブタモール製剤を用いる初期研究)
ディスクへラー(表7および8)およびアエロへラー(吸入器)(表9および10)からの硫酸サルブタモール放出の結果を以下に示す。
【表8】
【0120】
用量のうち回収された総薬物量は、98%である
【表9】
【表10】
【表11】
【0121】
ベントリンディスクへラーは、MSLIにおいてほぼ26%の細粒分画(FPF)を提供した。ベントリンディスクへラーからの用量の約70%は、インパクターに送られた。Inhalator(Atrovent)は、MSLIにおいて約28%の細粒分画(FPF)を提供した。
【0122】
これらの値は、このような製剤および装置について文献中に報告されている値と一致し、MSLIが正確に較正され作動したことを示している。
【0123】
(MSLIにおけるPCMC用量放出)
(キモトリプシン製剤)
キモトリプシンPCMCは、以下の技法を用いて製造した。
キモトリプシンを飽和アミノ酸溶液に溶かし、濃度10mg/mlの水溶液を得た。この水溶液を、予め適切なアミノ酸(例えば、L−グリシン、L−アラニン、D,L−バリン、DL−セリン、L−ロイシンおよびDL−イソロイシン)で飽和され、水溶液の容量の15倍に相当する容量の2−プロパノール中で沈殿させた。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0124】
これらの結果は、25℃における水溶解度が20mg/ml〜80mg/mlの範囲にある結晶コア材料を用い、より高い細粒分画が得られる傾向にあることを示している。ロイシンは、はるかに低い細粒分画を示すが、比較的高い放出用量を生じる。高い放出用量は、ロイシンおよび他の好ましいアミノ酸の自由流動性の指標である。
【0125】
(インスリン製剤)
次いで、キモトリプシンPCMCと類似した方法でインスリンPCMCを製造した。
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0126】
これらの結果も、25℃における水溶解度が20mg/ml〜80mg/mlの範囲にある結晶コア材料を用い、高い細粒分画および自由流動性粉末が得られる傾向にあることを示している。グルタミン酸ナトリウムは、予想されたよりも高い細粒分画を示すが、これは、粒子上へのタンパク質の不十分なコーティングが起きて、別のタンパク質粒子の形成を生じたものと考えられる。このことは、凝集塊形成に起因するこの製剤についての不十分な放出用量によって立証される。
【0127】
(アルブミン製剤)
アルブミン75mgを、L−グルタミンの飽和溶液15mlに溶かし、溶解容器中の2−プロパノール150ml中にシリンジポンプによって500rpmで分注した。
【表25】
【0128】
全体的に、これらの結果は、コア材料として極めて溶解しやすい賦形剤(例えば、グリシン、アラニン、アルギニン)の濃縮溶液を用いると、凝集が原因で医薬製剤、特に経肺用薬物送達に適していない、生物活性分子でコーティングされた粒子につながるというマスターサイザー実験からの示唆を裏付けている。一方、溶解し難いアミノ酸(例えば、ヒスチジン、グルタミンおよびバリン)で製造された粒子は、自由流動性粉末を生じることが分かる。それらを用い、経肺用薬物送達に適した製剤を提供することができる。さらに、製造プロセスの改良を用い、細粒分画がさらに高い粒子を提供できることが予想される。
【実施例7】
【0129】
(制御放出実験)
ポリ乳酸(PLA)でコーティングされたアルブミン/L−グルタミンPCMCを制御放出実験で使用した。
以下の方法を行い、アルブミン/L−グルタミンPCMCをPLAでコーティングした。アルブミン/L−グルタミンPCMCは、アルブミン31mgを50%飽和L−グルタミン溶液6.2mlに溶かして調製した。次いで、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール40ml中で水溶液を沈殿させた。粒子は、ミリポア濾過システムを用いて乾燥した。アルブミン/L−グルタミンPCMCを以下の通りコーティングした。
【0130】
実験A:アルブミン/L−グルタミンPCMC 20mgをアセトン/PLA溶液(50mg/ml)2mlに懸濁し、続いてアセトンを蒸発させた。得られた製剤は極めて高粘度のPLA溶液を形成し、完全に乾燥すると、極めて粘着性のある脆性沈殿を形成した。
実験B:アルブミン/L−グルタミンPCMC 20mgをアセトン/PLA溶液(50mg/ml)2mlに懸濁し、激しい撹拌下、2−プロパノール20ml中で沈殿させた。得られる製剤は、大きな不溶性ペレットを形成した。
実験C:アルブミン/L−グルタミンPCMC 10mgを2−プロパノール10mlに懸濁し、続いてアセトン/PLA溶液(50mg/ml)0.4mlを激しい撹拌下で添加した。
【0131】
タンパク質放出試験は、乾燥したコーティングされたPCMCについて以下の通り行った。
【0132】
コーティングされたPCMCをH2O 15mlに添加して攪拌した。規定された時間間隔で水溶液の分量0.8mlをBio Radタンパク質微量検定法0.2mlに添加し、595nmでUVによってアッセイし、放出されたタンパク質の量を測定した。コーティングされていないPCMC対照からのタンパク質放出も測定した。この試験の結果を以下の表25に示す。
【表26】
【0133】
表25から、1分以内に水溶液中に放出されたコーティングされていないPCMCに比べ、PLAコーティングによって持続放出プロフィールが得られたことは明らかである。コーティングを変化させることによって、タンパク質の放出を調整することも可能である。したがって、PCMCからのタンパク質の放出を特定の使用のためにカスタマイズすることが可能である。
【実施例8】
【0134】
(動的蒸気吸着(Dynamic Vapour Sorption)(DVS))
制御された加湿環境下での、本発明の共沈プロセスによって製造された生物活性分子でコーティングされた粒子による、および単独で沈殿させたコア材料の水の取り込みは、Dynamic Vapour Sorption1000(Surface Measurement Systems)を用い、動的蒸気吸着(DVS)によって行った。
【0135】
実験設定は以下の通りであった。
DVSは、相対湿度(RH)0%の初期乾燥ステージが含まれる2回のフルサイクル実験のSpecial Automatic Operation(SAO)プロトコルを用いた。これに、各ステージにおけるRHが、90%RHまで10%ずつ漸増し、95%RHへ最後に急上昇する吸着ステージを続けた。この後に、0%RHに至る同一の脱着サイクルを続けた。このサイクルを繰り返した。以下の基準、すなわち、質量増加の変化率、すなわちdm/dtが0.002まで降下するか、あるいは最大ステージ時間が2000分となるように、DVSステージ変化を制御した。
【0136】
試料の導入に先立ち、天秤の風袋を計り、安定なベースラインが観察されるまで機器を平衡化した。次いで、粒子を装填して初期重量を記録し、続いてSAOのスイッチを入れた。実験は、SAOの終了まで実行した。
【0137】
図10〜14はそれぞれ、L−グルタミン、L−グリシン、L−グリシン/インスリンPCMC、D,L−バリン/インスリンPCMC、およびD,L−バリンのDVS図である。
【0138】
図10〜14は、コア共沈剤が、80%までの相対湿度において極めて低い吸湿性を示すことを示している。80%RHを超えると、L−グリシン(図11)のように溶解しやすい共沈剤は、かなりの量の水を取り込み始める。コア材料表面上のタンパク質のコーティングは、コア材料単独よりも多くの水を取り込む製剤を生じることが分かる。このことは、結晶の外側にタンパク質がコーティングされているという理由から予想される。重要なことには、試料は通常、全サイクルを通過した後で蒸気吸着等温線に対して示す変化は最小限であり、すなわち、第2の吸着サイクルは一般に、第1のサイクルと極めて類似している。当業者には当然のことながら、これは、粒子が、ガラスのように水蒸気による結晶転移に至る有意な変化を受けないことを示している。したがって、粒子は、高湿度における保存に対して安定であることが予想される。
【0139】
別の実験では、初期乾燥相後に0%から80%まで相対湿度を上昇させ、同一の脱着ステージが続く単一サイクルSAO(SAO2)を用いた。これを図15に示す。試料は、上述の手順(MSLIの項)に従って捕集しMSLIを行った。
【0140】
アルブミン75mgを、L−グルタミンの飽和溶液15mlに溶かし、溶解容器中の2−プロパノール150ml中にシリンジポンプを用いて500rpmで分注した。SAO2を用いるDVSにおける加湿前後の乾燥粉末製剤10mgについてMSLIを行った。
【0141】
表26は、DVSにおけるインキュベーション前を示している
【表27】
【0142】
表27は、DVSにおけるインキュベーション後を示している
【表28】
【0143】
表26および27に示された結果は、粒子の自由流動性、細粒分画および凝集度が、DVS中の80%RHにおけるインキュベーションによって実質的に影響を受けないことを示している。このことは、送達用具では湿った雰囲気への暴露が起きる可能性があるため、医薬製剤、特に経肺製剤の製造にとって重要な利益がある。
【0144】
さらに、空気力学的特性の保持と合致して、高湿度に対して平衡化された生物活性分子でコーティングされた微結晶のSEM画像は、粒子が、乾燥条件下で保存された粒子と実質的に同じ形状およびサイズを維持することを示している。
【実施例9】
【0145】
(フロー式沈殿装置におけるPCMCの製造)
図16は、全体として10で表される連続流型沈殿機器を示している。フロー式沈殿機器10は、溶媒A12(例えば、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液)および溶媒B14(例えば、共沈剤飽和溶媒相)の供給源を含む。溶媒12、14は、ポンプ(図示せず)により、生体適合性チューブ16に沿って混合装置18まで送られる。混合装置18に入る溶媒12、14および出口ならびに放出パイプ20を示す混合装置18の断面も示す。懸濁液捕集容器22を用い、形成されたPCMCを捕集する。
【0146】
一方のポンプは、濃縮された共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を送り、もう一方のポンプは、共沈剤で飽和された溶媒相を送る。粒子コーティング材料などの第3の成分が必要な場合には、さらにポンプを使用することができる。
【0147】
ポンプは、様々に異なった種類であってよいが、所定の流速で溶液を正確に送り、用いられる生物活性分子と適合していなければならない。好都合には、一連の流速にわたって水溶液および水混和性溶媒を送るために最適化されていることから、HPLCポンプを使用することができる。通常、水溶液は、0.1ml/minから20ml/minの流速で送られる。水溶液用ポンプヘッドおよびラインは、生物活性分子が付着しないような材料で製作しなければならない。一般的に、溶媒は、水性よりも4〜100倍速く送られるため、より強力なポンプが必要なことがある。通常、溶媒は、2ml/minから200ml/minで送られる。
【0148】
混合装置18は、沈殿がほぼ即時に生じ始めるように、連続水性流を連続水混和性溶媒流と迅速かつ密に混合するための方法を提供する。図16における略図は、例示目的に過ぎず、様々に異なった構成を用いることができるであろう。
【0149】
混合装置18は、2つの流れの迅速な混合を達成する任意の装置でよい。すなわち、例えば、入ってくる液体のフローパターンを形成することによって動作する静的装置か、あるいは2つの溶媒流れを一緒に活発にかき混ぜる動的装置がある。動的装置であることが好ましい。2つの流れのかき混ぜは、撹拌、超音波処理、振盪または同種のものなどの様々な手段の使用によって達成することができる。撹拌の方法には、パドル撹拌機、スクリューおよび磁気撹拌機が含まれる。磁気撹拌を使用する場合には、例えば、単純な棒またはマルタ十字架などの異なる輪郭を持つ様々な撹拌子を使用することができる。混合装置の内部を裏打ちする材料は、その上に生物活性分子または粒子が著しく結合しないように選択することが好ましい。適当な材料には、316ステンレス鋼、チタン、シリコーンおよびテフロン(登録商標)が含まれる。
【0150】
必要な製造規模に応じて、混合装置は、様々なサイズおよび構成で製造することができる。必要な混合室のサイズは、2つの溶媒流に関する流速の関数である。水性が約0.025〜2ml/minで溶媒が2.5〜20ml/minの流速の場合、0.2mlなどの小さな混合室を使用するのが好都合である。
【0151】
(実験プロトコル)
(連続流型共沈殿装置)
連続共沈システムは、2台のHPLCポンプおよび再設計した動的溶媒混合室を用いて作り上げた。使用したポンプは、0.01〜9.99ml/minの可変流速が可能なGilson303HPLCポンプとした。従来はGilson811 C動的混合器であった再設計した混合室を改変し、急速混合および共沈剤の結晶化を可能にした。設計の目的は、生成物結晶の急速放出が可能な内部滞留容量(dwell volume)の小さなフローセルを作製することであった。
【0152】
Gilson 811 C混合室から内部静的混合器/フィルターエレメントを取り出し、PTFEから機械加工された特注の挿入物と取り替えた。この挿入物は、かなり少ない内部滞留容量を提供し、内部乱流を増やすように設計した。乱流の増加は、結晶サイズを縮小し、結晶が固まって凝集塊を形成するのを最小限に抑えることが期待される。また、内部動的混合器を改変することによって、内部乱流をさらに制御した。元々のエレメントを、マルタ十字架のような形をした代わりの磁気撹拌子と交換し、次いでそれを、0〜1500rpmの速度に達することを可能にした変速MINI MR標準磁気撹拌機モジュールに連結させた。
【0153】
放出管は、約0.5mmの内部寸法を有し、懸濁液を連続的に捕集して沈降させる密閉したガラスジャーに連結した。
【0154】
(薬理学的に有用な材料の連続流微結晶沈殿)
対象となる材料の飽和溶液は、必要に応じて若干の水混和性溶媒を含有していてもよい主に水溶液で調製した。同じ材料の飽和溶液を、主に水混和性溶媒または溶媒の混合物で調製した。主に水溶液を、一方のポンプによって動的混合器に送り、主に溶媒溶液を別のポンプによって送る。2台のポンプの流速を調整し、沈殿が生じるのに最も適した条件を得ることができる。一般的に、一方のポンプの流速は、混合室内で沈殿が生じ始める溶媒条件の変化が十分に迅速であるように、他方のポンプの少なくとも4倍を超えるものとする。言い換えれば、核生成は、微結晶(すなわちPCMC)が形成するためには急速である必要がある。
【0155】
(実施例:D,L−バリン微結晶)
基本手順は、2種の選択された溶媒をD,L−バリンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、2種の溶媒は、水およびイソプロパノールである。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給され、D,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1は、Fluka Chemikより供給された。両溶液は、過剰のD,L−バリンを一定量の溶媒中に入れることによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0156】
溶液調製後、ポンプAにタンパク質/D,L−バリン水溶液を入れ、ポンプBにD,L−バリン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、共沈を開始した。
【0157】
重力濾過および攪拌によって微結晶(すなわち、PCMC)を単離すると、自由流動性の乾燥粉末が得られた。結晶のSEM画像は、狭いサイズ分散および一貫した板状形態を示す。
【0158】
(L−グルタミン微結晶)
基本手順は、2種の選択された溶媒をL−グルタミンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、2種の溶媒は、水およびイソプロパノールである。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給され、D,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1は、Fluka Chemikより供給された。両溶液は、過剰のL−グルタミンを一定量の溶媒中に入れることによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0159】
溶液調製後、ポンプAにL−グルタミン水溶液を入れ、ポンプBにイソプロパノールL−グルタミン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、連続流共沈プロセスを開始させた。
【0160】
重力濾過によって微結晶を単離すると、ぎっしりと詰まった乾燥粉末が得られた。結晶のSEM画像は、狭いサイズ分散および一貫した細長い板状形態を示す。
【0161】
また、同様の手順を用い、飽和溶液からグリシンを沈殿させた。
【0162】
(生物活性分子微結晶共沈(すなわち、PCMCの形成))
以下に典型的な共沈実験を述べるが、その原理は、タンパク質でコーティングされた微結晶の前のミリグラムバッチ調製から得られた。
【0163】
試験プラットフォームとして、Europa Bioproducts Ltd.より供給されたカンジダシクリンドラセア(Candida cyclindracea)(ルゴサ(rugosa))製品番号EU122C、ロット番号LAY Y53−002から単離されたタンパク質Europaエステラーゼ1(Cc/F5)を、Fluka Chemikaより供給されたD,L−バリン、製品番号94640、ロット番号410496/1上に沈殿させた。次いで、共沈した生成物を濾過によって単離するとすぐ、走査型電子顕微鏡および酵素アッセイによって分析した。
【0164】
基本手順は、2種の溶媒溶液をD,L−バリンで飽和させることによって開始する。この特定の実施例では、これら2種の溶液は、水およびイソプロパノールであった。水は、ミリポア水精製システムから社内で得た。イソプロパノール(プロパン−2−オール/GPR)製品番号296942D、ロット番号K30897546 227は、BDHより供給された。両溶液は、過剰のD,L−バリンを一定量の溶媒中に装填することによって飽和させた。次いで、自動振盪機で一夜振盪させた。室温で約12時間振盪した後、溶媒を、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターで濾過した。
【0165】
次いで、濾過した飽和水溶液に、緩衝液中で作製した所定量のエステラーゼタンパク質を添加した。
【0166】
溶液調製後、ポンプAにタンパク質/D,L−バリン水溶液を入れた。ポンプBにD,L−バリン溶液を入れた。共沈を開始する前に、磁気撹拌機速度を約750rpmに設定した。ポンプAを0.25ml/minに設定し、ポンプBを4.75ml/minに設定した。準備ができたらポンプを同時にスタートさせ、共沈させた。
【0167】
共沈した結晶生成物(すなわち、PCMC)をフラスコ中に捕集し、一夜沈降させた。沈降後、上清溶液の90%をデカントして除いた。フラスコを新鮮なイソプロパノールで詰め替え、過剰のD,L−バリンの生成物を洗浄した。洗浄後、Whatman Durapore(0.45μm)薄膜フィルターを用いて生成物を再度濾過した。
【0168】
(分析手順)
共沈した結晶の単離後、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて結晶の特徴付けを行った。両技法は、製造された結晶のサイズおよび形状の測定を可能にした。
【0169】
共沈後のタンパク質の活性を評価することは、酵素アッセイによって行った。エステラーゼタンパク質酵素が、酪酸p−ニトロフェニルのブタノールおよびp−ニトロフェノールへの分解を触媒する特異的アッセイを用いた。
【0170】
Europaにより供給された純粋なエステラーゼとD,L−バリン上に共沈されたエステラーゼの間の並行試験から、実質的な量の活性が保持されていたことが立証された。
【0171】
沈殿した微結晶から溶媒を除去することができる。上記の連続流システムまたは前述のバッチプロセスによって製造された懸濁液を重力下で沈降させ、過剰の溶媒をデカントして約5〜20重量%の最終懸濁液を得ることができる。さらに、これらを、濾過、遠心分離または流動床などの標準的分離技法によってさらに濃縮し、かつ/または乾燥することができる。
【0172】
ごく少量の残留溶媒、低い嵩密度の医薬製剤および薬学的に有用な材料については、超臨界CO2を用いる臨界点乾燥によって、上記懸濁液から溶媒を除去することができる。この技法は、粒子から残留する低レベルの溶媒を除去するのに有用であることが知られている。我々は、驚いたことに、他の単離技法によって得られるよりも、嵩密度がかなり低い粉末および医薬製剤につながるという利点も有していることを発見した。低い嵩密度の製剤は、生物活性分子の肺送達に特に有用である。臨界点乾燥は、当技術分野において知られている多くの方法で行うことができる。
【0173】
(実施例)
イソプロパノール中のD,L−バリン結晶の2.5%w/v懸濁液(上記のように調製した)25mlを高圧室中に装填し、すべてのイソプロパノールが除去されるまで超臨界流体CO2を懸濁液に通過させた。圧力をゆっくりと解放し、低残留溶媒、低い嵩密度の粉末を密封した容器に移した。超臨界流体乾燥プロセスは、狭いサイズ分散に影響しない。
【実施例10】
【0174】
(DNAでコーティングされた微結晶)
(試験したDNAのタイプ)
・合成オリゴヌクレオチドDQA−HEX(Dept of Chemistry、Strathclyde University、UK)
5’HEX(T*C)6GTG CTG CAG GTG TAA ACT TGT ACC AG
HEX=2,5’,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−6−カルボキシフルオレセイン
T*=5−(3−アミノプロピニル)−2’−デオキシウリジン
医療用途:免疫応答に関係しているヒト白血球抗原であるクラスII主要組織適合抗原をコードするHLA−DQ領域中の第6染色体を検討するために一般的に使用される対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(D.Graham、B.J.Mallinder、D.Whitcombe、N.D.Watson、およびW.E Smith.Anal.Chem.2002、74、1069〜1074)。
【0175】
(人工肺におけるDNAでコーティングされた結晶の分布(MSLI))
オリゴヌクレオチドでコーティングされた結晶を調製し、経肺投与に適している粒子を形成することを明らかにした。
実験は、純粋な蛍光標識したオリゴヌクレオチドDQA−Hexおよびそれとニシンの精子から得られる粗製のオリゴヌクレオチド調製物との混合物について行った。混合実験は、DQA−Hexの供給が限られてもオリゴヌクレオチドの装填量を変化させることを可能にした。
【0176】
(方法)
1.OCMCの調製
試料1:DQA−HEXおよび粗製オリゴヌクレオチドの混合物
粗製オリゴヌクレオチド4.6mg
ニシンの精子由来のDNA(Sigma D−3159、Lot 51K1281は、50bp未満の「粗製オリゴ」と名付けられた「粗製オリゴヌクレオチド」に分解した)
飽和D,L−バリン溶液300μlを添加し、よく混合し1分間煮沸し、次いで氷の上に置く。
DQA−Hex100μl(=26.3μg)を添加し、1分間煮沸し、添加の前に氷の上に置く。
この溶液を、室温において500rpmで磁気撹拌機(Heidolph MR3000)を用いて混合しながら、D,L−バリンで飽和された2−PrOH 6ml中に滴加し(Gilsonピペッター、イエローチップ)、約30分間沈降させ、次いで濾過し(Durapore薄膜フィルター、HVLP04700型)、ガラスバイアル中に結晶を移して空気乾燥させる。
【0177】
試料2:DQA−HEXのみ
添加の前に1分間煮沸し(次いで、氷の上に置いた)DQA−Hex100μl(=26.3μg)を、飽和D,L−バリン溶液300μlに添加し、よく混合する。
上記のような沈殿。
【0178】
2.人工肺における粉末の分布
粉末15.41mg(試料1)または粉末13.52mg(試料2)を装填したカプセル。
【0179】
3.人工肺において捕集された分画中のオリゴヌクレオチドの濃度測定
(a)UV260nm−オリゴヌクレオチドの総量
Perkin Elmer−Lambda 3−UV/VIS Spectrometer、粗製オリゴヌクレオチドを用いる較正標準品。
(b)DQA−HEX中の蛍光マーカーHEXの蛍光(556/535nm)。
Perkin Elmer−LS45 Luminiscence Spectrometer、DQA−HEXを用いる較正標準品。
【0180】
(結果)
図17は、人工肺における微結晶の分布を示している。細粒分画(FPF)は、DQA−HEXと粗製オリゴの混合物でコーティングされた微結晶では29.9%であり、DQA−HEXのみでコーティングされた微結晶では24.4%であった。この結果は、オリゴヌクレオチド濃度を測定するために2種の異なる技法を用いて同様の結果が得られたことから、MSLIプロトコルが頑健性であることを示している。同様に、2つのタイプのオリゴヌクレオチドは密に混合され、粒子上のコーティングとして均一に分布されていると推測することができる。また、高い用量放出からは、粒子が自由流動性であること、および高いFPFからは、粒子が経肺製剤を調製するのに有用であることが見て分かる。
【0181】
PCRは、DQA−HEXでコーティングされた微結晶を水性に再溶解して得られるDQA−HEXをプライマーとして用いて行った。正しい遺伝子産物を増幅し、PCR産物の配列決定によって、DQA−プライマーの配列が変化していないことが分かった。この結果は、微結晶上にコーティングされたDNAが生物活性を保持し、検出可能な分解生成物が観察されないことを示している。このことは、医薬製剤の製造にとって有利である。
【実施例11】
【0182】
単層などのコーティングは極めて薄いことがあるため、生物活性分子が粒子の表面上にコーティングされていることを確認することが困難であることが多い。コーティングが形成されたかどうかをチェックする一つの方法は、結晶コア材料の飽和溶液に粒子を再溶解することである。生物活性分子がマトリックスに捕捉されていれば再溶解しないはずであるが、コーティングであれば、再溶解して、コーティングされていない結晶を残すはずである。この実施例は、オリゴヌクレオチドが結晶の表面上にコーティングされていることを示している。
【0183】
(再溶解実験)
1.OCMCの製造:粗製オリゴヌクレオチド2mgを、TRIS(10mM、pH=7.8)50μlおよびD,L−バリン溶液の飽和水溶液150μlに溶かした。この溶液を、磁気撹拌機で撹拌しながら、Gilsonピペット(イエローチップ、0〜200μl)を用いて、D,L−バリンで飽和された2−PrOH 3mlに添加した。撹拌せずに、少なくともさらに30分間、バイアルを放置した。
2.OCMC懸濁液の分量(160〜800μl)を、Eppendorfバイアルに移し、9000rpmで回転させた(沈降によって分離したA7/B7/C7以外)。上清を注意深く取り除き、残った結晶を空気乾燥した。
3.既知量の飽和または飽和に近いD,L−バリンの水溶液への結晶の再溶解。
4.再溶解後の水相におけるオリゴヌクレオチド濃度の測定。
(オリゴヌクレオチド標準品:10μg/ml:OD260nm=0.226またはOD260nm=1:44.25μg/ml;H2O(あまり良く溶けない:約2mg/ml)あるいは飽和D,L−バリン溶液に溶かした。
【0184】
表28は、条件および結果を要約している。結晶を完全に溶かした試料1(A1/B1/C1)および2(A2/B2/C2)から、我々は、84±2%という最高回収率を得た。試料番号3、4、6、7(D,L−バリン結晶を溶かしていない)について我々は、80±4%という平均回収率を見出している。このことから、我々は、オリゴヌクレオチドが飽和D,L−バリン溶液に完全に溶けたと結論付けることができる。このことは、オリゴヌクレオチドがマトリックス中でなく、結晶の表面上にあることを強く示している。同じことはPCMCにあてはまるであろう。
表28は、再溶解実験および条件を要約している。
【表29】
【実施例12】
【0185】
表29は、共沈プロセス中の酸化を防ぐための添加剤としてシステイン(Cys)およびN−アセチルシステイン(NA Cys)を使用したα1−アンチトリプシンでコーティングされたα−乳糖微結晶を形成する一連の条件を示している。
【0186】
プロパノール中への沈殿によるα1−アンチトリプシンでコーティングされたα−乳糖微結晶の調製は一般的に、生物活性の完全な喪失につながる。結果を、以下の表29に示す。
【表30】
【0187】
表29は、システインおよびN−アセチルシステインが、抗酸化剤なしに調製された微結晶よりも活性が高いα−アンチトリプシンでコーティングされた微結晶を作り出すことを示している。
【0188】
実験手順は、以下に定義する通りである。
(沈殿および溶解中のシステイン添加)
α1−アンチトリプシン16mgを、システイン10mg/mlを含有するTRIS緩衝液(20mM、pH8)0.4mlに溶かし、システイン10mg/mlを含有する乳糖で飽和されたTRIS緩衝液(20mM、pH8)1.2mlに添加した。この溶液0.4mlを、様々な量の水を含有するプロパノール6mlに滴加した。最終生成物中の活性およびタンパク質濃度は、システイン10mg/mlを含有するTRIS緩衝液0.8mlに結晶を溶かした後に測定した。
【0189】
(沈殿および溶解中のN−アセチルシステイン添加)
α1−アンチトリプシン10mgを、N−アセチルシステイン0.22mg/mlを含有する乳糖で飽和されたTRIS緩衝液(20mM、pH8)1mlに溶かし、この溶液0.4mlを、N−アセチルシステイン0.22mg/mlあるいは10mg/mlを含有するプロパン−2−オール6mlに滴加した。活性およびタンパク質濃度測定については、沈殿混合物と同じ濃度のN−アセチルシステインを含有するTRIS緩衝液0.4mlに結晶を溶かした。
これらは、生物活性を改善しかつ維持するために、添加剤または抗酸化剤などの賦形剤を共沈物に有利に添加できることを示している。
【実施例13】
【0190】
(ワクチンPCMC)
PCMCは、コア結晶材料としてのD,L−バリンあるいはL−グルタミンと共に、卵白アルブミン、ジフテリアトキソイドおよび破傷風トキソイドを用いて作製した。
【0191】
(卵白アルブミン、ジフテリアトキソイド(DT)および破傷風トキソイド(TT)でコーティングされた微結晶)
すべての実験において、水溶液の半分の容量は、飽和アミノ酸溶液で構成した。卵白アルブミンは、粉末として供給された。コア材料上の理論的装填量が5、10、20および40%となるように、適切な量の粉末を量り分けた。これに、アミノ酸の50%飽和溶液が得られる量の水を添加するか、あるいは2−メチル−2,4−ペンタンジオールを水相に組み入れる場合には、アミノ酸の濃度を一定に保つため、添加されるジオールの容量で等しい容量の水を置き換えた。タンパク質と担体の共沈を、水溶液の10倍を超える容量の2−プロパノールまたは2−メチル−2,4−ペンタンジオール中で行い、ジオールを添加しない水溶液については9.1%の、水相にジオール20%を添加した場合は6.5%の沈殿溶媒中のH2Oの最終百分率を得た。
【0192】
水溶液は、磁気撹拌下で、小さなバイアルに入っている有機溶媒にシリンジポンプで送った。
【0193】
図18は、10%装填量のDT PCMCの画像である。DT PCMCは、L−グルタミンの結晶コアを有し、プロパン−2−オール中で沈殿させた。
【0194】
(混合ジフテリアトキソイド(DT)、破傷風トキソイド(TT)および卵白アルブミンでコーティングされた微結晶)
混合DT/TT PCMCについては、適切な容量のDTストック溶液(濃度=19.5mg/ml)およびTTストック溶液(濃度=27.5mg/ml)を、水溶液に添加して沈殿させ、必要な理論的装填量を得た。卵白アルブミン/TT PCMCについては、適切な量の卵白アルブミンを量り分け、これに必要な容量のTTを添加して必要な理論的装填量を得た。次いで、上述のように結晶を調製した。
【表31】
【0195】
共沈した卵白アルブミンは、最初の水性調製物中の卵白アルブミンに比べ、構造および凝集レベルの変化を示さなかった。
【表32】
【表33】
【表34】
【0196】
(マウス試験用に作製されたジフテリアトキソイド(DT)製剤)
DTの理論的装填量が5%であるワクチンでコーティングされた微結晶を製造した。L−グルタミンが結晶コア材料を構成し、水混和性有機溶媒として2−プロパノールを使用した。
DTは、14.5mg/mlの濃度で水溶液として供給された。DT溶液276μlを、飽和L−グルタミン溶液2313μlに添加した。これに、H2O 2037μlを添加し、混合物4.5mlを、磁気撹拌下、L−グルタミンで飽和された2−プロパノール45ml中で共沈させた。DT−グルタミン結晶約80mgが回収され、マウスにおけるワクチンの試用に50mgを用いた。DT−グルタミン結晶は4℃で保存した。
【0197】
(投与前の保存条件の変化)
水性緩衝液中のDTの比較試料および乾燥DT−グルタミン微結晶の試料を以下の通り保存した。
4℃で2週間のインキュベーション、
室温で2週間のインキュベーション、
37℃で2週間のインキュベーション、および
45℃で2日間のインキュベーション。
【0198】
(DTを抗原として使用するin vivoの免疫学的実験)
マウスへの投与に先立って、インキュベートした微結晶をリン酸緩衝食塩水(PBS)に懸濁した。結晶1350マイクログラム(DT 50マイクログラム)をPBS 500マイクロリットルに懸濁した。1日目に、懸濁液50マイクロリットル(すなわち、DT5マイクログラム)を各マウスの左後肢に筋肉内投与した。
【0199】
21日目に、マウスから採血した。29日目に、前と同じ量のDTでマウスにブースター投与を行った。42日目に、マウスからもう一度採血した。血清は、ELISAアッセイを用いて分析した。
【0200】
一次および二次免疫応答は、DT−グルタミン微結晶の試料が、どのような保存プロトコルであっても抗体を生じさせる(体液性免疫)ことを示した。このことは、ワクチンでコーティングされた微結晶用の製造プロセスが、DT生物活性の良好な保持につながり、復元および筋肉内投与後に生物がDTを自由に利用可能であることを証明している。
【0201】
また、水性緩衝液中に保存したすべてのDT試料は、生物活性を示さなかった45℃で保存した試料を除き、一次および二次免疫応答を与えた。
【0202】
45℃で保存したDT−グルタミン微結晶についての一次および二次免疫応答の存在は、微結晶へのDTの製剤化が、溶液中に比べて著しく強化された高温における保存安定性を付与したことを示している。
【0203】
このような強化された安定性は、不良環境、緊急事態における、および発展途上国におけるワクチンの流通および投与にとって重要な利点である。
【0204】
したがって、ワクチンコーティングのあるPCMCを形成することは、ワクチンを保存および輸送しやすくする特別の安定性をワクチンに付与すると結論付けることができる。これは気温の高い諸国で有用となり得る。
【実施例14】
【0205】
(インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶上のインスリン生物活性のex−vivo測定)
(パート1)
インスリン生物活性アッセイは、7.4のpHを得るために加熱(37℃)および通気(95%O2/5%CO2)した生理的食塩溶液(PSS)において試験した12週齢の雄性ウィスターラットから摘出した抵抗動脈(寸法200μm未満)で行った。薬物の管腔適用を可能にする圧力ミオグラフは、感度の初期手段を提供した。圧力系において、反対のガラスカニューレ(外のり寸法80μm)上に載置した動脈を、15分間にわたって5mmHg未満から40mmHgまで徐々に加圧し、アッセイを開始する前にさらに15分間保った。応答は、専用のビデオ解析ソフトウエア(MyoView)を用いて測定した。圧力ミオグラフは、極めて低い濃度(1×10−10M)におけるインスリンの血管拡張作用を検出することができる。
【表35】
【0206】
(結果)
表34は、ノルアドレナリン前収縮(100=100%収縮)に対するインスリン媒介性弛緩を3例の平均(SD)で示しており、これらの値は、微結晶と対照との間に有意差がないことを示している(p>0.05)。
【表36】
【0207】
図19に示されるインスリンPCMCによって得られる弛緩の度合いは、USPインスリン製剤と同程度であり、PCMCの製造または室温保存中にインスリンが変性しないことを示している。
【0208】
(パート2)
(ワイヤーミオグラフ試験)
次いで、続く試験に向けてより高い処理能力を得るため、ワイヤーミオグラフを使用した(P110およびP660、Danish MyoTech、Aarhus)。ワイヤー系において、2本の40μmステンレス鋼線材の間に動脈を載置し、一方をマイクロメーターに連結し、他方を力変換器に連結し、既知の標準寸法に設定し、最適な薬理学的反応を作り出した。力産生は、専用のソフトウエア(MyoDaq)によって捕らえた。すべてのバイオアッセイは、123mM KClの2つの洗浄液から始め、動脈における収縮機能を刺激し、続いて血管収縮薬アゴニストのトロンボキサンミメティック[U44169]への暴露によって前収縮させた。次いで、動脈を、浴内に直接(ワイヤー)か、あるいは一定圧力で徐々に注入することによって、ガラスの取り付けカニューレの先端に挿入された胎児用マイクロカニューレを通して管腔内に直接(圧力)漸増濃度のインスリンに暴露させた。
【0209】
(試料調製)
使用したインスリンは、USPウシ膵臓インスリン(Sigma I8405)であった。混合は、常に磁気撹拌によって行った。
結晶は、Durapore薄膜フィルター(0.4ミクロン)で濾過することによって単離し、次いで、換気フード中で空気乾燥した。
タンパク質装填量は、結晶の収率から決定される最大値に基づいている。
【表37】
【0210】
(結果)
図19は、ミオグラフ結果の要約を示している。
トロンボキサンミメティック[U44169]による前収縮後、インスリン媒介性血管緊張低下プロフィールは、インスリンに特有であり、主に一酸化窒素シンターゼの活性化と、続く内皮一酸化窒素の放出を介してその効果を発揮する。
【0211】
インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶によって得られるインスリン媒介性血管緊張低下は、USPインスリン製剤と本質的に同じであった。D,L−バリンそのものは、生物活性を示さなかった。これらの結果は、インスリンの生物活性が、共沈プロセスによって、あるいはインスリンでコーティングされた微結晶の長期室温保存によって変化しないことを示している。このことは、インスリンが、処理または保存中に化学的に修飾されず、凝集されず、いかなる不可逆的な変性も受けなかったという確かな証拠である。分解がないことは、D,L−バリン微結晶の復元の直後に、90%を超えるインスリンが、共沈および6カ月を超える室温における粉末としての保存後に同じ形態で依然として存在することを示すHPLC分析によって裏付けられた。対照的に、共沈に使用されたものと同じ水溶液中に維持されたインスリンは、30分未満の間に著しい変化を受けた。我々は、インスリンでコーティングされたD,L−バリン微結晶が、多段インピンジャー試験において高い細粒分画を示す自由流動性粉末であることを示したことから、生物活性分子でコーティングされた微結晶は、強化された特性を持つ医薬製剤を製造するのに極めて適していることは明らかである。
【実施例15】
【0212】
図20〜24は、本発明に従って製造されたえり抜きのPCMCのSEM画像である。
図20は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/D,L−バリンPCMCの倍率×1600におけるSEM画像である。図21は、プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/D,L−バリンの倍率×6400における他のSEM画像である。図20および21は、結晶がフレーク状であり、形状およびサイズが実質的に均一であること、ならびにインスリンの実質的に均一なコーティングが存在することを示している。
図22は、プロパン−2−オール中で沈殿したアルブミン/L−グルタミンPCMCのSEM画像である。この場合も、PCMCは均一であるが、針状である。
図23は、プロパン−2−オール中で沈殿した均一かつフレーク状のインスリン/L−ヒスチジンPCMCのSEM画像である。
図24は、プロパン−2−オール中で沈殿したα−アンチトリプシン/D,L−バリンPCMCのSEM画像である。PCMCは、形状およびサイズが実質的に均一であることが分かり、フレーク状である。
【実施例16】
【0213】
(硫酸トブラマイシンでコーティングされた微結晶)
この実施例において、我々は、驚いたことに、典型的な生体巨大分子よりもかなり小さい水溶性の生物活性化合物を用い、医薬製剤に適している生物活性分子でコーティングされた微結晶を製造するのにも共沈プロセスが使用できることを示す。これらの製剤は、バッチあるいは連続プロセスによって製造することができ、D,L−バリンなどの非吸湿性担体を有利に用いることができる。このプロセスを水溶性の抗生物質である硫酸トブラマイシンについて示すが、他の抗生物質および他の水溶性生物活性分子にも適用することができる。生物活性分子は、極性であり、共沈に使用するpHでイオン化する1個または複数の官能基を含むことが好ましい。このことは、水中での高い溶解度および水混和性有機溶媒中での溶解度の低下につながる傾向がある。また、化合物は、結晶化でコア材料によって形成される単位格子よりも大きな最大の寸法を有していることが好ましい。このことは、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形成を助け、結晶格子内に生物活性分子が包接される可能性を最小限に抑えるはずである。
【0214】
(実験)
(バッチプロセス)
D,L−バリン担体結晶上に様々な理論的装填量の生物活性分子を含有するバッチは、硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)3mg(4.8%w/w)、6mg(9.1%w/w)あるいは12mg(16.7%w/w)を用いることによって調製した。いずれの場合にも、秤量した硫酸トブラマイシンを、蒸留水中のD,L−バリン1ml(60mg/mlで)に溶かした。上記0.5mlを、1500rpmで混合しながら、D,L−バリンで飽和されたPr2OH 10mlへ1mlのピペットを用いて滴加した。結晶を真空中で直ちにDurapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、Pr2OH(1%H2Ov/v)10mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0215】
(連続プロセス)
(理論的装填量4.8%w/w)
硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)30mgを、蒸留水中のD,L−バリン10ml(60mg/mlで)に溶かした。水溶液5mlを、750rpmの動的混合器速度を用いて、流速が水溶液用ポンプについては0.5ml/minであり、溶媒用ポンプについては10ml/minである実施例9に記載の連続共沈システムで、D,L−バリンで飽和されたPr2OH(100ml)と混合した。理論的装填量が4.8%w/wの結晶を捕集し、真空中Durapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、プロパン−2−オール(1%H2Ov/vを含有する)50mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0216】
(理論的装填量1.6%w/w)
硫酸トブラマイシン(SigmaからのT−1783)20mgを、蒸留水中のD,L−バリン20ml(60mg/mlで)に溶かした。水溶液5mlを、750rpmの動的混合速度を用いて、流速が水溶液用ポンプについては0.5ml/minであり、溶媒用ポンプについては10ml/minである実施例9に記載の連続共沈システムで、D,L−バリンで飽和されたプロパン−2−オール(100ml)と混合した。結晶を捕集し、真空中Durapore 0.4ミクロンフィルターで濾過し、Pr2OH(1%H2Ov/v)50mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0217】
(結果)
上記で調製したトブラマイシンでコーティングされたバリン結晶は、自由流動性かつ非吸湿性であり、医薬製剤の製造に適している。バッチプロセスによって調製された粒子のSEM画像は、バリン微結晶に特有のフレーク状形態および肺送達に適当となる5ミクロン未満の平均最大直径を有していることを示している。装填量を変化させてもサイズまたは形態に明らかな違いは認められない。図26は、装填量が9.1%w/wであるバッチプロセスによって調製された試料を示している。連続プロセスによって調製された粒子も、自由流動性であり、滑らかで明確な形態である。連続混合器において使用した低い混合率および小さな羽根車は、図27に示すように、バッチプロセスにおけるよりも大きな粒子を提供する。
【0218】
(結論)
驚いたことに、活性剤が生体巨大分子ではない生物活性分子でコーティングされた微結晶を得ることができ、連続共沈プロセスによって製造することができる。
【実施例17】
【0219】
(生物活性分子でコーティングされた微結晶の形態および凝集特性を変えるための試剤)
例えば、針状形態の微結晶を、より大きく、より球状の粒子に凝集させることは、医薬製剤にとって有利なことがある。針状粒子は流動性に乏しいが、球体は、処理特性および薬物送達特性に優れた粉末を提供することができる。あるいは、微結晶針状晶の成長を変化させ、より短い棒状形態を作り出すことができれば、処理の改善も得ることができる。ここで、我々は、共沈剤よりもかなり低い濃度における無機、有機塩または緩衝塩などのある種の試剤の添加を用い、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形状および凝集特性を変えることができることを示す。復元された製剤においてpH緩衝作用または等張性などの第2の機能を有する薬学的に許容できる添加剤が特に有利である。このタイプの添加剤の使用は、最終製剤において必要とされる成分数を最小限に抑える。
【0220】
(サブチリシンCarlsberg/L−グルタミン微結晶の棒状晶および球状凝集塊)
(実験)
サブチリシンCarlsberg5mg(0.7%w/w装填量、G7)または25mg(6.4%w/w装填量、G10)を、緩衝液(50mMクエン酸ナトリウム、150 mM塩化ナトリウム、pH5.5)4mlおよび蒸留水6mlに溶かした。上記0.25mlに、蒸留水中のL−グルタミン0.75ml(24.3mg/mlにおいて)を添加した。次いで、水溶液を、1500rpmで混合しながら、L−グルタミンで飽和されたEtOH 10ml中に1mlのピペットを用いて滴加した。結晶の分量をSEMスタブに直接付け、乾燥前の形態を評価した(G7*、G10*)。直ちに、残りの結晶を、真空中Durapore0.4ミクロンフィルターで濾過し、無水Pr2OH 5mlで洗浄し、換気フード中で空気乾燥した。
【0221】
(結果)
通常、水からエタノール中への共沈によって製造されるタンパク質でコーティングされたL−グルタミン微結晶は、寸法が約5ミクロンの針状形態を示す。驚いたことに、低濃度のクエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム存在下での共沈は、針状晶の長さに著しい短縮を生じる。さらに、長さの変化は、タンパク質の濃度によって制御され、タンパク質装填量が増加するにつれて、より小さな棒状晶が製造される。図28および図30は、クエン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム存在下で共沈した典型的な生物活性分子でコーティングされたL−グルタミン結晶のSEM画像を示している。6.4%w/wにおいては、棒状晶の長さは、主に3ミクロン未満であり、平均して2ミクロン未満である。このような生物活性分子でコーティングされた微結晶のエタノール懸濁液は、医薬製剤にとって有利な特性を有することがある。例えば、当技術分野において知られている吸入装置を用いる経肺経路によって懸濁液を送達できる可能性がある。さらにタンパク質装填量の増加を用い、微結晶のサイズをさらに縮小することができる。個々の結晶で構成される乾燥粉末としての棒状晶の単離は、臨界点乾燥によって行うことができる。従来の微結晶のフィルター膜上への濾過と、続いて空気乾燥を用いた場合、著しい変形が起こり、針状晶または棒状晶の球状凝集塊で構成される粒子が製造される。これらの極めて表面積の大きな球状粒子は、自由流動性粉末を有利に形成し、非吸湿性である。また、それらを、10〜20秒未満の間など、極めて迅速に水溶液に復元することができる。球状凝集塊を示すSEM画像を、図29および図31に示す。針状微結晶の球状凝集塊への変形は、球状晶が、医薬製剤における処理および使用がかなり容易であるため極めて有利である。ここで示される結果と極めて類似した結果は、治療用タンパク質を含む他のタンパク質について得ることができる。
【0222】
(結論)
共沈プロセスにおける緩衝液および塩などの薬学的に許容できる試剤の低濃度における使用は、生物活性分子でコーティングされた微結晶の形態および凝集挙動に驚くほど大きく有用な違いを生じる。使用する調整剤の濃度は、最終製剤中に15%w/w未満、好ましくは10%w/w未満で存在するようにしなければならない。調整剤の濃度があまりに高い場合には、担体結晶からの相分離および第2のタイプの生物活性分子でコーティングされた結晶の形成に到ることがある。
【実施例18】
【0223】
(連続プロセスによって調製された担体微結晶およびタンパク質でコーティングされた微結晶の粉末X線回折測定)
L−グルタミン、D,L−バリンおよびグリシンの微結晶はそれぞれ、実施例9に記載の連続プロセスを用い、エタノール、イソプロパノールおよびイソプロパノール中への沈殿によって調製した。同じ材料および溶媒を用い、これも連続共沈プロセスによって、10%w/w装填量のアルブミンでコーティングされた微結晶を調製した。粉末X線回折を用い、タンパク質と共に、およびタンパク質なしに調製された乾燥粉末試料を比較した。
【0224】
(実験)
試料は、Bruker AXS D8 Advanceを用い、以下の操作パラメータでPSD−検出器によって解析した。
【表38】
【0225】
(結果)
アルブミンを含む試料と含まない試料の間で比較を行った。
【表39】
【0226】
(グルタミン)
タンパク質と共に、およびタンパク質なしにエタノール中で沈殿したグルタミンのPXRDデータは、お互いに、および既知の単結晶構造(斜方晶系 P212121、16.020、7.762、5.119−Koetzle他Acta Cryst.B 1973、29、2571を参照)と完全に一致していることが分かった。図32は、得られた典型的データを示している。12〜18°領域に観察される幅広いこぶは、非晶質材料に起因するか、あるいは実験プロセスの人為的結果である可能性がある。アルブミン試料のピークは、純粋なグルタミンのピークよりもわずかに高い角度に位置する。
【0227】
(バリン)
タンパク質を含む、および含まないPXRDパターンは本質的に一致している。2種の可能な既知の多形が存在する(単斜晶系 P21/c 5.21、22.10、5.41、β=109.2 Acta Cryst B 1969、25、296および三斜晶系 P−1 5.222、5.406、10.835、90.89、92.34、110.02 Acta Cryst C 1996、52、1759)。多形が存在することを確認することは、いくつかの要因によって複雑化される。試料の大きな好ましい配向は、3本の大きなピークを与え、パターンの残りはすべて比較的小さく、バックグラウンドから区別するのが困難である。したがって、これらのピークの位置はむしろ不正確である。三斜晶系試料は120Kで実行されている。したがって、PXRDを実行した室温とはわずかに異なる単位格子を有するはずであり、観察データとぴったり一致することは期待できないと思われる。2種の多形は、いくつかのむしろ類似したセル寸法を有し、かなり近い関係にあるため、よく似た予測ピークを与える。試料は単斜晶系多形である可能性が高いが、不確かである。
【0228】
(グリシン)
アルブミンと共沈したグリシンのPXRDは、純粋なグリシンのPXRDに比べて、余分なピークを示す。3形態のグリシンが報告されている(単斜晶系 P21/n、単斜晶系 P21および三方晶系−Acta Cryst 1972、28、1827;Acta Cryst 1960、13、35およびActa Cryst B 1980、36、115を参照)。どちらの試料にも三方晶系の証拠は存在しない。純粋なグリシンのPXRDは、P21/n多形とぴったり一致している。グリシン/Alb試料における余分なピークは、多少のP21多形の存在によって説明することができる。したがって、この試料は、かなりの量の両相が存在する2種の多形の混合物である。
【0229】
(結論)
PXRDデータは、粉末粒子のコアが、10%w/wのタンパク質との共沈後に高度に結晶性のままであることを示している。グルタミンおよびD,L−バリンの場合、タンパク質コーティングは、純粋な材料の沈殿と比較しても、コア結晶坦体の多形を変化させない。高度に結晶性のコアは、高湿度および高温に対して安定な医薬製剤を製造するのに有利である。グリシンに関しては、タンパク質は、異なる多形の部分的形成を促進するように見える。生体巨大分子との共沈によって水溶性薬物の多形が形成されるように誘導することは、例えば、多形が存在することが生物活性およびバイオアベイラビリティーに影響を及ぼすことがあるため、医薬製剤にとって有利である可能性がある。
【0230】
DSCを用いて融解温度を測定した。バリンおよびアルブミンでコーティングされたバリン微結晶試料、それぞれJV272/2/2およびJV272/2/3は、どちらも225℃を超える温度で融解することが分かった。グルタミンおよびアルブミンでコーティングされたグルタミン微結晶試料、それぞれJV272/5/2およびJV272/5/3は、どちらも160℃を超える温度で融解することが分かった。
【実施例19】
【0231】
(微結晶の溶媒懸濁液の臨界点CO2乾燥によって調製された生物活性分子でコーティングされた微結晶の乾燥粉末)
微結晶の懸濁液の濾過は、生成物の固化および圧縮につながることがある。これは可逆的であるが、別のプロセスステップを必要とする。臨界点乾燥を有利に用い、溶媒懸濁液から直接、無溶媒で低密度の生物活性分子でコーティングされた微結晶の粉末を得ることができる。これらの粉末は、非吸湿性であり、低い帯電を示すため、経肺製剤を調製するための極めて魅力的な特性を有している。臨界点CO2乾燥によって調製された粉末を用い、従来の濾過試料に比べて残留溶媒含量が極めて低く、細粒分画の増加した医薬製剤を製造することができる。超臨界CO2を使用する臨界点乾燥は、組織試料のための確立した技法である。それは、アセトン、イソプロパノールまたはエタノールなどの混和性溶媒中に予め浸漬または懸濁された試料中に、または試料を通して未臨界または超臨界CO2を送り込むものである。溶媒はCO2に溶け、その臨界点を超えて加熱し、液気界面の形成なしに排気口を通して膨張することができる流体中に浸漬された試料が残る。このことは、毛管力を最小限に抑え、粒子間凝集および圧縮を著しく低減する。臨界点乾燥が含水量の高い試料に適していないのは、水がCO2に十分可溶性でないためである。
【0232】
(実験)
サブチリシンCarlsbergを連続プロセスによって、2−プロパノール(D,L−バリンで飽和された)中にD,L−バリン(60mg/ml)と共沈させ、理論的タンパク質装填量10%および溶媒中の含水量3.9%v/vとした。懸濁液を沈降させ、過剰の溶媒をデカントし、残りの懸濁液をアセトンで順に洗浄して過剰の2−プロパノールを除去し、溶媒の含水量を0.5%v/vとした。懸濁液の1分量をDurapore 0.4ミクロンフィルター上の濾過によって乾燥し(SC/DLVal 2)、第2の試料は、臨界点乾燥によって乾燥した(SC/DLVal 3)。
【0233】
各試料50mgを、最小限の操作で別々のバイアル中に秤量し、穏やかな攪拌により落ち着かせた後、2個のバイアルの写真を撮り、図33に示す。臨界点乾燥によって調製された試料は左側であり、粉末は、右側の濾過試料よりも明らかにフワフワしタップ密度が低い。臨界点乾燥した試料は、濾過によって調製された試料に比べ、0.1g/ml未満のタップ密度を有することが好ましく、より好ましくは。低い粉末密度は、粒子間相互作用の低下の指標であり、肺への送達などの医薬用途には特に有利である。生物活性分子でコーティングされた微結晶の臨界点乾燥によって製造される乾燥粉末製剤の好ましい空気力学的特性は、それらを吸入装置内で直接使用できることを意味している。したがって、それらを大きな担体粒子と混合する必要はない。生物活性分子でコーティングされたD,L−バリン微結晶が特に好ましい。
【0234】
臨界点乾燥は、Polaron E3000を用いて行い、乾燥粉末を製造した。
【0235】
試料のSEM画像は、Jeol JSM 6400走査顕微鏡を用いて取得した。それらは、イソプロパノールからの沈殿で観察された典型的なフレーク状微結晶が、アセトン洗浄および臨界点乾燥後にも維持されていることを示した。復元した試料のタンパク質含量は、UV分光法に従い280nmで測定した。表「臨界乾燥」に示すように、10%という予想値に近い装填量が得られた。不一致は、280nmで吸収する溶媒可溶性不純物の除去または処理中のタンパク質の損失に起因する可能性がある。サブチリシンCarlsbergの活性は、UV/vis分光法を用い、酢酸ニトロフェニルの加水分解をモニターすることによって測定した。下表は、乾燥前のタンパク質の初期活性に対する割合として、処理および乾燥後にも活性が維持されていることを示している。SC/DLVal 1試料は、最初に得られるイソプロパノール懸濁液から直接単離した。活性値の測定は、二重に行った。見ても分かるように、臨界点乾燥は、直ちに濾過し乾燥した試料に比べて活性の低下を生じる。しかしながら、糖などのタンパク質乾燥で一般的に使用される典型的な安定化剤を添加することなく70%を超える活性を得ることができる。
【表40】
【実施例20】
【0236】
(ゼータ電位)
タンパク質でコーティングされた微結晶の特徴であるコア微結晶およびタンパク質コーティングは、単一の連続した自己集合プロセスによって生じる。生物活性分子の予め形成された微結晶との静電気的結合がこのプロセスの機構において重要であるか否かを評価するために、非水媒体中で微結晶の表面電位を測定することは興味深かった。荷電粒子を取り囲む液体層は、2つの部分、すなわちイオンが強力に結合している内部領域(シュテルン層)およびイオンがあまり堅固に会合していない外部(拡散)領域として存在する。拡散層内には、内部でイオンおよび粒子が安定な実体を形成する概念的境界が存在する。粒子が移動する場合(例えば、重力により)、境界内のイオンもまた移動する。これらのイオンは、境界を越えて粒子と共に移動することはない。この境界(流体力学的ずり面)における電位がゼータ電位である。ゼータ電位の符号および大きさは、粒子の表面電荷によって異なり、例えば、負のゼータ電位は、全体として負電荷の粒子を示す。レーザードップラー速度測定を用いるMalvern Zetasizerを使用し、一定pHで様々なコア材料の沈殿によって製造された微結晶のゼータ電位について符号およびおおよその大きさを測定した。測定は、希薄なアセトニトリル懸濁液として懸濁された予め調製された微結晶またはタンパク質でコーティングされた微結晶で行った。ポリスチレンラテックスを用いて機械を較正した。データを、表「ゼータ電位」に示す。タンパク質の非存在下で溶媒中に沈殿させたグリシン、グルタミンおよびバリン微結晶はすべて、負のゼータ電位を示す。静電気的結合が形成の機構にとって重要であれば、全体として正電荷の生体分子のみが、これらの負に荷電した材料上にコーティングを形成するであろうことが予想される。タンパク質上の電荷は、pHの関数である。電荷は、pI以上のpH値では負となり、pI以下のpHでは正となる。pIが4.85と報告されているタンパク質、アデノシンデアミナーゼ(ADM)を用い、pI以上のpHにおける共沈によって、上記担体材料を用いてタンパク質でコーティングされた微結晶が容易に調製されることが判明した。これらのタンパク質でコーティングされた微結晶のゼータ電位を表「ゼータ電位」に示す。負の残留値が結晶をコーティングしているアデノシンデアミナーゼと一致しているのは、共沈のpHにおいてタンパク質も負に荷電しているためである。pH7.02で調製されたアデノシンデアミナーゼでコーティングされたバリン結晶(ADM/バリン)については、負のタンパク質コーティングによってゼータ電位の明らかな増加が認められる。これらの結果は、共沈プロセスを介し、負に荷電したタンパク質を、同じ負の表面電荷を示す材料の微結晶上にコーティングできることを示している。このことは、コーティングの機構が、予め形成された微結晶への生物活性分子の静電気的結合に帰することができないことを示している。静電気的結合機構が存在しない別の指標は、核酸などのポリアニオンを用い、共沈によって微結晶を効率的にコーティングすることができるという事実によって得られる。例えば、裸のバリン結晶では負のゼータ電位が観察されるにもかかわらず、DNAでコーティングされたバリン微結晶を製造することができる。したがって、共沈は、生物活性分子でコーティングされた微結晶を得るための一般的プロセスを提供し、広範囲のpHおよび塩条件にわたって効率的に有利に行うことができる。
【表41】
【実施例21】
【0237】
(バッチ共沈装置および連続流型沈殿装置で調製された試料の生物活性の比較)
驚いたことに、連続流共沈によって調製され、復元された生物活性分子製剤は、すでに報告されているバッチプロセスによって調製された試料よりも高い生物活性を有利に示すことができることが見いだされた。ここで、その効果を酵素のブドウ糖酸化酵素および乳酸脱水素酵素について明らかにするのは、標準的酵素アッセイを用い、高い精度でそれらの生物活性を測定できるからである。フロー式共沈装置を使用する同様の改善は、治療用生体分子および他の生物活性分子についても得ることができる。連続流プロセスによって調製された製剤中の生物活性分子も、例えば高温および湿度の上昇で高い安定性を示すことができ、保存による凝集、化学的分解または変性に対して、より耐性を有する。以下の実施例において、試料は、バッチ共沈あるいは連続流沈殿法によって同一組成の出発材料を用いて調製し、それらの生物活性を比較した。
【0238】
連続流型沈殿装置システムは、実施例9と同様としたが、背圧調節を実施することによって改良した。HPLCポンプの逆止弁が適切に機能することを保証するためには、最低限100psi(約690kPa)の背圧が有利である。背圧は、ライン内のくびれとしての役割を果たす、かなり長い口径の狭い管を導入すること;Upchurchインラインチェックバルブなどの静的逆流調整器を導入すること;ポンプが受ける背圧をモニターする検圧モジュール、例えば、Gilson 302検圧モジュールを実装することを含む多くの方法によって導入することができる。検圧モジュールは、溶媒ラインおよび水性ライン上の口径の狭い管に使用することができる。通常、1%RSD未満のフロー精度が達成可能でなければならない。
【0239】
(イソプロパノール中にグリシンと共沈させたブドウ糖酸化酵素)
ブドウ糖酸化酵素(GO)、2.5mg/mlを、25℃で貧溶媒としてのイソプロパノール中にグリシンと共沈させた。バッチプロセスでは、GO/グリシン水溶液0.5mlを、750rpmで撹拌する25mmの撹拌子を用い、30mlのバイアル中、グリシン/イソプロパノール9.5ml中に滴加することによって共沈させた。連続流プロセスでは、GO/グリシン水溶液の流速は0.25ml/minであり、グリシン/イソプロパノールの流速は4.75ml/minであった。フローセルの羽根速度は750rpmであった。
【0240】
試料は、アッセイに先立って懸濁液として維持した。酵素活性は、標準的なブドウ糖酸化酵素アッセイを用いて測定し、ペルオキシダーゼ共役系によるo−ジアニシジンの酸化によって生じる460nmにおける吸光度の増加をモニターした。反応条件:o−ジアニシジン−緩衝液混合物2.5ml、18%ブドウ糖溶液300μl、0.2mg/mlペルオキシダーゼ溶液100μlおよび0.01mg/mlGO調製物100μl。
結果を、表37:ブドウ糖酸化酵素に示す。
【表42】
【0241】
(エタノール中の乳酸脱水素酵素/L−グルタミンの共沈)
ラクトバチルス属由来のD−乳酸脱水素酵素(LDH)をL−グルタミンと共沈させた。L−グルタミンの脱イオン水飽和溶液(約100ml)(約150mg/ml)は、40℃で一夜、インキュベーター中で撹拌して室温まで冷却し、0.45μmのDurapore(ミリポア)フィルターで濾過することによって調製した。この溶液のpHを塩酸でpH7.3に調整した。LDH(3.15mg)およびウシ血清アルブミン(16mg)をL−グルタミン水溶液10mlに溶かし、溶解を助けるため緩やかに回転させた。アルブミンは、タンパク質希釈剤およびLDHとの共沈物として使用した。LDH/L−グルタミン水溶液中の最終LDH濃度は、0.315mg/mlであった。バッチプロセスでは、LDH/L−グルタミン水溶液0.5mlを、25℃において750rpmで撹拌する25mmの撹拌子を用い、30mlのバイアル中、L−グルタミンで飽和されたエタノール9.5ml中に滴加することによって共沈させた。連続流型沈殿装置では、LDH/L−グルタミン水溶液の流速は0.25ml/minであり、L−グルタミン/エタノールの流速は4.75ml/minであった。フローセルの羽根速度は、25℃において750rpmであった。
【0242】
LDH活性は、0.2Mトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン緩衝液2.8ml、6.6mM NADH溶液100μlおよび30mMピルビン酸ナトリウム溶液100μl(NADHとピルビン酸ナトリウムは共に、0.2M Tris緩衝液で調製した)からなる反応混合物3ml中、25℃において測定した。LDH調製物(0.0005mg/mlを100μl)を反応混合物に加え、キュベットを3回反転させ、次いで、Beckmann Coulter DU800分光光度計で約30分間、340nmにおける吸光度増加をモニターした。PCMCの活性は、共沈から約24時間後に測定した。結果を、表38:乳酸脱水素酵素に示す。
【表43】
【0243】
(結論)
驚いたことに、これらの実施例において、連続流型沈殿装置で調製されたタンパク質試料の生物活性は、同一の出発組成物を使用しているにもかかわらず、バッチ反応器で調製された試料よりも高いことが判明した。何がその原因であるかは不明である。混合ステップ中、フロー式沈殿装置内の空気−溶媒界面がかなり相対的に低く、生物活性分子および得られるコーティングされた微結晶が混合から生じる剪断力に暴露される時間もより少ない。このことが、安定な元のまたは元に近い立体配座を保つ共沈分子の割合を最大限に高めた可能性がある。このことは、フロー式共沈装置を用いて調製された生体分子製剤の保存安定性で観察された改善と一致する。生物活性の良好な保持ならびに温度および湿度の上昇に対する安定性の強化は、生物医薬製剤にとって極めて有利な特性である。高い生物活性は、治療的効力の増大を生み出すことができ、一方、保存中の生物活性分子の安定性の強化は、ほんの少量の分解生成物の投与から生じることがある免疫反応などの有害な副作用の危険性を軽減するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/グリシンの粒径分布を示す図である。
【図2】プロパン−2−オール中で沈殿したα−キモトリプシン/L−アラニンの粒径分布を示す図である。
【図3】プロパン−2−オール中で沈殿したα−キモトリプシン/D,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図4】プロパン−2−オール中で沈殿したD,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図5】プロパン−2−オール中で沈殿したインスリン/L−ヒスチジンの粒径分布を示す図である。
【図6】プロパン−2−オール中で沈殿したD,L−バリンの粒径分布を示す図である。
【図7】プロパン−2−オール中で沈殿したL−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図8】プロパン−2−オール中で沈殿したL−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図9】プロパン−2−オール中で沈殿したアルブミン/L−グルタミンの粒径分布を示す図である。
【図10】L−グルタミンの示差蒸気吸着(Differential Vapour sorption)(DVS)グラフを示す図である。
【図11】L−グリシンのDVSグラフを示す図である。
【図12】L−グリシン/インスリンPCMCのDVSグラフを示す図である。
【図13】D,L−バリン/インスリンPCMCのDVSグラフを示す図である。
【図14】D,L−バリンのDVSグラフを示す図である。
【図15】アルブミン/L−グルタミンのDVSグラフを示す図である。
【図16】連続流型沈殿機器を示す図である。
【図17】人工肺におけるDQA−HEXおよび粗製オリゴヌクレオチド/D,L−バリンの分布を示す図である。
【図18】ジフテリアトキソイド(DT)PCMCの画像を示す図である。
【図19】USPインスリンの生物活性反応に類似しているインスリン/D,L−バリン粒子によって得られる生物活性反応を示す図である。
【図20】この場合もUSPインスリンの生物活性反応に類似しているインスリン/D,L−バリン粒子によって得られる生物活性反応を示すワイヤーミオグラフ試験を示す図である。
【図21】インスリン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図22】インスリン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図23】アルブミン/L−グルタミンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図24】インスリン/L−ヒスチジンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図25】α−アンチトリプシン/D,L−バリンPCMCのSEM画像を示す図である。
【図26】バッチプロセスによって調製された理論的抗生物質装填量が9.1%w/wであるトブラマイシン/D,L−バリン結晶のSEM画像を示す図である。
【図27】連続プロセスによって調製された理論的抗生物質装填量が1.6%w/wであるトブラマイシン/D,L−バリン結晶のSEM画像を示す図である。
【図28】SEMスタブ上に直接溶媒から乾燥させた理論的タンパク質装填量が0.7%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図29】Durapore0.4ミクロンフィルター上の濾過後に空気乾燥させた理論的タンパク質装填量が0.7%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図30】SEMスタブ上に直接溶媒から乾燥させた理論的タンパク質装填量が6.4%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図31】Durapore0.4ミクロンフィルター上の濾過後に空気乾燥させた理論的タンパク質装填量が6.4%w/wであるサブチリシン/グルタミン結晶のSEM画像を示す図である。
【図32】エタノール中で沈殿したグルタミン(下部トレース)および10%の理論的タンパク質装填量におけるアルブミン/グルタミン(上部トレース)について収集された粉末X線回折データを示す図である。
【図33】臨界点乾燥によって乾燥させたか(A)、あるいはDurapore0.4ミクロンフィルターで濾過し空気乾燥させた(B)サブチリシンでコーティングされたD,L−バリン微結晶の同量50mgが入った2mlバイアルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を形成する連続法であって、
(d)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であり、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(e)共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、前記生物活性分子/共沈剤分子溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと、
(f)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記生物活性分子は、共沈剤の水溶液中で溶解する粉末などの固体として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性分子は、共沈剤の水溶液との混合に先立って溶液または懸濁液中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物活性分子との混合の後、共沈剤は、その水飽和溶解度の約5〜100%または約20〜80%となると見込まれる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記共沈剤は、約150mg/ml未満または約80mg/ml未満の濃度で前記水溶液中に存在する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記共沈剤は、非吸湿性である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
粒子におけるタンパク質装填量などの前記生物活性分子の装填量は、水相中の生物活性分子の濃度を設定することによって規定される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
粒子におけるタンパク質装填量などの前記生物活性分子の装填量は、水相中の共沈剤の濃度を設定することによって規定される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記共沈剤は、前記水溶液中よりも混和性有機溶媒中で実質的に低い溶解度を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
十分に水混和性の有機溶媒の過剰量は、溶媒/水溶液の最終含水量が、一般的に、約30vol%未満、約10〜20vol%未満または約8vol%未満となるような量である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記水混和性有機溶媒は、以下の溶媒:メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオールのいずれか、またはそれらの任意の組合せから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒を生物活性分子および/または共沈剤で予め飽和することによって、前記水溶液を添加および混合したときに前記2成分が一緒に析出することを確実にする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
水相は、大過剰の溶媒相にゆっくりと添加され、乱流または乱流に近い混合プロセスが用いられる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液は、連続的な流れ、噴霧または霧として有機溶媒に添加される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
水混和性有機溶媒または溶媒の混合物を連続的に流し、生物活性分子および共沈剤の溶液を含み、かつ流れのより遅い水性流と混合して、懸濁された生物活性分子によってコーティングされた微結晶粒子を含む混合出力流を生成する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒流および水性流は、チューブを通して異なる速度で連続的にポンプで送り出され、T連結部またはY連結部などの静的混合装置中で混合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒流および水性流は、チューブを通して異なる速度で連続的にポンプで送り出され、溶媒グラジエント混合器または変形型溶媒グラジエント混合器などの動的混合装置中で混合される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記混合装置中の滞留時間は、約0.2分未満、約0.05分未満または約0.02分未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒流および水性流は、それらをポンプで送り出すことによる混合に先立ち、個別の無菌フィルターによって独立して滅菌される、請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
第1のポンプによって前記共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を連続的に送り、第2のポンプによって共沈剤飽和溶媒相を送り、必要に応じて他のポンプを使用して粒子コーティング材料などの他の成分を供給する、請求項15から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
使用される前記ポンプは、HPLCポンプなどの、高圧および精確な流速で送ることができる高性能ポンプである、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒は、水性流速よりも4〜100倍速い流速で前記混合装置中に送り出される、請求項16から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ポンプヘッドおよび前記混合装置は、生体分子による低い汚染性を示し、容易に浄化および滅菌することができる、ステンレス鋼などの材料からなる、請求項16から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記水溶液は約0.1ml/min〜20ml/minの流速で送られ、前記溶媒は約2ml/min〜200ml/minの流速で送られる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記生物活性分子/共沈剤分子溶液を過剰の水混和性有機溶媒に混合すると、生物活性分子および共沈剤の沈殿が実質的に瞬時に生じる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
共沈後、粒子を乾燥せずにデカントおよびすすぎ洗いすることによって、粒子が懸濁されている溶媒を異なる溶媒で交換する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
粒子の懸濁液を、乾燥に先立ってバッチまたは連続プロセスで濃縮し、より高い固体含量を得る、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
沈殿した粒子を迅速に回収するために、前記共沈物を、バッチまたは連続の遠心分離および/または濾過にかける、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
粒子の懸濁液の濃縮は、バッチまたは連続の濾過または遠心分離によるか、あるいは共沈物を沈降させて過剰の溶媒をデカントすることによって行う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
空気乾燥、真空乾燥または流動床乾燥などのバッチまたは連続の乾燥手順を用いて、残留溶媒をすべて蒸発させ、実質的に無溶媒の粒子を残す、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
溶媒は、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体を用いるバッチまたは連続プロセスで粒子から除去される、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
臨界点の、その近傍のまたはそれを超える高圧流体二酸化炭素を懸濁液中に流すことによって、高圧室中の生物活性分子でコーティングされた微結晶の懸濁液から溶媒を除去し、溶媒が実質的に除去されたら、二酸化炭素の臨界温度を超える温度で圧力を低下させる、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
医薬用途に向けて、乾燥した沈殿粒子を使用に先立って無菌条件下で無菌送達用具またはバイアル中に導入するか、あるいは、前記粒子を無菌条件下で溶媒中の懸濁液として無菌送達用具またはバイアル中に移送する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
粒子当たりの生物活性分子の重量百分率を約0.1wt%未満から約50wt%まで変化させることによって用量を変更する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
請求項1から33のいずれかに従って形成される粒子。
【請求項36】
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であって、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供すること、
(b)共沈剤および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合すること、および
(c)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離すること
によって得られる粒子。
【請求項37】
粒子を含む医薬製剤であって、粒子が、
(c)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、前記共沈剤分子は4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(d)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含み、粒子が、前記コアを形成する共沈剤分子および前記1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成されたものであり、粒子が約90℃超の融点を有する医薬製剤。
【請求項38】
生物活性分子/共沈剤分子溶液を過剰の実質的に水混和性の有機溶媒に添加するバッチ法によって前記粒子を形成する、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
請求項1から36に記載の連続法によって前記粒子を形成する、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記結晶コアが、X線回折を示す請求項37から39のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項41】
医薬製剤が、スパンが約5未満、約2未満または約1.5未満などの狭い粒度分布の非球形粒子を含む、請求項37から40のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記粒子が、約80μm未満、約50μm未満または約20μm未満の最大断面寸法を有する、請求項37から41のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記結晶コアを構成する分子が、約2kDa未満、約1kDa未満または約500ダルトン未満の分子量を有する、請求項36から41のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記結晶コアを形成する分子が、約150mg/ml未満または約80mg/ml未満の水溶性を有する、請求項37から43のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記結晶コアを構成する分子が、以下の分子:アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬物、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体のいずれか、あるいはそれらの任意の組合せから選択される、請求項37から44のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記アミノ酸が、前記結晶コアを形成し、純粋な鏡像異性体またはラセミ混合物として使用される、請求項37から45のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記結晶コアの形成に適するアミノ酸が、グルタミン、ヒスチジン、セリン、メチオニン、イソロイシンまたはバリンである、請求項46に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記結晶コアの上にコーティングを形成する生物活性分子は、活性製薬成分(API)などの治療効果を生み出すことができる任意の分子から選択される、請求項37から46のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記生物活性分子のコーティングは、安定剤、界面活性剤、等張性調整剤、pH/緩衝剤などの医薬製剤で一般的に使用される賦形剤も含む、請求項37から48のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記生物活性分子が、任意の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体、または治療効果を生じる任意の組合せを含む、請求項37から49のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記生物活性分子が、抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、抗真菌剤;天然または非天然ペプチド;インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、抗体などのタンパク質;遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNA、アンチセンスヌクレオチド、RNAなどの核酸;任意の単糖、二糖、多糖などの糖;およびプラスミドを含む、請求項37から50のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項52】
ワクチンコーティング成分が、ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドなどの細菌またはウイルスなどの病原体の抗原成分を含む、請求項37から51のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記ワクチン成分が、ジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザなどのサブユニット、弱毒化または不活微生物ワクチンである、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項54】
前記ワクチンが、ジフテリアタキソイドでコーティングされたD,L−バリンまたはL−グルタミン結晶である、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項55】
前記粒子が、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチン、おたふく風邪、麻疹、風疹などの生ウイルスワクチン、およびMVAベクターインフルエンザワクチンなどの最新のインフルエンザワクチン成分といったタンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である、請求項37から54のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記ワクチン成分でコーティングされた微結晶を、癌、特に黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含む、ヒト癌用に開発されるワクチンの製剤化に使用する、請求項37から55のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記粒子が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび破傷風タキソイドのコーティング、バリンの結晶コアならびにジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物とのコーティングから選択される、請求項37から56のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項58】
狭い粒度分布を有し、実質的に同一の形態または結晶形を示す、生物活性分子でコーティングされた個々の微結晶で構成されている、請求項37から57のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項59】
粒子が、約0.5〜20ミクロンの最大断面寸法を有する請求項37から58のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項60】
同様のサイズの微結晶で構成されている球状の凝集塊を含み、球状凝集の最大直径は、約50ミクロン未満または約20ミクロン未満である、請求項37から59のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項61】
微結晶は、針状または棒状の形態を有する、請求項60に記載の医薬製剤。
【請求項62】
生物活性分子は、コーティングされた各微結晶粒子の約0.1wt%〜50wt%または約1wt%〜40wt%を占める、請求項37から61のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項63】
80%の相対湿度まで平衡化したときに、水を実質的に可逆的に吸着する請求項37から62のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項64】
凝集分子の約5%未満または約1%未満の復元が、サイズ排除クロマトグラフィーによって観察される、請求項63に記載の医薬品製剤。
【請求項65】
80%の相対湿度まで測定される第1および第2の水吸着等温線が実質的に同一である、請求項37から64のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項66】
80%の相対湿度まで測定される第1の2本の動的水蒸気吸着曲線が実質的に同一である、請求項37から65のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項67】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の結晶化度を維持する、請求項37から66のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項68】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の形状およびサイズを維持する、請求項37から67のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項69】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の自由流動性を維持する、請求項37から68のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項70】
1週間にわたる60℃までの温度への暴露および水溶液中での復元の後、生物活性分子が、新たに調製した製剤と実質的に同様の生物活性を維持する、請求項37から69のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項71】
1週間にわたる60℃までの温度への暴露および水溶液中での復元の後、生物活性分子が、新たに調製した製剤と実質的に同様の生物活性を維持する、請求項37から70のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項72】
非吸湿性のコーティングされた粒子からなる結晶コア材料が、80%までの相対湿度において水を5wt%未満または0.5wt%未満を吸着すると見込まれる、請求項37から71のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項73】
水溶液中で復元したとき、生物活性分子が、その本来の対応物の新たに調製した溶液と実質的に同様の生物活性を有する、請求項37から72のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項74】
水溶液中での生物活性分子の復元およびその本来の対応物の新たに調製した溶液との比較によって示されるように、生物活性分子が、6カ月間の25℃における保存後に、約50%を超える生物活性、あるいは約80%を超える生物活性、あるいは約95%を超える生物活性を維持する、請求項37から73のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項75】
水溶液中に復元したとき、約2分未満または約30秒未満で実質的に完全に溶解し、透明度が約15FNUを上回り、または約6FNUを上回る低濁度の透明溶液が得られる、請求項37から74のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項76】
製剤が、非経口、経肺、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与によってレシピエントに送達される、請求項37から75のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項77】
嵩密度が約0.3g/ml未満または約0.1g/ml未満である生物活性分子でコーティングされた微結晶の乾燥粉末を含む、請求項37から76のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項78】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子を含む肺送達用の医薬製剤。
【請求項79】
前記経肺医薬製剤の形成に適する生物活性分子が、以下の分子:インスリン、α1−アンチトリプシン、インターフェロンなどの治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの医薬を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬物;水感受性薬物;脂質および界面活性剤;多糖のいずれか、またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体が含まれる請求項78に記載の医薬製剤。
【請求項80】
粒子を含む経肺製剤が、吸入装置において直接使用され、高い放出用量および高い細粒分画を提供する、請求項78または79のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項81】
細粒分画が、約80〜90%の湿度などの高湿度への暴露によって実質的に変化を受けない請求項80に記載の医薬製剤。
【請求項82】
MSLI(第1〜5段)において測定される放出用量が、約70%を超える請求項76から81のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項83】
MSLI(第3〜5段)において測定される細粒分画が、約20%または約30%を超える、請求項76から81のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項84】
経肺製剤が、乳糖などのより大きな担体粒子を含む他の製剤なしに、乾燥粉末送達用具中で使用される、請求項78から83のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項85】
放出用量、細粒分画および空気力学的質量中位径が、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化後、元の重量まで再乾燥した後に、実質的に変化しない請求項78から84のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項86】
経肺製剤の場合、粒子が、約10ミクロン未満、約5ミクロン未満または約3.5ミクロン未満の空気力学的質量中位径を有する、請求項78から85のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項87】
自由流動性で非吸湿性の低帯電粒子が、約1〜5ミクロンの範囲の最大断面直径を有する、請求項78から86のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項88】
生物活性分子でコーティングされた粒子が、最大断面直径よりも小さな空気力学的質量中位径を有する高アスペクト比のフレークの形態を有する、請求項78から87のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項89】
空気力学的質量中位径は、約80〜90%の湿度などの高湿度への暴露で実質的に変化を受けない、請求項88に記載の医薬製剤。
【請求項90】
経肺製剤が、バリン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシンまたはグルタミンなどのアミノ酸からなる結晶コアを有するように選択される、請求項78から89のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項91】
経肺製剤が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンなどの治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンなどの酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチンコーティング;およびグルタミンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングのいずれかから選択される、請求項90に記載の医薬製剤。
【請求項92】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子または粒子の懸濁液を含む非経口製剤。
【請求項93】
非経口製剤が、静脈内、皮下もしくは筋肉内注射を用い、または持続もしくは制御放出製剤で送達される、請求項92に記載の非経口製剤。
【請求項94】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(またはデポ剤)。
【請求項95】
実質的に各々の粒子が、粒子の成分の放出または送達を変化させる材料内で均一にコーティングまたは分散される、請求項94に記載の持続または制御放出医薬製剤。
【請求項96】
請求項1から91のいずれかに記載の粒子または医薬製剤を含む肺用薬物送達用具。
【請求項97】
肺用薬物送達用具が、液体噴霧器、エアロゾル式定量吸入器、乾燥粉末分散装置または多回用量吸入装置である、請求項96に記載の肺用薬物装置。
【請求項98】
治療に使用するための、肺、非経口、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与で薬物が投与される薬物の製造における、請求項1から36のいずれかに記載の粒子の使用。
【請求項99】
癌、特に黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含むヒト癌;おたふく風邪;麻疹;風疹;流感;インフルエンザ;ジフテリア;破傷風;ポリオ;百日咳;A、BおよびC型肝炎;HIV;狂犬病;および糖尿病を治療するための、請求項98に記載の粒子の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を形成する連続的な方法であって、
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含み、各共沈剤分子が実質的に4kDa未満の分子量を有する水溶液であり、前記共沈剤分子および生物活性分子を含み、90℃を超える融点を有する共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)前記共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、前記生物活性分子/共沈剤分子の溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと
を含む方法。
【請求項2】
(c)前記粒子を前記水混和性の有機溶媒から単離するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共沈剤分子は、前記水溶液中よりも前記水混和性の有機溶媒中で実質的に低い溶解度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水混和性の有機溶媒は、以下の溶媒:メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオールのいずれか、またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水混和性の有機溶媒または溶媒の混合物を連続的に流し、流れのより遅い生物活性分子および共沈剤分子の溶液を含む水性流と混合して、懸濁した生物活性分子によってコーティングされた微結晶粒子を含む混合出力流を生成する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の連続的な方法に従って形成される粒子。
【請求項7】
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含み、各共沈剤分子が実質的に4kDa未満の分子量を有する水溶液であり、前記共沈剤分子および生物活性分子を含み、90℃を超える融点を有する共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子の溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと
を含む方法によって得られうる粒子。
【請求項8】
(c)前記粒子が、前記水混和性の有機溶媒から単離するステップをさらに含む方法によって得られうる、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
(a)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、前記共沈剤分子が4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(b)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含む粒子を含有する医薬製剤であって、
前記粒子が、前記コアを形成する共沈剤分子および前記1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成されたものであり、かつ90℃を超える融点を有する医薬製剤。
【請求項10】
前記粒子が、請求項1から5のいずれかに記載の連続的な方法によって形成される、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記結晶コアを構成する分子が、以下のもの:アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬剤、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体のいずれか、あるいはそれらの任意の組合せから選択される、請求項9または10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記生物活性分子が、任意の薬剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体または治療効果を生じる任意の組合せを含む、請求項9から11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記生物活性分子が、
抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、および抗真菌剤からなる群から選択される薬剤;
天然または非天然ペプチドであるペプチド;
インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、および抗体からなる群から選択されるタンパク質;
遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNA、アンチセンスヌクレオチド、およびRNAからなる群から選択される核酸;
単糖、二糖、および多糖からなる群から選択される糖;
病原体の抗原成分を含むワクチン成分;またはプラスミドを含む、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記抗原成分が、細菌、ウイルス、ジフテリアトキソイド、および破傷風トキソイドからなる群から選択されるか、またはジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザのサブユニット、弱毒化あるいは不活微生物ワクチンである、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記粒子が、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチン、生ウイルスワクチン、および最新のインフルエンザワクチン成分からなる群より選択されるタンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である、請求項9から14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記生物活性分子がワクチン成分であり、該ワクチンでコーティングされた粒子が癌用に開発されるワクチンの製剤化に使用される、請求項12から15のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記粒子が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび破傷風トキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの混合物のコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの混合物のコーティングから選択される、請求項9から16のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記医薬製剤が、非経口、経肺、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与によってレシピエントに送達される、請求項9から17のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記経肺投与による医薬製剤の形成に適する生物活性分子が、以下のもの:インスリン、α1−アンチトリプシン、またはインターフェロンである治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの薬剤を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬剤;水感受性薬剤;脂質および界面活性剤;多糖のいずれか、またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体を含む、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記経肺投与による医薬製剤が、以下のもの:バリンの結晶コアおよび前記治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよび酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチン成分のコーティング;およびグルタミンの結晶コアおよびワクチン成分のコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングから選択される、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
請求項6に記載の粒子または粒子の懸濁液を含む非経口製剤。
【請求項22】
請求項6に記載の粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(またはデポ剤)。
【請求項23】
請求項6に記載の粒子を使用して薬剤を製造する方法であって、前記薬剤が、肺、非経口、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与で投与される薬剤である方法。
【請求項24】
前記薬剤が、癌;おたふく風邪;麻疹;風疹;流感;インフルエンザ;ジフテリア;破傷風;ポリオ;百日咳;A、BおよびC型肝炎;HIV;狂犬病;または糖尿病を治療するための薬剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、および大腸癌からなる群から選択されるヒト癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
粒子を形成する連続法であって、
(d)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であり、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(e)共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、前記生物活性分子/共沈剤分子溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと、
(f)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記生物活性分子は、共沈剤の水溶液中で溶解する粉末などの固体として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性分子は、共沈剤の水溶液との混合に先立って溶液または懸濁液中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物活性分子との混合の後、共沈剤は、その水飽和溶解度の約5〜100%または約20〜80%となると見込まれる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記共沈剤は、約150mg/ml未満または約80mg/ml未満の濃度で前記水溶液中に存在する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記共沈剤は、非吸湿性である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
粒子におけるタンパク質装填量などの前記生物活性分子の装填量は、水相中の生物活性分子の濃度を設定することによって規定される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
粒子におけるタンパク質装填量などの前記生物活性分子の装填量は、水相中の共沈剤の濃度を設定することによって規定される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記共沈剤は、前記水溶液中よりも混和性有機溶媒中で実質的に低い溶解度を有する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
十分に水混和性の有機溶媒の過剰量は、溶媒/水溶液の最終含水量が、一般的に、約30vol%未満、約10〜20vol%未満または約8vol%未満となるような量である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記水混和性有機溶媒は、以下の溶媒:メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオールのいずれか、またはそれらの任意の組合せから選択される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒を生物活性分子および/または共沈剤で予め飽和することによって、前記水溶液を添加および混合したときに前記2成分が一緒に析出することを確実にする、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
水相は、大過剰の溶媒相にゆっくりと添加され、乱流または乱流に近い混合プロセスが用いられる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記水溶液は、連続的な流れ、噴霧または霧として有機溶媒に添加される、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
水混和性有機溶媒または溶媒の混合物を連続的に流し、生物活性分子および共沈剤の溶液を含み、かつ流れのより遅い水性流と混合して、懸濁された生物活性分子によってコーティングされた微結晶粒子を含む混合出力流を生成する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒流および水性流は、チューブを通して異なる速度で連続的にポンプで送り出され、T連結部またはY連結部などの静的混合装置中で混合される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒流および水性流は、チューブを通して異なる速度で連続的にポンプで送り出され、溶媒グラジエント混合器または変形型溶媒グラジエント混合器などの動的混合装置中で混合される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記混合装置中の滞留時間は、約0.2分未満、約0.05分未満または約0.02分未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記溶媒流および水性流は、それらをポンプで送り出すことによる混合に先立ち、個別の無菌フィルターによって独立して滅菌される、請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
第1のポンプによって前記共沈剤および生物活性分子を含有する水溶液を連続的に送り、第2のポンプによって共沈剤飽和溶媒相を送り、必要に応じて他のポンプを使用して粒子コーティング材料などの他の成分を供給する、請求項15から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
使用される前記ポンプは、HPLCポンプなどの、高圧および精確な流速で送ることができる高性能ポンプである、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒は、水性流速よりも4〜100倍速い流速で前記混合装置中に送り出される、請求項16から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ポンプヘッドおよび前記混合装置は、生体分子による低い汚染性を示し、容易に浄化および滅菌することができる、ステンレス鋼などの材料からなる、請求項16から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記水溶液は約0.1ml/min〜20ml/minの流速で送られ、前記溶媒は約2ml/min〜200ml/minの流速で送られる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記生物活性分子/共沈剤分子溶液を過剰の水混和性有機溶媒に混合すると、生物活性分子および共沈剤の沈殿が実質的に瞬時に生じる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
共沈後、粒子を乾燥せずにデカントおよびすすぎ洗いすることによって、粒子が懸濁されている溶媒を異なる溶媒で交換する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
粒子の懸濁液を、乾燥に先立ってバッチまたは連続プロセスで濃縮し、より高い固体含量を得る、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
沈殿した粒子を迅速に回収するために、前記共沈物を、バッチまたは連続の遠心分離および/または濾過にかける、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
粒子の懸濁液の濃縮は、バッチまたは連続の濾過または遠心分離によるか、あるいは共沈物を沈降させて過剰の溶媒をデカントすることによって行う、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
空気乾燥、真空乾燥または流動床乾燥などのバッチまたは連続の乾燥手順を用いて、残留溶媒をすべて蒸発させ、実質的に無溶媒の粒子を残す、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
溶媒は、超臨界二酸化炭素などの超臨界流体を用いるバッチまたは連続プロセスで粒子から除去される、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
臨界点の、その近傍のまたはそれを超える高圧流体二酸化炭素を懸濁液中に流すことによって、高圧室中の生物活性分子でコーティングされた微結晶の懸濁液から溶媒を除去し、溶媒が実質的に除去されたら、二酸化炭素の臨界温度を超える温度で圧力を低下させる、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
医薬用途に向けて、乾燥した沈殿粒子を使用に先立って無菌条件下で無菌送達用具またはバイアル中に導入するか、あるいは、前記粒子を無菌条件下で溶媒中の懸濁液として無菌送達用具またはバイアル中に移送する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
粒子当たりの生物活性分子の重量百分率を約0.1wt%未満から約50wt%まで変化させることによって用量を変更する、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
請求項1から33のいずれかに従って形成される粒子。
【請求項36】
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含む水溶液であって、各共沈剤分子は実質的に4kDa未満の分子量を有し、共沈剤および生物活性分子を含み、融点が約90℃を超える共沈物を形成することができる水溶液を提供すること、
(b)共沈剤および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合すること、および
(c)必要に応じて、粒子を有機溶媒から単離すること
によって得られる粒子。
【請求項37】
粒子を含む医薬製剤であって、粒子が、
(c)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、前記共沈剤分子は4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(d)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含み、粒子が、前記コアを形成する共沈剤分子および前記1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成されたものであり、粒子が約90℃超の融点を有する医薬製剤。
【請求項38】
生物活性分子/共沈剤分子溶液を過剰の実質的に水混和性の有機溶媒に添加するバッチ法によって前記粒子を形成する、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項39】
請求項1から36に記載の連続法によって前記粒子を形成する、請求項37に記載の医薬製剤。
【請求項40】
前記結晶コアが、X線回折を示す請求項37から39のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項41】
医薬製剤が、スパンが約5未満、約2未満または約1.5未満などの狭い粒度分布の非球形粒子を含む、請求項37から40のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項42】
前記粒子が、約80μm未満、約50μm未満または約20μm未満の最大断面寸法を有する、請求項37から41のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項43】
前記結晶コアを構成する分子が、約2kDa未満、約1kDa未満または約500ダルトン未満の分子量を有する、請求項36から41のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項44】
前記結晶コアを形成する分子が、約150mg/ml未満または約80mg/ml未満の水溶性を有する、請求項37から43のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項45】
前記結晶コアを構成する分子が、以下の分子:アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬物、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体のいずれか、あるいはそれらの任意の組合せから選択される、請求項37から44のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項46】
前記アミノ酸が、前記結晶コアを形成し、純粋な鏡像異性体またはラセミ混合物として使用される、請求項37から45のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項47】
前記結晶コアの形成に適するアミノ酸が、グルタミン、ヒスチジン、セリン、メチオニン、イソロイシンまたはバリンである、請求項46に記載の医薬製剤。
【請求項48】
前記結晶コアの上にコーティングを形成する生物活性分子は、活性製薬成分(API)などの治療効果を生み出すことができる任意の分子から選択される、請求項37から46のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項49】
前記生物活性分子のコーティングは、安定剤、界面活性剤、等張性調整剤、pH/緩衝剤などの医薬製剤で一般的に使用される賦形剤も含む、請求項37から48のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項50】
前記生物活性分子が、任意の薬物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体、または治療効果を生じる任意の組合せを含む、請求項37から49のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項51】
前記生物活性分子が、抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、抗真菌剤;天然または非天然ペプチド;インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、抗体などのタンパク質;遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNA、アンチセンスヌクレオチド、RNAなどの核酸;任意の単糖、二糖、多糖などの糖;およびプラスミドを含む、請求項37から50のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項52】
ワクチンコーティング成分が、ジフテリアトキソイドおよび/または破傷風トキソイドなどの細菌またはウイルスなどの病原体の抗原成分を含む、請求項37から51のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項53】
前記ワクチン成分が、ジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザなどのサブユニット、弱毒化または不活微生物ワクチンである、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項54】
前記ワクチンが、ジフテリアタキソイドでコーティングされたD,L−バリンまたはL−グルタミン結晶である、請求項52に記載の医薬製剤。
【請求項55】
前記粒子が、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチン、おたふく風邪、麻疹、風疹などの生ウイルスワクチン、およびMVAベクターインフルエンザワクチンなどの最新のインフルエンザワクチン成分といったタンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である、請求項37から54のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項56】
前記ワクチン成分でコーティングされた微結晶を、癌、特に黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含む、ヒト癌用に開発されるワクチンの製剤化に使用する、請求項37から55のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項57】
前記粒子が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび破傷風タキソイドのコーティング、バリンの結晶コアならびにジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物のコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアタキソイドと破傷風タキソイドの混合物とのコーティングから選択される、請求項37から56のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項58】
狭い粒度分布を有し、実質的に同一の形態または結晶形を示す、生物活性分子でコーティングされた個々の微結晶で構成されている、請求項37から57のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項59】
粒子が、約0.5〜20ミクロンの最大断面寸法を有する請求項37から58のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項60】
同様のサイズの微結晶で構成されている球状の凝集塊を含み、球状凝集の最大直径は、約50ミクロン未満または約20ミクロン未満である、請求項37から59のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項61】
微結晶は、針状または棒状の形態を有する、請求項60に記載の医薬製剤。
【請求項62】
生物活性分子は、コーティングされた各微結晶粒子の約0.1wt%〜50wt%または約1wt%〜40wt%を占める、請求項37から61のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項63】
80%の相対湿度まで平衡化したときに、水を実質的に可逆的に吸着する請求項37から62のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項64】
凝集分子の約5%未満または約1%未満の復元が、サイズ排除クロマトグラフィーによって観察される、請求項63に記載の医薬品製剤。
【請求項65】
80%の相対湿度まで測定される第1および第2の水吸着等温線が実質的に同一である、請求項37から64のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項66】
80%の相対湿度まで測定される第1の2本の動的水蒸気吸着曲線が実質的に同一である、請求項37から65のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項67】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の結晶化度を維持する、請求項37から66のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項68】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の形状およびサイズを維持する、請求項37から67のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項69】
粒子は、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化した後、本質的に同一の自由流動性を維持する、請求項37から68のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項70】
1週間にわたる60℃までの温度への暴露および水溶液中での復元の後、生物活性分子が、新たに調製した製剤と実質的に同様の生物活性を維持する、請求項37から69のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項71】
1週間にわたる60℃までの温度への暴露および水溶液中での復元の後、生物活性分子が、新たに調製した製剤と実質的に同様の生物活性を維持する、請求項37から70のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項72】
非吸湿性のコーティングされた粒子からなる結晶コア材料が、80%までの相対湿度において水を5wt%未満または0.5wt%未満を吸着すると見込まれる、請求項37から71のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項73】
水溶液中で復元したとき、生物活性分子が、その本来の対応物の新たに調製した溶液と実質的に同様の生物活性を有する、請求項37から72のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項74】
水溶液中での生物活性分子の復元およびその本来の対応物の新たに調製した溶液との比較によって示されるように、生物活性分子が、6カ月間の25℃における保存後に、約50%を超える生物活性、あるいは約80%を超える生物活性、あるいは約95%を超える生物活性を維持する、請求項37から73のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項75】
水溶液中に復元したとき、約2分未満または約30秒未満で実質的に完全に溶解し、透明度が約15FNUを上回り、または約6FNUを上回る低濁度の透明溶液が得られる、請求項37から74のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項76】
製剤が、非経口、経肺、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与によってレシピエントに送達される、請求項37から75のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項77】
嵩密度が約0.3g/ml未満または約0.1g/ml未満である生物活性分子でコーティングされた微結晶の乾燥粉末を含む、請求項37から76のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項78】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子を含む肺送達用の医薬製剤。
【請求項79】
前記経肺医薬製剤の形成に適する生物活性分子が、以下の分子:インスリン、α1−アンチトリプシン、インターフェロンなどの治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの医薬を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬物;水感受性薬物;脂質および界面活性剤;多糖のいずれか、またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体が含まれる請求項78に記載の医薬製剤。
【請求項80】
粒子を含む経肺製剤が、吸入装置において直接使用され、高い放出用量および高い細粒分画を提供する、請求項78または79のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項81】
細粒分画が、約80〜90%の湿度などの高湿度への暴露によって実質的に変化を受けない請求項80に記載の医薬製剤。
【請求項82】
MSLI(第1〜5段)において測定される放出用量が、約70%を超える請求項76から81のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項83】
MSLI(第3〜5段)において測定される細粒分画が、約20%または約30%を超える、請求項76から81のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項84】
経肺製剤が、乳糖などのより大きな担体粒子を含む他の製剤なしに、乾燥粉末送達用具中で使用される、請求項78から83のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項85】
放出用量、細粒分画および空気力学的質量中位径が、約60%までまたは約80%までの相対湿度へ平衡化後、元の重量まで再乾燥した後に、実質的に変化しない請求項78から84のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項86】
経肺製剤の場合、粒子が、約10ミクロン未満、約5ミクロン未満または約3.5ミクロン未満の空気力学的質量中位径を有する、請求項78から85のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項87】
自由流動性で非吸湿性の低帯電粒子が、約1〜5ミクロンの範囲の最大断面直径を有する、請求項78から86のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項88】
生物活性分子でコーティングされた粒子が、最大断面直径よりも小さな空気力学的質量中位径を有する高アスペクト比のフレークの形態を有する、請求項78から87のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項89】
空気力学的質量中位径は、約80〜90%の湿度などの高湿度への暴露で実質的に変化を受けない、請求項88に記載の医薬製剤。
【請求項90】
経肺製剤が、バリン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシンまたはグルタミンなどのアミノ酸からなる結晶コアを有するように選択される、請求項78から89のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項91】
経肺製剤が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンなどの治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよびα−アンチトリプシンなどの酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチンコーティング;およびグルタミンの結晶コアおよびワクチンコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングのいずれかから選択される、請求項90に記載の医薬製剤。
【請求項92】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子または粒子の懸濁液を含む非経口製剤。
【請求項93】
非経口製剤が、静脈内、皮下もしくは筋肉内注射を用い、または持続もしくは制御放出製剤で送達される、請求項92に記載の非経口製剤。
【請求項94】
請求項1から36のいずれかに記載の粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(またはデポ剤)。
【請求項95】
実質的に各々の粒子が、粒子の成分の放出または送達を変化させる材料内で均一にコーティングまたは分散される、請求項94に記載の持続または制御放出医薬製剤。
【請求項96】
請求項1から91のいずれかに記載の粒子または医薬製剤を含む肺用薬物送達用具。
【請求項97】
肺用薬物送達用具が、液体噴霧器、エアロゾル式定量吸入器、乾燥粉末分散装置または多回用量吸入装置である、請求項96に記載の肺用薬物装置。
【請求項98】
治療に使用するための、肺、非経口、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与で薬物が投与される薬物の製造における、請求項1から36のいずれかに記載の粒子の使用。
【請求項99】
癌、特に黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、大腸癌および他の癌を含むヒト癌;おたふく風邪;麻疹;風疹;流感;インフルエンザ;ジフテリア;破傷風;ポリオ;百日咳;A、BおよびC型肝炎;HIV;狂犬病;および糖尿病を治療するための、請求項98に記載の粒子の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を形成する連続的な方法であって、
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含み、各共沈剤分子が実質的に4kDa未満の分子量を有する水溶液であり、前記共沈剤分子および生物活性分子を含み、90℃を超える融点を有する共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)前記共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、前記生物活性分子/共沈剤分子の溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと
を含む方法。
【請求項2】
(c)前記粒子を前記水混和性の有機溶媒から単離するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記共沈剤分子は、前記水溶液中よりも前記水混和性の有機溶媒中で実質的に低い溶解度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水混和性の有機溶媒は、以下の溶媒:メタノール;エタノール;プロパン−1−オール;プロパン−2−オール;アセトン、乳酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ならびに様々なサイズのポリエチレングリコール(PEGS)およびポリオールのいずれか、またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水混和性の有機溶媒または溶媒の混合物を連続的に流し、流れのより遅い生物活性分子および共沈剤分子の溶液を含む水性流と混合して、懸濁した生物活性分子によってコーティングされた微結晶粒子を含む混合出力流を生成する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の連続的な方法に従って形成される粒子。
【請求項7】
(a)共沈剤分子および生物活性分子を含み、各共沈剤分子が実質的に4kDa未満の分子量を有する水溶液であり、前記共沈剤分子および生物活性分子を含み、90℃を超える融点を有する共沈物を形成することができる水溶液を提供するステップと、
(b)共沈剤分子および生物活性分子が溶液から共沈して粒子を形成するように、生物活性分子/共沈剤分子の溶液を、より大量の実質的に水混和性の有機溶媒と急速に混合するステップと
を含む方法によって得られうる粒子。
【請求項8】
(c)前記粒子が、前記水混和性の有機溶媒から単離するステップをさらに含む方法によって得られうる、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
(a)共沈剤分子を含む実質的に非吸湿性の内部結晶コアであり、前記共沈剤分子が4kDa未満の分子量を有する結晶コア、および
(b)1種または複数の生物活性分子を含む外部コーティング
を含む粒子を含有する医薬製剤であって、
前記粒子が、前記コアを形成する共沈剤分子および前記1種または複数の生物活性分子を共沈させることによって単一ステップで形成されたものであり、かつ90℃を超える融点を有する医薬製剤。
【請求項10】
前記粒子が、請求項1から5のいずれかに記載の連続的な方法によって形成される、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記結晶コアを構成する分子が、以下のもの:アミノ酸、双性イオン、ペプチド、糖、緩衝成分、水溶性薬剤、有機および無機塩、強く水素結合した格子を形成する化合物またはそれらの誘導体のいずれか、あるいはそれらの任意の組合せから選択される、請求項9または10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
前記生物活性分子が、任意の薬剤、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、糖、ワクチン成分、もしくはそれらの任意の誘導体または治療効果を生じる任意の組合せを含む、請求項9から11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記生物活性分子が、
抗炎症剤、抗癌剤、抗精神病剤、抗菌剤、および抗真菌剤からなる群から選択される薬剤;
天然または非天然ペプチドであるペプチド;
インスリン、α1−アンチトリプシン、α−キモトリプシン、アルブミン、インターフェロン、および抗体からなる群から選択されるタンパク質;
遺伝子の断片、天然源または合成オリゴヌクレオチド由来のDNA、アンチセンスヌクレオチド、およびRNAからなる群から選択される核酸;
単糖、二糖、および多糖からなる群から選択される糖;
病原体の抗原成分を含むワクチン成分;またはプラスミドを含む、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記抗原成分が、細菌、ウイルス、ジフテリアトキソイド、および破傷風トキソイドからなる群から選択されるか、またはジフテリア、破傷風、ポリオ、百日咳ならびにA型、B型およびC型肝炎、HIV、狂犬病およびインフルエンザのサブユニット、弱毒化あるいは不活微生物ワクチンである、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記粒子が、HiB(B型インフルエンザ菌)および肺炎球菌のワクチン、生ウイルスワクチン、および最新のインフルエンザワクチン成分からなる群より選択されるタンパク質と結合している多糖類の投与にも適用可能である、請求項9から14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記生物活性分子がワクチン成分であり、該ワクチンでコーティングされた粒子が癌用に開発されるワクチンの製剤化に使用される、請求項12から15のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記粒子が、以下のもの:バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびアンチトリプシンのコーティング、グルタミン酸ナトリウムの結晶コアおよびインスリンのコーティング、メチオニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、アラニンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、バリンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、ヒスチジンの結晶コアおよびインスリンのコーティング、グリシンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびオリゴヌクレオチドDQA−HEXのコーティング、バリンの結晶コアおよびα1−アンチトリプシンのコーティングとさらにN−アセチルシステインの抗酸化剤外部コーティング、バリンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび卵白アルブミンのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドのコーティング、グルタミンの結晶コアおよび破傷風トキソイドのコーティング、バリンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの混合物のコーティング、グルタミンの結晶コアおよびジフテリアトキソイドと破傷風トキソイドの混合物のコーティングから選択される、請求項9から16のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記医薬製剤が、非経口、経肺、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与によってレシピエントに送達される、請求項9から17のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記経肺投与による医薬製剤の形成に適する生物活性分子が、以下のもの:インスリン、α1−アンチトリプシン、またはインターフェロンである治療用タンパク質;抗体ならびに抗体断片および誘導体;治療用ペプチドおよびホルモン;DNAベースの薬剤を含む合成および天然DNA;酵素;ワクチン成分;抗生物質:鎮痛剤;水溶性薬剤;水感受性薬剤;脂質および界面活性剤;多糖のいずれか、またはそれらの任意の組合せもしくは誘導体を含む、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記経肺投与による医薬製剤が、以下のもの:バリンの結晶コアおよび前記治療用タンパク質のコーティング;ヒスチジンの結晶コアおよび酵素のコーティング;バリンの結晶コアおよび酵素阻害剤のコーティング;バリンの結晶コアおよびDNAのコーティング;バリンの結晶コアおよびワクチン成分のコーティング;およびグルタミンの結晶コアおよびワクチン成分のコーティング;グルタミンの結晶コアおよびアルブミンのコーティングから選択される、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
請求項6に記載の粒子または粒子の懸濁液を含む非経口製剤。
【請求項22】
請求項6に記載の粒子または粒子の懸濁液を含む持続または制御放出医薬製剤(またはデポ剤)。
【請求項23】
請求項6に記載の粒子を使用して薬剤を製造する方法であって、前記薬剤が、肺、非経口、経鼻、舌下、静脈内、直腸、経膣、肛門内または経口投与で投与される薬剤である方法。
【請求項24】
前記薬剤が、癌;おたふく風邪;麻疹;風疹;流感;インフルエンザ;ジフテリア;破傷風;ポリオ;百日咳;A、BおよびC型肝炎;HIV;狂犬病;または糖尿病を治療するための薬剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌が、黒色腫、皮膚癌、肺癌、乳癌、および大腸癌からなる群から選択されるヒト癌である、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
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【図22】
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【図26】
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【図28】
【図29】
【図30】
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【図32】
【図33】
【公表番号】特表2006−517531(P2006−517531A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500184(P2006−500184)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000044
【国際公開番号】WO2004/062560
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504242663)ユニヴァーシティー・オブ・ストラスクライド (4)
【出願人】(505261656)ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ グラスゴー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000044
【国際公開番号】WO2004/062560
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504242663)ユニヴァーシティー・オブ・ストラスクライド (4)
【出願人】(505261656)ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ グラスゴー (1)
【Fターム(参考)】
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