説明

半導体ウェーハの製造方法

【課題】 ドナーウェーハの異物を低減化することで、貼り合わせ強度の低下を抑え、デバイスの特性を一定化させることができる半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハの製造方法であって、洗浄工程が、ドナーウェーハの表面を洗浄液に接触させて洗浄する洗浄段階を少なくとも含み、洗浄液が、NHOHとHと水を含んでおり、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10となる、半導体ウェーハの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの製造方法に関する。より詳しくは、ドナーウェーハとハンドルウェーハを接合する際に、予めドナーウェーハの表面を洗浄する方法に特徴のある半導体ウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寄生容量を低減し、デバイスの高速化を測るためにSOI(Silicon on insulator)ウェーハが広く用いられるようになってきている。従来のSOIウェーハに加えて、SOQ(Silicon on Quartz)やSOS(Silicon on Sapphire)というハンドルウェーハが絶縁透明ウェーハで構成される半導体ウェーハが、注目を集めている。SOQは石英の高い透明性を活かしたオプトエレクトロニクス関係、もしくは低い誘電損失を活かした高周波デバイスへの応用が期待される。一方で、SOSはハンドルウェーハがサファイアで構成されることから、高い透明性や低誘電損失に加え、石英では得られない高い熱伝導率を有することから、発熱を伴う高周波デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
高い品質を有する単結晶を積層するためには、バルクのシリコンウェーハから貼り合わせ法でシリコン薄膜を剥離・転写にて形成することが理想的である。バルクのシリコンウェーハ(ドナーウェーハ)の一部をハンドルウェーハに転写するためにSiGen法(例えば、特許文献1〜3)に代表されるイオン注入剥離法が広く用いられている。これは酸化膜を成長させたシリコンウェーハにイオンを注入し、ハンドルウェーハと貼り合わせを行ない、しかる後にイオン注入界面で剥離を行うという方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6263941号明細書
【特許文献2】米国特許第6513564号明細書
【特許文献3】米国特許第6582999号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、ドナーウェーハとハンドルウェーハを貼り合わせる際に、ドナーウェーハ側の貼り合わせする表面に異物が介在すると、異物周辺がボイドと呼ばれる未転写領域となり、欠陥となる問題を見出した。よって、貼り合わせ法では、ドナーウェーハ表面の異物を低減することが極めて重要となる。
上記問題は、例えば、イオン注入機を使用する際に発生することを本発明者は見出した。具体的には、ドナーウェーハへのイオン注入は、イオン注入機を使用し、イオンが加速されシリコン表面に衝突することで注入される。この際に、異物等がイオン注入機内に存在すると、ドナーウェーハ表面に固着してしまい、RCA洗浄に代表される通常の洗浄方法では、異物等を除去することが困難である。
また、本発明者は、ドナーウェーハとハンドルウェーハを貼り合わせる際には、ドナーウェーハの表面の粗さも問題となることを見出した。即ち、ウェーハの貼り合わせでは、表面粗さが増すに従い平滑性が損なわれるため、貼り合わせ強度が低下し、結果としてHF欠陥に代表される欠陥数の増加につながる。よって、表面の粗さを大きく増さずに、かつ異物を低減することが重要となる。
なお、ドナーウェーハ表面を荒らさずにイオン注入後の酸化膜付きシリコンを洗浄する方法は、提案されている(特開2010−268001号公報)。この方法は、SC1(Standard Clean 1)溶液のアンモニアの量を減らし、過酸化水素水の量を増すことで表面の粗さ増大を防ぐ方法である。しかしながら、アルカリ成分であるアンモニアの量を減らすと、異物等の除去能力が低下してしまい、貼り合わせには不適となる場合もあることを、本発明者は見出した。
本発明は、上記のようなドナーウェーハとハンドルウェーハを貼り合わせる際に生じる問題点を解決しようとするものであり、異物を低減化することで、貼り合わせ強度の低下を抑え、デバイスの特性を一定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために以下のような貼り合せ法を考案した。
通常のシリコン基板の洗浄方法としては、RCA洗浄が一般的に用いられている。その中の1工程として、SC1洗浄と呼ばれるアンモニア過水洗浄が存在する。SC1洗浄は、アンモニア(NHOH)、過酸化水素水(H)、水(H)の3種類を混合・加熱(80−90℃)した溶液に、基板を浸漬することで、表面の有機物、異物等を取り除く方法である。
本発明者は、SC1洗浄液の成分である、過酸化水素水の濃度を大きく下げて、アンモニアの過酸化水素水に対する比率を大幅に高めた溶液でドナーウェーハを洗浄すれば、異物起因の欠陥数を大幅に低減することが可能であると共に、表面粗さが増大するのを防止することが可能であることを見出した。これにより、ボイド欠陥やHF欠陥の少ない安定した貼り合せが達成可能となり、本発明を想到するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ドナーウェーハの表面を洗浄する洗浄工程と、前記ドナーウェーハの前記表面と、ハンドルウェーハの表面とを接合して接合ウェーハを得る接合工程と、を少なくとも含む半導体ウェーハの製造方法であって、前記洗浄工程が、前記ドナーウェーハの前記表面を洗浄液に接触させて洗浄する洗浄段階を少なくとも含み、前記洗浄液が、NHOHとHと水を含んでおり、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10となる、半導体ウェーハの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体ウェーハの製造方法によれば、ドナーウェーハの異物を低減化することで、貼り合わせ強度の低下を抑えることができるため、結果としてデバイスの特性を一定化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ドナーウェーハ洗浄後のパーティクル数の測定結果
【図2】洗浄時間によるドナーウェーハの表面粗さの推移
【図3】洗浄時間による酸化被膜の膜厚の推移
【図4】洗浄時間によるHF欠陥数の推移
【図5】洗浄時間によるパーティクル数の推移
【図6】SOIウェーハの製造方法の概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。
本発明において、半導体ウェーハは、ドナーウェーハと、ハンドルウェーハとを接合させて製造できる。
ここで、ドナーウェーハは、酸化膜付きシリコンウェーハ、単結晶炭化珪素ウェーハ、酸化膜付き単結晶炭化珪素ウェーハ、単結晶窒化ガリウムウェーハ、および酸化膜付き単結晶窒化ガリウムウェーハからなる群から選択されることが好ましい。これらのウェーハであれば、アルカリ洗浄に対して耐性のある材料であることから、表面粗さが増大せず、貼り合わせに不具合が生じないからである。なお、本発明において、例えば酸化膜が形成されていないシリコンウェーハのようなアルカリ洗浄の耐性に劣るウェーハの表面を洗浄すると、表面粗さが増大してしまい、貼り合わせに不具合が生じてしまう。
ドナーウェーハとしての一例を挙げるとすれば、例えばチョクラルスキー法により育成された単結晶をスライスして得られたもので、例えば直径が100〜300mm、導電型がP型またはN型、抵抗率が10Ω・cm程度の単結晶シリコンウェーハが挙げられる。
かかる単結晶シリコンウェーハの表面には、一般的な熱酸化法によりシリコン酸化膜を形成することができる。シリコン酸化膜としては、好ましくは50〜500nmの厚さを有する酸化膜が好ましい。これはあまり薄いと、酸化膜厚の制御が難しく、またあまり厚いと時間が掛かりすぎるためである。酸化膜は、上記表面粗さの問題の他、酸化膜を通して水素イオン注入を行えば、注入イオンのチャネリングを抑制する効果が得られる点からも、有効なものである。
【0011】
一方、ハンドルウェーハは、サファイアウェーハ、炭化珪素ウェーハ、ガラスウェーハ、石英ウェーハ、シリコンウェーハ、および酸化膜付きシリコンウェーハからなる群から選択されることが好ましい。これらのハンドルウェーハは、汎用的に用いられるものであり、本発明は、これらウェーハの種類を問わず、半導体ウェーハを製造可能な方法だからである。
ハンドルウェーハの好ましい厚さは、特に限定されないが、SEMI等で規定されているシリコンウェーハの厚さに近いものが望ましい。これは、半導体装置はこの厚さのウェーハを扱うように設定されていることが多いためである。この観点から好ましくは300〜900μmである。
【0012】
本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法は、ドナーウェーハの表面を洗浄する洗浄工程と、前記ドナーウェーハの前記表面と、ハンドルウェーハの表面とを接合して接合ウェーハを得る接合工程と、を少なくとも含む。これらの各工程を経て、ボイド欠陥やHF欠陥の少ない半導体ウェーハを得ることができる。
【0013】
以下、半導体ウェーハの製造方法の一例として、SOIウェーハの製造方法を図6に基づき説明する。
単結晶シリコンウェーハ12は、表面12sから水素イオンを注入し、シリコンウェーハ中に水素イオン注入層13を形成しておく。この際、例えば、単結晶シリコンウェーハの表面から所望の深さにイオン注入層を形成できるような注入エネルギーで、所定の線量の水素イオンまたは希ガスイオンの少なくとも一方を注入する。このときの条件として、例えば注入エネルギーは50〜100keV、注入線量は2×1016〜1×1017/cmとできる。
注入される水素イオンとしては、2×1016〜1×1017(atoms/cm)のドーズ量の水素イオン(H)、又は1×1016〜5×1016(molecules/cm)のドーズ量の水素分子イオン(H)が好ましい。
単結晶シリコンウェーハのイオン注入面12sから水素イオン注入層13までの深さは、ハンドルウェーハ11上に設けるシリコン薄膜の所望の厚さに依存するが、好ましくは200〜400nm、更に好ましくは300nm程度である。また、水素イオン注入層13の厚さは、機械衝撃によって容易に剥離できる厚さが良く、好ましくは200〜400nm、更に好ましくは300nm程度である。単結晶シリコンウェーハの厚さは、このような水素イオン注入層を含有できるものであれば特に限定されないが、あまり厚くなると不経済となるため、通常500〜800μmである。
【0014】
予め水素イオンを注入して水素イオン注入層13を設けた単結晶シリコンウェーハの水素イオン注入面12sを洗浄する工程については、後述する。また、かかる水素イオン注入面12sと、ハンドルウェーハ11の表面11sとの双方もしくは片方には、接合力を高めるために、表面活性化処理を施してもよい。表面活性化処理は、表面のOH基を増加させて活性化させる処理であり、単結晶シリコンウェーハの水素イオン注入面12sを洗浄した後に、行うことができる。表面活性化処理としては、例えばUVオゾン処理、イオンビーム処理、プラズマ処理のいずれか、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0015】
次に、水素イオン注入面12sとハンドルウェーハの表面11sとを接合して接合ウェーハ14を得る。例えば、貼り合わせすることにより、この時点である程度の結合強度を確保できる。単結晶シリコンウェーハ12のイオン注入面12s又はハンドルウェーハ11の表面11sの少なくとも一方が活性化処理されている場合、これらを、例えば、減圧または常圧下、好ましくは冷却や加熱をすることなく一般的な室温(約20℃)程度の温度下で密着させるだけで後工程での機械的剥離に耐え得る強度で強く接合できる。加熱して、接合強度を高めてもよい。
【0016】
接合ウェーハ14の水素イオン注入層13に、例えば機械的衝撃を加えてシリコン薄膜12Bを剥離させ、絶縁性ウェーハ11上にシリコン薄膜を転写されたシリコン薄膜転写ウェーハ15を得る。イオン注入層に衝撃を与えるためには、例えば、ガスや液体等の流体のジェットを接合したウェーハの側面から連続的または断続的に吹き付ければよい。
【0017】
以上、半導体ウェーハの製造方法の一例として、SOIウェーハの製造方法を挙げたが、本発明は、このような半導体ウェーハの製造方法のうち、ドナーウェーハの表面を洗浄する洗浄工程に特徴のあるものである。かかる洗浄工程は、ドナーウェーハの表面を洗浄液に接触させて洗浄する洗浄段階を少なくとも含む。かかる洗浄段階により、異物起因の欠陥数を低減することが可能であると共に、表面粗さが増大するのを防止することが可能である。
【0018】
洗浄段階において用いる洗浄液は、NHOHとHと水を含んでおり、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10となるものである。単にドナーウェーハ表面の異物を除去するのみならず、ドナーウェーハの表面粗さを考慮すれば、NHOHとHと水を含む洗浄液において、その体積比が29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算して上記範囲内であることが特徴となる。更には、洗浄時間や処理効率等を考慮すれば、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算した体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=1〜2:0.1〜0.2:10の洗浄液であることが、更に好ましい。
【0019】
また、洗浄段階における洗浄が、ドナーウェーハの表面の表面粗さを0.35nm以下とし、かつ、ドナーウェーハの酸化膜除去膜厚を10nm以下とすることが好ましい。表面粗さ(RMS)が0.35nm以下であることにより、ドナーウェーハとハンドルウェーハの貼り合わせの強度がより強くなり、また、ドナーウェーハの除去膜厚が10nm以下であることにより、HF欠陥等の欠陥数の増加が緩和されるからである。ウェーハの貼り合わせの強度やHF欠陥等をより厳密に考慮すると、ドナーウェーハの前記表面の表面粗さが0.3nm以下(RMS)であり、ドナーウェーハの除去膜厚が0.5〜3.0nmであることが、より好ましい。
【0020】
なお、ドナーウェーハの異物の低減化やウェーハの貼り合わせの強度、そしてHF欠陥等を制御するためには、ドナーウェーハの表面を、単に洗浄液に接触させるだけでなく、接触させる際の洗浄条件を配慮することが好ましい。こういった観点からすれば、本発明においては、洗浄対象となるドナーウェーハを、溶液温度70℃〜90℃とした上記体積比(29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、NHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10)の洗浄液に5分〜25分程度浸漬することが好ましい。尚、かかるドナーウェーハを浸漬中に、洗浄液を撹拌してもよい。
【0021】
本発明にかかる半導体ウェーハの製造方法は、貼り合せ後のドナー基板薄化工程が、図6で例示したように、ドナーウェーハにイオン注入して剥離するイオン注入剥離法であってもよく、研削・研磨法であってもよい。
また、本発明の洗浄工程としては、上記の洗浄段階を終えた後に、金属不純物等の除去を目的とした塩酸‐過酸化水素水等の水溶液からなる洗浄(いわゆるSC−2(Standard Clean 2)洗浄)段階を含んでもよい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき説明するが、本発明は実施例及び比較例に限定されるものではない。
〈各洗浄液によるドナーウェーハの洗浄〉
直径150mmのシリコンウェーハに200nmの酸化被膜を成長し、加速電圧50KeVの条件下で6.5×1016atom/cmの水素イオンを注入したものを複数枚用意した。そして、このシリコンウェーハを、表1に示す洗浄液に80℃で10分間浸漬し、その後、シリコンウェーハ表面の0.09μmより大きいパーティクルの数を、パーティクルカウンター(欠陥検査装置(KLA−Tencor社製Surfscan SP1))で測定した。この測定したパーティクル数により、シリコンウェーハ表面に付着していた異物の数の評価を行った。
ここで、NHOH、Hは、それぞれ29質量%水溶液、および30質量%水溶液を用いた。例えば、表1の実施例2の場合において、NHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=1:0.1:10の組成のエッチング溶液を作成する際には、NHOH水溶液(29質量%)2LとH水溶液(30質量%)0.2L、および水20Lを混合すれば、NHOH:H:水=2L:0.2L:20Lとなり、即ち、NHOH:H:水=1:0.1:10の体積比となる。
【0023】
【表1】

【0024】
図1は、ドナーウェーハ洗浄後のパーティクル数を測定した結果である。この結果から、洗浄液がNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10の比率のものであれば、優れたパーティクル除去力を示すことは明らかである(実施例1〜4)。一方で、上記比率から外れる洗浄液(比較例3)や純水(比較例2)により洗浄した場合は、洗浄しなかった場合(比較例1)とほとんど変わらない結果となったことから、パーティクル除去効果が非常に薄いといえる。
【0025】
〈洗浄時間によるドナーウェーハのパーティクル数の推移等〉
直径150mmのシリコンウェーハに200nmの酸化被膜を成長し、加速電圧50KeVの条件下で6.5×1016atom/cmの水素イオンを注入したシリコンウェーハを複数枚用意し、表1に示す実施例1の洗浄液に80℃で0〜35分間浸漬した。その後、洗浄したシリコンウェーハについて、表面粗さRMS、酸化膜厚、HF欠陥数、パーティクル数の各測定を行った。
ここで、表面粗さRMS(JIS B0601)は、シリコンウェーハ表面の10μm×10μmの範囲について、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。また、酸化膜厚については、光学式干渉計により測定し、HF欠陥数については、光学顕微鏡により目視で測定した。
【0026】
図2は、洗浄時間によるドナーウェーハの表面粗さRMSの推移をプロットしたものであり、図3は、洗浄時間による酸化被膜の膜厚の推移をプロットしたものである。そして、図4は洗浄時間によるHF欠陥数の推移をプロットしたものであり、図5は、洗浄時間によるパーティクル数の推移をプロットしたものである。
【0027】
図5より、パーティクル数は洗浄時間に関わらず大幅に減少していることから、本発明の方法であれば、洗浄時間を短縮しても異物除去能力は十分であることがわかった。
図4より、HF欠陥は、ドナーウェーハの洗浄時間が25分を超えると増加する傾向が認められた。図2、3より、ドナーウェーハの洗浄時間が25分を超えたときの表面粗さRMSが約0.35nmであり、酸化膜の除去膜厚は約10nmである。従って、ドナーウェーハの洗浄時間が25分を超えることにより、表面粗さRMSや、酸化膜の除去膜厚が上記の値を超えると、HF欠陥数が増大することは明らかである。
【0028】
以上の結果から、ドナーウェーハを洗浄するにあたり、NHOHとHと水を含んでおり、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10となる洗浄液を用いれば、ドナーウェーハ表面の異物が良好に除去できることがわかった。更には、洗浄時間を制御すれば、HF欠陥の増加を抑制可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明にかかる製造方法によれば、貼り合わせ強度の低下を抑えることでデバイス性能を安定化させ得る半導体ウェーハを容易に製造できる。
【符号の説明】
【0030】
11 ハンドルウェーハ
11S ハンドルウェーハの表面
12 単結晶シリコンウェーハ
12B シリコン薄膜
12S 単結晶シリコンの水素イオン注入面
13 水素イオン注入層
14 接合ウェーハ
15 シリコン薄膜転写ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーウェーハの表面を洗浄する洗浄工程と、
前記ドナーウェーハの前記表面と、ハンドルウェーハの表面とを接合して接合ウェーハを得る接合工程と、
を少なくとも含む半導体ウェーハの製造方法であって、
前記洗浄工程が、
前記ドナーウェーハの前記表面を洗浄液に接触させて洗浄する洗浄段階を少なくとも含み、
前記洗浄液が、NHOHとHと水を含んでおり、29質量%NHOH水溶液と30質量%H水溶液に換算すると、体積比でNHOH水溶液(29質量%):H水溶液(30質量%):水=0.5〜2:0.01〜0.5:10となる、半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記洗浄が、前記ドナーウェーハの前記表面の表面粗さを0.35nm以下とし、かつ、前記ドナーウェーハの除去膜厚を10nm以下とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程が、前記洗浄段階後に、塩酸‐過酸化水素水等の水溶液からなるSC2洗浄段階を含む請求項1または請求項2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記洗浄工程の前に、予め前記ドナーウェーハの前記表面から水素イオンを注入して当該ドナーウェーハ中に水素イオン注入層を設ける水素イオン注入工程を更に含み、前記接合工程の後に、前記接合ウェーハから前記水素イオン注入層を剥離して、薄膜を転写された半導体ウェーハを得る剥離工程を更に含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記接合ウェーハのドナーウェーハを、研削・研磨法により薄膜化する工程をさらに含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記ドナーウェーハが、酸化膜付きシリコンウェーハ、単結晶炭化珪素ウェーハ、酸化膜付き単結晶炭化珪素ウェーハ、単結晶窒化ガリウムウェーハ、および酸化膜付き単結晶窒化ガリウムウェーハからなる群から選択される請求項1〜請求項5のいずれかに記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記ハンドルウェーハが、サファイアウェーハ、炭化珪素ウェーハ、ガラスウェーハ、石英ウェーハ、シリコンウェーハ、および酸化膜付きシリコンウェーハからなる群から選択される請求項1〜請求項6のいずれかに記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記洗浄工程と前記接合工程の間に、前記ドナーウェーハの前記表面と、前記ハンドルウェーハの前記表面の少なくともいずれかの表面に表面活性化処理を行う請求項1〜請求項7のいずれかに記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項9】
表面活性化処理が、オゾン水処理、UVオゾン処理、イオンビーム処理、プラズマ処理のいずれか、もしくはこれらの組み合わせである請求項8に記載の半導体ウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182201(P2012−182201A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42498(P2011−42498)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】