説明

半導体ウエハの超音波洗浄装置及び洗浄方法

【課題】 半導体ウエハの超音波洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】 洗浄槽の底部に、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波発生装置を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの超音波洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置ではパターンのさらなる微細化に伴い、種々の製造工程において半導体ウエハの表面に発生し、又は付着する種々の性質の微細パーティクルの完全な除去が可能な洗浄装置が望まれている。特に溶液中で微細パーティクルを除去する洗浄装置として超音波を用いる洗浄装置が知られている。例えば1MHz以上の高い周波数帯域を利用した超精密洗浄装置が開発されている。また微細パーティクルの除去には高周波が有効であるが、有機溶剤や油性等のような比較的大きなサイズの汚れ(又はパーティクル)の洗浄には高周波よりも低周波の方が良好な洗浄効果が得られることも知られている。
【0003】
そこで従来これらパーティクルや汚れを効率的に洗浄するために、高周波及び低周波の超音波を切り替えて洗浄に使用する超音波洗浄方法とその装置が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、高周波及び低周波の超音波を同時に洗浄ウエハの面に分けて使用する超音波洗浄方法とその装置が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながらこれらの洗浄装置は高周波及び低周波の超音波を発生するための手段を別々に設ける必要があり、高周波及び低周波の超音波を切り替えのための制御が難しいという問題点や洗浄装置自体が大型化するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−311379号公報
【特許文献2】特開2000−253479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体ウエハの超音波洗浄装置及びそれを用いた洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上で説明した従来公知の超音波洗浄装置に基づく問題点を解決すべく鋭意研究開発した結果、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波発生装置を使用することにより、パーティクルや汚れを効率的に洗浄することが可能となることを見いだし本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明に係る半導体ウエハの超音波洗浄装置は、洗浄槽の底部に、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波発生装置を設けたことを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る半導体ウエハの超音波洗浄装置は、前記周波成分が、0.02〜4MHzの範囲であることを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る超音波洗浄装置は、前記周波成分が、少なくとも、0.02〜2MHzの成分と、その2次高調波の成分を含むことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明に係る洗浄方法は、本発明に係る洗浄装置を用いることを特徴とする方法であって、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分からなる変調超音波発生装置を用いて洗浄することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る半導体ウエハの洗浄方法は、前記周波成分が、0.02〜4MHzの範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超音波洗浄装置は、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波発生装置を用いることにより、洗浄槽内の半導体ウエハの表面に、複数の周波数成分からなる変調超音波が同時に作用し、ウエハ表面の種々のサイズ・形状のパーティクルのみならず有機性の油汚れも十分洗浄して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の実施例で使用した変調波を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(半導体ウエハ)
本発明に係る洗浄装置及びそれを用いた洗浄方法により洗浄される半導体ウエハには特に制限はない。半導体製造工程で洗浄が必要とされるすべての物が含まれる。特に半導体ウエハの研磨・研削工程の後に必要とされる洗浄工程において使用されることが好ましい。また、半導体ウエハのスライス後、ラップ後、エッチング後、熱処理前後、CVD処理前後、エピタキシャル工程前後、各種検査前後などの洗浄工程においても使用することができる。
【0017】
(洗浄槽)
本発明で使用可能な洗浄槽は従来公知の超音波洗浄装置で用いられている形状・材料からなるものであれば何ら制限はされない。洗浄槽内への超音波の伝搬方向についても特に制限はないが、洗浄装置の底部から洗浄槽内へ超音波が伝搬可能な形状・材料の選択が好ましい。すなわち洗浄槽の底部の材料は、0.02〜4MHzの超音波が伝搬可能な材料であればよく、具体的には石英、ステンレス等が挙げられる。またその厚みは、それぞれの周波数の超音波を効率よく透過する厚み、具体的には超音波の基本波長の半波長の整数倍(n×λ/2、ここでnは整数、λは超音波の基本波長)とすることがのぞましい。
【0018】
また本発明で使用可能な洗浄槽は半導体ウエハ洗浄槽として通常公知の装置を設けることも可能である。具体的には、半導体ウエハの取り入れ取り出しのためのウエハまたはウエハ用カセット出し入れ用装置、洗浄液を循環させるための循環装置、洗浄液の温度調節のための加熱・冷却装置、雰囲気ガス調整用のガス導入装置、液中ガス濃度調整用のガス溶解または除去装置、ウエハまたはウエハ用カセットの揺動装置、洗浄液の蒸発と汚染を防ぐための蓋の開閉装置などが挙げられる。
【0019】
(超音波発生装置)
本発明で使用される超音波発生装置は、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波が、洗浄槽内の半導体ウエハの表面に作用可能であれば特に制限はない。
【0020】
本発明で使用可能な変調超音波の周波数成分の周波数、周波数分布、波形、重畳方式、各周波数のパワーについても、洗浄槽内の半導体ウエハの表面に作用し、ウエハ表面の種々のサイズ・形状のパーティクルのみならず有機性の油汚れを洗浄除去可能であればよい。特に本発明において好ましく使用可能な周波数としては、0.02〜4MHzの範囲である。係る範囲よりも低い周波数の使用は、超音波では無く可聴音領域となるため超音波洗浄特有の効果が得られないので好ましくない。また係る範囲よりも高い周波数の使用は、大出力の超音波を発振させるコストが高くなり、一方で高周波領域では周波数を上げても汚染除去能力があまり上がらないことが知られているので、コストと性能のバランスの点から好ましくない。
【0021】
また本発明においては、周波数分布としては、前記周波成分が、0.02〜2MHzの成分と、その2次高調波の成分を少なくとも含むことが好ましい。ここで0.02〜2MHzの成分は主に有機油汚れのような比較的大きなサイズの汚れ(又はパーティクル)を洗浄除去するのに有効に作用する。またその2次高調波の成分は主に相対的に微細なパーティクルを洗浄除去するのに有効に作用する。さらにこれらのほかに除去すべきパーティクルのサイズ、種類に応じて他の周波数成分を含めることも可能である。
【0022】
本発明において上で説明した周波数及び周波数分布を構成する波形についても特に制限はない。正弦波、パルス波、三角波、又はノコギリ波、およびそれらを単独で又は組み合わせて使用することも可能である。本発明においては2種類またはそれ以上の種類の正弦波を重畳した波形の使用が好ましい。本発明において、かかる波を重畳する方式についても特に制限はなく、上で説明した洗浄効果を奏する方式を適宜選択することが可能である。具体的には波のスタートの位相を一致させての周波数変調が挙げらる。
【0023】
本発明において上で説明した変調超音波を発生する方法及び装置についても特に制限はない。超音波振動子については、従来公知の市販されている単一の超音波振動子をそのまま好ましく使用可能である。超音波発振器については、従来公知の市販されているファンクションジェネレータにて波形を合成することにより、上で説明した本発明で使用可能な変調超音波の周波数成分の周波数、周波数分布、波形、重畳方式、各周波数のパワーを得ることが可能となる。
【0024】
また本発明においては洗浄槽の底部に超音波発生装置を設ける態様を説明したが、洗浄槽の底部に限定されるものではなく、横部又は上部に設けることも選択可能である。
【0025】
(洗浄液)
また本発明で使用可能な洗浄液についても特に制限はなく、従来公知の種々の洗浄工程で使用される目的に合わせて選択することが可能である。具体的には半導体ウエハ製造工程において、研磨・研削工程後の洗浄工程や、スライス後、ラップ後、エッチング後、熱処理前後、CVD処理前後、エピタキシャル工程前後、各種検査前後などの洗浄工程で使用されるアンモニア過水(過酸化水素水)洗浄液、有機アミン・過水洗浄液、塩酸・過水洗浄液、塩酸洗浄液、オゾン系洗浄液、界面活性剤系洗浄液、純水などが挙げられる。
【0026】
(洗浄方法)
本発明に係る洗浄方法は上で説明した本発明の洗浄装置を用いて半導体ウエハを洗浄する方法である。すなわち単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分からなる変調超音波発生装置を用いて洗浄することを特徴とするものである。
【実施例】
【0027】
以下本発明の洗浄装置につき図面を用いてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に示される装置・方法に限定されるものではない。
【0028】
図1には、本発明の装置の具体的な構成の一例を示した。
【0029】
超音波発振器4は、複数の周波数を重畳した波形の電気信号を発生させ、超音波振動子3にそれを伝達する。超音波振動子3はその波形に同期して厚み方向に振動し、その振動が、間接槽2内に満たされた間接水5を媒体として、洗浄槽8に伝播する。洗浄槽8の振動は洗浄液6を媒体としてウエハ7に伝播し、ウエハ7表面の微細パーティクルなどの汚れが除去される。このとき、超音波発振器3からの出力波形を、図2に示したように基本波を2次高調波で変調した合成波形に設定すると、超音波振動子3の振動波形が基本波と2次高調波の両方の周波数成分を含むことから、ウエハ7には実質的に2種類の周波数の超音波が同時照射されたのと等価となり、それぞれの周波数が得意とする大きさ又は種類の汚染を同時に除去できる。例えば、基本波成分によって有機油汚れのような比較的大きなサイズの汚れ(又はパーティクル)が除去され、これに対し2次高調波の成分によって相対的に微細なパーティクルが除去される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の超音波洗浄装置及びそれを用いた洗浄方法は、特に半導体製造工程で使用される種々の種類の洗浄工程で使用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 洗浄装置
2 間接槽
3 超音波振動子
4 超音波発振器
5 間接水
6 洗浄液
7 ウエハ
8 洗浄槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽の底部に、単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分が重畳された変調超音波発生装置を設けたことを特徴とする、半導体ウエハの超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記周波成分が、0.02〜4MHzの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記周波成分が、少なくとも、0.02〜2MHzの成分と、その2次高調波の成分を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
単一の超音波振動子により発振させた複数の周波数成分からなる変調超音波発生装置を用いて洗浄することを特徴とする、半導体ウエハの洗浄方法。
【請求項5】
前記周波成分が、0.02〜4MHzの範囲であることを特徴とする、請求項4に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記周波成分が、少なくとも、0.02〜2MHzの成分と、その2次高調波の成分を含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−278305(P2010−278305A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130610(P2009−130610)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】