半導体センサ及び半導体センサの製造方法
【課題】支持部に対する錘部の移動に伴ってこれらの間の可撓部が変形する半導体センサにおいて、その応答時間を短く設定でき、かつ、検出可能な物理量の周波数帯域を拡大できるようにする。
【解決手段】一部が可撓性を有する可撓部Fとして構成される薄肉部12と、薄肉部12の一方の主面12dから突出して薄肉部12と共に錘部Mを構成する錘用突出部11Bと、これとの間に間隙を空けるように薄肉部12の一方の主面12dから突出し、薄肉部12と共に支持部Sを構成する支持用突出部13とを備え、その突出方向の先端面13dが外方に露出するように、薄肉部12の両方の主面12c,12d側が可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体15,16によって埋設され、支持用突出部13の先端面13dをなす延長部14の弾性率が、粘弾性体15,16よりも大きく、かつ、延長部14を除く支持部Sの他の構成部分よりも小さい半導体センサ1を提供する。
【解決手段】一部が可撓性を有する可撓部Fとして構成される薄肉部12と、薄肉部12の一方の主面12dから突出して薄肉部12と共に錘部Mを構成する錘用突出部11Bと、これとの間に間隙を空けるように薄肉部12の一方の主面12dから突出し、薄肉部12と共に支持部Sを構成する支持用突出部13とを備え、その突出方向の先端面13dが外方に露出するように、薄肉部12の両方の主面12c,12d側が可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体15,16によって埋設され、支持用突出部13の先端面13dをなす延長部14の弾性率が、粘弾性体15,16よりも大きく、かつ、延長部14を除く支持部Sの他の構成部分よりも小さい半導体センサ1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度、角速度等の物理量を検出する半導体センサ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造される加速度センサやジャイロセンサ等の半導体センサは、ビームやダイヤフラム等の可撓部を備えており、可撓部の変形や変位を電気信号に変換する半導体センサでは、例えば特許文献1のように、可撓部に錘部(作用部、重錘体)を結合することによってその感度を高めている。すなわち、この種の半導体センサでは、外力が小さくても錘部の重さの分だけ大きな慣性力が作用するため、この錘部の移動に伴って可撓部が変形又は変位することで小さな加速度や角速度等の物理量でも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−294450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外力によって移動した錘部は可撓部の弾性力によって振動するが、上記従来の半導体センサにおいて、錘部は動粘度が非常に小さい気体雰囲気中に配されているため、錘部のQ値(振動の状態を表す無次元数)が高く、その結果として、錘部の振動が減衰して停止するまでの時間(以下、減衰時間と呼ぶ)が長くなってしまう。
そして、錘部を備えた半導体センサは、一度加速度や角速度等の物理量を検出した後に錘部の振動を停止させることで、再度物理量を検出できるように構成されている。このため、前述した振動の減衰時間が長くなってしまうと、一度物理量を検出した後に再度物理量を検出できるまでに要する時間(以下、応答時間と呼ぶ。)が長くなる、という問題がある。
また、錘部のQ値が高いと、検出可能な物理量の周波数帯域が狭くなるため、半導体センサの汎用性が低くなる、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、応答時間を短く設定でき、かつ、検出可能な物理量の周波数帯域を拡大できる半導体センサ、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の半導体センサは、一部が可撓性を有する可撓部として構成される薄肉部と、前記薄肉部の一方の主面から突出して前記薄肉部と共に錘部を構成する厚肉の錘用突出部と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記薄肉部の一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部と、前記支持部に対する前記錘部の移動に伴う前記可撓部の変形又は変位を検出する検出手段とを備え、前記支持用突出部の突出方向の先端面が外方に露出するように、前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方が、前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体によって埋設され、前記支持用突出部の少なくとも一部が、前記先端面をなす延長部によって構成され、当該延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
なお、前記粘弾性体としては、エラストマーのほか、例えばシリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲルや、スポンジのような発泡樹脂等のように気体と比較して高い動粘度の樹脂が挙げられる。
また、前記粘弾性体が前記薄肉部の一方の主面側に形成される場合には、前記錘用突出部と前記支持用突出部との間隙を埋めるように形成されればよい。
そして、上記半導体センサを使用する際には、錘部から離間した可撓部の一部が、支持部を介して、例えば半導体センサを収容するケースや半導体センサに電気接続される回路基板等のベース材に固定されていればよい。具体的には、例えば薄肉部の一方の主面側をベース材に対向させた状態で、支持用突出部の先端面がベース材に固定されていればよい。
【0008】
この固定状態において半導体センサに外力が作用すると、ベース材に対して錘部が慣性力によって移動すると共に可撓部が支持用突出部を介する等してベース材に固定された一部を支点として弾性変形し、さらに、可撓部及び錘部を薄肉部の一方の主面側や他方の主面側から包む粘弾性体も変形する。このため、慣性力に基づいて移動した後の錘部は可撓部の弾性力によって振動するが、錘部の振動は、これに伴う粘弾性体の変形によって吸収され、短時間で減衰・停止することになる。すなわち、この半導体センサでは、気体よりも動粘度の高い粘弾性体によって可撓部及び錘部の少なくとも一部が包まれるため、錘部全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部のQ値を低く設定することができる。なお、錘部の振動を粘弾性体の変形によって吸収しきれない場合には、粘弾性体よりも大きい弾性率の延長部が変形することで錘部の振動を吸収することも可能であり、その結果、錘部のQ値をさらに低く設定することができる。
また、検出手段により加速度や角速度等の物理量を検出した後から再度物理量の検出が可能となるまでの応答時間の短縮を図ることもできる。
さらに、錘部のQ値を低く設定できることから、検出可能な加速度や角速度等の物理量の周波数帯域が拡大され、結果として、汎用性の高い半導体センサを提供することが可能となる。
【0009】
また、支持用突出部の先端面をベース材に固定した場合、半導体センサ及びベース材の熱膨張係数が相互に異なっていると、半導体センサ及びベース部材が加熱若しくは冷却された際に、前述した熱膨張係数の差に基づいて支持部とベース材との間に応力が発生するが、ベース材と前記支持部の他の構成部分との間に介在する延長部が変形することで、この応力を緩和することができる。したがって、半導体センサ及びベース材が加熱若しくは冷却されても、半導体センサの特性が変化することを抑制できる。
さらに、支持用突出部の先端面をベース材に固定した場合、粘弾性体では吸収しきれない強い衝撃がベース材に加えられても、この衝撃を延長部において吸収することができる。このため、前記衝撃によって可撓部及び錘部が過度に振動して錘部がベース材に衝突してしまうことを防止できる。すなわち、この構成の半導体センサは、支持部の他の構成部分が直接ベース材に固定される場合と比較して、耐衝撃性に有利である。
【0010】
そして、前記半導体センサは、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように当該粘弾性体に接合される保護プレートを備えていてもよい。
上記半導体センサによれば、錘部が保護プレートに対して振動した際に、錘部と制御チップとの間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。
【0011】
また、前記半導体センサは、当該半導体センサを駆動制御する板状の制御チップと共に半導体センサユニットを構成し、当該制御チップが、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように当該粘弾性体に接合されていてもよい。
上記半導体センサユニットによれば、錘部が制御チップに対して振動した際に、錘部と制御チップとの間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部と制御チップとの間に粘弾性体を介在させることで、錘部が制御チップに衝突することも容易に防止できる。
また、この半導体センサユニットによれば、半導体センサと制御チップとを個別にベース材の搭載面に固定する場合よりも搭載面積を縮小することができる。
【0012】
さらに、前記半導体センサは、これを固定する搭載面を有するベース材と共に半導体パッケージを構成し、当該ベース材の搭載面が、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように前記粘弾性体に接合されていてもよい。
なお、ベース材としては、前述したように、例えば半導体センサを収容するケースや半導体センサに電気接続される回路基板等が挙げられる。
上記半導体パッケージによれば、錘部がベース材に対して振動した際に、錘部とベース材との間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部とベース材の表面との間に粘弾性体を介在させることで、錘部がベース材に衝突することも容易に防止できる。
【0013】
また、本発明の半導体センサの製造方法は、シリコンバルクの異方性エッチングにより、薄肉部の一方の主面から突出する厚肉の錘用突出部を形成して、前記薄肉部及びこれに積層された前記錘用突出部により錘部を構成すると共に、前記錘用突出部に隣り合う前記薄肉部により可撓性を有する可撓部を構成するセンサ形成工程と、前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方に粘弾性材料を塗布することで前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体を形成して、当該粘弾性体により前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方を埋設する錘部埋設形成工程と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記一方の主面上に延びる延長部を形成する延長部形成工程とを備え、少なくともこれらセンサ形成工程、錘部埋設形成工程及び延長部形成工程の実施後に、前記延長部が、前記一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部のうち、少なくとも外方に露出する前記支持用突出部の突出方向の先端面を含む一部を構成し、前記延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
この製造方法を実施することで前記半導体センサを製造することができる。
【0014】
なお、前記半導体センサの製造方法では、前記錘部埋設形成工程において、感光性ゴムからなる前記粘弾性材料が前記薄肉部の一方の主面側に塗布された後に、前記延長部形成工程において、前記感光性ゴムからなる前記粘弾性体の一部を硬化させることで前記延長部を形成してもよい。
【0015】
また、半導体センサの製造方法では、前記センサ形成工程において多数の前記錘用突出部を形成すると共に、前記延長部形成工程において多数の前記延長部を形成し、前記センサ形成工程、前記錘部埋設形成工程及び前記延長部形成工程の実施後において前記多数の前記支持用突出部が形成された後に、少なくとも一つの前記錘部、前記可撓部及び前記支持部を備える個々の半導体センサに個片化するダイシング工程を実施してもよい。
この場合には、錘部埋設工程における粘弾性材料の塗布により、多数の可撓部及び錘部のうち一方の主面側や他方の主面側を一括して埋設できるため、半導体センサの製造効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可撓部及び錘部を備えた半導体センサの応答時間を短く設定でき、かつ、検出可能な物理量の周波数帯域を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体センサを示す概略断面図である。
【図6】図1の半導体センサユニットを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図7】図1の半導体センサユニットを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る半導体センサを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜7を参照して本発明の一実施形態に係る半導体センサについて説明する。図1に示すように、この実施形態に係る半導体センサ1は、平面視環状に形成された支持部Sと、支持部Sの内側に間隔をあけて配された平面視略矩形の錘部Mと、可撓性を有して支持部Sと錘部Mとを一体に連結する可撓部Fと、検出手段としてのピエゾ抵抗部121とを備えている。すなわち、この半導体センサ1は、慣性力に応じた可撓部Fの変形又は変位をピエゾ抵抗部121によって電気信号に変換することで加速度を検出する加速度センサとして構成されており、また、MEMS技術を用いてSOI(Silicon on Insulator)ウエハ(シリコンバルク)10によって主に製造されている。
【0019】
支持部S及び錘部Mは、ベースウエハ11上に半導体層(SOI層)12を積層したSOIウエハ10によって主に構成されている。なお、ベースウエハ11は、単結晶シリコン層111上に二酸化シリコン(SiO2)からなる酸化層112を積層して構成されるものであり、半導体層12は酸化層112上に積層されている。また、酸化層112は、単結晶シリコン(Si)からなるベースウエハ11の熱酸化された表層である。
そして、錘部Mの厚さ寸法は、SOIウエハ10の厚さ寸法に等しいが、支持部Sの厚さ寸法よりも小さくなるように設定されている。すなわち、支持部Sは、半導体層(薄肉部)12、及び、その下面(一方の主面)12dの周縁から突出する平面視環状の支持用突出部13によって構成されている。そして、支持用突出部13は、平面視環状の枠体部11Aをなすベースウエハ11と、枠体部11Aのうちその突出方向に面するベースウエハ11の下面11dに積み重ねられた延長部14とによって構成されている。なお、延長部14は、枠体部11Aと同様に平面視環状に形成されていてもよいが、例えば枠体部11Aの周方向の一部に1つだけ配されてもよいし、枠体部11Aの周方向に間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0020】
一方、錘部Mは、半導体層12、及び、枠体部11Aの内側に間隔を空けるように半導体層12の下面12dの中央部分から突出する凸部(錘用突出部)11Bによって構成されており、凸部11Bはベースウエハ11によって構成されている。ここで、ベースウエハ11からなる凸部11Bの厚さ寸法は、同じくベースウエハ11からなる枠体部11Aの厚さ寸法に等しく、延長部14の厚さ寸法分だけ支持用突出部13よりも小さく設定されている。
【0021】
可撓部Fは、SOIウエハ10の半導体層12の一部によって構成されている。この可撓部Fは、少なくとも支持部Sに対する錘部Mの移動に伴って変形又は変位すれば、例えば支持部Sの内縁全体に連結されるダイヤフラム状に形成されていてもよいし、支持部Sの周方向に複数に分割して形成されていてもよい。また、可撓部Fは、例えば支持部Sと錘部Mとの間に1つだけ形成される片持ち梁状に形成されてもよい。
ピエゾ抵抗部121は、可撓部Fをなす半導体層12の上面(他方の主面)12c側に複数形成されており、半導体層12上にはピエゾ抵抗部121の図示しない配線等が形成されている。
また、この半導体センサ1においては、半導体層12の上面12cの周縁に複数の電極パッド122が形成されている。これら複数の電極パッド122は、ピエゾ抵抗部121からの電気信号を外部に取り出したり、半導体センサ1を接地させる役割を果たしている。なお、図示例において、電極パッド122は支持部Sをなす半導体層12の上面12cに配されている。
【0022】
さらに、本実施形態の半導体センサ1においては、可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側及び下面12d側が可撓部F及び支持部Sよりも弾性率の小さい粘弾性体15,16によって埋設されている。なお、粘弾性体のヤング率は100MPa以下であることが望ましいが、これに限らなくてもよい。
そして、半導体層12の上面12c側の粘弾性体16は、可撓部F、錘部M及び支持部Sを構成する半導体層12の上面12cにわたって厚膜状に形成されており、その上面16cは平坦に形成されている。この粘弾性体16には、複数の電極パッドを個別に、あるいは、複数まとめて露出させる開口部16aが形成されている。
上面12c側の粘弾性体16としては、例えば感光性ゴム等のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0023】
一方、半導体層12の下面12d側の粘弾性体15は、半導体層12の下面12d上に堆積され、平面視環状の支持用突出部13と凸部11Bとの間隙を埋めるように、かつ、凸部11Bの下面11dを覆うように設けられている。すなわち、下面12d側の粘弾性体15は、凸部11B全体及びこれに対向する支持用突出部13の内側全体を埋設している。また、下面12d側の粘弾性体15は、下面12dからの厚さ寸法が支持用突出部13の厚さ寸法と等しくなるように設定されている。さらに、この粘弾性体15の下面15dは延長部14からなる支持用突出部13の先端面13dと共に同一平面をなすように形成されている。
下面12d側の粘弾性体15は、エラストマーの一種である環化ブタジエンゴムや環化イソプレンゴム等の感光性ゴムによって構成されている。なお、支持部Sを構成する延長部14は、粘弾性体15を構成する感光性ゴムが露光によって硬化したものである。また、延長部14の弾性率は、粘弾性体15,16の弾性率よりも大きく、かつ、枠体部11A及び半導体層12(延長部14を除く支持部Sの他の構成部分)の弾性率よりも小さくなるように設定されている。
【0024】
ところで、上記構成の半導体センサ1は、これに積層して固定されたICやLSI等の制御チップ6と共に半導体センサユニット201を構成している。
制御チップ6は、半導体センサ1を駆動制御する役割を果たすものであり、例えば半導体センサ1からの電気信号を増幅するための増幅回路や、前記電気信号をデジタル信号として処理するためのA/D変換器、DSP(Digital Signal Processor)等の電気回路を含んで構成される。
制御チップ6は板状に形成されており、制御チップ6の上面6cには、半導体センサ1の電極パッド122と電気接続される端子パッド61、及び、制御チップ6の電気回路を外部に接続する複数の外部端子パッド62が形成されている。なお、図示例においては、端子パッド61が制御チップ6の上面6cの周縁に配されると共に外部端子パッド62が端子パッド61よりも制御チップ6の上面6cの内側に配されているが、端子パッド61及び外部端子パッド62は制御チップ6の上面6cの任意の位置に配することが可能である。例えば、端子パッド61及び外部端子パッド62の両方が制御チップ6の上面6cの周縁に並べて配されていてもよい。
【0025】
この制御チップ6は、その下面6dを半導体センサ1に対向させた状態で半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに固定されている。この制御チップ6の固定は、接着剤によって実施されてもよいが、例えば粘弾性体16自体の粘着力によって実施されてもよい。
なお、図1に示す半導体センサユニット201では、電極パッド122と端子パッド61とが電気接続されていないが、例えばボンディングワイヤ19(図6,7参照)によって予め電気接続されていてもよい。
【0026】
次に、上記構成の半導体センサ1の製造方法について説明する。
半導体センサ1を製造する場合には、はじめに、SOIウエハ10の半導体層12に不純物を注入してピエゾ抵抗部121を形成する工程や、半導体層12を可撓部Fの平面視形状に合わせてエッチングする工程や、半導体層12上にピエゾ抵抗部121の配線や電極パッド122を形成する工程を実施しておく。これらの工程は、特開平8−274349号公報等に開示されているように公知であるため、その説明を省略する。
【0027】
次いで、ベースウエハ11をDeep−RIE等により異方性エッチングすることで、図2に示すように、ベースウエハ11を枠体部11Aと凸部11Bとに区画する環状の区画凹部H1を形成するセンサ形成工程を実施する。これにより、半導体層12及びこれに積層された平面視環状の枠体部11Aによって支持部Sが構成され、半導体層12及びこれに積層された凸部11Bによって錘部Mが構成される。また、区画凹部H1の深さ寸法はベースウエハ11の厚さ寸法と同等に設定されているため、枠体部11A及び凸部11Bの間に位置する半導体層12の下面12dが露出する。この下面12dが露出した半導体層12の部分は可撓部Fを構成している。
なお、このセンサ形成工程あるいはその前後においては、例えば錘部Mを構成する凸部11Bの下面11dに研削及び研磨の一方、あるいは、両方を実施して錘部Mの重量や寸法を調整してもよい。
【0028】
そして、図3に示すように、半導体層12の下面12d側に粘弾性材料を塗布することで可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体15を形成して、粘弾性体15により可撓部及び錘部のうち半導体層12の下面12d側を埋設する第一錘部埋設工程を実施する。
この工程においては、半導体層12の下面12dを上向きに配置した状態で、枠体部11A及び凸部11B全体が粘弾性体15によって埋設されるように、粘弾性材料を塗布する。この実施形態においては、粘弾性材料としてエラストマーの一種であるUV硬化樹脂等の感光性樹脂材料を使用する。
また、この粘弾性材料の具体的な塗布方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーによる塗布等のようにベースウエハ11の下面11d及び半導体層12の下面12d全体にわたって粘弾性材料を塗布する方法が挙げられる。また、粘弾性材料の塗布は、インジェクションやラミネート等によって実施されてもよい。
【0029】
なお、第一錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後に、例えば真空脱泡等により粘弾性材料中に含まれる気泡を除去してもよいが、特に実施しなくてもよい。
さらに、第一錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後に、粘弾性材料を強制的に乾燥させて粘弾性体15とする乾燥工程や、ベースウエハ11の下面11d上に位置する粘弾性体15の下面15dを平坦化する平坦化工程を適宜実施してもよい。ここで、平坦化工程を例えばスクイーズにより実施する場合には、平坦化工程後に乾燥工程を実施すればよい。また、平坦化工程を例えば研磨や研削により実施する場合には、乾燥工程後に平坦化工程を実施すればよい。
【0030】
第一錘部埋設工程後には、図4に示すように、支持部Sの枠体部11Aをなすベースウエハ11の下面11dに支持部Sの延長部14を形成する延長部形成工程を実施する。この工程においては、枠体部11Aの下面11d上に位置する粘弾性体15のみにレーザ光等を照射する露光により、枠体部11Aの下面11d上に位置する粘弾性体15を硬化させる。これにより、硬化した粘弾性体15が、粘弾性体15の弾性率よりも大きく、かつ、枠体部11A及び半導体層12の弾性率よりも小さい延長部14として形成されることになる。なお、粘弾性体15をなす感光性ゴムがUV硬化ゴムである場合には、前述のレーザ光として、例えばUV帯域のエキシマレーザを使用すればよい。
この延長部形成工程を実施することにより、枠体部11A及び延長部14からなる支持用突出部13が構成されることになる。
【0031】
その後、図5に示すように、半導体層12の上面12c側に粘弾性材料を塗布することで可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体16を形成して、粘弾性体16により可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側を埋設する第二錘部埋設工程を実施することで、半導体センサ1の製造が完了する。
この第二錘部埋設工程においては、半導体層12の上面12cを上向きに配置した状態で、はじめに、半導体層12の上面12c全体にわたって粘弾性材料を塗布する。なお、粘弾性材料の塗布方法は、第一錘部埋設工程の際と同様に、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーによる塗布等が挙げられる。そして、粘弾性材料としては、感光性樹脂材料に限らず、様々な種類のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
なお、第二錘部埋設工程においては、この粘弾性材料の塗布後に、例えば真空脱泡等により粘弾性材料中に含まれる気泡を除去してもよいが、特に実施しなくてもよい。
【0032】
さらに、第二錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後に、第一錘部埋設工程と同様の乾燥工程や平坦化工程を適宜実施してもよい。
また、第二錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後から乾燥工程や平坦化工程の後までの間に、複数の電極パッド122を個別に、あるいは、複数まとめて露出させる開口部16aを形成する。開口部16aの具体的な形成方法としては、例えばレーザにより電極パッド122上の粘弾性体16を除去したり、開口部16aの形成予定領域を除く上面16cをカプトンテープ等でマスキングした上でエッチングにより電極パッド122上の粘弾性体16を除去することが挙げられる。また、粘弾性体16がポジ型のレジストである場合には、露光現像により電極パッド122上の粘弾性体16を除去してもよい。
なお、この第二錘部埋設工程は、第一錘部埋設工程の後に限らず、例えばセンサ形成工程と第一錘部埋設工程との間に実施してもよい。
【0033】
そして、半導体センサユニット201を製造する場合には、上述した第二錘部埋設工程の後に、制御チップ6を半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに固定すればよい。ここで、制御チップ6は、別途接着剤を介して接合されてもよいが、粘弾性体16の粘着力によって直接接合されてもよい。また、制御チップ6を粘弾性体16に直接接合する際には、粘弾性体16を加熱すればよい。
なお、半導体センサ1と制御チップ6とをより強固に固定するためには、制御チップ6の固定前に、上面12c側の粘弾性体16の上面16cに対して平坦化工程を実施しておくことが好ましい。また、半導体センサユニット201の製造においては、制御チップ6の固定後に、電極パッド122と端子パッド61とをボンディングワイヤ19(図6,7参照)によって電気接続してもよい。
【0034】
なお、図5に示す半導体センサ1や図1に示す半導体センサユニット201は、上述した製造方法により、SOIウエハ10において1つだけ製造されてもよいが、例えば同一のSOIウエハ10において多数連ねた状態で製造することもできる。すなわち、上記半導体センサ1や半導体センサユニット201の製造方法は、ウエハレベルで実施することも可能である。
この場合には、センサ形成工程において、例えば多数の枠体部11Aを連ねて形成すると共に、互いに間隔を空けて配列されるように多数の凸部11Bを形成しておけばよい。また、延長部形成工程において、多数の延長部14を形成しておけばよい。そして、第二錘部埋設工程あるいは制御チップ6の固定後に、少なくとも一つの錘部M、可撓部F及び支持部Sを備える個々の半導体センサ1あるいは半導体センサユニット201に個片化するダイシング工程を実施すればよい。なお、ダイシング工程においては、その切断箇所を適宜選択することで、例えば2つ以上の錘部M、可撓部F及び支持部Sを備える半導体センサ1あるいは半導体センサユニット201を製造することも可能である。
【0035】
このように、ウエハレベルで半導体センサ1や半導体センサユニット201を製造する場合には、センサ形成工程において異方性エッチングにより多数の枠体部11A及び凸部11Bを一括して形成できるだけでなく、第一錘部埋設工程や第二錘部埋設工程において、多数の可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側や下面12d側を一括して埋設できるため、半導体センサ1や半導体センサユニット201の製造コスト削減や製造効率向上を図ることができる。
【0036】
そして、以上のように製造される半導体センサユニット201は、例えば図6,7に示す各種半導体パッケージ301,302として構成することができる。
図6,7に示す半導体パッケージ301,302は、いずれも半導体センサユニット201とこれを固定する搭載面21c,31cを有する回路基板(ベース材)21,31とを備えて構成されている。ここで、半導体センサユニット201は、半導体層12の下面12d側の粘弾性体15の下面15d及び支持用突出部13の先端面13dを接着剤により搭載面21c,31cに接合することで、回路基板21,31に固定されている。この状態においては、回路基板21,31の搭載面21c,31cが、錘部Mと共に粘弾性体15を挟み込むように粘弾性体15に接合されている。なお、粘弾性体15と回路基板21,31との接合は、例えば粘弾性体15自体の粘着力によって実施されてもよい。
【0037】
また、これら半導体パッケージ301,302を構成する回路基板21,31は、例えばセラミック多層配線基板等の所謂多層配線基板であり、制御チップ6から出力される電気信号を外部に中継するための中継端子部22,32を備えている。中継端子部22,32は、搭載面21c,31c側に形成されてボンディングワイヤ29,39により制御チップ6の外部端子パッド62に電気接続される内部端子22a,32aと、搭載面21c,31cと反対側に位置する回路基板21,31の裏面21d,31dに形成された外部端子22b,32bとを回路基板21,31内の内部配線22c,32cにより電気接続して構成されている。
なお、半導体センサ1と制御チップ6とを電気接続するボンディングワイヤ19は、制御チップ6と回路基板21,31とを電気接続するボンディングワイヤ29,39と同じ工程において配線することで、半導体パッケージ301,302の製造効率向上を図ることができる。
【0038】
なお、図6に示す半導体パッケージ301は、搭載面21cの上方を覆って回路基板21と共に半導体センサユニット201を含む中空の空洞部V1を形成する蓋体26を備えている。
この回路基板21は、搭載面21cを有する板状の底壁部23と、半導体センサユニットを囲繞するように搭載面から突出する平面視矩形環状の周壁部24とを備え、半導体センサユニット201を収容するケースとして構成されている。なお、図6においては、中継端子部22の内部端子22aが、搭載面21cよりも高くかつ周壁部24の上端面24cよりも低い位置に面を有する段差部25に配されているが、例えば搭載面21cに配されていてもよい。
蓋体26は、周壁部24の上端面24cに接着剤等を介して固定されることで回路基板21上方の開口を塞ぎ、回路基板21と共に中空の空洞部V1を形成している。
【0039】
一方、図7に示す半導体パッケージ302は、平板状に形成された回路基板31の搭載面31c、及び、搭載面31cに固定された半導体センサユニット201、及び、ボンディングワイヤ19,39を一括して封止する樹脂モールド部37を備えている。この半導体パッケージ302においては、樹脂モールド部37が半導体センサユニット201の外面をなす支持部Sに密着しているため、支持部Sは、接着剤及び樹脂モールド部37によって回路基板31に固定されている。また、錘部Mや可撓部Fと樹脂モールド部37との間には粘弾性体15,16が介在しているため、錘部Mの移動や可撓部Fの変形又は変位が完全に阻害されることはない。
【0040】
以上のように、半導体センサ1が回路基板21,31に固定された状態においては、錘部Mを振動させる支点となる可撓部Fの一部が支持部Sを介して回路基板21,31に固定されることになる。
この固定状態において半導体センサ1に外力が作用すると、回路基板21,31に対して錘部Mが慣性力によって移動すると共に可撓部Fがその一部を支点として弾性変形し、さらに、可撓部F及び錘部Mを半導体層12の上下から包む粘弾性体15,16も変形する。このため、慣性力に基づいて移動した後の錘部Mは可撓部Fの弾性力によって振動するが、錘部Mの振動は、これに伴う粘弾性体15,16の変形によって吸収され、短時間で減衰・停止することになる。すなわち、この半導体センサ1では、気体よりも動粘度の高い粘弾性体が可撓部F及び錘部M全体を包むため、錘部M全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部MのQ値を低く設定することができる。なお、錘部Mの振動を粘弾性体15,16の変形によって吸収しきれない場合には、粘弾性体15,16よりも大きい弾性率の延長部14が変形することで錘部Mの振動を吸収することも可能であり、その結果、錘部MのQ値をさらに低く設定することができる。
また、ピエゾ抵抗部121により加速度を検出した後から再度加速度の検出が可能となるまでの応答時間の短縮を図ることもできる。
さらに、錘部MのQ値を低く設定できることから、検出可能な加速度の周波数帯域が拡大され、結果として、汎用性の高い半導体センサ1を提供することが可能となる。
【0041】
また、半導体センサ1を回路基板21,31に固定した場合、半導体センサ1と回路基板21,31とで熱膨張係数が相互に異なっていると、半導体センサ1及び回路基板21,31が加熱若しくは冷却された際に、前述した熱膨張係数の差に基づいて支持部Sと回路基板21,31との間に応力が発生する。ここで、回路基板21,31と枠体部11Aとの間には枠体部11Aよりも弾性率の小さい延長部14が介在するため、延長部14が変形することで、前述の応力を緩和することができる。したがって、半導体センサ1及び回路基板21,31が加熱若しくは冷却されても、半導体センサ1の特性が変化することを抑制できる。
さらに、半導体センサ1によれば、回路基板21,31と枠体部11Aとの間に延長部14が介在することで、粘弾性体15,16では吸収しきれない強い衝撃が回路基板21,31に加えられても、この衝撃を延長部14において吸収することができる。このため、前記衝撃によって可撓部F及び錘部Mが過度に振動して錘部Mが回路基板21,31に衝突してしまうことを防止できる。すなわち、この構成の半導体センサ1は、例えば枠体部11を直接回路基板21,31に固定する場合と比較して、耐衝撃性に有利である。
【0042】
また、上記実施形態の半導体センサユニット201や半導体パッケージ301,302によれば、錘部Mが制御チップ6や回路基板21,31に対して振動した際に、錘部Mと制御チップ6や回路基板21,31との間の粘弾性体15,16が伸縮するように変形するため、錘部Mの振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部MのQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部Mと制御チップ6や回路基板21,31との間に粘弾性体15,16を介在させることで、錘部Mが制御チップ6や回路基板21,31に衝突することも容易に防止できる。
さらに、半導体センサユニット201によれば、半導体センサ1と制御チップ6とを個別に回路基板21,31の搭載面21c,31cに固定する場合よりも搭載面積を縮小できるため、半導体パッケージ301,302の小型化を図ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態の半導体センサユニット201においては、半導体センサ1と制御チップ6とが、ボンディングワイヤ19によって電気接続されるとしたが、例えば図8に示すように、半導体層12の上面12cから粘弾性体16を貫通するように突出して粘弾性体16の上面16cに露出する半導体センサ2のバンプ123、及び、制御チップ7の厚さ方向に貫通する制御チップ7の貫通電極63によって電気接続されてもよい。ここで、バンプ123は上記実施形態の電極パッド122の代わりに形成されるものであり、また、貫通電極63は、上記実施形態の端子パッド61の代わりに形成されるものである。この半導体センサユニット202によれば、半導体センサ2を製造する際に第二錘部埋設工程において開口部16aを形成する必要がなくなり、製造効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、上記構成の半導体センサユニット202を用いれば、図6,7と同様の半導体パッケージ301,302を構成することもできるが、例えば図8に示すように、所謂WLCSP(ウエハレベルチップサイズパッケージ)タイプの半導体パッケージ303を構成することも可能である。すなわち、この半導体パッケージ303では、制御チップ7の上面7cがモールド樹脂層41によって封止されると共に、制御チップ7がモールド樹脂層の厚さ方向に貫通する半田バンプ等の再配線部42に電気接続されている。この再配線部42は、モールド樹脂層41上に突出している。
なお、図8に示す半導体パッケージ303においては、支持用突出部13の先端面13d及び半導体層12の下面12d側に位置する粘弾性体15の下面15dにわたって板状の保護プレート48を接合している。保護プレート48は、下面12d側の粘弾性体15を保護する役割、また、上記実施形態の回路基板21,31と同様に錘部Mと共に粘弾性体15を挟み込むことで錘部MのQ値を低く抑える役割を果たしているが、特に設けなくても構わない。上記構成の半導体パッケージ303では、その小型化を図ることができる。
そして、図6〜8に示す半導体パッケージ301〜303においては、いずれも半導体センサユニット201,202の代わりに半導体センサ1,2を設けてもよい、すなわち、制御チップ6,7を備えていなくてもよい。
【0045】
また、上記実施形態の制御チップ6は、半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16に固定されるとしたが、例えば図9に示すように、制御チップ8は半導体層12の下面12d側に形成された粘弾性体15に固定されてもよい。この場合、制御チップ8は、支持用突出部13の先端面13d及び粘弾性体15の下面15dにわたって接合されていることが好ましい。さらに、端子パッド81や外部端子パッド82が配された制御チップ8の上面8cを、支持用突出部13や粘弾性体15に接合する場合には、制御チップ8の上面8cのうち端子パッド81や外部端子パッド82の形成領域が半導体センサ1の側部に張り出して露出するように接合することが好ましい。このように構成される半導体センサユニット203では、上記実施形態のように半導体センサ1を回路基板21,32に固定した場合と同様の効果を奏する。
なお、この半導体センサユニット203においては、図9に示すように、半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに、図8と同様の保護プレート58を固定してもよいが、特に設けなくても構わない。
【0046】
さらに、支持部Sは、半導体層12の下面12dの周縁から突出する平面視環状の枠体部11Aによって構成されるとしたが、例えば図10に示すように、半導体層12の下面12dの中央部分から突出する凸部11Bによって構成されてもよい。すなわち、凸部11B及びその下面11dに積み重ねられた延長部14によって支持部Sの支持用突出部18を構成してもよい。この場合、錘部Mは、錘用突出部としての枠体部11Aによって構成されればよい。
上記構成の半導体センサ3は、上記実施形態の半導体センサ1と比較して延長部14の形成位置のみが異なるため、これら2種類の半導体センサ1,3を同一のSOIウエハ10において同時に製造することができる。
【0047】
また、延長部14は、感光性ゴムからなる粘弾性体の一部を硬化させることで構成されるとしたが、少なくとも粘弾性体15よりも高弾性率であれば、粘弾性体15と別個に設けられてもよい。この場合、延長部14は、例えば上記実施形態と同様の感光性ゴムでもよいが、その他の種類のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料によって構成されてもよいし、銅(Cu)やニッケル(Ni)等の金属材料によって構成されてもよい。
【0048】
このように延長部14を粘弾性体15と別個に設ける場合には、延長部形成工程を実施するタイミング及びその内容についてのみ、上記実施形態の半導体センサ1の製造方法と異なる。すなわち、上記構成の半導体センサを製造する場合には、上記実施形態と同様のセンサ形成工程の前、あるいは、センサ形成工程と第一錘部埋設工程との間に、支持用突出部13,18をなすベースウエハ11の下面11d上に支持部Sの延長部14を形成する延長部形成工程を実施すればよい。
【0049】
そして、この延長部14が樹脂材料である場合には、延長部形成工程において、例えばベースウエハ11の下面11d全体に樹脂材料を塗布した後、レジストを用いてリソグラフィー技術により支持用突出部13,18を構成するベースウエハ11の下面11dのみに樹脂材料を残存させればよい。また、延長部14が金属材料である場合には、延長部形成工程において、樹脂材料の場合と同様にリソグラフィー技術を利用して形成してもよいが、例えばメッキやスパッタにより延長部14を形成してもよい。
なお、このように延長部14を粘弾性体15と別個に設ける場合には、上記実施形態と同様の平坦化工程を実施して、例えば粘弾性体15の下面15dと支持用突出部13,18の先端面13d,18dとを同一平面とすることがより好ましい。
さらに、延長部14が粘弾性体15と別個に構成される場合、粘弾性体15は、少なくとも気体よりも動粘度が高く、かつ、可撓部Fよりも弾性率の小さい樹脂であればよく、例えば感光性ゴムに限らない様々な種類のエラストマーの他、例えばシリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲルや、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料によって構成されてもよい。
【0050】
また、支持用突出部は、ベースウエハ11の下面11dに延長部14を積層して構成されることに限らず、例えば図11に示すように延長部14のみによって構成されてもよい。なお、支持用突出部を延長部14のみによって構成する半導体センサ4を製造する場合には、例えば上記実施形態のセンサ形成工程において錘用突出部のみを形成しておけばよい。
【0051】
さらに、粘弾性体15,16は、半導体層12の上面12c側及び下面12d側の両方に形成されるとしたが、少なくとも半導体層12の上面12c側及び下面12d側のいずれか一方に形成されていればよい。したがって、半導体センサを製造する際には、少なくとも第一錘部埋設工程及び第二錘部埋設工程のいずれか一方を実施すればよい。
このような構成の半導体センサでも、可撓部F及び錘部Mの少なくとも一部が気体よりも動粘度の高い粘弾性体によって包まれるため、上記実施形態と同様に、錘部M全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部のQ値を低く設定できる効果を奏する。
【0052】
そして、本発明は、加速度センサに限らず、角速度センサ、圧力センサ、振動センサ、マイクロフォン等の半導体センサにも広く適用することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4…半導体センサ、6,7,8…制御チップ、10…SOIウエハ(シリコンバルク)、11A…枠体部(錘用突出部)、11B…凸部(錘用突出部)、12…半導体層(薄肉部)、12c…上面(他方の主面)、12d…下面(一方の主面)、13,18…支持用突出部、13d,18d…先端面、14…延長部、15,16…粘弾性体、21,31…回路基板(ベース材)、21c,31c…搭載面、48,58…保護プレート、121…ピエゾ抵抗部(検出手段)、201,202…半導体センサユニット、301,302,303…半導体パッケージ、F…可撓部、M…錘部、S…支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度、角速度等の物理量を検出する半導体センサ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造される加速度センサやジャイロセンサ等の半導体センサは、ビームやダイヤフラム等の可撓部を備えており、可撓部の変形や変位を電気信号に変換する半導体センサでは、例えば特許文献1のように、可撓部に錘部(作用部、重錘体)を結合することによってその感度を高めている。すなわち、この種の半導体センサでは、外力が小さくても錘部の重さの分だけ大きな慣性力が作用するため、この錘部の移動に伴って可撓部が変形又は変位することで小さな加速度や角速度等の物理量でも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−294450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外力によって移動した錘部は可撓部の弾性力によって振動するが、上記従来の半導体センサにおいて、錘部は動粘度が非常に小さい気体雰囲気中に配されているため、錘部のQ値(振動の状態を表す無次元数)が高く、その結果として、錘部の振動が減衰して停止するまでの時間(以下、減衰時間と呼ぶ)が長くなってしまう。
そして、錘部を備えた半導体センサは、一度加速度や角速度等の物理量を検出した後に錘部の振動を停止させることで、再度物理量を検出できるように構成されている。このため、前述した振動の減衰時間が長くなってしまうと、一度物理量を検出した後に再度物理量を検出できるまでに要する時間(以下、応答時間と呼ぶ。)が長くなる、という問題がある。
また、錘部のQ値が高いと、検出可能な物理量の周波数帯域が狭くなるため、半導体センサの汎用性が低くなる、という問題もある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、応答時間を短く設定でき、かつ、検出可能な物理量の周波数帯域を拡大できる半導体センサ、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の半導体センサは、一部が可撓性を有する可撓部として構成される薄肉部と、前記薄肉部の一方の主面から突出して前記薄肉部と共に錘部を構成する厚肉の錘用突出部と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記薄肉部の一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部と、前記支持部に対する前記錘部の移動に伴う前記可撓部の変形又は変位を検出する検出手段とを備え、前記支持用突出部の突出方向の先端面が外方に露出するように、前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方が、前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体によって埋設され、前記支持用突出部の少なくとも一部が、前記先端面をなす延長部によって構成され、当該延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
【0007】
なお、前記粘弾性体としては、エラストマーのほか、例えばシリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲルや、スポンジのような発泡樹脂等のように気体と比較して高い動粘度の樹脂が挙げられる。
また、前記粘弾性体が前記薄肉部の一方の主面側に形成される場合には、前記錘用突出部と前記支持用突出部との間隙を埋めるように形成されればよい。
そして、上記半導体センサを使用する際には、錘部から離間した可撓部の一部が、支持部を介して、例えば半導体センサを収容するケースや半導体センサに電気接続される回路基板等のベース材に固定されていればよい。具体的には、例えば薄肉部の一方の主面側をベース材に対向させた状態で、支持用突出部の先端面がベース材に固定されていればよい。
【0008】
この固定状態において半導体センサに外力が作用すると、ベース材に対して錘部が慣性力によって移動すると共に可撓部が支持用突出部を介する等してベース材に固定された一部を支点として弾性変形し、さらに、可撓部及び錘部を薄肉部の一方の主面側や他方の主面側から包む粘弾性体も変形する。このため、慣性力に基づいて移動した後の錘部は可撓部の弾性力によって振動するが、錘部の振動は、これに伴う粘弾性体の変形によって吸収され、短時間で減衰・停止することになる。すなわち、この半導体センサでは、気体よりも動粘度の高い粘弾性体によって可撓部及び錘部の少なくとも一部が包まれるため、錘部全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部のQ値を低く設定することができる。なお、錘部の振動を粘弾性体の変形によって吸収しきれない場合には、粘弾性体よりも大きい弾性率の延長部が変形することで錘部の振動を吸収することも可能であり、その結果、錘部のQ値をさらに低く設定することができる。
また、検出手段により加速度や角速度等の物理量を検出した後から再度物理量の検出が可能となるまでの応答時間の短縮を図ることもできる。
さらに、錘部のQ値を低く設定できることから、検出可能な加速度や角速度等の物理量の周波数帯域が拡大され、結果として、汎用性の高い半導体センサを提供することが可能となる。
【0009】
また、支持用突出部の先端面をベース材に固定した場合、半導体センサ及びベース材の熱膨張係数が相互に異なっていると、半導体センサ及びベース部材が加熱若しくは冷却された際に、前述した熱膨張係数の差に基づいて支持部とベース材との間に応力が発生するが、ベース材と前記支持部の他の構成部分との間に介在する延長部が変形することで、この応力を緩和することができる。したがって、半導体センサ及びベース材が加熱若しくは冷却されても、半導体センサの特性が変化することを抑制できる。
さらに、支持用突出部の先端面をベース材に固定した場合、粘弾性体では吸収しきれない強い衝撃がベース材に加えられても、この衝撃を延長部において吸収することができる。このため、前記衝撃によって可撓部及び錘部が過度に振動して錘部がベース材に衝突してしまうことを防止できる。すなわち、この構成の半導体センサは、支持部の他の構成部分が直接ベース材に固定される場合と比較して、耐衝撃性に有利である。
【0010】
そして、前記半導体センサは、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように当該粘弾性体に接合される保護プレートを備えていてもよい。
上記半導体センサによれば、錘部が保護プレートに対して振動した際に、錘部と制御チップとの間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。
【0011】
また、前記半導体センサは、当該半導体センサを駆動制御する板状の制御チップと共に半導体センサユニットを構成し、当該制御チップが、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように当該粘弾性体に接合されていてもよい。
上記半導体センサユニットによれば、錘部が制御チップに対して振動した際に、錘部と制御チップとの間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部と制御チップとの間に粘弾性体を介在させることで、錘部が制御チップに衝突することも容易に防止できる。
また、この半導体センサユニットによれば、半導体センサと制御チップとを個別にベース材の搭載面に固定する場合よりも搭載面積を縮小することができる。
【0012】
さらに、前記半導体センサは、これを固定する搭載面を有するベース材と共に半導体パッケージを構成し、当該ベース材の搭載面が、前記錘部と共に前記粘弾性体を挟み込むように前記粘弾性体に接合されていてもよい。
なお、ベース材としては、前述したように、例えば半導体センサを収容するケースや半導体センサに電気接続される回路基板等が挙げられる。
上記半導体パッケージによれば、錘部がベース材に対して振動した際に、錘部とベース材との間の粘弾性体が伸縮するように変形するため、錘部の振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部のQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部とベース材の表面との間に粘弾性体を介在させることで、錘部がベース材に衝突することも容易に防止できる。
【0013】
また、本発明の半導体センサの製造方法は、シリコンバルクの異方性エッチングにより、薄肉部の一方の主面から突出する厚肉の錘用突出部を形成して、前記薄肉部及びこれに積層された前記錘用突出部により錘部を構成すると共に、前記錘用突出部に隣り合う前記薄肉部により可撓性を有する可撓部を構成するセンサ形成工程と、前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方に粘弾性材料を塗布することで前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体を形成して、当該粘弾性体により前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方を埋設する錘部埋設形成工程と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記一方の主面上に延びる延長部を形成する延長部形成工程とを備え、少なくともこれらセンサ形成工程、錘部埋設形成工程及び延長部形成工程の実施後に、前記延長部が、前記一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部のうち、少なくとも外方に露出する前記支持用突出部の突出方向の先端面を含む一部を構成し、前記延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする。
この製造方法を実施することで前記半導体センサを製造することができる。
【0014】
なお、前記半導体センサの製造方法では、前記錘部埋設形成工程において、感光性ゴムからなる前記粘弾性材料が前記薄肉部の一方の主面側に塗布された後に、前記延長部形成工程において、前記感光性ゴムからなる前記粘弾性体の一部を硬化させることで前記延長部を形成してもよい。
【0015】
また、半導体センサの製造方法では、前記センサ形成工程において多数の前記錘用突出部を形成すると共に、前記延長部形成工程において多数の前記延長部を形成し、前記センサ形成工程、前記錘部埋設形成工程及び前記延長部形成工程の実施後において前記多数の前記支持用突出部が形成された後に、少なくとも一つの前記錘部、前記可撓部及び前記支持部を備える個々の半導体センサに個片化するダイシング工程を実施してもよい。
この場合には、錘部埋設工程における粘弾性材料の塗布により、多数の可撓部及び錘部のうち一方の主面側や他方の主面側を一括して埋設できるため、半導体センサの製造効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可撓部及び錘部を備えた半導体センサの応答時間を短く設定でき、かつ、検出可能な物理量の周波数帯域を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る半導体センサの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る半導体センサを示す概略断面図である。
【図6】図1の半導体センサユニットを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図7】図1の半導体センサユニットを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る半導体センサを備える半導体パッケージを示す概略断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る半導体センサに制御チップを設けた半導体センサユニットを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜7を参照して本発明の一実施形態に係る半導体センサについて説明する。図1に示すように、この実施形態に係る半導体センサ1は、平面視環状に形成された支持部Sと、支持部Sの内側に間隔をあけて配された平面視略矩形の錘部Mと、可撓性を有して支持部Sと錘部Mとを一体に連結する可撓部Fと、検出手段としてのピエゾ抵抗部121とを備えている。すなわち、この半導体センサ1は、慣性力に応じた可撓部Fの変形又は変位をピエゾ抵抗部121によって電気信号に変換することで加速度を検出する加速度センサとして構成されており、また、MEMS技術を用いてSOI(Silicon on Insulator)ウエハ(シリコンバルク)10によって主に製造されている。
【0019】
支持部S及び錘部Mは、ベースウエハ11上に半導体層(SOI層)12を積層したSOIウエハ10によって主に構成されている。なお、ベースウエハ11は、単結晶シリコン層111上に二酸化シリコン(SiO2)からなる酸化層112を積層して構成されるものであり、半導体層12は酸化層112上に積層されている。また、酸化層112は、単結晶シリコン(Si)からなるベースウエハ11の熱酸化された表層である。
そして、錘部Mの厚さ寸法は、SOIウエハ10の厚さ寸法に等しいが、支持部Sの厚さ寸法よりも小さくなるように設定されている。すなわち、支持部Sは、半導体層(薄肉部)12、及び、その下面(一方の主面)12dの周縁から突出する平面視環状の支持用突出部13によって構成されている。そして、支持用突出部13は、平面視環状の枠体部11Aをなすベースウエハ11と、枠体部11Aのうちその突出方向に面するベースウエハ11の下面11dに積み重ねられた延長部14とによって構成されている。なお、延長部14は、枠体部11Aと同様に平面視環状に形成されていてもよいが、例えば枠体部11Aの周方向の一部に1つだけ配されてもよいし、枠体部11Aの周方向に間隔をあけて複数配列されてもよい。
【0020】
一方、錘部Mは、半導体層12、及び、枠体部11Aの内側に間隔を空けるように半導体層12の下面12dの中央部分から突出する凸部(錘用突出部)11Bによって構成されており、凸部11Bはベースウエハ11によって構成されている。ここで、ベースウエハ11からなる凸部11Bの厚さ寸法は、同じくベースウエハ11からなる枠体部11Aの厚さ寸法に等しく、延長部14の厚さ寸法分だけ支持用突出部13よりも小さく設定されている。
【0021】
可撓部Fは、SOIウエハ10の半導体層12の一部によって構成されている。この可撓部Fは、少なくとも支持部Sに対する錘部Mの移動に伴って変形又は変位すれば、例えば支持部Sの内縁全体に連結されるダイヤフラム状に形成されていてもよいし、支持部Sの周方向に複数に分割して形成されていてもよい。また、可撓部Fは、例えば支持部Sと錘部Mとの間に1つだけ形成される片持ち梁状に形成されてもよい。
ピエゾ抵抗部121は、可撓部Fをなす半導体層12の上面(他方の主面)12c側に複数形成されており、半導体層12上にはピエゾ抵抗部121の図示しない配線等が形成されている。
また、この半導体センサ1においては、半導体層12の上面12cの周縁に複数の電極パッド122が形成されている。これら複数の電極パッド122は、ピエゾ抵抗部121からの電気信号を外部に取り出したり、半導体センサ1を接地させる役割を果たしている。なお、図示例において、電極パッド122は支持部Sをなす半導体層12の上面12cに配されている。
【0022】
さらに、本実施形態の半導体センサ1においては、可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側及び下面12d側が可撓部F及び支持部Sよりも弾性率の小さい粘弾性体15,16によって埋設されている。なお、粘弾性体のヤング率は100MPa以下であることが望ましいが、これに限らなくてもよい。
そして、半導体層12の上面12c側の粘弾性体16は、可撓部F、錘部M及び支持部Sを構成する半導体層12の上面12cにわたって厚膜状に形成されており、その上面16cは平坦に形成されている。この粘弾性体16には、複数の電極パッドを個別に、あるいは、複数まとめて露出させる開口部16aが形成されている。
上面12c側の粘弾性体16としては、例えば感光性ゴム等のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
【0023】
一方、半導体層12の下面12d側の粘弾性体15は、半導体層12の下面12d上に堆積され、平面視環状の支持用突出部13と凸部11Bとの間隙を埋めるように、かつ、凸部11Bの下面11dを覆うように設けられている。すなわち、下面12d側の粘弾性体15は、凸部11B全体及びこれに対向する支持用突出部13の内側全体を埋設している。また、下面12d側の粘弾性体15は、下面12dからの厚さ寸法が支持用突出部13の厚さ寸法と等しくなるように設定されている。さらに、この粘弾性体15の下面15dは延長部14からなる支持用突出部13の先端面13dと共に同一平面をなすように形成されている。
下面12d側の粘弾性体15は、エラストマーの一種である環化ブタジエンゴムや環化イソプレンゴム等の感光性ゴムによって構成されている。なお、支持部Sを構成する延長部14は、粘弾性体15を構成する感光性ゴムが露光によって硬化したものである。また、延長部14の弾性率は、粘弾性体15,16の弾性率よりも大きく、かつ、枠体部11A及び半導体層12(延長部14を除く支持部Sの他の構成部分)の弾性率よりも小さくなるように設定されている。
【0024】
ところで、上記構成の半導体センサ1は、これに積層して固定されたICやLSI等の制御チップ6と共に半導体センサユニット201を構成している。
制御チップ6は、半導体センサ1を駆動制御する役割を果たすものであり、例えば半導体センサ1からの電気信号を増幅するための増幅回路や、前記電気信号をデジタル信号として処理するためのA/D変換器、DSP(Digital Signal Processor)等の電気回路を含んで構成される。
制御チップ6は板状に形成されており、制御チップ6の上面6cには、半導体センサ1の電極パッド122と電気接続される端子パッド61、及び、制御チップ6の電気回路を外部に接続する複数の外部端子パッド62が形成されている。なお、図示例においては、端子パッド61が制御チップ6の上面6cの周縁に配されると共に外部端子パッド62が端子パッド61よりも制御チップ6の上面6cの内側に配されているが、端子パッド61及び外部端子パッド62は制御チップ6の上面6cの任意の位置に配することが可能である。例えば、端子パッド61及び外部端子パッド62の両方が制御チップ6の上面6cの周縁に並べて配されていてもよい。
【0025】
この制御チップ6は、その下面6dを半導体センサ1に対向させた状態で半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに固定されている。この制御チップ6の固定は、接着剤によって実施されてもよいが、例えば粘弾性体16自体の粘着力によって実施されてもよい。
なお、図1に示す半導体センサユニット201では、電極パッド122と端子パッド61とが電気接続されていないが、例えばボンディングワイヤ19(図6,7参照)によって予め電気接続されていてもよい。
【0026】
次に、上記構成の半導体センサ1の製造方法について説明する。
半導体センサ1を製造する場合には、はじめに、SOIウエハ10の半導体層12に不純物を注入してピエゾ抵抗部121を形成する工程や、半導体層12を可撓部Fの平面視形状に合わせてエッチングする工程や、半導体層12上にピエゾ抵抗部121の配線や電極パッド122を形成する工程を実施しておく。これらの工程は、特開平8−274349号公報等に開示されているように公知であるため、その説明を省略する。
【0027】
次いで、ベースウエハ11をDeep−RIE等により異方性エッチングすることで、図2に示すように、ベースウエハ11を枠体部11Aと凸部11Bとに区画する環状の区画凹部H1を形成するセンサ形成工程を実施する。これにより、半導体層12及びこれに積層された平面視環状の枠体部11Aによって支持部Sが構成され、半導体層12及びこれに積層された凸部11Bによって錘部Mが構成される。また、区画凹部H1の深さ寸法はベースウエハ11の厚さ寸法と同等に設定されているため、枠体部11A及び凸部11Bの間に位置する半導体層12の下面12dが露出する。この下面12dが露出した半導体層12の部分は可撓部Fを構成している。
なお、このセンサ形成工程あるいはその前後においては、例えば錘部Mを構成する凸部11Bの下面11dに研削及び研磨の一方、あるいは、両方を実施して錘部Mの重量や寸法を調整してもよい。
【0028】
そして、図3に示すように、半導体層12の下面12d側に粘弾性材料を塗布することで可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体15を形成して、粘弾性体15により可撓部及び錘部のうち半導体層12の下面12d側を埋設する第一錘部埋設工程を実施する。
この工程においては、半導体層12の下面12dを上向きに配置した状態で、枠体部11A及び凸部11B全体が粘弾性体15によって埋設されるように、粘弾性材料を塗布する。この実施形態においては、粘弾性材料としてエラストマーの一種であるUV硬化樹脂等の感光性樹脂材料を使用する。
また、この粘弾性材料の具体的な塗布方法としては、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーによる塗布等のようにベースウエハ11の下面11d及び半導体層12の下面12d全体にわたって粘弾性材料を塗布する方法が挙げられる。また、粘弾性材料の塗布は、インジェクションやラミネート等によって実施されてもよい。
【0029】
なお、第一錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後に、例えば真空脱泡等により粘弾性材料中に含まれる気泡を除去してもよいが、特に実施しなくてもよい。
さらに、第一錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後に、粘弾性材料を強制的に乾燥させて粘弾性体15とする乾燥工程や、ベースウエハ11の下面11d上に位置する粘弾性体15の下面15dを平坦化する平坦化工程を適宜実施してもよい。ここで、平坦化工程を例えばスクイーズにより実施する場合には、平坦化工程後に乾燥工程を実施すればよい。また、平坦化工程を例えば研磨や研削により実施する場合には、乾燥工程後に平坦化工程を実施すればよい。
【0030】
第一錘部埋設工程後には、図4に示すように、支持部Sの枠体部11Aをなすベースウエハ11の下面11dに支持部Sの延長部14を形成する延長部形成工程を実施する。この工程においては、枠体部11Aの下面11d上に位置する粘弾性体15のみにレーザ光等を照射する露光により、枠体部11Aの下面11d上に位置する粘弾性体15を硬化させる。これにより、硬化した粘弾性体15が、粘弾性体15の弾性率よりも大きく、かつ、枠体部11A及び半導体層12の弾性率よりも小さい延長部14として形成されることになる。なお、粘弾性体15をなす感光性ゴムがUV硬化ゴムである場合には、前述のレーザ光として、例えばUV帯域のエキシマレーザを使用すればよい。
この延長部形成工程を実施することにより、枠体部11A及び延長部14からなる支持用突出部13が構成されることになる。
【0031】
その後、図5に示すように、半導体層12の上面12c側に粘弾性材料を塗布することで可撓部Fよりも弾性率の小さい粘弾性体16を形成して、粘弾性体16により可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側を埋設する第二錘部埋設工程を実施することで、半導体センサ1の製造が完了する。
この第二錘部埋設工程においては、半導体層12の上面12cを上向きに配置した状態で、はじめに、半導体層12の上面12c全体にわたって粘弾性材料を塗布する。なお、粘弾性材料の塗布方法は、第一錘部埋設工程の際と同様に、例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーによる塗布等が挙げられる。そして、粘弾性材料としては、感光性樹脂材料に限らず、様々な種類のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料が挙げられる。
なお、第二錘部埋設工程においては、この粘弾性材料の塗布後に、例えば真空脱泡等により粘弾性材料中に含まれる気泡を除去してもよいが、特に実施しなくてもよい。
【0032】
さらに、第二錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後に、第一錘部埋設工程と同様の乾燥工程や平坦化工程を適宜実施してもよい。
また、第二錘部埋設工程においては、粘弾性材料の塗布後や気泡の除去後から乾燥工程や平坦化工程の後までの間に、複数の電極パッド122を個別に、あるいは、複数まとめて露出させる開口部16aを形成する。開口部16aの具体的な形成方法としては、例えばレーザにより電極パッド122上の粘弾性体16を除去したり、開口部16aの形成予定領域を除く上面16cをカプトンテープ等でマスキングした上でエッチングにより電極パッド122上の粘弾性体16を除去することが挙げられる。また、粘弾性体16がポジ型のレジストである場合には、露光現像により電極パッド122上の粘弾性体16を除去してもよい。
なお、この第二錘部埋設工程は、第一錘部埋設工程の後に限らず、例えばセンサ形成工程と第一錘部埋設工程との間に実施してもよい。
【0033】
そして、半導体センサユニット201を製造する場合には、上述した第二錘部埋設工程の後に、制御チップ6を半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに固定すればよい。ここで、制御チップ6は、別途接着剤を介して接合されてもよいが、粘弾性体16の粘着力によって直接接合されてもよい。また、制御チップ6を粘弾性体16に直接接合する際には、粘弾性体16を加熱すればよい。
なお、半導体センサ1と制御チップ6とをより強固に固定するためには、制御チップ6の固定前に、上面12c側の粘弾性体16の上面16cに対して平坦化工程を実施しておくことが好ましい。また、半導体センサユニット201の製造においては、制御チップ6の固定後に、電極パッド122と端子パッド61とをボンディングワイヤ19(図6,7参照)によって電気接続してもよい。
【0034】
なお、図5に示す半導体センサ1や図1に示す半導体センサユニット201は、上述した製造方法により、SOIウエハ10において1つだけ製造されてもよいが、例えば同一のSOIウエハ10において多数連ねた状態で製造することもできる。すなわち、上記半導体センサ1や半導体センサユニット201の製造方法は、ウエハレベルで実施することも可能である。
この場合には、センサ形成工程において、例えば多数の枠体部11Aを連ねて形成すると共に、互いに間隔を空けて配列されるように多数の凸部11Bを形成しておけばよい。また、延長部形成工程において、多数の延長部14を形成しておけばよい。そして、第二錘部埋設工程あるいは制御チップ6の固定後に、少なくとも一つの錘部M、可撓部F及び支持部Sを備える個々の半導体センサ1あるいは半導体センサユニット201に個片化するダイシング工程を実施すればよい。なお、ダイシング工程においては、その切断箇所を適宜選択することで、例えば2つ以上の錘部M、可撓部F及び支持部Sを備える半導体センサ1あるいは半導体センサユニット201を製造することも可能である。
【0035】
このように、ウエハレベルで半導体センサ1や半導体センサユニット201を製造する場合には、センサ形成工程において異方性エッチングにより多数の枠体部11A及び凸部11Bを一括して形成できるだけでなく、第一錘部埋設工程や第二錘部埋設工程において、多数の可撓部F及び錘部Mのうち半導体層12の上面12c側や下面12d側を一括して埋設できるため、半導体センサ1や半導体センサユニット201の製造コスト削減や製造効率向上を図ることができる。
【0036】
そして、以上のように製造される半導体センサユニット201は、例えば図6,7に示す各種半導体パッケージ301,302として構成することができる。
図6,7に示す半導体パッケージ301,302は、いずれも半導体センサユニット201とこれを固定する搭載面21c,31cを有する回路基板(ベース材)21,31とを備えて構成されている。ここで、半導体センサユニット201は、半導体層12の下面12d側の粘弾性体15の下面15d及び支持用突出部13の先端面13dを接着剤により搭載面21c,31cに接合することで、回路基板21,31に固定されている。この状態においては、回路基板21,31の搭載面21c,31cが、錘部Mと共に粘弾性体15を挟み込むように粘弾性体15に接合されている。なお、粘弾性体15と回路基板21,31との接合は、例えば粘弾性体15自体の粘着力によって実施されてもよい。
【0037】
また、これら半導体パッケージ301,302を構成する回路基板21,31は、例えばセラミック多層配線基板等の所謂多層配線基板であり、制御チップ6から出力される電気信号を外部に中継するための中継端子部22,32を備えている。中継端子部22,32は、搭載面21c,31c側に形成されてボンディングワイヤ29,39により制御チップ6の外部端子パッド62に電気接続される内部端子22a,32aと、搭載面21c,31cと反対側に位置する回路基板21,31の裏面21d,31dに形成された外部端子22b,32bとを回路基板21,31内の内部配線22c,32cにより電気接続して構成されている。
なお、半導体センサ1と制御チップ6とを電気接続するボンディングワイヤ19は、制御チップ6と回路基板21,31とを電気接続するボンディングワイヤ29,39と同じ工程において配線することで、半導体パッケージ301,302の製造効率向上を図ることができる。
【0038】
なお、図6に示す半導体パッケージ301は、搭載面21cの上方を覆って回路基板21と共に半導体センサユニット201を含む中空の空洞部V1を形成する蓋体26を備えている。
この回路基板21は、搭載面21cを有する板状の底壁部23と、半導体センサユニットを囲繞するように搭載面から突出する平面視矩形環状の周壁部24とを備え、半導体センサユニット201を収容するケースとして構成されている。なお、図6においては、中継端子部22の内部端子22aが、搭載面21cよりも高くかつ周壁部24の上端面24cよりも低い位置に面を有する段差部25に配されているが、例えば搭載面21cに配されていてもよい。
蓋体26は、周壁部24の上端面24cに接着剤等を介して固定されることで回路基板21上方の開口を塞ぎ、回路基板21と共に中空の空洞部V1を形成している。
【0039】
一方、図7に示す半導体パッケージ302は、平板状に形成された回路基板31の搭載面31c、及び、搭載面31cに固定された半導体センサユニット201、及び、ボンディングワイヤ19,39を一括して封止する樹脂モールド部37を備えている。この半導体パッケージ302においては、樹脂モールド部37が半導体センサユニット201の外面をなす支持部Sに密着しているため、支持部Sは、接着剤及び樹脂モールド部37によって回路基板31に固定されている。また、錘部Mや可撓部Fと樹脂モールド部37との間には粘弾性体15,16が介在しているため、錘部Mの移動や可撓部Fの変形又は変位が完全に阻害されることはない。
【0040】
以上のように、半導体センサ1が回路基板21,31に固定された状態においては、錘部Mを振動させる支点となる可撓部Fの一部が支持部Sを介して回路基板21,31に固定されることになる。
この固定状態において半導体センサ1に外力が作用すると、回路基板21,31に対して錘部Mが慣性力によって移動すると共に可撓部Fがその一部を支点として弾性変形し、さらに、可撓部F及び錘部Mを半導体層12の上下から包む粘弾性体15,16も変形する。このため、慣性力に基づいて移動した後の錘部Mは可撓部Fの弾性力によって振動するが、錘部Mの振動は、これに伴う粘弾性体15,16の変形によって吸収され、短時間で減衰・停止することになる。すなわち、この半導体センサ1では、気体よりも動粘度の高い粘弾性体が可撓部F及び錘部M全体を包むため、錘部M全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部MのQ値を低く設定することができる。なお、錘部Mの振動を粘弾性体15,16の変形によって吸収しきれない場合には、粘弾性体15,16よりも大きい弾性率の延長部14が変形することで錘部Mの振動を吸収することも可能であり、その結果、錘部MのQ値をさらに低く設定することができる。
また、ピエゾ抵抗部121により加速度を検出した後から再度加速度の検出が可能となるまでの応答時間の短縮を図ることもできる。
さらに、錘部MのQ値を低く設定できることから、検出可能な加速度の周波数帯域が拡大され、結果として、汎用性の高い半導体センサ1を提供することが可能となる。
【0041】
また、半導体センサ1を回路基板21,31に固定した場合、半導体センサ1と回路基板21,31とで熱膨張係数が相互に異なっていると、半導体センサ1及び回路基板21,31が加熱若しくは冷却された際に、前述した熱膨張係数の差に基づいて支持部Sと回路基板21,31との間に応力が発生する。ここで、回路基板21,31と枠体部11Aとの間には枠体部11Aよりも弾性率の小さい延長部14が介在するため、延長部14が変形することで、前述の応力を緩和することができる。したがって、半導体センサ1及び回路基板21,31が加熱若しくは冷却されても、半導体センサ1の特性が変化することを抑制できる。
さらに、半導体センサ1によれば、回路基板21,31と枠体部11Aとの間に延長部14が介在することで、粘弾性体15,16では吸収しきれない強い衝撃が回路基板21,31に加えられても、この衝撃を延長部14において吸収することができる。このため、前記衝撃によって可撓部F及び錘部Mが過度に振動して錘部Mが回路基板21,31に衝突してしまうことを防止できる。すなわち、この構成の半導体センサ1は、例えば枠体部11を直接回路基板21,31に固定する場合と比較して、耐衝撃性に有利である。
【0042】
また、上記実施形態の半導体センサユニット201や半導体パッケージ301,302によれば、錘部Mが制御チップ6や回路基板21,31に対して振動した際に、錘部Mと制御チップ6や回路基板21,31との間の粘弾性体15,16が伸縮するように変形するため、錘部Mの振動を効率よく減衰させることができる。すなわち、錘部MのQ値をさらに低く抑えることができる。また、錘部Mと制御チップ6や回路基板21,31との間に粘弾性体15,16を介在させることで、錘部Mが制御チップ6や回路基板21,31に衝突することも容易に防止できる。
さらに、半導体センサユニット201によれば、半導体センサ1と制御チップ6とを個別に回路基板21,31の搭載面21c,31cに固定する場合よりも搭載面積を縮小できるため、半導体パッケージ301,302の小型化を図ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態の半導体センサユニット201においては、半導体センサ1と制御チップ6とが、ボンディングワイヤ19によって電気接続されるとしたが、例えば図8に示すように、半導体層12の上面12cから粘弾性体16を貫通するように突出して粘弾性体16の上面16cに露出する半導体センサ2のバンプ123、及び、制御チップ7の厚さ方向に貫通する制御チップ7の貫通電極63によって電気接続されてもよい。ここで、バンプ123は上記実施形態の電極パッド122の代わりに形成されるものであり、また、貫通電極63は、上記実施形態の端子パッド61の代わりに形成されるものである。この半導体センサユニット202によれば、半導体センサ2を製造する際に第二錘部埋設工程において開口部16aを形成する必要がなくなり、製造効率の向上を図ることができる。
【0044】
また、上記構成の半導体センサユニット202を用いれば、図6,7と同様の半導体パッケージ301,302を構成することもできるが、例えば図8に示すように、所謂WLCSP(ウエハレベルチップサイズパッケージ)タイプの半導体パッケージ303を構成することも可能である。すなわち、この半導体パッケージ303では、制御チップ7の上面7cがモールド樹脂層41によって封止されると共に、制御チップ7がモールド樹脂層の厚さ方向に貫通する半田バンプ等の再配線部42に電気接続されている。この再配線部42は、モールド樹脂層41上に突出している。
なお、図8に示す半導体パッケージ303においては、支持用突出部13の先端面13d及び半導体層12の下面12d側に位置する粘弾性体15の下面15dにわたって板状の保護プレート48を接合している。保護プレート48は、下面12d側の粘弾性体15を保護する役割、また、上記実施形態の回路基板21,31と同様に錘部Mと共に粘弾性体15を挟み込むことで錘部MのQ値を低く抑える役割を果たしているが、特に設けなくても構わない。上記構成の半導体パッケージ303では、その小型化を図ることができる。
そして、図6〜8に示す半導体パッケージ301〜303においては、いずれも半導体センサユニット201,202の代わりに半導体センサ1,2を設けてもよい、すなわち、制御チップ6,7を備えていなくてもよい。
【0045】
また、上記実施形態の制御チップ6は、半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16に固定されるとしたが、例えば図9に示すように、制御チップ8は半導体層12の下面12d側に形成された粘弾性体15に固定されてもよい。この場合、制御チップ8は、支持用突出部13の先端面13d及び粘弾性体15の下面15dにわたって接合されていることが好ましい。さらに、端子パッド81や外部端子パッド82が配された制御チップ8の上面8cを、支持用突出部13や粘弾性体15に接合する場合には、制御チップ8の上面8cのうち端子パッド81や外部端子パッド82の形成領域が半導体センサ1の側部に張り出して露出するように接合することが好ましい。このように構成される半導体センサユニット203では、上記実施形態のように半導体センサ1を回路基板21,32に固定した場合と同様の効果を奏する。
なお、この半導体センサユニット203においては、図9に示すように、半導体層12の上面12c側に形成された粘弾性体16の上面16cに、図8と同様の保護プレート58を固定してもよいが、特に設けなくても構わない。
【0046】
さらに、支持部Sは、半導体層12の下面12dの周縁から突出する平面視環状の枠体部11Aによって構成されるとしたが、例えば図10に示すように、半導体層12の下面12dの中央部分から突出する凸部11Bによって構成されてもよい。すなわち、凸部11B及びその下面11dに積み重ねられた延長部14によって支持部Sの支持用突出部18を構成してもよい。この場合、錘部Mは、錘用突出部としての枠体部11Aによって構成されればよい。
上記構成の半導体センサ3は、上記実施形態の半導体センサ1と比較して延長部14の形成位置のみが異なるため、これら2種類の半導体センサ1,3を同一のSOIウエハ10において同時に製造することができる。
【0047】
また、延長部14は、感光性ゴムからなる粘弾性体の一部を硬化させることで構成されるとしたが、少なくとも粘弾性体15よりも高弾性率であれば、粘弾性体15と別個に設けられてもよい。この場合、延長部14は、例えば上記実施形態と同様の感光性ゴムでもよいが、その他の種類のエラストマーや、シリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲル、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料によって構成されてもよいし、銅(Cu)やニッケル(Ni)等の金属材料によって構成されてもよい。
【0048】
このように延長部14を粘弾性体15と別個に設ける場合には、延長部形成工程を実施するタイミング及びその内容についてのみ、上記実施形態の半導体センサ1の製造方法と異なる。すなわち、上記構成の半導体センサを製造する場合には、上記実施形態と同様のセンサ形成工程の前、あるいは、センサ形成工程と第一錘部埋設工程との間に、支持用突出部13,18をなすベースウエハ11の下面11d上に支持部Sの延長部14を形成する延長部形成工程を実施すればよい。
【0049】
そして、この延長部14が樹脂材料である場合には、延長部形成工程において、例えばベースウエハ11の下面11d全体に樹脂材料を塗布した後、レジストを用いてリソグラフィー技術により支持用突出部13,18を構成するベースウエハ11の下面11dのみに樹脂材料を残存させればよい。また、延長部14が金属材料である場合には、延長部形成工程において、樹脂材料の場合と同様にリソグラフィー技術を利用して形成してもよいが、例えばメッキやスパッタにより延長部14を形成してもよい。
なお、このように延長部14を粘弾性体15と別個に設ける場合には、上記実施形態と同様の平坦化工程を実施して、例えば粘弾性体15の下面15dと支持用突出部13,18の先端面13d,18dとを同一平面とすることがより好ましい。
さらに、延長部14が粘弾性体15と別個に構成される場合、粘弾性体15は、少なくとも気体よりも動粘度が高く、かつ、可撓部Fよりも弾性率の小さい樹脂であればよく、例えば感光性ゴムに限らない様々な種類のエラストマーの他、例えばシリコーン、ウレタン、アクリル等の高分子ゲルや、スポンジのような発泡樹脂等の各種樹脂材料によって構成されてもよい。
【0050】
また、支持用突出部は、ベースウエハ11の下面11dに延長部14を積層して構成されることに限らず、例えば図11に示すように延長部14のみによって構成されてもよい。なお、支持用突出部を延長部14のみによって構成する半導体センサ4を製造する場合には、例えば上記実施形態のセンサ形成工程において錘用突出部のみを形成しておけばよい。
【0051】
さらに、粘弾性体15,16は、半導体層12の上面12c側及び下面12d側の両方に形成されるとしたが、少なくとも半導体層12の上面12c側及び下面12d側のいずれか一方に形成されていればよい。したがって、半導体センサを製造する際には、少なくとも第一錘部埋設工程及び第二錘部埋設工程のいずれか一方を実施すればよい。
このような構成の半導体センサでも、可撓部F及び錘部Mの少なくとも一部が気体よりも動粘度の高い粘弾性体によって包まれるため、上記実施形態と同様に、錘部M全体が従来のように気体雰囲気中に配されている場合と比較して、錘部のQ値を低く設定できる効果を奏する。
【0052】
そして、本発明は、加速度センサに限らず、角速度センサ、圧力センサ、振動センサ、マイクロフォン等の半導体センサにも広く適用することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4…半導体センサ、6,7,8…制御チップ、10…SOIウエハ(シリコンバルク)、11A…枠体部(錘用突出部)、11B…凸部(錘用突出部)、12…半導体層(薄肉部)、12c…上面(他方の主面)、12d…下面(一方の主面)、13,18…支持用突出部、13d,18d…先端面、14…延長部、15,16…粘弾性体、21,31…回路基板(ベース材)、21c,31c…搭載面、48,58…保護プレート、121…ピエゾ抵抗部(検出手段)、201,202…半導体センサユニット、301,302,303…半導体パッケージ、F…可撓部、M…錘部、S…支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が可撓性を有する可撓部として構成される薄肉部と、前記薄肉部の一方の主面から突出して前記薄肉部と共に錘部を構成する厚肉の錘用突出部と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記薄肉部の一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部と、前記支持部に対する前記錘部の移動に伴う前記可撓部の変形又は変位を検出する検出手段とを備え、
前記支持用突出部の突出方向の先端面が外方に露出するように、前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方が、前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体によって埋設され、
前記支持用突出部の少なくとも一部が、前記先端面をなす延長部によって構成され、
当該延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする半導体センサ。
【請求項2】
シリコンバルクの異方性エッチングにより、薄肉部の一方の主面から突出する厚肉の錘用突出部を形成して、前記薄肉部及びこれに積層された前記錘用突出部により錘部を構成すると共に、前記錘用突出部に隣り合う前記薄肉部により可撓性を有する可撓部を構成するセンサ形成工程と、
前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方に粘弾性材料を塗布することで前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体を形成して、当該粘弾性体により前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方を埋設する錘部埋設形成工程と、
前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記一方の主面上に延びる延長部を形成する延長部形成工程とを備え、
少なくともこれらセンサ形成工程、錘部埋設形成工程及び延長部形成工程の実施後に、前記延長部が、前記一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部のうち、少なくとも外方に露出する前記支持用突出部の突出方向の先端面を含む一部を構成し、
前記延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする半導体センサの製造方法。
【請求項1】
一部が可撓性を有する可撓部として構成される薄肉部と、前記薄肉部の一方の主面から突出して前記薄肉部と共に錘部を構成する厚肉の錘用突出部と、前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記薄肉部の一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部と、前記支持部に対する前記錘部の移動に伴う前記可撓部の変形又は変位を検出する検出手段とを備え、
前記支持用突出部の突出方向の先端面が外方に露出するように、前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方が、前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体によって埋設され、
前記支持用突出部の少なくとも一部が、前記先端面をなす延長部によって構成され、
当該延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする半導体センサ。
【請求項2】
シリコンバルクの異方性エッチングにより、薄肉部の一方の主面から突出する厚肉の錘用突出部を形成して、前記薄肉部及びこれに積層された前記錘用突出部により錘部を構成すると共に、前記錘用突出部に隣り合う前記薄肉部により可撓性を有する可撓部を構成するセンサ形成工程と、
前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方に粘弾性材料を塗布することで前記可撓部よりも弾性率の小さい粘弾性体を形成して、当該粘弾性体により前記可撓部及び前記錘部のうち前記薄肉部の一方の主面側及び他方の主面側の少なくとも一方を埋設する錘部埋設形成工程と、
前記錘用突出部との間に間隙を空けるように前記一方の主面上に延びる延長部を形成する延長部形成工程とを備え、
少なくともこれらセンサ形成工程、錘部埋設形成工程及び延長部形成工程の実施後に、前記延長部が、前記一方の主面から突出して、前記薄肉部と共に前記可撓部を介して前記錘部に連結される支持部を構成する支持用突出部のうち、少なくとも外方に露出する前記支持用突出部の突出方向の先端面を含む一部を構成し、
前記延長部の弾性率が、前記粘弾性体の弾性率よりも大きく、かつ、前記延長部を除く前記支持部の他の構成部分の弾性率よりも小さいことを特徴とする半導体センサの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−281731(P2010−281731A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136177(P2009−136177)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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