説明

半導体チップの検査方法及び検査用治具

【課題】半導体チップの電気的特性検査について、検査開始までの時間を短縮し、かつ詳細な解析を確実に行う。
【解決手段】半導体チップTの電気的特性検査を行うにあたり、プローバの台座2に、吸着穴12と、当該吸着穴12の裏面側の開口部18に連通する吸着用溝13とを有する板状部材11からなる検査用治具10を配置し、吸着穴12の表面側の開口部17上に半導体チップTを配置して、検査用治具10を台座2に吸着すると共に半導体チップTを検査用治具10に吸着する。これにより、半導体チップTがプローバの台座2に対して平坦性を保ちかつずれない状態で、半導体チップT単体の電気的特性検査を行うことができる。その結果、半導体チップTの検査を開始するまでの時間を短縮でき、かつ詳細な解析を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの検査技術に関し、特に、不良返品された半導体チップについてプローバを用いて電気的特性検査を行う際の半導体チップの検査技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャリアカセットと、ウェハ上の不良マーク付きのチップを撮影するカメラと、撮影した画像認識データを処理し、不良マーク付きのチップを検出する画像処理装置と、プローブカードを接続したテストヘッド等を備え、テスタに接続され、画像処理装置により不良マーク付きのチップの位置をメモリに記憶し、不良マーク付きのチップにはプローブ針を当てないで電気的特性のテストを行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。これにより、不良チップの良品判定を防止することができる。
【特許文献1】特開平7−94559号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下に説明する技術は、本発明を研究、完成するのに際して、本発明者によって検討されたものであり、その概要は次のとおりである。
【0004】
例えば、LCDドライバ等の一部の半導体装置については、パッケージングを行わずにチップ状態のままで顧客に出荷する場合がある。顧客に出荷された半導体チップは、その顧客の工場でパッケージングが行われ、それぞれの用途に合わせた半導体装置となる。
【0005】
このような半導体チップについて客先で不良品が見つかった場合、顧客から返品されてきた半導体チップの不良解析を行い、顧客に不良解析の報告書を送付する。返品されてきた半導体チップは、パッケージングされた半導体装置の状態か少なくともパッケージングの途中の半導体装置の状態となっている。そのため、返品された半導体チップの不良解析を行うためには、当該半導体装置を半導体チップ単体に分解する必要がある。そして、一旦半導体チップ単体に分解した後、解析用にTCPやCOFに再組立てを行った上で、電気的特性検査を行う方法が一般的であった。
【0006】
しかし、このような方法を採ると、電気的特性検査を開始するまでの時間が非常に掛かるという問題がある。すなわち、半導体装置を半導体チップ単体に分解し、解析用にTCPやCOFに再組立てを行って、電気的特性検査を開始するまでに、数日を要することが多い。
【0007】
また、近年、半導体チップの入出力端子数が増加しており、それに伴い入出力端子の大きさが小さくなったり、入出力端子間のピッチが狭くなったり、また、半導体チップの外周付近に1列に並んで配置されていた入出力端子が2列以上に千鳥配置されるようになったりしている。解析用のTCPやCOFへの再組立てに際して、このような入出力端子から配線を引き出そうとした場合、2列以上に千鳥配置された入出力端子のうち外周側の入出力端子については配線を引き出すことができたとしても、内側の入出力端子については、入出力端子間のピッチが狭過ぎて配線と他の入出力端子とがショートしてしまうために配線を引き出すことができず、その結果、内側の入出力端子の電気的特性検査を行うことができない場合があった。
【0008】
さらに、顧客からは、報告書の提出までの時間の短縮と、さらに詳細な解析の報告書の提出などの要望があり、より早くより詳しく不良解析を行う必要がある。そこで、不良品の半導体チップを含む半導体装置を半導体チップ単体に分解した後に再組立てを行わず、チップ状態のままで電気的特性検査を行うことで、不良解析の報告書の提出までの時間の短縮及びさらに詳細な解析を実施する検討が行われた。
【0009】
ここで、返品された半導体装置を半導体チップ単体に分解した後、再組立てを行わずにチップ状態のままで電気的特性検査を行う方法として、分解した半導体チップの入出力端子に直接プローバのプローブ針を当ててLSIテスタ解析を行うチッププローブがある。このチッププローブについて、種々の研究、試行がなされてきたが、元来、プローバは台座等の構造がウェハ(ウェハ状態の半導体チップ)に適用することを想定したものであり、小さな形状の半導体チップ単体にチッププローブを行うことを想定したものではないため、半導体チップ単体について検査をしようとしても、半導体チップがずれてしまって全ての入出力端子の測定ができない等、うまく電気的特性検査が行えない場合があった。
【0010】
また、プローバでの半導体チップ単体の検査に際して、半導体チップをプローバの台座に配置するときに当該台座に適合するダミーウェハを用意し、半導体チップ裏面に接着剤を付けてダミーウェハに半導体チップを貼り付けて固定し、このダミーウェハをプローバの台座に配置することで、半導体チップがずれないようにすることも考えられた。しかし、このようにすると、接着剤のために半導体チップの平坦性が悪くなり、また接着時に微妙なズレも生じるため、プローブ針が半導体チップの全ての入出力端子に均一に接触せず、測定不能の入出力端子が生じることになった。特に、入出力端子数の多い半導体チップの場合、入出力端子自体の大きさが小さくなり、また入出力端子間のピッチも狭くなるため、接着剤による平坦性の悪化や接着時の微妙なズレが生じた際に、プローブ針を全ての入出力端子に均一に接触させることがより困難になる。このため、確実な電気的特性検査を行うことができず、実用的ではなかった。
【0011】
以上のような問題を踏まえて、半導体チップにおける不良解析の時間短縮及び詳細な不良解析の実施について種々の検討を行った結果、本発明に至った。
【0012】
なお、前記特許文献1(特開平7−94559号公報)の図1に記載されているプローバは、ウェハ上のチップ(ウェハ状態の半導体チップ)の検査についてのみ記載されているものであり、チッププローブについての記載は一切ない。よって、前記した問題は特許文献1によって解消されるものではない。
【0013】
本発明の目的は、半導体チップ単体がプローバの台座に対して平坦性を保ち、ずれないようにした状態で、プローバを用いた半導体チップ単体の電気的特性検査を行うことで、半導体チップの電気的特性検査について、検査開始までの時間を短縮することができ、かつ詳細な解析を確実に行うことができる技術を提供することにある。
【0014】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0016】
すなわち、本発明は、ウェハの電気的特性検査を行うプローバを用いた半導体チップの検査方法である。そして、プローバの台座に、板状部材からなり、当該板状部材の表面側から裏面側まで貫通する吸着穴と、当該吸着穴の裏面側の開口部に連通し、かつ板状部材の裏面側に形成された吸着用溝とを有する検査用治具を配置し、当該検査用治具の板状部材の吸着穴の表面側の開口部上に半導体チップを配置するものである。また、台座の吸引口を介して真空排気を行って、検査用治具を台座に吸着すると共に、吸着用溝及び吸着穴を通して、当該吸着穴の表面側の開口部上に配置された半導体チップを検査用治具の板状部材に吸着し、プローバに配置されたプローブカードにおける複数のプローブ針を、半導体チップの各入出力端子に接触させて、当該半導体チップの電気的特性検査を行うものである。
【0017】
また、本発明は、ウェハの電気的特性検査を行うプローバの台座に配置する板状部材からなる検査用治具であって、当該板状部材における台座との接触面と逆の表面に配置される半導体チップを台座からの吸引で板状部材に吸着させるための吸着穴と、当該吸着穴の台座側を含む板状部材の台座との接触面側に形成され、プローバの台座からの吸引力を吸着穴に伝える吸着用溝とを有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0019】
プローバの台座に、吸着穴と、当該吸着穴の裏面側の開口部に連通する吸着用溝とを有する板状部材からなる検査用治具を配置し、吸着穴の表面側の開口部上に半導体チップを配置して、検査用治具を台座に吸着すると共に半導体チップを検査用治具に吸着することで、半導体チップがプローバの台座に対して平坦性を保ちかつずれない状態で、半導体チップ単体の電気的特性検査を行うことができる。その結果、半導体チップの電気的特性検査を開始するまでの時間を短縮することができ、かつ詳細な解析を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下の実施の形態では特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0021】
さらに、以下の実施の形態では便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
【0022】
また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良いものとする。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。さらに、実施の形態で用いる図面においては、実施の形態の特徴部分を強調するため、実際の構造を簡略化して表す場合もある。
【0025】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態のプローバの構造の一例を示す斜視図、図2は図1に示すプローバの台座に本発明の実施の形態の検査用治具を配置したときの構造の一例を示す拡大平面図である。また、図3は図1に示すプローバの台座にウェハを配置し、ウェハにプローブ針を接触させるときの構造の一例を示す拡大断面図、図4は図1に示すプローバの台座に検査用治具及び半導体チップを配置し、半導体チップの入出力端子にプローブ針を接触させるときの構造の一例を示す拡大断面図である。また、図5は本発明の実施の形態の検査用治具における変形例の表面の構造の一例を示す拡大平面図、図6は図5に示す検査用治具の裏面の構造の一例を示す拡大平面図、図7は本発明の実施の形態の検査用治具における他の変形例の表面の構造の一例を示す拡大平面図、図8は図7に示す検査用治具の裏面の構造の一例を示す拡大平面図である。また、図9は本発明の実施の形態の半導体チップの検査手順の一例を示す検査プロセスフロー図である。
【0026】
プローバは、元来、半導体装置の製造過程において、ダイシング工程を行う前のウェハ(ウェハ状態の半導体チップ)に対して電気的特性検査を行う装置である。そのため、プローバの台座等の大きさや構造がウェハに適応するように形成されており、半導体チップ単体(チップ状態の半導体チップ)に適応するように形成されているものではない。本実施の形態では、チップ状態で出荷された半導体装置(半導体チップ単体)が不良品として返品されてきた場合に、このプローバを用いて当該不良品(以下、不良品の半導体チップを検査用半導体チップという。)の不良解析を行う際の技術について説明する。
【0027】
まず、図1〜図3を用いて、本実施の形態のプローバの構成を説明する。図1に示すように、本実施の形態のプローバ1は、ウェハW(図3に図示)を配置するための台座2、当該台座2に配置されたウェハWの上側の面(表面)に対向させるプローブカード3、作業者がプローバ1の操作を行う操作パネル4等を有している。
【0028】
図2に示すように、本実施の形態の台座2は、ウェハWの形状に合わせて平面視略円形状の水平面で構成されており、前後左右に移動可能となっており、真空吸引(真空排気)を行う吸引機能を備えている。具体的には、台座2の中心位置に、真空吸引装置(図示省略)に繋がる吸引口5が形成されており、当該吸引口5を中心とした同心円状に複数の溝6が形成されている。そして、図3に示すように、台座2にウェハWを配置し、真空吸引装置を作動させることで、矢印Aに示すように吸引口5から複数の溝6の空気を吸引(排気)して真空状態を作り出し、これによりウェハWを台座2に吸着して固定するようになっている。このように、ウェハWを台座2に吸着固定してから後述するプローブカード3のプローブ針7をウェハWに接触させることで、ウェハWを安定した状態に固定してから電気的特性検査を行うことができ、ウェハWがずれる等の不具合を起こさず確実に電気的特性検査を行うことができるようになっている。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態のプローブカード3は、ウェハWの形状に合わせた台座2に合わせて平面視略円形状に形成されており、台座2より小さめの大きさに形成されている。また、本実施の形態のプローブカード3は、ヒンジ8により矢印Bに示すように回転移動するようになっており、この回転移動により台座2に対して上側から重なって、台座2に配置されたウェハWの表面に対向するようになっている。さらに、プローブカード3は、図3に示すように、台座2に配置されたウェハWの表面と対向する面に、ウェハW上の半導体チップ1個分における複数の入出力端子全てに接触させる複数のプローブ針7を備えている。そして、ウェハW(ウェハ状態の半導体チップ)の電気的特性検査を行う際には、この複数のプローブ針7を半導体チップの複数の入出力端子全てに接触させてプローブ針7から入力端子に電気信号を印加することで、半導体チップの電気的特性の情報を出力端子を介してプローバ1からLSIテスタ(図示省略)に送り、この情報を基にLSIテスタで半導体チップの解析を行うようになっている。このようにして、半導体チップ1個分の電気的特性検査を行ったら、台座2を移動させて次の半導体チップの入出力端子全てにプローブ針7を接触させて電気的特性検査を行い、これを繰り返してウェハW上の半導体チップ全ての電気的特性検査を行うようになっている。
【0030】
次に、図2及び図4〜図8を用いて、本実施の形態の検査用治具の構成を説明する。検査用治具は、ウェハ状態から個片化されたチップ状態の検査用半導体チップ(半導体チップ単体)Tの電気的特性検査をプローバ1で行う際に、1つ又は複数の検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に平坦性を保ちつつ固定して、均一かつ安定した状態で検査を行うことができるように、台座2と検査用半導体チップTとの間に配置する治具である。
【0031】
図2及び図4に示すように、本実施の形態の検査用治具10は、ウェハWと外形及び大きさが略同一となる平面視略円形状の板状部材11からなっている。また、本実施の形態の板状部材11はセラミックを材質に用いたセラミックボードからなっている。これにより、温度の影響を受け難く、高温又は低温での検査にも変形せずに対応可能であると共に、機械的な負荷に対しても変化の少ない検査用治具10となっている。
【0032】
また、本実施の形態の検査用治具10の板状部材11には、吸着穴12と吸着用溝13とが形成されている。
【0033】
吸着穴12は、当該板状部材11の表面14側から裏面15側まで貫通する貫通穴であり、板状部材11に対して1つ又は複数形成されている。また、板状部材11における1つ又は複数の吸着穴12の表面側の開口部17上に検査用半導体チップTを配置するようになっている。すなわち、板状部材11における台座2との接触面である裏面15と逆側の表面14側の1つ又は複数の吸着穴12の上に重なるように検査用半導体チップTを配置するようになっている。なお、図2及び図4に示す検査用治具10では、板状部材11の中心位置(プローバ1の台座2の中心位置に形成された吸引口5と重なる位置)から放射状に複数の吸着穴12が形成されており、検査用半導体チップTの数、種類及び大きさ等に応じて、検査用半導体チップTをこれらの吸着穴12の表面側の開口部17上のいずれか1つ又は複数に重なるように配置するようになっている。
【0034】
吸着用溝13は、吸着穴12の裏面側の開口部18に連通し、かつ板状部材11の裏面15側に形成された1つ又は複数の溝である。すなわち、吸着用溝13は、吸着穴12の裏面側を含む板状部材11の裏面15側に形成された1つ又は複数の溝である。この吸着用溝13は、プローバ1の台座2に備えられた吸引機能を作動させることで台座2の吸引口5から生じる吸引力を吸着穴12に伝えるために形成されている。なお、図2及び図4に示す検査用治具10では、板状部材11の中心位置から放射状に形成された複数の吸着穴12に沿って、放射状に複数の吸着用溝13が形成されている。
【0035】
そして、図4に示すように、プローバ1の台座2に検査用治具10を配置し、検査用治具10の板状部材11の吸着穴12の表面側の開口部17の1つ又は複数の上に重なるように1つ又は複数の検査用半導体チップTを配置して、真空吸引装置を作動させる。なお、ここでは、複数の吸着穴12の表面側の開口部17上に重なるように1つの検査用半導体チップTを配置している。このようにして台座2の吸引機能を作動させて真空吸引(真空排気)を行い、矢印Aに示すように吸引口5から複数の溝6の空気を吸引(排気)して真空状態を作り出し、これにより検査用治具10を台座2に吸着して固定する。また、吸着用溝13及び吸着穴12を通して、当該吸着穴12の表面側の開口部17上に重なるように配置された検査用半導体チップTを検査用治具10の板状部材11に吸着させる。その結果、真空吸引により、接着剤等を用いずに検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に固定することができ、検査用半導体チップTが平坦性を保ちかつずれない構成とすることができる。
【0036】
なお、ここでは1つの検査用半導体チップTの電気的特性検査を行う構成となっていたが、複数の検査用半導体チップTの電気的特性検査を同時に行う構成とした場合には、1つずつ電気的特性検査を行う構成と比較して、検査用半導体チップTの交換の時間等を短縮することができ、作業効率を向上させることができる。
【0037】
次に、本実施の形態の検査用治具の変形例について、図5及び図6を用いて説明する。この変形例の検査用治具10Aは、検査用半導体チップTを1つだけ配置する構成の検査用治具である。
【0038】
図5及び図6に示すように、本例の検査用治具10Aは、前記検査用治具10と同様に、ウェハWと外形及び大きさが略同一となる平面視略円形状の板状部材(セラミックボード)11Aからなっている。また、本例の板状部材11Aには、前記検査用治具10と構成の異なる吸着穴12Aと吸着用溝13Aとが形成されている。
【0039】
本例の吸着穴12Aは、前記検査用治具10と同様の当該板状部材11Aの表面14A側から裏面15A側まで貫通する貫通穴であるが、前記検査用治具10と異なり、板状部材11Aの所定位置(ここでは中心位置より少し外れた位置)に吸着穴12Aが3つだけ1列に並んだ状態で形成されている。また、本例の吸着用溝13Aは、3つの吸着穴12Aの裏面側の開口部18Aに連通し、かつ当該3つの吸着穴12Aの裏面側の開口部18Aを中心とした板状部材11Aの裏面15A側に、放射状に複数形成されている。すなわち、本例の吸着用溝13Aは、3つの吸着穴12Aの裏面側を中心とした板状部材11Aの裏面15A側に、放射状に複数形成されている。この吸着用溝13Aは、前記検査用治具10と同様に、プローバ1の台座2に備えられた吸引機能を作動させることで台座2の吸引口5から生じる吸引力を吸着穴12Aに伝えるために形成されている。
【0040】
そして、プローバ1の台座2に検査用治具10Aを配置し、検査用治具10Aの板状部材11Aの3つの吸着穴12Aの表面側の開口部17A上に重なるように検査用半導体チップTを1つ配置して真空吸引装置を作動させる。このようにして台座2の吸引機能を作動させて真空吸引(真空排気)を行い、吸引口5から複数の溝6の空気を吸引(排気)して真空状態を作り出し、これにより検査用治具10Aを台座2に吸着して固定する。また、吸着用溝13A及び吸着穴12Aを通して、当該吸着穴12Aの表面側の開口部17A上に重なるように配置された検査用半導体チップTを検査用治具10Aの板状部材11Aに吸着させる。その結果、真空吸引により、接着剤等を用いずに検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に固定することができ、検査用半導体チップTが平坦性を保ちかつずれない構成とすることができる。
【0041】
なお、本例の検査用治具10Aでは、板状部材11Aに対して形成されている吸着穴12Aが3つだけであり、台座2の吸引機能を作動させた際に吸引口5から生じる吸引力が吸着用溝13Aを通してこの3つの吸着穴12Aだけに伝わるため、検査用半導体チップTをより強固に吸着させて固定することが可能となっている。
【0042】
また、本例の検査用治具10Aには、図5に示すように、板状部材11Aの表面14Aに、吸着穴12Aの表面側の開口部17A上に重なるように配置される検査用半導体チップTの配置位置を特定するための目印16Aが付いている。ここでは、検査用半導体チップTの配置位置を特定するための目印16Aとして、3つの吸着穴12Aのうちの真ん中の吸着穴12Aを中心として十字方向の外周から吸着穴12Aに向けた矢印が形成されている。このように、板状部材11Aの表面14Aに目印16Aを付けることにより、吸着穴12Aの表面側の開口部17A上に重なるように配置される検査用半導体チップTの配置位置をわかりやすくすることができ、カメラで検査用半導体チップTにおけるプローブ針7の接触位置を測定する際等に、検査用半導体チップTの配置位置を見つけやすくすることができる。
【0043】
次に、本実施の形態の検査用治具の他の変形例について、図7及び図8を用いて説明する。他の変形例の検査用治具10Bは、検査用半導体チップTを2つ配置する構成の検査用治具である。
【0044】
図7及び図8に示すように、本例の検査用治具10Bは、前記検査用治具10及び前記検査用治具10Aと同様に、ウェハWと外形及び大きさが略同一となる平面視略円形状の板状部材(セラミックボード)11Bからなっている。また、本例の板状部材11Bには、前記検査用治具10及び前記検査用治具10Aと構成の異なる吸着穴12Bと吸着用溝13Bとが形成されている。
【0045】
本例の吸着穴12Bは、前記検査用治具10及び前記検査用治具10Aと同様の当該板状部材11Bの表面14B側から裏面15B側まで貫通する貫通穴であるが、前記検査用治具10及び前記検査用治具10Aと異なり、板状部材11Bの所定の2箇所(ここでは中心位置より少し外れ、かつ中心位置からみた2つの対称位置)にそれぞれ3つの吸着穴12Bが1列に並んだ状態で形成されている。また、本例の吸着用溝13Bは、2箇所に形成された3つの吸着穴12Bそれぞれの裏面側の開口部18Bに連通し、かつ2箇所に形成された3つの吸着穴12Bそれぞれの裏面側の開口部18Bを中心とした板状部材11Bの裏面15B側に、それぞれ放射状に複数形成されている。すなわち、本例の吸着用溝13Bは、2箇所に形成された3つの吸着穴12Bそれぞれの裏面側を中心とした板状部材11Bの裏面15B側に、それぞれ放射状に複数形成されている。この吸着用溝13Bは、前記検査用治具10及び前記検査用治具10Aと同様に、プローバ1の台座2に備えられた吸引機能を作動させることで台座2の吸引口5から生じる吸引力を吸着穴12Bに伝えるために形成されている。
【0046】
そして、プローバ1の台座2に検査用治具10Bを配置し、検査用治具10Bの板状部材11Bの2箇所の3つの吸着穴12Bの表面側の開口部17B上に重なるように検査用半導体チップTをそれぞれ配置して真空吸引装置を作動させる。このようにして台座2の吸引機能を作動させて真空吸引(真空排気)を行い、吸引口5から複数の溝6の空気を吸引(排気)して真空状態を作り出し、これにより検査用治具10Bを台座2に吸着して固定する。また、吸着用溝13B及び吸着穴12Bを通して、当該吸着穴12Bの表面側の開口部17B上に重なるようにそれぞれ配置された検査用半導体チップTを検査用治具10Bの板状部材11Bに吸着させる。その結果、真空吸引により、接着剤等を用いずに検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に固定することができ、検査用半導体チップTが平坦性を保ちかつずれない構成とすることができる。
【0047】
なお、本例の検査用治具10Bでは、板状部材11Bに対して形成されている吸着穴12Bが3つずつの2箇所、合計6つだけであり、台座2の吸引機能を作動させた際に吸引口5から生じる吸引力が吸着用溝13Bを通してこの6つの吸着穴12Bだけに伝わるため、多くの吸着穴を有する構成の前記検査用治具10と比較して検査用半導体チップTを強固に吸着させて固定することが可能となっている。また、2つの検査用半導体チップTの電気的特性検査を同時に行うことができるため、1つずつ電気的特性検査を行う構成の前記検査用治具10Aと比較して、検査用半導体チップTの交換の時間等を短縮することができ、作業効率を向上させることができる。さらに、同時に電気的特性検査を行う検査用半導体チップTのうちの1つを不良品、もう1つを良品とすることで両者の比較データを簡単に取ることができ、非常に効率良く作業を行うことができる。
【0048】
また、本例の検査用治具10Bには、図7に示すように、板状部材11Bの表面14Bに、吸着穴12Bの表面側の開口部17B上にそれぞれ重なるように配置される検査用半導体チップTの配置位置を特定するための目印16Bが付いている。ここでは、検査用半導体チップTの配置位置を特定するための目印16Bとして、2箇所に形成されたそれぞれ3つの吸着穴12Bのうちの真ん中の吸着穴12Bを中心としてそれぞれ十字方向の外周から吸着穴12Bに向けた矢印が形成されている。このように、板状部材11Bの表面14Bに目印16Bを付けることにより、吸着穴12Bの表面側の開口部17B上にそれぞれ重なるように配置される検査用半導体チップTの配置位置をわかりやすくすることができ、カメラで検査用半導体チップTにおけるプローブ針7の接触位置を測定する際等に、検査用半導体チップTの配置位置を見つけやすくすることができる。
【0049】
次に、本実施の形態の半導体チップの検査手順の一例を、図9に示す検査プロセスフロー図を用いて説明する。本実施の形態では、チップ状態で出荷された半導体装置(半導体チップ単体)が不良品として返品されてきた場合に、プローバを用いて当該不良品(検査用半導体チップ)の不良解析を行う際の手順について説明する。
【0050】
図9のステップS1に示すように、不良品として、パッケージングされた若しくはパッケージングの途中の半導体装置の状態の検査用半導体チップTの返品があり、それと共に顧客からの不良解析の依頼がある。すると、図9のステップS2に示すように、まず、パッケージングされた若しくはパッケージングの途中の半導体装置の状態の検査用半導体チップTに対して、外観調査等の1次解析を行う。次に、図9のステップS3に示すように、検査用半導体チップTに対する2次解析を行う。2次解析では、図9のステップS31に示すように、まず、検査用半導体チップTを返品されたときの半導体装置の状態から半導体チップ単体の状態に分解する。次に、図9のステップS32に示すように、プローバ1を用いて電気的特性検査を行う。なお、プローバ1を用いた電気的特性検査の詳細な手順については、後述する。電気的特性検査の終了後、図9のステップS4に示すように、不良解析の解析結果をまとめ、顧客に報告を行い、一連の不良解析が終了する。
【0051】
以下、図9のステップS32に示す、プローバ1を用いた電気的特性検査の詳細な手順について説明する。なお、ここでは、1つの検査用半導体チップTについて電気的特性検査を行う場合について説明する。
【0052】
まず、図4に示すように、プローバ1の台座2の所定位置に、検査用治具10を裏面15が台座2との接触面となるように配置する。次に、分解して半導体チップ単体になった検査用半導体チップTを検査用治具10の吸着穴12の上に重なるように配置する。それから、真空吸引装置を作動させて真空吸引(真空排気)を行い、矢印Aに示すように台座2の吸引口5から複数の溝6の空気を吸引(排気)して真空状態を作り出し、これにより検査用治具10を台座2に吸着して固定する。また、吸着用溝13及び吸着穴12を通して、当該吸着穴12の表面側の開口部17上に重なるように配置された検査用半導体チップTを検査用治具10の板状部材11に吸着させる。これらの結果、接着剤等を用いず真空吸引により、検査用半導体チップTが平坦性を保ちかつずれないように、検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に固定する。
【0053】
その後、プローブカード3を移動させ、さらに台座2をプローブカード3に合わせて移動させて、プローブカード3のプローブ針7を検査用半導体チップTの全ての入出力端子Sに均一に接触させ、検査開始の信号を始めとして種々の電気信号を送って電気的特性検査を行う。所定の電気的特性検査が終了したら、検査用半導体チップTからプローブ針7を離間させて台座2から検査用半導体チップTを取り出し、電気的特性検査を終了する。
【0054】
本実施の形態の半導体チップTの検査方法及び半導体チップTの検査用治具10によれば、まず、吸引機能を備えたプローバ1の台座2に、吸着穴12と、台座2からの吸引力を吸着穴12に伝えるために当該吸着穴12の裏面側の開口部18に連通する吸着用溝13とを有する板状部材11からなる検査用治具10を配置する。また、吸着穴12の表面側の開口部17上に重なるように検査用半導体チップTを配置して、検査用治具10を台座2に吸着させると共にチップTを検査用治具10に吸着させる。これにより、検査用半導体チップTがプローバ1の台座2に対してずれないように固定された状態で、半導体チップT単体の電気的特性検査を行うことができ、検査用半導体チップTの全ての入出力端子Sの電気的特性検査を行うことができる。また、検査用半導体チップTをプローバ1の台座2に固定する際に、接着剤等を使用しないため、高度な平坦性を実現することができ、検査用半導体チップTの全ての入出力端子Sにプローブ針7を均一に接触させることができる。
【0055】
その結果、プローバ1を用いた半導体チップT単体に対する電気的特性検査が可能となり、半導体装置をチップ状態に分解した後、TCPやCOFに再組立てを行う場合と比べて、半導体チップTの電気的特性検査を開始するまでの時間を短縮することができ、かつ詳細な解析を確実に行うことができる。また、検査用半導体チップTの固定は真空吸引により行うため、特殊な器具で固定する場合と異なり、異なる半導体チップでも対応可能で汎用性が高いという利点もある。
【0056】
以上、本発明者によってなされた発明を発明の実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記発明の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0057】
例えば、前記実施の形態では、プローバのプローブカードが回転移動して台座に重なるようになっているが、これに限るものではなく、回転移動以外の移動構造(例えば上下方向に平行移動)によってプローブカードが移動して台座に重なるようになっていても良い。
【0058】
また、前記実施の形態では、半導体チップの不良解析に際して、プローバによる半導体チップ単体の電気的特性検査を行う場合に、検査用治具を用いて真空吸引(真空排気)により半導体チップを固定する技術について説明したが、これに限るものではなく、真空吸引で固定するタイプのテスタで測定できるものであれば、不良解析、プローバ、半導体チップ単体以外のものに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、半導体チップについてプローバを用いて電気的特性検査を行う際の半導体チップの検査技術に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施の形態のプローバの構造の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプローバの台座に本発明の実施の形態の検査用治具を配置したときの構造の一例を示す拡大平面図である。
【図3】図1に示すプローバの台座にウェハを配置し、ウェハにプローブ針を接触させるときの構造の一例を示す拡大断面図である。
【図4】図1に示すプローバの台座に検査用治具及び半導体チップを配置し、半導体チップの入出力端子にプローブ針を接触させるときの構造の一例を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の検査用治具における変形例の表面の構造の一例を示す拡大平面図である。
【図6】図5に示す検査用治具の裏面の構造の一例を示す拡大平面図である。
【図7】本発明の実施の形態の検査用治具における他の変形例の表面の構造の一例を示す拡大平面図である。
【図8】図7に示す検査用治具の裏面の構造の一例を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の実施の形態の半導体チップの検査手順の一例を示す検査プロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0061】
1 プローバ
2 台座
3 プローブカード
4 操作パネル
5 吸引口
6 溝
7 プローブ針
8 ヒンジ
10 検査用治具
10A 検査用治具
10B 検査用治具
11 板状部材
11A 板状部材
11B 板状部材
12 吸着穴
12A 吸着穴
12B 吸着穴
13 吸着用溝
13A 吸着用溝
13B 吸着用溝
14 表面
14A 表面
14B 表面
15 裏面(接触面)
15A 裏面
15B 裏面
16A 目印
16B 目印
17 表面側の開口部
17A 表面側の開口部
17B 表面側の開口部
18 裏面側の開口部
18A 裏面側の開口部
18B 裏面側の開口部
W ウェハ
T 検査用半導体チップ(半導体チップ)
S 入出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの電気的特性検査を行うプローバを用いた半導体チップの検査方法であって、
前記プローバの台座に、板状部材からなり、当該板状部材の表面側から裏面側まで貫通する吸着穴と、当該吸着穴の裏面側の開口部に連通し、かつ前記板状部材の裏面側に形成された吸着用溝とを有する検査用治具を配置し、
当該検査用治具の前記板状部材の前記吸着穴の表面側の開口部上に半導体チップを配置し、
前記台座の吸引口を介して真空排気を行って、前記検査用治具を前記台座に吸着すると共に、前記吸着用溝及び前記吸着穴を通して、当該吸着穴の表面側の開口部上に配置された前記半導体チップを前記検査用治具の前記板状部材に吸着し、
前記プローバに配置されたプローブカードにおける複数のプローブ針を、前記半導体チップの各入出力端子に接触させて、当該半導体チップの電気的特性検査を行うことを特徴とする半導体チップの検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体チップの検査方法において、前記検査用治具の前記板状部材がセラミックボードからなることを特徴とする半導体チップの検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体チップの検査方法において、前記検査用治具の前記板状部材の表面に、前記半導体チップの配置位置を特定するための目印が付いていることを特徴とする半導体チップの検査方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体チップの検査方法において、前記検査用治具は、複数の半導体チップを配置可能であることを特徴とする半導体チップの検査方法。
【請求項5】
ウェハの電気的特性検査を行うプローバの台座に配置する板状部材からなる検査用治具であって、
当該板状部材における前記台座との接触面と逆の表面に配置される半導体チップを前記台座からの吸引で前記板状部材に吸着させるための吸着穴と、
当該吸着穴の前記台座側を含む前記板状部材の前記台座との接触面側に形成され、前記プローバの前記台座からの吸引力を前記吸着穴に伝える吸着用溝とを有することを特徴とする検査用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309540(P2008−309540A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155931(P2007−155931)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】