説明

半導体チップの超音波接合方法およびその超音波接合装置

【課題】 プラズマ洗浄する際、温度管理が可能な超音波接合方法を提供する。
【解決手段】 プラズマ洗浄工程を含む半導体チップの超音波接合方法において
、プラズマノズルの走査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、およびプ
ラズマ電力を基に前記洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記洗
浄対象物の固有常数とを記憶しておき、前記洗浄対象物の上昇温度を設定するこ
とにより、この式から複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合
わせを算出し、この組み合わせの中から任意の一つの組み合わせを選択し、選択
されたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度で前記洗浄対象物を設定温度に
保持しつつ洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板上に半導体チップを実装するためのチップ実装方法
に係り、特に実装対象である半導体チップの性能の低下を引き起こすことのない
プリント配線板上に半導体チップを実装する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップをプリント配線板の所定の位置に実装する方法として超音波接合
方法が知られている。
そして、この超音波接合のために、半導体チップの電極やプリント配線板の電
極を洗浄する必要があることも知られており、その洗浄方法としてプラズマ洗浄
方法がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のプラズマ洗浄方法は、反応ガスと高周波電力をプラズマ照
射ノズルに供給してその先端からプラズマを発生させ、上記発生したプラズマを
対象物の洗浄すべき被洗浄部分に照射して、照射されたプラズマにより上記被洗
浄部分を洗浄するものである。
【0004】
そして、このプラズマ洗浄方法によれば、反応ガスと高周波電力が供給された
プラズマ照射ノズルの先端からプラズマを発生させ、上記発生したプラズマを対
象物の洗浄すべき被洗浄部分に常圧状態で照射して、照射されたプラズマにより
上記被洗浄部分を洗浄するため、プラズマ洗浄を特別な減圧状態で行う必要がな
く、小型化が図れ、かつ、実装設備内に容易に組み込むことができて取り扱いや
すくなる。また、ノズルの先端からのみプラズマを照射するため、局部的に洗浄
すべき個所のみを効率的に洗浄することができ、洗浄後の被洗浄部分例えば電極
などの接続信頼性を高めることができるとともに、プラズマを照射したくない精
密部品やチップ部品などの洗浄不要部分にプラズマが照射されることを確実に防
止できる。
【0005】
このプラズマ洗浄装置と超音波接合装置を別々な装置として用いて半導体チッ
プをプリント配線板の所定の位置に超音波接合することができるが、プラズマ洗
浄装置を超音波接合装置に組込んで一体の装置として用いることも知られている
(例えば、特許文献2)。
【0006】
特許文献2に記載の超音波接合方法は、基板の所定の電極部分にチップを載置
し、基板の電極とチップに設けられた電極とを接合してチップを基板に実装する
チップ実装方法において、前記基板の所定電極部分に向けてプラズマを照射して
前記電極部分を洗浄する洗浄過程と、前記洗浄過程で電極部分を洗浄した直後
に、その電極部分にチップを載置し、チップと基板の両電極の当接部分に超音波
振動を与えながら両電極を接合する超音波接合過程とを備えたものである。
【0007】
このようにすることで、基板の電極部分が洗浄された直後に、この基板とチッ
プの両電極が接合される。したがって、基板の電極には酸化膜や有機物が付着し
ないので、両電極を一層信頼性を高く接合できるから、確実な電極間の導通を得
ることができる。
【0008】
これらの特許文献1と特許文献2記載の発明を組み合わせることで、両発明の
持つ効果を併せ持つ超音波接合方法が得られる。
つまり、特許文献1記載の発明により、反応ガスと高周波電力が供給されたプ
ラズマ照射ノズルの先端からプラズマを発生させ、上記発生したプラズマを対象
物の洗浄すべき被洗浄部分に常圧状態で照射して、照射されたプラズマにより上
記被洗浄部分を洗浄するため、プラズマ洗浄を特別な減圧状態で行う必要がなく
、また、局部的に洗浄すべき個所のみを効率的に洗浄することができ、プラズマ
を照射したくない精密部品やチップ部品などの洗浄不要部分にプラズマが照射さ
れることを確実に防ぐことができる。特許文献2記載の発明により、基板の電極
には酸化膜や有機物が付着しないので、両電極を一層信頼性を高く接合できるか
ら、確実な電極間の導通を得ることができる。
【特許文献1】特開2000−117213号公報
【特許文献2】特開2003−303854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、単に組み合わせただけの超音波接合装置は接合性の面の問題は
生じないが、プラズマ照射によって照射対象の温度が上昇し、この温度上昇によ
り、照射対象に変色や焦げ更には電気的特性に変動を与える等の問題点があった
。この問題が生じる温度は、プラズマ洗浄を行う対象物の材質や温度耐性によっ
て変動し、一律でないという問題点もあった。
そこで、本発明はこの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とする
ところは、温度上昇を所望の値に保持しながらプラズマ洗浄することを可能とし
た超音波接合方法と超音波接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述のように、プリント配線板の電極部をプラズマ洗浄処理し、その直後に半
導体チップを対応する電極部に載置し、超音波接合することで所定の強度で半導
体チップをプリント配線板に接合することが可能となるが、洗浄処理のためのプ
ラズマ照射によってプリント配線板の温度が上昇する。この温度上昇により、プ
リント配線板に変色や焦げ更には電気的特性(特に洗浄対象を半導体チップの電
極部を選択した場合に顕著に現れる。)に変動を与える等の問題が発生し、温度
管理をどのように実行するか問題となっていた。そして、この温度上昇の問題は
、プラズマ洗浄を行う対象物固有の材質や温度耐性によっても変動するのでこの
点からも温度管理が問題となっていた。そこで、プラズマ照射時の温度制御方法
について鋭意検討した結果、プラズマ照射を受けた電極部分の熱伝導について本
発明者らは着眼した。
【0011】
すなわち、プラズマ洗浄処理のためプラズマ照射を電極ごとに移動させていく
のであるが、このときのプラズマ照射対象物の温度上昇を公知の移動熱源による
熱伝導式の考え方を流用して説明できるのではないか、ということである。つま
り、プラズマノズルとプラズマ照射対象物との距離を一定の距離に保持した時、
プラズマノズルの走査速度とプラズマ電力とプラズマ照射対象物の温度との関係
を定式化することができる、ということである。そして、この式を用いれば、前
記対象物の許容上昇温度を設定することでプラズマ電力とプラズマノズルの走査
速度の組み合わせを算出することができ、この組み合わせの中から任意の一つの
組み合わせを選択することで、プラズマ照射を受けた部分が熱の影響を受けない
程度の温度上昇に抑えるための必要なプラズマ照射の制御を可能にできるといっ
た知見を本発明者らは得ることができた。
【0012】
本発明になる半導体チップの超音波接合方法は、半導体チップを実装するプリ
ント配線板の対応する位置に位置合わせをしてから、大気圧下でプリント配線板
または半導体チップの電極部にプラズマを照射してこの電極部を洗浄し、その直
後にプリント配線板の所定の電極部分に半導体チップを載置し、半導体チップと
プリント配線板の当接部分に超音波振動を印加しながら半導体チップをプリント
配線板に実装する半導体チップの超音波接合方法において、プラズマノズルの走
査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、およびプラズマ電力を基に前記
洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記洗浄対象物の固有常数と
を記憶しておき、前記洗浄対象物の上昇温度を設定することにより、この式から
複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合わせを算出し、この組
み合わせの中から任意の一つの組み合わせを選択し、選択されたプラズマ電力と
プラズマノズルの走査速度で前記洗浄対象物を設定温度に保持しつつ洗浄するこ
とを特徴とするものである。
【0013】
本発明になる上昇温度を求める式は、ΔTを前記洗浄対象物の温度上昇、vを
前記プラズマノズルの走査速度、Pを前記プラズマ電力、αとβを前記洗浄対象
物の固有常数とするとき、
ΔT = β・P・exp(α・v)
であることを特徴とするものである。
【0014】
そして、本発明になる半導体チップの超音波接合装置は、半導体チップを実装
するプリント配線板の対応する位置に位置合わせをしてから、大気圧下でプリン
ト配線板または半導体チップの電極部にプラズマを照射してこの電極部を洗浄し
、その直後にプリント配線板の所定の電極部分に半導体チップを載置し、半導体
チップとプリント配線板の当接部分に超音波振動を印加しながら半導体チップを
プリント配線板に実装する半導体チップの超音波接合装置において、プラズマノ
ズルの走査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、およびプラズマ電力を
基に前記洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記洗浄浄対象物の
固有常数とを記憶する記憶部と、設定温度を受けて前記記憶部に記憶されている
式と固有常数から複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合わせ
を算出する演算部と、前記洗浄対象物に応じて上昇温度を前記設定温度として設
定すること;前記演算部からの複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度
の組み合わせを表示すること;この組み合わせの中から任意の一つの組み合わせ
を選択することで選択されたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度を設定す
ることを行う設定・表示部と、この設定・表示部からの設定されたプラズマ電力
とプラズマノズルの走査速度と設定温度に基づいて前記洗浄対象物を洗浄する洗
浄手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明になる半導体チップの超音波接合方法またはその超音波接合装置によれ
ば、プラズマノズルの走査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、および
プラズマ電力を基に前記洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記
洗浄対象物の固有常数とを記憶しておき、前記洗浄対象物の温度を設定すること
により、この式からプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合わせが算
出され、この組み合わせの中の一つの組み合わせを選択することにより、選択さ
れたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度で前記設定温度を保持しつつ前記
洗浄対象物を洗浄することが可能となるので、プラズマ洗浄時のプラズマ照射の
熱に起因して前記洗浄対象物に生じる変色や焦げ更には電気的特性の変動を適切
に回避することができる。したがって、信頼性の高い半導体チップの超音波接合
方法およびその超音波接合装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す超音波接合装置の概略斜視図である。図2は
図1の超音波接合装置の制御部の内部構成を示す図である。また、図3は大気圧
下でプラズマノズルとプラズマ照射対象物との距離を固定したときのプラズマ電
力を変化させたときのプラズマノズル51の走査速度と半導体チップ204の温
度との関係を示すグラフである。
【0017】
図1において、1は超音波振動を印加しているときプリント配線板の所定の位
置に載置された半導体チップを適宜な荷重を印加して押さえる荷重手段、2は本
発明になる超音波接合装置の全体の動作を制御する制御部、3は加圧手段1で荷
重を印加しているときの半導体チップに印加される荷重を検出する加圧センサ、
4は加圧手段1による荷重を受けて半導体チップの電極バンプが変形するのに伴
う高さ情報を出力するエンコーダである。
【0018】
図2に示すように、制御部2は本発明になる超音波接合装置の制御に必要な種
々の情報の設定、演算部から演算結果の表示、この表示の中から任意の一の選択
、そして選択結果の情報を設定する設定・表示部21、演算式や固有常数などの
情報を記憶する記憶部23、制御対象の情報を入力する情報入力部24、制御対
象へ情報を出力する情報出力部25、設定・表示部21からの設定情報、記憶部
23からの演算式や固有情報、情報入力部24からの制御対象の情報等を入力し
、演算式に基づいて演算を行い、演算結果を出力する演算部22からなる。
【0019】
5は洗浄に用いられるプラズマを照射するペンタイプのプラズマノズル51が
配設され、半導体チップの電極バンプの1つ1つ順番にプラズマを照射する水平
方向(図中イの方向)、垂直方向(図中アの方向)そして上下方向(図中ウの方
向)に自由に移動可能なプラズマノズル移動手段、6はプラズマ生成用のマイク
ロ波電源、10は半導体チップ204を吸着させるエア流路である。
【0020】
52はマイクロ波電源6からのマイクロ波電源をプラズマノズル51へ供給す
るフレキシケーブル、53は図示しないガスボンベからアルゴンガス等をプラズ
マノズル51へ供給する供給ホースである。
【0021】
101は半導体チップをプリント配線板の所定の位置に実装するときの超音波
振動を伝える接合ツール、106は超音波信号を発振する発振器、107は発振
器106の超音波振動源となる振動子、108は振動子からの超音波を接合ツー
ル101に伝導する超音波ホーンである。プリント配線板104はステージ10
3に載置され、図示しない保持手段により位置ずれしないように保持される。こ
のステージ103は超音波接合動作が行われているとき必要な場合は加熱手段を
備え、制御部2からの制御の下に所定の温度に加熱、維持される。105はプリ
ント配線板104に形成された半導体チップ204を超音波接合により実装する
ための電極である。
【0022】
次に、図3を用いて本発明の特徴であるプラズマ洗浄時の洗浄対象物の温度制
御手段に用いるパラメータの算出方法と温度制御手段の原理について説明する。
図3は、前述のようにプラズマノズルとプラズマ照射対象物(半導体チップ2
04)との距離を固定したときの、プラズマ電力を変化させたときのプラズマノ
ズル51の走査速度と半導体チップ204の温度との関係を示すグラフである。
【0023】
図3において、▲はプラズマ電力P=150Wに設定して、プラズマノズル5
1の走査速度を1.2mm/sec、5mm/sec、10mm/sec、25
mm/sec、および50mm/secとしたときの半導体チップ204の測定
温度値をプロットしたものである。■はプラズマ電力P=100Wに設定して、
同じようにプラズマノズル51の走査速度を変化させたときの半導体チップ20
4の測定温度値をプロットしたものである。また、◆はプラズマ電力P=50W
に設定して、同じようにプラズマノズル51の走査速度を変化させたときの半導
体チップ204の測定温度値をプロットしたものである。
【0024】
本発明においては、プラズマ洗浄処理はプラズマ照射を電極ごとに移動させつ
つ実行していく。このプラズマ照射時の被処理物(半導体チップ204)の温度
上昇は、公知である移動熱源の熱伝導式の考え方が適用できる。すなわち、プラ
ズマ電力とプラズマノズルの走査速度と被処理物(半導体チップ204)と温度
上昇の関係を式で表すと次の式(1)のようになる。
【0025】
ΔT = β・P・exp(α・v)・・・(1)
ここで、ΔTは被処理物の温度上昇、vはプラズマノズルの走査速度、Pはプ
ラズマ電力、αとβは被処理物の固有の常数である。
なお、ここでのαは被処理物の熱拡散率、βは被処理物の板厚や熱伝導率等を含
んだ固有パラメータであるが、式(1)では、便宜上これらのパラメータを総括
してαならびにβというそれぞれ一つの常数で取り扱うようにしている。
【0026】
図3に示す各プラズマ電力におけるプラズマノズル51の走査速度と温度上昇
の実測値は、公知である移動熱源の熱伝導式を用いた式(1)に示すように、指
数にて最小二乗近似すると概ね良く一致することがわかった。つまり、プラズマ
ノズルと被処理物との距離を一定に保持したとき、プラズマノズルの走査速度と
プラズマ電力を決定すれば、被処理物の温度が推定できるということである。
【0027】
この関係より、プラズマノズル51の走査速度と温度上昇について、プラズマ
電力P=50W、100W、150Wにおける指数による最小二乗近似から得た
それぞれの係数を線形近似することにより、半導体チップ204における被処理
物固有常数αとβの値を逆算して求めることができる。
【0028】
そこで、図3に示す各プラズマ電力におけるプラズマノズル51の走査速度と
温度上昇の実測値を用いて、半導体チップ204における被処理物固有常数αと
βを逆算して求めた結果、α=−0.0368、β=0.360が得られる。
【0029】
この値を式(1)に代入すると、
ΔT = 0.360・P・exp(−0.0368・v)
となり、この式に基づいて、任意のプラズマ電力とプラズマノズル51の走査速
度と半導体チップ204の温度との関係を求めることができる。
【0030】
図3に示す曲線は、この関係を示したものであり、横軸をプラズマノズル51
の走査速度、縦軸を半導体チップ204の温度とし、プラズマ電力をP=50W
、75W、100W、125W、150W、および175Wとした場合における
プラズマノズル51の走査速度を変化させたときの半導体チップ204の温度上
昇である。
【0031】
プラズマ電力とプラズマノズル51の走査速度と被処理物の温度上昇の実測値
から式(1)を用いて被処理物固有常数を求めることにより任意のプラズマ電力
とプラズマノズル51の走査速度と被処理物の温度上昇の関係を計算により算出
できる。
【0032】
したがって、式(1)と被処理物に応じた固有常数を制御部2の記憶部23に
記憶させておき、設定・表示部21から被処理物の温度上昇の許容値を設定する
ことで、複数プラズマ電力とプラズマノズル51の走査速度の組み合わせが算出
され、設定・表示部21に表示される。たとえば、図3から分かるように、温度
上昇を30℃に保持したい場合は、プラズマ電力としてP=150W、プラズマ
ノズルの走査速度としてv=10mm/sec等が組み合わせとして表示される
のである。
【0033】
そして、この表示の中から、所望の対となるプラズマ電力とプラズマノズル51
の走査速度を選択すると、選択されたプラズマ電力とプラズマノズル51の走査
速度の組み合わせが設定情報として演算部22を介して情報出力部25を通じて
プラズマ発生用のマイクロ波電源6とプラズマノズル移動手段5にそれぞれ伝え
られ、設定されたプラズマノズル走査速度で移動しつつ、設定されたプラズマ電
力が洗浄対象物に照射されるのである。
【0034】
なお、上述の説明では予め被処理物の固有常数を制御部2に記憶させておくこ
ととしたが、固有常数が未知の被処理物の場合でも本発明になる超音波接合装置
の制御部2に上記固有常数決定過程をプログラム化して登録しておくことで対応
できることは勿論のことである。
【0035】
次に本発明になる超音波接合方法を用いた半導体チップのプリント配線板への
接合動作について説明する。なお、上述の式(1)と何種類かの被処理物に応じ
た固有常数を制御部2に記憶しておき、別途設けた条件設定部からの設定に応じ
てプラズマ電力とプラズマ走査速度を決定し、プラズマノズル移動手段5を駆動
できるようにプログラムしておく。
【0036】
最初に、プラズマ洗浄の処理物、この処理物に応じた上昇温度の許容値とプラ
ズマ電力を別途設けた条件設定部から入力し、洗浄の条件を設定する。プラズマ
電力に変えて、プラズマノズル走査速度を設定してもよい。前述のように、プラ
ズマ電力とプラズマ走査速度は一義的な関係にあるからである。このようにして
、対象物に適応したプラズマ電力とプラズマノズル走査速度が決定される。
次に、この後の超音波接合装置の動作について説明する。
【0037】
半導体チップ106が接合されるプリント配線板104は、別途設けた搬送装
置(図示せず。)にて搬入され、ステージ103に供給され、このステージ10
3に保持、固定される。そして、必要に応じて制御部2からの制御の下に加熱さ
れ、所定の温度に保たれる。
【0038】
次いで、ウエハーシートから別途設けた半導体チップ取出装置(図示せず。)
により吸着して取り出された1個の半導体チップ204は、別途設けた半導体チ
ップ保持部材(図示せず。)に順次受け渡される。次いで、図1に示すように、
この半導体チップ204は、エア流路10により、接合ツール101に吸着固定
され、認識動作を経て、プリント配線板104の所定位置に位置決めされる。
【0039】
次いで、制御部2の制御の下にプラズマノズル移動手段5を駆動して、プラズ
マノズル51を半導体チップ204の直下の所定の距離を保持した位置に移動さ
せる。次いで、マイクロ波電源6を動作させてマイクロ波電力を発生させ、フレ
キシケーブル52を通じてプラズマノズル51に供給し、同時に、図示しないガ
スボンベからアルゴンガス等を供給ホース53から供給して大気圧中で連続して
プラズマを発生させ、半導体チップ204に形成された個々の電極206に順に
プラズマを照射し、この電極206を洗浄する。このときのプラズマの電力とプ
ラズマノズルの走査速度は上記条件設定に基づくものである。
【0040】
次いで、プラズマノズル移動手段5を半導体チップ204のプリント配線板1
04の所定の位置への接合に影響がない位置まで退避させた後、制御部2からの
加圧手段1へ下降指令が送られ、接合ツール101が下降される。そして、接合
ツール101に吸着されている半導体チップ204がプリント配線板104の所
定部分に当接される。この当接は圧力センサ3からの圧力情報が制御部2に伝達
されることにより、制御部2で検出できる。
【0041】
当接が確認されてから、制御部2は発振器106に所定の周波数での超音波信
号を発生させ、この超音波信号が振動子107に伝達され、ここで超音波振動に
変換され、超音波ホーン108を介して接合ツール101に伝達される。このと
き加圧手段1からの荷重も印加されている。この超音波振動と荷重はプリント配
線板104に与えられることになるので、半導体チップ204に形成された電極
206とプリント配線板104の各電極105とが金属接合される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態を示す超音波接合装置の概略斜視図である。
【図2】本発明になる超音波接合装置の制御部の内部構成を示す図である。
【図3】プラズマ電力とプラズマノズルの走査速度と半導体チップの温度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 荷重手段
2 制御部
3 加圧センサ
4 エンコーダ
5 プラズマノズル移動手段
6 マイクロ波電源
10 エア流路
21 設定・表示部
22 演算部
23 記憶部
24 情報入力部
25 情報出力部
51 プラズマノズル
52 フレキシケーブル
53 供給ホース
101 接合ツール
105 電極
106 発振器
107 振動子
108 超音波ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを実装するプリント配線板の対応する位置に位置合わせをしてか
ら、大気圧下でプリント配線板または半導体チップの電極部にプラズマを照射し
てこの電極部を洗浄し、その直後にプリント配線板の所定の電極部分に半導体チ
ップを載置し、半導体チップとプリント配線板の当接部分に超音波振動を印加し
ながら半導体チップをプリント配線板に実装する半導体チップの超音波接合方法
において、
プラズマノズルの走査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、およびプ
ラズマ電力を基に前記洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記洗
浄対象物の固有常数とを記憶しておき、前記洗浄対象物の上昇温度を設定するこ
とにより、この式から複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合
わせを算出し、この組み合わせの中から任意の一つの組み合わせを選択し、選択
されたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度で前記洗浄対象物を設定温度に
保持しつつ洗浄することを特徴とする半導体チップの超音波接合方法。
【請求項2】
前記上昇温度を求める式は、ΔTを前記洗浄対象物の温度上昇、vを前記プラ
ズマノズルの走査速度、Pを前記プラズマ電力、αとβを前記洗浄対象物の固有
常数とするとき、
ΔT = β・P・exp(α・v)
であることを特徴とする請求項1記載の半導体チップの超音波接合方法。
【請求項3】
半導体チップを実装するプリント配線板の対応する位置に位置
合わせをしてから、大気圧下でプリント配線板または半導体チップの電極部にプ
ラズマを照射してこの電極部を洗浄し、その直後にプリント配線板の所定の電極
部分に半導体チップを載置し、半導体チップとプリント配線板の当接部分に超音
波振動を印加しながら半導体チップをプリント配線板に実装する半導体チップの
超音波接合装置において、
プラズマノズルの走査速度、プラズマノズルと洗浄対象物との距離、およびプ
ラズマ電力を基に前記洗浄対象物の上昇温度を求める式とこの式に用いる前記洗
浄対象物の固有常数とを記憶する記憶部と、
設定温度を受けて前記記憶部に記憶されている式と固有常数から複数のプラズ
マ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合わせを算出する演算部と、
前記洗浄対象物に応じて上昇温度を前記設定温度として設定すること;前記演
算部からの複数のプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度の組み合わせを表示
すること;この組み合わせの中から任意の一つの組み合わせを選択することで選
択されたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度を設定することを行う設定・
表示部と、
この設定・表示部からの設定されたプラズマ電力とプラズマノズルの走査速度
と設定温度に基づいて前記洗浄対象物を洗浄する洗浄手段と、
を備えることを特徴とする半導体チップの超音波接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−4861(P2008−4861A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174867(P2006−174867)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000227836)日本アビオニクス株式会社 (197)
【Fターム(参考)】