説明

半導体パッケージおよび半導体パッケージの製造方法

【課題】PoPパッケージの信頼性を向上する。
【解決手段】PoPパッケージ10は、主面32aとその反対の裏面32bとを有する半導体チップ32と、半導体チップ32が実装された基板31と、基板31に積み重ねられた基板51と、を備えている。基板31の基板51側に設けられた外部接続パッド35に、基板51の基板31側に設けられた外部接続バンプ53が接続されて、基板31と基板53との間にギャップGが形成されている。ギャップGには、主面32aを対向させて基板31に実装した半導体チップ32と、半導体チップ32の裏面32bに貼り付けられた絶縁性フィルム32とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージおよびその製造技術に関し、特に、PoP(Package on Package:パッケージオンパッケージ)構造のものに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの電子機器における高機能化を可能にするための半導体パッケージ技術として、複数の半導体パッケージを積層した構造の、いわゆるPoP構造がある。
【0003】
特開2009−146969号公報(特許文献1)には、下側(被搭載側)の半導体パッケージ(以下、単に「下側パッケージ」ともいう。)と、上側(搭載側)の半導体パッケージ(以下、単に「上側パッケージ」ともいう。)とから構成されるPoP構造の半導体パッケージ(以下、単に「PoPパッケージ」ともいう。)が開示されている。この特許文献1のPoPパッケージでは、上側パッケージの基板と、下側パッケージの基板との間に、下側パッケージの基板にフリップチップ実装された半導体チップが設けられた構造となっている。
【0004】
なお、フリップチップ実装に関する技術が、特開2003−273259号公報(特許文献2)において開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−146969号公報
【特許文献2】特開2003−273259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器への搭載に際し、PoP構造の半導体パッケージには、小型化、薄型化が要求されてきている。このため、特許文献1に記載のような、PoPパッケージでは、下側パッケージおよび上側パッケージのそれぞれも小型化、薄型化する必要がある。下側パッケージは、例えば、基板に半導体チップがフリップ実装されたものである。一方、上側パッケージは、例えば、上側パッケージ用の基板に半導体チップがワイヤボンディング実装され、半導体チップおよびボンディングワイヤはモールド樹脂で封止されたものである。
【0007】
ところで、下側パッケージおよび上側パッケージに用いられる基板は、例えば、ガラス繊維入りのエポキシ系樹脂および配線パターンなどを含む配線基板であり、その配線基板の熱膨張係数は、14〜15ppm/K程度である。なお、半導体チップは、例えば、シリコンからなり、その熱膨張係数は、3ppm/K程度である。
【0008】
ガラス繊維入りのエポキシ系樹脂および配線パターンなどを含む配線基板は、半導体チップに対して、熱膨張係数が大きく、また、熱による膨張、収縮も大きい。このため、例えば、半導体チップを実装する際の加熱処理時に、半導体チップと基板との間の熱膨張係数の差によって熱応力が発生し、これに起因して基板に反りが発生する場合がある。例えば、図16に示すように、半導体チップ71を実装した状態の基板72では、基板72が上に凸となるような反りが発生してしまう。
【0009】
このような反りが発生したままの下側パッケージを用いたPoPパッケージでは、その信頼性が低下してしまうことが考えられる。また、反りが発生したままでは、製造過程において扱いにくく、またPoPパッケージの製造歩留まりも低下することが考えられる。
【0010】
具体的には、下側パッケージにおいては、基板とそれにフリップチップ実装した半導体チップとの間(接合部分)に注入したアンダーフィル樹脂を硬化させることに伴う加熱処理(例えば、150〜200℃程度)時の熱応力によって、反りが発生する場合がある。基板とチップとの間に設けられたアンダーフィル樹脂は、半導体チップと基板との間で生じる熱応力を抑制するために用いられる。しかしながら、PoPパッケージの薄型化の要求に対して下側パッケージの基板を薄くすると、このようなアンダーフィル樹脂を用いても反りが発生してしまう。
【0011】
また、下側パッケージと上側パッケージとを積み重ねて、下側パッケージの外部接続パッドと上側パッケージの外部接続バンプとを電気的に接続することに伴うリフロー加熱処理(例えば、250℃〜270℃程度)時の熱応力によって、下側パッケージに反りが発生する場合がある。なお、上側パッケージでは、その基板上の半導体チップがモールド樹脂で封止しているため、反りが発生することが防止されている。
【0012】
下側パッケージの反りの発生を防止するために、下側パッケージの半導体チップの厚さを厚くすることが考えられる。しかしながら、半導体チップ(シリコン)のコストが増加してしまい、PoPパッケージの製造コストが増加してしまう。
【0013】
また、下側パッケージの反りの発生を防止するために、下側パッケージの半導体チップもモールド樹脂で封止することが考えられる。このようにモールド樹脂で封止する場合、増加したモールド樹脂の厚さ分だけ下側パッケージと上側パッケージとの間のギャップを広くする必要があり、PoPパッケージとして厚さが増加してしまい、PoPパッケージの薄型化に反することとなる。また、下側パッケージの半導体チップの周辺においてモールド樹脂分だけ領域を確保する必要があり、PoPパッケージとして面積が増加してしまい、PoPパッケージの小型化に反することとなる。
【0014】
また、例えば、下側パッケージは、大判の基板から個片化されてなるものであるが、モールド樹脂で封止する場合、その厚みを確保するため大判の基板からの取れ数が減少してしまう。さらに、モールド樹脂で封止する場合、モールド金型代が高く、製造コストが増加してしまう。
【0015】
本発明の目的は、半導体パッケージの信頼性を向上することのできる技術を提供することにある。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
本発明の一実施形態における半導体パッケージは、第1面とその反対の第2面とを有する半導体チップと、前記半導体チップが実装された第1基板と、前記第1基板に積み重ねられた第2基板と、を備えている。前記第1基板の前記第2基板側に設けられた外部接続パッドに、前記第2基板の前記第1基板側に設けられた外部接続バンプが接続されて、前記第1基板と前記第2基板との間にギャップが形成されており、前記ギャップには、前記第1面を対向させて前記第1基板に実装した前記半導体チップと、該半導体チップの第2面に貼り付けられた絶縁性フィルムとが設けられている。
【0018】
なお、特許文献2には、フリップチップ実装構造において、半導体チップの背面に板部材が貼付されたものを用いる技術が開示されているが、前述したようなPoP構造およびその課題については開示も示唆もされていない。PoP構造では、下側パッケージと上側パッケージとは、所望の接続部の他は絶縁性が確保されなければならない。しかしながら、特許文献2では、板部材には例えばアルミニウムや銅を主成分としている(特許文献2の明細書段落[0006]参照)ことから、PoP構造に関しては考慮されていないと考えられる。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、半導体パッケージの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態におけるPoPパッケージの断面図を示す。
【図2】図1に示すPoPパッケージの製造工程中の断面図である。
【図3】図2に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図4】図3に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図5】図4に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図6】図5に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図7】図6に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態におけるPoPパッケージの断面図を示す。
【図9】図8に示すPoPパッケージの製造工程中の断面図である。
【図10】図9に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図11】図10に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図12】図11に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図13】図12に続く製造工程中のPoPパッケージの断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態におけるPoPパッケージの断面図を示す。
【図15】図14に示すPoPパッケージ要部の平面図である。
【図16】半導体チップを実装した状態の基板に発生する反りを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
(実施形態1)
まず、本実施形態におけるPoPパッケージ10の構造について説明する。図1に本実施形態におけるPoPパッケージ10の断面図を示す。PoPパッケージ10は、下側(被搭載側)の半導体パッケージ(以下、単に「下側パッケージ」ともいう。)30と、上側(搭載側)の半導体パッケージ(以下、単に「上側パッケージ」ともいう。)50とから構成されている。
【0023】
上側パッケージ50は、基板51と、基板51のチップ実装面上に実装された半導体チップ(図示しない)と、基板51上に設けられ、前記半導体チップを封止するモールド樹脂52と、基板51のチップ実装面とは反対の裏面に設けられ、前記半導体チップと電気的に接続された外部接続バンプ53とを備えている。
【0024】
基板51は、例えば、図示しない配線パターンなどを有する配線基板である。また、半導体チップは、基板51に複数実装されており、上側パッケージ50は、マルチチップパッケージ(MCP:Multi Chip Package)となっている。また、外部接続バンプ53は、例えば、はんだボールであり、その高さによって、下側パッケージ30と上側パッケージ50との間でギャップG(離間距離)を形成している。なお、ギャップGは、外部接続バンプ53の大きさ(高さ)に制限され、また、外部接続バンプ53の大きさによって、隣接する外部接続バンプ53のピッチが制限される。
【0025】
下側パッケージ30は、基板31と、基板31のチップ実装面上に実装され、主面(素子形成面)32aとその反対の裏面32b(図2参照)とを有する例えば平面矩形状の半導体チップ32と、半導体チップ32の裏面に貼り付けられた絶縁性フィルム33とを備えている。また、下側パッケージ30は、基板31と半導体チップ32との間に形成されたアンダーフィル樹脂39を備えている。なお、アンダーフィル樹脂39の熱膨張係数は、例えば55〜60ppm/K程度である。
【0026】
また、下側パッケージ30には、基板31のチップ実装面とは反対の裏面に、半導体チップ32と電気的に接続された外部接続バンプ34が設けられている。なお、この外部接続バンプ34は、外部接続パッドでも良い。
【0027】
基板31は、例えば、図示しない配線パターンなどを有する配線基板である。この基板31は、上側パッケージ50側に設けられた外部接続パッド35と、外部接続パッド35を露出するような開口部が形成された絶縁層36(例えばソルダレジスト)とを有している。半導体チップ32は、基板31上にフリップチップ実装されており、その主面32aに設けられた外部接続バンプ37と、基板31の外部接続パッド35の一部とは、導電性部材38(はんだ)を介して、電気的に接続されている。
【0028】
このように、PoPパッケージ10では、基板31の基板51側に設けられた外部接続パッド35に、基板51の基板31側に設けられた外部接続バンプ53が接続されて、基板31と基板51との間にギャップGが形成されている。このギャップGには、主面32aを対向させて基板31に実装した半導体チップ32と、半導体チップ32の裏面32bに貼り付けられた絶縁性フィルム33とが設けられている。
【0029】
これにより、下側パッケージ30およびそれを含むPoPパッケージ10の反りを防止することができ、PoPパッケージ10の信頼性を向上することができる。なお、本実施形態では、半導体チップ32の裏面32b全体を覆うように絶縁性フィルム33が設けられているが、これに限らず、半導体チップ32の裏面32bの中央部に絶縁性フィルムを貼り付けても、同様の効果を得ることができる。
【0030】
基板31上には半導体チップ32がフリップチップ実装されている。基板31は、例えば、ガラス繊維入りのエポキシ樹脂および配線パターンなどを含む配線基板であり、その熱膨張係数が14〜15ppm/K程度である。また、半導体チップ32は、例えば、シリコンからなり、その熱膨張係数が3ppm/K程度である。このように基板31と半導体チップ32とでは熱膨張係数差があるため、熱応力によって基板31が反ろうとする。そこで、本実施形態では、絶縁性フィルム33を半導体チップ32の裏面に貼り付け、基板31(下側パッケージ30)の反りを防止している。
【0031】
基板31の反りを防止するために、絶縁性フィルム33はその熱膨張係数や厚さを任意に選択することができる。絶縁性フィルム33の熱膨張係数が基板31より高いと、熱応力による基板31の反りを、反り戻そうとする方向に作用して、基板31(下側パッケージ30)の反りを防止することができる。また、絶縁性フィルム33の厚さを厚くすることにより、同様に、熱応力による基板31の反りを、反り戻そうとする方向に作用して、基板31(下側パッケージ30)の反りを防止することができる。
【0032】
また、PoPパッケージ10では、下側パッケージ30と上側パッケージ50とは、外部接続パッド35と外部接続バンプ53との接続部の他は絶縁性が確保されなければならない。そこで、本実施形態では、導電性ではなく、絶縁性のフィルムである絶縁性フィルム33を用いて、確実に絶縁性を確保している。
【0033】
また、前述したように、絶縁性フィルム33の厚さを厚くするほど、基板31の反りを防止することができる。しかしながら、絶縁性フィルム33の厚さの上限は、PoPパッケージ10のギャップGによって制限される。本実施形態では、絶縁性のフィルムである絶縁性フィルム33を用いているので、半導体チップ32の裏面に貼り付けられた絶縁性フィルム33が、上側パッケージ50の基板51と接触しても、絶縁性を確保することができる。
【0034】
このように、PoPパッケージ10では、ギャップGによって絶縁性フィルム33の厚さが制限されてしまう。このため、熱膨張係数を、基板31より高くした絶縁性フィルム33を用いることは、特に、有効となる。本実施形態では、例えば、絶縁性フィルム33としては、エポキシ系樹脂を用いることができる。このエポキシ系樹脂では、熱膨張係数が55〜60ppm/K程度である。また、ギャップGが例えば200μm程度、半導体チップ32の厚さが例えば50μm程度の場合、絶縁性フィルム33の厚さとしては、例えば、80μm〜130μm程度とすることができる。
【0035】
また、本実施形態におけるPoPパッケージ10のように、絶縁性フィルム33をアンダーフィル樹脂39に接して半導体チップ32の裏面に貼り付けることによって、絶縁性フィルム33とアンダーフィル樹脂39との接着性が強固となり、下側パッケージ30の反りを防止することができる。特に、絶縁性フィルム33とアンダーフィル樹脂39とを同一材料(例えば、エポキシ系樹脂)で用いることで、より接着性が強固となり、下側パッケージ30の反りを防止することができる。
【0036】
また、本実施形態におけるPoPパッケージ10では、アンダーフィル樹脂39にはフィレット39aが形成されており、絶縁性フィルム33は、そのフィレットにならって半導体チップ32の裏面に貼り付けられている。このため、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂39は、絶縁性フィルム33によって覆われることとなる。半導体チップ32を絶縁性フィルム33およびアンダーフィル樹脂39で被覆するため、半導体チップ32を保護することができる。また、半導体チップ32をモールド封止した場合と同様に封止(被覆)した構造となるため、下側パッケージ30の反りを防止することができる。
【0037】
次に、本実施形態におけるPoPパッケージ10の製造方法について説明する。図1に示すように、外部接続パッド35が形成された基板31を有する下側パッケージ30を準備する。また、外部接続バンプ53が形成された基板51を有する上側パッケージ50を準備する。そして、基板31に基板50を積み重ねて、例えば250℃〜270℃程度のリフロー炉内に送り、外部接続パッド35に外部接続バンプ53をリフロー処理によって接続する。これにより、PoPパッケージ10が略完成する。
【0038】
この下側パッケージ30は、次のようにして、製造することができる。図2に示すように、主面(素子形成面)32aとその反対の裏面32bとを有する半導体チップ32において、主面32a上に外部接続バンプ37を形成する。この外部接続バンプ37は、例えば、金バンプからなる。
【0039】
続いて、図3に示すように、半導体チップ32を、主面32aを対向させて基板31の所定の領域(チップ実装領域)にフリップチップ実装する。具体的には、治具60を用いて、荷重、加熱しながら、基板31に半導体チップ32をフリップチップ実装する。これにより、図4に示すように、半導体チップ32の外部接続バンプ37と、基板31の外部接続パッド35とは、接続部材38を介して電気的に接続される。なお、接続部材38は、予め、半導体チップ32の外部接続バンプ37と電気的に接続される基板31の外部接続パッド35に形成しておく。
【0040】
続いて、図4に示すように、基板31と半導体チップ32との間に、アンダーフィル樹脂39をノズル61から注入して埋め込み、図5に示すように、アンダーフィル樹脂39にフィレット39aを形成する。ここで、加熱処理(例えば、150〜200℃程度)を行って、アンダーフィル樹脂39を硬化させる。なお、基板31と半導体チップ32とでは熱膨張係数差があるため、熱応力によって基板31が反ろうとする力が作用している。
【0041】
続いて、半導体チップ32の裏面32bに、絶縁性フィルム33を貼り付けるため、図6に示すように、弾性を有する加圧部62(例えば、風船)によって、絶縁性フィルム33を、半導体チップ32の裏面32b側へ加圧して、フィレット39aにならって貼り付ける。加圧部62は弾性を有するので、絶縁フィルム33に均等に圧が加わるようになる。このようにして、図7に示すように、下側パッケージ30が略完成する。
【0042】
本実施形態によれば、絶縁性フィルム33をアンダーフィル樹脂39のフィレット39aにならって貼り付けることができるので、絶縁性フィルム33と、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂39との接着性が増加し、また、絶縁性フィルム33の剥がれを防止することができる。そして、下側パッケージ30ならびにPoPパッケージ10の反りを防止することができ、PoPパッケージ10の製造歩留まりを向上することができる。
【0043】
アンダーフィル樹脂39を硬化させる際の熱処理(処理温度が例えば150〜200℃程度)の際、主に、基板31と半導体チップ32との熱膨張係数差により発生する熱応力によって、下側パッケージ30の基板31には反ろうとする力が作用しようとする。また、下側パッケージ30と上側パッケージ50とを積層してリフロー処理で接続させる際の熱処理(処理温度が例えば250〜270℃程度)の際、主に、基板31と半導体チップ32との熱膨張係数差により発生する熱応力によって、下側パッケージ30の基板31には反ろうとする力が作用しようとする。
【0044】
そこで、本実施形態では、絶縁性フィルム33と、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂39との接着性を増加し、剥がれを防止しているので、基板31の反りを、反り返すように作用する絶縁性フィルム33の力を十分に発揮することができる。したがって、PoPパッケージ10の反りを防止することができる。
【0045】
(実施形態2)
前記実施形態1では、下側パッケージ30の基板31と、半導体チップ32との間に、液状のアンダーフィル樹脂を埋め込み、硬化することによって、フィレット39aが形成されたアンダーフィル樹脂39を用いた場合について説明した。本実施形態では、アンダーフィル樹脂として、NCF(Non Conductive Film:ノンコンダクティブフィルム)を用いる場合について説明する。なお、その他の構成は、前述しているので、その説明は省略する場合がある。
【0046】
まず、本実施形態におけるPoPパッケージ110の構造について説明する。図8に本実施形態におけるPoPパッケージ110の断面図を示す。PoPパッケージ110は、下側パッケージ130と、上側パッケージ50とから構成されている。PoPパッケージ110では、ギャップGには、主面32aを対向させて基板31に実装した半導体チップ32と、半導体チップ32の裏面に貼り付けられた絶縁性フィルム133とが設けられている。これにより、下側パッケージ130およびそれを含むPoPパッケージ110の反りを防止することができ、PoPパッケージ110の信頼性を向上することができる。
【0047】
半導体チップ32は、基板31上に設けられたNCFからなるアンダーフィル樹脂139に埋め込まれており、アンダーフィル樹脂139には、埋め込まれた半導体チップ32の裏面32bと同一平面の表面が形成されている。また、絶縁性フィルム133は、アンダーフィル樹脂139の表面と半導体チップ32の裏面32bで平らに貼り付けられている。絶縁性フィルム133は、平らに貼り付けることができるので、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂139との接着性を向上することができる。
【0048】
このため、半導体チップ32は、アンダーフィル樹脂139および絶縁性フィルム133によって覆われることとなる。半導体チップ32を絶縁性フィルム133で被覆するため、半導体チップ32を保護することができる。また、半導体チップ32をモールド封止した場合と同様に封止(被覆)した構造となるため、下側パッケージ130の反りを防止することができる。
【0049】
基板31の反りを防止するために、絶縁性フィルム133はその熱膨張係数や厚さを任意に選択することができる。絶縁性フィルム133の熱膨張係数が基板31より高いと、熱応力による基板31の反りを、反り戻そうとする方向に作用して、基板31(下側パッケージ130)の反りを防止することができる。また、絶縁性フィルム133の厚さを厚くすることにより、同様に、熱応力による基板31の反りを、反り戻そうとする方向に作用して、基板31(下側パッケージ130)の反りを防止することができる。
【0050】
また、PoPパッケージ110では、下側パッケージ130と上側パッケージ50とは、外部接続パッド35と外部接続バンプ53との接続部の他は絶縁性が確保されなければならない。そこで、本実施形態では、導電性ではなく、絶縁性のフィルムである絶縁性フィルム133を用いて、確実に絶縁性を確保している。
【0051】
また、絶縁性フィルム133の厚さを厚くするほど、基板31の反りを防止することができる。しかしながら、絶縁性フィルム133の厚さの上限は、PoPパッケージ110のギャップGによって制限される。本実施形態では、絶縁性のフィルムである絶縁性フィルム133を用いているので、半導体チップ32の裏面に貼り付けられた絶縁性フィルム133が、上側パッケージ50の基板51と接触しても、絶縁性を確保することができる。
【0052】
このように、PoPパッケージ110では、ギャップGによって絶縁性フィルム133の厚さが制限されてしまう。このため、熱膨張係数を、基板31より高くした絶縁性フィルム133を用いることは、特に、有効となる。本実施形態では、例えば、絶縁性フィルム133としては、エポキシ系樹脂を用いることができる。このエポキシ系樹脂では、熱膨張係数が55〜60ppm/K程度である。また、ギャップGが例えば200μm程度、半導体チップ32の厚さが例えば50μm程度の場合、絶縁性フィルム33の厚さとしては、例えば、80μm〜130μm程度とすることができる。
【0053】
また、本実施形態におけるPoPパッケージ110のように、絶縁性フィルム133をアンダーフィル樹脂139に接して半導体チップ32の裏面に貼り付けることによって、絶縁性フィルム133とアンダーフィル樹脂139との接着性が強固となり、下側パッケージ130の反りを防止することができる。特に、絶縁性フィルム133とアンダーフィル樹脂139とを同一材料(例えば、エポキシ系樹脂)で用いることで、より接着性が強固となり、下側パッケージ130の反りを防止することができる。
【0054】
次に、本実施形態におけるPoPパッケージ110の製造方法について説明する。図8に示すように、外部接続パッド35が形成された基板31を有する下側パッケージ130を準備する。また、外部接続バンプ53が形成された基板51を有する上側パッケージ50を準備する。そして、基板31に基板50を積み重ねて、例えば250℃〜270℃程度のリフロー炉内に送り、外部接続パッド35に外部接続バンプ53をリフロー処理によって接続する。これにより、PoPパッケージ110が略完成する。
【0055】
この下側パッケージ130は、次のようにして、製造することができる。図9に示すように、基板31の所定の領域(チップ実装領域)上にアンダーフィル樹脂139を形成する。具体的には、基板31上にNCFからなるアンダーフィル樹脂139を貼り付ける。
【0056】
続いて、図10に示すように、半導体チップ32を、主面32aを対向させて基板31のチップ実装領域に、アンダーフィル樹脂139を介して、フリップチップ実装する。具体的には、治具60を用いて、荷重、加熱しながら、基板31上に設けられたアンダーフィル樹脂139に、半導体チップ32の裏面32bと同一面の表面を形成するように、半導体チップ32を埋め込んで、基板31に半導体チップ32をフリップチップ実装する。これにより、半導体チップ32の外部接続バンプ37と、基板31の外部接続パッド35とは、接続部材38を介して電気的に接続される。
【0057】
続いて、加熱処理(例えば、150〜200℃程度)を行って、アンダーフィル樹脂39を硬化させる。これにより、図11に示すように、半導体チップ32は、基板31上に設けられたアンダーフィル樹脂139に埋め込まれ、そのアンダーフィル樹脂139には、埋め込まれた半導体チップ32の裏面32bと同一平面の表面が形成される。なお、基板31と半導体チップ32とでは熱膨張係数差があるため、熱応力によって基板31が反ろうとする力が作用している。
【0058】
続いて、半導体チップ32の裏面32bに、絶縁性フィルム133を貼り付けるため、図12に示すように、弾性を有する加圧部62(例えば、風船)によって、絶縁性フィルム133を、半導体チップ32の裏面32b側へ加圧して貼り付ける。加圧部62は弾性を有するので、絶縁フィルム133に均等に圧が加わるようになる。
【0059】
このとき、アンダーフィル樹脂139を覆う程度に、アンダーフィル樹脂139より大きい絶縁性フィルム133を用いることで、アンダーフィル樹脂139に接して半導体チップ32の裏面32bに貼り付けることができる。また、アンダーフィル樹脂139に埋め込まれた半導体チップ32の裏面32bと同一平面の表面が、アンダーフィル樹脂139に形成されているので、アンダーフィル樹脂139の表面と半導体チップ32の裏面32bで、絶縁性フィルム133を平らに貼り付けることができる。このようにして、図13に示すように、下側パッケージ130が略完成する。
【0060】
本実施形態によれば、絶縁性フィルム133を半導体チップ32の裏面32bおよびアンダーフィル樹脂139に平らに貼り付けることができるので、絶縁性フィルム133と、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂139との接着性が増加し、また、絶縁性フィルム133の剥がれを防止することができる。そして、下側パッケージ130ならびにPoPパッケージ110の反りを防止することができ、PoPパッケージ110の製造歩留まりを向上することができる。
【0061】
アンダーフィル樹脂139を硬化させる際の熱処理(処理温度が例えば150〜200℃程度)の際、主に、基板31と半導体チップ32との熱膨張係数差により発生する熱応力によって、下側パッケージ30の基板31には反ろうとする力が作用しようとする。また、下側パッケージ130と上側パッケージ50とを積層してリフロー処理で接続させる際の熱処理(処理温度が例えば250〜270℃程度)の際、主に、基板31と半導体チップ32との熱膨張係数差により発生する熱応力によって、下側パッケージ130の基板31には反ろうとする力が作用しようとする。
【0062】
そこで、本実施形態では、絶縁性フィルム133と、半導体チップ32およびアンダーフィル樹脂139との接着性を増加し、剥がれを防止しているので、基板31の反りを、反り返すように作用する絶縁性フィルム133の力を十分に発揮することができる。したがって、PoPパッケージ110の反りを防止することができる。
【0063】
(実施形態3)
前記実施形態1では、基板31のチップ実装領域を覆うように絶縁性フィルム33を設けた場合について説明した。本実施形態では、基板31のチップ実装面全体を覆うように絶縁フィルムを設ける場合について説明する。なお、その他の構成は、前述しているので、その説明は省略する場合がある。
【0064】
本実施形態におけるPoPパッケージ210の構造について説明する。図14に本実施形態におけるPoPパッケージ210の断面図を示す。また、図15にPoPパッケージ210に用いられる絶縁性フィルム233の平面図を示す。なお、図15は平面図であるが、説明を明解にするために、ハッチングを付し、また、半導体チップ32と貼り付けられる領域を破線で示している。
【0065】
図14に示すように、PoPパッケージ210は、下側パッケージ230と、上側パッケージ50とから構成されている。PoPパッケージ210では、ギャップGには、主面32aを対向させて基板31に実装した半導体チップ32と、半導体チップ32を覆うように半導体チップ32の裏面32bおよび基板31のチップ実装面全体に貼り付けられた絶縁性フィルム233とが設けられている。
【0066】
この絶縁性フィルム233は、図15に示すように、基板31の外部接続パッド35を露出するための開口部233aを有している。この開口部233aにおいて、上側パッケージ50の外部接続バンプ53が貫通するようにして、下側パッケージ230の外部接続パッド35と電気的に接続される。
【0067】
このように、基板31の一部のチップ実装領域の他に、基板31のチップ実装面全体を覆うように絶縁フィルム233を貼り付けることで、下側パッケージ230およびそれを含むPoPパッケージ210の反りをより防止することができ、PoPパッケージ210の信頼性を向上することができる。
【0068】
また、上側パッケージ50の外部接続バンプ53がはんだボールの場合、リフロー処理することによって、はんだボールが溶融する。このとき、溶融したはんだが絶縁性フィルム233の開口部233aを埋め込むようにして、外部接続パッド35と、外部接続バンプ53とが電気的に接続される。この接続箇所は上側パッケージ50と下側パッケージ230と接続において、熱応力がかかりやすい箇所である。絶縁性フィルム233の開口部233aにはんだが埋め込まれることで、接続強度を増加し、PoPパッケージ210の信頼性を向上することができる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0070】
前記実施形態では、下側パッケージに半導体チップをフリップチップ実装に適用した場合について説明したが、半導体チップをワイヤボンディング実装した半導体パッケージにも適用することができる。ワイヤボンディング実装の場合、例えば、半導体チップの主面の外側からボンディングワイヤが引き出される。このため、絶縁性フィルムを半導体チップの内側に貼り付ければ良い。
【符号の説明】
【0071】
10、110、210 PoPパッケージ
30、130、230 下側パッケージ
31 基板
32 半導体チップ
32a 主面
32b 裏面
33、133、233 絶縁性フィルム
34 外部接続バンプ
35 外部接続バンプ
36 絶縁層
37 外部接続バンプ
38 接続部材
39、139 アンダーフィル樹脂
39a フィレット
50 上側パッケージ
51 基板
52 モールド樹脂
53 外部接続バンプ
60 治具
61 ノズル
62 加圧部
71 半導体チップ
72 基板
233a 開口部
G ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその反対の第2面とを有する半導体チップと、
前記半導体チップが実装された第1基板と、
前記第1基板に積み重ねられた第2基板と、
を備えた半導体パッケージであって、
前記第1基板の前記第2基板側に設けられた外部接続パッドに、前記第2基板の前記第1基板側に設けられた外部接続バンプが接続されて、前記第1基板と前記第2基板との間にギャップが形成されており、
前記ギャップには、前記第1面を対向させて前記第1基板に実装した前記半導体チップと、該半導体チップの第2面に貼り付けられた絶縁性フィルムとが設けられていることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項2】
請求項1記載の半導体パッケージにおいて、
前記半導体チップは、前記第1基板にフリップチップ実装されており、
前記第1基板と前記半導体チップとの間には、アンダーフィル樹脂が設けられており、
前記絶縁性フィルムは、前記アンダーフィル樹脂に接して前記半導体チップの第2面に貼り付けられていることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項3】
請求項2記載の半導体パッケージにおいて、
前記アンダーフィル樹脂にはフィレットが形成されており、
前記絶縁性フィルムは、前記フィレットにならって前記半導体チップの第2面に貼り付けられていることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項4】
請求項2記載の半導体パッケージにおいて、
前記半導体チップは、前記第1基板上に設けられた前記アンダーフィル樹脂に埋め込まれており、
前記アンダーフィル樹脂には、埋め込まれた前記半導体チップの第2面と同一平面の表面が形成されており、
前記絶縁性フィルムは、前記アンダーフィル樹脂の表面と前記半導体チップの第2面では平らに貼り付けられていることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体パッケージにおいて、
前記絶縁性フィルムは、前記半導体チップを覆うように、前記半導体チップおよび前記第1基板の実装面全体に貼り付けられており、
前記絶縁性フィルムは、前記外部接続パッドを露出する開口部を有していることを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体パッケージにおいて、
前記絶縁性フィルムは、熱膨張係数が前記第1基板より高いことを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項7】
(a)外部接続パッドが形成された第1基板を準備する工程と、
(b)外部接続バンプが形成された第2基板を準備する工程と、
(c)前記第1基板に前記第2基板を積み重ねて、前記外部接続パッドに前記外部接続バンプをリフロー処理によって接続する工程と、
を含む半導体パッケージの製造方法であって、
前記(a)工程には、
(a1)第1面とその反対の第2面とを有する半導体チップを、前記第1面を対向させて前記第1基板に実装する工程と、
(a2)前記半導体チップの第2面に、絶縁性フィルムを貼り付ける工程と、
が含まれていることを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体パッケージの製造方法において、
前記(a1)工程では、前記第1基板に前記半導体チップをフリップチップ実装し、
前記(a1)工程の後、前記第1基板と前記半導体チップとの間に、アンダーフィル樹脂を埋め込み、フィレットを形成し、
前記(a2)工程では、前記フィレットにならって前記半導体チップの第2面に、前記絶縁性フィルムを貼り付けることを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の半導体パッケージの製造方法において、
前記(a1)工程前に、前記第1基板上にアンダーフィル樹脂を形成しておき、
前記(a1)工程では、前記アンダーフィル樹脂を介して前記第1基板に前記半導体チップをフリップチップ実装し、
前記(a2)工程では、前記アンダーフィル樹脂に接して前記半導体チップの第2面に前記絶縁性フィルムを貼り付けることを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体パッケージの製造方法において、
前記(a1)工程では、前記第1基板上に設けられた前記アンダーフィル樹脂に、前記半導体チップの第2面と同一面の表面を形成するように、前記半導体チップを埋め込んで、前記第1基板に前記半導体チップをフリップチップ実装し、
前記(a2)工程では、前記アンダーフィル樹脂の表面と前記半導体チップの第2面で、前記絶縁性フィルムを平らに貼り付けることを特徴とする半導体パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−9655(P2012−9655A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144754(P2010−144754)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】