説明

半導体リレー

【課題】容易にスイッチング特性を制御可能な半導体リレーを提供する。
【解決手段】入力信号によって点灯・消灯する発光素子100と、発光素子100と光路を介して光結合せしめられ、起電力を発生する光電変換素子200からなる受光素子と、この受光素子で生起された電力によってスイッチングするスイッチング用半導体素子からなる出力素子300とを具備した半導体リレーであって、前記光路の少なくとも一部に蛍光体粒子Lmを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体リレーに係り、特にその実装に関する。
【背景技術】
【0002】
光結合型の半導体リレーは、オン抵抗が小さく、微小アナログ信号を制御することができ、小型であることから、種々の用途に用いられている。半導体リレーは図7及び図8に斜視図および断面概要図の一例を示すように、発光素子(LED)100と、光電変換素子200と、スイッチング素子からなる出力素子300とを具備している。この発光素子は、入力信号によって点灯・消灯する。また光電変換素子200は、この発光素子100からの光信号を受け、光電変換によって起電力を発生する光電変換素子に加え、この光電変換素子の発生する電力を充放電する制御回路とを含む。そして出力素子300は、この光電変換素子200の出力電圧によりスイッチングする、MOSFETなどで構成される。そして、MOSFETのゲート電圧が設定電圧値に到達するとMOSFETが導通状態になり、負荷をONさせるように構成されている。ここで1は入力端子を構成する第1のリード、2は出力端子を構成する第2のリード、3は樹脂パッケージである。
【0003】
このような光結合型の半導体リレーにおいて、小型化、低背化を目指して種々の研究がなされている。
例えば、ガラス基板を介して発光素子と受光素子とを対向配置した光結合装置が提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
さらにまた、透光性の絶縁フィルムを介して発光素子と受光素子とを対向配置した光結合装置も提案されている(特許文献3)。
【0005】
また、受光素子をガラス層などの透光性の絶縁層で被覆し、その上層に発光素子を対向配置させた光結合装置も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−90576号公報
【特許文献2】特許第3415369号
【特許文献3】特開平6−196748号公報
【特許文献4】特開2008−172058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至4では、発光素子と受光素子とは透光性部材を介して相対向して設けられており、半導体リレーのオフ時間は、発光素子の輝度や受光素子の放電回路定数により定められる。
このため、半導体リレーのスイッチング時間は発光素子と受光素子とにより決まる。
たとえば、この半導体リレーの負荷としてコイルなどの誘導性部材が接続されている場合、急激に回路が切断されると、逆起電圧が発生し、負荷を損傷したり、破壊したりするという不都合がある。
そこで、複雑な回路構成を追加することなく、スイッチング特性を制御可能な半導体リレーが求められている。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、容易にスイッチング特性を制御可能な半導体リレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、入力信号によって点灯または消灯する発光素子と、前記発光素子と光路を介して光結合せしめられ、起電力を発生する受光素子と、前記受光素子で生起された電力によってスイッチングするスイッチング用半導体素子からなる出力素子とを具備した半導体リレーであって、前記光路の少なくとも一部に蛍光体粒子を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記発光素子と前記受光素子は相対向して配置されており、前記発光素子と前記受光素子との間に蛍光体粒子を含むものを含む。
【0010】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記受光素子の受光領域に、蛍光体粒子を含む透光性樹脂が配されたものを含む。
【0011】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記受光素子の受光領域が、蛍光体粒子を含む透光性膜で被覆されたものを含む。
【0012】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記透光性樹脂は、前記受光素子の受光領域を覆うように形成されたレンズであり、前記レンズ上に発光素子が搭載されたものを含む。
【0013】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記発光素子および前記受光素子は、蛍光体粒子を含有する透光性基板の相対向する面上に形成されたものを含む。
【0014】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記透光性基板は可撓性の基板であるものを含む。
【0015】
また、本発明は、上記半導体リレーであって、前記透光性基板はガラスであるものを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体リレーによれば、発光素子と受光素子とをつなぐ光路中に蛍光体を含む材料を設けているため、オン時に発光素子からの光を吸収した蛍光体が、オフ時にはその自発光により、残光時間分だけ受光素子への光の供給を続行することができる。
また、蛍光体の濃度や素材により残光時間を調整することで、オフ時間を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体リレーの概略構成を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体リレーの上面図
【図3】(a)乃至(c)は、本発明の実施の形態1に係る発光素子の出力特性、受光素子の出力特性及び出力素子の出力特性を示す図、図中、波線は蛍光体粒子を含有しない透光性樹脂を用いた従来例の半導体リレーの場合を示す
【図4】本発明の実施の形態2に係る半導体リレーの断面図
【図5】本発明の実施の形態3に係る半導体リレーの断面図
【図6】本発明の実施の形態4に係る半導体リレーの断面図
【図7】従来例の半導体リレーの概略構成を示す断面図
【図8】従来例の半導体リレーの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体リレーについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1および2は、本発明の実施の形態1に係る半導体リレーを示す断面図、および上面図である(図1は図2のA−A断面図である)。図2は、図1の第1および第2のリード1,2の位置における断面図に相当する。ここで図2において発光素子100は見えないはずであるが説明のために記載している。
本発明の半導体リレーでは、受光素子を構成する光電変換素子200の受光領域と発光素子100との間に蛍光体粒子Lmを含む透光性樹脂4が配されたことを特徴とする。
この半導体リレーは、発光素子100としてのLED、光電変換装置200としての太陽電池ICとの間が、蛍光体粒子を含む透光性樹脂4で覆われている。そしてその外側はエポキシ樹脂などの遮光性樹脂5で封止される。
【0020】
ここで、発光素子100は、リードフレームの第1のリード1の先端に設けられたパッドに実装されている。また光電変換素子200および出力素子300は、リードフレームの第2のリード2の先端に設けられたパッドに実装されており、これら第1および第2のリード1,2は、樹脂パッケージ3の同じ高さから側方に導出されている。6は電気的接続のためのボンディングワイヤである。
【0021】
図3にこの半導体リレーにおける、発光素子100の発光プロファイルと受光素子を構成する光電変換素子200の動作状態と、出力とを模式的に示す。(a)は発光素子100の発光状態を示す図、(b)は受光素子の動作状態、(c)は出力を示す。(b)、(c)において、蛍光体粒子を含む透光性樹脂4を用いた場合、蛍光体粒子を含まない透光性樹脂を用いた場合を破線で示す。これらの比較から、残光により徐々に出力をOFFとすることができる。
【0022】
このように、本発明の半導体リレーによれば、発光素子と受光素子とをつなぐ光路に相当する領域全体を蛍光体を含む透光性樹脂で構成しているため、オン時に発光素子からの光を吸収した蛍光体が、オフ時にはその自発光により、残光時間分だけ受光素子への光の供給を続行することができる。
また、蛍光体の濃度や素材により残光時間を調整することで、オフ時間を制御することができる。
【0023】
本実施の形態で用いられる蛍光体を含む透光性樹脂は、蛍光体粒子を透光性樹脂材料と混合し、溶媒などを添加して所望の粘度とし、所望の領域にポッティングなどで供給され、乾燥および硬化することで、得られる。
【0024】
本実施の形態において使用可能な蛍光体粒子としては、適宜選択可能であるが、例えば二価の金属のアルミン酸塩を母体結晶としたものに賦活剤として希土類元素を加えたものなどが利用可能である。二価の金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛などが使用可能である。また、希土類元素としてはセリウム、プラセオジム、ネオジム、サマルウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどが使用可能であり、これらの希土類元素は単独で用いられてもよくまた複数で用いられてもよい。なかでも、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、CaAl:Eu,Nd、SrAl141425:Eu,Dy等が好適に用いられる。
【0025】
本実施の形態において使用可能な蛍光体粒子を含む母材樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用可能である。たとえば樹脂を粉体にし、バインダーなどとともに、塗布あるいはポッティングなどで所望の領域に供給し、硬化させることによって用いられる。バインダーは少なくとも樹脂成分を有するが、これに必要に応じて可塑剤、着色剤黄変防止剤等の添加剤からなる組成物を練り合わせ、粉体化して用いられる。含有される成分を、無色透明なものにすることにより蓄光性材料となる蛍光体粒子の輝度を損なわず、その発光性を良好にすることができる。樹脂成分としては熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂系等のポリオレフィン樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリアミド系、エチレン−酢酸ビニル樹脂系、フッ素樹脂系、ポリエステル系などが使用可能である。また、熱硬化性樹脂系ではエポキシ樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系とポリエステル樹脂系からなるハイブリッド系、アクリル樹脂系、アクリル樹脂系とポリエステル樹脂系からなるハイブリッド系、フッ素樹脂系などが使用可能である。ポリ塩化ビニル樹脂系の樹脂を使用するときは、安定剤として鉛などの重金属を含有する化合物を使用する場合、蓄光性材料である蛍光体粒子と反応し残光性能を害するため、重金属は排除するのが望ましい。また、その他の樹脂系においても、反応触媒や安定剤などの添加剤として鉛、錫などの重金属を含有する化合物を使用することは同様の理由で含有しないようにするのが望ましい。
【0026】
実際には、各原料を秤量し、プレミキシングした後、練り合わせ、ついで粉砕機で粉砕し、篩で粗粒子を除き、エポキシ樹脂粉体塗料を得る。このエポキシ樹脂粉体塗料に蓄光性蛍光体とを配合しミキサーにより、攪拌混合し、さらに篩を通し、蓄光性蛍光体粉体塗料を得る。これに所望の溶媒を加え、粘度を調整し、ポッティングを行う。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る半導体リレーを示す断面図である。
本発明の半導体リレーでは、図4に示すように、受光素子を構成する光電変換素子200の表面の受光領域に蛍光体粒子を含む透光性樹脂14を設けている。また蛍光体粒子を含む透光性樹脂14が形成された領域の周りは透光性樹脂40がポッティングされており、その外側は遮光性樹脂5で樹脂封止がなされている。他部については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
この構成によれば、前記実施の形態1の半導体リレーに比べて、製造が容易であり、かつ大きな工程変更を行うことなく形成することができる。
【0029】
この場合は、実施の形態1の半導体リレーの場合よりも、溶媒を多くし、低粘度にした状態で蛍光体を含む透光性樹脂を用い、受光領域に供給するようにするのが望ましい。
実際には、各原料を秤量し、プレミキシングした後、練り合わせ、ついで粉砕機で粉砕し、篩で粗粒子を除き、エポキシ樹脂粉体塗料を得る。このエポキシ樹脂粉体塗料に蓄光性蛍光体とを配合しミキサーにより、攪拌混合し、さらに篩を通し、蓄光性蛍光体粉体塗料を得る。これに所望の溶媒を加え、粘度を調整し、ディスペンサで所望の領域に供給し、加熱硬化することで、光電変換素子200の表面の受光領域に蛍光体粒子を含む透光性樹脂14が形成される。
【0030】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る半導体リレーを示す断面図である。
本発明の半導体リレーでは、図5に示すように、受光素子を構成する光電変換素子200の表面の受光領域に蛍光体粒子を含む透光性樹脂膜24を設けている。ここでは、蛍光体粒子を含む透光性樹脂膜24として、蛍光体シートを貼着している。さらに蛍光体粒子を含む透光性樹脂膜24が形成された領域の周りは透光性樹脂40がポッティングされており、その外側は遮光性樹脂5で樹脂封止がなされている。他部については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0031】
この構成によれば、蛍光体シートすなわち蛍光体粒子を含む透光性樹脂膜24を用いているため、前記実施の形態1に比べて、製造が容易であり、更なる工数の簡略化をはかることができる。
また、透光性樹脂を塗布、硬化することで透光性樹脂膜24を得ることができるため、工数の低減を図ることが可能となる。
【0032】
ここで蛍光体シートとは、基布表面に蛍光体粒子を含む樹脂膜を形成したもの(例えば特開2008−12901号公報参照)で、受光素子表面に貼るだけでよく、取扱がきわめて容易である。この蛍光体シートで用いられる蛍光体粒子あるいは樹脂としては前記実施の形態1と同様であり、適宜変更可能であることはいうまでもない。
また、蛍光体粒子を含む透光性樹脂膜24として蛍光体シートを発光素子100の表面に貼着してもよい。
【0033】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る半導体リレーを示す断面図である。
本発明の半導体リレーでは、図6に示すように、受光素子を構成する光電変換素子200と発光素子100とを並置し、これらを一体的に蛍光体粒子を含む透光性樹脂34で覆うようにしている。他部については前記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0034】
この構成によっても、発光素子と受光素子とをつなぐ光路に相当する領域全体を蛍光体粒子を含む透光性樹脂34で構成しているため、オン時に発光素子からの光を吸収した蛍光体が、オフ時にはその自発光により、残光時間分だけ受光素子への光の供給を続行することができる。
また、蛍光体の濃度や素材により残光時間を調整することで、オフ時間を制御することができる。
【0035】
なお前記実施の形態では、スイッチング用半導体素子としてMOSFETを用いたが、これに限定されることなく、フォトカプラなどの他の半導体素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 第1のリード
2 第2のリード
3 樹脂パッケージ
4 透光性樹脂
Lm 蛍光体粒子
5 遮光性樹脂
6 ボンディングワイヤ
100 発光素子
200 光電変換素子
300 出力素子(MOSFET)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号によって点灯または消灯する発光素子と、
前記発光素子と光路を介して光結合せしめられ、起電力を発生する受光素子と、
前記受光素子で生起された電力によってスイッチングするスイッチング用半導体素子からなる出力素子とを具備した半導体リレーであって、
前記光路の少なくとも一部に蛍光体粒子を含む半導体リレー。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体リレーであって、
前記発光素子と前記受光素子は相対向して配置されており、
前記発光素子と前記受光素子との間に蛍光体粒子を含む透光性樹脂が配された半導体リレー。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体リレーであって、
前記受光素子の受光領域に、蛍光体粒子を含む透光性樹脂が配された半導体リレー。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体リレーであって、
前記受光素子の受光領域が、蛍光体粒子を含む透光性膜で被覆された半導体リレー。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体リレーであって、
前記透光性樹脂は、
前記受光素子の受光領域を覆うように形成されたレンズであり、
前記レンズ上に発光素子が搭載された半導体リレー。
【請求項6】
請求項1または2に記載の半導体リレーであって、
前記発光素子および前記受光素子は、蛍光体粒子を含有する透光性基板の相対向する面上に形成された半導体リレー。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体リレーであって、
前記透光性基板は可撓性の基板である半導体リレー。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体リレーであって、
前記透光性基板はガラスである半導体リレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−90187(P2012−90187A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236902(P2010−236902)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】