説明

半導体レーザ光記録装置およびこれを用いた画像形成装置

【課題】光記録装置の光源である半導体レーザのチップ温度の測定を半導体レーザ光出力の検出に従って実施し、ドループ、熱的クロストークの補正制御、波長変化に起因する感光体の感度変化の補正制御を行い、また半導体レーザに加えるバイアス電流値を常時最適値に設定する。
【解決手段】半導体レーザから出射される半導体レーザ光を光記録材料上に走査させて光記録を行う光記録装置において、半導体レーザ光出力の検出は、エタロンに入射された半導体レーザ光の透過光と反射光をフォトダイオードで検出して達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから出射する光ビームを走査し、光記録する光記録装置よびこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速レーザプリンタを実現するためには、回転多面鏡の回転速度を高速化し光走査の繰返しを早くすること、また、印刷するデータに対応して高速光変調を用いる必要がある。マルチビーム半導体レーザを用いたレーザプリンタは、マルチビームの本数分だけ回転多面鏡の回転速度、および光変調速度を低減できるので高速化にはきわめて有効な手段である。
【0003】
マルチビームを有する光源手段としては、特許文献1に開示されているように複数の発光源がアレイ状に配列された半導体レーザアレイを用いた光源方式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−301179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷の高速化、高精細化が進むと、マルチビームの本数を増やしさらに多ビーム化する必要が生じてくる。しかし半導体レーザアレイが多ビーム化のために多チャンネルを持つ構成にすると、半導体レーザチップ内で発生する熱量が増大して半導体レーザチップ温度が上昇し、レーザの光出力が低下するドループ、熱的クロストークなどの現象が顕著となる。
【0006】
また、半導体レーザの発熱によって閾値電流が変化するため半導体レーザに加える最適なバイアス電流値も変化する。バイアス電流は半導体レーザを余熱する働きを持ち、半導体レーザをONした時の温度変化を小さくし、ドループや熱的クロストークを抑制する作用を持つ。バイアス電流値が閾値電流よりも大きいと、半導体レーザをOFFにした状態でもレーザ発光してしまう。またバイアス電流が小さいと、ドループや熱的クロストークを抑制する働きが小さくなる。従ってバイアス電流は常時最適値に設定する必要がある。
【0007】
さらに、チップ温度の上昇はレーザ発振波長の上昇をもたらし、レーザプリンタの感光体感度が変化して画像品質を劣化させる現象が生じる。
【0008】
もし半導体レーザチップ温度が正確に把握できれば、半導体レーザ自身の発熱による出力低下であるドループ量や他チャンネルの発熱による熱的クロストークによる出力低下量を予測することができる。従って予測された出力低下に応じて光量制御によりあらかじめドループやクロストークの補正制御が可能となり、感光体感度変化の補正制御も可能となる。また、半導体レーザに加えるバイアス電流を最適値に設定することができる。
【0009】
しかしながら従来技術では半導体レーザチップ温度の正確な測定は困難であり、半導体レーザの制御を精度よく行うことは難しかった。
【0010】
本発明の目的は、光記録装置の光源である半導体レーザのチップ温度の測定を容易に可能とし、ドループや熱的クロストークの補正制御、波長変化に起因する感光体の感度変化を補正する制御、また、半導体レーザに加えるバイアス電流値を常時、最適値に設定することを可能とした光記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は 半導体レーザ光源と半導体レーザ光制御回路を有し、前記半導体レーザ光源から出射される半導体レーザ光を光記録材料上に走査させて光記録を行う光記録装置において、
前記半導体レーザ光出力を検出するレーザ光出力検出手段と、前記レーザ光出力検出手段で検出された半導体レーザ光の出力値から半導体レーザ光の波長を決定する波長決定手段と、前記波長決定手段により決定された半導体レーザ光の波長から半導体レーザの温度を決定する半導体レーザ温度決定手段を設け、前記半導体レーザ温度決定手段により決定された半導体レーザの温度に基づき、半導体レーザのドループ量と熱的クロストーク量を算出し、算出された前記ドループ量と前記熱的クロストーク量を補正する光制御を行う様に前記半導体レーザ光制御回路を駆動して半導体レーザ光の出力を一定に保つことを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射するエタロンと、前記エタロンに入射されたレーザ光の透過光および反射光の光量を検出する検出器とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射されるエタロンと、前記エタロンに入射された半導体レーザ光の透過光の光量を検出する光検出器とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射されるエタロンと、前記エタロンに入射された半導体レーザ光の反射光の光量を検出する光検出器とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、前記光記録装置のレーザ光出力検出手段において、前記エタロンに入射される前記半導体レーザ光の入射光を検出する光検出器を有することを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記光記録装置において、前記エタロンを透過する半導体レーザ光の透過光と、前記エタロンを反射する半導体レーザ光の反射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記光記録装置において、前記エタロンを透過する半導体レーザ光の透過光と、前記エタロンに入射する半導体レーザ光の入射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記光記録装置において、前記エタロンを反射する半導体レーザ光の反射光と、前記エタロンに入射する半導体レーザ光の入射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段内で前記エタロンに入射される半導体レーザ光は、前記半導体レーザ光源から出射される半導体レーザ光を分岐したものであることを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記光記録装置において、前記半導体レーザ光源は半導体レーザアレイであることを特徴とする。
【0021】
本発明は、前記光記録装置によって、潜像が形成される感光体と、前記感光体上の潜像を現像し、画像を形成する現像装置と、前記現像された画像を用紙上に転写する転写装置と、前記用紙上に転写された画像を用紙上に定着する定着装置とを有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、前記半導体レーザの波長を決定する波長決定手段と、決定された半導体レーザ波長から半導体レーザ温度を決定する半導体レーザ温度決定手段とを備え、決定された半導体レーザ温度に基づき前記レーザ制御回路を駆動することにより、光記録装置の光源である半導体レーザチップ温度を決定し、半導体レーザ温度上昇による半導体レーザのドループ、熱的クロストークの補正制御、半導体レーザ波長変化に起因する感光体感度変化の補正制御、および半導体レーザに加えるバイアス電流値の最適化制御を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の光記録装置光学系の構成を示すブロック図である。
【図2】半導体レーザの温度と発振波長との関係を示す特性図である。
【図3】本発明で使用するエタロンの、入射ビームの波長と透過光、反射光の規格化光出力との関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る光記録装置光学系の概略図である。
【図5】本発明の第2の実施例に係る光記録装置光学系の概略図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係る光記録装置光学系の概略図である。20
【図7】本発明の光記録装置である画像形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明実施例を図面に基づいて説明する。本発明はいうまでもなくこれら実施例に限定されるものではない。
【0025】
図1に本発明の基本構成をブロック図で示す。レーザ制御回路100で駆動される半導体レーザ1は、その出力を用いて光記録装置200により記録を行う。このとき半導体レーザ1の出力をレーザ出力検出手段300により検出し、図3に示す特性図データを含み半導体レーザ波長を決定するレーザ波長決定手段400で半導体レーザ波長を決定する。これにより図2に示す特性図データを有する半導体レーザ温度決定手段500によりレーザ温度を決定し、上述した半導体レーザの最適制御を行う。レーザ波長決定手段400、半導体レーザ温度決定手段500は、特性図データを記録したメモリを含むマイコン制御回路から構成することができ、レーザ制御回路100と一体に形成することもできる。またハードロジック回路から構成することもできる。
【0026】
多重干渉を利用した狭帯域フィルタであるファブリペロエタロンによるアレイ素子からなる半導体レーザ1のチップ温度、発振波長測定原理を図2、図3を用いて説明する。あらかじめ与えられている図2の特性図に示すように、半導体レーザはチップ温度にほぼ比例して発振波長が増大する。一方、レーザ出力と波長の関係については、ギャップ内の屈折率n=1、反射率R=0.465、ギャップ幅h=4.688(μm)のファブリペロエタロンに入射角度θ=45°で半導体レーザ光を入射した場合、図3の特性図に示すように透過光Itと反射光Irの光出力は発振波長の変化にしたがって変化する。その為、入射光Iiが変動した場合においても、光反射率Ir/(Ii=Ir+It)、および光透過率It/(Ii=Ir+It)は、半導体レーザの発振波長の関数となる。透過光の光出力It、反射光の光出力Irを光検出器で測定することにより半導体レーザの発振波長を決定すれば、図2の特性図に基づきチップ温度を算出することができる。
【実施例1】
【0027】
図4に、本発明の光記録装置の第1の実施例を示す。半導体レーザアレイ1から出射する半導体レーザ光はコリメータレンズ2によりコリメートされ、コリメートされた半導体レーザ光は、ビームスプリッタ3により分割され、分割された一方の半導体レーザ光はエタロン9に所定の入射角度で入射され、エタロン9に入射された半導体レーザ光の透過光It、反射光Irはそれぞれ独立にフォトダイオード10、11によって検出される。エネルギーロスを無視すればレーザ入射光Iiは以下の式で表される。
【0028】
Ii=It+Ir
分割された他方の半導体レーザ光は、レンズ4、5によりポリゴンミラ6上に集光され、Fθレンズ7を介して感光体ドラム8上に変調走査される。半導体レーザアレイ1から出射される複数のコリメートされた半導体レーザ光は、それぞれ違った角度でエタロンに入射される為、出射されるビームの入射角度から、各チャンネル毎の半導体レーザ光の発振波長、チップ温度の算出を行うことができる。
【実施例2】
【0029】
図5に、本発明の光記録装置の第2の実施例を示す。半導体レーザアレイ1から出射する半導体レーザ光はコリメータレンズ2によりコリメートされ、レンズ4、5によりビーム整形された後、ポリゴンミラー6上に集光され、Fθレンズ7を介して感光ドラム上を走査される。印刷領域外にエタロン9が設置され、入射光Ii、透過光Itの光出力が、フォトダイオード10、12によって検出される。
【0030】
実施例1、2においては、エタロン9に入射された透過光It、反射光Irの光出力、または入射光Iiと透過光Itの光出力がフォトダイオード10、11、12によって検出され、その検出値から半導体レーザアレイの発振波長、チップ温度が算出される。さらに反射光Irと入射光Iiを検出しても、同様に発振波長、チップ温度を算出することができる。また、実用的には半導体レーザアレイの内部PDによる後方レーザ出力の検出値から入射光出力を概算することもできる。
【実施例3】
【0031】
図6に、本発明の光記録装置の第3の実施例を示す。半導体レーザアレイ1から出射する半導体レーザ光はコリメータレンズ2によりコリメートされ、レンズ4、5によりビーム整形された後、ポリゴンミラー6上に集光され、Fθレンズ7を介して感光ドラム上を走査されるが、印刷領域外の走査開始前位置と走査終了後位置に、フォトダイオードを設置し、それぞれのフォトダイオードの検出時間の差から走査時間を算出する。半導体レーザアレイの温度が上昇して発振波長が変化すると、Fθレンズの色収差の影響により走査時間が変化する。その走査時間の変化量から、あらかじめ測定された特性図に基づき半導体レーザアレイの発振波長、チップ温度を算出することができる。
【0032】
本発明の光記録装置である画像形成装置を、図7を用いて説明する。感光体ドラム8上を帯電器14で帯電させ、露光器15で画像に応じた光をあてて、感光ドラム8上に静電潜像を形成する。その部位が感光ドラム8の回転により現像ローラー17に達し、トナー層と接すると帯電しているトナーが画像形成位置に付着する。感光ドラム8上のトナー画像は、一次転写ロール18が中間転写ベルト21を押し付ける部位で、中間転写ベルト21上に転写される。
【0033】
各現像ユニットの感光体ドラム8上のトナー画像は、中間転写ベルト21上に転写され、カラーのトナー画像が形成される。そして、中間転写ベルト21の搬送により、連続紙23との接触領域の転写ドラム24位置で、搬送されてきた連続紙23上にトナー画像は転写される。トナー画像が転写された連続紙23は、定着器25で熱と圧力が加えられ、トナーを溶融定着しカラー画像が形成される。
【0034】
本発明の光記録装置の光量制御は、実施例1、2、3のそれぞれの方法で、フォトダイオードによって検出される検出値から算出された半導体レーザの発振波長、チップ温度、また、印刷する画像データから、発生するドループ量、熱的クロストーク量、感光体の感度変化量などを算出し、それらの影響を補正する光量制御が行われる。また、チップ温度変化によって半導体レーザの閾値電流が変化し、半導体レーザに加える最適なバイアス電流値が変化する為、チップ温度の算出値によって、最適なバイアス電流値を常時、決定する。
【符号の説明】
【0035】
1…半導体レーザアレイ素子
9…エタロン
10…フォトダイオード(透過光検出用)
11…フォトダイオード(反射光検出用)
12…フォトダイオード(入射光検出用)
100:レーザ制御回路
200:光記録装置30300:レーザ出力検出手段
400:レーザ波長決定手段
500:半導体レーザ温度決定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ光源と半導体レーザ光制御回路を有し、前記半導体レーザ光源から出射される半導体レーザ光を光記録材料上に走査させて光記録を行う光記録装置において、
前記半導体レーザ光出力を検出するレーザ光出力検出手段と、前記レーザ光出力検出手段で検出された半導体レーザ光の出力値から半導体レーザ光の波長を決定する波長決定手段と、前記波長決定手段により決定された半導体レーザ光の波長から半導体レーザの温度を決定する半導体レーザ温度決定手段を設け、前記半導体レーザ温度決定手段により決定された半導体レーザの温度に基づき、半導体レーザのドループ量と熱的クロストーク量を算出し、算出された前記ドループ量と前記熱的クロストーク量を補正する光制御を行う様に前記半導体レーザ光制御回路を駆動して半導体レーザ光の出力を一定に保つことを特徴とする光記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射するエタロンと、前記エタロンに入射されたレーザ光の透過光および反射光の光量を検出する検出器とを有することを特徴とする光記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載された光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射されるエタロンと、前記エタロンに入射された半導体レーザ光の透過光の光量を検出する光検出器とを有することを特徴とする光記録装置。
【請求項4】
請求項1に記載された光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段は半導体レーザ光が入射されるエタロンと、前記エタロンに入射された半導体レーザ光の反射光の光量を検出する光検出器とを有することを特徴とする光記録装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載された前記レーザ光出力検出手段において、前記エタロンに入射される前記半導体レーザ光の入射光を検出する光検出器を有することを特徴とする光記録装置。
【請求項6】
請求項2に記載された光記録装置において、前記エタロンを透過する半導体レーザ光の透過光と、前記エタロンを反射する半導体レーザ光の反射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする光記録装置。
【請求項7】
請求項3または5に記載された光記録装置において、前記エタロンを透過する半導体レーザ光の透過光と、前記エタロンに入射する半導体レーザ光の入射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする光記録装置。
【請求項8】
請求項4または5に記載された光記録装置において、前記エタロンを反射する半導体レーザ光の反射光と、前記エタロンに入射する半導体レーザ光の入射光とがフォトダイオードで検出されることを特徴とする光記録装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項に記載された光記録装置において、前記レーザ光出力検出手段内で前記エタロンに入射される半導体レーザ光は、前記半導体レーザ光源から出射される半導体レーザ光を分岐したものであることを特徴とする光記録装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された光記録装置において、前記半導体レーザ光源は半導体レーザアレイであることを特徴とする光記録装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載された光記録装置によって、潜像が形成される感光体と、前記感光体上の潜像を現像し、画像を形成する現像装置と、前記現像された画像を用紙上に転写する転写装置と、前記用紙上に転写された画像を用紙上に定着する定着装置とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6418(P2013−6418A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170706(P2012−170706)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【分割の表示】特願2008−56523(P2008−56523)の分割
【原出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】