半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置
【課題】引上げ中に生じた予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制することが可能な半導体単結晶の引上げ方法及び引上げ装置を提供する。
【解決手段】予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら半導体単結晶11を引上げる。ヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去の単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する。第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら単結晶11を引上げる。単結晶11の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら単結晶11を引上げる。
【解決手段】予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら半導体単結晶11を引上げる。ヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去の単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する。第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら単結晶11を引上げる。単結晶11の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながら単結晶11を引上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶等の半導体単結晶を引上げる方法と、その半導体単結晶を引上げる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体単結晶の引上げ方法として、予め加熱温度パターンを設定してチョクラルスキー法により単結晶を育成するに際し、原料融液を加熱する加熱手段の加熱温度が単結晶の直径に及ぼす応答特性から、単結晶の育成過程で変化する加熱温度を一定時間毎に細分化して個々のステップ状変化量に対応する直径変化量を特定し、これらの直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径と目標直径とを比較し、それらの誤差を解消するように調整することで、加熱温度パターンに対する単結晶の直径の経時変化を、少なくとも単結晶の育成装置毎、或いは単結晶の育成装置を構成する部品の履歴毎に予測し、この直径予測値と引上げ長若しくは引上げ時間に対して予め設定された直径目標値とが一致するように調整して決定した加熱温度パターンに基づいて原料融液を加熱する単結晶の育成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この単結晶の育成方法では、上記加熱温度パターンが、単結晶の育成過程で変化する加熱温度を一定時間毎に細分化して個々のステップ状変化量に対応する直径変化量を特定し、これらの直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径と目標直径とを比較し、それらの誤差を解消するように調整することで、決定される。
【0003】
このように構成された単結晶の育成方法では、予め決定された加熱温度パターンに基づいて原料融液を加熱することで、大口径の単結晶でもその直径を正確に制御しながら育成することができる。特に単結晶の目標直径となる直胴部までの肩部の形状制御に適している。また単結晶の育成装置毎、或いは単結晶の育成装置を構成する部品の履歴毎に異なる、加熱温度パターンの直径への影響を吸収できる。即ち、加熱温度を細分化して、個々の部分で変化した温度(ステップ状変化量)が単結晶の直径を変化させ、この単結晶の直径の変化を細かく測定することで、微調整が可能となる。この結果、個々の部分での直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径を細かく調整することで、即ち目標直径との誤差を解消するように細かく調整することで、最良の加熱温度パターンを作成できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4039055号公報(請求項1及び2、段落[0011]、[0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された単結晶の育成方法を、単結晶の直胴部の直径が一定になるように引上げる制御に適用した場合、単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じると、ヒータの温度プロファイルが初期設定値からずれてしまい、単結晶の直径変動が大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明の第1の目的は、引上げ中に予想し得ない外乱が生じない場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制でき、また引上げ中に予想し得ない外乱が生じた場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制できるとともに、この予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制でき、これにより高品質な半導体単結晶を製造できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、ヒータの温度プロファイルの高精度化を実現できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第3の目的は、単結晶の引上げ中に行われるヒータの温度プロファイルの自動修正の精度を向上できる、単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第4の目的は、ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させることにより、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第5の目的は、自動修正後のヒータの温度プロファイルにならし機能を適用することにより、自動修正後のヒータの温度プロファイル生じた大きな凹凸を低減できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、半導体単結晶の引上げ装置のるつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解してるつぼに半導体融液を貯留し、引上げ装置に予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる半導体単結晶の引上げ方法において、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積する工程と、データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する工程と、第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正する工程と、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる工程とを含み、半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に第1評価機能が、次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに設定引上げ条件及び実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正したヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて次に自動修正するヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、第1又は第3の観点に基づく発明であって、更に半導体単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能がヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮されることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、第1、3又は4いずれかの観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、ならし機能を更に有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、るつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解してるつぼに半導体融液が貯留され、コントローラが予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成された半導体単結晶の引上げ装置において、コントローラは、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げ、半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更に第1評価機能が、次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに設定引上げ条件及び実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、コントローラが信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいてヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有し、コントローラは、第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータの温度プロファイルを自動修正するように構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の観点は、第6又は第8の観点に基づく発明であって、更にコントローラは、半導体単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能をヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の観点は、第6、8又は9いずれかの観点に基づく発明であって、更にコントローラは、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の観点の引上げ方法及び第5の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げるので、引上げ中に予想し得ない外乱が生じない場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制することができる。そして単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げるので、引上げ中に予想し得ない外乱が生じた場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制することができるとともに、この予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できる。この結果、単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じなくても、或いは単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じても、高品質な単結晶を製造できる。
【0018】
また次に引上げる単結晶の引上げ中に予測される外乱が加熱温度パターンに加味されておらず、単結晶の直胴部を引上げる制御に適用すると、単結晶の直径変動が大きくなる場合があり、また単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じると、ヒータの温度プロファイルが初期設定値からずれてしまい、単結晶の直径変動が更に大きくなるおそれがある従来の単結晶の育成方法と比較して、本発明では、過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、引上げ中に予想される外乱が引上げ前の加熱温度パターンに加味されるとともに、引上げ中にヒータの温度プロファイルを所定の引上げ長毎に自動修正し、この自動修正されたヒータの温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げる。この結果、本発明では、単結晶の直胴部の引上げ時に単結晶の直径の変動が抑えられ、目標の直径を保つことができるとともに、引上げ中に生じた予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できるので、高品質な単結晶を製造できる。
【0019】
本発明の第2の観点の引上げ方法及び第6の観点の引上げ装置では、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正するので、ヒータの温度プロファイルの高精度化を実現できる。
【0020】
本発明の第3の観点の引上げ方法及び第7の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータの温度プロファイルを自動修正するので、単結晶の引上げ中に行われるヒータの温度プロファイルの自動修正の精度を向上できる。
【0021】
本発明の第4の観点の引上げ方法及び第8の観点の引上げ装置では、単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させたので、上記単調増加開始点を実測値から見極めた後にヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させる場合より、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を速やかに発揮できる。この結果、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる。
【0022】
本発明の第5の観点の引上げ方法及び第10の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能が、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うので、引上げ中にヒータの温度プロファイルを自動修正することにより、ヒータの温度プロファイルの傾きが凹凸となった場合に、その凹凸を緩和して、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付ける。この結果、自動修正後のヒータの温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明実施形態のシリコン単結晶の引上げ装置の縦断面構成図である。
【図2】過去の単結晶の引上げ長の変化に対するヒータの温度傾き偏差(ヒータの温度傾きの設定値と実績値との差)の変化を示す図である。
【図3】過去の単結晶の引上げ長の変化に対する合格率(ヒータの温度傾き偏差に設定されたしきい値に対する合格率)の変化を示す図である。
【図4】ヒータ温度傾きをならし係数0.8でならす前後の状態を示す図である。
【図5】ヒータ温度傾きをならし係数0.2でならす前後の状態を示す図である。
【図6】単結晶の引上げ中においてヒータ温度傾きに対し適正修正、過剰修正及び逆の修正を行った場合をそれぞれ示す図である。
【図7】単結晶の引上げ長の変化に対するヒータ温度の変化を示す図である。
【図8】その単結晶を引上げる前にヒータ温度プロファイルを修正し決定する手順を示すフローチャート図である。
【図9】その単結晶の引上げ中においてヒータの温度プロファイルを自動修正する前半の手順を示すフローチャート図である。
【図10】その単結晶の引上げ中においてヒータの温度プロファイルを自動修正する後半の手順を示すフローチャート図である。
【図11】実施例1の単結晶の引上げ率の変化に対するシリコン単結晶の直径標準化値[直径実績値/直径平均値]の変化を示す図である。
【図12】比較例1の単結晶の引上げ率の変化に対するシリコン単結晶の直径標準化値[直径実績値/直径平均値]の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、シリコン単結晶11の引上げ装置は、内部を真空可能に構成されたメインチャンバ12と、このチャンバ12内の中央に設けられたるつぼ13とを備える。メインチャンバ12は円筒状の真空容器である。またるつぼ13は、石英により形成されシリコン融液14が貯留される有底円筒状の内層容器13aと、黒鉛により形成され上記内層容器13aの外側に嵌合された有底円筒状の外層容器13bとからなる。外層容器13bの底部にはシャフト16の上端が接続され、このシャフト16の下端にはシャフト16を介してるつぼ13を回転させかつ昇降させるるつぼ駆動手段17が設けられる。更にるつぼ13の外周面は円筒状のヒータ18によりるつぼ13の外周面から所定の間隔をあけて包囲され、このヒータ18の外周面は円筒状の保温筒19によりヒータ18の外周面から所定の間隔をあけて包囲される。
【0025】
一方、メインチャンバ12の上端には、内部が連通するようにメインチャンバ12より小径の円筒状のプルチャンバ21が接続される。このプルチャンバ21の上端には引上げ回転手段22が設けられる。この引上げ回転手段22は、下端にシードチャック23が取付けられた引上げ軸24を昇降させるとともに、この引上げ軸24をその軸線を中心に回転させるように構成される。また上記シードチャック23には種結晶26が着脱可能に装着される。この種結晶26の下端をシリコン融液14中に浸漬した後、種結晶26を引上げ回転手段22により回転させかつ引上げるとともに、るつぼ13をるつぼ駆動手段17により回転させかつ上昇させることにより、種結晶26の下端からシリコン単結晶11を引上げて引上げるように構成される。
【0026】
メインチャンバ12内にはアルゴンガス等の不活性ガスが流通される。プルチャンバ21の側壁にはガス供給パイプ27の一端が接続され、このガス供給パイプ27の他端は不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続される。またメインチャンバ12の下壁にはガス排出パイプ28の一端が接続され、このガス排出パイプ28の他端は真空ポンプ29の吸入口に接続される。タンク内の不活性ガスは、ガス供給パイプ27を通ってプルチャンバ21内に導入され、メインチャンバ12内を通った後、ガス排出パイプ28を通ってメインチャンバ12から排出されるように構成される。なお、ガス供給パイプ27及びガス排出パイプ28にはこれらのパイプを流れる不活性ガスの流量を調整する第1及び第2流量調整弁31,32がそれぞれ設けられる。
【0027】
またメインチャンバ12内には、シリコン単結晶11外周面へのヒータ18の輻射熱の照射を遮るとともに、上記不活性ガスを整流するための熱遮蔽体33が設けられる。この熱遮蔽体33は、下方に向うに従って直径が次第に小さくなりかつシリコン融液14から引上げられるシリコン単結晶11の外周面をこの外周面から所定の間隔をあけて包囲する円錐台状の筒体33aと、この筒体33aの上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すフランジ部33bとを有する。熱遮蔽体33は、フランジ部33bを保温筒19上にリング板33cを介して載置することにより、筒体33aの下縁がシリコン融液14表面から所定のギャップをあけて上方に位置するようにメインチャンバ12内に固定される。
【0028】
一方、メインチャンバ12の肩部には覗き窓12aが形成される。この覗き窓12aには、シリコン融液14と種結晶26との境界部、シリコン融液14とシリコン単結晶11のネック部11aとの境界部、シリコン融液14とシリコン単結晶11の肩部11bとの境界部、或いはシリコン融液14とシリコン単結晶11の直胴部11cとの境界部である固液界面34を臨むようにCCDカメラ36が設置される。このCCDカメラ36は引上げ中のシリコン単結晶11を撮影するように構成される。ここで、上記CCDカメラ36は、シリコン基板上に酸化膜を介して金属膜の電極を並べて作製したコンデンサに、光により生じた信号電荷を蓄積して、画像処理手段37からの駆動パルスにより一方向に順次転送させ、電気信号である画像信号を得るカメラであり、このCCDカメラ36の撮影した画像は画像処理手段37により処理される。CCDカメラ36の検出出力は画像処理手段37のカメラ制御入力に接続され、画像処理手段37のカメラ制御出力は2次元CCDカメラ36の制御入力に接続される。また画像処理手段37の制御入出力はコントローラ38の制御入出力に接続され、コントローラ38の制御出力はるつぼ駆動手段17、ヒータ18及び引上げ回転手段22に接続される。なお、コントローラ38の制御入出力には、型式の異同に拘らず同一直径のシリコン単結晶11を引上げる全ての引上げ装置の画像処理手段37の制御入出力が接続され、コントローラ38の制御出力は、型式の異同に拘らず同一直径のシリコン単結晶11を引上げる全ての引上げ装置のるつぼ駆動手段17、ヒータ18及び引上げ回転手段22に接続される。
【0029】
上記コントローラ38には記憶媒体39が接続される。この記憶媒体39にはデータベースが記憶され、このデータベースにはヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータが蓄積される。過去のシリコン単結晶11の引上げデータとしては、シリコン単結晶11を引上げた日付、るつぼ13へのシリコン融液14の仕込み量、引上げ時における上記CCDカメラ36で撮影されたシリコン単結晶11の直径の変化、引上げ装置の型式、その引上げ装置によるシリコン単結晶11の引上げ本数、次にシリコン単結晶11を引上げる引上げ装置と同一であるか否か、その引上げ装置のヒータ18等の部品交換した日付等の引上げデータが挙げられる。また記憶媒体39としては、メモリの他に、ネットワークを通じた外部の記憶媒体などが挙げられる。
【0030】
またコントローラ38はデータベースに蓄積された過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価するように構成される。この第1評価機能は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げるシリコン単結晶11の設定引上げ条件と次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに上記設定引上げ条件と上記実績引上げ条件との近さから決定された重み係数とを有する。
【0031】
上記信頼性は、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにおける最小単位の温度傾きの設定値と実績値との差であるヒータ18の温度傾き偏差が算出され、このヒータ18の温度傾き偏差にしきい値が設定され、上記ヒータ18の温度傾き偏差をしきい値と比較して合否が決定された後、シリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたってヒータ18の温度傾き偏差の合格率が算出され、この合格率から過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが評価される機能である。具体的には、図2及び図3に示すように、引上げ長5mm(最小単位)毎のヒータ18の温度傾き偏差が平均値として算出され、このヒータ18の温度傾き偏差が複数のしきい値(第1しきい値:±0.002℃/5mm、第2しきい値:±0.003℃/5mm)より小さい場合に良好であると評価され、大きい場合に不良であると評価され、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格とする合格率が引上げ長100mm毎に算出され、最終的にシリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたって合格率が算出される。
【0032】
図3の一点鎖線で囲んだ部分では、第1及び第2しきい値に対するヒータ18の温度傾き偏差の合格率が低いため、設定不良であると評価され、図3の二点鎖線で囲んだ部分では、第1及び第2しきい値に対するヒータ18の温度傾き偏差の合格率が高いため、設定良好であると評価される。このように過去に引上げたシリコン単結晶11において、引上げ長のどの範囲でヒータ18の温度プロファイルの合格率が良好であったか或いは不良であったかを捉えることができるので、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルをフィードバックするときに、上記合格率が高ければフィードバック量を100%に近付け、合格率が低くければフィードバック量を低くするように信頼性が決定される。即ち、合格率に対する信頼性が記憶媒体39にマップとして記憶されており、コントローラ38は合格率から信頼性を決定するように構成される。なお、この実施の形態では、引上げ長5mm毎のヒータの温度傾き偏差が平均値として算出されるとし、合格率が引上げ長100mm毎に算出されるとし、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格としたが、これらの値に限定されるものではない。また、この実施の形態では、2つのしきい値を設定したが、1つ又は3つ以上のしきい値を設定してもよい。
【0033】
一方、重み係数は、次に引上げるシリコン単結晶11の設定引上げ条件と、過去に引上げたシリコン単結晶11の実績引上げ条件との近さから決定される機能である。例えば、次に引上げるシリコン単結晶11に使用される引上げ装置と、過去に引上げたシリコン単結晶11に使用された引上げ装置が同一である場合や、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ日時と、過去に引上げたシリコン単結晶11の引上げ日時が近い場合には、重み係数は高く設定される。また、次に引上げるシリコン単結晶11に使用される引上げ装置と、過去に引上げたシリコン単結晶11に使用された引上げ装置が同一であっても、ヒータ18等の部品が交換されたり、或いは次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ日時と、過去に引上げたシリコン単結晶11の引上げ日時が遠い場合には、重み係数は低く設定される。即ち、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルをフィードバックするときに、上記重み係数が高ければフィードバック量を100%に近付け、重み係数が低くければフィードバック量を低くするように決定される。そして上記設定引上げ条件及び実績引上げ条件に対する重み係数が記憶媒体39にマップとして記憶されており、コントローラ38は設定引上げ条件及び実績引上げ条件から重み係数を決定するように構成される。このように、コントローラ38は、上記第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正するように構成される。
【0034】
一方、コントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げデータと次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータとを比較し、シリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正するように構成される。
【0035】
またコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つように次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを修正する、引上げ前のならし機能を有する。この引上げ前のならし機能を用いてヒータ18の温度プロファイルを修正するときのならし値をNとするとき、N=[K+(K0−K)×R]で算出される。この式において、Kは設定されたヒータ18の温度プロファイルのうち凹凸を有する区間(以下、凹凸区間という)における最小単位のヒータ温度傾きであり、K0は上記凹凸区間におけるヒータ温度傾きの平均値であり、Rはヒータ温度傾きの平均値K0に近付ける割合(以下、ならし係数という)である。このならし係数は0〜1の範囲内の定数として設定される。ならし係数が『0』であるとき、ならしが実行されないことを示し、ならし係数が『1』であるとき、ヒータ温度傾きの平均値までならしが実行されることを示す。上記ならしを実行する凹凸区間は、最小単位のヒータ温度傾きが斜め上向きから斜め下向きになって再び斜め上向きに変化する区間や、最小単位のヒータ温度傾きが斜め下向きから斜め上向きになって再び斜め下向きに変化する区間である。またシリコン単結晶11のネック部11a及び肩部11bの引上げ時はヒータ18の温度プロファイルが不安定か或いは大きく変化するため、ならしが実行されず、シリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ時にならしが実行されるように設定される。更に上記ならしは、ヒータ温度傾きの凹凸を完全になくすのではなくヒータ温度傾きの凹凸の割合を減じる形で実行されることが好ましい。例えば、ならし係数を0.8程度に設定すると、温度傾きの凹凸が緩和され過ぎてしまい(図4)、ならし係数を0.2程度に設定すると、手動設定でシリコン単結晶11を引上げるときの設定者の設定に略一致することが試運用で判明している(図5)。
【0036】
一方、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正されたヒータ18の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらるつぼ13内のシリコン融液14からシリコン単結晶11を引上げるように構成される。ここで、所定の引上げ長毎は、5〜40mmの範囲内の所定の引上げ長毎に設定される。またシリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ時であって、後述するヒータ温度の単調増加開始点を越えた後に、例えば直胴部11cの最初の200〜400mmの引上げ時に所定の引上げ長毎を10mm毎とし、400mmを越えた引上げ時に所定の引上げ長毎を20mm毎とするように、1本のシリコン単結晶11を引上げるときであっても、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正する間隔を変えてもよい。また上記ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能は、シリコン単結晶11の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定されたヒータ温度及び今回測定されたヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいてヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有する。
【0037】
上記第2評価機能は、ヒータ温度傾きの自動修正が、適正な修正であるか、過剰な修正であるか、不適正な修正(逆の修正)であるかを評価する機能である。この機能を発揮するために、先ず修正候補のヒータ温度傾きK、実際のヒータ温度傾きJ、修正したヒータ温度傾きSの大小関係に基づいて、修正量評価値Lが算出される。この修正量評価値Lは次の式(1)で定義される。
【0038】
L=(K−S)/(J−S) ……(1)
上記式(1)を用いた修正量評価値Lの計算は、シリコン単結晶11の引上げ長が、ヒータ温度傾きの自動修正を開始した位置と自動修正を終了した位置との間にあるときに実行される。ここで、ヒータ温度傾きとは、シリコン単結晶11の引上げ前に設定されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きである。また式(1)において、修正したヒータ温度傾きSとは、後述の表1の修正量評価値L及び修正係数Rの関係に基づくヒータ温度傾きの修正ロジックにより直前に自動修正されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きであり、自動修正の開始直後である場合、引上げ前に設定されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きである。また式(1)において、修正候補のヒータ温度傾きKとは、次に自動修正しようとするヒータ温度傾きである。更に式(1)において、実際のヒータ温度傾きJとは、直前に測定したヒータ温度と今回測定したヒータ温度から算出したヒータ温度傾きである。この実際のヒータ温度傾きJは、例えば、シリコン単結晶11の直胴部11cの最初の200〜400mmの引上げ範囲において引上げ長5mm毎にヒータ温度を測定して算出し、400mmを越えた引上げ範囲において引上げ長10mm毎にヒータ温度を測定して算出することができる。
【0039】
次に修正量評価値Lから、パラメータ(シリコン単結晶11の引上げ時間及び引上げ長、直前に修正したヒータ温度傾き、実際のヒータ温度傾きなど)を設定した表(図示せず)を用いて修正係数Rが設定される。その設定例を次の表1に示す。
【0040】
【表1】
表1において、0<L<1.0の範囲を適正修正とし、この範囲では修正係数Rが大きく設定される。また1.0≦Lの範囲を過剰修正とし、この範囲では修正係数Rが小さく設定される。更にL<0の範囲を不適正修正(逆の修正)とし、この範囲では修正係数Rの符号が『−』に設定される。ここで、1.0≦Lの範囲における修正係数Rを、0<L<1.0の範囲における修正係数Rより小さく設定したのは、次に自動修正するヒータ温度傾きTが実際のヒータ温度傾きJを越えて変化してしまうオーバーアクションを防止するためである。また、0<L<1.0の範囲における修正係数Rを、1.0≦Lの範囲における修正係数Rより大きく設定したのは、次に自動修正するヒータ温度傾きTを実際のヒータ温度傾きJに速やかに一致させるためである。なお、前回の実際のヒータ温度傾きJから前回修正したヒータ温度傾きを差し引いた値が『0』であるとき、即ち修正量評価値Lが『0』であるとき、修正係数Rは修正の必要がなく『0』に設定される。また修正量評価値Lを反映させない場合、修正係数Rは全て同じ設定される。更にヒータ温度傾きの偏差の50%をフィードバックする場合には、修正係数Rは0.5に設定される。
【0041】
一方、上記決定機能を発揮するために、次の式(2)を用いて、修正候補のヒータ温度傾きKの修正量Qが算出され、次の式(3)を用いて、これから自動修正するヒータ温度傾きTが算出される。
【0042】
Q=R×(J−S)=R×K ……(2)
T=K+Q ……(3)
コントローラ38は、上記第2評価機能及び決定機能に基づいて、即ち上記式(3)で算出された次に自動修正するヒータ温度傾きTに基づいて、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正するように構成される。
【0043】
一方、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中において、ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能をヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成される。上記ヒータ温度の単調増加開始点を推測するために、図7に示すように、先ずヒータ温度の単調減少終了点を検出し、このヒータ温度の単調減少終了点を検出した後に、ヒータ温度の単調増加開始点を検出する。次に単調減少終了点から単調増加開始点までのシリコン単結晶11のおおよその引上げ長の範囲が予測可能であるため、この引上げ長の範囲を設定した後に、単調増加開始点を推測する計算処理をこの範囲内で行う。更に単調増加開始点を推測できたときに、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルを設定する設定者にディスプレイ表示や音などにより報知するように構成される。なお、シリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ開始時に先ずヒータ温度を徐々に下降させ、その後、ヒータ温度を徐々に上昇させるのは、シリコン単結晶11の直径を一定に保った状態で引上げるためであり、このようにヒータ温度を変化させるのは引上げ装置の構造に起因する。
【0044】
一方、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能は、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、引上げ中のならし機能を更に有する。即ち、コントローラ38は、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、引上げ中にならし計算を行うように構成される。この引上げ中のならし機能は、上記引上げ前のならし機能と同様の機能であるため、繰返しの説明を省略する。
【0045】
このように構成されたシリコン単結晶11の引上げ装置を用いてシリコン単結晶11を引上げる手順を説明する。
【0046】
[1] シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生しない場合のシリコン単結晶11の引上げ手順を図8のフローチャート図に基づいて説明する。先ずコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定対象となる引上げ装置を選択する。次いでコントローラ38は、設定対象となる引上げ装置の引上げ条件に基づいて設定の参考とする過去の引上げデータを記憶媒体39内のデータベースから選択する。そしてコントローラ38は、設定の参考とする過去の引上げデータの引上げ条件から重み係数及び信頼性を算出する。このとき引上げデータが複数存在する場合、コントローラ38はそれらのデータの平均値をそれぞれ算出する。次にコントローラ38は、上記重み係数及び信頼性と設定の参考とする過去の引上げデータから、設定対象のヒータ18の温度プロファイルを算出した後に、設定対象のシリコン単結晶11の引上げに使用する構成部材又は引上げ条件のいずれか一方又は双方に基づいてヒータ18の温度プロファイルの補正量を算出し、この補正量を設定対象のヒータ18の温度プロファイルに加算又は減算する。更にコントローラ38は、設定対象のシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、必要に応じて引上げ前のならし機能を適用し、最終のヒータ18の温度プロファイルを決定する。
【0047】
そして、シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生しない場合には、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。これにより、シリコン単結晶11の直径変動が低減し、シリコン単結晶11の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制できる。この結果、設定通りのシリコン単結晶11の引上げを実現することで、高品質なシリコン単結晶11を製造できるとともに、ヒータ18の温度プロファイルの高精度化を実現できる。またシリコン単結晶11の引上げ速度を操作する必要がないので、シリコン単結晶11の引上げ速度Vとシリコン単結晶11の引上げ方向の温度勾配Gとの比V/Gが変動せず、シリコン単結晶11の品質にバラツキが生じることはない。また過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ中に予想される外乱が加熱温度パターンに加味されているため、シリコン単結晶11の直胴部11cを引上げてもその直径が変動することはない。
【0048】
またシリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正するので、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ中に予想される外乱が加熱温度パターンに更に加味されることになり、ヒータ18の温度プロファイルを更に高精度化することができる。更に引上げ前のならし機能により、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの温度プロファイルを修正するので、シリコン単結晶11の引上げ中のある区間でヒータ18の温度プロファイルの傾きが凹凸となる場合に、その凹凸を緩和して、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付ける。この結果、引上げ前におけるヒータ18の温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。
【0049】
[2] シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生する場合のシリコン単結晶11の引上げ手順を図8〜図10のフローチャート図に基づいて説明する。先ず上記[1]と同様にして、シリコン単結晶11を引上げる前に、このシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正する(図8)。そして、この修正されたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、必要に応じて引上げ前のならし機能を適用し、最終のヒータ18の温度プロファイルを決定する。
【0050】
そして、コントローラ38は、上記最終のヒータ18の温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。このとき、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を発揮させる(図9)。これによりヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる。その後、シリコン単結晶11の引上げ中に、シリコン融液14の地震等による液面振動の発生や、引上げ装置に使用される構成部材の変更等により、予想し得ない外乱が発生した場合、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、上記決定された最終の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。引上げ中にヒータの温度プロファイルが既に自動修正されている場合には、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、この自動修正された温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。即ち、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータ18の温度プロファイルの自動修正を繰り返す。このヒータ18の温度プロファイルを自動修正するために必要な修正候補のヒータ温度傾きKが、適正修正である場合、過剰修正である場合、及び不適正修正(逆の修正)である場合に分けて、次に修正するヒータ温度傾きTを求める方法を説明する(図9〜図10)。
【0051】
(a) 修正候補のヒータ温度傾きKが適正修正である場合
適正修正は、例えば図6(a)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば2.0であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば1.0であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.2であり、KがS及びJの間に位置する場合である。この適正修正の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−0.8/−1.0=0.8となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から0.8となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=0.8×1.2=0.96となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=K+Q=1.2+0.96=2.16となる。
【0052】
(b) 修正候補のヒータ温度傾きKが過剰修正である場合
過剰修正は、例えば図6(b)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば2.0であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば1.2であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.0であり、JがSより小さくかつKより大きい場合である。この過剰修正の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−1.0/−0.8=1.25となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から0.2となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=0.2×1.0=0.2となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=はK+Q=1.0+0.2=1.2となる。
【0053】
(c) 修正候補のヒータ温度傾きKが不適正修正(逆の修正)である場合
不適正修正(逆の修正)は、例えば図6(c)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば1.2であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば2.0であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.0であり、JがS及びKより大きくかつKがSより小さい場合である。この不適正修正(逆の修正)の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−0.2/0.8=−0.25となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から−0.2となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=−0.2×1.0=−0.2となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=はK+Q=1.0+(−0.2)=0.8となる。
【0054】
そして、コントローラ38は、上記式(3)で算出された次に自動修正するヒータ温度傾きTに基づいて、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正する。この結果、引上げ中に生じるシリコン単結晶11の直径への外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できるので、高品質なシリコン単結晶11を製造できる。更にコントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能により、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行う(図10)。これにより、引上げ中にヒータ18の温度プロファイルを自動修正して、ヒータ18の温度プロファイルの傾きが凹凸となっても、その凹凸が緩和されて、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付く。この結果、自動修正後のヒータ18の温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。なお、上記実施の形態では、半導体単結晶としてシリコン単結晶を挙げたが、GaAs単結晶、InP単結晶、ZnS単結晶、ZnSe単結晶等でもよい。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0056】
<実施例1>
図1に示す引上げ装置を20基用意し、これらの引上げ装置を第1〜第20引上げ装置とし、これらの引上げ装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶11を引上げた。具体的には、るつぼ13に多結晶シリコン原料を充填しヒータ18により溶融し、このシリコン融液14から直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶11をそれぞれ5回ずつ引上げた。これらの引上げデータを記憶媒体39のデータベースに記憶した。そして第7引上げ装置を用いて次のシリコン単結晶11を引上げる前に、コントローラ38は、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正した。ここで、コントローラ38は信頼性を次のようにして決定した。引上げ長5mm毎のヒータ18の温度傾き偏差を平均値として算出し、このヒータ18の温度傾き偏差を第1しきい値:±0.002℃/5mmと比較し、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格とする合格率を引上げ長100mm毎に算出し、シリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたって合格率を算出した後に、記憶媒体39にマップとして記憶された合格率に対する信頼性の関係に基づいて信頼性を決定した。
【0057】
またコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げデータと次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータとを比較し、シリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正した。更にコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つように次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを修正した。ここで、引上げ前のならし係数を0.2に設定した。更にコントローラは、上記のように修正されかつ補正されたヒータの温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらるつぼ13内のシリコン融液14からシリコン単結晶11を引上げた。
【0058】
このとき、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を発揮させた。その後、シリコン単結晶11の引上げ中に、予想し得ない外乱が発生したときに、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、上記決定された最終の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げた。引上げ中にヒータの温度プロファイルが既に自動修正されている場合には、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、この自動修正された温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げた。即ち、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータ18の温度プロファイルの自動修正を繰り返した。また、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能により、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行った。このシリコン単結晶を実施例1とした。
【0059】
<比較例1>
第1評価機能の信頼性及び重み係数を用いず、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能を用いず、更に引上げ前のならし機能及び引上げ中のならし機能を用いなかったこと以外は、実施例1の第7引上げ装置と同型の第10引上げ装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶を引上げた。このシリコン単結晶を比較例1とした。
【0060】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例1のシリコン単結晶の直胴部の引上げ率20〜80%に対する直径標準化値を求めた。その結果を図11及び図12に示す。ここで、るつぼに貯留されたシリコン融液を全てシリコン単結晶として引上げたときの引上げ率を100%とした場合、引上げ率20〜80%の範囲はシリコン単結晶の直胴部を引上げている範囲となる。またシリコン単結晶の直径標準化値Ziは、シリコン単結晶の直径の実測値をxiとし、シリコン単結晶の直径の平均値をAとするとき、Zi=xi/Aで表される。このように直径標準化値を用いたのは、比較を容易にするためである。
【0061】
図11及び図12から明らかなように、比較例1のシリコン単結晶では、その直径の変動が全長にわたって大きかったのに対し、実施例1のシリコン単結晶では、その直径の変動が全長にわたって小さくなったことが分かった。この結果、実施例1のシリコン単結晶では、直径制御のために操作される引上げ速度のばらつきも低減し、シリコン単結晶の引上げ速度Vとシリコン単結晶の引上げ方向の温度勾配Gとの比V/Gの変動が抑えられ、品質のばらつきも低減した。即ち、比較例1のシリコン単結晶では結晶欠陥が発生したのに対し、実施例1のシリコン単結晶では結晶欠陥の発生は見られなかった。
【0062】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例1のシリコン単結晶の直胴部を引上げたときの温度設定値合格率及び直径標準化値の標準偏差を求めた。ここで、温度設定値合格率とは、この明細書の[発明を実施するための形態]に記載したように、シリコン単結晶の直胴部全長にわたって算出されたヒータの温度傾き偏差の合格率である。具体的には、引上げ長5mm(最小単位)毎のヒータの温度傾き偏差を平均値として算出し、このヒータの温度傾き偏差が第1しきい値=±0.002℃/5mmより小さい場合に良好であると評価し、大きい場合に不良であると評価した。そして良好であると評価した割合が80%以上であるときに合格とする合格率を引上げ長100mm毎に算出し、最終的にシリコン単結晶の直胴部全長にわたって合格率を算出した。一方、直径標準化値の標準偏差とは、上記<比較試験1及び評価>で求めた直径標準化値をシリコン単結晶の直胴部全長にわたって算術平均した値である。これらの結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
表2から明らかなように、比較例1では、温度設定値合格率が60%と低かったのに対し、実施例1では、温度設定値合格率が90%と高くなったことが分かった。また、比較例1では、直径標準化値の標準偏差が0.00087と大きかったのに対し、実施例1では、直径標準化値の標準偏差が0.00052と小さくなったことが分かった。
【符号の説明】
【0064】
11 シリコン単結晶(半導体単結晶)
13 るつぼ
14 シリコン融液(半導体融液)
18 ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶等の半導体単結晶を引上げる方法と、その半導体単結晶を引上げる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体単結晶の引上げ方法として、予め加熱温度パターンを設定してチョクラルスキー法により単結晶を育成するに際し、原料融液を加熱する加熱手段の加熱温度が単結晶の直径に及ぼす応答特性から、単結晶の育成過程で変化する加熱温度を一定時間毎に細分化して個々のステップ状変化量に対応する直径変化量を特定し、これらの直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径と目標直径とを比較し、それらの誤差を解消するように調整することで、加熱温度パターンに対する単結晶の直径の経時変化を、少なくとも単結晶の育成装置毎、或いは単結晶の育成装置を構成する部品の履歴毎に予測し、この直径予測値と引上げ長若しくは引上げ時間に対して予め設定された直径目標値とが一致するように調整して決定した加熱温度パターンに基づいて原料融液を加熱する単結晶の育成方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この単結晶の育成方法では、上記加熱温度パターンが、単結晶の育成過程で変化する加熱温度を一定時間毎に細分化して個々のステップ状変化量に対応する直径変化量を特定し、これらの直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径と目標直径とを比較し、それらの誤差を解消するように調整することで、決定される。
【0003】
このように構成された単結晶の育成方法では、予め決定された加熱温度パターンに基づいて原料融液を加熱することで、大口径の単結晶でもその直径を正確に制御しながら育成することができる。特に単結晶の目標直径となる直胴部までの肩部の形状制御に適している。また単結晶の育成装置毎、或いは単結晶の育成装置を構成する部品の履歴毎に異なる、加熱温度パターンの直径への影響を吸収できる。即ち、加熱温度を細分化して、個々の部分で変化した温度(ステップ状変化量)が単結晶の直径を変化させ、この単結晶の直径の変化を細かく測定することで、微調整が可能となる。この結果、個々の部分での直径変化量を重ね合わせてできる単結晶の直径を細かく調整することで、即ち目標直径との誤差を解消するように細かく調整することで、最良の加熱温度パターンを作成できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4039055号公報(請求項1及び2、段落[0011]、[0013])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の特許文献1に示された単結晶の育成方法を、単結晶の直胴部の直径が一定になるように引上げる制御に適用した場合、単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じると、ヒータの温度プロファイルが初期設定値からずれてしまい、単結晶の直径変動が大きくなるおそれがあった。
【0006】
本発明の第1の目的は、引上げ中に予想し得ない外乱が生じない場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制でき、また引上げ中に予想し得ない外乱が生じた場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制できるとともに、この予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制でき、これにより高品質な半導体単結晶を製造できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、ヒータの温度プロファイルの高精度化を実現できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第3の目的は、単結晶の引上げ中に行われるヒータの温度プロファイルの自動修正の精度を向上できる、単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第4の目的は、ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させることにより、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。本発明の第5の目的は、自動修正後のヒータの温度プロファイルにならし機能を適用することにより、自動修正後のヒータの温度プロファイル生じた大きな凹凸を低減できる、半導体単結晶の引上げ方法及びその引上げ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、半導体単結晶の引上げ装置のるつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解してるつぼに半導体融液を貯留し、引上げ装置に予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる半導体単結晶の引上げ方法において、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積する工程と、データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する工程と、第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正する工程と、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる工程とを含み、半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に第1評価機能が、次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに設定引上げ条件及び実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正したヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて次に自動修正するヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の観点は、第1又は第3の観点に基づく発明であって、更に半導体単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能がヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮されることを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の観点は、第1、3又は4いずれかの観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、ならし機能を更に有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の観点は、るつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解してるつぼに半導体融液が貯留され、コントローラが予め設定された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成された半導体単結晶の引上げ装置において、コントローラは、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げ、半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながらるつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成されたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更に第1評価機能が、次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに設定引上げ条件及び実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、コントローラが信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正するように構成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の観点は、第6の観点に基づく発明であって、更にヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいてヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有し、コントローラは、第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータの温度プロファイルを自動修正するように構成されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の第9の観点は、第6又は第8の観点に基づく発明であって、更にコントローラは、半導体単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能をヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第10の観点は、第6、8又は9いずれかの観点に基づく発明であって、更にコントローラは、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の観点の引上げ方法及び第5の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げるので、引上げ中に予想し得ない外乱が生じない場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制することができる。そして単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げるので、引上げ中に予想し得ない外乱が生じた場合、単結晶の直径変動が低減し、単結晶の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制することができるとともに、この予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できる。この結果、単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じなくても、或いは単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じても、高品質な単結晶を製造できる。
【0018】
また次に引上げる単結晶の引上げ中に予測される外乱が加熱温度パターンに加味されておらず、単結晶の直胴部を引上げる制御に適用すると、単結晶の直径変動が大きくなる場合があり、また単結晶の引上げ中に予想し得ない外乱が生じると、ヒータの温度プロファイルが初期設定値からずれてしまい、単結晶の直径変動が更に大きくなるおそれがある従来の単結晶の育成方法と比較して、本発明では、過去の単結晶の引上げデータから次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、引上げ中に予想される外乱が引上げ前の加熱温度パターンに加味されるとともに、引上げ中にヒータの温度プロファイルを所定の引上げ長毎に自動修正し、この自動修正されたヒータの温度プロファイルに基づいてヒータを制御しながら単結晶を引上げる。この結果、本発明では、単結晶の直胴部の引上げ時に単結晶の直径の変動が抑えられ、目標の直径を保つことができるとともに、引上げ中に生じた予想し得ない外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できるので、高品質な単結晶を製造できる。
【0019】
本発明の第2の観点の引上げ方法及び第6の観点の引上げ装置では、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げる単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正するので、ヒータの温度プロファイルの高精度化を実現できる。
【0020】
本発明の第3の観点の引上げ方法及び第7の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータの温度プロファイルを自動修正するので、単結晶の引上げ中に行われるヒータの温度プロファイルの自動修正の精度を向上できる。
【0021】
本発明の第4の観点の引上げ方法及び第8の観点の引上げ装置では、単結晶の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させたので、上記単調増加開始点を実測値から見極めた後にヒータの温度プロファイルの自動修正機能を発揮させる場合より、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を速やかに発揮できる。この結果、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる。
【0022】
本発明の第5の観点の引上げ方法及び第10の観点の引上げ装置では、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能が、自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うので、引上げ中にヒータの温度プロファイルを自動修正することにより、ヒータの温度プロファイルの傾きが凹凸となった場合に、その凹凸を緩和して、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付ける。この結果、自動修正後のヒータの温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明実施形態のシリコン単結晶の引上げ装置の縦断面構成図である。
【図2】過去の単結晶の引上げ長の変化に対するヒータの温度傾き偏差(ヒータの温度傾きの設定値と実績値との差)の変化を示す図である。
【図3】過去の単結晶の引上げ長の変化に対する合格率(ヒータの温度傾き偏差に設定されたしきい値に対する合格率)の変化を示す図である。
【図4】ヒータ温度傾きをならし係数0.8でならす前後の状態を示す図である。
【図5】ヒータ温度傾きをならし係数0.2でならす前後の状態を示す図である。
【図6】単結晶の引上げ中においてヒータ温度傾きに対し適正修正、過剰修正及び逆の修正を行った場合をそれぞれ示す図である。
【図7】単結晶の引上げ長の変化に対するヒータ温度の変化を示す図である。
【図8】その単結晶を引上げる前にヒータ温度プロファイルを修正し決定する手順を示すフローチャート図である。
【図9】その単結晶の引上げ中においてヒータの温度プロファイルを自動修正する前半の手順を示すフローチャート図である。
【図10】その単結晶の引上げ中においてヒータの温度プロファイルを自動修正する後半の手順を示すフローチャート図である。
【図11】実施例1の単結晶の引上げ率の変化に対するシリコン単結晶の直径標準化値[直径実績値/直径平均値]の変化を示す図である。
【図12】比較例1の単結晶の引上げ率の変化に対するシリコン単結晶の直径標準化値[直径実績値/直径平均値]の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、シリコン単結晶11の引上げ装置は、内部を真空可能に構成されたメインチャンバ12と、このチャンバ12内の中央に設けられたるつぼ13とを備える。メインチャンバ12は円筒状の真空容器である。またるつぼ13は、石英により形成されシリコン融液14が貯留される有底円筒状の内層容器13aと、黒鉛により形成され上記内層容器13aの外側に嵌合された有底円筒状の外層容器13bとからなる。外層容器13bの底部にはシャフト16の上端が接続され、このシャフト16の下端にはシャフト16を介してるつぼ13を回転させかつ昇降させるるつぼ駆動手段17が設けられる。更にるつぼ13の外周面は円筒状のヒータ18によりるつぼ13の外周面から所定の間隔をあけて包囲され、このヒータ18の外周面は円筒状の保温筒19によりヒータ18の外周面から所定の間隔をあけて包囲される。
【0025】
一方、メインチャンバ12の上端には、内部が連通するようにメインチャンバ12より小径の円筒状のプルチャンバ21が接続される。このプルチャンバ21の上端には引上げ回転手段22が設けられる。この引上げ回転手段22は、下端にシードチャック23が取付けられた引上げ軸24を昇降させるとともに、この引上げ軸24をその軸線を中心に回転させるように構成される。また上記シードチャック23には種結晶26が着脱可能に装着される。この種結晶26の下端をシリコン融液14中に浸漬した後、種結晶26を引上げ回転手段22により回転させかつ引上げるとともに、るつぼ13をるつぼ駆動手段17により回転させかつ上昇させることにより、種結晶26の下端からシリコン単結晶11を引上げて引上げるように構成される。
【0026】
メインチャンバ12内にはアルゴンガス等の不活性ガスが流通される。プルチャンバ21の側壁にはガス供給パイプ27の一端が接続され、このガス供給パイプ27の他端は不活性ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続される。またメインチャンバ12の下壁にはガス排出パイプ28の一端が接続され、このガス排出パイプ28の他端は真空ポンプ29の吸入口に接続される。タンク内の不活性ガスは、ガス供給パイプ27を通ってプルチャンバ21内に導入され、メインチャンバ12内を通った後、ガス排出パイプ28を通ってメインチャンバ12から排出されるように構成される。なお、ガス供給パイプ27及びガス排出パイプ28にはこれらのパイプを流れる不活性ガスの流量を調整する第1及び第2流量調整弁31,32がそれぞれ設けられる。
【0027】
またメインチャンバ12内には、シリコン単結晶11外周面へのヒータ18の輻射熱の照射を遮るとともに、上記不活性ガスを整流するための熱遮蔽体33が設けられる。この熱遮蔽体33は、下方に向うに従って直径が次第に小さくなりかつシリコン融液14から引上げられるシリコン単結晶11の外周面をこの外周面から所定の間隔をあけて包囲する円錐台状の筒体33aと、この筒体33aの上縁に連設され外方に略水平方向に張り出すフランジ部33bとを有する。熱遮蔽体33は、フランジ部33bを保温筒19上にリング板33cを介して載置することにより、筒体33aの下縁がシリコン融液14表面から所定のギャップをあけて上方に位置するようにメインチャンバ12内に固定される。
【0028】
一方、メインチャンバ12の肩部には覗き窓12aが形成される。この覗き窓12aには、シリコン融液14と種結晶26との境界部、シリコン融液14とシリコン単結晶11のネック部11aとの境界部、シリコン融液14とシリコン単結晶11の肩部11bとの境界部、或いはシリコン融液14とシリコン単結晶11の直胴部11cとの境界部である固液界面34を臨むようにCCDカメラ36が設置される。このCCDカメラ36は引上げ中のシリコン単結晶11を撮影するように構成される。ここで、上記CCDカメラ36は、シリコン基板上に酸化膜を介して金属膜の電極を並べて作製したコンデンサに、光により生じた信号電荷を蓄積して、画像処理手段37からの駆動パルスにより一方向に順次転送させ、電気信号である画像信号を得るカメラであり、このCCDカメラ36の撮影した画像は画像処理手段37により処理される。CCDカメラ36の検出出力は画像処理手段37のカメラ制御入力に接続され、画像処理手段37のカメラ制御出力は2次元CCDカメラ36の制御入力に接続される。また画像処理手段37の制御入出力はコントローラ38の制御入出力に接続され、コントローラ38の制御出力はるつぼ駆動手段17、ヒータ18及び引上げ回転手段22に接続される。なお、コントローラ38の制御入出力には、型式の異同に拘らず同一直径のシリコン単結晶11を引上げる全ての引上げ装置の画像処理手段37の制御入出力が接続され、コントローラ38の制御出力は、型式の異同に拘らず同一直径のシリコン単結晶11を引上げる全ての引上げ装置のるつぼ駆動手段17、ヒータ18及び引上げ回転手段22に接続される。
【0029】
上記コントローラ38には記憶媒体39が接続される。この記憶媒体39にはデータベースが記憶され、このデータベースにはヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータが蓄積される。過去のシリコン単結晶11の引上げデータとしては、シリコン単結晶11を引上げた日付、るつぼ13へのシリコン融液14の仕込み量、引上げ時における上記CCDカメラ36で撮影されたシリコン単結晶11の直径の変化、引上げ装置の型式、その引上げ装置によるシリコン単結晶11の引上げ本数、次にシリコン単結晶11を引上げる引上げ装置と同一であるか否か、その引上げ装置のヒータ18等の部品交換した日付等の引上げデータが挙げられる。また記憶媒体39としては、メモリの他に、ネットワークを通じた外部の記憶媒体などが挙げられる。
【0030】
またコントローラ38はデータベースに蓄積された過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価するように構成される。この第1評価機能は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、次に引上げるシリコン単結晶11の設定引上げ条件と次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに上記設定引上げ条件と上記実績引上げ条件との近さから決定された重み係数とを有する。
【0031】
上記信頼性は、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにおける最小単位の温度傾きの設定値と実績値との差であるヒータ18の温度傾き偏差が算出され、このヒータ18の温度傾き偏差にしきい値が設定され、上記ヒータ18の温度傾き偏差をしきい値と比較して合否が決定された後、シリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたってヒータ18の温度傾き偏差の合格率が算出され、この合格率から過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが評価される機能である。具体的には、図2及び図3に示すように、引上げ長5mm(最小単位)毎のヒータ18の温度傾き偏差が平均値として算出され、このヒータ18の温度傾き偏差が複数のしきい値(第1しきい値:±0.002℃/5mm、第2しきい値:±0.003℃/5mm)より小さい場合に良好であると評価され、大きい場合に不良であると評価され、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格とする合格率が引上げ長100mm毎に算出され、最終的にシリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたって合格率が算出される。
【0032】
図3の一点鎖線で囲んだ部分では、第1及び第2しきい値に対するヒータ18の温度傾き偏差の合格率が低いため、設定不良であると評価され、図3の二点鎖線で囲んだ部分では、第1及び第2しきい値に対するヒータ18の温度傾き偏差の合格率が高いため、設定良好であると評価される。このように過去に引上げたシリコン単結晶11において、引上げ長のどの範囲でヒータ18の温度プロファイルの合格率が良好であったか或いは不良であったかを捉えることができるので、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルをフィードバックするときに、上記合格率が高ければフィードバック量を100%に近付け、合格率が低くければフィードバック量を低くするように信頼性が決定される。即ち、合格率に対する信頼性が記憶媒体39にマップとして記憶されており、コントローラ38は合格率から信頼性を決定するように構成される。なお、この実施の形態では、引上げ長5mm毎のヒータの温度傾き偏差が平均値として算出されるとし、合格率が引上げ長100mm毎に算出されるとし、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格としたが、これらの値に限定されるものではない。また、この実施の形態では、2つのしきい値を設定したが、1つ又は3つ以上のしきい値を設定してもよい。
【0033】
一方、重み係数は、次に引上げるシリコン単結晶11の設定引上げ条件と、過去に引上げたシリコン単結晶11の実績引上げ条件との近さから決定される機能である。例えば、次に引上げるシリコン単結晶11に使用される引上げ装置と、過去に引上げたシリコン単結晶11に使用された引上げ装置が同一である場合や、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ日時と、過去に引上げたシリコン単結晶11の引上げ日時が近い場合には、重み係数は高く設定される。また、次に引上げるシリコン単結晶11に使用される引上げ装置と、過去に引上げたシリコン単結晶11に使用された引上げ装置が同一であっても、ヒータ18等の部品が交換されたり、或いは次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ日時と、過去に引上げたシリコン単結晶11の引上げ日時が遠い場合には、重み係数は低く設定される。即ち、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、過去に引上げたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルをフィードバックするときに、上記重み係数が高ければフィードバック量を100%に近付け、重み係数が低くければフィードバック量を低くするように決定される。そして上記設定引上げ条件及び実績引上げ条件に対する重み係数が記憶媒体39にマップとして記憶されており、コントローラ38は設定引上げ条件及び実績引上げ条件から重み係数を決定するように構成される。このように、コントローラ38は、上記第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正するように構成される。
【0034】
一方、コントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げデータと次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータとを比較し、シリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正するように構成される。
【0035】
またコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つように次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを修正する、引上げ前のならし機能を有する。この引上げ前のならし機能を用いてヒータ18の温度プロファイルを修正するときのならし値をNとするとき、N=[K+(K0−K)×R]で算出される。この式において、Kは設定されたヒータ18の温度プロファイルのうち凹凸を有する区間(以下、凹凸区間という)における最小単位のヒータ温度傾きであり、K0は上記凹凸区間におけるヒータ温度傾きの平均値であり、Rはヒータ温度傾きの平均値K0に近付ける割合(以下、ならし係数という)である。このならし係数は0〜1の範囲内の定数として設定される。ならし係数が『0』であるとき、ならしが実行されないことを示し、ならし係数が『1』であるとき、ヒータ温度傾きの平均値までならしが実行されることを示す。上記ならしを実行する凹凸区間は、最小単位のヒータ温度傾きが斜め上向きから斜め下向きになって再び斜め上向きに変化する区間や、最小単位のヒータ温度傾きが斜め下向きから斜め上向きになって再び斜め下向きに変化する区間である。またシリコン単結晶11のネック部11a及び肩部11bの引上げ時はヒータ18の温度プロファイルが不安定か或いは大きく変化するため、ならしが実行されず、シリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ時にならしが実行されるように設定される。更に上記ならしは、ヒータ温度傾きの凹凸を完全になくすのではなくヒータ温度傾きの凹凸の割合を減じる形で実行されることが好ましい。例えば、ならし係数を0.8程度に設定すると、温度傾きの凹凸が緩和され過ぎてしまい(図4)、ならし係数を0.2程度に設定すると、手動設定でシリコン単結晶11を引上げるときの設定者の設定に略一致することが試運用で判明している(図5)。
【0036】
一方、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に所定の引上げ長毎に上記修正されたヒータ18の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらるつぼ13内のシリコン融液14からシリコン単結晶11を引上げるように構成される。ここで、所定の引上げ長毎は、5〜40mmの範囲内の所定の引上げ長毎に設定される。またシリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ時であって、後述するヒータ温度の単調増加開始点を越えた後に、例えば直胴部11cの最初の200〜400mmの引上げ時に所定の引上げ長毎を10mm毎とし、400mmを越えた引上げ時に所定の引上げ長毎を20mm毎とするように、1本のシリコン単結晶11を引上げるときであっても、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正する間隔を変えてもよい。また上記ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能は、シリコン単結晶11の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定されたヒータ温度及び今回測定されたヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいてヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有する。
【0037】
上記第2評価機能は、ヒータ温度傾きの自動修正が、適正な修正であるか、過剰な修正であるか、不適正な修正(逆の修正)であるかを評価する機能である。この機能を発揮するために、先ず修正候補のヒータ温度傾きK、実際のヒータ温度傾きJ、修正したヒータ温度傾きSの大小関係に基づいて、修正量評価値Lが算出される。この修正量評価値Lは次の式(1)で定義される。
【0038】
L=(K−S)/(J−S) ……(1)
上記式(1)を用いた修正量評価値Lの計算は、シリコン単結晶11の引上げ長が、ヒータ温度傾きの自動修正を開始した位置と自動修正を終了した位置との間にあるときに実行される。ここで、ヒータ温度傾きとは、シリコン単結晶11の引上げ前に設定されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きである。また式(1)において、修正したヒータ温度傾きSとは、後述の表1の修正量評価値L及び修正係数Rの関係に基づくヒータ温度傾きの修正ロジックにより直前に自動修正されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きであり、自動修正の開始直後である場合、引上げ前に設定されたヒータ18の温度プロファイルの温度傾きである。また式(1)において、修正候補のヒータ温度傾きKとは、次に自動修正しようとするヒータ温度傾きである。更に式(1)において、実際のヒータ温度傾きJとは、直前に測定したヒータ温度と今回測定したヒータ温度から算出したヒータ温度傾きである。この実際のヒータ温度傾きJは、例えば、シリコン単結晶11の直胴部11cの最初の200〜400mmの引上げ範囲において引上げ長5mm毎にヒータ温度を測定して算出し、400mmを越えた引上げ範囲において引上げ長10mm毎にヒータ温度を測定して算出することができる。
【0039】
次に修正量評価値Lから、パラメータ(シリコン単結晶11の引上げ時間及び引上げ長、直前に修正したヒータ温度傾き、実際のヒータ温度傾きなど)を設定した表(図示せず)を用いて修正係数Rが設定される。その設定例を次の表1に示す。
【0040】
【表1】
表1において、0<L<1.0の範囲を適正修正とし、この範囲では修正係数Rが大きく設定される。また1.0≦Lの範囲を過剰修正とし、この範囲では修正係数Rが小さく設定される。更にL<0の範囲を不適正修正(逆の修正)とし、この範囲では修正係数Rの符号が『−』に設定される。ここで、1.0≦Lの範囲における修正係数Rを、0<L<1.0の範囲における修正係数Rより小さく設定したのは、次に自動修正するヒータ温度傾きTが実際のヒータ温度傾きJを越えて変化してしまうオーバーアクションを防止するためである。また、0<L<1.0の範囲における修正係数Rを、1.0≦Lの範囲における修正係数Rより大きく設定したのは、次に自動修正するヒータ温度傾きTを実際のヒータ温度傾きJに速やかに一致させるためである。なお、前回の実際のヒータ温度傾きJから前回修正したヒータ温度傾きを差し引いた値が『0』であるとき、即ち修正量評価値Lが『0』であるとき、修正係数Rは修正の必要がなく『0』に設定される。また修正量評価値Lを反映させない場合、修正係数Rは全て同じ設定される。更にヒータ温度傾きの偏差の50%をフィードバックする場合には、修正係数Rは0.5に設定される。
【0041】
一方、上記決定機能を発揮するために、次の式(2)を用いて、修正候補のヒータ温度傾きKの修正量Qが算出され、次の式(3)を用いて、これから自動修正するヒータ温度傾きTが算出される。
【0042】
Q=R×(J−S)=R×K ……(2)
T=K+Q ……(3)
コントローラ38は、上記第2評価機能及び決定機能に基づいて、即ち上記式(3)で算出された次に自動修正するヒータ温度傾きTに基づいて、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正するように構成される。
【0043】
一方、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中において、ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能をヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成される。上記ヒータ温度の単調増加開始点を推測するために、図7に示すように、先ずヒータ温度の単調減少終了点を検出し、このヒータ温度の単調減少終了点を検出した後に、ヒータ温度の単調増加開始点を検出する。次に単調減少終了点から単調増加開始点までのシリコン単結晶11のおおよその引上げ長の範囲が予測可能であるため、この引上げ長の範囲を設定した後に、単調増加開始点を推測する計算処理をこの範囲内で行う。更に単調増加開始点を推測できたときに、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルを設定する設定者にディスプレイ表示や音などにより報知するように構成される。なお、シリコン単結晶11の直胴部11cの引上げ開始時に先ずヒータ温度を徐々に下降させ、その後、ヒータ温度を徐々に上昇させるのは、シリコン単結晶11の直径を一定に保った状態で引上げるためであり、このようにヒータ温度を変化させるのは引上げ装置の構造に起因する。
【0044】
一方、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能は、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、引上げ中のならし機能を更に有する。即ち、コントローラ38は、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、引上げ中にならし計算を行うように構成される。この引上げ中のならし機能は、上記引上げ前のならし機能と同様の機能であるため、繰返しの説明を省略する。
【0045】
このように構成されたシリコン単結晶11の引上げ装置を用いてシリコン単結晶11を引上げる手順を説明する。
【0046】
[1] シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生しない場合のシリコン単結晶11の引上げ手順を図8のフローチャート図に基づいて説明する。先ずコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定対象となる引上げ装置を選択する。次いでコントローラ38は、設定対象となる引上げ装置の引上げ条件に基づいて設定の参考とする過去の引上げデータを記憶媒体39内のデータベースから選択する。そしてコントローラ38は、設定の参考とする過去の引上げデータの引上げ条件から重み係数及び信頼性を算出する。このとき引上げデータが複数存在する場合、コントローラ38はそれらのデータの平均値をそれぞれ算出する。次にコントローラ38は、上記重み係数及び信頼性と設定の参考とする過去の引上げデータから、設定対象のヒータ18の温度プロファイルを算出した後に、設定対象のシリコン単結晶11の引上げに使用する構成部材又は引上げ条件のいずれか一方又は双方に基づいてヒータ18の温度プロファイルの補正量を算出し、この補正量を設定対象のヒータ18の温度プロファイルに加算又は減算する。更にコントローラ38は、設定対象のシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、必要に応じて引上げ前のならし機能を適用し、最終のヒータ18の温度プロファイルを決定する。
【0047】
そして、シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生しない場合には、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正し、この修正された温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。これにより、シリコン単結晶11の直径変動が低減し、シリコン単結晶11の直径制御の操作量である引上げ速度の変動を抑制できる。この結果、設定通りのシリコン単結晶11の引上げを実現することで、高品質なシリコン単結晶11を製造できるとともに、ヒータ18の温度プロファイルの高精度化を実現できる。またシリコン単結晶11の引上げ速度を操作する必要がないので、シリコン単結晶11の引上げ速度Vとシリコン単結晶11の引上げ方向の温度勾配Gとの比V/Gが変動せず、シリコン単結晶11の品質にバラツキが生じることはない。また過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正することにより、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ中に予想される外乱が加熱温度パターンに加味されているため、シリコン単結晶11の直胴部11cを引上げてもその直径が変動することはない。
【0048】
またシリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正するので、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げ中に予想される外乱が加熱温度パターンに更に加味されることになり、ヒータ18の温度プロファイルを更に高精度化することができる。更に引上げ前のならし機能により、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの温度プロファイルを修正するので、シリコン単結晶11の引上げ中のある区間でヒータ18の温度プロファイルの傾きが凹凸となる場合に、その凹凸を緩和して、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付ける。この結果、引上げ前におけるヒータ18の温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。
【0049】
[2] シリコン単結晶11の引上げ中に予想し得ない外乱が発生する場合のシリコン単結晶11の引上げ手順を図8〜図10のフローチャート図に基づいて説明する。先ず上記[1]と同様にして、シリコン単結晶11を引上げる前に、このシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルの設定に寄与する過去のシリコン単結晶11の引上げデータをデータベースに蓄積し、この過去のシリコン単結晶11の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶11のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、この第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正する(図8)。そして、この修正されたシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルに、必要に応じて引上げ前のならし機能を適用し、最終のヒータ18の温度プロファイルを決定する。
【0050】
そして、コントローラ38は、上記最終のヒータ18の温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。このとき、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を発揮させる(図9)。これによりヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を効率良く発揮させることができる。その後、シリコン単結晶11の引上げ中に、シリコン融液14の地震等による液面振動の発生や、引上げ装置に使用される構成部材の変更等により、予想し得ない外乱が発生した場合、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、上記決定された最終の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。引上げ中にヒータの温度プロファイルが既に自動修正されている場合には、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、この自動修正された温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げる。即ち、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータ18の温度プロファイルの自動修正を繰り返す。このヒータ18の温度プロファイルを自動修正するために必要な修正候補のヒータ温度傾きKが、適正修正である場合、過剰修正である場合、及び不適正修正(逆の修正)である場合に分けて、次に修正するヒータ温度傾きTを求める方法を説明する(図9〜図10)。
【0051】
(a) 修正候補のヒータ温度傾きKが適正修正である場合
適正修正は、例えば図6(a)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば2.0であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば1.0であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.2であり、KがS及びJの間に位置する場合である。この適正修正の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−0.8/−1.0=0.8となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から0.8となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=0.8×1.2=0.96となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=K+Q=1.2+0.96=2.16となる。
【0052】
(b) 修正候補のヒータ温度傾きKが過剰修正である場合
過剰修正は、例えば図6(b)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば2.0であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば1.2であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.0であり、JがSより小さくかつKより大きい場合である。この過剰修正の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−1.0/−0.8=1.25となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から0.2となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=0.2×1.0=0.2となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=はK+Q=1.0+0.2=1.2となる。
【0053】
(c) 修正候補のヒータ温度傾きKが不適正修正(逆の修正)である場合
不適正修正(逆の修正)は、例えば図6(c)に示すように、直前に修正したヒータ温度傾きSが例えば1.2であり、今回の実際のヒータ温度傾きJが例えば2.0であり、修正候補のヒータ温度傾きKが例えば1.0であり、JがS及びKより大きくかつKがSより小さい場合である。この不適正修正(逆の修正)の場合、修正量評価値Lは式(1)を用いて、L=(K−S)/(J−S)=−0.2/0.8=−0.25となり、この修正量評価値Lに対する修正係数Rは表1から−0.2となる。そしてヒータ温度傾きの修正量Qは式(2)を用いて、Q=R×K=−0.2×1.0=−0.2となり、次に修正するヒータ温度傾きTは式(3)を用いて、T=はK+Q=1.0+(−0.2)=0.8となる。
【0054】
そして、コントローラ38は、上記式(3)で算出された次に自動修正するヒータ温度傾きTに基づいて、ヒータ18の温度プロファイルを自動修正する。この結果、引上げ中に生じるシリコン単結晶11の直径への外乱がヒータ温度に与える影響を抑制できるので、高品質なシリコン単結晶11を製造できる。更にコントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能により、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行う(図10)。これにより、引上げ中にヒータ18の温度プロファイルを自動修正して、ヒータ18の温度プロファイルの傾きが凹凸となっても、その凹凸が緩和されて、その区間の温度プロファイルの傾きの平均値に近付く。この結果、自動修正後のヒータ18の温度プロファイルに生じた大きな凹凸を低減できる。なお、上記実施の形態では、半導体単結晶としてシリコン単結晶を挙げたが、GaAs単結晶、InP単結晶、ZnS単結晶、ZnSe単結晶等でもよい。
【実施例】
【0055】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0056】
<実施例1>
図1に示す引上げ装置を20基用意し、これらの引上げ装置を第1〜第20引上げ装置とし、これらの引上げ装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶11を引上げた。具体的には、るつぼ13に多結晶シリコン原料を充填しヒータ18により溶融し、このシリコン融液14から直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶11をそれぞれ5回ずつ引上げた。これらの引上げデータを記憶媒体39のデータベースに記憶した。そして第7引上げ装置を用いて次のシリコン単結晶11を引上げる前に、コントローラ38は、第1評価機能の信頼性及び重み係数に基づいて、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを引上げ前に修正した。ここで、コントローラ38は信頼性を次のようにして決定した。引上げ長5mm毎のヒータ18の温度傾き偏差を平均値として算出し、このヒータ18の温度傾き偏差を第1しきい値:±0.002℃/5mmと比較し、良好であると評価された割合が80%以上であるときに合格とする合格率を引上げ長100mm毎に算出し、シリコン単結晶11の直胴部11c全長にわたって合格率を算出した後に、記憶媒体39にマップとして記憶された合格率に対する信頼性の関係に基づいて信頼性を決定した。
【0057】
またコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11の引上げデータと次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルにフィードバックされる過去のシリコン単結晶11の引上げデータとを比較し、シリコン単結晶11の引上げに用いられる構成部材又はシリコン単結晶11の引上げ条件のいずれか一方又は双方の相違を、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度設定値に換算して次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを補正した。更にコントローラ38は、次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つように次に引上げるシリコン単結晶11のヒータ18の温度プロファイルを修正した。ここで、引上げ前のならし係数を0.2に設定した。更にコントローラは、上記のように修正されかつ補正されたヒータの温度プロファイルに基づいてヒータ18を制御しながらるつぼ13内のシリコン融液14からシリコン単結晶11を引上げた。
【0058】
このとき、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中におけるヒータ温度の単調増加開始点を推測し、この単調増加開始点を越えてからヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能を発揮させた。その後、シリコン単結晶11の引上げ中に、予想し得ない外乱が発生したときに、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、上記決定された最終の温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げた。引上げ中にヒータの温度プロファイルが既に自動修正されている場合には、コントローラ38は、シリコン単結晶11の引上げ中に、所定の引上げ長毎に、この自動修正された温度プロファイルを更に自動修正し、この自動修正された温度プロファイルに基づいて、ヒータ18を制御しながらシリコン単結晶11を引上げた。即ち、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能に基づいてヒータ18の温度プロファイルの自動修正を繰り返した。また、コントローラ38は、ヒータ18の温度プロファイルの自動修正機能のうち引上げ中のならし機能により、自動修正したヒータ18の温度プロファイルが連続性を保つようにこの自動修正したヒータ18の温度プロファイルに対して、ならし計算を行った。このシリコン単結晶を実施例1とした。
【0059】
<比較例1>
第1評価機能の信頼性及び重み係数を用いず、ヒータの温度プロファイルの自動修正機能の第2評価機能及び決定機能を用いず、更に引上げ前のならし機能及び引上げ中のならし機能を用いなかったこと以外は、実施例1の第7引上げ装置と同型の第10引上げ装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハを製作するためのシリコン単結晶を引上げた。このシリコン単結晶を比較例1とした。
【0060】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び比較例1のシリコン単結晶の直胴部の引上げ率20〜80%に対する直径標準化値を求めた。その結果を図11及び図12に示す。ここで、るつぼに貯留されたシリコン融液を全てシリコン単結晶として引上げたときの引上げ率を100%とした場合、引上げ率20〜80%の範囲はシリコン単結晶の直胴部を引上げている範囲となる。またシリコン単結晶の直径標準化値Ziは、シリコン単結晶の直径の実測値をxiとし、シリコン単結晶の直径の平均値をAとするとき、Zi=xi/Aで表される。このように直径標準化値を用いたのは、比較を容易にするためである。
【0061】
図11及び図12から明らかなように、比較例1のシリコン単結晶では、その直径の変動が全長にわたって大きかったのに対し、実施例1のシリコン単結晶では、その直径の変動が全長にわたって小さくなったことが分かった。この結果、実施例1のシリコン単結晶では、直径制御のために操作される引上げ速度のばらつきも低減し、シリコン単結晶の引上げ速度Vとシリコン単結晶の引上げ方向の温度勾配Gとの比V/Gの変動が抑えられ、品質のばらつきも低減した。即ち、比較例1のシリコン単結晶では結晶欠陥が発生したのに対し、実施例1のシリコン単結晶では結晶欠陥の発生は見られなかった。
【0062】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び比較例1のシリコン単結晶の直胴部を引上げたときの温度設定値合格率及び直径標準化値の標準偏差を求めた。ここで、温度設定値合格率とは、この明細書の[発明を実施するための形態]に記載したように、シリコン単結晶の直胴部全長にわたって算出されたヒータの温度傾き偏差の合格率である。具体的には、引上げ長5mm(最小単位)毎のヒータの温度傾き偏差を平均値として算出し、このヒータの温度傾き偏差が第1しきい値=±0.002℃/5mmより小さい場合に良好であると評価し、大きい場合に不良であると評価した。そして良好であると評価した割合が80%以上であるときに合格とする合格率を引上げ長100mm毎に算出し、最終的にシリコン単結晶の直胴部全長にわたって合格率を算出した。一方、直径標準化値の標準偏差とは、上記<比較試験1及び評価>で求めた直径標準化値をシリコン単結晶の直胴部全長にわたって算術平均した値である。これらの結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
表2から明らかなように、比較例1では、温度設定値合格率が60%と低かったのに対し、実施例1では、温度設定値合格率が90%と高くなったことが分かった。また、比較例1では、直径標準化値の標準偏差が0.00087と大きかったのに対し、実施例1では、直径標準化値の標準偏差が0.00052と小さくなったことが分かった。
【符号の説明】
【0064】
11 シリコン単結晶(半導体単結晶)
13 るつぼ
14 シリコン融液(半導体融液)
18 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体単結晶の引上げ装置のるつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解して前記るつぼに半導体融液を貯留し、前記引上げ装置に予め設定された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げる半導体単結晶の引上げ方法において、
前記ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積する工程と、
前記データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する工程と、
前記第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正する工程と、
この修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる工程とを含み、
前記半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に前記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げることを特徴とする半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項2】
前記第1評価機能が、前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、前記次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに前記設定引上げ条件及び前記実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、
前記信頼性及び前記重み係数に基づいて前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正する請求項1記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項3】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正したヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて次に自動修正するヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有する請求項1記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項4】
前記半導体単結晶の引上げ中における前記ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能が前記ヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮される請求項1又は3記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項5】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つように前記自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、ならし機能を更に有する請求項1、3又は4いずれか1項に記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項6】
るつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解して前記るつぼに半導体融液が貯留され、コントローラが予め設定された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成された半導体単結晶の引上げ装置において、
前記コントローラは、
前記ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、
前記データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、
この第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、
この修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げ、
前記半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に前記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げるように構成された
ことを特徴とする半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項7】
前記第1評価機能が、前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、前記次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに前記設定引上げ条件及び前記実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、
前記コントローラが前記信頼性及び前記重み係数に基づいて前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正するように構成された請求項6記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項8】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて前記ヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有し、
前記コントローラは、前記第2評価機能及び前記決定機能に基づいて前記ヒータの温度プロファイルを自動修正するように構成された請求項6記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記半導体単結晶の引上げ中における前記ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を前記ヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成された請求項6又は8記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つように前記自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うように構成された請求項6、8又は9いずれか1項に記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項1】
半導体単結晶の引上げ装置のるつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解して前記るつぼに半導体融液を貯留し、前記引上げ装置に予め設定された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げる半導体単結晶の引上げ方法において、
前記ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積する工程と、
前記データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げるシリコン単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価する工程と、
前記第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正する工程と、
この修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げる工程とを含み、
前記半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に前記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げることを特徴とする半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項2】
前記第1評価機能が、前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、前記次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに前記設定引上げ条件及び前記実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、
前記信頼性及び前記重み係数に基づいて前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正する請求項1記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項3】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正したヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて次に自動修正するヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有する請求項1記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項4】
前記半導体単結晶の引上げ中における前記ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能が前記ヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮される請求項1又は3記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項5】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つように前記自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行う、ならし機能を更に有する請求項1、3又は4いずれか1項に記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【請求項6】
るつぼに供給された半導体原料をヒータにより融解して前記るつぼに半導体融液が貯留され、コントローラが予め設定された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げるように構成された半導体単結晶の引上げ装置において、
前記コントローラは、
前記ヒータの温度プロファイルの設定に寄与する過去の半導体単結晶の引上げデータをデータベースに蓄積し、
前記データベースに蓄積された過去の半導体単結晶の引上げデータから次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを第1評価機能に基づいて評価し、
この第1評価機能に基づいて次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを引上げ前に修正し、
この修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から半導体単結晶を引上げ、
前記半導体単結晶の引上げ中に所定の引上げ長毎に前記修正された温度プロファイルを更に自動修正しこの自動修正された温度プロファイルに基づいて前記ヒータを制御しながら前記るつぼ内の半導体融液から前記半導体単結晶を引上げるように構成された
ことを特徴とする半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項7】
前記第1評価機能が、前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶のヒータの温度プロファイルの設定値と実績値との近さから決定された信頼性と、前記次に引上げる半導体単結晶の設定引上げ条件と前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルにフィードバックされる前記過去の半導体単結晶の引上げデータのうち実績引上げ条件とを比較したときに前記設定引上げ条件及び前記実績引上げ条件の近さから決定された重み係数とを有し、
前記コントローラが前記信頼性及び前記重み係数に基づいて前記次に引上げる半導体単結晶のヒータの温度プロファイルを修正するように構成された請求項6記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項8】
前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能は、前記半導体単結晶の引上げ中であって直前に自動修正されたヒータ温度傾きと直前に測定したヒータ温度及び今回測定したヒータ温度に基づくヒータ温度傾きとの差異に基づいて次に自動修正する候補のヒータ温度傾きを評価する第2評価機能と、この第2評価機能により得られた結果に基づいて前記ヒータ温度傾きを決定する決定機能とを有し、
前記コントローラは、前記第2評価機能及び前記決定機能に基づいて前記ヒータの温度プロファイルを自動修正するように構成された請求項6記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記半導体単結晶の引上げ中における前記ヒータ温度の単調増加開始点を推測し、前記ヒータの温度プロファイルの自動修正機能を前記ヒータ温度の単調増加開始点を越えてから発揮させるように構成された請求項6又は8記載の半導体単結晶の引上げ装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記自動修正したヒータの温度プロファイルが連続性を保つように前記自動修正したヒータの温度プロファイルに対して、ならし計算を行うように構成された請求項6、8又は9いずれか1項に記載の半導体単結晶の引上げ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−1617(P2013−1617A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136027(P2011−136027)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]