説明

半導体回路

【課題】小型で小電力の高速動作するレベルシフト回路を提供する。
【解決手段】基準電圧にソースがそれぞれ接続され、第1の信号と第1の信号の反転信号がゲートにそれぞれ入力される第1導電型の第1と第2のトランジスタと、第2の電源電圧にソースが接続された第2導電型の第3のトランジスタと、第2の電源電圧にソースが接続され、ドレインから第2の信号を出力する第2導電型の第4のトランジスタとを有し、第1と第2の第1導電型トランジスタのドレインに第1と第2の第2導電型トランジスタのドレインがそれぞれ接続され、第3と第4のトランジスタのゲートとドレインはそれぞれ電気的に交差接続され、さらに、交差接続において、第3のトランジスタのドレインと第4のトランジスタのゲートの間にソース、ドレインが接続され、ゲートが第4のトランジスタのドレインに接続された第2導電型の第5のトランジスタを有するレベルシフト回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路は、省電力化の要請に対応して、外部回路の電源電圧より低い内部電源電圧で動作する内部回路を有する。そして、外部回路と内部回路のインターフェースには、レベルシフト回路が設けられ、レベルシフト回路は、その振幅が内部電源電圧に対応する内部信号を外部電源電圧に対応する外部信号に変換する。つまり、レベルシフト回路は、内部回路から入力される小振幅の内部信号を大振幅の外部信号にレベル変換して外部回路に出力する。
【0003】
レベルシフト回路は、例えば特許文献1、2に記載されている。
【0004】
また、近年の半導体集積回路における処理の高速化に伴い、レベルシフト回路には、より高い周波数特性が要求される。つまり、レベルシフト回路には、より高周波信号を適切にレベル変換する高速動作が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-287699(A) 公報
【特許文献2】特開2001-339290(A) 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レベルシフト回路を高速動作させるためには、例えばレベルシフト回路が有するトランジスタのサイズを大きくする必要がある。その場合、回路面積が大きくなり、さらに消費電流も増大する。そして、レベルシフト回路の消費電流の増大は、半導体集積回路において、内部回路を低電源電圧で動作させる省電力化の要請に相反する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、小型で小電力の高速動作するレベルシフト回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様によれば、基準電圧と第1の電源電圧の間で変化する第1の信号を、前記基準電圧と前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧の間で変化する第2の信号に変換するレベルシフト回路において、前記基準電圧にソースがそれぞれ接続され前記第1の信号と前記第1の信号の反転信号がゲートにそれぞれ入力される第1導電型の第1と第2のトランジスタと、
前記第2の電源電圧にソースが接続された第2導電型の第3のトランジスタと、前記第2の電源電圧にソースが接続されドレインから前記第2の信号を出力する第2導電型の第4のトランジスタとを有し、前記第1と第2の第1導電型トランジスタのドレインに前記第1と第2の第2導電型トランジスタのドレインがそれぞれ接続され、前記第3と第4のトランジスタのゲートとドレインはそれぞれ電気的に交差接続され、さらに、前記第3のトランジスタのドレインと前記第4のトランジスタのゲートの間にソース、ドレインが接続され、ゲートが前記第4のトランジスタのドレインに接続された第2導電型の第5のトランジスタを有し、前記第4のトランジスタのゲートにドレインが接続され、前記基準電圧にソースが接続され、前記第1の信号がゲートに入力される第1導電型の第6のトランジスタを有する。
【発明の効果】
【0009】
上記の発明によれば、小型で小電力の高速動作するレベルシフト回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】レベルシフト回路を示す回路図の一例である。
【図2】図1に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。
【図3】入力信号Vin1、Vin2がより高周波で変化する場合の図1に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第1の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。
【図5】入力信号Vin1がLレベル(GND)からHレベル(VII)に立上がる場合の図4に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。
【図6】図4に示すレベルシフト回路において、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達した後に、入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。
【図7】図4に示すレベルシフト回路において、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達する前に、入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。
【図8】第2の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。
【図9】第2の実施の形態のレベルシフト回路において入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。
【図10】第3の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。
【図11】図10に示す第3の実施の形態のレベルシフト回路において入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に従って実施の形態について説明する。但し、本技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0012】
図1は、レベルシフト回路を示す回路図の一例である。図1のレベルシフト回路は内部回路1から入力される小振幅の信号Vin1、Vin2を大振幅の信号Voutに変換して外部回路に出力する。図1のレベルシフト回路は、NチャネルトランジスタMn1、Mn2とPチャネルトランジスタMp1、Mp2を有する。また、必要に応じて出力信号を反転させるためのインバータInv1が設けられる。
【0013】
PチャネルトランジスタMp1、Mp2のソースはそれぞれ電源VDDに接続され、NチャネルトランジスタMn1、Mn2のソースはそれぞれ基準電圧GNDに接続されている。PチャネルトランジスタMp1、Mp2のドレインはNチャネルトランジスタMn1、Mn2のドレインにそれぞれ接続され、PチャネルトランジスタMp1、Mp2のゲートはPチャネルトランジスタMp2、Mp1のドレインノードn3、n2とクロスカップリングされている。
【0014】
レベルシフト回路のNチャネルトランジスタMn1、Mn2のゲートには、入力信号Vin1、Vin2が入力される。例えば図1に示すようにNチャネルトランジスタMn1のゲートには、電源VII(<VDD)に接続された内部回路1から振幅が基準電圧GNDから電源電圧VIIまでの小振幅の入力信号Vin1が入力される。また、NチャネルトランジスタMn2のゲートには、インバータInv2を介して入力信号Vin1に対応する反転入力信号Vin2が入力される。そして、レベルシフト回路は、小振幅の入力信号Vin1、Vin2をレベル変換し、振幅が基準電圧GNDから電源電圧VDDまでの大振幅の出力信号Voutを外部回路に出力する。
【0015】
図2は、図1に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。図2には、時間に対する入力信号Vin1、Vin2、ノードn2、n3、出力信号Voutの電圧レベルの変化の一例が示されている。
【0016】
図2も含め、以下に示すタイミングチャートは、各信号およびノードの電圧レベルを定性的に示したものである。つまり、図中に示す各レベルの変化の傾きや時間等は定量的な値を示すものではない。
【0017】
時間t1において、入力信号Vin1、Vin2としてNチャネルトランジスタMn1のベースには、Lレベル(GND)の信号が入力され、NチャネルトランジスタMn2のベースには、Hレベル(VII)の信号が入力されている。つまり、NチャネルトランジスタMn1はOFF状態であり、NチャネルトランジスタMn2はON状態である。
【0018】
また、ノードn3は、NチャネルトランジスタMn2がON状態であるため、Lレベル(GND)である。PチャネルトランジスタMp1は、そのゲートがLレベルのノードn3と接続されているため、ON状態であり、ノードn2は、Hレベル(VDD)である。PチャネルトランジスタMp2は、そのゲートがHレベルのノードn2と接続されているため、OFF状態である。そして、ノードn3の電圧レベルが波形整形用インバータInv1により反転されてHレベル(VDD)の出力信号Voutが外部回路に出力されている。
【0019】
レベルシフト回路は、以上の定常状態から、入力信号Vin1、Vin2のHレベルとLレベルの反転に対応して状態遷移する。
【0020】
時間t2において、入力電圧Vin1がNチャネルトランジスタMn1の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn1はOFF状態からON状態に変化する。ここで、PチャネルトランジスタMp1もON状態であるため、PチャネルトランジスタMp1とNチャネルトランジスタMn1を介して電源VDDから基準電圧GND間に貫通電流が流れる。そのため、ノードn2の電圧レベルは、PチャネルトランジスタMp1とNチャネルトランジスタMn1のON抵抗値の比に応じて低下し始める。
【0021】
時間t3において、入力電圧Vin2が、NチャネルトランジスタMn2の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn2はON状態からOFF状態に変化する。
【0022】
時間t4において、ノードn2の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、ノードn2の電圧レベルの変化に応じてOFF状態からON状態に変化し始める。
【0023】
そして、ノードn3が次第に充電される。
【0024】
時間t5において、ノードn3の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp1は、完全にOFF状態に変化する。そして、NチャネルトランジスタMn1はON状態であるため、充電されたノードn2の電圧レベルは、次第にLレベル(GND)に達する。
【0025】
ここで、時間t5以降、PチャネルトランジスタMp2のゲートに入力されるノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達するまで、PチャネルトランジスタMp2は状態遷移しており、それに伴いノードn3の電圧レベルも状態遷移している。
【0026】
時間t6において、ノードn3の電圧レベルはHレベル(VDD)に達する。
【0027】
時間t7において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。つまり、レベルシフト回路は、時間t1の定常状態から時間t2〜t7の状態遷移期間Tc1を経て異なる定常状態に遷移する。
【0028】
また、出力信号Voutは、ノードn3の反転されたレベルであり、ノードn3の立上がりに対応して、Lレベル(GND)の出力信号Voutが外部回路に出力される。
【0029】
また、入力信号Vin1の立下がりにおいて、レベルシフト回路では、時間t9〜t14に示すように逆の状態遷移が行われる。そして、レベルシフト回路は、その状態遷移期間Tc2を経て、時間t1と同じもとの定常状態になり、Hレベル(VDD)の出力信号Voutが外部回路に出力される。
【0030】
以降、同様にレベルシフト回路は、入力信号Vin1、Vin2の反転に応じて状態遷移を経て異なる2つの定常状態を繰り返す。
【0031】
図3は、入力信号Vin1、Vin2がより高周波で変化する場合の図1に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。図3は、レベルシフト回路が状態遷移中に入力信号Vin1、Vin2が反転した場合のノードn2、n3および出力信号Voutの電圧レベルの変化を示す。また、図3中のノードn2、n3の電圧レベルの変化において時間t20〜t23に示す破線は、図2に示すノードn2、n3の電圧レベルの変化である。
【0032】
図3の時間t1〜t20までのノードn2、n3の電圧レベルの変化は、図2に示すノードn2、n3の電圧レベルの変化と同様であるが、入力信号が高周波で変化するため状態遷移中である時間t20において、NチャネルトランジスタMn2がOFF状態からON状態に変化する。さらに、時間t21において、NチャネルトランジスタMn1がON状態からOFF状態に変化する。そのため、ノードn3の電圧レベルは、Hレベル(VDD)に達することなく、Lレベル(GND)に戻される。
【0033】
このように、入力信号Vin1、Vin2が、ある特定の周波数よりも高くなり、ノードn3の電圧レベルが遷移中に入力信号Vin1、Vin2が反転すると、ノードn3の電圧レベルはHレベル(VDD)とLレベル(GND)の間をフルスイングすることができない。
【0034】
すなわち、レベルシフト回路は、入力信号Vin1、Vin2の変化に追従してレベル変換動作することができないため、図3に示すように、適切にレベル変換された出力信号Voutは出力されない。
【0035】
以上より、図1におけるレベルシフト回路が適切にレベル変換動作するためには、少なくとも、入力信号Vin1、Vin2の反転周期よりも、その状態遷移期間Tc1、Tc2が短くなる必要がある。例えば図2において、入力信号Vin1、Vin2の反転周期は、期間t2〜t9で示されるが、その反転周期よりもレベルシフト回路の状態遷移期間Tc1、Tc2は短いため、適切なレベル変換が行われている。
【0036】
以下に示す本実施の形態におけるレベルシフト回路では、その状態遷移が高速に行われ、ノードn3の遷移期間を含め、レベルシフト回路の状態遷移期間Tc1、Tc2が短縮される。つまり、本レベルシフト回路は、より高周波の入力信号Vin1、Vin2に対しても追従可能であり、適切にレベル変換された出力信号Voutを出力する。
【0037】
また、図2の期間To1の間は、PチャネルトランジスタMp1、NチャネルトランジスタMn1は共にON状態である。そのため、PチャネルトランジスタMp1とNチャネルトランジスタMn1を介して電源VDDから基準電圧GNDに貫通電流が流れる。同様に、期間To2の間は、PチャネルトランジスタMp2、NチャネルトランジスタMn2は共にON状態である。そのため、PチャネルトランジスタMp2とNチャネルトランジスタMn2を介して電源VDDから基準電圧GNDに貫通電流が流れる。これらの期間To1、To2に流れる貫通電流は、レベルシフト回路における消費電力の増加につながる。
【0038】
しかし、本実施の形態におけるレベルシフト回路では、状態遷移が高速に行われるため、期間To1、To2も短縮され、貫通電流の流量が低減される。すなわち、本実施の形態におけるレベルシフト回路は小電力を実現する。
【0039】
[第1の実施の形態]
図4は、第1の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。本レベルシフト回路は、図1のレベルシフト回路と比較すると、PチャネルトランジスタMp3とNチャネルトランジスタMn3を有する点で異なる。PチャネルトランジスタMp3のドレインDは、PチャネルトランジスタMp2のゲートに接続され、ソースSはPチャネルトランジスタMp1のドレインに接続され、ゲートはPチャネルトランジスタMp2のドレインに接続されている。また、NチャネルトランジスタMn3のドレインは、PチャネルトランジスタMp2のゲートに接続され、ソースは基準電圧GNDに接続され、ゲートにはNチャネルトランジスタMn1と同じ入力信号Vin1が入力される。
【0040】
図5は、入力信号Vin1がLレベル(GND)からHレベル(VII)に立上がる場合の図4に示すレベルシフト回路の動作を示すタイムチャートである。
【0041】
図5には、図2示すタイムチャートとの比較のために、図2と同じ状態遷移期間Tc1並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_0、n3_0が破線で示されている。
【0042】
図5の時間t41と図2の時間t1の入力信号Vin1、Vin2の電圧レベルは対応して等しい。そして、図4に示すレベルシフト回路の時間t41における各トランジスタMn1、Mn2、Mp1、Mp2の状態およびノードn2、n3の電圧レベルは、図1に示すレベルシフト回路の図2の時間t1における定常状態と一致している。
【0043】
また、ノードn3はLレベル(GND)であるため、PチャネルトランジスタMp3は、ON状態であり、ノードn1とノードn2はPチャネルトランジスタMp3を介して電気的に接続され、それらの電圧レベルは等しい。NチャネルトランジスタMn3は、入力信号Vin1がLレベル(GND)であるため、OFF状態であり、ノードn1と基準電圧GNDは電気的に非接続である。
【0044】
つまり、時間t41において、図4に示すレベルシフト回路の各トランジスタMn1、Mn2、Mp1、Mp2の状態と対応する各ノードの電圧レベルと電気的な接続状態は、上述した図1に示すレベルシフト回路の時間t1における状態と同様である。
【0045】
図4に示すレベルシフト回路は、以上の時間t41における定常状態から、入力信号Vin1、Vin2のHレベルとLレベルの反転に対応して状態遷移する。
【0046】
時間t42において入力電圧Vin1が、NチャネルトランジスタMn1の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn1、Mn3はOFF状態からON状態に変化する。ここで、PチャネルトランジスタMp1もON状態であるため、PチャネルトランジスタMp1とNチャネルトランジスタMn1、Mn3を介して電源VDDから基準電圧GND間に貫通電流が流れる。そして、ノードn1、n2の電圧レベルは、PチャネルトランジスタMp1とNチャネルトランジスタMn1、Mn3のON抵抗値の比に応じて低下し始める。
【0047】
並列に接続されたNチャネルトランジスタMn1、Mn3のON抵抗の合成抵抗値は、NチャネルトランジスタMn1のみの場合と比較して小さい。つまり、図1に示すレベルシフト回路のNチャネルトランジスタMn1の電流駆動能力と比較して、図4に示すレベルシフト回路のNチャネルトランジスタMn1、Mn3の電流駆動能力は大きい。そのため、図5に示すように、図2に示すレベルシフト回路のノードn2(n1)の電圧レベルの立下りは、図2に示すレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルn2_0の変化と比較して速い。
【0048】
時間t43において、入力電圧Vin2が、NチャネルトランジスタMn2の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn2はON状態からOFF状態になる。
【0049】
時間t44において、ノードn2の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、ノードn2の電圧レベルの変化に応じてOFF状態からON状態に変化し始める。
【0050】
そして、ノードn3が次第に充電される。
【0051】
図5に示すノードn2の電圧レベルの変化には、ノードn3の電圧レベルの変化が破線で示されている。そこに示すように、時間t44以降、ノードn2(n1)の電圧レベルは低下し、ノードn3の電圧レベルは上昇する。そして、時間t45においてノードn2とノードn3の電圧レベル差が閾値電圧Vthに達するとPチャネルトランジスタMp3がON状態からOFF状態に変化する。
【0052】
すなわち、本実施の形態のレベルシフト回路は、電源VDDよりもノードn2の電圧レベルが低いため、PチャネルトランジスタMp1よりもPチャネルトランジスタMp3が先にOFF状態に変化する。
【0053】
そして、NチャネルトランジスタMn3はON状態であるため、PチャネルトランジスタMp3の変化に応答してノードn1の電圧レベルは急速に低下し、Lレベル(GND)に達する。また、PチャネルトランジスタMp2は、ノードn1の電圧レベルの低下に応じて、よりON状態に変化するため、ノードn3の電圧レベルは急速に上昇する。
【0054】
時間t46において、ノードn3の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp1は、完全にOFF状態になる。そして、NチャネルトランジスタMn1はON状態であるため、充電されたノードn2の電圧レベルは、次第にLレベル(GND)に達する。
【0055】
時間t47において、ノードn3の電圧レベルはHレベル(VDD)に達する。
【0056】
そして、時間t48において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。つまり、レベルシフト回路は、時間t41の定常状態から状態遷移期間Tc41を経て時間t48の異なる定常状態に遷移する。
【0057】
また、出力信号Voutは、ノードn3の反転されたレベルであり、ノードn3の立上がりに対応して、Lレベル(GND)の出力信号Voutが外部回路に出力される。
【0058】
また、図5に示すように、以上の状態遷移に従い、本実施の形態のレベルシフト回路の状態遷移期間Tc41は、図1のレベルシフト回路の状態遷移期間Tc1よりも短縮される。さらに、状態遷移中に貫通電流の流れる期間To41も短縮されるため、レベルシフト回路の消費電力は低減される。
【0059】
このように、本実施の形態では、入力信号Vin1の立上がりにおいて、遷移状態では電源VDDよりもノードn2の電圧レベルが低いため、PチャネルトランジスタMp1よりもPチャネルトランジスタMp3が先にOFF状態に変化する。そして、この変化に応答して、ON状態であるNチャネルトランジスタMn3を介して基準電圧GNDと電気的に接続されたPチャネルトランジスタMp2のゲートが、急速にLレベル(GND)に達し、PチャネルトランジスタMp2は完全にON状態に変化する。さらに、その変化に対応してノードn3は急速にHレベル(VDD)に達し、PチャネルトランジスタMp1は完全にOFF状態に変化する。そして、NチャネルトランジスタMn1がON状態であるため、ノードn2は、次第にLレベル(GND)に達する。
【0060】
つまり、本実施の形態のレベルシフト回路では、入力信号Vin1の立上がりにおいて、PチャネルトランジスタMp1よりもPチャネルトランジスタMp3が先にOFF状態に変化するため、ノードn3の立上がり遷移が高速に行われる。すなわち、入力信号Vin1の立上がり時のレベル変換動作がより高速化される。
【0061】
図6は、図4に示すレベルシフト回路において、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達した後に、入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。図6において、入力信号Vin1が立下がるタイミングTmg2は、図5に示すタイミングTmg2に対応している。
【0062】
図6には、図2示すタイムチャートとの比較のために、図2と同じ状態遷移期間Tc2が破線で示されている。
【0063】
図6の時間t61における図4に示すレベルシフト回路の状態は、図5の時間t48における状態遷移後の定常状態に対応している。つまり、図6の時間t61において、入力信号Vin1、Vin2としてNチャネルトランジスタMn1、Mn3のベースには、Hレベル(VII)が入力され、NチャネルトランジスタMn2のベースには、Lレベル(GND)が入力されている。よって、NチャネルトランジスタMn1、Mn3はON状態であり、NチャネルトランジスタMn2はOFF状態である。また、PチャネルトランジスタMp3はOFF状態である。そして、PチャネルトランジスタMp1、Mp2は、それぞれOFF状態、ON状態であり、ノードn1、n2は、Lレベル(GND)であり、ノードn3はHレベル(VDD)である。
【0064】
図4に示す本実施の形態におけるレベルシフト回路は、以上の定常状態から、入力信号Vin1、Vin2のHレベルとLレベルの反転に対応して状態遷移する。
【0065】
時間t62において入力電圧Vin2が、NチャネルトランジスタMn2の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn2はOFF状態からON状態に変化する。ここで、PチャネルトランジスタMp2もON状態であるため、PチャネルトランジスタMp2とNチャネルトランジスタMn2を介して電源VDDから基準電圧GND間に貫通電流が流れる。そして、ノードn3の電圧レベルは、PチャネルトランジスタMp2とNチャネルトランジスタMn2のON抵抗値の比に応じて図2に示すレベルシフト回路のノードn3の電圧レベルの変化と同様に低下し始める。
【0066】
時間t63において、入力電圧Vin1が、NチャネルトランジスタMn1、Mn3の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn1、Mn3はON状態からOFF状態に変化する。
【0067】
時間t64において、ノードn3の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp1は、ノードn3の電圧レベルの変化に応じてOFF状態からON状態に変化し始める。
【0068】
そして、ノードn2が次第に充電されていく。ここで、ノードn1、n2は電気的に非接続であるため、ノードn1の電圧レベルは変化しない。
【0069】
図6に示すノードn1の電圧レベルの変化には、ノードn2、n3の電圧レベルの変化が破線で示されている。そこに示すように、時間t64以降は、ノードn3の電圧レベルが低下し、ノードn2の電圧レベルが上昇し、時間t65においてノードn2の電圧レベルがノードn3の電圧レベルよりも高く、そのレベル差が閾値電圧Vthに達するとPチャネルトランジスタMp3がOFF状態からON状態に変化する。つまり、時間t65においてノードn1とノードn2が電気的に接続される。
【0070】
そして、ノードn1の電圧レベルは、ノードn2の電圧レベルに追従して急速に上昇し、時間t66でそれらのレベルが一致する。さらに、ON状態であったPチャネルトランジスタMp2は、ノードn2の電圧レベルに応じて急速にOFF状態に変化し始める。
【0071】
時間t67において、ノードn1(n2)の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、完全にOFF状態に変化する。そして、NチャネルトランジスタMn2はON状態であるため、ノードn3の電圧レベルは、次第にLレベル(GND)に達する。
【0072】
そして、時間t68において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。つまり、本実施の形態におけるレベルシフト回路は、時間t61の定常状態から状態遷移期間Tc62を経て図5に示す時間t41と同一のもとの定常状態に遷移する。
【0073】
以上のように、入力信号Vin1の立下がりにおいては、本実施の形態におけるレベルシフト回路の状態遷移期間Tc62は、図1に示すレベルシフト回路の状態遷移期間Tc2と同等である。
【0074】
よって、入力信号Vin1の立下がり時は、PチャネルトランジスタMp3の配設によってレベル変換動作が遅れることはないが、高速なレベル変換は行われない。 しかし、本実施の形態のレベルシフト回路は、以下に示す程度の高周波帯域の入力信号Vin1、Vin2でも、高速に応答してレベル変換できる。
【0075】
すなわち、図5の時間t47において、ノードn2が未だLレベル(GND)に達していなくても、ノードn1はLレベルに達して、PチャネルトランジスタMp2を完全にON状態にし、レベル変換の状態遷移は終了している。そのため、その後、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達するまで待たずに、図5に示すタイミングTmg1で入力信号Vin1、Vin2を反転して次のレベル変換を開始してもよい。
【0076】
このように、本実施の形態のレベルシフト回路は、ノードn3の電圧レベルの状態遷移が終了した後、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達する前に反転する程度に高い高周波帯域の入力信号Vin1、Vin2に対して追従して、高速にレベル変換を行うことができる。
【0077】
図7は、図4に示すレベルシフト回路において、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達する前に、入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。図7において、入力信号Vin1が立下がるタイミングTmg1は、図5に示すタイミングTmg1に対応している。
【0078】
図7に示すタイミングチャートは、ノードn2のはじめの電圧レベルが基準電圧(GND)ではない点で図6に示すタイミングチャートと異なる。また、図7には、図2示すタイムチャートとの比較のために、図2と同じ状態遷移期間Tc2並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_0、n3_0が破線で示されている。
【0079】
図7に示す時間t46、t47におけるノードn2の電圧レベルは、図5に示す時間t46、t47におけるノードn2の電圧レベルに対応している。前述したように、タイミングチャートは、各ノードおよび信号の電圧レベルを定性的に示したものであるため、図中の電圧レベルの変化の傾きに定量的な意味はない。つまり、図5に示す時間t46以降のノードn2の電圧レベルの変化は、そのレベルが次第に低下していくことを表し、その傾きの大きさを絶対的に表すものではない。そして、図7には、図5と同様にノードn2の電圧レベルが時間t46以降、次第に低下していく様子が示されている。
【0080】
前述したように、ノードn2の電圧レベルが、時間t47以降Lレベル(GND)に到達する前に高周波の入力信号Vin1、Vin2は反転する。
【0081】
以降図6と同様に、時間t82において入力電圧Vin2が、NチャネルトランジスタMn2の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn2はOFF状態からON状態に変化する。そして、ノードn3の電圧レベルは低下し始める。
【0082】
時間t84において、ノードn3の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp1は、ノードn3の電圧レベルの変化に応じてOFF状態からON状態に変化し始める。
【0083】
そして、ノードn2が次第に充電されていく。ここで、ノードn2の充電開始時において、その電圧レベルは、図6におけるノードn2の電圧レベル(GND)よりも高い。そのため、図7に示すようにノードn2は短時間でHレベル(VDD)まで充電される。これにより、PチャネルトランジスタMp3がON状態に変化するタイミングを早めることができる。
【0084】
時間t85において、図6と同様にPチャネルトランジスタMp3がON状態に変化し、ノードn1とノードn2が電気的に接続され、ノードn1の電圧レベルは、ノードn2の電圧レベルに追従して急速に上昇し、時間t86で一致する。そして、時間t87において、ノードn1(n2)の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、完全にOFF状態に変化する。そして、その変化に対応して、ノードn3の電圧レベルは、Lレベル(GND)に達する。
【0085】
時間t88において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。
【0086】
このように、ノードn2がLレベル(GND)に達する前に、入力信号Vin1、Vin2を反転させることで、ノードn2はHレベル(VDD)に短時間で立上がり、PチャネルトランジスタMp3がON状態に変化するタイミングがより早くなるため、ノードn1は、より早く充電される。それに伴い、PチャネルトランジスタMp2がOFF状態に変化するため、ノードn3は、より早くLレベル(GND)に達する。すなわち、入力信号Vin1の立下がりにおいても、状態遷移が高速に行われる。
【0087】
以上のように、本レベルシフト回路は、ノードn3の電圧レベルの状態遷移が終了した後、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達する前に反転する程度の高周波帯域の入力信号Vin1、Vin2を入力することで高速にレベル変換動作を行うことができる。
【0088】
また、図7に示すように、その状態遷移期間Tc82は、図1のレベルシフト回路の状態遷移期間Tc2よりも短縮される。なお、図7に矢印で示す状態遷移期間Tc82と状態遷移期間Tc2の長さに定量的な意味はない。さらに、状態遷移中における貫通電流の流れる期間To82も短縮されるため、その消費電力が低減される。
【0089】
以上のように、本実施の形態におけるレベルシフト回路は、高周波の入力信号Vin1、Vin2の反転に応答して、図5と図7に示す高速な状態遷移を繰り返す。すなわち、本実施の形態におけるレベルシフト回路では、より高周波の入力信号Vin1、Vin2に対しても、ノードn3の電圧レベルをフルスイングさせることができる。これにより、ノードn3の反転されたレベルである、適切な出力信号Voutが外部回路に出力される。
【0090】
以上のように、本実施の形態のレベルシフト回路は高い周波数特性を有する。また、本レベルシフト回路は、その状態遷移中に流れる貫通電流が少なく、小電力である。さらに、本実施の形態におけるレベルシフト回路は、図1に示すレベルシフト回路にトランジスタMp3、Mn3のみが増設されただけであるため小型である。
【0091】
[第2の実施の形態]
図8は、第2の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。図4に示す第1の実施の形態と比較すると、PチャネルトランジスタMp1のドレインとNチャンネルトランジスタMn1のドレインの間に高インピーダンス素子Zを有する点で異なる。
【0092】
以下に、図5を用いて、第2の実施の形態におけるレベルシフト回路の入力信号Vin1の立上がりにおける動作を第1の実施の形態におけるレベルシフト回路の動作と比較して説明する。
【0093】
図5の時間t41において、第2の実施の形態のレベルシフト回路は、第1の実施の形態のレベルシフト回路と同様の定常状態である。
【0094】
時間t42において、NチャネルトランジスタMn1、Mn3がON状態に変化する。そして、PチャネルトランジスタMp1もON状態であるため、電源VDDから基準電圧GND間に貫通電流が流れる。ここで、PチャネルトランジスタMp1のドレインとNチャンネルトランジスタMn1のドレインの間に高インピーダンス素子Zが存在するため、貫通電流は、そのほとんどがNチャネルトランジスタMn3を介して流れる。
【0095】
そのため、貫通電流がNチャネルトランジスタMn1、Mn3を介して基準電圧GNDに流れる第1の実施の形態のレベルシフト回路と比較すると、本第2の実施の形態のレベルシフト回路の基準電圧GNDへの電流駆動能力は小さい。つまり、本第2の実施の形態のレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルの立下りは遅く、図5の破線で示す図1に示すレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルの変化と同程度である。
【0096】
そこで、必要に応じて本第2の実施の形態では、高インピーダンス素子Zを設けたことにより、ノードn2の電圧レベルの立下りが遅くなることを回避するために、NチャネルトランジスタMn3にNチャネルトランジスタMn1よりも電流駆動能力の大きいトランジスタが用いられる。なお、一般的に、トランジスタの電流駆動能力はトランジスタサイズに依存するため、回路設計段階において配設可能なトランジスタサイズから、電流駆動能力の上限は制限される。
【0097】
つまり、図8に示す本第2の実施の形態のレベルシフト回路では、その制限範囲内でNチャネルトランジスタMn3の電流駆動能力を大きくする。これにより、図5に示す時間t42〜時間t46までのノードn2の電圧レベルの立下りを速くすることができ、本レベルシフト回路は、入力信号Vin1の立上がりにおいて、第1の実施の形態のレベルシフト回路と同程度の高速のレベル変換を行う。
【0098】
図9は、第2の実施の形態のレベルシフト回路において入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。図9において、入力信号Vin1が立下がるタイミングTmg1は、図5に示すタイミングTmg1に対応している。
【0099】
また、図9には、図7に示す第1の実施の形態におけるタイムチャートとの比較のために、図7と同じ状態遷移期間Tc82並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_1、n3_1が破線で示されている。また、図2に示す状態遷移期間Tc2並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_0、n3_0が破線で示されている。
【0100】
時間t46、t47におけるノードn2の電圧レベルは、図5の時間t46、t47におけるノードn2の電圧レベルに対応している。前述したように、時間t46は、図4に示す第1の実施の形態のレベルシフト回路において、PチャネルトランジスタMp1がOFFした瞬間である。ここで、NチャネルトランジスタMn1がON状態であり、PチャネルトランジスタMp3がOFF状態である。
【0101】
つまり、図4に示す第1の実施の形態のレベルシフト回路において、時間t46以降は、ノードn2に充電された電流がNチャネルトランジスタMn1を介して流れ、ノードn2の電圧レベルが次第に低下していく。
【0102】
一方で、図8に示す第2の実施の形態のレベルシフト回路は、ノードn2に対応するPチャネルトランジスタMp1のドレインとNチャネルトランジスタMn1のドレインとの間に高インピーダンス素子Zを有する。そのため、第2の実施の形態のレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルの時間t46以降の立下りは、第1の実施の形態のレベルシフト回路における変化n2_1よりも遅い。つまり、図9に示すように、第2の実施の形態のレベルシフト回路では、時間t46〜t94までに示すノードn2の電圧レベルの傾きが小さい。
【0103】
そのため、時間t94において、PチャネルトランジスタMp1は、OFF状態からON状態に変化し始め、ノードn2が充電され始めるが、その充電開始時のノードn2の電圧レベルは第1の実施の形態のレベルシフト回路における電圧レベルn2_1よりも高い。そのため、第2の実施の形態のレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルは、第1の実施の形態のレベルシフト回路の場合よりも短時間でHレベル(VDD)まで充電される。これにより、PチャネルトランジスタMp3がON状態に変化するタイミングを早めることができる。
【0104】
図9に示すノードn1の電圧レベルの変化には、ノードn2、n3の電圧レベルの変化が破線で示されている。
【0105】
時間t95においてノードn2の電圧レベルがノードn3の電圧レベルよりも高く、そのレベル差が閾値電圧Vthに達するとPチャネルトランジスタMp3がOFF状態からON状態に変化し、ノードn1とノードn2が電気的に接続される。
【0106】
このノードn1とノードn2が接続される時間t95は、図7の第1の実施の形態における時間t85よりも早い。時間t94において、充電開始時におけるノードn2の電圧レベルが第1の実施の形態におけるノードn2の電圧レベルn2_1よりも高いためである。
【0107】
そして、ノードn1の電圧レベルは、ノードn2の電圧レベルに追従して急速に上昇し、時間t96でそれらのレベルが一致する。さらに、ON状態であったPチャネルトランジスタMp2は、ノードn2の電圧レベルに応じて急速にOFF状態に変化し始める。
【0108】
時間t97において、ノードn1(n2)の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、完全にOFF状態に変化する。そして、NチャネルトランジスタMn2はON状態であるため、ノードn3の電圧レベルは、急速にLレベル(GND)に達する。
【0109】
そして、時間t98において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。
【0110】
このように、図8に示す第2の実施の形態のレベルシフト回路は、高インピーダンス素子Zを有し、これにより、ノードn2の電圧レベルの低下が抑制される。そのため、入力信号Vin1の立下がりからより短時間でPチャネルトランジスタMp3のノードn1とノードn2が電気的に接続され、ノードn1が充電されることにより状態遷移が高速に行われる。つまり、第2の実施の形態のレベルシフト回路では、入力信号Vin1の立下がりに対応するレベル変換の高速性がさらに改善される。
【0111】
図9に示すように、第2の実施の形態のレベルシフト回路の入力信号Vin1の立下がりに対する状態遷移期間Tc92は、図2および第1の実施の形態のレベルシフト回路の状態遷移期間Tc2、Tc82よりも短い。さらに、状態遷移中に貫通電流の流れる期間To92も短縮されるため、レベルシフト回路の消費電力は低減される。
【0112】
また、第1の実施の形態のレベルシフト回路は、ノードn2の電圧レベルがLレベル(GND)に達する前に反転する程度の高周波数帯域の入力信号Vin1、Vin2を適切にレベル変換できる。一方で、本第2の実施の形態のレベルシフト回路は、ノードn2の電圧レベルの立下りが遅くなるため、その周波数帯域がさらに拡張され、より高周波の入力信号Vin1、Vin2のレベル変換が可能になる。
【0113】
[第3の実施の形態]
図10は、第3の実施の形態におけるレベルシフト回路の回路図である。図8に示す第2の実施の形態とは、NチャネルトランジスタMn2が、電流駆動能力が異なる複数のNチャネルトランジスタMn21〜Mn23を有する重み付け回路90である点で異なる。さらに、重み付け回路90は、スイッチング用のNチャネルトランジスタMn51〜Mn53を有する。
【0114】
重み付け回路90内において、NチャネルトランジスタMn21〜Mn23のドレインは、PチャネルトランジスタMp2のドレインにそれぞれ接続され、ソースはそれぞれスイッチング用のNチャネルトランジスタMn51〜Mn53を介して基準電圧GNDに接続される。また、重み付け回路90に入力される入力信号Vin2は、それぞれNチャネルトランジスタMn21〜Mn23のゲートに入力される。
【0115】
そして、本第3の実施の形態におけるレベルシフト回路には、スイッチング用のNチャネルトランジスタMn51〜Mn53により、NチャネルトランジスタMn21〜Mn23から1つ以上のトランジスタが選択的に接続される。なお、スイッチングトランジスタMn51〜Mn53は、そのゲートにそれぞれ別途入力される選択信号S1〜S3に基づいて、ON状態またはOFF状態に制御される。
【0116】
例えば、NチャネルトランジスタMn51、Mn52がON状態の場合、NチャネルトランジスタMn21、Mn22が、PチャネルトランジスタMp2のドレインと基準電源GND間に電気的に並列に接続される。
【0117】
つまり、重み付け回路90は、選択的に電流駆動能力を調整できるNチャネルトランジスタとして機能する。本第3の実施の形態において、重み付け回路90の流駆動能力を大きくすることにより、入力信号Vin1の立下がりに対応するレベル変換が高速に行われる。なお、本第3の実施の形態において、入力信号Vin1の立上がりに対応するレベル変換の遷移は、第2の実施の形態と同様である。
【0118】
以降、スイッチング用のNチャネルトランジスタMn51〜Mn53が全てON状態であり、NチャネルトランジスタMn21〜Mn23がPチャネルトランジスタMp2のドレインと基準電圧GNDの間に電気的に並列に接続されている場合を想定する。つまり、重み付け回路90の電流駆動能力が、図8に示す第2の実施の形態のレベルシフト回路が有するNチャネルトランジスタMn2よりも大きい場合を想定して以下に動作を説明する。なお、回路設計段階において配設可能なトランジスタ数により、重み付け回路90の電流駆動能力の上限が制限される。
【0119】
図11は、図10に示す第3の実施の形態のレベルシフト回路において入力信号Vin1がHレベル(VII)からLレベル(GND)に立下がる場合の動作を示すタイムチャートである。図11において、入力信号Vin1が立下がるタイミングTmg1は、図5に示すタイミングTmg1に対応している。
【0120】
図11には、図9に示す第2の実施の形態におけるタイムチャートとの比較のために、図9と同じ状態遷移期間Tc92並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_2、n3_2が破線で示されている。また、図2に示す状態遷移期間Tc2並びにノードn2およびn3の電圧レベルの変化n2_0、n3_0が破線で示されている。
【0121】
期間t46〜t104のノードn2の電圧レベルの変化は、第2の実施の形態におけるノードn2の電圧レベルn2_2の変化に対応している。
【0122】
時間t102において入力電圧Vin2が、重み付け回路90内のNチャネルトランジスタMn21〜Mn23の閾値電圧Vthに達すると、NチャネルトランジスタMn21〜Mn23はOFF状態からON状態に変化する。ここで、PチャネルトランジスタMp2もON状態であるため、PチャネルトランジスタMp2とNチャネルトランジスタMn21〜Mn23を介して電源VDDから基準電圧GND間に貫通電流が流れる。これに伴い、ノードn3の電圧レベルは低下する。
【0123】
図11に示すようにこのノードn3の電圧レベルの立下りは、第2の実施の形態におけるノードn3の電圧レベルの変化n3_2よりも速い。重み付け回路90の電流駆動能力が、図8に示す第2の実施の形態におけるNチャネルトランジスタMn2よりも大きいためである。
【0124】
時間t104において、ノードn3の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp1は、ノードn3の電圧レベルの変化に応じてOFF状態からON状態に変化し始め、ノードn2が次第に充電される。
【0125】
この時間t104は、第2の実施の形態でのPチャネルトランジスタMp1がON状態に変化し始める時間t94よりも早いため、ノードn2の電圧レベルの上昇が早く始まる。これにより、第3の実施の形態のレベルシフト回路のノードn2の電圧レベルは、より早くHレベル(VDD)まで充電される。
【0126】
図11に示すノードn1の電圧レベルの変化には、ノードn2、n3の電圧レベルの変化が破線で示されている。
【0127】
時間t105においてノードn2の電圧レベルがノードn3の電圧レベルよりも高く、そのレベル差が閾値電圧Vthに達するとPチャネルトランジスタMp3がOFF状態からON状態に変化し、ノードn1とノードn2が電気的に接続される。
【0128】
そして、ノードn1の電圧レベルは、ノードn2の電圧レベルに追従して急速に上昇し、時間t106でそれらのレベルが一致する。さらに、ON状態であったPチャネルトランジスタMp2は、ノードn2の電圧レベルに応じて急速にOFF状態に変化し始める。
【0129】
時間t107において、ノードn1(n2)の電圧レベルが「VDD-Vth」に達すると、PチャネルトランジスタMp2は、完全にOFF状態に変化する。そして、NチャネルトランジスタMn2はON状態であるため、ノードn3の電圧レベルは、次第にLレベル(GND)に達する。
【0130】
そして、時間t108において、レベルシフト回路は状態遷移を終了し、定常状態になる。
【0131】
このように、図10に示す第3の実施の形態のレベルシフト回路は、重み付け回路90を有し、その電流駆動能力を選択的に調整することにより、入力信号Vin1の立下がりにおいてノードn3の電圧レベルの時間変化を調整できる。そして、ノードn3の電圧レベルの立下りを速くすることにより、入力信号Vin1の立下がりからより短時間でノードn1とノードn2が電気的に接続され、ノードn1が充電されることにより状態遷移が高速に行われる。つまり、第3の実施の形態のレベルシフト回路では、入力信号Vin1の立下がりに対応するレベル変換が、さらに高速化される。
【0132】
図11に示すように、第3の実施の形態のレベルシフト回路の入力信号Vin1の立下がりに対する状態遷移期間Tc102は、図2および第2の実施の形態のレベルシフト回路の状態遷移期間Tc2、Tc92よりも短い。さらに、状態遷移中に貫通電流の流れる期間To102も短縮されるため、レベルシフト回路の消費電力は低減される。
【0133】
また、本第3の実施の形態のレベルシフト回路において、重み付け回路90の電流駆動能力は選択的に調整可能であるため、入力信号Vin1、Vin2の周波数と消費電力のそれぞれを考慮した回路動作の調整が可能である。つまり、より適切で実態に則したレベルシフト回路の提供が可能である。
【符号の説明】
【0134】
1 内部回路 Mn1〜Mn3 Nチャネルトランジスタ Mp1〜Mp3 Pチャネルトランジスタ
Inv1、Inv2 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と第1の電源電圧の間で変化する第1の信号を、前記基準電圧と前記第1の電源電圧よりも高い第2の電源電圧の間で変化する第2の信号に変換するレベルシフト回路において、
前記基準電圧にソースがそれぞれ接続され、前記第1の信号と前記第1の信号の反転信号がゲートにそれぞれ入力される第1導電型の第1と第2のトランジスタと、
前記第2の電源電圧にソースが接続された第2導電型の第3のトランジスタと、
前記第2の電源電圧にソースが接続され、ドレインから前記第2の信号を出力する第2導電型の第4のトランジスタとを有し、
前記第1と第2の第1導電型のトランジスタのドレインに前記第1と第2の第2導電型トランジスタのドレインがそれぞれ接続され、
前記第3と第4のトランジスタのゲートとドレインはそれぞれ電気的に交差接続され、
さらに、前記交差接続において、前記第3のトランジスタのドレインと前記第4のトランジスタのゲートとの間にソース、ドレインが接続され、ゲートが前記第4のトランジスタのドレインに接続された第2導電型の第5のトランジスタと、
前記第4のトランジスタのゲートにドレインが接続され、前記基準電圧にソースが接続され、前記第1の信号がゲートに入力される第1導電型の第6のトランジスタとを有するレベルシフト回路。
【請求項2】
さらに、前記第1の第2導電型トランジスタのドレインと前記第1の第1導電型トランジスタのドレインの間にインピーダンス素子を有する請求項1記載のレベルシフト回路。
【請求項3】
前記第3の第1導電型トランジスタの電流駆動能力が前記第1の第1導電型トランジスタよりも大きい請求項1および2記載のレベルシフト回路。
【請求項4】
前記第2のトランジスタは、電流駆動能力が異なる複数のトランジスタを有し、
前記複数のトランジスタから1つ以上のトランジスタが前記第4のトランジスタに選択的に接続される請求項1〜3記載のレベルシフト回路。
【請求項5】
前記第1の信号は、前記第1の信号が前記基準電圧から前記第1の電源電圧に反転してから、前記第3のトランジスタのドレインの電圧レベルが前記基準電圧に達する前に再度前記第1の電源電圧から前記基準電圧に反転する程度に高い周波数である請求項1記載のレベルシフト回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−4123(P2011−4123A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145104(P2009−145104)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】