説明

半導体基板のエキスパンド装置

【課題】球面円盤部でエキスパンドすることで分離されたチップが平面上に配列された状態にする。
【解決手段】ステルスダイシング処理済基板1は、外周縁部にダイシングフレーム2が貼り付けられたダイシングテープ3の中央に貼り付けられ、その上を覆うように保護テープ4が貼り付けられた形で供給される。ダイシングフレーム保持台5およびダイシングフレーム保持カバー6によって固定されたダイシングテープ3は、まず、下から上面に球面円盤部10を有する筒状テープ拡張ステージ9を上昇させてダイシングテープ3の球面エキスパンド処理を行う。これにより、ステルスダイシング処理済基板1は、ステルスダイシングにより生成されたスクライブラインに沿って劈開され、チップ分離が行われる。次に、上面を平面円盤部11に切り換えた筒状テープ拡張ステージ9で平面エキスパンド処理を行い、ダイシングテープ3を平坦化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板のエキスパンド装置に関し、特にSiC(シリコンカーバイド)やサファイヤなどの難切削性硬質材料からなる半導体基板(ウェハ)のブレーキング(基板劈開)およびエキスパンド(チップ分離)を一括で行うエキスパンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の主流であるSi(シリコン)製の半導体デバイスの製造方法において、半導体基板に多数のパターンが形成された半導体デバイスをブレードダイシングといわれる手法で格子状に切断してチップを分割化することが一般に行われている。
【0003】
近年、低炭素社会の実現に向けて、Siに比べてスイッチング損失が小さく、高温動作が可能なSiCやサファイヤが注目されている。ところが、基板にSiC基板やサファイヤ基板などを使用した半導体デバイスの製造方法の場合、基板が硬質で難切削性を有している。このため、SiC基板やサファイヤ基板では、ブレードダイシング方式は非常に加工性が悪くて時間がかかり、ブレードの磨耗度合いも激しいため工具消耗頻度も高いなどの理由から実質的に量産に不向きである。
【0004】
そこで、サファイヤ基板などで適用されているダイシング技術の1つとして、ステルスダイシングといわれるレーザ加工法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。ステルスダイシングは、ステルスダイシング用レーザ照射機で透過式レーザ光を照射することにより半導体基板の基板内部に加工変質層を形成してスクライブライン上に内部変質層を形成する技術である。この基板内部の変質層は、脆性を有しているので、基板を劈開するときの劈開起点となるものであり、しかも、変質層に沿って劈開されることから、基板は、直線性を保った状態で分割されることになる。
【0005】
このステルスダイシングは、あくまでも基板を劈開する際の起点を形成するためだけのものであるので、その後、半導体基板の劈開工程が必要となる。この劈開技術の1つとして、ダイシングテープが貼り付けられた基板を球面円盤部による押圧で劈開および分離する球面エキスパンド方式が知られている(たとえば、特許文献2参照)。この球面エキスパンド方式では、チップ分離を行った後に球面円盤部による押圧は解除されるが、その際に、ダイシングテープが弛んで分離したチップが接触するのを回避するために、球面円盤部に周設されたリングでダイシングテープを再張設している。これにより、ダイシングテープの引き伸ばし状態が維持されることから、分離されたチップ間の間隔が保持され、チップ同士の接触によるチップの破損を防止している。
【0006】
ここで、リングによるダイシングテープの再張設の際に、球面円盤部がダイシングテープに接触するリングの端面を含む仮想平面よりも完全に待避してしまうと、リングの内側のダイシングテープが垂れ下がってしまい、その結果、チップ同士の接触の可能性がある。そのため、球面円盤部は、その球面中央部が仮想平面よりもリングの内側に変位することがないよう、仮想平面よりもリングの外側に多少突出した位置にて停止するように構成されている。再張設されたダイシングテープ上の分離されたチップは、その後、一個ずつ拾い上げられて、検査工程に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−43713号公報
【特許文献2】特開2010−177340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、再張設されたダイシングテープの中央部が球面円盤部により仮想平面よりも押し出されていて、分離されたチップが平面上に並べられていないため、ダイシングテープ上のチップを拾い上げる装置が複雑かつ高価になるという問題点があった。すなわち、チップの平面上の並びは、画像処理によって容易に認識できるが、高さ方向の位置をダイシングテープの変位状態に追従して認識させるには、そのための撮像装置および画像処理装置が別途必要になり、しかも、画像処理に時間がかかることになる。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、球面円盤部でエキスパンドすることで分離されたチップが平面上に配列された状態を維持することができる半導体基板のエキスパンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記の課題を解決するために、中央に貼り付けられた劈開起点加工処理済基板を覆うように保護テープが貼り付けられたダイシングテープの外周縁部に貼り付け固定されているダイシングフレームを保持するダイシングフレーム保持部と、前記ダイシングテープを球面形状を有する面で押圧して引き伸ばすことにより前記劈開起点加工処理済基板の劈開およびチップ分離を行う球面円盤部と、前記ダイシングテープを平面形状を有する面で押圧して引き伸ばすことにより前記球面円盤部による押圧で分離されたチップを平面上に配列された状態にする平面円盤部と、前記ダイシングテープの前記劈開起点加工処理済基板と前記ダイシングフレームとの間を挟持して前記ダイシングテープが前記平面円盤部によって引き伸ばされた状態を保持するテープクランプ部と、前記球面円盤部および前記平面円盤部を前記ダイシングテープを押圧する方向および前記ダイシングテープから離れる方向に駆動する駆動機構と、を備えていることを特徴とする半導体基板のエキスパンド装置が提供される。
【0011】
このような半導体基板のエキスパンド装置によれば、劈開起点加工処理済基板を球面円盤部による球面エキスパンド処理によっての劈開およびチップ分離を行った後、平面円盤部による平面エキスパンド処理を行う。これにより、球面エキスパンド処理でドーム形状にされたダイシングテープが平面エキスパンド処理によって平面に引き伸ばされ、テープクランプ部によって固定されることで、分離されたチップを平面上に配列された状態に維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の半導体基板のエキスパンド装置は、球面エキスパンド処理が終了して球面円盤部の押圧を解除することで弛んだダイシングテープを平面エキスパンド処理で再び平面状に引き伸ばすことができる。これにより、分離されたチップが平面上に配列された状態になり、ダイシングテープ上のチップを拾い上げる装置が高さ方向の位置を認識する必要がないので、半導体製造装置を安価に構成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す概念図であって、(A)は球面エキスパンド処理状態を示し、(B)は平面エキスパンド処理状態を示している。
【図2】第2の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す平面図であって、(A)は球面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、(B)は平面エキスパンド処理時の動作状態を示す図である。
【図3】第2の実施の形態に係るエキスパンド装置の動作説明を示す図であって、(A)は球面エキスパンド処理時を示し、(B)は球面円盤状テープ拡張ステージの降下時を示し、(C)は基板水平移動時を示し、(D)は平面エキスパンド処理時を示している。
【図4】第3の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す平面図であって、(A)は球面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、(B)は平面エキスパンド処理時の動作状態を示す図である。
【図5】第3の実施の形態に係るエキスパンド装置の動作説明を示す図であって、(A)は球面エキスパンド処理時を示し、(B)は球面円盤状テープ拡張ステージの降下時を示し、(C)はテープ拡張ステージ水平移動時を示し、(D)は平面エキスパンド処理時を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、あらかじめ劈開起点加工処理されたSiCのような難切削性硬質材料の半導体基板をスクライブラインに沿って劈開および分離を行う装置に適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、劈開起点加工処理済基板として、基板内部に加工変質層を形成してスクライブライン上に内部変質層を形成するステルスダイシングにより処理された半導体基板を使用する。
【0015】
図1は第1の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す概念図であって、(A)は球面エキスパンド処理状態を示し、(B)は平面エキスパンド処理状態を示している。
このエキスパンド装置が処理対象とする半導体基板は、あらかじめステルスダイシング処理を終えたステルスダイシング処理済基板1である。このステルスダイシング処理済基板1は、環状のダイシングフレーム2に貼り付けられた弾性体のダイシングテープ3の中央に貼り付けられた状態でステルスダイシング処理が行われ、その後、全体を覆うように保護テープ4が貼り付けられた状態で提供される。
【0016】
第1の実施の形態に係るエキスパンド装置は、ダイシングフレーム2を保持するダイシングフレーム保持部を備えている。このダイシングフレーム保持部は、ダイシングフレーム2を載せるダイシングフレーム保持台5と、ダイシングフレーム保持カバー6と、Oリング7,8とを有している。ダイシングフレーム2は、Oリング7,8を介してダイシングフレーム保持台5とダイシングフレーム保持カバー6とによって挟持される。Oリング7,8は、ダイシングテープ3を引き伸ばす際にダイシングフレーム2が滑って外れてしまわないよう保持するためのものである。
【0017】
ダイシングフレーム保持台5の内側には、筒状テープ拡張ステージ9が図示しない駆動機構によって図の上下方向に昇降自在に配置されている。この筒状テープ拡張ステージ9の開口端近傍には、一体に形成された球面円盤部10および平面円盤部11が反転自在に取り付けられている。これにより、筒状テープ拡張ステージ9は、その上部開口端から球面円盤部10が突出している状態と、開口している部分が平面円盤部11によって平坦化された状態とを取り得る構成を有している。また、駆動機構は、図示しない回転駆動機構を備えており、筒状テープ拡張ステージ9が図の下方へ移動されたときに、球面円盤部10および平面円盤部11がその回転軸を中心に回転されて、筒状テープ拡張ステージ9の上端の外形形状を切り換えることができる。
【0018】
筒状テープ拡張ステージ9の外周には、拡張保持リング12が設置されている。この拡張保持リング12は、その図の上方に昇降自在に設置されたテープクランプリング13とともにテープクランプ部を構成している。すなわち、拡張保持リング12は、ダイシングテープ3を挟んでテープクランプリング13が嵌め込まれることによってダイシングテープ3が平面円盤部11によって引き伸ばされた状態を保持することができる。
【0019】
以上の構成のエキスパンド装置の動作について説明する。まず、ステルスダイシング処理済基板1が設置される前では、ダイシングフレーム保持カバー6がたとえば図の上方へ移動していて、筒状テープ拡張ステージ9および拡張保持リング12が図の下方へ移動している。この状態で、ステルスダイシング処理済基板1が貼り付けられたダイシングテープ3が搬送され、ダイシングフレーム2をダイシングフレーム保持台5に搭載してダイシングフレーム保持カバー6で挟んで固定する。
【0020】
次に、上部開口端から球面円盤部10を突出させた状態の筒状テープ拡張ステージ9が駆動機構によって上昇される。これにより、最初に球面円盤部10の頂部がダイシングテープ3の中央部に当たってダイシングテープ3を押圧する。すると、ステルスダイシング処理済基板1は、その中央の近傍に形成された内部変質層のスクライブラインに折り曲げ力が作用し、そのラインに沿って劈開される。その後、さらに、筒状テープ拡張ステージ9が上昇して球面円盤部10による押圧が続けられると、ステルスダイシング処理済基板1は、その中央から周囲に向かって順次劈開されていく。最終的には、この球面円盤部10の押圧による球面エキスパンド処理によって、ステルスダイシング処理済基板1は、図1の(A)に示したように固片化され、複数のチップに分離される。
【0021】
このとき、ダイシングテープ3は、球面円盤部10の外形形状に合わせて変形されることにより、その中央から周囲方向に矢印で示した引っ張り力が作用し、四方に引き伸ばされた状態になる。これにより、ダイシングテープ3に載っている固片化されたチップは、引き伸ばされた分だけ間隔を置いて配置されるようになる。
【0022】
次に、筒状テープ拡張ステージ9が駆動機構によって図1の(A)に示した位置から降下される。このとき、ダイシングテープ3は、球面円盤部10による押圧から開放されるが、チップと保護テープ4との三層構造になっているので、ドーム形状は崩れることなく維持している。
【0023】
筒状テープ拡張ステージ9がその下端位置まで降下すると、球面円盤部10および平面円盤部11は、図示しない回転駆動機構により上下反転され、筒状テープ拡張ステージ9は、その開口している部分が平面円盤部11によって平坦化された状態となる。筒状テープ拡張ステージ9は、再び駆動機構によって上昇され、ドーム状のダイシングテープ3を平面円盤部11で下から押圧していく。これにより、ダイシングテープ3は、再び四方に引き伸ばされ、球面エキスパンド処理により分離されたチップが平面上に配列されるようになる。しかも、平面円盤部11の押圧による平面エキスパンド処理によってダイシングテープ3を下から平面で支持していることになるので、チップが平面上に配列された状態を維持することができる。
【0024】
この平面エキスパンド処理の後は、保護テープ4が剥離され、図1の(B)に示したように、ダイシングテープ3を挟んでテープクランプリング13を拡張保持リング12に嵌め込むことにより、ダイシングテープ3は、引き伸ばされた状態で固定される。これによって、分離されたチップが平面上に並べられているため、ダイシングテープ3からチップを拾い上げるときに、チップの高さ位置を考慮する必要がないので、チップを拾い上げる装置の構成を簡素化することができる。
【0025】
図2は第2の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す平面図であって、(A)は球面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、(B)は平面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、図3は第2の実施の形態に係るエキスパンド装置の動作説明を示す図であって、(A)は球面エキスパンド処理時を示し、(B)は球面円盤状テープ拡張ステージの降下時を示し、(C)は基板水平移動時を示し、(D)は平面エキスパンド処理時を示している。なお、図2および図3において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0026】
第2の実施の形態に係るエキスパンド装置は、図2の(A)および(B)に示したように、独立して昇降可能な球面円盤状テープ拡張ステージ14および平面円盤状テープ拡張ステージ15と、これらステージ間を往復移動する基板移動機構とを備えている。基板移動機構は、球面円盤状テープ拡張ステージ14と平面円盤状テープ拡張ステージ15との間に設置されたリニアレール16と、このリニアレール16に沿ってダイシングフレーム保持台5を水平移動させる搬送台車と、その台車駆動電動機とを有している。これにより、基板を搭載したダイシングフレーム保持台5は、基板移動機構によって球面円盤状テープ拡張ステージ14で球面エキスパンド処理した後に平面エキスパンド処理のために平面円盤状テープ拡張ステージ15へ移動することができる。
【0027】
次に、以上の構成を有するエキスパンド装置の動作について説明する。まず、球面円盤状テープ拡張ステージ14および平面円盤状テープ拡張ステージ15は、それぞれ降下していて、ダイシングフレーム保持台5は、球面円盤状テープ拡張ステージ14の真上に移動される。ステルスダイシング処理済基板1は、球面円盤状テープ拡張ステージ14の真上の位置でダイシングフレーム保持台5に搭載されるか、または他の位置で搭載されて球面円盤状テープ拡張ステージ14まで移動される。
【0028】
次に、図3の(A)に示したように、球面円盤状テープ拡張ステージ14が駆動機構によって上昇される。これにより、ダイシングテープ3は、球面円盤状テープ拡張ステージ14の球面形状を有する頂部によって下から押圧されることにより、ステルスダイシング処理済基板1の劈開およびチップ分離が行われる。
【0029】
次に、球面円盤状テープ拡張ステージ14は、図3の(B)に示したように、駆動機構によって球面エキスパンド処理の位置から降下される。その後、図3の(C)に示したように、ダイシングフレーム保持台5は、基板移動機構によって球面円盤状テープ拡張ステージ14の真上の位置から平面円盤状テープ拡張ステージ15の真上の位置まで水平移動される。
【0030】
次に、図3の(D)に示したように、平面円盤状テープ拡張ステージ15が駆動機構によって上昇される。これにより、ドーム形状のダイシングテープ3は、平面形状を有する上面によって下から押圧されて平面エキスパンド処理が行われ、四方に引き伸ばされることになる。このようにして、球面エキスパンド処理の後に球面円盤状テープ拡張ステージ14が降下することによって弛んだダイシングテープ3は、再び引き伸ばされて平坦化され、球面エキスパンド処理で分離されたチップが平面上に配列されるようになる。このダイシングテープ3が引き伸ばされた状態は、保護テープ4を除去した後に、平面円盤状テープ拡張ステージ15に周設された拡張保持リング12にダイシングテープ3を挟んでテープクランプリング13を嵌め込むことによって維持することができる。
【0031】
図4は第3の実施の形態に係るエキスパンド装置を示す平面図であって、(A)は球面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、(B)は平面エキスパンド処理時の動作状態を示す図、図5は第3の実施の形態に係るエキスパンド装置の動作説明を示す図であって、(A)は球面エキスパンド処理時を示し、(B)は球面円盤状テープ拡張ステージの降下時を示し、(C)はテープ拡張ステージ水平移動時を示し、(D)は平面エキスパンド処理時を示している。なお、図4および図5において、図2および図3に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0032】
第3の実施の形態に係るエキスパンド装置は、図4の(A)および(B)に示したように、球面円盤状テープ拡張ステージ14および平面円盤状テープ拡張ステージ15と、これらを搭載したテープ拡張ステージ17を水平移動させるステージ移動機構とを備えている。このステージ移動機構は、球面円盤状テープ拡張ステージ14が球面エキスパンド処理を行う第1の位置と平面円盤状テープ拡張ステージ15が平面エキスパンド処理を行う第2の位置との間でテープ拡張ステージ17を移動させることができる。
【0033】
次に、以上の構成を有するエキスパンド装置の動作について説明する。まず、球面円盤状テープ拡張ステージ14および平面円盤状テープ拡張ステージ15は、それぞれ降下していて、球面円盤状テープ拡張ステージ14がダイシングフレーム保持台5の真下に来るようテープ拡張ステージ17が移動される。
【0034】
次に、図5の(A)に示したように、球面円盤状テープ拡張ステージ14が駆動機構によって上昇される。これにより、ダイシングテープ3は、球面円盤状テープ拡張ステージ14の球面形状を有する頂部によって下から押圧されることにより、ステルスダイシング処理済基板1の劈開およびチップ分離が行われる。
【0035】
次に、球面円盤状テープ拡張ステージ14は、図5の(B)に示したように、駆動機構によって球面エキスパンド処理の位置から降下される。その後、図5の(C)に示したように、テープ拡張ステージ17は、ステージ移動機構により水平移動されて、平面円盤状テープ拡張ステージ15がダイシングフレーム保持台5の真下に来るようにされる。
【0036】
次に、図5の(D)に示したように、平面円盤状テープ拡張ステージ15が駆動機構によって上昇される。これにより、ドーム形状のダイシングテープ3は、平面形状を有する上面によって下から押圧されて平面エキスパンド処理が行われ、四方に引き伸ばされる。このようにして、球面エキスパンド処理の後に球面円盤状テープ拡張ステージ14が降下することによって弛んだダイシングテープ3は、再び引き伸ばされて平坦化され、球面エキスパンド処理で分離されたチップが平面上に配列されるようになる。このダイシングテープ3が引き伸ばされた状態は、保護テープ4を除去した後に、平面円盤状テープ拡張ステージ15に周設された拡張保持リング12にダイシングテープ3を挟んでテープクランプリング13を嵌め込むことによって維持することができる。
【0037】
上記の実施の形態では、ステルスダイシングによって劈開起点加工処理を行った半導体基板を劈開およびチップ分離する場合を例に説明したが、その劈開起点加工処理は、ステルスダイシングに限定されるものではない。たとえば、ステルスダイシングにより処理を行った半導体基板の他に、基板表面にダイヤモンド刃などでけがきを行って劈開起点加工処理した半導体基板、基板表面にレーザ照射によりけがきを行って劈開起点加工処理した半導体基板などでもよい。
【0038】
なお、基板表面にダイヤモンド刃やレーザ照射によりけがきを行って劈開起点加工処理した半導体基板を使用する場合は、清浄工程にて、劈開起点加工処理の際に基板表面から飛散した微細な塵埃を除去しておくことが必要である。
【符号の説明】
【0039】
1 ステルスダイシング処理済基板
2 ダイシングフレーム
3 ダイシングテープ
4 保護テープ
5 ダイシングフレーム保持台
6 ダイシングフレーム保持カバー
7,8 Oリング
9 筒状テープ拡張ステージ
10 球面円盤部
11 平面円盤部
12 拡張保持リング
13 テープクランプリング
14 球面円盤状テープ拡張ステージ
15 平面円盤状テープ拡張ステージ
16 リニアレール
17 テープ拡張ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に貼り付けられた劈開起点加工処理済基板を覆うように保護テープが貼り付けられたダイシングテープの外周縁部に貼り付け固定されているダイシングフレームを保持するダイシングフレーム保持部と、
前記ダイシングテープを球面形状を有する面で押圧して引き伸ばすことにより前記劈開起点加工処理済基板の劈開およびチップ分離を行う球面円盤部と、
前記ダイシングテープを平面形状を有する面で押圧して引き伸ばすことにより前記球面円盤部による押圧で分離されたチップを平面上に配列された状態にする平面円盤部と、
前記ダイシングテープの前記劈開起点加工処理済基板と前記ダイシングフレームとの間を挟持して前記ダイシングテープが前記平面円盤部によって引き伸ばされた状態を保持するテープクランプ部と、
前記球面円盤部および前記平面円盤部を前記ダイシングテープを押圧する方向および前記ダイシングテープから離れる方向に駆動する駆動機構と、
を備えていることを特徴とする半導体基板のエキスパンド装置。
【請求項2】
前記球面円盤部および前記平面円盤部は、一体に形成されるとともに前記駆動機構によって駆動される筒状テープ拡張ステージの開口端近傍に反転自在に取り付けられていて、前記筒状テープ拡張ステージは、その開口端から前記球面円盤部が突出している状態と、開口している部分が前記平面円盤部によって平坦化された状態とを取り得る構成を有していることを特徴とする請求項1記載の半導体基板のエキスパンド装置。
【請求項3】
前記筒状テープ拡張ステージが前記ダイシングテープから離れる方向に駆動された後に、前記球面円盤部および前記平面円盤部をその回転軸を中心に回転させる回転駆動機構を備えていることを特徴とする請求項2記載の半導体基板のエキスパンド装置。
【請求項4】
前記球面円盤部を搭載して前記駆動機構によって駆動される球面円盤状テープ拡張ステージと、前記平面円盤部を搭載して前記駆動機構によって駆動される平面円盤状テープ拡張ステージと、前記ダイシングフレームを保持する前記ダイシングフレーム保持部を、前記球面円盤状テープ拡張ステージがテープ拡張を行う第1の位置と前記平面円盤状テープ拡張ステージがテープ拡張を行う第2の位置との間で移動させる基板移動機構とを備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体基板のエキスパンド装置。
【請求項5】
前記球面円盤部を搭載して前記駆動機構によって駆動される球面円盤状テープ拡張ステージと、前記平面円盤部を搭載して前記駆動機構によって駆動される平面円盤状テープ拡張ステージと、前記球面円盤状テープ拡張ステージおよび前記平面円盤状テープ拡張ステージを搭載したテープ拡張ステージを、前記球面円盤状テープ拡張ステージがテープ拡張を行う第1の位置と前記平面円盤状テープ拡張ステージがテープ拡張を行う第2の位置との間で移動させるステージ移動機構とを備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体基板のエキスパンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114268(P2012−114268A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262393(P2010−262393)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】