説明

半導体基板の研磨方法

【課題】 CMP用研磨パッドの表面状態を適正化し、低圧研磨プロセスにおいて、既存のCMP用研磨パッド及び研磨剤を用いて、研磨特性を維持しながら、安定して高い研磨速度を得られる半導体基板の研磨方法を提供する。
【解決手段】 表面の中心線平均粗さ(Ra)が7〜11μmであるCMP用研磨パッドに、3〜7kPaの圧力で半導体基板を押し当て加圧し、この半導体基板上に形成された薄膜を化学機械的に研磨する半導体基板の研磨方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造技術に好適に使用されるCMP用研磨パッドを使用する半導体基板の研磨方法に関し、特に、層間絶縁膜、銅配線の平坦化工程において使用される銅配線用CMP用研磨パッドを使用する半導体基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の超々大規模集積回路では、実装密度を高める傾向にあり、種々の微細加工技術が研究、開発されている。そして、デザインルールは、既にサブハーフミクロンオーダー(500nm以下)になっている。このような厳しい微細化の要求を満足するために開発されている技術の一つにCMP(ケミカルメカニカルポリッシング)技術がある。この技術は、半導体装置の製造工程において、露光を施す層を完全に平坦化し、露光技術の負担を軽減し、歩留まりを安定させることができるため、例えば、層間絶縁膜、BPSG膜(ボロン、リンをドープした二酸化珪素膜)、銅配線の平坦化、シャロートレンチ分離等を行う際に必須となる技術である。
【0003】
従来、半導体装置の製造工程において、プラズマ−CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)、低圧−CVD等の方法で形成される酸化珪素絶縁膜等の無機絶縁膜、メッキにより形成された銅配線を平坦化するための研磨方法としては、研磨される膜を形成した基板をCMP用研磨パッドに押し当て加圧し、研磨剤を被研磨膜とCMP用研磨パッドとの間に供給しながら、基板もしくはCMP用研磨パッドを動かして行う方法がある。
【0004】
この際、研磨剤としてシリカ系やアルミナ系が、CMP用研磨パッドとしては発泡ウレタン系の研磨布が一般的に用いられている(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、上記発泡ウレタン系の研磨布を用いて研磨する場合、コンディショナーを用いてドレッシングと呼ばれる前処理を定期的に行う必要がある。このドレッシング処理の目的は、研磨中に発生し、発泡ウレタンの気孔に詰まった研磨屑を除去することや、研磨布の表面に一定以上の粗さを持たせることである。ここで言うコンディショナーとは、金属円盤又は網状円盤の表面にダイヤモンドをニッケル電着処理した固定砥粒の砥石のことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−197408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、研磨剤としてシリカ系やアルミナ系、CMP用研磨パッドとして発泡ウレタン系の研磨布を用いる従来の研磨方法には、無機絶縁膜や金属膜に対して適用すると、十分な研磨速度が得られないという課題があった。
【0008】
また、層間膜や銅配線を平坦化するCMP技術では、適切な平坦性を維持する必要があり、研磨量の制御を研磨時間で行うプロセス管理が、一般的に行われている。なお、ここで言う平坦性とは、図1に示す部分と定義する。しかし、パターン段差形状の変化だけでなく、CMP用研磨パッドの表面状態等でも、研磨速度が顕著に変化してしまうため、プロセス管理が難しいという問題があった。従来のドレッシング処理のみでは、CMP用研磨パッド表面状態を適切に制御しているとは言いがたく、結果として、研磨特性の不安定さを招いている。この研磨特性の不安定さを解決し、安定した研磨速度を得るためには、CMP用研磨パッドの状態をどのようにすれば良いのか明確ではなかった。
【0009】
よって、無機絶縁膜や金属膜に対して十分な研磨速度が得られないシリカ系やアルミナ系の研磨剤に対して、高研磨速度を得るために、最適な状態のCMP用研磨パッドを用いた研磨方法が望まれている。
【0010】
近年、銅配線層における絶縁膜として、シリコン系や有機ポリマ等のLow−k(低誘電率)材の適用が検討されている。Low−k材は、従来の絶縁膜材料に比べて、CMP圧力耐性が低い脆弱な材料であることから、Low−k材の導入とともにCMPにおける加工圧力は、低圧化される傾向になっている。しかしながら、加工圧力を低圧化することで、新たに研磨速度の低下という問題が生じている。この問題に対しては、従来技術で使用されている研磨剤の組成改良も行われているが、単純に研磨速度を上げても、研磨剤組成のバランスが崩れ、平坦性、欠陥など他の性能が低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、低圧研磨プロセスにおいて、適正な番手のコンディショナーを用い、ドレッシング処理によって、CMP用研磨パッドの表面粗さを制御することで、既存のCMP用研磨パッド、研磨剤で研磨特性を維持しながら、安定して高い研磨速度を得ることが研磨方法である。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)表面の中心線平均粗さ(Ra)が7〜11μmであるCMP用研磨パッドに、3〜7kPaの圧力で半導体基板を押し当て加圧し、この半導体基板上に形成された薄膜を化学機械的に研磨する半導体基板の研磨方法。
(2)CMP用研磨パッドは、コンディショナー番手が#20〜#50のコンディショナーを用いてドレッシング処理を施されている(1)に記載の半導体基板の研磨方法。
(3)研磨が、被研磨膜とCMP用研磨パッドとの間に、研磨剤を供給しながら、被研磨膜とCMP用研磨パッドとを相対的に動かすことにより被研磨膜を研磨することで行われる(1)又は(2)に記載の半導体基板の研磨方法。
(4)半導体基板が、その基板上に銅配線が形成されている(1)〜(3)のいずれかに記載の基板の半導体基板の研磨方法。
(5)酸化金属溶解剤、砥粒、金属防食剤、金属の酸化剤及び水を含有する研磨液を用いる(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体の研磨方法によれば、3〜7kPaの低圧研磨プロセスにおいて、高い銅膜研磨速度を得られるため、研磨時間の短縮が可能であり、高いスループットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】平坦性の定義を示す模式図である。
【図2】コンディショナー番手とCMP用研磨パッドの表面粗さの関係を示す図である。
【図3】CMP用研磨パッドの表面粗さと銅研磨速度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の半導体基板の研磨方法は、表面の中心線平均粗さ(Ra)が7〜11μmであるCMP用研磨パッドに、3〜7kPaの圧力で半導体基板を押し当て加圧し、該半導体基板上に形成された薄膜を化学機械的に研磨するものである。なお、Raは、JIS B 0601で規定される平均粗さであり、触針式表面粗さ計などを用い測定することが可能である。
【0016】
CMP用研磨パッドの表面の中心線平均粗さ(Ra)が7μm以上であれば、研磨パッド上に研磨液を保持できるため、研磨速度が低下することもなく研磨を行うことができ、11μm以下であれば、CMP後の欠陥性能が劣ることもない。また、CMP用研磨パッドに半導体基板を押し当てる加圧力が3kPa以上であれば、研磨速度が低下することもなく、7kPa以下であれば、脆弱なLow−k膜に対してもCMP後の欠陥特性が劣ることもない。
【0017】
また、本発明の半導体基板の研磨方法に用いるCMP用研磨パッドは、コンディショナー番手が#20〜#50のコンディショナーを用いたドレッシング処理を施されていることが好ましい。なお、コンディショナーの番手は、JIS B 4130に規定される砥石に付着する砥粒の粒子径を示す。
【0018】
コンディショナー番手が#20以上であれば、CMP用研磨パッドの表面の中心線平均粗さ(Ra)が大きくなりすぎることもなく、CMP後の欠陥性能が劣ることもない。コンディショナー番手が#50以下であれば、CMP用研磨パッドの表面の中心線平均粗さ(Ra)が小さくなりすぎることもなく、研磨パッド上に研磨液を保持できるため高研磨速度で研磨を行うことができる。
【0019】
さらに、本発明の半導体基板の研磨方法は、研磨剤を被研磨膜とCMP用研磨パッドとの間に供給しながら、被研磨膜とCMP用研磨パッドとを相対的に動かすことにより被研磨膜を研磨する。また、半導体基板上には、銅配線が形成されていることが好ましい。
【0020】
本発明に用いる研磨液としては、酸化金属溶解剤、砥粒、金属防食剤、金属の酸化剤及び水を含有する研磨液が好ましい。
【0021】
本発明に用いる研磨液の酸化金属溶解剤は、特に制限はないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ−ル酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸、これらの有機酸エステル及びこれら有機酸のアンモニウム塩等が挙げられる。また塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、これら無機酸のアンモニウム塩類、例えば過硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム等、クロム酸等が挙げられる。これらの中では、実用的なCMP速度を維持しつつ、銅、銅合金及び銅又は銅合金の酸化物から選ばれた少なくとも1種の金属層を含む積層膜に対するエッチング速度を効果的に抑制できるという点でギ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好ましい。これらは1種類単独で、もしくは2種類以上混合して用いることができる。
【0022】
本発明に用いる研磨液の砥粒としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、炭化珪素等の無機物砥粒、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニル等の有機物砥粒のいずれでもよい。
【0023】
本発明に用いる研磨液の金属防食剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、1,2,3−トリアゾ−ル、1,2,4−トリアゾ−ル、3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾ−ル、ベンゾトリアゾ−ル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、1−ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾ−ル、4−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルメチルルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルブチルエステル、4−カルボキシル(−1H−)ベンゾトリアゾ−ルオクチルエステル、5−ヘキシルベンゾトリアゾ−ル、[1,2,3−ベンゾトリアゾリル−1−メチル][1,2,4−トリアゾリル−1−メチル][2−エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾ−ル、ナフトトリアゾ−ル、ビス[(1−ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸等が挙げられる。
【0024】
本発明に用いる研磨剤の金属の酸化剤としては、過酸化水素(H)、硝酸、過ヨウ素酸カリウム、次亜塩素酸、オゾン水等が挙げられ、中でも過酸化水素が特に好ましい。これらは1種類単独で、又は2種類以上混合して用いることができる。基体が集積回路用素子を含むシリコン基板である場合、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化物などによる汚染は望ましくないので、不揮発成分を含まない酸化剤が望ましい。但し、オゾン水は組成の時間変化が激しいので、過酸化水素が最も適している。但し、適用対象の基体が半導体素子を含まないガラス基板などである場合は、不揮発成分を含む酸化剤であっても差し支えない。
【実施例】
【0025】
以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(CMP用研磨パッドの表面処理)
CMP用研磨パッドに#20、#40、#50、#60、#100、#120、#140、#200番手のパッドコンディショナーを用いて、荷重:7.0 lbf(3.1kgf)、回転数:60min−1で30分間ドレッシング処理を行った。この処理により、表面の中心線平均粗さ(Ra)が1〜13μmのCMP用研磨パッドを得た。パッドコンディショナーの番手と得られたCMP用研磨パッドの表面の中心線平均表面粗さの関係を図2に示す。
(研磨液の作製)
本発明に用いる研磨液として、水:939g、リンゴ酸:5g、ベンゾトリアゾール:1g、30%過酸化水素水:5gを混合したものを準備した。
(ブランケット基板): 厚さ:1600nmの銅膜を形成したシリコン基板
(比抵抗膜厚測定装置):株式会社日立国際電気製、商品名:VR−120
【0026】
(実施例)
半導体基板として銅膜厚が1600nmのブランケット基板を作製し、キャリアーに取り付けた。上記で作製したパッドで7〜11μmの中心線平均粗さ(Ra)を有するCMP用研磨パッドを貼り付けた定盤上に銅膜面を下にしてキャリアーを載せ、加工圧力を3kPa及び7kPaとして、定盤上に上記の研磨液を150ml/minの速度で滴下しながら、定盤及びウエハの付いたキャリアーを60min−1で3分間回転させ、銅膜を研磨した。研磨後のウエハを純水でよく洗浄後、乾燥した。比抵抗膜厚測定装置を用いて、研磨前後の膜厚差を測定し、研磨速度を計算した。パッド表面の中心線平均表面粗さ(Ra)と研磨速度の相対値の関係を図3に示す。3kPa及び7kPaの加工圧力では、パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)が7〜11μmである場合に、研磨速度の相対値は、高い値が得られた。また、3kPa及び7kPaの加工圧力では、パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)が11μmを超えると、研磨速度の低下が見られた。この原因は、必ずしも明らかではないが、パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)が大きく(凹凸が深く)なりすぎると、パッド表面上の凹部に保持された被研磨膜表面と化学反応済みの研磨液が、後から供給される未反応の研磨液と入れ替わりにくくなり、CMP用研磨パッドに半導体基板を押し当てる加圧力が低い場合には、この傾向が顕著になるためと推測される。なお、研磨速度の相対値基準は、パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)が8μm、加工圧力が14kPaのときの研磨速度を1として換算したものであり、図3には、加工圧力を10kPa及び14kPaとして研磨をした場合の、パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)と研磨速度の相対値の関係を併せて示した。
【0027】
(比較例)
上記で作製したパッドで4〜5μmの中心線平均粗さ(Ra)を有するCMP用研磨パッドを用いたこと以外は、実施例と同様にして、銅膜を研磨し、研磨速度を計算した。パッド表面の中心線平均粗さ(Ra)と研磨速度の相対値を図3に示す。研磨速度の相対値は、実施例よりも低い値となった。
【符号の説明】
【0028】
11、12、13 無機絶縁膜
2 バリア層
3 配線用金属(銅)膜
4 シリコン基板
5 平坦性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の中心線平均粗さ(Ra)が7〜11μmであるCMP用研磨パッドに、3〜7kPaの圧力で半導体基板を押し当て加圧し、この半導体基板上に形成された薄膜を化学機械的に研磨する半導体基板の研磨方法。
【請求項2】
CMP用研磨パッドは、コンディショナー番手が#20〜#50のコンディショナーを用いてドレッシング処理を施されている請求項1に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項3】
研磨が、被研磨膜とCMP用研磨パッドとの間に、研磨剤を供給しながら、被研磨膜とCMP用研磨パッドとを相対的に動かすことにより被研磨膜を研磨することで行われる請求項1又は2に記載の半導体基板の研磨方法。
【請求項4】
半導体基板が、その基板上に銅配線が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の基板の半導体基板の研磨方法。
【請求項5】
酸化金属溶解剤、砥粒、金属防食剤、金属の酸化剤及び水を含有する研磨液を用いる請求項1〜4のいずれかに記載の半導体基板の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238692(P2012−238692A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106172(P2011−106172)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】