説明

半導体封入用ガラス、半導体封入用外套管及び半導体素子の封入方法

【課題】実質的にPbOを含まないにもかかわらず、封入温度が低く、且つ実用上、十分な化学的耐久性、特に耐酸性を有する半導体封入用ガラスを創案すること。
【解決手段】本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の2種以上、BおよびBiを含み、且つ実質的にPbOを含まないことを特徴とし、10dPa・sおける温度が660℃以下であり、且つ30〜380℃における熱膨張係数が85〜105×10−7/℃であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封入用ガラス、半導体封入用外套管及び半導体素子の封入方法に関し、具体的にはシリコンダイオード、発光ダイオード、サーミスタ等の半導体素子と、これを電気的に接続するジュメット線等の金属線を気密封入するための半導体封入用ガラスと、これを用いて作製した半導体封入用外套管と、この外套管を用いた半導体素子の封入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンダイオード、発光ダイオード、サーミスタ等の小型の電子部品は、これらの半導体素子をジュメット線等の金属線で両側から挟み、ガラス製の半導体封入用外套管で囲んだ後に所定の温度に加熱し、この外套管を軟化変形させて気密封入した構造(DHD型)が広く採用されている。また、サーミスタには、一方向にリード線を出す構造も存在する。
【0003】
半導体封入用ガラスは、半導体素子が熱劣化しない温度で封入可能であることが要求される。半導体素子の耐熱温度は、種類や設計により異なるが、近年、半導体素子の小型化の傾向に伴い、低下する傾向にある。このため、封入温度は、できるだけ低温であることが好ましく、例えば660℃以下、特に650℃以下が好ましい。なお、封入温度は、一般的に、ガラスの粘度が10dPa・sになる温度を指す。
【0004】
従来、低温封入が可能な半導体封入用ガラスとして、PbOを多量に含む鉛ケイ酸塩ガラスが使用されてきた。その理由は、ガラス組成中のPbOは、ガラス骨格を安定化しつつ、ガラスの粘度を下げる効果が極めて大きいからである。具体的に言えば、PbOを46質量%含む半導体封入用ガラスは、封入温度が約700℃であり、またPbOを60質量%含む半導体封入用ガラスは、封入温度が約655℃である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−17632号公報
【特許文献2】特開2002−37641号公報
【特許文献3】特開平6−206737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、鉛、カドミニウム、砒素等の有害成分による環境汚染が問題視されており、これらの有害成分を含まないことが要求されている。小型の電子部品の分野では、まず半田の無鉛化が積極的に取り組まれており、次いで半導体封入用ガラスの無鉛化も検討されている。
【0007】
しかし、無鉛の半導体封入用ガラスは、低温化すると、化学的耐久性が低下するため、低温化と化学的耐久性の両立が困難である。半導体封入用ガラスの化学的耐久性、特に耐酸性が低いと、電子部品の製造工程で、ガラスと金属線が侵食されて、電子部品の信頼性が低下しやすくなり、またガラスの表面に凹凸が発生して、汚れが付着しやすくなり、結果として、体積抵抗率が低下し、電子部品の信頼性が低下しやすくなる。例えば、特許文献1、2には、無鉛の半導体封入用ガラスが開示されているが、これらの半導体封入用ガラスは、耐酸性が不十分である。また、特許文献3には、無鉛のバルブ封止用ガラスが開示されているが、このバルブ封止用ガラスは、封止温度が790℃であるため、半導体素子の耐熱温度以下で封入することができない。
【0008】
そこで、本発明は、実質的にPbOを含まないにもかかわらず、封入温度が低く、且つ実用上、十分な化学的耐久性、特に耐酸性を有する半導体封入用ガラスを創案することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ガラス組成中に、特定の元素を必須成分として導入することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の2種以上、BおよびBiを含み、且つ実質的にPbOを含まないことを特徴とする。なお、「実質的にPbOを含まない」とは、ガラス原料として、積極的にPbOを使用しない趣旨であり、具体的にはガラス組成中のPbOの含有量が5000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下の場合を指す。
【0010】
本発明の半導体封入用ガラスにおいて、アルカリ金属酸化物の2種以上を導入すれば、アルカリ混合効果を享受しつつ、封入温度を低温化することができ、またBを導入すれば、封入温度を低温化しつつ、耐酸性を高めることができ、さらにBiを導入すれば、封入温度を低温化しつつ、耐酸性を維持することができる。結果として、アルカリ金属酸化物の2種以上、BおよびBiを導入すると、実質的にPbOを含まなくても、封入温度が低く、且つ実用上、十分な化学的耐久性、特に耐酸性を有する半導体封入用ガラスを作製することができる。
【0011】
第二に、本発明の半導体封入用ガラスは、10dPa・sおける温度が660℃以下であり、且つ30℃〜380℃における熱膨張係数が85〜105×10−7/℃であることを特徴とする。ここで、「10dPa・sおける温度」とは、ガラスの粘度が10dPa・sになる温度を指し、例えば、ASTM C338に準拠するファイバ法により軟化点を測定し、次に白金球引き上げ法により作業点領域の粘度に相当する温度を求めて、最後にこれらの粘度と温度をFulcherの式に当てはめることで算出することができる。また、「30℃〜380℃における熱膨張係数」とは、直径約3mm、長さ約50mmの円柱状の測定試料等を用いて、自記示差熱膨張計により30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を測定した値を指す。
【0012】
第三に、本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 35〜60%、B 5〜25%、Bi 1〜30%、Al 0〜10%、LiO+NaO+KO(但し、LiO、NaO、KOの2種以上を含む) 5〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 1〜45%を含有することを特徴とする。ここで、「LiO+NaO+KO」は、LiO、NaO、KOの合量を指し、「MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO」は、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOの合量を指す。
【0013】
第四に、本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、LiOを0.5〜10質量%含むことを特徴とする。
【0014】
第五に、本発明の半導体封入用外套管は、上記の半導体封入用ガラスにより作製されていることを特徴とする。
【0015】
第六に、本発明の半導体素子の封入方法は、半導体封入用外套管により半導体素子を封入する半導体素子の封入方法において、半導体封入用外套管が上記の半導体封入用外套管であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の2種以上、BおよびBiを含むことを特徴とする。このようにすれば、実質的にPbOを含まなくても、封入温度が低く、且つ実用上、十分な化学的耐久性、特に耐酸性を有する半導体封入用ガラスを作製することができる。
【0017】
本発明の半導体素子用ガラスにおいて、30〜380℃における熱膨張係数は85〜105×10−7/℃、特に85〜100×10−7/℃が好ましい。このようにすれば、半導体封入用ガラスの熱膨張係数が、ジュメット線等の金属線の熱膨張係数に整合しやすくなり、結果として、電子部品の信頼性を高めることができる。
【0018】
本発明の半導体素子用ガラスにおいて、150℃における体積抵抗率は、Logρ(Ω・cm)で7以上、9以上、特に10以上が好ましい。150℃における体積抵抗率が低くなると、電極間に電気が流れるようになり、ダイオード等に平行して抵抗体を設置したような回路が発生しやすくなる。なお、使用環境が200℃程度の高温である場合は、250℃における体積抵抗率をLogρ(Ω・cm)で7以上に規制することが好ましい。
【0019】
本発明の半導体封入用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO 35〜60%、B 5〜25%、Bi 1〜30%、Al 0〜10%、LiO+NaO+KO 5〜25%(但し、LiO、NaO、KOの2種以上を含む)、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 1〜45%を含有することが好ましい。上記のように各成分の含有量を限定した理由は以下の通りである。なお、以下の%表示は、特に断りがない限り、質量%を指す。
【0020】
SiOは、ガラス骨格を構成する成分であり、その含有量は35〜60%、40〜55%、特に42〜52%が好ましい。SiOの含有量が35%より少ないと、耐酸性を高める他の成分を導入しても、化学的耐久性、特に耐酸性を維持することが困難になる。なお、化学的耐久性が低下すると、電子部品の製造工程で使用される種々の薬液、或いは電子部品の長期使用により、ガラスが変質して、気密性等を維持し難くなり、電子部品の信頼性が低下しやすくなる。一方、SiOの含有量が60%より多いと、シリカ原料の溶解に長時間を要し、半導体封入用ガラスを大量生産し難くなる。特に、SiOの含有量を55%以下にすると、熱膨張係数が低くなり過ぎず、ジュメット線等の熱膨張係数に整合しやすくなり、52%以下にすると、更なる低温封入が可能になる。さらに、SiOの含有量が40%以上であれば、実用上、十分な耐酸性を確保しやすくなり、42%以上であれば、更に耐酸性が高まり、端子被覆処理工程の制約を減らすことができる。
【0021】
は、溶融性や化学的耐久性を高める成分であり、また封入温度を低温化する成分であり、その含有量は5〜25%、11〜20%、特に12〜18.5%が好ましい。Bの含有量が5%より少ないと、650℃付近の粘度が高くなり、低温封入が困難になる。一方、Bの含有量が25%より多いと、溶融ガラスから成分揮発が生じやすくなるため、均質なガラスを作製し難くなる。
【0022】
Biは、封入温度を低下させつつ、耐酸性を維持する成分であり、その含有量は1〜30%、3〜20%、特に6〜17%が好ましい。Biの含有量が1%より少ないと、上記効果を享受し難くなる。一方、Biの含有量が30%より多いと、耐失透性が低下しやすくなり、半導体封入用ガラスを大量生産し難くなる。なお、Biの含有量を6%以上にすると、耐酸性を維持しながら、封入温度を660℃以下にしやすくなり、17%以下にすると、耐酸性を高めるためにTiOを添加した場合であっても、ガラスに結晶が析出し難くなる。
【0023】
Alは、化学的耐久性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜5%、特に0.1〜2%が好ましい。Alの含有量が10%より多いと、溶融性が低下し、また耐失透性が低下するため、ブツや脈理が発生しやすくなる。なお、ガラスにブツや脈理があると、封入形状が不揃いになり、また破損の原因になるため、電子部品の信頼性が著しく低下してしまう。
【0024】
LiO+NaO+KOは、溶融性を高めるとともに、封入温度を低温化、具体的には封入温度を660℃以下にしやすくする成分であり、且つ熱膨張係数をジュメット線等の熱膨張係数に整合させるための成分である。また、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)は、2種以上を混合して添加することが重要である。このようにすれば、アルカリ混合効果を享受できるため、LiO+NaO+KOの含有量が多くても、化学的耐久性や電気絶縁性が低下し難くなる。
【0025】
LiO+NaO+KOの含有量は5〜25%、8〜18%、特に11〜16%が好ましい。LiO+NaO+KOの含有量が5%より少ないと、低温封入が困難になり、また熱膨張係数が低くなり過ぎる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が25%より多いと、熱膨張係数が高くなり過ぎる。なお、LiO+NaO+KOの含有量を18%以下にすると、耐酸性を維持しやすくなり、16%以下にすると、化学的耐久性の低下を大幅に抑制することができる。
【0026】
LiOの含有量は0〜10%、特に0.5〜9%、NaOの含有量は0〜10%、特に3〜9%、KOの含有量は0〜15%、特に1〜10%が好ましい。このようにすれば、混合アルカリ効果を享受しやすくなり、化学的耐久性や電気絶縁性が低下し難くなる。なお、LiOは、アルカリ金属酸化物の中で封入温度を低下させる効果が最も大きい。このため、LiOの含有量は0.5%以上、2%以上、特に3%以上が好ましい。
【0027】
MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOは、溶融性を高め、また封入温度を低温化する成分である。MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量は1〜45%、3〜20%、特に6〜13%が好ましい。MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量が1%より少ないと、溶融性が低下し、また封入温度が上昇しやすくなる。一方、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量が45%より多いと、失透や分相が生じやすくなり、均質なガラスを作製し難くなる。なお、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnOの含有量を35%以下にすると、耐酸性を維持しやすくなり、また13%以下にすると、均質なガラスを作製しやすくなる。
【0028】
MgOの含有量は0〜10%、0〜8%、特に0〜3%、CaOの含有量は0〜10%、0〜8%、特に0〜3%、SrOの含有量は0〜20%、0〜15%、特に0〜5%、BaOの含有量は0〜20%、0〜15%、特に0〜5%が好ましい。このように各成分の含有量を規制すれば、失透や分相が生じ難くなるため、均質なガラスを作製しやすくなり、また管形状に成形しやすくなる。ZnOは、ガラスの粘性を顕著に低下させる成分であり、その含有量は0〜30%、1.5〜20%、特に2.1〜17%が好ましい。ZnOの含有量が30%より多いと、失透や分相が生じやすくなる。しかし、ZnOの含有量が20%以下であれば、溶融時に溶融ガラスの分離が生じ難くなり、17%以下であれば、均質なガラスを作製しやすくなり、また管形状に成形しやすくなる。
【0029】
上記成分以外に以下の成分を添加することができる。
【0030】
CeOは、清澄作用を示す成分であるとともに、紫外線によって蛍光を発する成分である。ガラスが紫外線によって蛍光を発すると、自動検査により、ガラスの欠けや脈理を発見しやすくなり、半導体封入用ガラスの品質を高めやすくなる。特に、CeOは、365nmの紫外線により蛍光を発するため、254nmの紫外線により蛍光を発するPbO含有ガラスに比べて、人体への影響(特に、視力への影響)が小さくなる。CeOの含有量は0〜10%、0.1〜3%、特に0.3〜2%が好ましい。CeOの含有量が10%より多いと、耐失透性が低下しやすくなり、また原料コストが高騰しやすくなる。なお、CeOの含有量を0.2%以上にすると、自動検査を行いやすくなり、特に0.3%以上にすると、清澄作用も的確に享受することができる。
【0031】
TiOは、耐酸性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、1〜7%、特に2〜5%が好ましい。TiOの含有量が10%より多いと、耐失透性が低下しやすくなる。なお、TiOの含有量を5%以下にすると、細径のガラス管を作製しやすくなる。
【0032】
ZrOは、耐酸性を高める成分であり、その含有量は0〜5%、0〜3%、特に0〜2%が好ましい。ZrOの含有量が5%より多いと、耐失透性が低下しやすくなる。なお、ZrOの含有量を2%以下にすると、細径のガラス管を作製しやすくなる。
【0033】
上記成分以外にも、溶融性の向上、封入温度の低温化、化学的耐久性の向上、清澄性の改善等の目的で、P、SO、Sb、F、Cl等を適量添加することができる。なお、上記の通り、環境的観点から、PbOを添加しないことが好ましい。
【0034】
次に、半導体封入用ガラス、半導体封入用外套管の製造方法を説明する。
【0035】
まず各種のガラス原料を調合、混合する。ガラス原料は、通常、複数の成分からなる鉱物や不純物を含むが、このような場合、ガラス原料の成分分析値を考慮して、所望のガラス組成になるように調合すればよい。続いて、Vミキサー、ロッキングミキサー、攪拌羽根が付いたミキサー等の混合機で各種のガラス原料を混合し、投入原料を得る。
【0036】
次に、投入原料をガラス溶融炉に投入し、溶融ガラスを得る。ガラス溶融炉は、溶融ガラスを得るための溶融槽と、溶融ガラス中の泡を除去するための清澄槽と、清澄された溶融ガラスを成形に適当な粘度まで下げて、成形装置に導くための通路(フィーダー)等で構成される。ガラス溶融炉は、バーナーまたは電気通電により加熱される。投入原料は、通常1300℃〜1600℃の溶解槽で溶融されて、更に1400℃〜1600℃の清澄槽に入る。清澄糟から出た溶融ガラスは、フィーダーを通って成形装置に移動していく過程で、温度が低下し、成形に適した粘度10〜10dPa・sになる。
【0037】
次いで、成形装置で溶融ガラスを管状に成形する。成形法として、ダンナー法、ベロ法、ダウンドロー法、アップドロー法等が適用可能である。
【0038】
得られたガラス管を所定の寸法に切断すれば、半導体封入用外套管を作製することができる。ガラス管の切断加工に際し、ガラス管をダイヤモンドホイールカッターで個別に切断することも可能であるが、多数のガラス管を結束させた後にダイヤモンドホイールカッターで切断する方法が大量生産に適している。
【0039】
次に、半導体封入用外套管による半導体素子の封入方法を説明する。
【0040】
最初に、半導体封入用外套管内において、半導体素子を両側から挟み込んだ状態になるように、ジュメット線等の金属線を固定する。次に、660℃以下の温度に加熱し、外套管を軟化変形させて半導体素子を封入する。このようにして、シリコンダイオード、発光ダイオード、サーミスタ等の電子部品を作製することができる。
【0041】
なお、本発明の半導体封入用ガラスは、外套管として使用する以外にも、例えば、粉末状に粉砕した後にペースト化し、これを半導体素子に巻き付けて焼成することにより、半導体素子を封入することもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0043】
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜6)および比較例(試料No.7、8)を示している。なお、試料No.8は、従来の半導体封入用ガラスを示している。
【0044】
【表1】

【0045】
表中のガラス組成になるように、石粉、酸化アルミニウム、硼酸、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、三酸化アンチモン、酸化ビスマス等を用いて、合計500kgのガラス原料を調合し、V型ミキサーで十分に混合した。
【0046】
この原料を容量500リットルのガラス溶融炉で溶融し、ダウンドロー法で管状に成形した後、切断し、適当な長さ(例えば1m)のガラス管を得た。ガラス溶融炉の溶融糟の温度は1450℃であった。溶融ガラスは、溶融槽を出て、清澄槽を通り、フィーダーに供給された。続いて、溶融ガラスは、成形装置であるフィーダー底面の開口リング(Orifice ring)と同心上に配置されたベル軸(Bel shaft)の隙間からガラス溶融炉外に流出し、ベル軸から吹き込まれた空気圧を管内部に受けながら、下方に引き伸ばされて管状に成形された。なお、溶融ガラスの流下速度、空気圧、引っ張り速度等を調整することにより、ガラス管の寸法(内径と管肉厚)を調整した。
【0047】
次に、結束器具を用いて、1000本のガラス管を一体的に固定し、これを松ヤニ等の樹脂が各ガラス管の間に入り込むように樹脂槽に浸漬させた後、樹脂槽から取り出して冷却することにより、直径約5cmの棒状体を得た。この棒状体をダイヤモンドカッターで所定の長さに切断して、1000本のガラス管が一体化したペレットを得た。その後、樹脂を除去してガラス管同士の結束を外し、洗浄、乾燥することにより、所定の長さの半導体封止用外套管を得た。なお、このようにして得られる半導体封止用外套管は、ダイオード封止用外套管の場合、例えば内径0.6〜2.1mm、肉厚0.2〜0.8mm、長さ1〜4mmである。
【0048】
また、表中に示すガラス組成になるように、ガラス原料を調合し、白金坩堝を用いて1400℃で5時間溶融した後、溶融ガラスを所定の形状に成形、加工して、各評価に供した。各試料について、封入温度、耐酸性、熱膨張係数α、150℃における体積抵抗率、蛍光性、清澄性を評価した。
【0049】
次のようにして、封入温度を測定した。まずASTM C338に準拠するファイバ法により軟化点を測定した。次に、白金球引き上げ法により作業点領域の粘度に相当する温度を求めた。最後に、これらの粘度と温度をFulcherの式に当てはめて、10dPa・sにおける温度を算出し、これを封入温度とした。
【0050】
次のようにして、耐酸性を評価した。まず25×25×10mmのブロックに切断加工し、その表面を鏡面に研磨した。次に、このブロックをアルコールで洗浄、乾燥させた後、初期の質量を正確に測定した。さらに、このブロックを10容量%のHSO水溶液に60分間浸漬した後、市水で60秒間洗浄した。続いて、処理後のブロックをアルコールで洗浄、乾燥させた後、処理後の質量を測定した。最後に、初期の質量から質量の減少割合を算出し、耐酸性を評価した。なお、質量の減少割合が小さい程、耐酸性が良好である。
【0051】
熱膨張係数αは、直径約3mm、長さ約50mmの円柱状の測定試料を用いて、自記示差熱膨張計により30〜380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を測定した値である。
【0052】
150℃における体積抵抗率は、ASTM C−657に準拠した方法で測定した値である。
【0053】
365nmの紫外線を照射して、蛍光を発した場合を「○」、蛍光を発しなかった場合を「×」として、蛍光性を評価した。
【0054】
次のようにして、清澄性を評価した。まず25×25×10mmのブロックに切断加工し、その表面を鏡面に研磨した。次に、このブロックの内部を観察し、0.5mm以上の泡がない場合を「○」、0.5mm以上の泡がある場合を「×」とした。
【0055】
表1から明らかなように、試料No.1〜6は、封入温度が660℃以下、耐酸性が7000ppm以下、熱膨張係数αが89.6〜94.6×10−7/℃、体積抵抗率が10.5以上であり、蛍光性や清澄性の評価も良好であった。一方、試料No.7は、試料No.3と封入温度が同等であるが、耐酸性が試料No.3よりも劣っていた。なお、封入温度が高くなると、通常、耐酸性が向上する。試料No.7は、試料No.5よりも耐酸性が若干良好であるが、封入温度が高くなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、アルカリ金属酸化物(LiO、NaO、KO)の2種以上、BおよびBiを含み、且つ実質的にPbOを含まないことを特徴とする半導体封入用ガラス。
【請求項2】
10dPa・sおける温度が660℃以下であり、且つ30〜380℃における熱膨張係数が85〜105×10−7/℃であることを特徴とする請求項1に記載の半導体封入用ガラス。
【請求項3】
ガラス組成として、質量%で、SiO 35〜60%、B 5〜25%、Bi 1〜30%、Al 0〜10%、LiO+NaO+KO(但し、LiO、NaO、KOの2種以上を含む) 5〜25%、MgO+CaO+SrO+BaO+ZnO 1〜45%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体封入用ガラス。
【請求項4】
ガラス組成として、LiOを0.5〜10質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体封入用ガラス。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体封入用ガラスにより作製されていることを特徴とする半導体封入用外套管。
【請求項6】
半導体封入用外套管により半導体素子を封入する半導体素子の封入方法において、
半導体封入用外套管が請求項5に記載の半導体封入用外套管であることを特徴とする半導体素子の封入方法。

【公開番号】特開2011−116578(P2011−116578A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274080(P2009−274080)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】