説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】無機充填材を高充填させても、金属との高い密着性と高い流動性とを両立できる半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物は前記無機充填材を84質量%以上含有し、前記無機充填材中に、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材が1〜10質量%含有されることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、シリコンチップ等の半導体素子やリードフレーム等を、封止材料で封止して半導体パッケージを形成することにより得られる。封止材料としては、エポキシ樹脂と無機充填材とを含むエポキシ樹脂組成物等が挙げられる。近年、半導体装置に用いられる半導体素子の回路の線幅や回路間隔は、ますます微細になってきている。このような微細な回路を有する半導体素子を封止するためには、封止材料に高い流動性が求められる。また、信頼性の高い半導体装置を得るためには半導体素子やリードフレーム等と封止材料との間に高い密着性が求められている。
【0003】
半導体封止用のエポキシ樹脂組成物としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び無機充填材を含有し、無機充填材の含有量がエポキシ樹脂組成物全量に対して、50〜90重量%のエポキシ樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物においては、無機充填材に含まれる不純イオンの含有量が無機充填材の全量に対して50ppm以下である。そして、このような不純イオンの含有量が少ない無機充填材を含有するエポキシ樹脂組成物を用いることにより、線膨張係数が小さく、熱伝導率が大きく、耐湿信頼性が良好であり、磨耗性が小さいエポキシ樹脂組成物が得られることが記載されている。
【特許文献1】特開平8−319341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような樹脂組成物によれば、近年のグリーン化の要請に応じるべく、環境負荷を低減させることを目的として、また、難燃性を高めるために無機充填材を高充填させた場合、金属との密着性が低下したり、流動性が不充分になり、金属との密着性と流動性とを両立させることが困難であった。
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に無機充填材を高充填させた場合において、金属との高い密着性と高い流動性とを両立できる半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物は前記無機充填材を84質量%以上含有し、前記無機充填材中に、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材が1〜10質量%含有されることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。
【0007】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填材の1〜10質量%として、前記粘土系無機充填材を用いることにより、無機充填材を84質量%以上含有するにもかかわらず、金属との高い密着性と高い流動性とを両立できるものである。
【0008】
前記粘土系無機充填材は、カオリナイト及び/又はパイロフィライトであることが好ましく、カオリナイトであることがより好ましい。そうすることによって、金属との密着性、及び流動性がより高まる。
【0009】
また、本発明の半導体装置は、半導体素子を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止して得られることを特徴とする半導体装置である。このような半導体装置は、封止材料と金属との間の密着性に優れた信頼性の高い半導体装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、無機充填材を84質量%以上含有するにもかかわらず、金属との高い密着性と高い流動性とを両立できるものである。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止する場合、半導体装置の微細な封止領域にも半導体封止用エポキシ樹脂組成物を充分に充填できる。そして、得られた半導体装置は、封止材料と金属との間の密着性に優れた信頼性の高い半導体装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物は前記無機充填材を84質量%以上含有し、前記無機充填材中に、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材が1〜10質量%含有する。
【0013】
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、無機充填材を84質量%以上含有する。無機充填材の含有量は、84質量%以上であり、上限は95質量%以下、さらには90質量%以下であることが好ましい。無機充填材の含有量が84質量%未満の場合には、環境への負荷が大きい難燃剤や難燃性エポキシ樹脂を含有する樹脂成分を、ある程度の量使用しなければ充分な難燃性が得られず、そのために、グリーン化への寄与が低下する。また、無機充填材の含有量が多すぎる場合には、エポキシ樹脂などの樹脂成分が少なくなりすぎ、硬化物が形状を保持できなくなる可能性がある。
【0014】
なお、無機充填材の含有量が高い場合、金属との密着性及び流動性が低下する傾向がある。従って、無機充填材を高充填させた封止材料で封止して得られた半導体装置は、半導体装置を構成する半導体素子やリードフレーム等と封止材料との間の密着性が低下する傾向がある。本発明においては、無機充填材の1〜10質量%として、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材を用いることにより、無機充填材が高充填である場合であっても、金属との高い密着性と高い流動性とを維持することができる。
【0015】
xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材の具体例としては、例えば、カオリナイト、パイロフィライト等が挙げられる。カオリナイトは、上記組成式においてx=1、y=2、z=2である組成式(Al・2SiO・2HO)で表される粘土系無機充填材である。また、パイロフィライトは、上記組成式においてx=1、y=4、z=1である組成式(Al・4SiO・HO)で表される粘土系無機充填材である。これらの中では、特に、カオリナイトが金属との密着性をより高く維持でき、さらに、流動性もより高く維持できる点から好ましい。
【0016】
無機充填材全量中の前記粘土系無機充填材の含有量は、1〜10質量%であり、好ましくは2〜10質量%、さらに好ましくは4〜6質量%である。前記粘土系無機充填材の含有量が1質量%未満の場合には、密着性が低下し、10質量%以上の場合には流動性が低下する。
【0017】
前記粘土系無機充填材と併用して用いられる、その他の無機充填材としては、公知の各種無機充填材を使用することができる。具体的には、例えば、溶融シリカ及び結晶シリカ等のシリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化チタン等の金属水酸化物、アルミナ、窒化珪素、赤燐等が挙げられる。これらの中では、シリカ及び金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが好ましい。難燃性の高い水酸化アルミニウムを含有することによって半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与することができる。また、無機充填材として、シリカと金属水酸化物とを併用することが好ましい。そうすることによって、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与することができる。
【0018】
無機充填材の平均粒径としては、1〜40μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。無機充填材の平均粒径が1μm未満であると、無機充填材による封止性を充分に発揮することができない場合がある。また、無機充填材の平均粒径が40μmを超えると、半導体封止用エポキシ樹脂組成物をアンダーフィル材などのように、半導体装置を構成する半導体素子とリードフレームとの隙間に適用する場合等に、無機充填材が隙間を通りにくくなり、好ましくない場合がある。
【0019】
本発明に用いられるエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの中では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることがより好ましい。エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂を単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0020】
エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量に対して5〜12質量%であることが好ましく、8〜12質量%であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量が5質量%未満であると、樹脂成分が少なくなりすぎ、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物の、金属との密着性が低下してしまう場合がある。エポキシ樹脂の含有量が12質量%を超えると、硬化に必要な硬化剤及び硬化促進剤の量が増えるが、無機充填材の含有量が84質量%以上であることから、充分な硬化剤及び硬化促進剤を含有させることができず、硬化させることが困難な場合がある。
【0021】
本発明に用いられる硬化剤としては、公知の硬化剤を使用することができる。具体的には、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等の各種多価フェノール化合物またはナフトール化合物等が挙げられる。これらの中では、フェノールノボラック樹脂が好ましい。硬化剤は、上記硬化剤を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0022】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂に対する割合(硬化剤/エポキシ樹脂)が、当量比で、0.8〜1.2であることが好ましい。この割合が0.8未満であると、硬化剤の量が少なすぎて硬化不足になり、硬化物の形状安定性が不充分な場合がある。また、1.2を超えると、硬化剤が多すぎて経済的に不利である。
【0023】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の水酸基との反応を促進させることができる硬化促進剤であればよく、公知の硬化促進剤を使用することができる。具体的には、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン及びトリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン及びベンジルジメチルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの中では、有機ホスフィン類が好ましく、トリフェニルホスフィンであることがより好ましい。硬化促進剤は、上記硬化促進剤を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0024】
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂と硬化剤との総量(全樹脂量)に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が全樹脂量に対して1質量%未満であると、硬化促進効果を発揮することができない場合があり、10質量%を超えると、経済的に不利であり、成形性に不具合を発生させるおそれがある。また、2〜6質量%であると、硬化時間が最適となる。
【0025】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、上記以外の組成として、本発明の目的とする所望の特性を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有してもよい。このような添加剤として、例えば、離型剤、シランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、シリコーン可とう剤、無機イオントラップ剤等のイオントラップ剤、流動改質剤、滑剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、などの各種添加剤を例示することができる。
【0026】
離型剤としては、公知の離型剤を使用することができる。具体的には、例えば、ステアリン酸、モンタン酸及びミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックス、カルボシキル基含有ポリオレフィン等が挙げられ、カルナバワックスが好ましく用いられる。
【0027】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を使用することができる。具体的には、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、メルカプトシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0028】
また、着色剤としては、公知の着色剤を使用することができる。具体的には、例えば、カーボンブラック等の顔料等が挙げられ、カーボンブラックが好ましく用いられる。
【0029】
シリコーン可とう剤としては、公知のシリコーン可とう剤を使用することができる。具体的には、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゲル、シリコーンゴム及びシリコーンエラストマ等が挙げられる。シリコーン可とう剤を含有すると、充填性及び耐ハンダリフロー性を向上させることができるため好ましい。シリコーン可とう剤の含有量としては、エポキシ樹脂組成物の全体量に対して好ましくは0.01〜3質量%とすることが望ましい。前記範囲の含有量とすることにより、添加剤としての効果が十分に発現されるとともに、エポキシ樹脂組成物の流動性の低下を抑制することができる。
【0030】
消泡剤としては、公知の消泡剤を用いることができる。具体的には、例えば、オイル型、溶液型、粉末型、エマルジョン型等のシリコーン系消泡剤等が挙げられる。
【0031】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤及びその他の成分を所定の含有量となるように、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサー及びブレンダー等で、均一に混合した後、ニーダー、ロール、ディスパー、アジホモミキサー、プラネタリーミキサー及びらいかい機等で混練することによって製造することができる。混練時の温度としては、硬化反応が生じない温度範囲である必要があり、エポキシ樹脂及び硬化剤の組成にもよるが、80〜120℃程度で溶融混練することが好ましい。
【0032】
本発明の半導体装置は、半導体装置を構成する半導体素子や基板などの部材を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止することにより得られる。具体的には、リードフレームや基板等に半導体素子を搭載した後、所定の封止領域を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止することにより半導体装置が得られる。この封止の手段としては、トランスファー成形(トランスファーモールド)等により、半導体素子を搭載したリードフレームや基板等を金型内のキャビティに配置した後、キャビティに上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を充填し、これを加熱して硬化させる方法が挙げられる。このトランスファー成形を採用した場合の金型の温度は170〜180℃、成形時間は30〜120秒に設定することができるが、金型の温度や成形時間及びその他の成形条件は、従来の封止成形と同様に設定することができ、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の材料の種類や製造される半導体装置の種類によって適宜設定変更できる。この半導体装置は、半導体素子を前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止して得られるので、環境負荷の低減された半導体装置である。また、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、金属との高い密着性と高い流動性とを両立するので、封止領域が細かい領域であっても半導体封止用エポキシ樹脂組成物が充分に充填されており、封止材料である半導体封止用エポキシ樹脂組成物と金属との剥離が発生しにくい信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0033】
また、基板に接続されている半導体素子と基板との隙間を半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止してもよい。そうすることによって、接続部分にバンプ電極があることによって作られる半導体素子主面と基板主面との隙間を封止することができる。よって、信頼性のより高い半導体装置が得られる。
【0034】
以下に、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
表1に示す配合割合(質量部)で、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、シランカップリング剤、カルナバワックス、カーボンブラックをブレンダーで30分間混合し均一化した後、80℃に加熱した2本ロールで溶融混練し、冷却後粉砕機で粉砕して半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。実施例及び比較例においては次の原材料を用いた。
・エポキシ樹脂:o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学工業(株)製ESCN195XL、エポキシ当量195g/eq)
・硬化剤:フェノールノボラック樹脂(荒川化学(株)製タマノール752、水酸基当量104g/eq)
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学工業(株)製)
・溶融シリカ:電気化学工業(株)製FB820と、(株)アドマテックス製SO−25Rとを、質量比が9:1となるように混合した混合物
・カオリナイト:J.M.HUBER社HUBER611、平均粒径1.3μm
・パイロフィライト:竹原化学工業(株)製カオリンクレー5M
・水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製HP360、平均粒径2.8μm
・メルカプトシランカップリング剤:γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM802)
・カルナバワックス:大日化学(株)製F1−100
・カーボンブラック:三菱化学(株)製40B
上記のように調製した各組成物を用いて、以下に示す方法により評価を行った。
【0036】
(スパイラルフロー)
ASTM D3123に準じたスパイラルフロー測定金型を用いて金型温度175℃、注入圧力:6.9MPa、成形時間90秒間、後硬化175℃/6時間の条件で成形し、流動距離(cm)を測定した。
【0037】
(密着強度)
得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、25mm×25mmの銅板上にトランスファー成形(成形温度170℃、硬化時間120秒間)により、直径3.5mm、高さ3mmの台形状成形品を接着成形した。そして、9.8KNのロードセルを備えたボンドテスター(dage社製)を用いて前記成形品が銅板から剥がれるときの荷重を測定した。
【0038】
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示すように、無機充填材を84質量%以上含有し、さらに、無機充填材中に、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材が1〜10質量%含有されている半導体封止用エポキシ樹脂組成物(実施例1〜4)は、粘土系無機充填材の含有量が10質量%を超える半導体封止用エポキシ樹脂組成物(比較例1)よりスパイラルフロー評価による流動距離が長く、流動性が高かった。また、密着強度は同等以上であった。
【0041】
また、実施例1〜4は、粘土系無機充填材の含有量が1質量%未満である半導体封止用エポキシ樹脂組成物(比較例2)より流動性が少し低かったが、密着強度が高かった。
【0042】
以上より、本発明に係る実施例1〜4は、無機充填材を高充填させても、金属との高い密着性と高い流動性とを両立することができる。よって、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、半導体素子を封止して半導体装置を製造する場合において、封止領域に充分に充填することができ、さらに、封止材料である半導体封止用エポキシ樹脂組成物と金属との間に剥離が発生しにくい信頼性の高い半導体装置を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物は前記無機充填材を84質量%以上含有し、前記無機充填材中に、xAl・ySiO・zHO(x,y,zはいずれも整数)の組成式で表される粘土系無機充填材が1〜10質量%含有されることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記粘土系無機充填材がカオリナイト及び/又はパイロフィライトである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記粘土系無機充填材がカオリナイトである請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
半導体素子を請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止して得られることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2008−159603(P2008−159603A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343044(P2006−343044)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】