半導体発光ダイオード
【課題】微細なリッジ構造におけるエバネッセント光の干渉現象を利用し、光の外部への取出し効率を改善した半導体発光ダイオードを提供する。
【解決手段】第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下で、かつ前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下である。
【解決手段】第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下で、かつ前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、特に化合物半導体を材料とする高効率発光ダイオードに関し、より詳しくは微細なリッジ構造におけるエバネッセント光の干渉現象を利用し、光の外部への取出し効率を改善した半導体発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体(AlGaInP、InGaNなど)を材料に用いた発光ダイオード(Light−Emitting Diode:LED)は、白熱電球や蛍光灯に取って代わる省エネルギー・長寿命の照明光源として期待され、その本格的な普及に向けた研究開発が世界的に行われている。
【0003】
LEDのエネルギー変換効率は、一般的に結晶の品質によって決まる内部量子効率と光の外部への取出し効率の積によって決まる。内部量子効率に関しては、近年の結晶成長技術の進歩によって、発光波長にもよるが、飛躍的な向上が見られる。例えば、AlGaInP系赤色LED(発光波長約650nm)やInGaN系青色LED(発光波長約450nm)の内部量子効率は、いずれも80%を超えている。
【0004】
これに対して、半導体内部で発生した光(自然放出光)を効率よく外部へ取り出すことは非常に困難であり、これがLEDの発光効率向上を妨げる最大の要因となっている。これは、半導体と空気との界面において、半導体材料の高い屈折率に起因する光の全反射が存在するため、半導体内部で発生した光を効率よく外部へ取り出すことができないためである。
【0005】
例えば、最表面層が平坦な構造のLEDの場合、全反射の臨界角θC=sin−1(1/n)(n:半導体の屈折率)より小さい角度で界面に入射する光しか外部へ取り出すことができない。その量は活性層で発生した光の数パーセント(2〜4%)にすぎない。なお、臨界角θCによって決定される円錐は、一般に、取出し円錐と呼ばれている。
【0006】
LEDの光取出し効率を向上させるため、これまでに様々な全反射を抑制する技術が開発されてきた。例えば、1)空気より屈折率の大きい樹脂でLEDを封止する技術、2)LEDを機械的な方法で逆角錐のような特殊な形状に加工して取出し円錐の数を増やす技術(非特許文献1参照)、3)フォトニック結晶構造を用いて、導波モードの光を回折させることによって、その伝搬方向を変化させる技術(特許文献1参照)、4)LED表面に意図的に微小凹凸を形成し、光の反射角度を変化させる技術、がある。
【0007】
しかし、これらの従来技術は、1)屈折率の大きいAlGaInP系LEDにおいて、50%以上の取出し効率の実現が困難であること、2)製造プロセスが複雑で、生産コストの削減に不利である、などの問題が生じる。したがって、より高効率で、より簡便な光取出し技術の開発が望まれている。
【0008】
我々は、これまでに、複数の結晶面を有する形状基板上に選択的に成長させた微細なリッジ構造を備えるLEDを開発した(非特許文献2、3参照)。このLEDにおいて、リッジ構造の形状が特定の条件を満たせば、発光層となる活性層で発生した光がリッジ構造の二つの傾斜面で全反射する際に生じたエバネッセント光がリッジ構造の頂上で互いに干渉し、非常に高い効率で、空気伝播光に変換されることを見出した。
【0009】
具体的には、図1に示されるように、リッジ構造は隣接する二つのV字型の溝の間に形成される。このような形状は、V字型の溝加工を施した半導体基板上に、又はストライプ状の絶縁膜マスクをもつ基板上に、半導体(活性層など)をエピタキシャル成長させることによって加工することができる。この場合、活性層はエピタキシャル成長中にリッジ構造の頂上平坦面部に選択的に形成される。
【0010】
活性層の中心Cから発生した光が、全反射の臨界角θCの角度でリッジ構造の傾斜面と空気との界面に入射すると、全反射に伴って界面の近傍にエバネッセント光104と呼ばれる特殊な電磁波が発生する。両側面の2つのエバネッセント光が、界面に沿ってリッジ構造の頂上に向かって移動し、リッジ構造の頂上に到達すると、互いに干渉し、効率よく伝播光105に変換され空気中に放出される。
【0011】
この現象を効率よく発現させるためには、リッジ構造の幾何学的形状において2つの重要な条件を満たさなければならない。1)リッジ構造平坦面の横幅Wが発光波長λと同程度か又は少し小さい場合に、エバネッセント光の干渉が最も強く現れ、一方、横幅Wが2λを超えるとほぼなくなることが、フォトルミネセンスによる発光特性評価及び理論シミュレーションによって判明している。したがって、リッジ構造平坦面の横幅Wは2λ以下とする必要がある。2)エバネッセント光は、界面に沿って波長程度の距離を進んだ後、すぐに半導体の内部に戻る性質がある。したがって、活性層の中心Cからの光がθCの角度で界面に到達する地点、すなわち全反射する最短の地点、と平面となる地点までの距離Lが発光波長より短くなければならない。この条件は、一般的に成長方向における活性層の位置を調整することによって満たすことが可能である。
【0012】
また、図2に示されるように、リッジ表面上に最表面の半導体層より屈折率の小さい薄膜109を堆積させると、半導体103/屈折率の小さい薄膜109、及び、屈折率の小さい薄膜109/空気、という二つの界面でエバネッセント光が発生し、エバネッセント光の干渉が二つの界面で二重に起きることも判明している。これによって、空気中に放射される伝播光の割合が増加し、光の取出し効率が屈折率の小さい薄膜がない場合に比べて、1.3〜1.5倍に向上される。ここで、屈折率の小さい薄膜として、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜などの絶縁膜や酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜を用いることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−311687
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M. R. Krames, M. Ochiai-Holcomb, G.E. Hofler, C. Carter-coman, E.I. Chen, I. -H. Tan, P. Grilot, N.F. Gardner, H.C. Chui, J.-W. Huang, S. A. Stockman, F. A. Kish, T. S. Tan, C. P. Kocot M. Hueschen, J. Posselt, B. Loh, G. Sasser, and D. Collins, “High-power truncated-inverted-pyramid (AlxGal-x)0.5In0.5P/GaP light-emitting diodes exhibiting >50% external quantum efficiency”, Applied Physics Letters, Vol. 75 (1999) 2365-2367.
【非特許文献2】X.-L. Wang, S. Furue, M. Ogura, V. Voliotis, M. Ravaro, A. Enderlin, and R. Grousson, “Ultrahigh Spontaneous Emission Extraction Efficiency Induced by Evanescent Wave Coupling”, Applied Physics Letters, Vol. 94 (2009) 091102-1-3.
【非特許文献3】王学論、Alexandre Enderlin, Marco Ravaro, 「凹凸基板におけるエバネッセント光の結合による半導体発光の超高効率取り出し」、第57回応用物理学関係連合講演会予稿集、pp.14-240。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、前記のような複数の結晶面を有する形状基板上への選択成長によるリッジ構造には、以下のような問題点が存在する。すなわち、発光層となる活性層は選択成長中にリッジ構造の頂上付近に形成されるため、活性層の平坦部は面内方向において離散して(切れ切れになって)おり、従来の平坦基板上に成長したデバイスに比べて、発光領域の全体的な面積が少ないという問題点がある。そのため、ウエハーの利用効率が悪くなり、コストの削減にとって不利になることが考えられる。
【0016】
本発明は、上記の問題点を克服するためになされたものであり、その目的は高い活性層の表面占有率を十分に確保すると同時に、エバネッセント光の干渉による高い光取出し効率の実現が可能なLEDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上から、本発明は、
1)順次積層させた第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、(1)前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下であること、(2)前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下であること、(3)前記活性層が平坦で、連続的あること、(4)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層に達しないこと、を特徴とする発光ダイオード。
また、活性層が多重量子井戸の場合、全ての量子井戸が上記(1)〜(4)の条件を満たすことが望ましい。
【0018】
さらに、本発明は、
2)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていること、を特徴とする上記1記載の発光ダイオード。
【0019】
さらに、本発明は、
3)前記リッジ構造の傾斜面と平坦面との交差角度が90度以上150度以下であることを特徴とする上記1〜2記載の発光ダイオード。
【0020】
さらに、本発明は、
4)前記リッジ構造がアレイ状に複数配列していることを特徴とする上記1〜3記載の発光ダイオード。
【0021】
さらに、本発明は、
5)前記リッジ構造において二つの傾斜面によってV字溝を形成することを特徴とする上記1〜4記載の発光ダイオード。
【0022】
さらに、本発明は、
6)前記半導体が閃亜鉛鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{001}面と{111}面であることを特徴とする上記1〜5記載の発光ダイオード。
【0023】
さらに、本発明は、
7)前記半導体がウルツ鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{0001}面と{101―1}面であることを特徴とする上記1〜5記載の発光ダイオード。
【0024】
さらに、本発明は、
8)前記リッジ構造が、前記光取出し側の表面層をエッチングすることによって形成されることを特徴とする上記1〜7記載の発光ダイオード。
【0025】
さらに、本発明は、
9)前記リッジ構造が、ストライプ状の絶縁膜パターンをマスクに用いて、選択再成長法によって形成されることを特徴とする上記1〜7記載の発光ダイオード。
【0026】
さらに、本発明は、
10)光取出し面の反対側の前記障壁層の下に分布ブラッグ反射鏡を備えることを特徴とする上記1〜9記載の発光ダイオード。
これは、基板上に、分布ブラッグ反射鏡と、第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを順次積層させることによって実現することができる。この場合、第2導電型障壁層側の表面は光取出し面となる。
【0027】
さらに、本発明は、
11)光取出し面の反対側の前記障壁層の下に金属ミラーを備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
これは、基板上に、第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを順次積層させた後、発光ダイオード試料を反転して、第2導電型障壁層側を下向きにし、反射率の高い金属薄膜(金属ミラー)を間に挟んで、他の支持基板上に貼り付け、その後、前記基板を除去した後の試料表面上に、前記リッジ構造を形成することにより、実現することができる。この場合、第1導電型障壁層側の表面は光取出し面となる。
【0028】
さらに、本発明は、
12)前記リッジ構造の表面上に、光取出し側の最表面の半導体層より屈折率の小さい膜が前記リッジ構造の平坦面及び前記リッジ構造の傾斜面の少なくも一部を覆うように形成されていることを特徴とする上記1〜11記載の発光ダイオード。
【発明の効果】
【0029】
本発明の発光ダイオード(LED)は、平坦な半導体ウエハー表面上に微細なリッジ構造を作製し、前記リッジ構造において発現するエバネッセント光の干渉現象を利用して、LEDの光取出し効率を向上させることができる。また、本発明の発光ダイオード(LED)によれば、従来の構造においてエバネッセント光の干渉現象を利用できる活性層の面積が少ないという問題点を大幅に改善することができ、ウエハーの利用効率を大きく向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のリッジ構造を備えた発光ダイオードの断面模式図である。
【図2】表面に屈折率の小さい薄膜が堆積されている従来のリッジ構造を備えた発光ダイオードの断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図4】有限差分時間領域法による電磁波強度分布のシミュレーション結果である。図中の数値は点光源とリッジ構造中心との距離を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図10】本発明の第4の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、図3〜6を用いて、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図3は、第1の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。この試料は次の方法によって作製することができる。まず、平坦な基板201上に、有機金属気相エピタキシー(Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)や分子線エピタキシーなどのエピタキシャル成長法を用いて、第1導電型の障壁層202、発光層となる活性層204、第2導電型の障壁層203を順次成長させる。基板としては、AlGaInP系LEDの場合、GaAsなどを、InGaN系LEDの場合、サファイア、炭化珪素、シリコンなどを用いることができる。
【0032】
次に、前記の方法によって得られた表面が平坦なエピタキシャルウエハー上に、エッチング又は選択再成長などの方法を用いて、一つの平坦面と二つの傾斜面を有するリッジ構造をアレイ状に形成することができる。
隣り合うリッジ構造間に平坦な部分が残ると、その直下で発生した光をエバネッセント光の干渉現象を利用して外部に取り出すことができない。したがって、エバネッセント光の干渉現象を最大限発現させるためには、リッジ構造の二つの傾斜面はV字型の溝をなすことが望ましい。そして、本発明において、リッジ構造形成時の活性層へのダメージを避けるために、リッジ構造の最も低い地点、すなわち図3のV字型溝の底が活性層に達しないことが好ましい。
また、前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていること(すなわち、t>0.1μm)が望ましい。0.1μm未満では、特に、リッジ構造の形成にドライエッチング法を用いた場合、活性層へのダメージを十分に避けることができないからである。
【0033】
ここで、図1に示す従来構造と図3に示す本発明の構造とのエバネッセント光の干渉現象を利用できる活性層面積の割合を比較する。
まず、図1の従来構造について、活性層の表面占有率S0(%)を、「リッジ構造の周期」に占める「活性層の横幅」の割合と定義する。簡単な幾何学的考察から、図1の試料のリッジ構造の周期Pは、リッジ平坦面幅W、V字型溝の深さd、平坦面と傾斜面との交差角度αを用いて、次のように表すことができる:P=2d×tan(α−90°)+W。したがって、活性層の表面占有率はS0(%)=W/(2d×tan(α−90°)+W)×100となる。
【0034】
次に、図1のような構造を持つ可視光発光ダイオードの活性層の表面占有率S0の値を見積もる。
発光波長590〜660nmのAlGaInP系赤・黄色LEDにおいて、リッジ構造の横幅Wを0.5μm程度に設定する。また、V字型溝の深さdは、発光ダイオード構造に必要な膜厚やエバネッセント光干渉現象の発現効率を考慮して、1μm以上に設定する。さらに、傾斜面と平坦面との交差角度αは、エッチングや選択成長によって容易に得られる{001}平坦面と{111}傾斜面を有するリッジ構造の値α=126°を用いる。これらの値より、活性層の表面占有率S0は約26%程度となる。
発光波長400〜450nmのInGaN系青色LEDにおいては、{0001}平坦面と{101−1}傾斜面を有するリッジ構造が選択成長によって容易に得られ、傾斜面と平坦面との交差角度αは約118°である。また、平坦面幅W〜0.3μm、V字型溝の深さd〜0.6μmの場合、強いエバネッセント光の干渉現象が発現することは理論シミュレーションによって判明している。上記の値から、InGaNデバイスの活性層の表面占有率S0は約32%程度となった。
以上の結果から、図1の構造における活性層の表面占有率S0は、AlGaInP系及びInGaN系のいずれの場合も、30%程度であり、従来公知の平坦基板デバイス(S=100%)の1/3から1/4程度しかないことが分かる。
【0035】
次に、有限差分時間領域法という電磁波強度解析技術を用いて、図3の構造におけるエバネッセント光の干渉現象が発現可能な領域を調べた。方法として、点光源を活性層に配置し、それをリッジ構造の中心から離していく時の電磁波の放射パターンの変化をシミュレーションした。
シミュレーションでは、{001}面GaAs基板上に形成したAlGaInP系デバイスをモデルとして想定し、リッジ構造は{001}平坦面と{111}傾斜面を有するものとした。また、物性パラメータを、リッジ平坦面幅W=0.5μm、リッジ平坦面と傾斜面との交差角度α=126°、V字型溝の深さd=0.8μm、リッジ平坦面表面から活性層までの膜厚t+d=0.9μm、第2導電型層203の屈折率n=3.3、発光波長λ=650nmとした。
【0036】
図4(a)に示すように、点光源がリッジ構造の中心にあるときに、エバネッセント光の干渉による伝播光は、リッジ構造平坦面の垂直方向に放射される。また、図4(b)〜(d)に示すように、点光源の位置がリッジ構造の中心からずれてくると、伝播光はリッジ平坦面の垂直方向から離れる方向に放射されるが、リッジ構造中心との距離が0.5μmになるまでは、エバネッセント光の干渉が観測できた。しかし、図3(e)に示すように、リッジ構造中心との距離が0.6μm以上になると、エバネッセント光の干渉はなくなった。
また、この場合、エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層面占有率S1は、S1=「エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層領域の幅」/「リッジ構造の周期」=(2×0.5)/(2×0.8tan36°+0.5)×100>60%となり、図1の形状基板選択成長試料に比べて、2倍以上向上したことが分かる。
また、上記の定義から分かるように、「エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層面占有率S1」はリッジ平坦面と傾斜面との交差角度αに依存する。他のパラメータを固定し、角度αだけを変化させてシミュレーションを行った結果、活性層面占有率S1は角度αの増加とともに減少し、角度αが150°以上になるとS1は約30%になり、図1の形状基板上への選択成長の場合とほぼ同程度になることが分かった。したがって、角度αは150°以下である必要がある。
さらに、ここで示していないが、{0001}面を平坦面、{101−1}面を傾斜面に持つInGaN系リッジ構造においても、同様な結果が得られている。
【0037】
図5は、第2の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。この実施形態では、基板201と第1導電型障壁層202との間に分布ブラッグ反射鏡220が挿入されている。分布ブラッグ反射鏡は、屈折率の異なる二種の材料が、λ/4n1、λ/4n2(n1、n2は材料の屈折率)の膜厚で積層した周期構造であり、波長λ付近の垂直入射光を100%に近い反射率で反射させることができる。
材料の組み合わせとしては、GaAs基板上のAlGaInP発光ダイオードの場合、AlGaAs/AlAs、AlInP/AlGaInPなどを用いることができる。また、InGaN発光ダイオードの場合、GaN/AlGaNを用いることが可能である。この構造において、活性層の下方へ放射された光の一部は、分布ブラッグ反射鏡によって上方へ反射された後、再びリッジ構造におけるエバネッセント光の干渉効果によって空気中に取り出される。これによって、さらに高い光取出し効率の実現が可能となる。
【0038】
図6は、第3の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。まず、第1の実施形態のように成長した表面が平坦なエピタキシャルウエハー表面上に、発光波長において高い反射率を示す金属ミラー222、例えば、Ag、Al、Auなどを真空蒸着やスパッタリングなどの成膜方法を用いて形成する。次に、上記試料をその表面側を下向きにして共晶ボンディング技術を用いて、他の支持基板221上に貼り付ける。支持基板としては、AlGaInPの場合、GaP、Si、Cuなどを用いることができる。また、InGaNの場合、Si、Cu、AlN、アルミナセラミックスなどを用いることが可能である。次に、成長を用いた基板を選択的に除去した後の試料表面上にリッジ構造をアレイ状に形成する。ここで、基板の除去方法として、GaAs基板上に成長したAlGaInPの場合、ウェットエッチング法(エッチング液:アンモニア水+過酸化水素水)を用いることができる。また、サファイア基板上に成長したInGaNの場合、レーザーリフトオフ法を用いることが可能である。このような構造の場合、金属ミラーは分布ブラッグ反射鏡のような反射率の入射角度依存性がなく、全ての入射角の光に対して高い反射率を示す。また、金属ミラーとリッジ構造間の多重反射効果も期待できる。これらの効果によって、この実施形態は第2の実施形態に比べてさらに高い光取出し効率が期待できる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【実施例1】
【0040】
図7を用いて、本発明の第1の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
まず、図7(a)に示すように、[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上にMOVPE法を用いて、Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、Siドープn型Al0.5In0.5P障壁層303(〜0.5μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜0.1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型Al0.6Ga0.4As窓層307(〜0.6μm、p=3x1018cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)を順次成長させた。結晶成長は630〜640℃の温度において行った。
ここで、MOVPEの原料として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、ジメチル亜鉛(DMZn)、ターシャリブチルアルシン(TBAs)、ターシャリブチルフォスフィン(TBP)を用いた。また、上記以外のMOVPE原料として、例えば、アルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)、トリメチルガリウム(TMGa)、ジエチル亜鉛(DEZn)、ビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)などを用いることもできる。
AlGaAsは、他の窓層材料、例えばGaP、AlInP、AlGaInPに比べて、ウェットエッチング法によるリッジ構造形成が簡単である特徴を有する。
【0041】
次に、上記の方法で成長させたウエハー表面上に、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーを用いて、フォトレジストまたは樹脂のライン(Line)/スペース(Space)パターン309を[1−10]方向に形成した。ここで、ライン幅Sは0.2〜0.4μm、パターン周期(S+L)は1.2〜1.4μm程度とした。
次に、上記のレジストまたは樹脂パターンをマスクとして用いて、GaAsキャップ層およびAlGaAs窓層をp型AlInP障壁層に達するまで、ウェットエッチングした。エッチング液として、H2SO4:H2O2:H2O系やH3PO4:H2O2:H2O系などを用いることができる。
これによって、5度傾斜した(001)面を平坦面、(111)A面を傾斜面とするリッジ構造が試料表面上に形成した。このように形成した(001)面の横幅は0.4〜0.6μmであった。この場合、二つの傾斜面は平坦面に対して多少左右非対称になっているが、エバネッセント光の干渉現象の発現に影響がないことはシミュレーションにより確認されている。
【0042】
次に、上記リッジ構造表面上に厚さ100nm〜200nmの酸化インジウ・酸化スズ(ITO)透明導電膜310を、マグネトロンスパッタリング法を用いて堆積した。ここで、ITO膜は電流注入時の電流拡散層として機能するとともに、エバネッセント光の二重干渉効果を発現させることにより光の取り出し効率をさらに増大させる働きもする。
その後、試料の裏面全面にn型電極311となるAuGe/Ni/Au、また図示していないが、表面側の所定位置にp型電極・ボンディングパッドとなるTi/Pt/Auをそれぞれ真空蒸着した。そして、最後に、試料を450度で10分間アニール処理を行い、ITO膜の透過率、電気特性を向上させるとともにオーミック接触を形成した。
以上のプロセスによって、デバイスの作製が完了する。
【実施例2】
【0043】
図8を用いて、本発明の第2の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
図8(a)に示すように、実施例1と同じMOVPE成長法を用いて、以下のエピタキシャル層を[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上に順次積層した:Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、Siドープ(Al0.5Ga0.5As/AlAs)x25周期の分布ブラッグ反射鏡320、Siドープn型Al0.5In0.5P障壁層303(〜0.5μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜0.1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型Al0.6Ga0.4As窓層307(〜0.6μm、p=3x1018cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)。
ここで、分布ブラッグ反射鏡の中心波長が650nmとなるように、Al0.5Ga0.5AsとAlAsの膜厚を調整した。
【0044】
次に、実施例1と同じプロセスを用いて、表面側(光取出し面側)にリッジ構造およびITO透明電極310、また裏面側にAuGe/Ni/Auからなるn型電極311を形成した。
前述するように、このデバイスにおいて下方へ放射される光の一部は分布ブラッグ反射320によって上方へ反射された後、再度リッジ構造におけるエバネッセント光の干渉効果によって外部に取り出されるので、分布ブラッグ反射鏡のない構造よりも高い光取出し効率が得られた。
【実施例3】
【0045】
図9を用いて、本発明の第3の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
まず、図9(a)に示すように、実施例1と同じMOVPE成長法を用いて、以下のエピタキシャル層を[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上に順次積層させた:Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、SiドープAl0.5In0.5Pエッチングストッパー層330(〜0.1μm、n=1x1018cm−3)、Siドープn型GaAsオーミックコンタクト層331(〜20nm、n=1x1018cm−3)、Siドープn型Al0.6Ga0.4As窓層332(〜0.6μm、n=1x1018cm−3)、SiドープAl0.5In0.5P障壁層303(〜0.1μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層/オーミックコンタクト層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)。
次に、上記試料表面上に金属ミラーとなるAg(200nm)/Au(500nm)多層膜を真空蒸着法により形成した。なお、Agはp型オーミック電極としても機能する。また、金属ミラーの材料として、反射率が高い金属や合金であればよく、AnZnやAuBeなどを用いることができる。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、上記ウエハーの表面側をした向きにして、AuSn341合金が予め蒸着されているGaAs支持基板340上に共晶ボンディング技術によって、上記ウエハーを接着した。
次に、エピタキシャル成長に用いた基板301を機械的研磨により100μm程度薄くした後、アンモニア水:過酸化水素水=1:20の液によるウェットエッチングによって除去した。次に、塩酸液を用いてAlInPエッチングストッパー層330を選択的に除去し、n型のGaAsオーミックコンタクト層331を露出させた。
次に、実施例1と同様な方法を用いて、n型のGaAsオーミックコンタクト層331及びn型AlGaAs窓層332をエッチングし、表面上(光取出し側)にリッジ構造を形成した。
最後に、光取出し側に透明電極310、支持基板の裏面にp型電極となるTi/Pt/Au金属膜342の蒸着、アロイ処理を行い、デバイスの作製が完了する。
【実施例4】
【0047】
図10を用いて、本発明の第4の実施例のInGaN系発光ダイオードについて説明する。
まず、MOVPE法を用いて(0001)面のサファイア基板400上に、GaN低温バッファー層(〜40nm)401を550〜600℃の温度で成長させた。その後、成長温度を1040℃に上げて、Siドープのn型GaN障壁層(n=2x1018cm−3)402を約4μm成長させた。次に、温度を約760℃に下げて、GaN(10nm)/In0.15Ga0.85N(3nm)の単一または多重量子井戸活性層403を成長させた後、温度を1040℃に上げて、MgドープAl0.1Ga0.9N電子ブロック層(〜20nm)404、MgドープGaN障壁層(〜100nm)を成長させた。ここで、MOVPEの原料として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、ビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。
【0048】
次に、上記試料表面上にプラズマCVD法を用いて厚さ100nm程度のSiO2膜を堆積させた。その後、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーを用いて、[112−0]方向に幅0.2μm程度、周期0.8μm程度のSiO2のストライプ状パターン406を形成した。次に、試料をMOVPE装置に戻して、上記SiO2パターンをマスクとして用いてMgドープのp型GaN層407を選択成長させた。これによって、(0001)を平坦面、(101−1)面を傾斜面とするリッジ構造を形成した。ここで、リッジの高さが0.5μm程度のなるように成長時間を調整する。また、活性層へのダメージを避けるため、再成長は800〜900℃の比較的低い温度で行うのが望ましい。
次に、上記試料表面上に厚さ100〜200nmのITO透明導電膜409をマグネトロンスパッタリング法によって堆積させた。その後、上記試料の所定の場所をn型GaN障壁層402に達するまでドライエッチングし、n型電極(Ti/Al/Ni/Au)408を形成した。最後に、ITO透明導電膜の所定の場所にp型電極410(Ti/Au)を形成し、デバイスの作製が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の発光ダイオードは、平坦な光取出し側の表面上に形成された微細なリッジ構造において発現するエバネッセント光の干渉効果を利用して、デバイスの光取り出し効率を向上させるためのものであり、従来の平坦表面デバイスを遥かに超える光取出し効率を容易に実現することができる。また、本発明の発光ダイオードは、形状基板上への選択成長により作製したリッジ構造を備えるデバイスに比べて、エバネッセント光の干渉効果が発言可能な活性層面積が倍以上高くなっており、ウエハーの利用効率を大幅に向上させることができる。さらに、本発明の発光ダイオードは、機械的方法による特殊形状加工のような複雑な製造プロセスを必要とせず、低コスト化に大きく貢献できるので、発光ダイオード作製に極めて有用である。
【符号の説明】
【0050】
101:基板
102:活性層
103:障壁層
104:エバネッセント光
105:空気伝播光
106:傾斜面の法線
107:全反射臨界角
108:リッジ構造の中心線
109:屈折率の小さい薄膜
201:基板
202:障壁層(n型)
203:障壁層(p型)
204:活性層
205:エバネッセント光
206:空気伝播光
207:リッジ構造の中心線
208:全反射臨界角
209:傾斜面の法線
210:点光源
211:空気伝播光の放射方向
220:分布ブラッグ反射鏡
221:支持基板
222:金属ミラー
301:GaAs基板
302:GaAsバッファー層
303:AlInP障壁層(n型)
304:AlGaInP障壁層
305:量子井戸活性層
306:AlInP障壁層(p型)
307:AlGaAs窓層(p型)
308:GaAsキャップ層
309:レジストまたは樹脂パターン
310:透明電極
311:n型電極
320:分布ブラッグ反射鏡
330:AlInPエッチングストッパー層
331:GaAsオーミックコンタクト層(n型)
332:AlGaAs窓層(n型)
333:金属ミラー
340:支持基板(GaAs)
341: AuSn
342:p電極
400:サファイア基板
401:低温バッファー層
402:n型GaN障壁層
403:量子井戸活性層
404:AlGaN電子ブロック層
405:p型GaN障壁層
406:SiO2ストライプパターン
407:再成長GaN層
408:n型電極
409:透明電極
410:p型電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、特に化合物半導体を材料とする高効率発光ダイオードに関し、より詳しくは微細なリッジ構造におけるエバネッセント光の干渉現象を利用し、光の外部への取出し効率を改善した半導体発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体(AlGaInP、InGaNなど)を材料に用いた発光ダイオード(Light−Emitting Diode:LED)は、白熱電球や蛍光灯に取って代わる省エネルギー・長寿命の照明光源として期待され、その本格的な普及に向けた研究開発が世界的に行われている。
【0003】
LEDのエネルギー変換効率は、一般的に結晶の品質によって決まる内部量子効率と光の外部への取出し効率の積によって決まる。内部量子効率に関しては、近年の結晶成長技術の進歩によって、発光波長にもよるが、飛躍的な向上が見られる。例えば、AlGaInP系赤色LED(発光波長約650nm)やInGaN系青色LED(発光波長約450nm)の内部量子効率は、いずれも80%を超えている。
【0004】
これに対して、半導体内部で発生した光(自然放出光)を効率よく外部へ取り出すことは非常に困難であり、これがLEDの発光効率向上を妨げる最大の要因となっている。これは、半導体と空気との界面において、半導体材料の高い屈折率に起因する光の全反射が存在するため、半導体内部で発生した光を効率よく外部へ取り出すことができないためである。
【0005】
例えば、最表面層が平坦な構造のLEDの場合、全反射の臨界角θC=sin−1(1/n)(n:半導体の屈折率)より小さい角度で界面に入射する光しか外部へ取り出すことができない。その量は活性層で発生した光の数パーセント(2〜4%)にすぎない。なお、臨界角θCによって決定される円錐は、一般に、取出し円錐と呼ばれている。
【0006】
LEDの光取出し効率を向上させるため、これまでに様々な全反射を抑制する技術が開発されてきた。例えば、1)空気より屈折率の大きい樹脂でLEDを封止する技術、2)LEDを機械的な方法で逆角錐のような特殊な形状に加工して取出し円錐の数を増やす技術(非特許文献1参照)、3)フォトニック結晶構造を用いて、導波モードの光を回折させることによって、その伝搬方向を変化させる技術(特許文献1参照)、4)LED表面に意図的に微小凹凸を形成し、光の反射角度を変化させる技術、がある。
【0007】
しかし、これらの従来技術は、1)屈折率の大きいAlGaInP系LEDにおいて、50%以上の取出し効率の実現が困難であること、2)製造プロセスが複雑で、生産コストの削減に不利である、などの問題が生じる。したがって、より高効率で、より簡便な光取出し技術の開発が望まれている。
【0008】
我々は、これまでに、複数の結晶面を有する形状基板上に選択的に成長させた微細なリッジ構造を備えるLEDを開発した(非特許文献2、3参照)。このLEDにおいて、リッジ構造の形状が特定の条件を満たせば、発光層となる活性層で発生した光がリッジ構造の二つの傾斜面で全反射する際に生じたエバネッセント光がリッジ構造の頂上で互いに干渉し、非常に高い効率で、空気伝播光に変換されることを見出した。
【0009】
具体的には、図1に示されるように、リッジ構造は隣接する二つのV字型の溝の間に形成される。このような形状は、V字型の溝加工を施した半導体基板上に、又はストライプ状の絶縁膜マスクをもつ基板上に、半導体(活性層など)をエピタキシャル成長させることによって加工することができる。この場合、活性層はエピタキシャル成長中にリッジ構造の頂上平坦面部に選択的に形成される。
【0010】
活性層の中心Cから発生した光が、全反射の臨界角θCの角度でリッジ構造の傾斜面と空気との界面に入射すると、全反射に伴って界面の近傍にエバネッセント光104と呼ばれる特殊な電磁波が発生する。両側面の2つのエバネッセント光が、界面に沿ってリッジ構造の頂上に向かって移動し、リッジ構造の頂上に到達すると、互いに干渉し、効率よく伝播光105に変換され空気中に放出される。
【0011】
この現象を効率よく発現させるためには、リッジ構造の幾何学的形状において2つの重要な条件を満たさなければならない。1)リッジ構造平坦面の横幅Wが発光波長λと同程度か又は少し小さい場合に、エバネッセント光の干渉が最も強く現れ、一方、横幅Wが2λを超えるとほぼなくなることが、フォトルミネセンスによる発光特性評価及び理論シミュレーションによって判明している。したがって、リッジ構造平坦面の横幅Wは2λ以下とする必要がある。2)エバネッセント光は、界面に沿って波長程度の距離を進んだ後、すぐに半導体の内部に戻る性質がある。したがって、活性層の中心Cからの光がθCの角度で界面に到達する地点、すなわち全反射する最短の地点、と平面となる地点までの距離Lが発光波長より短くなければならない。この条件は、一般的に成長方向における活性層の位置を調整することによって満たすことが可能である。
【0012】
また、図2に示されるように、リッジ表面上に最表面の半導体層より屈折率の小さい薄膜109を堆積させると、半導体103/屈折率の小さい薄膜109、及び、屈折率の小さい薄膜109/空気、という二つの界面でエバネッセント光が発生し、エバネッセント光の干渉が二つの界面で二重に起きることも判明している。これによって、空気中に放射される伝播光の割合が増加し、光の取出し効率が屈折率の小さい薄膜がない場合に比べて、1.3〜1.5倍に向上される。ここで、屈折率の小さい薄膜として、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜などの絶縁膜や酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電膜を用いることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−311687
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】M. R. Krames, M. Ochiai-Holcomb, G.E. Hofler, C. Carter-coman, E.I. Chen, I. -H. Tan, P. Grilot, N.F. Gardner, H.C. Chui, J.-W. Huang, S. A. Stockman, F. A. Kish, T. S. Tan, C. P. Kocot M. Hueschen, J. Posselt, B. Loh, G. Sasser, and D. Collins, “High-power truncated-inverted-pyramid (AlxGal-x)0.5In0.5P/GaP light-emitting diodes exhibiting >50% external quantum efficiency”, Applied Physics Letters, Vol. 75 (1999) 2365-2367.
【非特許文献2】X.-L. Wang, S. Furue, M. Ogura, V. Voliotis, M. Ravaro, A. Enderlin, and R. Grousson, “Ultrahigh Spontaneous Emission Extraction Efficiency Induced by Evanescent Wave Coupling”, Applied Physics Letters, Vol. 94 (2009) 091102-1-3.
【非特許文献3】王学論、Alexandre Enderlin, Marco Ravaro, 「凹凸基板におけるエバネッセント光の結合による半導体発光の超高効率取り出し」、第57回応用物理学関係連合講演会予稿集、pp.14-240。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、前記のような複数の結晶面を有する形状基板上への選択成長によるリッジ構造には、以下のような問題点が存在する。すなわち、発光層となる活性層は選択成長中にリッジ構造の頂上付近に形成されるため、活性層の平坦部は面内方向において離散して(切れ切れになって)おり、従来の平坦基板上に成長したデバイスに比べて、発光領域の全体的な面積が少ないという問題点がある。そのため、ウエハーの利用効率が悪くなり、コストの削減にとって不利になることが考えられる。
【0016】
本発明は、上記の問題点を克服するためになされたものであり、その目的は高い活性層の表面占有率を十分に確保すると同時に、エバネッセント光の干渉による高い光取出し効率の実現が可能なLEDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上から、本発明は、
1)順次積層させた第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、(1)前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下であること、(2)前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下であること、(3)前記活性層が平坦で、連続的あること、(4)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層に達しないこと、を特徴とする発光ダイオード。
また、活性層が多重量子井戸の場合、全ての量子井戸が上記(1)〜(4)の条件を満たすことが望ましい。
【0018】
さらに、本発明は、
2)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていること、を特徴とする上記1記載の発光ダイオード。
【0019】
さらに、本発明は、
3)前記リッジ構造の傾斜面と平坦面との交差角度が90度以上150度以下であることを特徴とする上記1〜2記載の発光ダイオード。
【0020】
さらに、本発明は、
4)前記リッジ構造がアレイ状に複数配列していることを特徴とする上記1〜3記載の発光ダイオード。
【0021】
さらに、本発明は、
5)前記リッジ構造において二つの傾斜面によってV字溝を形成することを特徴とする上記1〜4記載の発光ダイオード。
【0022】
さらに、本発明は、
6)前記半導体が閃亜鉛鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{001}面と{111}面であることを特徴とする上記1〜5記載の発光ダイオード。
【0023】
さらに、本発明は、
7)前記半導体がウルツ鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{0001}面と{101―1}面であることを特徴とする上記1〜5記載の発光ダイオード。
【0024】
さらに、本発明は、
8)前記リッジ構造が、前記光取出し側の表面層をエッチングすることによって形成されることを特徴とする上記1〜7記載の発光ダイオード。
【0025】
さらに、本発明は、
9)前記リッジ構造が、ストライプ状の絶縁膜パターンをマスクに用いて、選択再成長法によって形成されることを特徴とする上記1〜7記載の発光ダイオード。
【0026】
さらに、本発明は、
10)光取出し面の反対側の前記障壁層の下に分布ブラッグ反射鏡を備えることを特徴とする上記1〜9記載の発光ダイオード。
これは、基板上に、分布ブラッグ反射鏡と、第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを順次積層させることによって実現することができる。この場合、第2導電型障壁層側の表面は光取出し面となる。
【0027】
さらに、本発明は、
11)光取出し面の反対側の前記障壁層の下に金属ミラーを備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
これは、基板上に、第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを順次積層させた後、発光ダイオード試料を反転して、第2導電型障壁層側を下向きにし、反射率の高い金属薄膜(金属ミラー)を間に挟んで、他の支持基板上に貼り付け、その後、前記基板を除去した後の試料表面上に、前記リッジ構造を形成することにより、実現することができる。この場合、第1導電型障壁層側の表面は光取出し面となる。
【0028】
さらに、本発明は、
12)前記リッジ構造の表面上に、光取出し側の最表面の半導体層より屈折率の小さい膜が前記リッジ構造の平坦面及び前記リッジ構造の傾斜面の少なくも一部を覆うように形成されていることを特徴とする上記1〜11記載の発光ダイオード。
【発明の効果】
【0029】
本発明の発光ダイオード(LED)は、平坦な半導体ウエハー表面上に微細なリッジ構造を作製し、前記リッジ構造において発現するエバネッセント光の干渉現象を利用して、LEDの光取出し効率を向上させることができる。また、本発明の発光ダイオード(LED)によれば、従来の構造においてエバネッセント光の干渉現象を利用できる活性層の面積が少ないという問題点を大幅に改善することができ、ウエハーの利用効率を大きく向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のリッジ構造を備えた発光ダイオードの断面模式図である。
【図2】表面に屈折率の小さい薄膜が堆積されている従来のリッジ構造を備えた発光ダイオードの断面模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図4】有限差分時間領域法による電磁波強度分布のシミュレーション結果である。図中の数値は点光源とリッジ構造中心との距離を示す。
【図5】本発明の第2の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図6】本発明の第3の実施形態による発光ダイオードの断面模式図である。
【図7】本発明の第1の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図9】本発明の第3の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【図10】本発明の第4の実施例に係る発光ダイオードの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、図3〜6を用いて、本発明の実施形態について詳しく説明する。
図3は、第1の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。この試料は次の方法によって作製することができる。まず、平坦な基板201上に、有機金属気相エピタキシー(Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE)や分子線エピタキシーなどのエピタキシャル成長法を用いて、第1導電型の障壁層202、発光層となる活性層204、第2導電型の障壁層203を順次成長させる。基板としては、AlGaInP系LEDの場合、GaAsなどを、InGaN系LEDの場合、サファイア、炭化珪素、シリコンなどを用いることができる。
【0032】
次に、前記の方法によって得られた表面が平坦なエピタキシャルウエハー上に、エッチング又は選択再成長などの方法を用いて、一つの平坦面と二つの傾斜面を有するリッジ構造をアレイ状に形成することができる。
隣り合うリッジ構造間に平坦な部分が残ると、その直下で発生した光をエバネッセント光の干渉現象を利用して外部に取り出すことができない。したがって、エバネッセント光の干渉現象を最大限発現させるためには、リッジ構造の二つの傾斜面はV字型の溝をなすことが望ましい。そして、本発明において、リッジ構造形成時の活性層へのダメージを避けるために、リッジ構造の最も低い地点、すなわち図3のV字型溝の底が活性層に達しないことが好ましい。
また、前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていること(すなわち、t>0.1μm)が望ましい。0.1μm未満では、特に、リッジ構造の形成にドライエッチング法を用いた場合、活性層へのダメージを十分に避けることができないからである。
【0033】
ここで、図1に示す従来構造と図3に示す本発明の構造とのエバネッセント光の干渉現象を利用できる活性層面積の割合を比較する。
まず、図1の従来構造について、活性層の表面占有率S0(%)を、「リッジ構造の周期」に占める「活性層の横幅」の割合と定義する。簡単な幾何学的考察から、図1の試料のリッジ構造の周期Pは、リッジ平坦面幅W、V字型溝の深さd、平坦面と傾斜面との交差角度αを用いて、次のように表すことができる:P=2d×tan(α−90°)+W。したがって、活性層の表面占有率はS0(%)=W/(2d×tan(α−90°)+W)×100となる。
【0034】
次に、図1のような構造を持つ可視光発光ダイオードの活性層の表面占有率S0の値を見積もる。
発光波長590〜660nmのAlGaInP系赤・黄色LEDにおいて、リッジ構造の横幅Wを0.5μm程度に設定する。また、V字型溝の深さdは、発光ダイオード構造に必要な膜厚やエバネッセント光干渉現象の発現効率を考慮して、1μm以上に設定する。さらに、傾斜面と平坦面との交差角度αは、エッチングや選択成長によって容易に得られる{001}平坦面と{111}傾斜面を有するリッジ構造の値α=126°を用いる。これらの値より、活性層の表面占有率S0は約26%程度となる。
発光波長400〜450nmのInGaN系青色LEDにおいては、{0001}平坦面と{101−1}傾斜面を有するリッジ構造が選択成長によって容易に得られ、傾斜面と平坦面との交差角度αは約118°である。また、平坦面幅W〜0.3μm、V字型溝の深さd〜0.6μmの場合、強いエバネッセント光の干渉現象が発現することは理論シミュレーションによって判明している。上記の値から、InGaNデバイスの活性層の表面占有率S0は約32%程度となった。
以上の結果から、図1の構造における活性層の表面占有率S0は、AlGaInP系及びInGaN系のいずれの場合も、30%程度であり、従来公知の平坦基板デバイス(S=100%)の1/3から1/4程度しかないことが分かる。
【0035】
次に、有限差分時間領域法という電磁波強度解析技術を用いて、図3の構造におけるエバネッセント光の干渉現象が発現可能な領域を調べた。方法として、点光源を活性層に配置し、それをリッジ構造の中心から離していく時の電磁波の放射パターンの変化をシミュレーションした。
シミュレーションでは、{001}面GaAs基板上に形成したAlGaInP系デバイスをモデルとして想定し、リッジ構造は{001}平坦面と{111}傾斜面を有するものとした。また、物性パラメータを、リッジ平坦面幅W=0.5μm、リッジ平坦面と傾斜面との交差角度α=126°、V字型溝の深さd=0.8μm、リッジ平坦面表面から活性層までの膜厚t+d=0.9μm、第2導電型層203の屈折率n=3.3、発光波長λ=650nmとした。
【0036】
図4(a)に示すように、点光源がリッジ構造の中心にあるときに、エバネッセント光の干渉による伝播光は、リッジ構造平坦面の垂直方向に放射される。また、図4(b)〜(d)に示すように、点光源の位置がリッジ構造の中心からずれてくると、伝播光はリッジ平坦面の垂直方向から離れる方向に放射されるが、リッジ構造中心との距離が0.5μmになるまでは、エバネッセント光の干渉が観測できた。しかし、図3(e)に示すように、リッジ構造中心との距離が0.6μm以上になると、エバネッセント光の干渉はなくなった。
また、この場合、エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層面占有率S1は、S1=「エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層領域の幅」/「リッジ構造の周期」=(2×0.5)/(2×0.8tan36°+0.5)×100>60%となり、図1の形状基板選択成長試料に比べて、2倍以上向上したことが分かる。
また、上記の定義から分かるように、「エバネッセント光の干渉現象が発現可能な活性層面占有率S1」はリッジ平坦面と傾斜面との交差角度αに依存する。他のパラメータを固定し、角度αだけを変化させてシミュレーションを行った結果、活性層面占有率S1は角度αの増加とともに減少し、角度αが150°以上になるとS1は約30%になり、図1の形状基板上への選択成長の場合とほぼ同程度になることが分かった。したがって、角度αは150°以下である必要がある。
さらに、ここで示していないが、{0001}面を平坦面、{101−1}面を傾斜面に持つInGaN系リッジ構造においても、同様な結果が得られている。
【0037】
図5は、第2の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。この実施形態では、基板201と第1導電型障壁層202との間に分布ブラッグ反射鏡220が挿入されている。分布ブラッグ反射鏡は、屈折率の異なる二種の材料が、λ/4n1、λ/4n2(n1、n2は材料の屈折率)の膜厚で積層した周期構造であり、波長λ付近の垂直入射光を100%に近い反射率で反射させることができる。
材料の組み合わせとしては、GaAs基板上のAlGaInP発光ダイオードの場合、AlGaAs/AlAs、AlInP/AlGaInPなどを用いることができる。また、InGaN発光ダイオードの場合、GaN/AlGaNを用いることが可能である。この構造において、活性層の下方へ放射された光の一部は、分布ブラッグ反射鏡によって上方へ反射された後、再びリッジ構造におけるエバネッセント光の干渉効果によって空気中に取り出される。これによって、さらに高い光取出し効率の実現が可能となる。
【0038】
図6は、第3の実施形態に係る発光ダイオードの断面模式図である。まず、第1の実施形態のように成長した表面が平坦なエピタキシャルウエハー表面上に、発光波長において高い反射率を示す金属ミラー222、例えば、Ag、Al、Auなどを真空蒸着やスパッタリングなどの成膜方法を用いて形成する。次に、上記試料をその表面側を下向きにして共晶ボンディング技術を用いて、他の支持基板221上に貼り付ける。支持基板としては、AlGaInPの場合、GaP、Si、Cuなどを用いることができる。また、InGaNの場合、Si、Cu、AlN、アルミナセラミックスなどを用いることが可能である。次に、成長を用いた基板を選択的に除去した後の試料表面上にリッジ構造をアレイ状に形成する。ここで、基板の除去方法として、GaAs基板上に成長したAlGaInPの場合、ウェットエッチング法(エッチング液:アンモニア水+過酸化水素水)を用いることができる。また、サファイア基板上に成長したInGaNの場合、レーザーリフトオフ法を用いることが可能である。このような構造の場合、金属ミラーは分布ブラッグ反射鏡のような反射率の入射角度依存性がなく、全ての入射角の光に対して高い反射率を示す。また、金属ミラーとリッジ構造間の多重反射効果も期待できる。これらの効果によって、この実施形態は第2の実施形態に比べてさらに高い光取出し効率が期待できる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【実施例1】
【0040】
図7を用いて、本発明の第1の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
まず、図7(a)に示すように、[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上にMOVPE法を用いて、Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、Siドープn型Al0.5In0.5P障壁層303(〜0.5μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜0.1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型Al0.6Ga0.4As窓層307(〜0.6μm、p=3x1018cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)を順次成長させた。結晶成長は630〜640℃の温度において行った。
ここで、MOVPEの原料として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、ジメチル亜鉛(DMZn)、ターシャリブチルアルシン(TBAs)、ターシャリブチルフォスフィン(TBP)を用いた。また、上記以外のMOVPE原料として、例えば、アルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)、トリメチルガリウム(TMGa)、ジエチル亜鉛(DEZn)、ビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)などを用いることもできる。
AlGaAsは、他の窓層材料、例えばGaP、AlInP、AlGaInPに比べて、ウェットエッチング法によるリッジ構造形成が簡単である特徴を有する。
【0041】
次に、上記の方法で成長させたウエハー表面上に、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーを用いて、フォトレジストまたは樹脂のライン(Line)/スペース(Space)パターン309を[1−10]方向に形成した。ここで、ライン幅Sは0.2〜0.4μm、パターン周期(S+L)は1.2〜1.4μm程度とした。
次に、上記のレジストまたは樹脂パターンをマスクとして用いて、GaAsキャップ層およびAlGaAs窓層をp型AlInP障壁層に達するまで、ウェットエッチングした。エッチング液として、H2SO4:H2O2:H2O系やH3PO4:H2O2:H2O系などを用いることができる。
これによって、5度傾斜した(001)面を平坦面、(111)A面を傾斜面とするリッジ構造が試料表面上に形成した。このように形成した(001)面の横幅は0.4〜0.6μmであった。この場合、二つの傾斜面は平坦面に対して多少左右非対称になっているが、エバネッセント光の干渉現象の発現に影響がないことはシミュレーションにより確認されている。
【0042】
次に、上記リッジ構造表面上に厚さ100nm〜200nmの酸化インジウ・酸化スズ(ITO)透明導電膜310を、マグネトロンスパッタリング法を用いて堆積した。ここで、ITO膜は電流注入時の電流拡散層として機能するとともに、エバネッセント光の二重干渉効果を発現させることにより光の取り出し効率をさらに増大させる働きもする。
その後、試料の裏面全面にn型電極311となるAuGe/Ni/Au、また図示していないが、表面側の所定位置にp型電極・ボンディングパッドとなるTi/Pt/Auをそれぞれ真空蒸着した。そして、最後に、試料を450度で10分間アニール処理を行い、ITO膜の透過率、電気特性を向上させるとともにオーミック接触を形成した。
以上のプロセスによって、デバイスの作製が完了する。
【実施例2】
【0043】
図8を用いて、本発明の第2の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
図8(a)に示すように、実施例1と同じMOVPE成長法を用いて、以下のエピタキシャル層を[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上に順次積層した:Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、Siドープ(Al0.5Ga0.5As/AlAs)x25周期の分布ブラッグ反射鏡320、Siドープn型Al0.5In0.5P障壁層303(〜0.5μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜0.1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型Al0.6Ga0.4As窓層307(〜0.6μm、p=3x1018cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)。
ここで、分布ブラッグ反射鏡の中心波長が650nmとなるように、Al0.5Ga0.5AsとAlAsの膜厚を調整した。
【0044】
次に、実施例1と同じプロセスを用いて、表面側(光取出し面側)にリッジ構造およびITO透明電極310、また裏面側にAuGe/Ni/Auからなるn型電極311を形成した。
前述するように、このデバイスにおいて下方へ放射される光の一部は分布ブラッグ反射320によって上方へ反射された後、再度リッジ構造におけるエバネッセント光の干渉効果によって外部に取り出されるので、分布ブラッグ反射鏡のない構造よりも高い光取出し効率が得られた。
【実施例3】
【0045】
図9を用いて、本発明の第3の実施例のAlGaInP系発光ダイオードについて説明する。
まず、図9(a)に示すように、実施例1と同じMOVPE成長法を用いて、以下のエピタキシャル層を[110]方向に5度傾斜したn型のGaAs(001)微傾斜基板301上に順次積層させた:Siドープn型GaAsバッファー層302(〜0.1μm、n=4x1018cm−3)、SiドープAl0.5In0.5Pエッチングストッパー層330(〜0.1μm、n=1x1018cm−3)、Siドープn型GaAsオーミックコンタクト層331(〜20nm、n=1x1018cm−3)、Siドープn型Al0.6Ga0.4As窓層332(〜0.6μm、n=1x1018cm−3)、SiドープAl0.5In0.5P障壁層303(〜0.1μm、n=1x1018cm−3)、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.05μm)、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P/Ga0.5In0.5P(7nm)単一または多重量子井戸活性層305、ノンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P障壁層304(〜0.1μm)、Znドープp型Al0.5In0.5P障壁層306(〜1μm、p=4x1017cm−3)、Znドープp型GaAsキャップ層/オーミックコンタクト層308(〜20nm、p=1x1019cm−3)。
次に、上記試料表面上に金属ミラーとなるAg(200nm)/Au(500nm)多層膜を真空蒸着法により形成した。なお、Agはp型オーミック電極としても機能する。また、金属ミラーの材料として、反射率が高い金属や合金であればよく、AnZnやAuBeなどを用いることができる。
【0046】
次に、図9(b)に示すように、上記ウエハーの表面側をした向きにして、AuSn341合金が予め蒸着されているGaAs支持基板340上に共晶ボンディング技術によって、上記ウエハーを接着した。
次に、エピタキシャル成長に用いた基板301を機械的研磨により100μm程度薄くした後、アンモニア水:過酸化水素水=1:20の液によるウェットエッチングによって除去した。次に、塩酸液を用いてAlInPエッチングストッパー層330を選択的に除去し、n型のGaAsオーミックコンタクト層331を露出させた。
次に、実施例1と同様な方法を用いて、n型のGaAsオーミックコンタクト層331及びn型AlGaAs窓層332をエッチングし、表面上(光取出し側)にリッジ構造を形成した。
最後に、光取出し側に透明電極310、支持基板の裏面にp型電極となるTi/Pt/Au金属膜342の蒸着、アロイ処理を行い、デバイスの作製が完了する。
【実施例4】
【0047】
図10を用いて、本発明の第4の実施例のInGaN系発光ダイオードについて説明する。
まず、MOVPE法を用いて(0001)面のサファイア基板400上に、GaN低温バッファー層(〜40nm)401を550〜600℃の温度で成長させた。その後、成長温度を1040℃に上げて、Siドープのn型GaN障壁層(n=2x1018cm−3)402を約4μm成長させた。次に、温度を約760℃に下げて、GaN(10nm)/In0.15Ga0.85N(3nm)の単一または多重量子井戸活性層403を成長させた後、温度を1040℃に上げて、MgドープAl0.1Ga0.9N電子ブロック層(〜20nm)404、MgドープGaN障壁層(〜100nm)を成長させた。ここで、MOVPEの原料として、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルインジウム(TMIn)、ビスシクロペンタディエニルマグネシウム(Cp2Mg)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いた。
【0048】
次に、上記試料表面上にプラズマCVD法を用いて厚さ100nm程度のSiO2膜を堆積させた。その後、フォトリソグラフィーまたはナノインプリントリソグラフィーを用いて、[112−0]方向に幅0.2μm程度、周期0.8μm程度のSiO2のストライプ状パターン406を形成した。次に、試料をMOVPE装置に戻して、上記SiO2パターンをマスクとして用いてMgドープのp型GaN層407を選択成長させた。これによって、(0001)を平坦面、(101−1)面を傾斜面とするリッジ構造を形成した。ここで、リッジの高さが0.5μm程度のなるように成長時間を調整する。また、活性層へのダメージを避けるため、再成長は800〜900℃の比較的低い温度で行うのが望ましい。
次に、上記試料表面上に厚さ100〜200nmのITO透明導電膜409をマグネトロンスパッタリング法によって堆積させた。その後、上記試料の所定の場所をn型GaN障壁層402に達するまでドライエッチングし、n型電極(Ti/Al/Ni/Au)408を形成した。最後に、ITO透明導電膜の所定の場所にp型電極410(Ti/Au)を形成し、デバイスの作製が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の発光ダイオードは、平坦な光取出し側の表面上に形成された微細なリッジ構造において発現するエバネッセント光の干渉効果を利用して、デバイスの光取り出し効率を向上させるためのものであり、従来の平坦表面デバイスを遥かに超える光取出し効率を容易に実現することができる。また、本発明の発光ダイオードは、形状基板上への選択成長により作製したリッジ構造を備えるデバイスに比べて、エバネッセント光の干渉効果が発言可能な活性層面積が倍以上高くなっており、ウエハーの利用効率を大幅に向上させることができる。さらに、本発明の発光ダイオードは、機械的方法による特殊形状加工のような複雑な製造プロセスを必要とせず、低コスト化に大きく貢献できるので、発光ダイオード作製に極めて有用である。
【符号の説明】
【0050】
101:基板
102:活性層
103:障壁層
104:エバネッセント光
105:空気伝播光
106:傾斜面の法線
107:全反射臨界角
108:リッジ構造の中心線
109:屈折率の小さい薄膜
201:基板
202:障壁層(n型)
203:障壁層(p型)
204:活性層
205:エバネッセント光
206:空気伝播光
207:リッジ構造の中心線
208:全反射臨界角
209:傾斜面の法線
210:点光源
211:空気伝播光の放射方向
220:分布ブラッグ反射鏡
221:支持基板
222:金属ミラー
301:GaAs基板
302:GaAsバッファー層
303:AlInP障壁層(n型)
304:AlGaInP障壁層
305:量子井戸活性層
306:AlInP障壁層(p型)
307:AlGaAs窓層(p型)
308:GaAsキャップ層
309:レジストまたは樹脂パターン
310:透明電極
311:n型電極
320:分布ブラッグ反射鏡
330:AlInPエッチングストッパー層
331:GaAsオーミックコンタクト層(n型)
332:AlGaAs窓層(n型)
333:金属ミラー
340:支持基板(GaAs)
341: AuSn
342:p電極
400:サファイア基板
401:低温バッファー層
402:n型GaN障壁層
403:量子井戸活性層
404:AlGaN電子ブロック層
405:p型GaN障壁層
406:SiO2ストライプパターン
407:再成長GaN層
408:n型電極
409:透明電極
410:p型電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次積層させた第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、(1)前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下であること、(2)前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下であること、(3)前記活性層が平坦で、連続的であること、(4)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層に達しないこと、を特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記リッジ構造の傾斜面と平坦面との交差角度が90度以上150度以下であることを特徴とする請求項1〜2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記リッジ構造がアレイ状に複数配列していることを特徴とする請求項1〜3記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記リッジ構造において二つの傾斜面によってV字溝を形成することを特徴とする請求項1〜4記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記半導体が閃亜鉛鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{001}面と{111}面であることを特徴とする請求項1〜5記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記半導体がウルツ鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{0001}面と{101―1}面であることを特徴とする請求項1〜5記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記リッジ構造が、前記光取出し側の表面層をエッチングすることによって形成されることを特徴とする請求項1〜7記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記リッジ構造が、ストライプ状の絶縁膜パターンをマスクに用いて、選択再成長法によって形成されることを特徴とする請求項1〜7記載の発光ダイオード。
【請求項10】
光取出し面の反対側の前記障壁層の下に分布ブラッグ反射鏡を備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
【請求項11】
光取出し面の反対側の前記障壁層の下に金属ミラーを備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
【請求項12】
前記リッジ構造の表面上に、光取出し側の最表面の半導体層より屈折率の小さい膜が前記リッジ構造の平坦面及び前記リッジ構造の傾斜面の少なくも一部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜11記載の発光ダイオード。
【請求項1】
順次積層させた第1導電型の障壁層と、発光層となる活性層と、第2導電型の障壁層とを少なくとも備える半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体発光ダイオードの光取出し側の表面は、一つの平坦面と少なくとも二つの傾斜面によって構成されるリッジ構造を備え、(1)前記リッジ構造の平坦面の横幅Wが2λ(λ:発光波長)以下であること、(2)前記活性層の中心C(リッジ構造の中心線と活性層との交点)からの光が前記傾斜面において全反射が起こる最短の地点(傾斜面の法線方向からθC=sin−1(1/n)[n:半導体層の屈折率]の角度をなす活性層の中心Cから傾斜面に向かう線(平坦面に近い側)と傾斜面との交点)から平坦面までの距離Lがλ(λ:発光波長)以下であること、(3)前記活性層が平坦で、連続的であること、(4)前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層に達しないこと、を特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
前記リッジ構造のもっとも低い地点が前記活性層より0.1μm以上離れていることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記リッジ構造の傾斜面と平坦面との交差角度が90度以上150度以下であることを特徴とする請求項1〜2記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記リッジ構造がアレイ状に複数配列していることを特徴とする請求項1〜3記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記リッジ構造において二つの傾斜面によってV字溝を形成することを特徴とする請求項1〜4記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記半導体が閃亜鉛鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{001}面と{111}面であることを特徴とする請求項1〜5記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記半導体がウルツ鉱構造半導体であり、前記リッジ構造の平坦面と傾斜面はそれぞれ{0001}面と{101―1}面であることを特徴とする請求項1〜5記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記リッジ構造が、前記光取出し側の表面層をエッチングすることによって形成されることを特徴とする請求項1〜7記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記リッジ構造が、ストライプ状の絶縁膜パターンをマスクに用いて、選択再成長法によって形成されることを特徴とする請求項1〜7記載の発光ダイオード。
【請求項10】
光取出し面の反対側の前記障壁層の下に分布ブラッグ反射鏡を備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
【請求項11】
光取出し面の反対側の前記障壁層の下に金属ミラーを備えることを特徴とする請求項1〜9記載の発光ダイオード。
【請求項12】
前記リッジ構造の表面上に、光取出し側の最表面の半導体層より屈折率の小さい膜が前記リッジ構造の平坦面及び前記リッジ構造の傾斜面の少なくも一部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜11記載の発光ダイオード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【公開番号】特開2012−38977(P2012−38977A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178945(P2010−178945)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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