説明

半導体素子の冷却構造

【課題】半導体素子を取付面にネジを用いずに取付ける場合、取付面に密着しないため十分な冷却性が得られないという課題があった。
【解決手段】取付面3に絶縁材2を配し、絶縁材2上に半導体素子1aを取付けてなる半導体素子の冷却構造において、半導体素子1aを取付面3に対して接触させるための狭圧手段4が、金属板の周りを絶縁体である樹脂7で被われた構成からなり、金属板を回路を構成する導体8の一部として用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一実施例に係る半導体冷却構造につき、図7から図9を用いて説明する。図7は、従来技術の半導体冷却構造の平面図である。図8は、従来技術の半導体冷却構造の正面図である。図9は、従来技術の半導体冷却構造の断面図である。
【0003】
従来の半導体冷却構造101は、冷却媒体を内部に流通させる一対の冷却管103の間に、半導体素子121を内蔵した半導体モジュール102を複数個、互いの間に間隙部111を設けながら並列配置してなる。
【0004】
そして、図7に示すごとく、上記一対の冷却管121を半導体モジュール102に押圧するための挟圧手段104が、各半導体モジュール102ごとに個別に配設してある。なお、図8、図9においては、挟圧手段104の記載を省略してある。
【0005】
一対の冷却管103のうちの少なくとも一方は、隣り合う半導体モジュール102の間の間隙部111に対向する部分に、挟圧手段104の加圧力によって変形可能な可変形部131を設けてなる。可変形部131は、塑性変形可能に構成されている。すなわち、冷却管103のうち少なくとも可変形部131は、塑性材料によって構成されている。
【0006】
図7に示すごとく、挟圧手段104は、冷却管103における半導体モジュール102と反対側の面に配された一対の押圧板141と、一対の押圧板141をその端部において貫通する複数のスルーボルト142と、該スルーボルト142に螺合するナット143とからなる。そして、挟圧手段104は、スルーボルト142とナット143とによって、一対の押圧板141を互いに近づける方向に締め付けることによって、一対の冷却管103を半導体モジュール102に押圧させる。
【0007】
このようにして、複数の半導体モジュール102に対してそれぞれ設けられた複数の挟圧手段104によって、それぞれの半導体モジュール102に冷却管103を押圧して密着させる。このとき、各半導体モジュール102への冷却管103の加圧力は、複数の半導体モジュール102において均等になるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−182312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら,前記従来の構成では半導体素子を冷却管に密着させるために複雑な形状の狭圧手段を用いる必要があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、単純な構造により半導体素子の取付面に対しての接触圧を確保することを目的とする。かつ、プリント基板の配線を低減可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の半導体素子の冷却構造は、金属の導体を樹脂モールドした狭圧手段によって、半導体素子の取付け面への固定を行うものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体素子の冷却構造は、樹脂モールドした導体により、半導体素子を取付面に対して狭圧することと、その導体を回路の一部として使うことにより、回路基板の小型化を成すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体素子の冷却構造の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における半導体素子の冷却構造の平面図
【図3】本発明の実施の形態2における半導体素子の冷却構造の平面図
【図4】本発明の実施の形態2における半導体素子の冷却構造の側面図
【図5】本発明の実施の形態3における半導体素子の冷却構造の側面図
【図6】本発明の実施の形態4における半導体素子の冷却構造の平面図
【図7】従来の半導体冷却構造における平面図
【図8】従来の半導体冷却構造における正面図
【図9】従来の半導体冷却構造における断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、取付面に絶縁材を配し、前記絶縁材上に半導体素子を取付けてなる半導体素子の冷却構造において、前記半導体素子を前記取付面に対して接触させるための狭圧手段が、金属板の周りを絶縁体である樹脂で被われた構成からなり、前記金属板は回路を構成する導体の一部として用いられるものである。これにより、半導体素子を取付面に対してより密着させることができ、また、制御基板の面積を減少させることができる。
【0015】
第2の発明は、前記半導体素子を複数個配置し、前記複数の半導体素子間の間隙部にリブを設けた前記狭圧手段を持つものである。これにより、横方向の位置ずれが規制され、半導体素子の取付けが行いやすくなる。
【0016】
第3の発明は、前記複数個の半導体素子のネジ用穴部に挿入されるようにリブを設けた前記狭圧手段を持つものである。これにより、縦方向の位置ずれが規制され、半導体素子の取り付けが行いやすくなる。
【0017】
第4の発明は、前記複数個の半導体素子と対向して、さらに複数個の半導体素子を設け、一つの狭圧手段で狭圧するものである。これにより、半導体素子の位置決めが容易になる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1と図2を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、実施の形態1に係る半導体素子の冷却構造の断面図を示し、図2は実施の形態1に係る半導体素子の冷却構造の平面透視図を示すものである。
【0020】
図1と図2に示すように、本実施の形態に係る半導体素子の冷却構造は、半導体素子1aと、絶縁材2と、取付面3と、狭圧手段4とネジ5とによって構成されている。半導体素子1aは、制御基板9にはんだ付けされている。狭圧手段4は、導体8を樹脂7で覆った構造となっている。
【0021】
半導体素子1aは取付面3との絶縁性と熱伝導性を考慮し熱伝導の良好な絶縁材2を介して取付面3に接触しており,狭圧手段4は半導体素子1aを十分冷却できる一定の接触圧で狭圧手段4の両端部でネジ5によって取付面3に取り付けられている。
【0022】
この狭圧手段4の内部に金属の導体8を配置することにより、樹脂のみの場合よりも、強固な構造となるため、取付面3に対してより密着させることができるものである。
【0023】
また、導体8を回路の導電部として使用することによって制御基板9上のプリント配線を減らすことが出来るため、制御基板9の面積を減少させることが出来るものである。
【0024】
(実施の形態2)
図3と図4を用いて本発明の実施の形態を説明する。ただし、実施の形態1と同じ箇所は説明を省略する。図3は、実施の形態2に係る半導体素子の冷却構造の平面図であり、図4は本発明の実施の形態2における半導体素子の冷却構造の側面図である。
【0025】
図3と図4に示すように、図1の構成に加え、半導体素子1aと並列に半導体素子1bと1cを配し、それぞれの間にリブ10を設けることにより、横方向の位置ずれを規制することにより、実施の形態1の効果に加え、半導体素子1a〜1cの取付けが行いやすくしたものである。
【0026】
(実施の形態3)
図5を用いて本発明の実施の形態を説明する。ただし、実施の形態1又は2と同じ箇所は説明を省略する。図5は、本発明の実施の形態3における半導体素子の冷却構造の側面図である。
【0027】
図5に示すように、図4の構成に加え、ネジ穴12に挿入されるようにリブ11を設けることによって縦方向のずれを規制することにより、実施の形態1、2の効果に加え、半導体素子1a〜1cの取り付けが行いやすくなるものである。
【0028】
(実施の形態4)
図6を用いて本発明の実施の形態を説明する。ただし、実施の形態1ないし3と同じ箇所は説明を省略する。図6は、本発明の実施の形態4における半導体素子の冷却構造の平面図である。
【0029】
図6に示すように、半導体素子1d〜1fを半導体素子1a〜1cと対向して設け、これを一体型の狭圧手段4で狭圧することで、実施の形態1の効果に加え、半導体素子1a〜1fを狭圧すると同時に、半導体素子1a〜1fの位置決めが容易になるものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、電力変換装置に幅広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 半導体素子
2 絶縁材
3 取付面
4 狭圧手段
5 ネジ
7 樹脂
8 導体
9 制御基板
10、11 リブ
12 ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に絶縁材を配し、前記絶縁材上に半導体素子を取付けてなる半導体素子の冷却構造において、前記半導体素子を前記取付面に対して接触させるための狭圧手段が、金属板の周りを絶縁体である樹脂で被われた構成からなり、前記金属板は、回路を構成する導体の一部として用いられることを特徴とする半導体素子の冷却構造。
【請求項2】
前記半導体素子を複数個配置し、前記複数の半導体素子間の間隙部にリブを設けた前記狭圧手段を持つことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の冷却構造。
【請求項3】
前記複数個の半導体素子のネジ用穴部に挿入されるようにリブを設けた前記狭圧手段を持つことを特徴とする請求項2に記載の半導体素子の冷却構造。
【請求項4】
前記複数の半導体素子と対向して、さらに複数の半導体素子を設け、一つの狭圧手段で狭圧することを特徴とする請求項2または3に記載の半導体素子の冷却構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−16722(P2013−16722A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149822(P2011−149822)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】