説明

半導体素子内蔵基板

【課題】製造工程中において、はんだの流れ出しによる電気的短絡が生じることを防止し、製造歩留まりを向上させることができる半導体素子内蔵基板を提供する。
【解決手段】第1の基板上20に半導体素子10が搭載され、第1の基板20の半導体素子10が搭載された面に、はんだ端子40を介して第2の基板30が接合され、第1の基板20と第2の基板30とに間に、半導体素子10及びはんだ端子40を封止して充填された樹脂50を介して、第1の基板20と第2の基板30とが一体化され、第1の基板20と第2の基板30のいずれか一方あるいは双方の、はんだ端子40が接合されるパッド22、32の周囲に、はんだ端子40からのはんだ40bの流れ出しを防止するダム23a、33aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板内に半導体素子を内蔵した半導体素子内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、基板内に半導体素子10を内蔵した半導体素子内蔵基板70の構成を示す。この半導体素子内蔵基板70は、図10に示すように、第1の基板20に、フリップチップ接続により半導体素子10を搭載し、半導体素子10を搭載した第1の基板20の半導体素子搭載面にはんだ端子40を介して第2の基板30を接合し(図11)、第1の基板20と第2の基板30との間に樹脂50を充填して、第1の基板20と第2の基板30とを一体化した積層基板60を形成し(図12)、積層基板60の接続パッド24に接続端子52を接合して形成される。
【0003】
第1の基板20の素子搭載面には半導体素子10と接続される電極11とはんだ端子40が接合されるパッド22を除いてソルダーレジストからなる保護膜23が被覆されている(図10)。はんだ端子40は、銅ボール40aの外面をはんだ40bによって被覆したものであり、第1の基板20と第2の基板30とを所定間隔をあけて、第1の基板20のパッド22と第2の基板30のパッド32とに接合される(図11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−135781号公報
【特許文献2】特開2004−319676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13に示す半導体素子内蔵基板70を製造する際には、第1の基板20と第2の基板30との間に樹脂50を充填して積層基板60を形成した後、リフロー加熱によって積層基板60に接続端子(はんだボール)62を接合する。この加熱工程では、はんだが溶融する温度にまで加熱するから、この際に樹脂50によって封止されているはんだ端子40からはんだ40bが溶け出し、隣接するパッド22、32上にはんだ40bが流れ出してパッド間において電気的短絡が生じるという問題がある。図13に、はんだの流れ出し(S部分)を示す。
【0006】
はんだ40bの流れ出しによって電気的短絡が生じる理由は、封止用の樹脂50と、第1の基板20と第2の基板30の表面をそれぞれ保護する保護膜23、33との密着性が、必ずしも良好でないことにある。すなわち、保護膜23、33にはソルダーレジストが用いられるが、このソルダーレジストと樹脂50との密着性が不十分であるため、樹脂50によって半導体素子10とはんだ端子40とを封止した際に、樹脂50とソルダーレジストとの間に空隙が生じる場合があり、この空隙内にはんだ40bが流れ出してパッド間が電気的に短絡する。
【0007】
樹脂50と保護膜23、33との密着性を向上させる方法として、保護膜23、33にあらかじめプラズマ処理を施して保護膜23、33の表面を粗面化し、樹脂50と保護膜23、33との密着性を向上させる方法も行われている。しかしながら、このような方法を適用した場合でも、樹脂50と保護膜23、33との界面に空隙が生じ、溶融したはんだが空隙内に流れ出して、電気的短絡が生じるといった問題が生じている。
樹脂50と保護膜23、33との密着性は、特性的にばらつきがあり、実際の製造工程において密着性を的確に制御することは困難であり、はんだリフローによって接続端子62を接合する工程において生じる電気的短絡は製品不良に直結するという問題がある。
【0008】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、半導体素子内蔵基板を製造する際にはんだの流れ出しによる電気的短絡が生じることを防止し、製造歩留まりを向上させることができる半導体素子内蔵基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成を備える。
本発明に係る半導体素子内蔵基板は、第1の基板上に半導体素子が搭載され、前記第1の基板の前記半導体素子が搭載された面に、はんだ端子を介して第2の基板が接合され、前記第1の基板と前記第2の基板とに間に、前記半導体素子及び前記はんだ端子を封止して充填された樹脂を介して、前記第1の基板と前記第2の基板とが一体化され、前記第1の基板と前記第2の基板のいずれか一方あるいは双方の、前記はんだ端子が接合されるパッドの周囲に、前記はんだ端子からのはんだの流れ出しを防止するダムが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記第1の基板の前記半導体素子が搭載された面と、前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面とに保護膜が被着形成され、前記ダムは、前記保護膜上に突起状に形成されていることにより、はんだ端子からのはんだの流れ出しを遮って、パッド間が電気的に短絡することを確実に防止することができる。
また、前記ダムは、前記パッドの周囲を連続して一周する形状に設けられていることにより、はんだの流れ出しを確実に防止することができる。
また、前記ダムが、前記第1の基板と前記第2の基板の双方に設けられ、前記第1の基板と前記第2の基板の対向するパッドにおけるダムが、平面配置において重複しない部位が生じる配置に設けられていることにより、第1の基板と第2の基板との間に確実に樹脂を充填することができる。
【0011】
また、前記ダムは、前記パッドの周囲を包囲する周方向の少なくとも1個所が分断された形状に設けられていることにより、第1の基板と第2の基板との間に充填する樹脂の充填性を良好にすることができる。
また、前記ダムは、前記パッドの周方向の2個所が分断され、パッドを挟む対称位置に一対配置された形状に設けられ、各々のパッドに設けられたダムの開き方向が、同一方向に揃って配置されていることにより、ダムの開き方向を第1の基板と第2の基板との間に樹脂を充填する際の樹脂の注入方向に合わせることによって、さらに樹脂の充填性を良好にすることができる。
【0012】
また、前記ダムは、前記パッドの周方向の2個所が分断され、パッドを挟む対称位置に一対配置された形状に設けられ、各々のパッドに設けられたダムの開き方向が、パッドごとに交互に90度ずつ変わる配置に設けられていることにより、第1の基板と第2の基板との間に充填する樹脂の充填性を良好とし、かつ、隣り合ったパッド間における電気的短絡を効果的に防止することができる。
また、前記ダムが、前記第1の基板と前記第2の基板の双方に設けられ、前記第1の基板と前記第2の基板の対向するパッドにおけるダムが、相互に分断位置が平面配置において重複しない配置に設けられていることにより、第1の基板と第2の基板との間に充填する樹脂の充填性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体素子内蔵基板によれば、第1の基板と第2の基板のいずれか一方あるいは双方に、パッドからのはんだの流れ出しを防止するダムを設けたことにより、はんだ端子から流れ出すはんだがダムによって遮られ、パッド間において電気的短絡が生じることを防止することができる。また、第1の基板と第2の基板との間に樹脂を充填する際にダムが樹脂に対してアンカー的に作用し、樹脂と第1の基板と第2の基板との密着性を良好にし、樹脂と基板との界面にはんだが流れ出す空隙が発生することを抑制し、はんだの流れ出しによる電気的短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】半導体素子内蔵基板の第1の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態におけるダムの構成を示す斜視図である。
【図3】ダムの作用を示す斜視図である。
【図4】第1の基板の製造工程を示す基板の断面図である。
【図5】第2の基板の製造工程を示す基板の断面図である。
【図6】半導体素子内蔵基板の製造工程を示す基板の断面図である。
【図7】ダムの他の形成例を示す平面図である。
【図8】ダムの他の形成例を示す断面図(a)及び平面図である。
【図9】ダムの他の形成例を示す断面図(a)及び平面図である。
【図10】半導体素子内蔵基板の従来の製造工程を示す断面図である。
【図11】半導体素子内蔵基板の従来の製造工程を示す断面図である。
【図12】半導体素子内蔵基板の従来の製造工程を示す断面図である。
【図13】半導体素子内蔵基板の従来の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(半導体素子内蔵基板)
図1は、本発明に係る半導体素子内蔵基板の一実施形態の構成を示す断面図である。
本実施形態の半導体素子内蔵基板100の基本的な構成は、図13に示した従来の半導体素子内蔵基板70の構成と共通する。すなわち、第1の基板20上に半導体素子10が搭載され、第1の基板20に、はんだ端子40を介して第2の基板30が接合され、第1の基板20と第2の基板30との間に樹脂50が充填されて、半導体素子10及びはんだ端子40が封止され、第1の基板20の外面の接続パッド24に接続端子62が接合されている。
半導体素子10は、電極11を第1の基板20の電極(素子接続パッド)21に接合してフリップチップ接続され、半導体素子10と第1の基板20とが対向する領域にアンダーフィル樹脂12が充填されて第1の基板20に搭載されている。
【0016】
第1の基板20の半導体素子搭載面には、半導体素子10が接続される電極21及びはんだ端子40が接合されるパッド22を含む配線パターンが形成され、第1の基板20の半導体素子搭載面は、電極21、パッド22を除いてソルダーレジストからなる保護膜23によって被覆されている。第1の基板20の半導体素子搭載面の反対面(実装面)には接続端子62が接合される接続パッド24を含む配線パターンが形成され、第1の基板20の実装面は、接続パッド24を除いてソルダーレジストからなる保護膜25によって被覆されている。
第1の基板20の半導体素子搭載面に形成された配線パターンと、実装面に形成された配線パターンとは、第1の基板20を厚さ方向に貫通するスルーホール26を介して電気的に接続される。
【0017】
第2の基板30の第1の基板20に対向する面には、はんだ端子40が接合されるパッド32を含む配線パターンが形成され、第2の基板30の樹脂50が密着する面はパッド32を除いて、ソルダーレジストからなる保護膜33によって被覆されている。また、第2の基板30の外面(BGA型の半導体素子などが搭載される実装面)には、接続パッド34を含む配線パターンが形成され、第2の基板30の実装面は接続パッド34を除いてソルダーレジストからなる保護膜35によって被覆されている。
第2の基板30のパッド32を含む配線パターンと、接続パッド34を含む配線パターンとは、第2の基板30を厚さ方向に貫通するスルーホール36を介して電気的に接続される。
【0018】
本実施形態の半導体素子内蔵基板100において特徴的な構成は、第1の基板20に設けられたパッド22と第2の基板30に設けられたパッド32の周囲に、パッド22、32からのはんだの流れ出しを阻止するダム23a、33aを設けたことにある。ダム23aは、パッド22の周囲を円形のリング状に囲む配置として保護膜23上に設けられ、ダム33aは、パッド32の周囲を円形状に囲む配置として保護膜33上に設けられている。
【0019】
図2に、第1の基板20の表面に形成されたダム23aの斜視図を示す。ダム23aは第1の基板20の表面に保護膜23から露出するパッド22の周縁部の径よりも大径に、パッド22を円環状に囲む配置として、保護膜23の表面から一段高く形成される。ダム23aは、保護膜23と同様にソルダーレジストによって形成されている。
【0020】
図3に、第1の基板20に設けたダム23aの作用を示す。図3(a)は、パッド22にはんだ端子40を接合した状態を示す。はんだ端子40は、実際には、第2の基板30のパッド32にも接合される。図3は、第2の基板30との接合状態を省略して示している。
図3(b)は、接続端子62を接合するリフロー加熱を行った際に、はんだ端子40のはんだ40bがパッド22との接合領域から外側に流れ出した状態を示す。前述したように、このはんだ40bの流れ出しは、樹脂50と保護膜23との密着が不十分で、樹脂50と保護膜23との界面に生じた空隙内にはんだ40bが流れ出すことによって生じる。
【0021】
本実施形態においては、パッド22を囲むようにパッド22の周囲にダム23aを設けたことにより、パッド22から流れ出したはんだ40bがダム23aによって遮られ、隣りのパッド22にまではんだ40bが流れ出すことを防止し、はんだ40bの流れ出しによって電気的短絡が生じることを防止する。
図1に示すように、半導体素子内蔵基板100においては、第1の基板20に設ける各々のパッド22の周囲にダム23aを設ける。樹脂50と保護膜23との界面に生じる空隙の発生個所は不定であるが、パッド22ごとにダム23aを設けたことにより、接続パッド24にはんだボールなどの接続端子62を接合するリフロー加熱工程等において、はんだ端子40からはんだ40bが流れ出すことによってパッド22間が電気的に短絡することを確実に防止することができる。
【0022】
また、パッド22の周囲にダム23aを設けたことによって、ダム23aを設けない場合と比較して保護膜23と樹脂50との接触面積が大きくなり、ダム23aが樹脂50に対してアンカー的に作用して、保護膜23と樹脂50との密着性(くいつき)が向上し、保護膜23と樹脂50との界面に空隙が生じ難くなり、これによって接続パッド24に接続端子62を接合するリフロー加熱工程等においてはんだ40bが加熱され溶融されて流れ出すことを防止するという作用もある。
【0023】
図2は第1の基板20に設けるダム23aの構成を示したが、第2の基板30に設けるダム33aについても、まったく同様に形成される。
樹脂50によって半導体素子10とはんだ端子40とを封止する際には、第2の基板30の保護膜33と樹脂50の界面にも空隙が生じ得るから、第2の基板30のパッド32とはんだ端子40との接合部分からも、後工程の接続端子62を接合するためのリフロー加熱工程等においてはんだ40bが流れ出す可能性がある。この場合も、パッド32の周囲に円環状にダム33aを設けることによって、パッド32から流れ出したはんだ40bがダム33aによって遮られ、はんだ40bによってパッド32間が電気的に短絡することを防止することができる。
【0024】
なお、接続パッド24に接続端子62を接合するリフロー工程においては、第1の基板20を下側にしてリフローするから、はんだ端子40の溶融したはんだ40bが、隣り合ったパッド22、32に流れ出す作用は、第2の基板30よりも下側の第1の基板20において生じやすい。したがって、第2の基板30におけるはんだ40bの流れ出しがさほど問題にならない場合には、第1の基板20についてのみパッド22の周囲にダム23aを設け、第2の基板30にはダム33aを設けない設計とすることができる。リフロー加熱の際の第1の基板20と第2の基板30の上下関係が逆転する場合には、これとは逆になる。
【0025】
図1に示す半導体素子内蔵基板100は、第2の基板30上に設けた接続パッド34を介して、半導体素子を搭載した別の半導体パッケージ、たとえばBGA型の半導体装置を実装するといったように用いられる。また、第2の基板30上に半導体素子や回路部品を実装するといった使用方法もある。この場合は、第2の基板30の素子搭載面には、接続パッド34にかえて、半導体素子や回路部品と電気的に接続されるパッドあるいは電極を設けるようにされる。
【0026】
(半導体素子内蔵基板の製造方法)
上述した半導体素子内蔵基板100において特徴とする構成は、第1の基板20と第2の基板30のパッド22、32の周囲に、それぞれダム23a、33aを設けた点にある。
図4は、第1の基板20にダム23aを形成する工程を示す。図4(a)は、基板20aの半導体素子搭載面を、電極11とパッド22を露出させてソルダーレジストからなる保護膜23によって被覆し、基板20aの実装面を接続パッド24を露出させてソルダーレジストからなる保護膜25によって被覆した状態を示す。
【0027】
基板20aの素子搭載面には電極11とパッド22を含む配線パターンが形成され、実装面には接続パッド24を含む配線パターンが形成されている。基板20aの両面に配線パターンを形成する方法としては、基板20aの両面に被着形成された導体層をパターニングする方法、基板20aの両面にめっきシード層を形成し、めっきシード層をめっき給電層とする電解めっきを施して形成する方法等が利用できる。基板20aを厚さ方向に貫通するスルーホール26はスルーホールめっきによって形成することができる。
【0028】
保護膜23を電極11とパッド22が露出するようにパターニングするには、感光性のソルダーレジストによって基板20aの表面を被覆し、電極11とパッド22の平面配置パターンにしたがってソルダーレジストを露光及び現像すればよい。接続パッド24が露出するように保護膜25を形成する場合も、感光性のソルダーレジストを用いて、接続パッド24の平面配置に合わせて露光及び現像する。
【0029】
図4(b)、(c)は、ダム23aを形成する工程を示す。図4(b)は、保護膜23、25を形成した後、保護膜23が形成されている基板20aの素子搭載面を感光性のソルダーレジスト230によって被覆した状態を示す。この感光性のソルダーレジスト230をダム23aの平面パターン(円環状のパターン)に合わせて露光及び現像することによってダム23aを形成することができる(図4(c))。
本実施形態においては、ソルダーレジスト230を露光及び現像する工程において、半導体素子10をフリップチップ接続する際にアンダーフィル樹脂が流れ出すことを防止するダム23bについても形成している。アンダーフィル樹脂の流れ止め用のダム23aは、電極21が配置されている領域(半導体素子の搭載領域)の外側域を囲む矩形の枠状に形成する。
【0030】
はんだ40bの流れ止め用のダム23a、及びアンダーフィル樹脂の流れ止め用のダム23bは感光性のソルダーレジスト230を露光及び現像して形成するから、ダム23a、23bの配置、大きさ、形状は、露光パターンを変更するのみで任意に設定することができる。ダム23a、23bの高さはソルダーレジスト230の厚さによって規定される。したがって、形成しようとするダム23a、23bの高さに合わせて、適宜厚さのソルダーレジスト230を選択して使用する。ソルダーレジスト230はレジスト材をコーティングする方法、あるいはレジストフィルムをラミネートする方法によって形成する。
ソルダーレジスト230には保護膜23を形成する際に使用するソルダーレジストと同一の材料を使用するが、異種材料を使用することもできる。
本実施形態の製造方法によれば、同一の露光及び現像工程において、はんだ40bの流れ止め用のダム23aと、アンダーフィル樹脂の流れ止め用のダム23bを形成できるという利点がある。
【0031】
第2の基板30にダム33aを形成する方法も第1の基板20にダム23aを形成する方法と同様である。
図5(a)は、第1の基板20に対向する一方の面にパッド32を含む配線パターンが形成され、他方の面に接続パッド34を含む配線パターンが形成された基板30aの両面にそれぞれ保護膜33、35を形成し、基板30aの一方の面にダム33aとなる感光性のソルダーレジスト330を被着形成した状態を示す。
このソルダーレジスト330を露光及び現像し、基板30aの一方の面に形成されたパッド32の周囲を囲む配置にダム33aを形成することによって第2の基板30を形成する(図5(b))。
【0032】
第1の基板20と第2の基板30とを接合するはんだ端子40は、第2の基板30のパッド32にあらかじめ接合して用いる(図5(c))。はんだ端子40として、本実施形態においては銅ボール40aをコアとし、はんだ40bによって銅ボール40aの外面を被覆したはんだ端子40を使用している。銅ボール40aをコアとすることによって、第1の基板20と第2の基板30との離間間隔を確実に一定の間隔を保って確保することができる。もちろん、銅ボール等のコアを有しないはんだボールをはんだ端子として用いることもできる。
【0033】
図6(a)は、第1の基板20に半導体素子10を搭載した状態を示す。半導体素子10は、電極11と電極21とを位置合わせして接合した後、半導体素子10と第1の基板20との間にアンダーフィル樹脂12を充填し、アンダーフィル樹脂12を熱硬化させて搭載する。ダム23bを設けたことにより、アンダーフィル樹脂12がパッド22上にまで流れ出すことを防止する。なお、第1の基板20の素子搭載領域にアンダーフィル樹脂12を供給した後に、半導体素子10をフリップチップ接続することもできる。
【0034】
第1の基板20に半導体素子10を搭載する前後の工程として、第1の基板20の素子搭載面側に対してプラズマ処理を施し、保護膜23、ダム23aの表面を粗面化する。第1の基板20に半導体素子10を搭載する前におけるプラズマ処理によってアンダーフィル樹脂12と保護膜(ソルダーレジスト)23との密着性を向上させることができ、第1の基板20に半導体素子10を搭載した後のプラズマ処理により、樹脂50と保護膜23との密着性を向上させることができる。
プラズマ処理によって保護膜23とダム23aの表面を粗面化されることにより、樹脂50と保護膜23及びダム23aとの密着性(くいつき)が向上し、樹脂50と保護膜23及びダム23aとの界面に空隙が生じることを抑制する。
【0035】
図6(b)は、はんだ端子40を介して第1の基板20と第2の基板30とを接合した状態を示す。第1の基板20と第2の基板30のパッド22、32とを位置合わせし、第1の基板20と第2の基板30との離間間隔を維持してはんだ40bを溶融して接合することにより、第1の基板20と第2の基板30とを接合することができる。
【0036】
図6(c)は、第1の基板20と第2の基板30とによって挟まれた隙間内に樹脂50を充填して、第1の基板20と第2の基板30とが一体化された積層基板60を形成した状態である。第1の基板20と第2の基板30とを樹脂封止用の金型によりクランプし、第1の基板20と第2の基板30との間に溶融した樹脂50を注入し、熱硬化させることによって、半導体素子10とはんだ端子40とが樹脂50によって封止され、第1の基板20と第2の基板30とが一体化された積層基板60が得られる。
ダム23a、23b、33aを設けたことによって樹脂50と第1の基板20、第2の基板30との接触面積を拡大することができ、ダム23a、23b、33aによるアンカー作用によって第1の基板20と第2の基板30がより強固に一体化される。
【0037】
第1の基板20と第2の基板30とを一体的に連結して積層基板60を形成した後、接続パッド24にはんだボールを配置し、リフロー加熱によって、接続パッド24に接続端子62を接合して半導体素子内蔵基板100が得られる。図1が、図6(c)の接続パッド24に接続端子62を接合した状態である。
リフロー加熱の際に、樹脂50中に封止されたはんだ端子40のはんだ40bが溶融して、樹脂50と保護膜23、33との界面の空隙に溶融したはんだ40bが侵入しても、ダム23a、33aによってはんだ40bの流れ出しが遮られ、パッド間が電気的に短絡することが防止され、電気的短絡による不良発生を抑え、半導体素子内蔵基板100を確実に製造することができる。
【0038】
上述した実施形態においては、積層基板60に接続端子62を接合して半導体素子内蔵基板100としたが、接続端子62を接合する前の積層基板60を半導体素子内蔵基板ととらえることもできる。半導体素子内蔵基板には、第2の基板30上に半導体素子や回路部品を実装して半導体装置とする使い方もある。このような場合には、積層基板60の第2の基板30の素子搭載面に、半導体素子や回路部品に接続される電極あるいはパッドを形成しておき、積層基板60に半導体素子や回路部品を実装した後、リフロー加熱工程により、積層基板60の第1の基板20の接続パッド24に接続端子62を接合する。このリフロー加熱工程においても、上述したとまったく同様にダム23a、33aが電気的短絡を防止するように作用する。
【0039】
(ダムの形成例)
図7に、第1の基板20に形成するダム23aの他の形成例を示す。
図7(a)は、ダム23aの平面形状を楕円のリング状とした例である。第1の基板20に配置されているパッド22の配置間隔が、一方向については狭く、一方向と直交する方向には広く空いているような場合には、パッド22の配置間隔が広い方向を長軸とする楕円形にダム23aを形成することによって、はんだが流れ出す領域をできるだけ広く確保して、ダム23a外へのはんだの流れ出しによる電気的短絡を効果的に防止することができる。
ダム23aをパッド22の周囲を連続的に一周する形状とする場合は、円形状、楕円状に限らず、矩形等の多角形状あるいは任意の包囲形状とすることができる。ダム23a、33aの形状あるいは配置は、感光性のソルダーレジストを露光する露光パターンを適宜設計することによって、任意に設定することができる。
【0040】
図7(b)、(c)、(d)は、ダム23aをパッド22の周囲を連続的に一周する形状とせず、パッド22の周囲を包囲する周方向の少なくとも1個所を分断した形態とした例である。
図7(b)は、円環状のダム23aを2個所で分断した円弧状のダム23aを形成した例、図7(c)は、直線状のダム23aを形成した例、図7(d)は、直線部分の端部をパッド22側に折曲した形態とした例である。いずれも、パッド22ごとに、パッド22を挟む対称位置に一対のダム23aを配置している。
図7(b)、(c)は、各々のパッド22におけるダム23aの向きを平行向き、すなわち各々のパッド22に設けられているダム23aの開き方向が同一方向に揃うように配置した例、図7(d)は、パッド22ごとにダム23aの向き、すなわちダム23aの開き方向を90度ずつ交互に向きを変える配置とした例である。
【0041】
第1の基板20と第2の基板30とを接合した後、第1の基板20と第2の基板30との間に樹脂50を充填する際には、基板の一端側から樹脂50を注入して充填する。したがって、図7(b)、(c)に示すように、ダム23aに設けた分断部分が樹脂50の流動方向(図中の矢印の方向)に開く配置にすると、ダム23aがパッド22の周囲を包囲する形状とした場合とくらべて、ダム23aによって樹脂50の流動が妨げられにくくなり、樹脂50を確実に充填することができる。これによって、樹脂50と保護膜23との界面に空隙が生じることが抑制され、空隙にはんだが流れ出すことによって生じる電気的短絡を抑制することができる。
このようにダム23aに分断部分を設ける場合に、樹脂50の注入方向(流動方向)を考慮して、ダム23aの形状を設定することは有効である。
【0042】
図7(d)は、樹脂50の流動方向とダム23aの向きをとくに関連づけていない例である。第1の基板20と第2の基板30との離間間隔は実際にはかなり狭く、第1の基板20と第2の基板30にダム23a、33aを形成すると、ダム23a、33aを形成した部位においては樹脂50が通過する隙間がさらに狭くなる。したがって、ダム23aに分断部分を設けて樹脂50が通過する流路を広くすることは、樹脂50の流れ方向に関わらず、第1の基板20と第2の基板30との間に樹脂50を充填しやすくする方法として有効である。樹脂50が充填される際には、樹脂50はより通過しやすい流路を介して充填される。
【0043】
また、図7(b)、(c)に示す例においては、隣り合ったパッド22間はダム23aによって仕切られているが、ダム23aの開き側にパッド22を配置した場合には、ダム23aの開き側に配置されるパッド22との間における電気的短絡を抑制する作用が不十分になるおそれがある。これに対し、図7(d)に示すように、パッド22ごとにダム23aの向きを90度ずつ変えるようにすると、ダム23aの仕切り位置が当方的になり、どの方向にもダム23aが電気的短絡を抑制するように作用するという利点がある。
【0044】
図7(b)、(c)、(d)は、パッド22の周囲に設けるダムに2個所の分断部を設けた例であるが、ダムに設ける分段個所を1個所あるいは3個所以上とすることも可能である。また、分断個所を設ける場合のダムの形状も、任意に設定することができる。
また、図7は、第1の基板20に設けるダム23aについて説明したが、第2の基板30に設けるダム33aについてもまったく同様の形態とすることができる。
【0045】
図8、9は、第1の基板20と第2の基板30とに設けるダム23a、33aの相互の配置位置関係を特徴とする例である。
図8は、第1の基板20に設けるダム23aを第2の基板30に設けるダム33aよりも小径として、対向する位置関係にあるパッド22、32に設けるダム23a、33aの平面配置が重複しない配置(重なり合わない配置)とした例である。第1の基板20と第2の基板30のパッド22、32は、同一の平面位置にあるから、図8(b)に示すように、ダム23aとダム33aは同芯状の平面配置となる。
【0046】
このように、第1の基板20と第2の基板30の対向するパッド22、32におけるダム23a、33aの配置を、平面方向に重複しない配置とすることにより、第1の基板20と第2の基板30との隙間に樹脂50を充填する際に、パッド22、32の近傍における樹脂50の充填性、流れ性を良好とし、樹脂50を第1の基板20と第2の基板30との間に充填する操作を確実に行うことができる。
なお、第1の基板20のダム23aを第2の基板33aのダム33aよりも大径とした場合も同様である。なお、ダム23a、33aの形状は円形のリング状に限らず、第1の基板20のダム23aと第2の基板30のダム33aが平面配置において重複しないように、言い換えれば、少なくとも部分的に平面配置において重複しない部分が生じるように配置することによって、樹脂50の充填性を向上させることができる。
【0047】
図9は分断部分を設けたダム23a、33aの分断位置の向き(開き方向)を、第1の基板20と第2の基板30とで交差する配置、すなわちダム23a、33aの分断位置が平面配置において重複しない配置とした例である。図9(b)は、第1の基板20におけるダム23aの平面配置、図9(c)は、第2の基板30におけるダム33aの平面配置を示す。図9(a)は、図9(b)、(c)のA-A線断面図である。
ダム23aとダム33aの分断位置が平面配置において重複しない配置とすれば、ダム23a、33aが完全に対向して配置された場合と比較して、第1の基板20と第2の基板30のダム23a、33aの隙間が実質的に広がり、樹脂50の流れ性を良くすることができる。
図9に示す例においても、ダム23a、33aの平面形状は円弧形状に限らず適宜形状とすることができ、またダム23a、33aに設ける分段位置、開き方向も図示例のものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10 半導体素子
11 電極
12 アンダーフィル樹脂
20 第1の基板
21 電極
22、32 パッド
23、25、33、35 保護膜
23a、33a ダム
24、34 接続パッド
30 第2の基板
40 はんだ端子
40a 銅ボール
40b はんだ
50 樹脂
60 積層基板
62 接続端子
70 半導体素子内蔵基板
100 半導体素子内蔵基板
230、330 ソルダーレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に半導体素子が搭載され、
前記第1の基板の前記半導体素子が搭載された面に、はんだ端子を介して第2の基板が接合され、
前記第1の基板と前記第2の基板とに間に、前記半導体素子及び前記はんだ端子を封止して充填された樹脂を介して、前記第1の基板と前記第2の基板とが一体化され、
前記第1の基板と前記第2の基板のいずれか一方あるいは双方の、前記はんだ端子が接合されるパッドの周囲に、前記はんだ端子からのはんだの流れ出しを防止するダムが設けられていることを特徴とする半導体素子内蔵基板。
【請求項2】
前記第1の基板の前記半導体素子が搭載された面と、前記第2の基板の前記第1の基板に対向する面とに保護膜が被着形成され、
前記ダムは、前記保護膜上に突起状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項3】
前記ダムは、前記パッドの周囲を連続して一周する形状に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項4】
前記ダムが、前記第1の基板と前記第2の基板の双方に設けられ、
前記第1の基板と前記第2の基板の対向するパッドにおけるダムが、平面配置において重複しない部位が生じる配置に設けられていることを特徴とする請求項3記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項5】
前記ダムは、前記パッドの周囲を包囲する周方向の少なくとも1個所が分断された形状に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項6】
前記ダムは、前記パッドの周方向の2個所が分断され、パッドを挟む対称位置に一対配置された形状に設けられ、
各々のパッドに設けられたダムの開き方向が、同一方向に揃って配置されていることを特徴とする請求項5記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項7】
前記ダムは、前記パッドの周方向の2個所が分断され、パッドを挟む対称位置に一対配置された形状に設けられ、
各々のパッドに設けられたダムの開き方向が、パッドごとに交互に90度ずつ変わる配置に設けられていることを特徴とする請求項5記載の半導体素子内蔵基板。
【請求項8】
前記ダムが、前記第1の基板と前記第2の基板の双方に設けられ、
前記第1の基板と前記第2の基板の対向するパッドにおけるダムが、相互に分断位置が平面配置において重複しない配置に設けられていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項記載の半導体素子内蔵基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−134818(P2011−134818A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291632(P2009−291632)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】