半導体素子及び半導体素子の製造方法
【課題】コラムナ量子ドットの上方に、高品質な半導体層を成長させるのに適した半導体素子、及び、そのような半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体素子は、半導体基板と、半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットとを有し、コラムナ量子ドットは、第1量子ドットと、第1量子ドット上に積層され半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、第2量子ドットと、第2量子ドット上に積層され半導体基板に対し第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造を有する。
【解決手段】半導体素子は、半導体基板と、半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットとを有し、コラムナ量子ドットは、第1量子ドットと、第1量子ドット上に積層され半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、第2量子ドットと、第2量子ドット上に積層され半導体基板に対し第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子を高温で安定動作させるために、熱励起による発振準位からのキャリア漏出を抑制することが望まれる。このためには、離散的なエネルギー準位を有する量子ドットを活性層に活用することが有効である。
【0003】
Stranski‐Krastanov(S−K)モードで自己生成した量子ドットを、スペーサ層(バリア層とも呼ばれる)を介して高さ方向に積み上げたコラムナ量子ドットが提案されている。1つのコラムナ量子ドット内に重ねられた複数の量子ドットは、相互に量子力学的に結合している。具体的には、量子ドットの高さ方向間隔が、キャリアの波動関数の広がりよりも狭い。量子ドットの重ね数(高さ)や、スペーサ層の歪量等の構造パラメータを変えることによって、コラムナ量子ドットの偏光特性を制御することが可能である。
【0004】
半導体レーザに、高い電気光変換効率が求められ、半導体光増幅器に、高い光利得が求められる。コラムナ量子ドットの分布密度を高めることにより、電気光変換効率や光利得の向上を図ることができる。コラムナ量子ドットが面内に分布しているコラムナ量子ドット層を多段に積み重ねることにより、コラムナ量子ドットの体積分布密度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−157975号公報
【特許文献2】特開2007−242748号公報
【特許文献3】特開2008−244235号公報
【非特許文献1】2009年春季第56回応用物理学関係連合講演会予稿集、安岡他、2a−G−2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コラムナ量子ドット層を積み重ねる際には、コラムナ量子ドット層の間に中間層が配置される。多段化されたコラムナ量子ドット層により活性層が形成される。活性層が厚くなると、縦高次モードが発生しやすくなるため、活性層を過度に厚くすることは好ましくない。活性層が過度に厚くなることを避けるために、中間層を薄くすることが好ましい。中間層が薄くなると、下段のコラムナ量子ドット層の歪が、中間層を経由して上段のコラムナ量子ドット層に伝播しやすくなる。これに起因して、良好な結晶状態を保って結晶成長させることが難しくなる。
【0007】
また、コラムナ量子ドット層を多段に積み重ねる場合に限らず、単層のコラムナ量子ドット層上に半導体層を形成する場合にも、半導体層の結晶品質を高める技術が望まれる。
【0008】
本発明の一目的は、コラムナ量子ドットの上方に、高品質な半導体層を成長させるのに適した半導体素子、及び、そのような半導体素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、半導体基板と、前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットとを有し、前記コラムナ量子ドットは、第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
相対的に引張歪量の小さい第1スペーサ層と、相対的に引張歪量の大きい第2スペーサ層とが、厚さ方向に交互に配置されているコラムナ量子ドットにより、スペーサ層の引張歪量が均一なコラムナ量子ドットに比べて、所定発光波長に対応する平均歪量を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図2】図2は、第1実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図3】図3は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【図4】図4は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図である。
【図5】図5は、第1実施例及び第2実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、比較例及び第1実施例のコラムナ量子ドットの、量子ドットに関する概略的な伝導帯バンドラインナップである。
【図7】図7は、第2実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図8】図8は、第3実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図9】図9は、第3実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図10】図10は、第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【図11】図11は、第4実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図12】図12は、第4実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図13】図13は、比較例のコラムナ量子ドットを示す概略断面図である。
【図14】図14は、比較例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例による半導体素子について説明する前に、まず、比較例について説明する。比較例として、1段のコラムナ量子ドットを作製しフォトルミネッセンス(PL)発光波長を測定した実験と、コラムナ量子ドットの多段積層を試みた実験を行った。
【0013】
図13は、比較例のコラムナ量子ドットを示す概略断面図である。InP(001)基板上方に、InGaAsP層103が形成されている。InGaAsP層103上に、量子ドット104とスペーサ層105とが交互に積層されて、コラムナ量子ドット106が形成されている。コラムナ量子ドット106の最上部は、量子ドット104が配置されており、量子ドット104が12層形成され、スペーサ層105が11層形成されている。
【0014】
量子ドット104は、InAsで形成され、スペーサ層105は、バンドギャップに対応する波長(これを以下、組成波長と呼ぶ)が1.0μmのInGaAsPで形成されている。量子ドット104及びスペーサ層105の形成方法として、有機金属気相成長(MOVPE)を用いることができる。
【0015】
コラムナ量子ドットの平均歪量εaを、下記の式で定義する。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、εQDiは、下からi番目の量子ドット104の歪量であり、εSBiは、下からi番目のスペーサ層105の歪量である。歪量εa、εQDi、及びεSBiは、例えば%単位で表される。
【0018】
dQDi及びdSBiは、それぞれ、下からi番目の量子ドット104及びスペーサ層105の厚さである。量子ドット104及びスペーサ層105の厚さは、成長中に供給した原料により均一な厚さの膜が形成されたと仮定した場合の膜の厚さを意味する。厚さdQDi及びdSBiは、例えばモノレイヤー(ML)単位で表される。
【0019】
量子ドット104の歪量εQDiは、下記の式で算出される。
【0020】
【数2】
【0021】
スペーサ層105の歪量εSBiは、下記の式で算出される。
【0022】
【数3】
【0023】
ここで、aInAs、aInGaAsP、及びaInPは、それぞれ、InAs、InGaAsP、及びInPの格子定数である。InGaAsPの格子定数は、InGaAsPの各元素の組成比から格子定数を求め、求められた格子定数を用いて算出することができる。なお、「格子定数」とは、半導体材料に歪が発生していないと仮定したときの格子定数を意味する。
【0024】
圧縮歪が正、引張歪が負になる。量子ドット104を形成するInAsは、基板のInPに対して格子定数が大きく、圧縮歪を持つ。スペーサ層105を形成するInGaAsPは、基板のInPに対して格子定数が小さく、引張歪を持つ。スペーサ層105が、量子ドット104に起因する圧縮歪を補償する。
【0025】
以下、スペーサ層105の引張歪量は、マイナス記号を省略して示し、引張歪量の絶対値が大きいほど引張歪量が大きい(または高い)と表現し、引張歪量の絶対値が小さいほど引張歪量が小さい(または低い)と表現する。後述の実施例についても、コラムナ量子ドットの平均歪量は同様に定義される。コラムナ量子ドットの平均歪量を、単に「平均歪量」と呼ぶこともある。
【0026】
比較例のコラムナ量子ドット106では、積層された全スペーサ層105で、引張歪量が均一に設定されている。コラムナ量子ドット106が1段形成された試料を、スペーサ層105の引張歪量を変化させて、つまり、平均歪量を変化させて複数作製し、これらの試料のPL発光波長を測定した。
【0027】
各試料のスペーサ層105の引張歪量は、0.4%、0.6%、0.8%、1.0%、1.2%、及び1.4%とした。なお、InAs量子ドット104の圧縮歪量は3.2%である。スペーサ層105の引張歪量が大きくなるほど、量子ドット104に起因する圧縮歪が補償されて、平均歪量(補償されずに残る圧縮歪量)が小さくなる。
【0028】
図14は、比較例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。横軸が、%単位で表した平均歪量であり、縦軸が、μm単位で表したPL発光波長である。平均歪量が小さくなるほど、つまり、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、PL発光波長が短くなっている。例えば、Cバンド(1.53μm〜1.565μm)に含まれる波長1.55μm程度でPL発光が得られる平均歪量は0.775%(スペーサ層引張歪量は0.6%)である。
【0029】
次に、所望のPL発光波長を1.55μmと想定し、平均歪量0.775%を採用して、コラムナ量子ドットの多段積層を試みた。厚さ40nmのInGaAs中間層を介し、3段のコラムナ量子ドットの積層を試みたところ、コラムナ量子ドットに起因する圧縮歪が厚さ方向に伝播して、良好な結晶状態を保った成長が困難であった。
【0030】
一方、平均歪量を0.654%まで下げた(スペーサ層引張歪量を0.8%まで増やした)条件でも、厚さ40nmのInGaAs中間層を介し、3段のコラムナ量子ドットの積層を試みたところ、良好な結晶状態を保った成長が可能であった。
【0031】
このように、コラムナ量子ドットを良好に多段積層するには、平均歪量を低下させることが望ましいとわかった。ただし、平均歪量を例えば0.654%まで下げたことに伴って、PL発光波長が1.529μmとなり、所望の波長より短波長になってしまう。平均歪量を低下させても発光波長が短波長側にずれにくい、あるいは、所望の発光波長に対応する平均歪量を低減することができるコラムナ量子ドット構造が望まれる。
【0032】
次に、第1実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。
【0033】
図1は、第1実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0034】
図2は、第1実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0035】
図1及び図2を参照しながら、製造工程に沿って説明を進める。結晶成長方法として、MOVPEを用いることができる。III族元素原料として、トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルガリウム(TEGa)、V族元素原料として、アルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)を用いることができる。n型ドーパント原料としてモノシラン(SiH4)、p型ドーパント原料としてジエチルジンク(DEZn)、キャリアガスとして水素(H2)を用いることができる。成長圧力は、例えば50Torrである。
【0036】
n型InP(001)基板1を、MOVPE成長炉に装備して、PH3雰囲気下で成長温度(成長表面の温度)を630℃まで昇温する。
【0037】
次に、TMIn及びSiH4も供給して、ドーピング濃度が5.0×1017cm−3のn型InPバッファ層2を、厚さ500nm形成する。
【0038】
TMIn及びSiH4の供給を停止し、PH3雰囲気下で成長温度を430℃まで下げる。次に、III族ガスをTMIn及びTEGaとし、V族ガスをAsH3及びPH3として、バッファ層2上に、組成波長が1.1μmで歪量が0%のノンドープInGaAsP光閉じ込め層3を、厚さ30nm形成する。
【0039】
次に、供給ガスをTMIn及びAsH3とし、光閉じ込め層3上に、InAs量子ドット4を形成する。InAs量子ドット4の成長条件は、例えば、供給量2.5ML相当、成長速度0.045μm/h、V/III比30である。
【0040】
この条件により、横方向寸法が[110]方向に20nm程度、[−110]方向に30nm程度で、面内密度が7.5×1010cm−2程度の量子ドット4が形成される。量子ドット4はS−Kモードにより成長し、量子ドット4の外側には、濡れ層4aが残る。
【0041】
次に、供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、量子ドット4を覆って光閉じ込め層3上に、組成波長が1.0μmで、引張歪量が相対的に低い0.4%となるような組成の、低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lの成長条件は、例えば、供給量2.5ML相当、成長速度0.1μm/h、V/III比1600である。
【0042】
なお、説明の便宜上、図1に示すように、スペーサ層を引張歪量の相対的な大小を区別せずに、「スペーサ層5」と表すこともある。図2には、スペーサ層を、引張歪量の相対的な大小を区別して示す。
【0043】
このようにして、量子ドット4上に低引張歪スペーサ層5Lが積層された低引張歪量子ドット部QDLが形成される。低引張歪スペーサ層5Lが積層された量子ドット4を、量子ドット4Lと呼ぶこともある。
【0044】
次に、再び供給ガスをTMIn及びAsH3とし、低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。InAs量子ドット4の成長条件は、例えば、最初に形成した量子ドット4と同様である。ただし、下から2番目以降の量子ドット4については、供給量を例えば1.2ML相当に減らす。
【0045】
次に、再び供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、組成波長が1.0μmで、引張歪量が相対的に高い2.4%となるような組成の、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hの成長条件は、例えば、低引張歪InGaAsPスペーサ層5と同様である。
【0046】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に、量子ドット4上に高引張歪スペーサ層5Hが積層された高引張歪量子ドット部QDHが形成される。高引張歪スペーサ層5Hが積層された量子ドット4を、量子ドット4Hと呼ぶこともある。
【0047】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後4回繰り返す。
【0048】
次に、最上の高引張歪量子ドット部QDH上に、低引張歪量子ドット部QDLを形成する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。このようにして、12層の量子ドット4と、11層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。
【0049】
第1実施例のコラムナ量子ドット6は、低引張歪スペーサ層5Lと高引張歪スペーサ層5Hとが1層ずつ交互に積層された構造、つまり、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層された構造を有する。
【0050】
その後、供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、1段目のコラムナ量子ドット6を覆って、組成波長が1.1μmで歪量が0%のInGaAsP中間層7を、厚さ30nm形成する。
【0051】
コラムナ量子ドット6形成、中間層7形成を1組とした工程を、その後2回繰り返す。このようにして、3段のコラムナ量子ドット層6A、6B、6Cが中間層7を介して積層された、コラムナ量子ドットの多段積層構造が形成される。なお、最上に形成されたInGaAsP層は、中間層7でなく、光閉じ込め層3と呼ぶこととする。
【0052】
下側の光閉じ込め層3、1段目のコラムナ量子ドット層6A、下側の中間層7、2段目のコラムナ量子ドット層6B、上側の中間層7、3段目のコラムナ量子ドット6C、及び上側の光閉じ込め層3を含んで、活性層8が形成される。
【0053】
その後、PH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温し、TMIn、PH3、及びDEZnを供給して、上側の光閉じ込め層3上に、ドーピング濃度が5.0×1017cm−3のp型InPクラッド層9を、厚さ200nm形成する。
【0054】
さらに、図3及び図4も参照して説明を進める。
【0055】
図3は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【0056】
図4は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図である。
【0057】
図3に示すように、p型クラッド層9上に、[110]方向に延在し長さが100μm、幅が1.5μmの誘電体マスクMSKを形成し、誘電体マスクMSKを用いてドライエッチングにより、誘電体マスクMSKの外側部分を基板1の途中深さまで除去して、ストライプメサ構造を形成する。
【0058】
次に、誘電体マスクMSKを形成した状態で、メサの両脇にp型InP埋め込み層10、n型InPブロック層11、及びp型InP層12を成長させて、電流狭窄構造を形成する。p型InP埋め込み層10〜p型InP層12の形成には、公知の半導体埋め込み成長技術を用いることができる。その後、誘電体マスクMSKを除去する。
【0059】
図4に示すように、さらに、p型InPクラッド層9上にp型InGaAsコンタクト層13を形成し、p型InGaAsコンタクト層13上にp側電極14pを形成し、n型InP基板1の裏面上にn側電極14nを形成し、光入射側及び光出射側の端面に反射防止膜15を形成する。このようにして、第1実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0060】
図2に示されたような、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層されたコラムナ量子ドットが、1段形成された試料を作製して、PL発光波長を測定した。
【0061】
低引張歪スペーサ層5Lの引張歪量を0.4%と一定にし、高引張歪スペーサ層5Hの引張歪量を1.4%、2.4%と変化させて、2種の試料を作製した。低引張歪量0.4%で高引張歪量1.4%の試料は、平均歪量0.61%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量2.4%の試料は、平均歪量0.33%(圧縮歪)である。
【0062】
図5は、第1実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。横軸が、%単位で表した平均歪量であり、縦軸が、μm単位で表したPL発光波長である。第1実施例の結果を、三角のプロットで示す。丸のプロットで示されているのは、図14に示したのと同様な、比較例の結果である。
【0063】
第1実施例の平均歪量0.61%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)の試料は、比較例とほぼ同様な、波長1.52μm程度の発光を示した。第1実施例の平均歪量0.33%(低引張歪量0.4%/高引張歪量2.4%)の試料は、平均歪量の等しい比較例の試料に比べて長波長の、波長1.50μm程度の発光を示した。
【0064】
このように、第1実施例のコラムナ量子ドットは、比較例に比べ、平均歪量を低下させたときの、発光波長の短波長化が抑制されていることがわかった。あるいは、所望の発光波長(例えば1.50μm)を得るときの平均歪量を、比較例に比べて小さくできることがわかった。
【0065】
次に、第1実施例のコラムナ量子ドットが、比較例に比べ、等しい平均歪量で長波長のPL発光を示した理由について考察する。なお、この理由は明らかではなく、下記の考察は1つの考え方を示すものである。
【0066】
比較例のスペーサ層の引張歪量の大きさをε0とし、第1実施例の低引張歪スペーサ層及び高引張歪スペーサ層の歪量の大きさをそれぞれε1及びε2とする。平均歪量が等しいとき、これらの引張歪量の大きさは、ε1<ε0<ε2を満たす。
【0067】
比較例の量子ドットの伝導帯エネルギー準位をE0とし、第1実施例の、低引張歪スペーサ層5Lが積層された量子ドット4L、及び、高引張歪スペーサ層5Hが積層された量子ドット4Hの伝導帯エネルギー準位を、それぞれE1及びE2とする。
【0068】
比較例よりわかるように、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、PL発光波長が短波長化する傾向がある。これより、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、スペーサ層に覆われる量子ドットのエネルギーギャップが大きくなり、量子ドットの伝導帯エネルギー準位が上昇するのではないかと推測される。従って、量子ドットの伝導帯エネルギー準位について、E1<E0<E2となると考えられる。
【0069】
図6は、比較例及び第1実施例のコラムナ量子ドットの、量子ドットに関する概略的な伝導帯バンドラインナップである。平均歪量が等しい場合の伝導帯バンドラインナップを、並べて示す。左方が比較例、右方が第1実施例である。「InGaAsP SCH」は、光閉じ込め層(または中間層)を示す。
【0070】
比較例のコラムナ量子ドットに形成される結合量子準位をEuとする。第1実施例のコラムナ量子ドットに形成される、量子ドット4Lの結合量子準位をEm、量子ドット4Hの結合量子準位をEnとする。量子ドット4Lによる結合量子準位Emは、量子ドット4Lの低いエネルギー準位E1の影響を強く受けて、量子ドット4Hの高いエネルギー準位E2の影響を受けにくい状態になると考えられる。
【0071】
その結果、結合量子準位Emは、結合量子準位EuよりもΔEだけ低いエネルギー準位となり、第1実施例のコラムナ量子ドットの方が、等しい平均歪量を持つ比較例のコラムナ量子ドットよりも長波長で発光すると考えられる。
【0072】
なお、図5に示したように、第1実施例の試料でも、平均歪量0.61%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)のものは、比較例とほぼ同程度の波長で発光した。これは、高引張歪スペーサ層の歪量が小さいときは、量子ドット4Lと量子ドット4Hの伝導帯バンドオフセットが小さく、波動関数の結合によるエネルギー準位低下が少ないためであると思われる。
【0073】
次に、第2実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。主に第1実施例との違いについて説明する。第2実施例は、第1実施例と、コラムナ量子ドット6における低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5Hの積層順序が異なる。
【0074】
コラムナ量子ドットの多段積層構造や、半導体光増幅器としての構造は、第1実施例と同様であり、コラムナ量子ドット6の構造を第2実施例のものと読み替えた上で、図1、図3及び図4を流用して、第2実施例でも参照する。また、参照符号付与の煩雑さを減らすため、第1実施例と対応が明確な部材等について、参照符号を流用する。量子ドット4、低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5H等の形成方法は、第1実施例と同様である。
【0075】
図7は、第2実施例のコラムナ量子ドット6の1つ分を拡大して示す概略断面図である。第1実施例と同様にして、n型InP基板1上に、下方からn型InPバッファ層2、InGaAsP光閉じ込め層3を形成し、InGaAsP光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4を形成し、InAs量子ドット4上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。このようにして、まず、低引張歪量子ドット部QDLが形成される。
【0076】
次に、低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。なお、第1実施例と同様に、下から2番目以降の量子ドット4については、供給量を例えば1.2ML相当に減らす。
【0077】
次に、量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、再び低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に低引張歪量子ドット部QDLが重ねられる。
【0078】
次に、下から2番目の低引張歪スペーサ層5L上に、下から3番目のInAs量子ドット4を形成する。次に、下から3番目の量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成して、高引張歪量子ドット部QDHを形成する。第2実施例では、このようにして、低引張歪量子ドット部QDLが2層積層され、その上に高引張歪量子ドット部QDHが1層積層された構造が形成される。
【0079】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後2回繰り返す。
【0080】
最上の高引張歪量子ドット部QDHの上に、さらに2層の低引張歪量子ドット部QDLを積層する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、量子ドット4を形成する。このようにして、12層の量子ドット4と、11層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。
【0081】
第2実施例のコラムナ量子ドット6は、2層の低引張歪スペーサ層5Lと、1層の高引張歪スペーサ層5Hとが交互に積層された構造、つまり、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層された構造を有する。
【0082】
その後、第1実施例と同様に、InGaAsP中間層7を介し3段のコラムナ量子ドット層6A〜6Cを積層して活性層8を形成し、p型InPクラッド層9を形成して、図1に示したような構造を得る。
【0083】
さらに、第1実施例で図3、図4を参照しながら説明した工程と同様にして、ストライプメサ構造を形成し、p型InGaAsコンタクト層13、p側電極14p、n側電極14n、及び反射防止膜15を形成する。このようにして、第2実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0084】
図7に示されたような、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層されたコラムナ量子ドットが、1段形成された試料を作製して、PL発光波長を測定した。
【0085】
低引張歪スペーサ層5Lの引張歪量を0.4%と一定にし、高引張歪スペーサ層5Hの引張歪量を1.4%、2.4%、3.4%と変化させて、3種の試料を作製した。低引張歪量0.4%で高引張歪量1.4%の試料は、平均歪量0.74%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量2.4%の試料は、平均歪量0.56%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量3.4%の試料は、平均歪量0.39%(圧縮歪)である。
【0086】
再び図5を参照する。図5に、第2実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係も示す。第2実施例の結果を、四角のプロットで示す。
【0087】
第2実施例の平均歪量0.74%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)の試料は、比較例とほぼ同様な、波長1.542μm程度の発光を示した。第2実施例の平均歪量0.56%(低引張歪量0.4%/高引張歪量2.4%)の試料、及び、平均歪量0.39%(低引張歪量0.4%/高引張歪量3.4%)の試料は、それぞれ、平均歪量の等しい比較例の試料に比べて長波長の、波長1.538μm程度及び波長1.526μm程度の発光を示した。
【0088】
第2実施例のコラムナ量子ドットでも、第1実施例と同様に、比較例に比べ、平均歪量を低下させたときの発光波長の短波長化が抑制されている。平均歪量低下に伴う発光波長短波長化の傾きは、第2実施例の方が第1実施例よりも緩やかである傾向が見られる。
【0089】
第2実施例では、第1実施例に比べ、等しい平均歪量でより長波長の発光が得られる。所望の長波長の発光波長を得るとき、平均歪量をより小さくできるといえる。
【0090】
次に、第2実施例のコラムナ量子ドットが、第1実施例に比べ、等しい平均歪量でより長波長のPL発光を示した理由について考察する。なお、この理由は明らかではなく、下記の考察は1つの考え方を示すものである。
【0091】
第1実施例では、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層されている。低引張歪量子ドット部QDLの含む量子ドット4Lは、それを覆う低引張歪スペーサ層5Lから作用を受けるとともに、直下の高引張歪量子ドット部QDHの高引張歪スペーサ層5Hからも、やや作用を受ける。そのため、低引張歪スペーサ層5Lから受ける作用と、高引張歪スペーサ層5Hから受ける作用とが、やや平均化されると考えられる。なお、これは、量子ドット4Hについても同様である。これに起因して、量子ドット4Lと量子ドット4Hのエネルギー準位差が減少すると考えられる。
【0092】
一方、第2実施例では、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層されている。2層重なった低引張歪量子ドット部QDLの、上側の低引張歪量子ドット部QDLの含む量子ドット4L(これを、量子ドット4LUと呼ぶこととする)は、それを覆うスペーサ層、及び、その直下のスペーサ層の両方とも、低引張歪スペーサ層5Lである。このため、量子ドット4LUは、高引張歪スペーサ層5Hによる影響を受けにくく、エネルギー準位が低く保たれやすいと考えられる。従って、第2実施例では、第1実施例に比べて、量子ドット4Lと量子ドット4Hのエネルギー準位差が減少しにくく、低い結合量子準位が得られやすいのではないかと考えられる。
【0093】
なお、第2実施例では、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとの交互積層構造としたが、低引張歪量子ドット部QDLは3層以上積層することもでき、高引張歪量子ドット部QDHは2層以上積層することもできると考えられる。ただし、低引張歪量子ドット部QDLのある積層部分L1と、この直上に配置された低引張歪量子ドット部QDLの積層部分L2との間に配置される、高引張歪量子ドット部QDHの積層部分は、積層部分L1に含まれる量子ドット4Lと、積層部分L2に含まれる量子ドット4Lとが、互いに量子力学的に結合できる範囲の厚さとする。
【0094】
以上、第1及び第2実施例で説明したように、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが厚さ方向に交互に複数配置された構造を有するコラムナ量子ドットを形成することにより、スペーサ層の引張歪量が均一なコラムナ量子ドットに比べて、平均歪量の低下に伴う発光波長の短波長化を抑制でき、あるいは、等しい平均歪量で長波長の発光を得ることが容易になる。
【0095】
所望の発光波長を得るとき、平均歪量を小さくできることにより、良好な結晶性を保ってコラムナ量子ドットを多段積層することが容易になる。なお、平均歪量を小さくできることにより、コラムナ量子ドットを多段積層する場合に限らず、コラムナ量子ドット上方に形成する半導体層の結晶品質を高めることができる。
【0096】
また、第2実施例で説明したように、低引張歪量子ドット部QDLを複数層重ねることにより(ある高引張歪量子ドット部QDHと、その直上の高引張歪量子ドット部QDHとの間に、複数層重ねた低引張歪量子ドット部QDLを配置することにより)、所定の平均歪量での発光波長を、より長波長にしやすい。
【0097】
なお、第1、第2実施例では、n型InP(001)基板を用いたが、その他、p型InP(001)基板、高抵抗(SI)InP(001)基板等を適用することもできる。その場合は、導電型、電極配置、埋め込み構造等を、適宜変更することができる。
【0098】
さらに、コラムナ量子ドットを形成する基板として、InP基板以外の他の半導体基板を用いることもできると考えられる。
【0099】
次に、第3及び第4実施例として、GaAs基板上へのコラムナ量子ドット形成について説明する。なお、参照符号付与の煩雑さを減らすため、第1、第2実施例と対応が明確な部材等について、参照符号を流用する。
【0100】
第3実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。
【0101】
図8は、第3実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0102】
図9は、第3実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0103】
図8及び図9を参照しながら、製造工程に沿って説明を進める。結晶成長方法として、第1、第2実施例と同様にMOVPEを用いることができ、原料も、第1、第2実施例と同様ものを使用することができる。
【0104】
n型GaAs(001)基板1を、MOVPE成長炉に装備して、AsH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温する。
【0105】
次に、TEGa及びSiH4も供給して、n型GaAsバッファ層2を、厚さ500nm形成する。
【0106】
TEGa及びSiH4の供給を停止し、AsH3雰囲気下で成長温度を430℃まで下げる。次に、供給ガスをTEGa及びAsH3として、バッファ層2上に、ノンドープGaAs光閉じ込め層3を、厚さ40nm形成する。
【0107】
次に、第1実施例と同様にして、光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4(4L)を形成し、量子ドット4(4L)上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成し、低引張歪InGaAsPスペーサ層5L上にInAs量子ドット4(4H)を形成し、量子ドット4(4H)上に高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。
【0108】
InAs量子ドット4の形成条件は、例えば第1実施例と同様である。低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lは、例えば、組成波長が0.75μmで、引張歪量が0.4%となるような組成とし、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hは、例えば、組成波長が0.75μmで、引張歪量が1.0%となるような組成とする。
【0109】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に高引張歪量子ドット部QDHが積層された構造が形成される。
【0110】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後3回繰り返す。次に、最上の高引張歪量子ドット部QDH上に、低引張歪量子ドット部QDLを形成する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。このようにして、10層の量子ドット4と、9層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。第3実施例のコラムナ量子ドット6は、波長1.06μm程度での発光が期待される。
【0111】
第3実施例のコラムナ量子ドット6は、第1実施例と同様に、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層された構造を有する。
【0112】
その後、供給ガスをTEGa及びAsH3とし、1段目のコラムナ量子ドット6を覆って、GaAs中間層7を、例えば厚さ40nm形成する。
【0113】
コラムナ量子ドット6形成、中間層7形成を1組とした工程を、その後3回繰り返す。このようにして、4段のコラムナ量子ドット層6A〜6Dが中間層7を介して積層された、コラムナ量子ドットの多段積層構造が形成される。なお、最上に形成されたGaAs層は、中間層7でなく、光閉じ込め層3と呼ぶこととする。
【0114】
下側の光閉じ込め層3、1段目のコラムナ量子ドット層6A、下から1番目の中間層7、2段目のコラムナ量子ドット層6B、下から2番目の中間層7、3段目のコラムナ量子ドット層6C、下から3番目の中間層7、4段目のコラムナ量子ドット層6D、及び上側の光閉じ込め層3を含んで、活性層8が形成される。
【0115】
その後、AsH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温し、TEGa、AsH3、及びDEZnを供給して、上側の光閉じ込め層3上に、p型GaAsクラッド層9を、例えば厚さ1.5μm形成する。
【0116】
図10も参照して説明を進める。図10は、第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。p型GaAsクラッド層9上に、p型GaAsコンタクト層13を形成する。次に、p側電極形成領域以外をp型クラッド層9の途中深さまでエッチングする。残ったp型コンタクト層13上にp側電極14pを形成し、n型GaAs基板1の裏面上にn側電極14nを形成し、リッジ構造とする。
【0117】
さらに、図4も流用して参照し、説明を進める。第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図は、第1、第2実施例の半導体光増幅器と同様に、図4のようなものである。光入射側及び光出射側の端面に、反射防止膜15を形成する。このようにして、第3実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0118】
第4実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。第4実施例は、第3実施例と、コラムナ量子ドット6における低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5Hの積層順序が異なる。半導体光増幅器としての構造は、第3実施例と同様であり、図11及び図4を流用して、第4実施例でも参照する。量子ドット4、低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5H等の形成方法は、第3実施例と同様である。
【0119】
図11は、第4実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0120】
図12は、第4実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0121】
第3実施例と同様にして、n型GaAs基板1上に、下方からn型GaAsバッファ層2、GaAs光閉じ込め層3を形成し、GaAs光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4を形成し、InAs量子ドット4上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。
【0122】
低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4(4L)を形成し、量子ドット4(4L)上に、再び低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。
【0123】
下から2番目の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4(4H)を形成し、量子ドット4(4H)上に、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。
【0124】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDLが2層積層され、その上に高引張歪量子ドット部QDHが1層積層された構造が形成される。
【0125】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後1回行う。
【0126】
最上の高引張歪量子ドット部QDHの上に、さらに2層の低引張歪量子ドット部QDLを積層する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、量子ドット4を形成する。このようにして、9層の量子ドット4と、8層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。第4実施例のコラムナ量子ドット6は、波長1.2μm〜1.3μm程度での発光が期待される。
【0127】
第4実施例のコラムナ量子ドット6は、第2実施例と同様に、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層された構造を有する。
【0128】
その後、第3実施例と同様に、GaAs中間層7を介し4段のコラムナ量子ドット層6A〜6Dを積層して活性層8を形成し、p型GaAsクラッド層9を形成して、図11に示したような構造を得る。
【0129】
さらに、第3実施例で図10、図4を参照しながら説明した工程と同様な工程を経て、第4実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0130】
なお、第3、第4実施例では、n型GaAs基板を用いたが、その他、p型GaAs基板、高抵抗(SI)GaAs基板等を適用することもできる。その場合は、導電型、電極配置等を適宜変更することができる。
【0131】
なお、構造パラメータ、材料、デバイス構造等は、第1〜第4実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0132】
例えば、InAs量子ドットの供給量、InGaAsPスペーサ層の組成波長、厚さ、歪量は、第1〜第4実施例の値に限定されるものではない。低引張歪スペーサ層と高引張歪スペーサ層の組成波長を等しくすることは必須ではない。
【0133】
また例えば、量子ドットの材料として、InAsの他に、InSb、InGaAs、InGaAsSb等の適用も可能であると考えられる。組成を明示して表すと、量子ドットの材料として、InxGa1−xAsySb1−y(0<x≦1,0≦y≦1)を用いることができると考えられる。ただし、量子ドットの面内の対称性が良いという観点で、InAsが好ましい。
【0134】
また例えば、スペーサ層の材料として、InGaAsPの他に、AlGaInAsの適用も可能であると考えられる。ただし、量子ドットの成長温度が低温の場合、スペーサ層の結晶性向上の観点からは、InGaAsPがより好ましい。
【0135】
また例えば、第1〜第4実施例の半導体素子として半導体光増幅器を示したが、同様な製造工程で、両端面を劈開もしくは高反射膜コートすることにより、半導体レーザの作製も可能である。
【0136】
なお、第1〜第4実施例では、コラムナ量子ドットの最上部を、量子ドットがスペーサ層に覆われない構造としたが、コラムナ量子ドットの最上部を、量子ドットがスペーサ層に覆われた構造とすることもできる。
【0137】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0138】
以上説明した第1〜第4実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記コラムナ量子ドットは、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
(付記2)
前記コラムナ量子ドットは、ある前記第2部と、その直上の前記第2部との間に、複数の前記第1部が積層されている構造を有する付記1に記載の半導体素子。
(付記3)
前記コラムナ量子ドットは、複数積層された前記第1部と、1層の前記第2部とが、交互に積層された構造を有する付記1または2に記載の半導体素子。
(付記4)
前記半導体基板は、InPで形成されている付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記5)
前記半導体基板は、GaAsで形成されている付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記6)
前記第1量子ドット及び前記第2量子ドットは、InxGa1−xAsySb1−y(0<x≦1,0≦y≦1)で形成されている付記1〜5のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記7)
前記第1スペーサ層及び前記第2スペーサ層は、InGaAsPまたはAlGaInAsで形成されている付記1〜6のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記8)
半導体基板と、
前記半導体基板上方に、中間層を介して複数段重ねられたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの各々は、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
(付記9)
さらに、
前記半導体基板と前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットとの間に配置された第1導電型の第1半導体層と、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの上方に配置され前記第1導電型と反対の第2導電型の第2半導体層と
を有し、
半導体光増幅器または半導体レーザである付記8に記載の半導体素子。
(付記10)
半導体基板の上方に、第1量子ドットを形成し、前記第1量子ドット上に、前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層を積層して、前記第1量子ドット上に前記第1スペーサ層が積層された第1部を形成する工程と、
前記第1スペーサ層の上方に、第2量子ドットを形成し、前記第2量子ドット上に、前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層を積層して、前記第2量子ドット上に前記第2スペーサ層が積層された第2部を形成する工程と
を有し、
前記第1部と前記第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造が形成されるように、前記第1部を形成する工程と、前記第2部を形成する工程とを繰り返す半導体素子の製造方法。
【符号の説明】
【0139】
1 基板
2 バッファ層
3 光閉じ込め層
4 量子ドット
4L 低引張歪スペーサ層が積層された量子ドット
4H 高引張歪スペーサ層が積層された量子ドット
5 スペーサ層
5L 低引張歪スペーサ層
5H 高引張歪スペーサ層
QDL 低引張歪量子ドット部
QDH 高引張歪量子ドット部
6 コラムナ量子ドット
6A、6B、6C、6D コラムナ量子ドット層
7 中間層
8 活性層
9 クラッド層
10 p型InP埋め込み層
11 n型InPブロック層
12 p型InP層
13 コンタクト層
14p、14n 電極
15 反射防止膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子を高温で安定動作させるために、熱励起による発振準位からのキャリア漏出を抑制することが望まれる。このためには、離散的なエネルギー準位を有する量子ドットを活性層に活用することが有効である。
【0003】
Stranski‐Krastanov(S−K)モードで自己生成した量子ドットを、スペーサ層(バリア層とも呼ばれる)を介して高さ方向に積み上げたコラムナ量子ドットが提案されている。1つのコラムナ量子ドット内に重ねられた複数の量子ドットは、相互に量子力学的に結合している。具体的には、量子ドットの高さ方向間隔が、キャリアの波動関数の広がりよりも狭い。量子ドットの重ね数(高さ)や、スペーサ層の歪量等の構造パラメータを変えることによって、コラムナ量子ドットの偏光特性を制御することが可能である。
【0004】
半導体レーザに、高い電気光変換効率が求められ、半導体光増幅器に、高い光利得が求められる。コラムナ量子ドットの分布密度を高めることにより、電気光変換効率や光利得の向上を図ることができる。コラムナ量子ドットが面内に分布しているコラムナ量子ドット層を多段に積み重ねることにより、コラムナ量子ドットの体積分布密度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−157975号公報
【特許文献2】特開2007−242748号公報
【特許文献3】特開2008−244235号公報
【非特許文献1】2009年春季第56回応用物理学関係連合講演会予稿集、安岡他、2a−G−2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コラムナ量子ドット層を積み重ねる際には、コラムナ量子ドット層の間に中間層が配置される。多段化されたコラムナ量子ドット層により活性層が形成される。活性層が厚くなると、縦高次モードが発生しやすくなるため、活性層を過度に厚くすることは好ましくない。活性層が過度に厚くなることを避けるために、中間層を薄くすることが好ましい。中間層が薄くなると、下段のコラムナ量子ドット層の歪が、中間層を経由して上段のコラムナ量子ドット層に伝播しやすくなる。これに起因して、良好な結晶状態を保って結晶成長させることが難しくなる。
【0007】
また、コラムナ量子ドット層を多段に積み重ねる場合に限らず、単層のコラムナ量子ドット層上に半導体層を形成する場合にも、半導体層の結晶品質を高める技術が望まれる。
【0008】
本発明の一目的は、コラムナ量子ドットの上方に、高品質な半導体層を成長させるのに適した半導体素子、及び、そのような半導体素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、半導体基板と、前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットとを有し、前記コラムナ量子ドットは、第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0010】
相対的に引張歪量の小さい第1スペーサ層と、相対的に引張歪量の大きい第2スペーサ層とが、厚さ方向に交互に配置されているコラムナ量子ドットにより、スペーサ層の引張歪量が均一なコラムナ量子ドットに比べて、所定発光波長に対応する平均歪量を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図2】図2は、第1実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図3】図3は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【図4】図4は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図である。
【図5】図5は、第1実施例及び第2実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。
【図6】図6は、比較例及び第1実施例のコラムナ量子ドットの、量子ドットに関する概略的な伝導帯バンドラインナップである。
【図7】図7は、第2実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図8】図8は、第3実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図9】図9は、第3実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図10】図10は、第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【図11】図11は、第4実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【図12】図12は、第4実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【図13】図13は、比較例のコラムナ量子ドットを示す概略断面図である。
【図14】図14は、比較例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例による半導体素子について説明する前に、まず、比較例について説明する。比較例として、1段のコラムナ量子ドットを作製しフォトルミネッセンス(PL)発光波長を測定した実験と、コラムナ量子ドットの多段積層を試みた実験を行った。
【0013】
図13は、比較例のコラムナ量子ドットを示す概略断面図である。InP(001)基板上方に、InGaAsP層103が形成されている。InGaAsP層103上に、量子ドット104とスペーサ層105とが交互に積層されて、コラムナ量子ドット106が形成されている。コラムナ量子ドット106の最上部は、量子ドット104が配置されており、量子ドット104が12層形成され、スペーサ層105が11層形成されている。
【0014】
量子ドット104は、InAsで形成され、スペーサ層105は、バンドギャップに対応する波長(これを以下、組成波長と呼ぶ)が1.0μmのInGaAsPで形成されている。量子ドット104及びスペーサ層105の形成方法として、有機金属気相成長(MOVPE)を用いることができる。
【0015】
コラムナ量子ドットの平均歪量εaを、下記の式で定義する。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、εQDiは、下からi番目の量子ドット104の歪量であり、εSBiは、下からi番目のスペーサ層105の歪量である。歪量εa、εQDi、及びεSBiは、例えば%単位で表される。
【0018】
dQDi及びdSBiは、それぞれ、下からi番目の量子ドット104及びスペーサ層105の厚さである。量子ドット104及びスペーサ層105の厚さは、成長中に供給した原料により均一な厚さの膜が形成されたと仮定した場合の膜の厚さを意味する。厚さdQDi及びdSBiは、例えばモノレイヤー(ML)単位で表される。
【0019】
量子ドット104の歪量εQDiは、下記の式で算出される。
【0020】
【数2】
【0021】
スペーサ層105の歪量εSBiは、下記の式で算出される。
【0022】
【数3】
【0023】
ここで、aInAs、aInGaAsP、及びaInPは、それぞれ、InAs、InGaAsP、及びInPの格子定数である。InGaAsPの格子定数は、InGaAsPの各元素の組成比から格子定数を求め、求められた格子定数を用いて算出することができる。なお、「格子定数」とは、半導体材料に歪が発生していないと仮定したときの格子定数を意味する。
【0024】
圧縮歪が正、引張歪が負になる。量子ドット104を形成するInAsは、基板のInPに対して格子定数が大きく、圧縮歪を持つ。スペーサ層105を形成するInGaAsPは、基板のInPに対して格子定数が小さく、引張歪を持つ。スペーサ層105が、量子ドット104に起因する圧縮歪を補償する。
【0025】
以下、スペーサ層105の引張歪量は、マイナス記号を省略して示し、引張歪量の絶対値が大きいほど引張歪量が大きい(または高い)と表現し、引張歪量の絶対値が小さいほど引張歪量が小さい(または低い)と表現する。後述の実施例についても、コラムナ量子ドットの平均歪量は同様に定義される。コラムナ量子ドットの平均歪量を、単に「平均歪量」と呼ぶこともある。
【0026】
比較例のコラムナ量子ドット106では、積層された全スペーサ層105で、引張歪量が均一に設定されている。コラムナ量子ドット106が1段形成された試料を、スペーサ層105の引張歪量を変化させて、つまり、平均歪量を変化させて複数作製し、これらの試料のPL発光波長を測定した。
【0027】
各試料のスペーサ層105の引張歪量は、0.4%、0.6%、0.8%、1.0%、1.2%、及び1.4%とした。なお、InAs量子ドット104の圧縮歪量は3.2%である。スペーサ層105の引張歪量が大きくなるほど、量子ドット104に起因する圧縮歪が補償されて、平均歪量(補償されずに残る圧縮歪量)が小さくなる。
【0028】
図14は、比較例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。横軸が、%単位で表した平均歪量であり、縦軸が、μm単位で表したPL発光波長である。平均歪量が小さくなるほど、つまり、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、PL発光波長が短くなっている。例えば、Cバンド(1.53μm〜1.565μm)に含まれる波長1.55μm程度でPL発光が得られる平均歪量は0.775%(スペーサ層引張歪量は0.6%)である。
【0029】
次に、所望のPL発光波長を1.55μmと想定し、平均歪量0.775%を採用して、コラムナ量子ドットの多段積層を試みた。厚さ40nmのInGaAs中間層を介し、3段のコラムナ量子ドットの積層を試みたところ、コラムナ量子ドットに起因する圧縮歪が厚さ方向に伝播して、良好な結晶状態を保った成長が困難であった。
【0030】
一方、平均歪量を0.654%まで下げた(スペーサ層引張歪量を0.8%まで増やした)条件でも、厚さ40nmのInGaAs中間層を介し、3段のコラムナ量子ドットの積層を試みたところ、良好な結晶状態を保った成長が可能であった。
【0031】
このように、コラムナ量子ドットを良好に多段積層するには、平均歪量を低下させることが望ましいとわかった。ただし、平均歪量を例えば0.654%まで下げたことに伴って、PL発光波長が1.529μmとなり、所望の波長より短波長になってしまう。平均歪量を低下させても発光波長が短波長側にずれにくい、あるいは、所望の発光波長に対応する平均歪量を低減することができるコラムナ量子ドット構造が望まれる。
【0032】
次に、第1実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。
【0033】
図1は、第1実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0034】
図2は、第1実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0035】
図1及び図2を参照しながら、製造工程に沿って説明を進める。結晶成長方法として、MOVPEを用いることができる。III族元素原料として、トリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルガリウム(TEGa)、V族元素原料として、アルシン(AsH3)、フォスフィン(PH3)を用いることができる。n型ドーパント原料としてモノシラン(SiH4)、p型ドーパント原料としてジエチルジンク(DEZn)、キャリアガスとして水素(H2)を用いることができる。成長圧力は、例えば50Torrである。
【0036】
n型InP(001)基板1を、MOVPE成長炉に装備して、PH3雰囲気下で成長温度(成長表面の温度)を630℃まで昇温する。
【0037】
次に、TMIn及びSiH4も供給して、ドーピング濃度が5.0×1017cm−3のn型InPバッファ層2を、厚さ500nm形成する。
【0038】
TMIn及びSiH4の供給を停止し、PH3雰囲気下で成長温度を430℃まで下げる。次に、III族ガスをTMIn及びTEGaとし、V族ガスをAsH3及びPH3として、バッファ層2上に、組成波長が1.1μmで歪量が0%のノンドープInGaAsP光閉じ込め層3を、厚さ30nm形成する。
【0039】
次に、供給ガスをTMIn及びAsH3とし、光閉じ込め層3上に、InAs量子ドット4を形成する。InAs量子ドット4の成長条件は、例えば、供給量2.5ML相当、成長速度0.045μm/h、V/III比30である。
【0040】
この条件により、横方向寸法が[110]方向に20nm程度、[−110]方向に30nm程度で、面内密度が7.5×1010cm−2程度の量子ドット4が形成される。量子ドット4はS−Kモードにより成長し、量子ドット4の外側には、濡れ層4aが残る。
【0041】
次に、供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、量子ドット4を覆って光閉じ込め層3上に、組成波長が1.0μmで、引張歪量が相対的に低い0.4%となるような組成の、低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lの成長条件は、例えば、供給量2.5ML相当、成長速度0.1μm/h、V/III比1600である。
【0042】
なお、説明の便宜上、図1に示すように、スペーサ層を引張歪量の相対的な大小を区別せずに、「スペーサ層5」と表すこともある。図2には、スペーサ層を、引張歪量の相対的な大小を区別して示す。
【0043】
このようにして、量子ドット4上に低引張歪スペーサ層5Lが積層された低引張歪量子ドット部QDLが形成される。低引張歪スペーサ層5Lが積層された量子ドット4を、量子ドット4Lと呼ぶこともある。
【0044】
次に、再び供給ガスをTMIn及びAsH3とし、低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。InAs量子ドット4の成長条件は、例えば、最初に形成した量子ドット4と同様である。ただし、下から2番目以降の量子ドット4については、供給量を例えば1.2ML相当に減らす。
【0045】
次に、再び供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、組成波長が1.0μmで、引張歪量が相対的に高い2.4%となるような組成の、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hの成長条件は、例えば、低引張歪InGaAsPスペーサ層5と同様である。
【0046】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に、量子ドット4上に高引張歪スペーサ層5Hが積層された高引張歪量子ドット部QDHが形成される。高引張歪スペーサ層5Hが積層された量子ドット4を、量子ドット4Hと呼ぶこともある。
【0047】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後4回繰り返す。
【0048】
次に、最上の高引張歪量子ドット部QDH上に、低引張歪量子ドット部QDLを形成する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。このようにして、12層の量子ドット4と、11層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。
【0049】
第1実施例のコラムナ量子ドット6は、低引張歪スペーサ層5Lと高引張歪スペーサ層5Hとが1層ずつ交互に積層された構造、つまり、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層された構造を有する。
【0050】
その後、供給ガスをTMIn、TEGa、AsH3、及びPH3とし、1段目のコラムナ量子ドット6を覆って、組成波長が1.1μmで歪量が0%のInGaAsP中間層7を、厚さ30nm形成する。
【0051】
コラムナ量子ドット6形成、中間層7形成を1組とした工程を、その後2回繰り返す。このようにして、3段のコラムナ量子ドット層6A、6B、6Cが中間層7を介して積層された、コラムナ量子ドットの多段積層構造が形成される。なお、最上に形成されたInGaAsP層は、中間層7でなく、光閉じ込め層3と呼ぶこととする。
【0052】
下側の光閉じ込め層3、1段目のコラムナ量子ドット層6A、下側の中間層7、2段目のコラムナ量子ドット層6B、上側の中間層7、3段目のコラムナ量子ドット6C、及び上側の光閉じ込め層3を含んで、活性層8が形成される。
【0053】
その後、PH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温し、TMIn、PH3、及びDEZnを供給して、上側の光閉じ込め層3上に、ドーピング濃度が5.0×1017cm−3のp型InPクラッド層9を、厚さ200nm形成する。
【0054】
さらに、図3及び図4も参照して説明を進める。
【0055】
図3は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。
【0056】
図4は、第1実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図である。
【0057】
図3に示すように、p型クラッド層9上に、[110]方向に延在し長さが100μm、幅が1.5μmの誘電体マスクMSKを形成し、誘電体マスクMSKを用いてドライエッチングにより、誘電体マスクMSKの外側部分を基板1の途中深さまで除去して、ストライプメサ構造を形成する。
【0058】
次に、誘電体マスクMSKを形成した状態で、メサの両脇にp型InP埋め込み層10、n型InPブロック層11、及びp型InP層12を成長させて、電流狭窄構造を形成する。p型InP埋め込み層10〜p型InP層12の形成には、公知の半導体埋め込み成長技術を用いることができる。その後、誘電体マスクMSKを除去する。
【0059】
図4に示すように、さらに、p型InPクラッド層9上にp型InGaAsコンタクト層13を形成し、p型InGaAsコンタクト層13上にp側電極14pを形成し、n型InP基板1の裏面上にn側電極14nを形成し、光入射側及び光出射側の端面に反射防止膜15を形成する。このようにして、第1実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0060】
図2に示されたような、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層されたコラムナ量子ドットが、1段形成された試料を作製して、PL発光波長を測定した。
【0061】
低引張歪スペーサ層5Lの引張歪量を0.4%と一定にし、高引張歪スペーサ層5Hの引張歪量を1.4%、2.4%と変化させて、2種の試料を作製した。低引張歪量0.4%で高引張歪量1.4%の試料は、平均歪量0.61%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量2.4%の試料は、平均歪量0.33%(圧縮歪)である。
【0062】
図5は、第1実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係を示すグラフである。横軸が、%単位で表した平均歪量であり、縦軸が、μm単位で表したPL発光波長である。第1実施例の結果を、三角のプロットで示す。丸のプロットで示されているのは、図14に示したのと同様な、比較例の結果である。
【0063】
第1実施例の平均歪量0.61%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)の試料は、比較例とほぼ同様な、波長1.52μm程度の発光を示した。第1実施例の平均歪量0.33%(低引張歪量0.4%/高引張歪量2.4%)の試料は、平均歪量の等しい比較例の試料に比べて長波長の、波長1.50μm程度の発光を示した。
【0064】
このように、第1実施例のコラムナ量子ドットは、比較例に比べ、平均歪量を低下させたときの、発光波長の短波長化が抑制されていることがわかった。あるいは、所望の発光波長(例えば1.50μm)を得るときの平均歪量を、比較例に比べて小さくできることがわかった。
【0065】
次に、第1実施例のコラムナ量子ドットが、比較例に比べ、等しい平均歪量で長波長のPL発光を示した理由について考察する。なお、この理由は明らかではなく、下記の考察は1つの考え方を示すものである。
【0066】
比較例のスペーサ層の引張歪量の大きさをε0とし、第1実施例の低引張歪スペーサ層及び高引張歪スペーサ層の歪量の大きさをそれぞれε1及びε2とする。平均歪量が等しいとき、これらの引張歪量の大きさは、ε1<ε0<ε2を満たす。
【0067】
比較例の量子ドットの伝導帯エネルギー準位をE0とし、第1実施例の、低引張歪スペーサ層5Lが積層された量子ドット4L、及び、高引張歪スペーサ層5Hが積層された量子ドット4Hの伝導帯エネルギー準位を、それぞれE1及びE2とする。
【0068】
比較例よりわかるように、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、PL発光波長が短波長化する傾向がある。これより、スペーサ層の引張歪量が大きくなるほど、スペーサ層に覆われる量子ドットのエネルギーギャップが大きくなり、量子ドットの伝導帯エネルギー準位が上昇するのではないかと推測される。従って、量子ドットの伝導帯エネルギー準位について、E1<E0<E2となると考えられる。
【0069】
図6は、比較例及び第1実施例のコラムナ量子ドットの、量子ドットに関する概略的な伝導帯バンドラインナップである。平均歪量が等しい場合の伝導帯バンドラインナップを、並べて示す。左方が比較例、右方が第1実施例である。「InGaAsP SCH」は、光閉じ込め層(または中間層)を示す。
【0070】
比較例のコラムナ量子ドットに形成される結合量子準位をEuとする。第1実施例のコラムナ量子ドットに形成される、量子ドット4Lの結合量子準位をEm、量子ドット4Hの結合量子準位をEnとする。量子ドット4Lによる結合量子準位Emは、量子ドット4Lの低いエネルギー準位E1の影響を強く受けて、量子ドット4Hの高いエネルギー準位E2の影響を受けにくい状態になると考えられる。
【0071】
その結果、結合量子準位Emは、結合量子準位EuよりもΔEだけ低いエネルギー準位となり、第1実施例のコラムナ量子ドットの方が、等しい平均歪量を持つ比較例のコラムナ量子ドットよりも長波長で発光すると考えられる。
【0072】
なお、図5に示したように、第1実施例の試料でも、平均歪量0.61%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)のものは、比較例とほぼ同程度の波長で発光した。これは、高引張歪スペーサ層の歪量が小さいときは、量子ドット4Lと量子ドット4Hの伝導帯バンドオフセットが小さく、波動関数の結合によるエネルギー準位低下が少ないためであると思われる。
【0073】
次に、第2実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。主に第1実施例との違いについて説明する。第2実施例は、第1実施例と、コラムナ量子ドット6における低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5Hの積層順序が異なる。
【0074】
コラムナ量子ドットの多段積層構造や、半導体光増幅器としての構造は、第1実施例と同様であり、コラムナ量子ドット6の構造を第2実施例のものと読み替えた上で、図1、図3及び図4を流用して、第2実施例でも参照する。また、参照符号付与の煩雑さを減らすため、第1実施例と対応が明確な部材等について、参照符号を流用する。量子ドット4、低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5H等の形成方法は、第1実施例と同様である。
【0075】
図7は、第2実施例のコラムナ量子ドット6の1つ分を拡大して示す概略断面図である。第1実施例と同様にして、n型InP基板1上に、下方からn型InPバッファ層2、InGaAsP光閉じ込め層3を形成し、InGaAsP光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4を形成し、InAs量子ドット4上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。このようにして、まず、低引張歪量子ドット部QDLが形成される。
【0076】
次に、低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。なお、第1実施例と同様に、下から2番目以降の量子ドット4については、供給量を例えば1.2ML相当に減らす。
【0077】
次に、量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、再び低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に低引張歪量子ドット部QDLが重ねられる。
【0078】
次に、下から2番目の低引張歪スペーサ層5L上に、下から3番目のInAs量子ドット4を形成する。次に、下から3番目の量子ドット4を覆って低引張歪スペーサ層5L上に、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成して、高引張歪量子ドット部QDHを形成する。第2実施例では、このようにして、低引張歪量子ドット部QDLが2層積層され、その上に高引張歪量子ドット部QDHが1層積層された構造が形成される。
【0079】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後2回繰り返す。
【0080】
最上の高引張歪量子ドット部QDHの上に、さらに2層の低引張歪量子ドット部QDLを積層する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、量子ドット4を形成する。このようにして、12層の量子ドット4と、11層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。
【0081】
第2実施例のコラムナ量子ドット6は、2層の低引張歪スペーサ層5Lと、1層の高引張歪スペーサ層5Hとが交互に積層された構造、つまり、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層された構造を有する。
【0082】
その後、第1実施例と同様に、InGaAsP中間層7を介し3段のコラムナ量子ドット層6A〜6Cを積層して活性層8を形成し、p型InPクラッド層9を形成して、図1に示したような構造を得る。
【0083】
さらに、第1実施例で図3、図4を参照しながら説明した工程と同様にして、ストライプメサ構造を形成し、p型InGaAsコンタクト層13、p側電極14p、n側電極14n、及び反射防止膜15を形成する。このようにして、第2実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0084】
図7に示されたような、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層されたコラムナ量子ドットが、1段形成された試料を作製して、PL発光波長を測定した。
【0085】
低引張歪スペーサ層5Lの引張歪量を0.4%と一定にし、高引張歪スペーサ層5Hの引張歪量を1.4%、2.4%、3.4%と変化させて、3種の試料を作製した。低引張歪量0.4%で高引張歪量1.4%の試料は、平均歪量0.74%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量2.4%の試料は、平均歪量0.56%(圧縮歪)であり、低引張歪量0.4%で高引張歪量3.4%の試料は、平均歪量0.39%(圧縮歪)である。
【0086】
再び図5を参照する。図5に、第2実施例のコラムナ量子ドットの平均歪量とPL発光波長との関係も示す。第2実施例の結果を、四角のプロットで示す。
【0087】
第2実施例の平均歪量0.74%(低引張歪量0.4%/高引張歪量1.4%)の試料は、比較例とほぼ同様な、波長1.542μm程度の発光を示した。第2実施例の平均歪量0.56%(低引張歪量0.4%/高引張歪量2.4%)の試料、及び、平均歪量0.39%(低引張歪量0.4%/高引張歪量3.4%)の試料は、それぞれ、平均歪量の等しい比較例の試料に比べて長波長の、波長1.538μm程度及び波長1.526μm程度の発光を示した。
【0088】
第2実施例のコラムナ量子ドットでも、第1実施例と同様に、比較例に比べ、平均歪量を低下させたときの発光波長の短波長化が抑制されている。平均歪量低下に伴う発光波長短波長化の傾きは、第2実施例の方が第1実施例よりも緩やかである傾向が見られる。
【0089】
第2実施例では、第1実施例に比べ、等しい平均歪量でより長波長の発光が得られる。所望の長波長の発光波長を得るとき、平均歪量をより小さくできるといえる。
【0090】
次に、第2実施例のコラムナ量子ドットが、第1実施例に比べ、等しい平均歪量でより長波長のPL発光を示した理由について考察する。なお、この理由は明らかではなく、下記の考察は1つの考え方を示すものである。
【0091】
第1実施例では、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層されている。低引張歪量子ドット部QDLの含む量子ドット4Lは、それを覆う低引張歪スペーサ層5Lから作用を受けるとともに、直下の高引張歪量子ドット部QDHの高引張歪スペーサ層5Hからも、やや作用を受ける。そのため、低引張歪スペーサ層5Lから受ける作用と、高引張歪スペーサ層5Hから受ける作用とが、やや平均化されると考えられる。なお、これは、量子ドット4Hについても同様である。これに起因して、量子ドット4Lと量子ドット4Hのエネルギー準位差が減少すると考えられる。
【0092】
一方、第2実施例では、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層されている。2層重なった低引張歪量子ドット部QDLの、上側の低引張歪量子ドット部QDLの含む量子ドット4L(これを、量子ドット4LUと呼ぶこととする)は、それを覆うスペーサ層、及び、その直下のスペーサ層の両方とも、低引張歪スペーサ層5Lである。このため、量子ドット4LUは、高引張歪スペーサ層5Hによる影響を受けにくく、エネルギー準位が低く保たれやすいと考えられる。従って、第2実施例では、第1実施例に比べて、量子ドット4Lと量子ドット4Hのエネルギー準位差が減少しにくく、低い結合量子準位が得られやすいのではないかと考えられる。
【0093】
なお、第2実施例では、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとの交互積層構造としたが、低引張歪量子ドット部QDLは3層以上積層することもでき、高引張歪量子ドット部QDHは2層以上積層することもできると考えられる。ただし、低引張歪量子ドット部QDLのある積層部分L1と、この直上に配置された低引張歪量子ドット部QDLの積層部分L2との間に配置される、高引張歪量子ドット部QDHの積層部分は、積層部分L1に含まれる量子ドット4Lと、積層部分L2に含まれる量子ドット4Lとが、互いに量子力学的に結合できる範囲の厚さとする。
【0094】
以上、第1及び第2実施例で説明したように、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが厚さ方向に交互に複数配置された構造を有するコラムナ量子ドットを形成することにより、スペーサ層の引張歪量が均一なコラムナ量子ドットに比べて、平均歪量の低下に伴う発光波長の短波長化を抑制でき、あるいは、等しい平均歪量で長波長の発光を得ることが容易になる。
【0095】
所望の発光波長を得るとき、平均歪量を小さくできることにより、良好な結晶性を保ってコラムナ量子ドットを多段積層することが容易になる。なお、平均歪量を小さくできることにより、コラムナ量子ドットを多段積層する場合に限らず、コラムナ量子ドット上方に形成する半導体層の結晶品質を高めることができる。
【0096】
また、第2実施例で説明したように、低引張歪量子ドット部QDLを複数層重ねることにより(ある高引張歪量子ドット部QDHと、その直上の高引張歪量子ドット部QDHとの間に、複数層重ねた低引張歪量子ドット部QDLを配置することにより)、所定の平均歪量での発光波長を、より長波長にしやすい。
【0097】
なお、第1、第2実施例では、n型InP(001)基板を用いたが、その他、p型InP(001)基板、高抵抗(SI)InP(001)基板等を適用することもできる。その場合は、導電型、電極配置、埋め込み構造等を、適宜変更することができる。
【0098】
さらに、コラムナ量子ドットを形成する基板として、InP基板以外の他の半導体基板を用いることもできると考えられる。
【0099】
次に、第3及び第4実施例として、GaAs基板上へのコラムナ量子ドット形成について説明する。なお、参照符号付与の煩雑さを減らすため、第1、第2実施例と対応が明確な部材等について、参照符号を流用する。
【0100】
第3実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。
【0101】
図8は、第3実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0102】
図9は、第3実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0103】
図8及び図9を参照しながら、製造工程に沿って説明を進める。結晶成長方法として、第1、第2実施例と同様にMOVPEを用いることができ、原料も、第1、第2実施例と同様ものを使用することができる。
【0104】
n型GaAs(001)基板1を、MOVPE成長炉に装備して、AsH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温する。
【0105】
次に、TEGa及びSiH4も供給して、n型GaAsバッファ層2を、厚さ500nm形成する。
【0106】
TEGa及びSiH4の供給を停止し、AsH3雰囲気下で成長温度を430℃まで下げる。次に、供給ガスをTEGa及びAsH3として、バッファ層2上に、ノンドープGaAs光閉じ込め層3を、厚さ40nm形成する。
【0107】
次に、第1実施例と同様にして、光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4(4L)を形成し、量子ドット4(4L)上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成し、低引張歪InGaAsPスペーサ層5L上にInAs量子ドット4(4H)を形成し、量子ドット4(4H)上に高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。
【0108】
InAs量子ドット4の形成条件は、例えば第1実施例と同様である。低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lは、例えば、組成波長が0.75μmで、引張歪量が0.4%となるような組成とし、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hは、例えば、組成波長が0.75μmで、引張歪量が1.0%となるような組成とする。
【0109】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDL上に高引張歪量子ドット部QDHが積層された構造が形成される。
【0110】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後3回繰り返す。次に、最上の高引張歪量子ドット部QDH上に、低引張歪量子ドット部QDLを形成する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4を形成する。このようにして、10層の量子ドット4と、9層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。第3実施例のコラムナ量子ドット6は、波長1.06μm程度での発光が期待される。
【0111】
第3実施例のコラムナ量子ドット6は、第1実施例と同様に、低引張歪量子ドット部QDLと高引張歪量子ドット部QDHとが1層ずつ交互に積層された構造を有する。
【0112】
その後、供給ガスをTEGa及びAsH3とし、1段目のコラムナ量子ドット6を覆って、GaAs中間層7を、例えば厚さ40nm形成する。
【0113】
コラムナ量子ドット6形成、中間層7形成を1組とした工程を、その後3回繰り返す。このようにして、4段のコラムナ量子ドット層6A〜6Dが中間層7を介して積層された、コラムナ量子ドットの多段積層構造が形成される。なお、最上に形成されたGaAs層は、中間層7でなく、光閉じ込め層3と呼ぶこととする。
【0114】
下側の光閉じ込め層3、1段目のコラムナ量子ドット層6A、下から1番目の中間層7、2段目のコラムナ量子ドット層6B、下から2番目の中間層7、3段目のコラムナ量子ドット層6C、下から3番目の中間層7、4段目のコラムナ量子ドット層6D、及び上側の光閉じ込め層3を含んで、活性層8が形成される。
【0115】
その後、AsH3雰囲気下で成長温度を630℃まで昇温し、TEGa、AsH3、及びDEZnを供給して、上側の光閉じ込め層3上に、p型GaAsクラッド層9を、例えば厚さ1.5μm形成する。
【0116】
図10も参照して説明を進める。図10は、第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光の入射方向から見た概略断面図である。p型GaAsクラッド層9上に、p型GaAsコンタクト層13を形成する。次に、p側電極形成領域以外をp型クラッド層9の途中深さまでエッチングする。残ったp型コンタクト層13上にp側電極14pを形成し、n型GaAs基板1の裏面上にn側電極14nを形成し、リッジ構造とする。
【0117】
さらに、図4も流用して参照し、説明を進める。第3実施例の半導体光増幅器の、増幅される光が入射する面を真横から見た(厚さ方向の)概略断面図は、第1、第2実施例の半導体光増幅器と同様に、図4のようなものである。光入射側及び光出射側の端面に、反射防止膜15を形成する。このようにして、第3実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0118】
第4実施例によるコラムナ量子ドット、及びそれを利用した半導体光増幅器について説明する。第4実施例は、第3実施例と、コラムナ量子ドット6における低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5Hの積層順序が異なる。半導体光増幅器としての構造は、第3実施例と同様であり、図11及び図4を流用して、第4実施例でも参照する。量子ドット4、低引張歪スペーサ層5L、高引張歪スペーサ層5H等の形成方法は、第3実施例と同様である。
【0119】
図11は、第4実施例の半導体光増幅器が含む、コラムナ量子ドットの多段積層部分を示す概略断面図である。
【0120】
図12は、第4実施例のコラムナ量子ドット1つ分を拡大して示す概略断面図である。
【0121】
第3実施例と同様にして、n型GaAs基板1上に、下方からn型GaAsバッファ層2、GaAs光閉じ込め層3を形成し、GaAs光閉じ込め層3上にInAs量子ドット4を形成し、InAs量子ドット4上に低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。
【0122】
低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4(4L)を形成し、量子ドット4(4L)上に、再び低引張歪InGaAsPスペーサ層5Lを形成する。
【0123】
下から2番目の低引張歪スペーサ層5L上に、InAs量子ドット4(4H)を形成し、量子ドット4(4H)上に、高引張歪InGaAsPスペーサ層5Hを形成する。
【0124】
このようにして、低引張歪量子ドット部QDLが2層積層され、その上に高引張歪量子ドット部QDHが1層積層された構造が形成される。
【0125】
低引張歪量子ドット部QDLの形成、低引張歪量子ドット部QDLの形成、及び、高引張歪量子ドット部QDHの形成を1組とした工程を、その後1回行う。
【0126】
最上の高引張歪量子ドット部QDHの上に、さらに2層の低引張歪量子ドット部QDLを積層する。最後に、最上の低引張歪スペーサ層5L上に、量子ドット4を形成する。このようにして、9層の量子ドット4と、8層のスペーサ層5とが交互に積層されたコラムナ量子ドット6が形成される。第4実施例のコラムナ量子ドット6は、波長1.2μm〜1.3μm程度での発光が期待される。
【0127】
第4実施例のコラムナ量子ドット6は、第2実施例と同様に、2層の低引張歪量子ドット部QDLと、1層の高引張歪量子ドット部QDHとが交互に積層された構造を有する。
【0128】
その後、第3実施例と同様に、GaAs中間層7を介し4段のコラムナ量子ドット層6A〜6Dを積層して活性層8を形成し、p型GaAsクラッド層9を形成して、図11に示したような構造を得る。
【0129】
さらに、第3実施例で図10、図4を参照しながら説明した工程と同様な工程を経て、第4実施例の半導体光増幅器が形成される。
【0130】
なお、第3、第4実施例では、n型GaAs基板を用いたが、その他、p型GaAs基板、高抵抗(SI)GaAs基板等を適用することもできる。その場合は、導電型、電極配置等を適宜変更することができる。
【0131】
なお、構造パラメータ、材料、デバイス構造等は、第1〜第4実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0132】
例えば、InAs量子ドットの供給量、InGaAsPスペーサ層の組成波長、厚さ、歪量は、第1〜第4実施例の値に限定されるものではない。低引張歪スペーサ層と高引張歪スペーサ層の組成波長を等しくすることは必須ではない。
【0133】
また例えば、量子ドットの材料として、InAsの他に、InSb、InGaAs、InGaAsSb等の適用も可能であると考えられる。組成を明示して表すと、量子ドットの材料として、InxGa1−xAsySb1−y(0<x≦1,0≦y≦1)を用いることができると考えられる。ただし、量子ドットの面内の対称性が良いという観点で、InAsが好ましい。
【0134】
また例えば、スペーサ層の材料として、InGaAsPの他に、AlGaInAsの適用も可能であると考えられる。ただし、量子ドットの成長温度が低温の場合、スペーサ層の結晶性向上の観点からは、InGaAsPがより好ましい。
【0135】
また例えば、第1〜第4実施例の半導体素子として半導体光増幅器を示したが、同様な製造工程で、両端面を劈開もしくは高反射膜コートすることにより、半導体レーザの作製も可能である。
【0136】
なお、第1〜第4実施例では、コラムナ量子ドットの最上部を、量子ドットがスペーサ層に覆われない構造としたが、コラムナ量子ドットの最上部を、量子ドットがスペーサ層に覆われた構造とすることもできる。
【0137】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0138】
以上説明した第1〜第4実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記コラムナ量子ドットは、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
(付記2)
前記コラムナ量子ドットは、ある前記第2部と、その直上の前記第2部との間に、複数の前記第1部が積層されている構造を有する付記1に記載の半導体素子。
(付記3)
前記コラムナ量子ドットは、複数積層された前記第1部と、1層の前記第2部とが、交互に積層された構造を有する付記1または2に記載の半導体素子。
(付記4)
前記半導体基板は、InPで形成されている付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記5)
前記半導体基板は、GaAsで形成されている付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記6)
前記第1量子ドット及び前記第2量子ドットは、InxGa1−xAsySb1−y(0<x≦1,0≦y≦1)で形成されている付記1〜5のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記7)
前記第1スペーサ層及び前記第2スペーサ層は、InGaAsPまたはAlGaInAsで形成されている付記1〜6のいずれか1つに記載の半導体素子。
(付記8)
半導体基板と、
前記半導体基板上方に、中間層を介して複数段重ねられたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの各々は、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
(付記9)
さらに、
前記半導体基板と前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットとの間に配置された第1導電型の第1半導体層と、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの上方に配置され前記第1導電型と反対の第2導電型の第2半導体層と
を有し、
半導体光増幅器または半導体レーザである付記8に記載の半導体素子。
(付記10)
半導体基板の上方に、第1量子ドットを形成し、前記第1量子ドット上に、前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層を積層して、前記第1量子ドット上に前記第1スペーサ層が積層された第1部を形成する工程と、
前記第1スペーサ層の上方に、第2量子ドットを形成し、前記第2量子ドット上に、前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層を積層して、前記第2量子ドット上に前記第2スペーサ層が積層された第2部を形成する工程と
を有し、
前記第1部と前記第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造が形成されるように、前記第1部を形成する工程と、前記第2部を形成する工程とを繰り返す半導体素子の製造方法。
【符号の説明】
【0139】
1 基板
2 バッファ層
3 光閉じ込め層
4 量子ドット
4L 低引張歪スペーサ層が積層された量子ドット
4H 高引張歪スペーサ層が積層された量子ドット
5 スペーサ層
5L 低引張歪スペーサ層
5H 高引張歪スペーサ層
QDL 低引張歪量子ドット部
QDH 高引張歪量子ドット部
6 コラムナ量子ドット
6A、6B、6C、6D コラムナ量子ドット層
7 中間層
8 活性層
9 クラッド層
10 p型InP埋め込み層
11 n型InPブロック層
12 p型InP層
13 コンタクト層
14p、14n 電極
15 反射防止膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記コラムナ量子ドットは、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
【請求項2】
前記コラムナ量子ドットは、ある前記第2部と、その直上の前記第2部との間に、複数の前記第1部が積層されている構造を有する請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板上方に、中間層を介して複数段重ねられたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの各々は、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
【請求項4】
さらに、
前記半導体基板と前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットとの間に配置された第1導電型の第1半導体層と、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの上方に配置され前記第1導電型と反対の第2導電型の第2半導体層と
を有し、
半導体光増幅器または半導体レーザである請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
半導体基板の上方に、第1量子ドットを形成し、前記第1量子ドット上に、前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層を積層して、前記第1量子ドット上に前記第1スペーサ層が積層された第1部を形成する工程と、
前記第1スペーサ層の上方に、第2量子ドットを形成し、前記第2量子ドット上に、前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層を積層して、前記第2量子ドット上に前記第2スペーサ層が積層された第2部を形成する工程と
を有し、
前記第1部と前記第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造が形成されるように、前記第1部を形成する工程と、前記第2部を形成する工程とを繰り返す半導体素子の製造方法。
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上方に形成されたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記コラムナ量子ドットは、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
【請求項2】
前記コラムナ量子ドットは、ある前記第2部と、その直上の前記第2部との間に、複数の前記第1部が積層されている構造を有する請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板上方に、中間層を介して複数段重ねられたコラムナ量子ドットと
を有し、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの各々は、
第1量子ドットと、前記第1量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層とで形成された第1部と、
第2量子ドットと、前記第2量子ドット上に積層され前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層とで形成された第2部とが、
厚さ方向に交互に配置された構造を有する半導体素子。
【請求項4】
さらに、
前記半導体基板と前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットとの間に配置された第1導電型の第1半導体層と、
前記複数段重ねられたコラムナ量子ドットの上方に配置され前記第1導電型と反対の第2導電型の第2半導体層と
を有し、
半導体光増幅器または半導体レーザである請求項3に記載の半導体素子。
【請求項5】
半導体基板の上方に、第1量子ドットを形成し、前記第1量子ドット上に、前記半導体基板に対し引張歪量を持つ第1スペーサ層を積層して、前記第1量子ドット上に前記第1スペーサ層が積層された第1部を形成する工程と、
前記第1スペーサ層の上方に、第2量子ドットを形成し、前記第2量子ドット上に、前記半導体基板に対し前記第1スペーサ層より大きい引張歪量を持つ第2スペーサ層を積層して、前記第2量子ドット上に前記第2スペーサ層が積層された第2部を形成する工程と
を有し、
前記第1部と前記第2部とが、厚さ方向に交互に配置された構造が形成されるように、前記第1部を形成する工程と、前記第2部を形成する工程とを繰り返す半導体素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図14】
【公開番号】特開2012−134384(P2012−134384A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286343(P2010−286343)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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