説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】 SiC基板に対して良好なオーミック接触を得ることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 n型SiC層1の露出面の状態を荒らす工程と、荒らされたn型SiC層1の露出面に電極を形成する工程とを有し、前記荒らす工程は、前記露出面についての研磨処理又はレーザー照射Lを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以下「SiC」と称する)は広いバンドギャップ及び高い最大電界強度を持つため、シリコン半導体に対してシリーズ抵抗分を下げられる特色を持つ。このため、SiCについて、大電力、高耐圧の電力用デバイスへの応用が展開されている。しかしながら、SiCについての適切なオーミック電極構造はまだなく、高電圧下で大電流での駆動が可能なSiCからなる半導体素子の開発が期待されている。
【0003】
SiCのオーミック電極について低抵抗化を図るための技術としては、SiC半導体装置における電極領域に、[Si1−X](ここで、X>0.5)の層を設けたものが考え出されている(例えば、特許文献1参照)。
また、半導体と金属膜(電極)とのコンタクト部分において、その半導体の表層部に欠陥層によるエネルギー準位が形成された構成とすることで、コンタクト抵抗率の低減を図ったものも考え出されている(例えば、特許文献2参照)。
また、現状では、SiC基板に電極を形成する場合、先ずSiC基板の裏面にNi(ニッケル)などの金属を蒸着し、その後1000℃で焼鈍してオーミック接触を形成しているものが多い。次いで、SiC基板の表面側にデバイス構造を形成して、半導体装置を完成させている。
【特許文献1】特開2000−101099号公報
【特許文献2】特開2000−340520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記Niを蒸着し焼鈍する方法では、SiC基板の表面側のプロセスがNiなどによって汚染される可能性がある。すなわち、上記SiCに対してNiを蒸着して加熱する方法では、SiCとNiが{SiC+Ni → Ni−Si化合物+C(炭素)}という化学反応をおこし、上記加熱後に黒鉛の微粉末が未反応NiとNi−Si化合物層との間に層状に生じる。すると、SiC基板のデバイス構造形成プロセスなどにおいて上記黒鉛の微粉末の層で剥離が生じ易くなってしまう。この黒鉛の微粉末の層については除去するのが好ましいがその黒鉛微粉末に対する適切な溶解液は存在しない。したがって、上記方法では、SiC基板の表面側のデバイス形成プロセスなどで不具合が生じる可能性があるという問題点がある。
【0005】
また、上記特許文献1,2に記載の技術では、SiCのオーミック電極についての低抵抗化及び製造容易化が不十分であり、高電圧・大電流での駆動が可能なSiC半導体装置として十分ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、SiC基板に対して良好なオーミック接触を得ることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、SiC半導体装置におけるデバイスプロセスにおいて汚染を防止でき、且つ、SiC基板と電極間において良好なオーミック接触を得ることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、SiC基板の露出面の状態を荒らす工程と、荒らされた前記露出面に電極を形成する工程とを有し、前記荒らす工程は、前記露出面についての研磨処理を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記研磨処理がサンドブラストであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記研磨処理がグラインディングであることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記研磨処理がラッピングであることを特徴とする。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項5に記載の発明は、SiC基板の露出面の状態を荒らす工程と、荒らされた前記露出面に電極を形成する工程とを有し、前記荒らす工程は、前記露出面を加熱して該露出面の物質の一部を蒸発させる処理を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の半導体装置の製造方法において、前記蒸発させる処理が、前記露出面にレーザー照射をすることで行われることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、前記レーザー照射を前記露出面の特定領域について行うことで、該特定領域について前記荒らす工程を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法において、前記荒らす工程の前に、前記SiC基板にデバイスを形成する工程を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項9に記載の発明は、第1の主面と該第1の主面に背向する第2の主面とを有するSiC基板と、前記第1の主面上に形成されたデバイスと、前記第2の主面上に形成された電極とを有し、前記第2の主面の少なくとも電極形成領域は、該第2の主面について、サンドブラスト、グラインディング、ラッピング、レーザー照射のいずれかを行うことで生じる荒さが形成されていることを特徴とする半導体装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、研磨法又はレーザー照射などによりSiC基板の露出面を荒らし、その荒れた面(凸凹した面)に電極を形成するので、SiC基板に対して低抵抗な良好なオーミック接触を、簡便な工程で、得ることができる。
また、本発明は、SiC基板にデバイスを形成してから、露出面を荒らし、その露出面に電極を形成することができる。これにより、本発明は、荒らす工程又は電極を形成する工程によって汚染が発生する前に、第1の主面にデバイスを形成でき、デバイス形成時の汚染防止とSiC基板に対する電極のオーミック接触向上との両立を図ることが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。本実施形態では、一例として、ショットキーダイオード(SBD)の製造方法を挙げて説明する。すなわち、本実施形態では、ショットキーダイオードの裏面電極を本発明に係る製造方法で製造することを特徴とする。先ず、本実施形成の製造方法によって製造された半導体装置10の構成について述べる。
【0018】
図2(b)は、本製造方法によって製造された半導体装置10、すなわちショットキーダイオードを示している。半導体装置10は、n型SiC層(nSiC)1と、n型SiC層2と、p型SiC層5と、ショットキー電極6と、引出し電極7と、絶縁物8と、電極9とを有して構成されている。
【0019】
型SiC層(nSiC)1は、本発明におけるSiC基板であり、第1の主面(表面)と第1の主面に背向する第2の主面(裏面)とを有する。そして、n型SiC層1は、高濃度に不純物を含んだn型の低抵抗SiCである。さらに、n型SiC層1の裏面は、荒らされており、凸凹Gが形成されている。この凸凹Gは、n型SiC層1の裏面に対して、研磨処理又はレーザー照射を施すことで形成されたものである。ここで、研磨処理としては、サンドブラスト、グラインディング、ラッピングなどを用いることができる。
【0020】
サンドブラストとは、圧縮空気又は遠心力などで、砂又は粒状の研磨材を加工対象面(n型SiC層1の裏面)に吹きつけて行う研磨法(荒らす方法)である。グラインディングとは、砥石を回転させて加工対象面に押し当てて行う研磨方法である。ラッピングとは、遊離砥粒を分散させた研磨剤を加工対象面と工具(ラップ)との間に介在させた状態で両者を擦り合わせる運動を行う研磨法である。凸凹Gは、サンドブラスト、グラインディング及びラッピング以外の研磨法を用いて形成されたものでもよい。
【0021】
型SiC層2は、n型SiC層1の表面に形成されており、低濃度に不純物を含んだn型の高抵抗SiCである。p型SiC層5は、n型SiC層2の表面にリング形状に形成されており、Al又はBをイオン注入した後、1500℃以上に加熱して形成することができる。ショットキー電極6は、n型SiC層2の表面上からp型SiC層5の表面上に渡って形成されている。そして、ショットキー電極6は、Ti、Mo、Niなどからなる。引出し電極7は、ショットキー電極6上に形成されており、Al、Ni、Auなどからなる。絶縁物8は、ショットキー電極6及び引出し電極7の側面を覆うように、n型SiC層2の表面における外周近辺上及び引出し電極7の表面における外周近辺上に、リング形状に形成されている。そして、絶縁物8は、酸化珪素、窒化珪素又はポリイミドなどからなる。
【0022】
これらのn型SiC層2、p型SiC層5、ショットキー電極6、引出し電極7及び絶縁物8は、n型SiC層1の表面上に形成されたデバイス(ショットキーダイオード)をなしている。電極9は、n型SiC層1の裏面、すなわち凸凹Gが設けられている面に形成されている。次に、本実施形態の製造方法について説明する。
【0023】
本製造方法の概要としては、先ず図1(a),(b)に示すように、n型SiC層1の表面側にデバイスを形成する。次いで、図1(c),図2(a)に示すように、n型SiC層1の裏面を凸凹Gに荒らす工程を行う。次いで、図2(b)に示すように、凸凹Gに荒らされたn型SiC層1の裏面に電極9を形成する工程を行い、これで半導体装置10が完成する。凸凹Gに荒らす工程では、研磨処理又はレーザー照射を用いる。これらの工程を次に具体的に説明する。
【0024】
先ず、図1(a)に示すように、シリーズ抵抗を下げる低抵抗のn型SiC層1の表面に、耐圧を確保するのに必要な不純物濃度と厚さとを持つ高抵抗のn型SiC層2をエピタキシャル法で形成する。
【0025】
次いで、図1(b)に示すように、n型SiC層1の表面側にデバイスを形成する。すなわち、n型SiC層2の表面側に、p型SiC層5、ショットキー電極6、引出し電極7及び絶縁物8を形成する。
【0026】
次いで、図1(c)に示すように、n型SiC層1の裏面について、研磨処理又はレーザー照射Lを施す。この研磨処理又はレーザー照射Lにより、図2(a)に示すようにn型SiC層1の裏面が凸凹Gに荒らされる。研磨処理としては、上記サンドブラスト、グラインディング、ラッピングなどを適用する。この研磨処理は、n型SiC層1の裏面全体に行うことが好ましい。また、サンドブラスト、グラインディング、ラッピングを組み合わせて行って、凸凹Gを形成してもよい。
【0027】
研磨処理の代わりに、n型SiC層1の裏面にレーザー照射Lを行うことで、凸凹Gを形成してもよい。すなわち、n型SiC層1の裏面にレーザー照射Lを行うことで、n型SiC層1の裏面を加熱してその裏面の物質の一部を蒸発させ、これにより凸凹Gを形成する。レーザー照射Lでは、例えばエキシマレーザーなどを用いてもよく、その他のレーザーを用いてもよい。
【0028】
このレーザー照射Lは、レーザー光の強度及び照射領域などを簡便に且つ高精度に制御できる。そこで、n型SiC層1の裏面の一部領域のみにレーザー照射Lを行い、その一部領域のみに凸凹Gを形成してもよい。そして、その凸凹Gが形成された一部領域のみに電極9を形成してもよく、凸凹Gが形成されていない領域を含むn型SiC層1の裏面全体に電極9を形成してもよい。
【0029】
また、レーザー照射L以外の方法で、n型SiC層1の裏面を加熱してその裏面の物質の一部を蒸発させ、これにより凸凹Gを形成してもよい。例えば、レーザー光以外の光をn型SiC層1の裏面に照射することで、凸凹Gを形成してもよい。
【0030】
次いで、図2(b)に示すように、n型SiC層1における凸凹Gに荒らされた裏面に、電極9を形成する。この電極9の形成は、例えばTiやNiなどの金属をn型SiC層1の裏面の凸凹Gに蒸着させることだけでもよい。また、上記蒸着の代わりに、化学気相成長法(CVD法)、塗布・コーティング法、又は電気メッキ法などを用いて、n型SiC層1の裏面の凸凹Gに金属膜を形成してもよい。このような電極9の形成により、ショットキーダイオードをなす半導体装置10が完成する。
【0031】
これらにより、本実施形態によれば、サンドブラストなどの研磨処理又はレーザー照射などによって、n型SiC層1の裏面に欠陥を導入してその裏面を荒らし、荒らされて凸凹Gとなった裏面に電極9を形成するので、蒸着のみによる電極9の形成でも、n型SiC層1に対して低抵抗な良好なオーミック接触を得ることができる。この効果を確認するために本願の発明者は、本実施形態のようにSiC基板の電極形成領域を「荒らし」その上に電極を形成した場合と、かかる「荒らし」をせずに電極を形成した場合とを比較する実験をした。すると、「荒らし」によってSiC基板と電極間の接触面積が増える割合以上に、SiC基板と電極間の比抵抗を低減化することができる。特に、SiC基板における鏡面仕上げ処理を施された面に電極を蒸着により形成した場合と比較すると、本実施形態の製造方法は、数桁に及ぶほど、SiC基板と電極間の比抵抗を低減化することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、図1(b)に示すようにデバイスを形成し、その後に図1(c)及び図2(a)に示すようにn型SiC層1の裏面を凸凹Gに荒らし、その後に図2(b)に示すように電極9を形成する。したがって、本実施形態は、電極9を形成する工程又は凸凹Gを形成する工程によって汚染が発生する前に、n型SiC層1の表面側にデバイスを形成できる。そこで、本実施形態は、表面側の汚染防止と裏面側の電極9のオーミック接触向上との両立を図ることが容易にできる。
【0033】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置20を示す模式断面図である。図3において、図1及び図2に示す第1実施形態の半導体装置10の構成要素と同一のものには同一符号を付している。本実施形態の半導体装置20における第1実施形態の半導体装置10との相違点は、電極9’の構造とその電極9’の製造方法である。ここで、半導体装置20の電極9’は、半導体装置10の電極9に対応するものである。本半導体装置20は、n型SiC層1と、n型SiC層2と、p型SiC層5と、ショットキー電極6と、引出し電極7と、絶縁物8と、電極9’とを有する。
【0034】
電極9’は、n型SiC層1における凸凹Gに荒らされた裏面に形成されてなる第1の貴金属膜9aと、第1の貴金属膜9aの裏面に形成されてなる耐熱金属膜9bと、耐熱金属膜9bの裏面に形成されてなる第2の貴金属膜9cとを有して構成されている。
【0035】
型SiC層1の裏面は、第1実施形態と同様にして凸凹Gに荒らされている。第1の貴金属膜9aは、長周期型の周期表における1b族と8族のFe列以外とのいずれかに属する元素のうち、いずれか1つ又は2つ以上からなるものとする。すなわち、第1の貴金属膜9aは、Cu、Ag、Au、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。例えば、第1の貴金属膜9aとしては、Ni、Au、Pt、Irのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。そして、第1の貴金属膜9aとしては、特にNi又はNi−Cu合金膜が好ましい。
【0036】
耐熱金属膜9bとしては、炭素と結合して導電性炭化物を形成する金属元素及びそれらの合金を適用する。そこで、耐熱金属膜9bは、長周期型の周期表における4a族と5a族と6a族と7a族と8族のFe列とのいずれかに属する元素のうち、いずれか1つ又は2つ以上からなるものとする。すなわち、耐熱金属膜9bは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Osのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。例えば、耐熱金属膜9bとしては、Ti、Cr、Mo、W、Feのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。そして、耐熱金属膜9bとしては、例えばTiを適用する。
【0037】
第2の貴金属膜9cは、長周期型の周期表における1b族と8族のFe列以外とのいずれかに属する元素のうち、いずれか1つ又は2つ以上からなるものとする。すなわち、第2の貴金属膜9cは、Cu、Ag、Au、Co、Ni、Rh、Pd、Ir、Ptのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。例えば第2の貴金属膜9cとしては、Ni、Au、Pt、Irのいずれか1つ、これらの2つ以上からなる合金、又はこれらを組み合わせた多層膜からなるものとする。そして、第2の貴金属膜9cとしては、例えばNi又はNi−Cu合金膜を適用する。
【0038】
次に、半導体装置20の製造方法について説明する。先ず、図1(a)から図2(a)までに示す製造方法を用いて、n型SiC層1の表面側にデバイスを形成し、次いで、n型SiC層1の裏面を凸凹Gに荒らす。
【0039】
次いで、n型SiC層1の荒らされて凸凹Gが形成された裏面に、電極9’を形成する。具体的には、先ず、n型SiC層1の凸凹Gの裏面に、Ni膜又はNi−Cu合金膜を蒸着することで、第1の貴金属膜9aを形成する。次いで、第1の貴金属膜9a上にTiを蒸着することで、耐熱金属膜9bを形成する。次いで、耐熱金属膜9b上に、Ni膜又はNi−Cu合金膜を蒸着することで、第2の貴金属膜9cを形成する。次いで、この状態において、960℃から1000℃までの範囲で加熱処理する。この加熱処理としては、例えば真空中において1000℃で2分間の加熱処理を行う。これにより、第1の貴金属膜9a、耐熱金属膜9b及び第2の貴金属膜9cは電極膜(電極9’)となって、n型SiC層1の凸凹Gの裏面と確実にオーミック接触し、図3に示す半導体素子20が完成する。
【0040】
これらにより、本実施形態の半導体装置20及びその製造方法によれば、サンドブラストなどの研磨処理又はレーザー照射などによってn型SiC層1の裏面を荒らし、荒らされて凸凹Gとなった面に電極9’を形成するので、n型SiC層1に対して低抵抗な良好なオーミック接触を得ることができる。さらに、本実施形態によれば、電極9’をなす第1の貴金属膜9a、耐熱金属膜9b及び第2の貴金属膜9cとn型SiC層1とが確実にかつ良好にオーミック接触する構造とすることができる。したがって、本実施形態の半導体装置20及びその製造方法によれば、n型SiC層1と電極9’間において、第1実施形態よりもさらに低抵抗で良好なオーミック接触を得ることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、電極9’の形成工程の加熱処理において、n型SiC層1と第1の貴金属膜9a(例えばNi)とが、{SiC+Ni → Ni−Si化合物+C(炭素)}というように化学反応して、炭素が発生しても、その炭素と耐熱金属膜9b(例えばTi)とが結合して導電性炭化物となる。したがって、本実施形態の半導体装置20及びその製造方法によれば、製造工程において黒鉛を生じさせず、クリーンルーム及びデバイスの汚染を回避でき、且つ、n型SiC層1に対して、より良好なオーミック接触を得ることができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、第2の貴金属膜9cを電極9’の最表面層としているので、電極9’に酸が侵入することを第2の貴金属膜9cにより大幅に低減でき、電極9’が腐食することを回避できる。
【0043】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置30を示す模式断面図である。図4において、図1から図3に示す第1・第2実施形態の半導体装置10,20の構成要素と同一のものには同一符号を付している。本実施形態の半導体装置30における第2実施形態の半導体装置20との相違点は、n型SiC層1と電極9’との間に、エピタキシャル層(n++型SiC)11が設けられており、そのエピタキシャル層11の裏面が凸凹Gに荒れている点である。したがって、電極9’は、そのエピタキシャル層11の裏面に設けられている。本半導体装置30は、n型SiC層1と、n型SiC層2と、p型SiC層5と、ショットキー電極6と、引出し電極7と、絶縁物8と、電極9’と、エピタキシャル層11とを有する。
【0044】
エピタキシャル層11の裏面は、第1実施形態における図1及び図2に示す方法を用いて、凸凹Gに荒らされている。すなわち、エピタキシャル層11の裏面は、サンドブラストなどの研磨処理又はレーザー照射などにより荒らされている。
【0045】
エピタキシャル層11はエピタキシャル法で形成されたものである。そして、エピタキシャル層11は、n型SiC層1よりも高濃度に不純物を含んだn型の低抵抗SiCである。これにより、エピタキシャル層11の比抵抗[Ω−cm]は、n型SiC層1の比抵抗[Ω−cm]よりも小さい。エピタキシャル層11の不純物濃度は、例えば8×1018〜7×1020[cm―3]の範囲とする。これは、良好なオーミック接触の形成と製造上の制限とによるものである。
【0046】
エピタキシャル層11の不純物(固溶限)としては、例えば、N(窒素)、P(燐)、As(砒素)、Sb(アンチモン)などが挙げられる。これらのN、P、As、Sbを合わせてエピタキシャル法を行うことで、非常に高い不純物濃度を得ることができ、エピタキシャル層11の比抵抗をより低減することができる。これは、SiCの不純物濃度を上げるほど、そのSiCの比抵抗[Ω−cm]が低くなるからである。エピタキシャル層11の不純物濃度は、例えばN:6.5×1020[cm―3]と、P:4.8×1018[cm―3]と、As:5×1016[cm―3]と、Sb:8.0×1016[cm―3]とを合わせたものとする。
【0047】
さらに、エピタキシャル層11は、エピタキシャル層11自身及びn型SiC層1などで「反り」が生じることを回避するために、なるべく薄いことが好ましい。エピタキシャル層11の厚みは、例えば0.01μm〜50μmまでの範囲とする。また、製造容易性の観点などから、エピタキシャル層11の厚みは0.1μm〜1μmまでの範囲としてもよい。
【0048】
次に、半導体装置30の製造方法について説明する。先ず、n型SiC層1の裏面に、エピタキシャル層(n++型SiC)11をエピタキシャル法で形成する。次いで、n型SiC層1の表面に、n型SiC層2を形成する。次いで、n型SiC層2の表面側にデバイスを形成する。次いで、図1及び図2に示す第1実施形態の方法を用いて、エピタキシャル層11の裏面を荒らし、その凸凹Gに荒れたエピタキシャル層11の裏面に、電極9’を形成する。電極9’の形成方法は、第2実施形態における電極9’の形成方法と同一とする。
【0049】
これらにより、本実施形態の半導体装置30及びその製造方法によれば、n型SiC層1の裏面に、不純物濃度の高く比抵抗の小さいエピタキシャル層11を形成し、このエピタキシャル層11の裏面に電極9’を形成しているので、n型SiC層1の反りを発生させることなく、n型SiC層1と電極9’との間で低抵抗なオーミック接触を得ることができる。また、エピタキシャル層11の裏面は凸凹Gに荒らされていることにより、n型SiC層1と電極9’との間で、さらに低抵抗なオーミック接触を得ることができる。さらにまた、電極9’が第1の貴金属膜9a、耐熱金属膜9b及び第2の貴金属膜9cで構成されているので、さらに低抵抗なオーミック接触を得ることができる。
【0050】
また、本半導体装置30では、イオン注入ではなく、エピタキシャル法によって不純物濃度の高いエピタキシャル層11を形成している。これにより、本実施形態によれば、所望の不純物濃度及び厚みをもつエピタキシャル層11を簡便に形成することができる。また本実施形態では、イオン注入欠陥が残留することもないので、簡便に且つ効果的に、n型SiC層1の裏面に低抵抗なオーミック接触を得ることができる。
【0051】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、上記実施形態の半導体装置10,20,30の変形例に係るSiCショットキーダイオードの基本的な構造を示す断面図である。本SiCショットキーダイオード40は、n型SiC層31と、n型SiC層32と、p型SiC層33と、裏面オーミック電極34と、半田接合用金属35と、絶縁物36と、ショットキー電極37と、引出し電極38とを有して構成されている。本SiCショットキーダイオード40と第2実施形態の半導体装置20との相違点は、本SiCショットキーダイオード40では裏面オーミック電極34の裏面に半田接合用金属35が設けられている点である。その他の構成は、第2実施形態の半導体装置20と同様である。
【0052】
すなわち、n型SiC層31はn型SiC層1に相当する。n型SiC層32はn型SiC層32に相当する。p型SiC層33はp型SiC層5に相当する。裏面オーミック電極34は電極9’に相当する。絶縁物36は絶縁物8に相当する。ショットキー電極37はショットキー電極6に相当する。引出し電極38は引出し電極7に相当する。
【0053】
ここで、n型SiC層31の裏面は、図2に示すn型SiC層1の裏面と同様に、凸凹Gに荒らされている。この凸凹Gは、第1実施形態の製造方法を用いて形成されたものとする。裏面オーミック電極34は、n型SiC層31の裏面の凸凹Gに荒らされた面に形成されており、上記第2実施形態の電極9’で構成されている。裏面オーミック電極34としては、例えばNi/Ti/Ni積層構造を焼鈍したものとする。この焼鈍における未反応金属は、その後の酸処理で除去される。半田接合用金属35は、裏面オーミック電極34の裏面に形成されており、例えば3層膜とする。この3層膜は、例えば、n型SiC層31側から順に、Ti又はCr、Ni又はNi−Cu合金、Ag又はAuとする。
【0054】
絶縁物36は、n型SiC層32の表面の一部上及びp型SiC層33の表面の一部上にリング形状に形成されており、リング形状のp型SiC層33の外周縁上に配置されている。そして、絶縁物36は、酸化珪素、窒化珪素又はポリイミドなどからなる。ショットキー電極37は、n型SiC層32の表面の一部上、p型SiC層33の表面の一部上及び絶縁物36上に渡って形成されている。そして、ショットキー電極37は、Ti、Mo、Niなどからなる。引出し電極38は、ショットキー電極38上に形成されており、Al、Ni、Auなどからなる。
【0055】
図6は、上記実施形態の他の変形例に係るSiCショットキーダイオードの断面図である。本SiCショットキーダイオード50は、n型SiC層41と、n型SiC層42と、p型SiC層43と、裏面オーミック電極44と、半田接合用金属45と、絶縁物46と、ショットキー電極47と、引出し電極48とを有して構成されている。
【0056】
本SiCショットキーダイオード50では、絶縁物46、ショットキー電極47及び引出し電極48の形状・配置が図5に示すSiCショットキーダイオード40の絶縁物36、ショットキー電極37及び引出し電極38の形状・配置と異なっている。SiCショットキーダイオード50におけるその他の構成は、SiCショットキーダイオード40と同一とすることができる。すなわち、n型SiC層41がn型SiC層31に対応し、n型SiC層42がn型SiC層32に対応し、p型SiC層43がp型SiC層33に対応し、裏面オーミック電極44が裏面オーミック電極34に対応し、半田接合用金属45が半田接合金属35に対応し、絶縁物46が絶縁膜36に対応し、ショットキー電極47がショットキー電極37に対応し、引出し電極48が引出し電極38に対応する。そして、n型SiC層41の裏面は、図2に示すn型SiC層1の裏面と同様に、凸凹Gに荒らされている。この凸凹Gは、第1実施形態の製造方法を用いて形成されたものとする。裏面オーミック電極44は、n型SiC層41の裏面の凸凹Gに荒らされた面に形成されており、上記第2実施形態の電極9’で構成されている。
【0057】
次に、SiCショットキーダイオード50の製造方法について、図7から図12を参照して説明する。図7から図12はSiCショットキーダイオード50の製造工程を示す断面図である。先ず、図7に示すように、シリーズ抵抗を下げる低抵抗のn型SiC層41の表面に、耐圧を確保するのに必要な不純物濃度と厚さとを持つ高抵抗のn型SiC層42を形成する。
【0058】
次いで、図8に示すように、n型SiC層42にAl(又はBなど)をイオン注入し、その後1500℃以上の熱処理を施すことで、p型SiC43を形成する。このp型SiC43の形成は、具体的には次のように行う。先ず、n型SiC層42の表面に、SiOをCVDによって堆積する。次いで、写真工程により、SiO上にフォトレジストを形成し、そのフォトレジストにおけるp型SiC43の形成位置に対応する部分を除去する。この状態でSiOをエッチングすることにより、SiOにおけるp型SiC43の形成位置に対応する部分を除去し、その部分のn型SiC層42を露出させる。その後、残りのフォトレジストを除去する。その後、n型SiC層42の露出部位からそのn型SiC層42の中に、例えばAlをイオン注入する。その後、注入された不純物を活性化するために、1500℃以上の熱処理を施す。この熱処理により、p型SiC43が完成する。
【0059】
次いで、図9に示すように、n型SiC層42の表面側に、絶縁物46、ショットキー電極47及び引出電極48を形成する。具体的には先ず、n型SiC層42及びp型SiC層43の表面全体に、ショットキー電極47としてTiをスパッタリング法にて堆積する。そして、ショットキー電極47をパターニングして、n型SiC層42及びp型SiC層43の表面における外縁近傍の一部を露出させる。その後、ショットキー電極47上と、n型SiC層42及びp型SiC層43の表面における露出部上とに、全体的にAlを堆積する。そのAlの外縁近傍を除去するようにパターニングして引出し電極48とする。その後、n型SiC層42、p型SiC層43及び引出し電極48の表面全体に、ポリイミドなどの絶縁物を堆積し、その絶縁物の中央領域について除去するパターニングをすることで絶縁物46を形成する。このパターニングで引出し電極48が露出する。
【0060】
次いで、図10に示すように、n型SiC層41の裏面について、荒らして凸凹を形成する。この凸凹の形成は、図1及び図2に示す方法を用いて形成する。すなわち、n型SiC層41の裏面に対して、サンドブラストなどの研磨処理又はレーザー照射などを施すことで、そのn型SiC層41の裏面に欠陥を導入し、その裏面を荒らす。
【0061】
次いで、図11に示すように、n型SiC層41の裏面に、裏面オーミック電極44を形成する。この裏面オーミック電極44が第2実施形態の電極9’(第1の貴金属膜9a、耐熱金属膜9b及び第2の貴金属膜9c)に該当するものである。裏面オーミック電極44の形成は、具体的には次のように行う。
【0062】
第1の方法として裏面オーミック電極44の形成を金属の堆積だけで行う場合は、上記のようにして荒らされたn型SiC層41の裏面の凸凹上に、例えばTi/Ni/Agを蒸着により堆積する。この堆積した多層金属膜を裏面オーミック電極34及び半田接合用金属45とする。
【0063】
これらにより、SiCショットキーダイオード40,50及びその製造方法によれば、n型SiC層41の上面側にデバイスを形成した後に、n型SiC層41の裏面を凸凹に荒らし、最後に、裏面側に裏面オーミック電極44及び半田接合用金属45を形成する。したがって、電極(44,45)形成によって汚染が生じる前、及び凸凹の形成によって汚染が生じる前に、デバイスを形成でき、不具合のない高品位なSiCショットキーダイオードとなる。また、SiCショットキーダイオード40,50及びその製造方法によれば、n型SiC層41の裏面を荒らし、その荒れた面に裏面オーミック電極44を形成するので、低抵抗で良好なオーミック接触を得ることができる。また、荒れた面に裏面オーミック電極44を形成するので、蒸着などによる金属の堆積だけで、低抵抗で良好なオーミック接触を得る電極(44,45)を得ることができる。
【0064】
そこで、SiCショットキーダイオード40,50は、オン抵抗を低減でき、高速動作についての特性を改善することもできる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0066】
例えば、本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、SiCショットキーダイオードのみならず、MOSFET、バイポーラトランジスタ、SIT、サイリスタ、IGBTなどの各種半導体装置のオーミック電極に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るSiCショットキーダイオードを示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るSiCショットキーダイオードを示す断面図である。
【図7】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図8】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図9】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図10】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図11】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【図12】同上のSiCショットキーダイオードの製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…n型SiC層、2…n型SiC層、5…p型SiC層、6…ショットキー電極、7…引出し電極、8…絶縁物、9,9’…電極、10,20,30…半導体装置、L…レーザー照射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の露出面の状態を荒らす工程と、
荒らされた前記露出面に電極を形成する工程とを有し、
前記荒らす工程は、前記露出面についての研磨処理を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研磨処理は、サンドブラストであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨処理は、グラインディングであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記研磨処理は、ラッピングであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
SiC基板の露出面の状態を荒らす工程と、
荒らされた前記露出面に電極を形成する工程とを有し、
前記荒らす工程は、前記露出面を加熱して該露出面の物質の一部を蒸発させる処理を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記蒸発させる処理は、前記露出面にレーザー照射をすることで行うことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記レーザー照射を前記露出面の特定領域について行うことで、該特定領域について前記荒らす工程を行うことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記荒らす工程の前に、前記SiC基板にデバイスを形成する工程を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
第1の主面と該第1の主面に背向する第2の主面とを有するSiC基板と、
前記第1の主面上に形成されたデバイスと、
前記第2の主面上に形成された電極とを有し、
前記第2の主面の少なくとも電極形成領域は、該第2の主面について、サンドブラスト、グラインディング、ラッピング、レーザー照射のいずれかを行うことで生じる荒さが形成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−41248(P2006−41248A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220183(P2004−220183)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】