説明

半導体装置とその製造方法

【課題】 気相成長の際のマストランスポートを抑制する技術を提供する。
【解決手段】 表層部にトレンチ42が形成されている窒化物の半導体下地層10のトレンチ42内に、窒化物の半導体成長層を気相成長させる気相成長工程を備えている。トレンチ42に露出する半導体下地層10の表面8aの少なくとも一部が、InxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関する。特に、トレンチが形成されている半導体下地層のトレンチ内に、窒化物の半導体成長層を気相成長させる工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物の半導体下地層の表面に窒化物の半導体成長層を気相成長させる技術が知られている。一般的に、この種の気相成長技術では、半導体成長層を気相成長させるために、半導体下地層を成長温度にまで加熱した状態で、原料ガスを半導体下地層の表面に供給する。さらに、半導体下地層から窒素が抜けることを防止するために、半導体下地層が成長温度に達するまでは、半導体下地層をアンモニア(NH)雰囲気に曝すことが多い。
【0003】
半導体装置を製造する工程では、半導体下地層の表面にトレンチを形成し、そのトレンチ内に半導体成長層を気相成長させることが必要とされることが多い。ところが、窒化物半導体を半導体材料に用いた気相成長方法では、半導体下地層が高温に曝されるとともにアンモニア雰囲気に曝されると、トレンチの側面が崩れるという現象(マストランスポートという)が起きることが知られている。マストランスポートによってトレンチの形態が崩れると、半導体装置の特性が悪化する。このため、窒化物半導体を半導体材料に用いた気相成長方法では、マストランスポートを抑える技術が必要とされている。
【0004】
非特許文献1には、マストランスポートを抑えるために、窒化物半導体として窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)が有用であることが提案されている。非特許文献1には、マストランスポートが抑制される理由は、アルミニウムと窒素の結合(Al-N)の存在によるものであり、この結合(Al-N)を増やすことが肝要であると記載されている。非特許文献1には、アルミニウムのモル比が0.1の窒化アルミニウムガリウム(Al0.1Ga0.9N)が例示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】In-plane GaN/AlGaN heterostructure fabricated by selective mass transport planar technology, “S. Nitta et al, Materials Science and Engineering B93 (2002) 139-142”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示されるように、マストランスポートを抑えるということにのみ着眼すれば、窒化物半導体内のアルミニウムのモル比を増加させることが望ましい。しかしながら、窒化物半導体は、アルミニウムのモル比の増加に伴いバンドギャップ幅が大きくなり、これにより、物性が大きく変化するという性質を有している。このため、半導体装置の種類によっては、アルミニウムのモル比を増加させた窒化物半導体を用いることができない場面が多く存在する。すなわち、アルミニウムのモル比を増加させたときに、半導体装置の種類によっては、マストランスポートの抑制と半導体装置の特性が相反する関係となることがある。本明細書は、気相成長の際にマストランスポートを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示される技術は、窒化物の半導体下地層にアルミニウムがドーピングされていることを特徴とする。アルミニウムのモル比が非特許文献1に開示されるほどに高濃度でなくても、マストランスポートを十分に抑制できる。一方で、半導体装置の種類によっては、アルミニウムのモル比を抑えることで、半導体装置の特性を悪化させないこともできる。非特許文献1のように、マストランスポートの抑制にのみ着眼する限り、アルミニウムのモル比を抑えるという着想は得られない。本発明者らは、窒化物半導体内のアルミニウムのモル比が増加すると、半導体装置の特性を悪化させてしまう形態があることを見出し、非特許文献1の技術志向と逆行してアルミニウムのモル比を抑えるという技術を創作した。
【0008】
本明細書に開示する技術は、半導体装置の製造方法に具現化することができる。その製造方法は、表層部にトレンチが形成されている窒化物の半導体下地層のトレンチ内に、窒化物の半導体成長層を気相成長させる気相成長工程を備えている。そして、トレンチに露出する半導体下地層の表面の少なくとも一部が、InxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物半導体である。なお、トレンチに露出する面だけでなく、トレンチ以外に露出する面がInxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物半導体であってもよい。なお、この種の技術分野では、含まれるアルミニウムのモル比が0.01以下である場合、InxGa(1-x)Nで示される窒化物に対して、不純物(アルミニウム)がドーピングされているAlドープ窒化物半導体とみなされる。
【0009】
本明細書に開示する製造方法では、半導体下地層が、表層部に半導体成長層とは異なる導電型の部分領域を有しているのが望ましい。さらに、トレンチが部分領域を貫通しており、トレンチに露出する部分領域の表面がInxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物半導体であることが望ましい。なお、部分領域は、トレンチに露出する部分領域の表面のみがAlドープ窒化物半導体であってもよく、全体がAlドープ窒化物半導体であってもよい。
【0010】
上記の製造方法の場合、半導体下地層の表層部に、半導体成長層と半導体成長層とは異なる導電型の部分領域とが隣接した構造が得られる。具体的には、上記製造方法の場合、半導体成長層が部分領域に挟まれた構造を有する半導体装置を製造することができる。このような構造を有する半導体装置を製造する場合、隣接する部分領域間の距離が設定した値からずれると、製造された半導体装置が所望する特性を示さないことがある。上記の製造方法では、部分領域の表面がAlドープ窒化物半導体で構成されているので、マストランスポートが抑制され、部分領域間の距離を設定した値に制御することができる。なお、異なる導電型とは、一方がn型の場合、他方がp型又はi型であり、一方がp型の場合、他方がn型又はi型である。
【0011】
上記した製造方法では、気相成長工程に先立って、アルミニウムをドーパントガスとして含む雰囲気下で部分領域を気相成長させる工程と、部分領域の表面からエッチングし、部分領域を貫通するトレンチを形成する工程とを備えていることが好ましい。これにより、部分領域の全体をAlドープ窒化物半導体とすることができる。
【0012】
上記したように、本明細書は、トレンチが形成されている窒化物の半導体下地層のトレンチ内に、窒化物の半導体成長層を気相成長させる工程を有する技術を開示する。この場合、半導体成長層を成長させたときに、半導体下地層から半導体成長層に酸素が取り込まれ易い。半導体成長層に取り込まれた酸素は、半導体成長層内の窒素と置換され、半導体成長層のドナーとして機能する。それにより、半導体成長層内の不純物濃度の調整が困難となる。半導体下地層から半導体成長層に酸素が取り込まれることを抑えるためには、半導体成長層の成長温度を高温に設定するのが望ましい。しかしながら、一般的に、気相成長の温度を高くすると、マストランスポートが起こり易くなる。本明細書で開示される気相成長方法は、このような場面に有用である。
【0013】
すなわち、本明細書で開示する製造方法では、気相成長工程の成長温度が、半導体下地層から半導体成長層内に取り込まれる酸素濃度が1×1016cm−3以下となるように設定されていることが好ましい。あるいは、気相成長工程の成長温度が980℃以上であることが望ましい。上記したように、本明細書で開示される製造方法では、半導体下地層にアルミニウムがドーピングされているので、マストランスポートを抑制することができる。このため、本明細書で開示される製造方法によると、アルミニウムのドーピングによってマストランスポートの発生が抑制されており、半導体成長層を高温で成長させることにより取り込まれる酸素濃度を低濃度に抑えることができる。この結果、本明細書で開示される製造方法によると、ドナー濃度が安定した半導体装置を製造することができる。
【0014】
気相成長工程の成長温度が上記した半導体成長層内に取り込まれる酸素濃度を抑制するような温度である場合、半導体装置は、半導体下地層上に設けられており、電流が横方向に流れる窒化物のチャネル層を備えていることが好ましい。そして、半導体下地層は、チャネル層と接する面がc面であり、半導体成長層の側面と接する面がa又はm面とすることができる。c面に比べ、a又はm面からの気相成長では、半導体成長層に酸素が取り込まれやすい。このような場合でも、本明細書で開示される製造方法では、半導体下地層のマストランスポートを抑制しながら、気相成長層に含まれる酸素の濃度を抑制することができる。
【0015】
上記したように、本明細書に開示する製造方法によると、気相成長のときのマストランスポートを抑制することができるとともに、気相成長層に含まれる酸素の濃度も抑制することができる。そのため、半導体下地層のトレンチ内に形成される気相成長層の不純物濃度を、所望する濃度に調整することができる。
【0016】
本明細書に開示する製造方法によって製造される半導体装置は、チャネル層に電気的に接続する表面電極と、半導体下地層の裏面に電気的に接続する裏面電極とを備えており、表面電極と裏面電極の間を流れる電流が、チャネル層と半導体成長層を介して流れることが好ましい。すなわち、縦型の半導体装置であることが好ましい。縦型の半導体装置の場合、半導体成長層のサイズ及び不純物濃度が、装置の特性に大きく影響する。マストランスポートを抑制しつつ、半導体成長層に取り込まれる酸素の量を抑制することにより、半導体成長層のサイズ及び不純物濃度を、所望のレベルに調整することができる。なお、チャネル層は、ヘテロ接合を有していてもよい。
【0017】
本明細書に開示する半導体装置は、半導体下地層と半導体成長層を備えている。半導体下地層は、表層部にトレンチが形成されている窒化物半導体である。半導体成長層は、トレンチ内に充填されている窒化物半導体である。この半導体装置では、半導体下地層と半導体成長層の界面のうちの半導体下地層側の表面の少なくとも一部が、InxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物半導体である。
【発明の効果】
【0018】
本明細書で開示される技術によると、半導体装置の特性に影響を及ぼすことなく、マストランスポートを抑制して半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1の半導体装置の要部断面図を示す。
【図2】図2は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す(1)。
【図3】図3は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す(2)。
【図4】図4は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す(3)。
【図5】図5は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す(4)。
【図6】図6は、実施例1の半導体装置の製造工程を示す(5)。
【図7】図7は、実施例2の半導体装置の要部断面図を示す。
【図8】図8は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(1)。
【図9】図9は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(2)。
【図10】図10は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(3)。
【図11】図11は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(4)。
【図12】図12は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(5)。
【図13】図13は、実施例2の半導体装置の製造工程を示す(6)。
【図14】図14は、実施例3の半導体装置の要部断面図を示す。
【図15】図15は、実施例3の半導体装置の製造工程を示す(1)。
【図16】図16は、実施例3の半導体装置の製造工程を示す(2)。
【図17】図17は、実施例3の半導体装置の製造工程を示す(3)。
【図18】図18は、実施例4の半導体装置の要部断面図を示す。
【図19】図19は、実施例4の半導体装置の製造工程を示す(1)。
【図20】図20は、実施例4の半導体装置の製造工程を示す(2)。
【図21】図21は、実施例4の半導体装置の製造工程を示す(3)。
【図22】図22は、実施例4の半導体装置の製造工程を示す(4)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施例を説明する前に、実施例の技術的特徴の幾つかを以下に簡潔に記す。
(特徴1)半導体成長層の成長温度は、980℃以上、1100℃以下である。
(特徴2)部分領域がn型の場合、半導体下地層の他のn型領域よりもn型不純物の濃度を濃くする。
【実施例1】
【0021】
図1を参照し、半導体装置100について説明する。半導体装置100は縦型の半導体装置であり、ドレイン電極2とソース電極16の間を電流が流れる。なお、図1には、2つの単位構造100aと100bを示している。単位構造100aと100bは同一の構造を有している。半導体装置100について、裏面から順に説明する。半導体装置100の裏面にドレイン電極2が設けられている。ドレイン電極2は、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)が積層された積層電極である。ドレイン電極2は、裏面電極の一例であり、電源(図示省略)の高圧側に接続している。n型の第1低抵抗n型領域4が、ドレイン電極2の表面に設けられている。第1低抵抗n型領域4の材料は窒化ガリウム(GaN)である。第1低抵抗n型領域4の不純物としてシリコン(Si)が用いられており、その不純物濃度はおよそ3×1018cm−3である。ドレイン電極2は、第1低抵抗n型領域4に対して電気的に接続している。n型の高抵抗n型領域6が、第1低抵抗n型領域4の表面に設けられている。高抵抗n型領域6の材料は窒化ガリウムである。高抵抗n型領域6の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1016cm−3である。
【0022】
複数のp型の埋込領域8が、高抵抗n型領域6の表層側に間隔を有して設けられている。埋込領域8の材料は窒化ガリウムである。埋込領域8の不純物としてマグネシウム(Mg)が用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1019cm−3である。埋込領域8にはさらに、不純物としてアルミニウムが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1020cm−3である。埋込領域8の材料を一般式で示すと、Al0.001GaNとなる。アルミニウムのモル比が0.001程度の場合、通常、アルミニウムは、埋込領域8の構成元素と評価されない。埋込領域8は、アルミニウムが窒化ガリウムにドーピングされている、アルミニウムドープ窒化物と評価される。なお、埋込領域8に含まれるアルミニウムの濃度は、1×1018〜1×1021cm−3の範囲内であることが好ましい。この濃度範囲の埋込領域8の材料を一般式で示すと、InxAlyGa(1-x-y)N (x+y=1, 0.00001≦y≦0.01)となる。アルミニウムのモル比が0.01以下の場合も、アルミニウムは、窒化ガリウムにドーピングされていると評価される。また、以下の説明では、高抵抗n型領域6のうち、隣接する埋込領域8の間に位置する領域を、アパーチャ領域18と称する。
【0023】
n型の第1半導体層28が、埋込領域8の表面の一部とアパーチャ領域18の表面の全体に設けられている。第1半導体層28は、隣り合う埋込領域8の表面の一部の間で連続して形成されている。第1半導体層28の材料は窒化ガリウムである。第1半導体層28の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1014cm−3である。すなわち、第1半導体層28の材料は、高抵抗n型領域6の材料と等しい。そのため、第1半導体層28と高抵抗n型領域6は、一つの連続した領域と捉えることもできる。埋込領域8の一部が、第1半導体層28と高抵抗n型領域6で形成されている領域内に埋設されているということもできる。
【0024】
i型の第2半導体層26が、第1半導体層28の表面に設けられている。第2半導体層26の材料は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。第2半導体層26にはマグネシウム等の不純物が導入されていない。なお、第2半導体層26の材料を一般式で示すと、InxAlyGa(1-x-y)N (x=0, 0.10≦y≦0.30)となる。そのため、第2半導体層26に含まれるアルミニウムは、第2半導体層26の構成元素と捉えることができる。第2半導体層26のバンドギャップは、第1半導体層28のバンドギャップよりも広い。そのため、第2半導体層26と第1半導体層28の間にヘテロ接合が形成されている。以下の説明では、第2半導体層26と第1半導体層28を併せて、チャネル層30と称する。
【0025】
型の第2低抵抗n型領域24が、チャネル層30の表層部に部分的に設けられている。第2低抵抗n型領域24の深部は、第1半導体層28と第2半導体層26の接合面に達している。半導体装置100を平面視したときに、埋込領域8の一部が、第2低抵抗n型領域24とアパーチャ領域18の間に位置している。ソース電極16が、第2低抵抗n型領域24に対して電気的に接続している。すなわち、ソース電極16は、チャネル層30に電気的に接続している。ソース電極16は、チタンとアルミニウムが積層された積層電極である。ソース電極16は表面電極の一例であり、接地されている。
【0026】
ゲート電極20が、ゲート絶縁膜22を介してチャネル層30に対向している。ゲート電極20の材料はリンをドーピングした多結晶シリコンであり、ゲート絶縁膜22の材料は酸化シリコン(SiO)である。なお、ゲート電極20の材料はアルミニウムでもよい。半導体装置100を平面視したときに、ゲート電極20は、第2低抵抗n型領域24の一部と、第2低抵抗n型領域24とアパーチャ領域18の間に位置する埋込領域8と、アパーチャ領域18とに対向している。ゲート電極20は、絶縁膜(図示省略)によって、ソース電極16から絶縁されている。ボディ電極14が、埋込領域8に電気的に接続している。ボディ電極14の材料はニッケル(Ni)である。ボディ電極14は接地されている。
【0027】
半導体装置100の動作について説明する。埋込領域8がチャネル層30に対向している。ゲート電極20に電圧を印加していない状態では、p型の埋込領域8からチャネル層30に向けて空乏層が伸びている。その空乏層は、第1半導体層28と第2半導体層26のヘテロ接合面にまで達している。ヘテロ接合面が空乏化すると、ヘテロ接合面の伝導体のエネルギー準位がフェルミ準位よりも上側に存在する。そのため、2次元電子ガス層が、ヘテロ接合面に存在することができない。ゲート電極20に電圧が印加されていない状態では、半導体装置100はオフしている。半導体装置100は、ノーマリーオフの動作を行う。
【0028】
ゲート電極20に正の電圧を印加すると、p型の埋込領域8からチャネル層30に向けて伸びていた空乏層の幅が縮小する。2次元電子ガス層が、第1半導体層28と第2半導体層26の接合面に形成される。それにより、ソース電極16から注入された電子が、2次元電子ガス層を走行できるようになる。電子は、第2低抵抗n型領域24から第1半導体層28と第2半導体層26の接合面を横方向に移動し、アパーチャ領域18,高抵抗n型領域6,第1低抵抗n型領域4を縦方向に移動し、ドレイン電極2に至る。ドレイン電極2とソース電極が導通する。なお、半導体装置100の動作中にアバランシェ降伏により高抵抗n型領域6内に生じたホール(正孔)は、埋込領域8,ボディ電極14を経由して半導体装置100の外部に引き抜かれる。正孔濃度がおよそ3×1017cm−3の場合、埋込領域8内のホールの移動度は、およそ10cm/vsである。これは、アルミニウムがドーピングされていない窒化ガリウム内のホールの移動度とほぼ同じ結果である。
【0029】
図2〜図6を参照し、半導体装置100の製造方法について説明する。まず、図2に示すように、n型の高抵抗n型領域6をn型の半導体基板(第1低抵抗n型領域)4の表面に気相成長させ、さらに、p型の半導体層8を高抵抗n型領域6の表面に気相成長させる。半導体層8は、最終的に図1の埋込領域8になる。よって、以下の説明では、埋込領域8として説明する。埋込領域8は、アルミニウムとマグネシウムをドーパントガスとして含む雰囲気下で気相成長させる。埋込領域8の表面は、c面((0001)面)である。埋込領域8を結晶成長するときは、埋込領域8に含まれるアルミニウムの濃度が1×1018〜1×1021cm−3となるように、ドーパントガスの濃度を調整する。なお、高抵抗n型領域6と埋込領域8を気相成長させる工程では、雰囲気の温度がおよそ980℃以上になってから原料ガスを供給する。また、以下の説明では、第1低抵抗n型領域4と高抵抗n型領域6と埋込領域8を併せて、半導体下地層10と称する。その後、開口40aを有するマスク40を、埋込領域8の表面に形成する。
【0030】
次に、図3に示すように、開口40aに対応する部分のp型の埋込領域8を表面からエッチングし、埋込領域8を貫通して高抵抗n型領域6内に至るトレンチ42を形成する。これにより、半導体下地層10の表層部12にトレンチ42が形成される。半導体下地層10が第1低抵抗n型領域4と高抵抗n型領域6と埋込領域8を有する場合、埋込領域8が、請求項に記載の部分領域に相当する。埋込領域8の側壁8aには、不純物であるアルミニウムが1×1018〜1×1021cm−3含まれている。埋込領域8の側壁8aは、a面((00−20)面)、m面((1−100)面)又はそれらの面に近い結晶面である。すなわち、埋込領域8の側壁8aは、c面以外の面である。次に、図4に示すように、n型の第1半導体層28を、半導体下地層10のトレンチ42(図3も参照)内、及び、半導体下地層10の表面に気相成長させる(気相成長工程)。第1半導体層28は、高抵抗n型領域6の露出した表面6aと8aからも気相成長する。第1半導体層28は、請求項に記載の半導体成長層に相当する。この気相成長工程では、雰囲気の温度がおよそ980℃以上になってから、原料ガスの供給を行う。なお、第1半導体層28のうち、埋込領域8の間に位置する部分がアパーチャ領域18(図1を参照)である。また、第1半導体層28を成長する温度は、1100℃以下であることが好ましい。後述するように、第1半導体層28の成長温度を高くすることにより、第1半導体層28に取り込まれる酸素の量を抑制することができる。しかしながら、成長温度を高くしすぎる(1100℃よりも高くする)と、結晶の分解が生じ始めることがある。それにより、半導体装置100の品質が低下することがある。
【0031】
次に、図5に示すように、n型の第2半導体層28を、第1半導体層28の表面に気相成長させる。それにより、ヘテロ接合を有するチャネル層30が形成される。その後、開口44aを有するマスク44を、第2半導体層26の表面に形成する。その後、マスク44の開口44aに対応する第2半導体層26に向けて、シリコンをイオン注入する。イオン注入は、シリコンの注入範囲24が、第1半導体層28と第2半導体層26のヘテロ接合面に達するように実施する。マスク44を除去した後、図6に示すように、開口46aを有するマスク46を、第2半導体層26の表面に形成する。マスク46の幅は、マスク44の幅よりも広い(図5も参照)。その後、マスク46の開口46aに対応する第2半導体層26と第1半導体層28をイオンエッチングする。それにより、第2低抵抗n型領域24が形成され、埋込領域8の表面の一部が露出する。なお、第2半導体層26と第1半導体層28をイオンエッチングして埋込領域8の表面の一部を露出させ、次いで、第2半導体層26に向けてシリコンをイオン注入してもよい。
【0032】
その後、ソース電極16を第2低抵抗n型領域24の表面に形成し、ボディ電極14を露出している埋込領域8の表面に形成し、ドレイン電極2を第1低抵抗n型領域4の裏面に形成し、ゲート電極20をゲート絶縁膜22を介して第2半導体層26の表面に形成する。それにより、図1に示す半導体装置100が完成する。なお、電極16,14,2,20の形成方法は公知のため、説明を省略する。また、上記実施例では、高抵抗n型領域6、埋込領域8及び第1半導体層28の全ての気相成長において、雰囲気温度がおよそ980℃を超えてから原料ガスの供給を行った。しかしながら、高抵抗n型領域6及び埋込領域8を気相成長させる工程では、雰囲気温度がおよそ900℃を超えてから原料ガスの供給を行ってもよい。
【0033】
ここで、埋込領域8にアルミニウムを1×1018〜1×1021cm−3導入する理由を説明する。上記したように、半導体装置100では、電流がアパーチャ領域18を縦方向に移動する。そのため、アパーチャ領域18の幅(隣接する埋込領域8の間隔)が狭くなると、電流が流れにくくなる。窒化物半導体を気相成長させる場合、気相成長が生じる温度(およそ900℃)までは、アンモニア(NH)ガス雰囲気下で半導体下地層10を加熱する。それにより、窒素(N)が半導体下地層10から抜けることを防止する。埋込領域8にアルミニウムが導入されていないと、半導体下地層10を加熱する過程で、図3に示す埋込領域8の表面がマストランスポートをして、トレンチ42内に移動することがある。そうすると、トレンチ42の幅(隣接する埋込領域8の間隔)が設計値からずれ、アパーチャ領域18の幅が設計値からずれることがある。最悪の場合、アパーチャ領域18がp型化してしまい、オン抵抗が極めて高くなってしまう。本実施例では、埋込領域8にアルミニウムをドーピングすることにより、埋込領域8の表面がマストランスポートすることを抑制する。
【0034】
なお、従来より、窒化ガリウムではなく、窒化アルミニウムガリウムであれば、マストランスポートを抑制できることが知られていた。そのため、マストランスポートを抑制するだけならば、埋込領域8を窒化アルミニウムガリウムで形成すれば足りる。しかしながら、埋込領域8の材料を窒化アルミニウムガリウムとすると、埋込領域8内の正孔の移動度及び正孔濃度が低下する。すなわち、埋込領域8の比抵抗が増大する。それにより、半導体装置100の耐圧が低下する等の不具合が生じることがある。そのため、高耐圧を維持しながら、アパーチャ領域18の幅を正確に制御することが困難であった。本実施例では、埋込領域8に含まれるアルミニウムの濃度を1×1021cm−3以下とする。それにより、埋込領域の比抵抗が増大することを抑制している。上記したように、アルミニウムのモル比が0.01以下の窒化物半導体は、窒化アルミニウムガリウムとはみなされず、窒化ガリウムとみなされる。そのため、マストランスポートを抑制することができないと考えられていた。しかしながら、本実施例の半導体装置100では、比抵抗の増大を抑制しながら、マストランスポートを抑制することができる。なお、アルミニウムのドーピング濃度が1×1018cm−3未満であれば、もはやアルミニウムの効果が得られず、マストランスポートを抑制することができない。
【0035】
次に、埋込領域8を980℃以上で気相成長させる理由を説明する。上記したように、埋込領域8の側壁8aは、a面又はm面である。窒化物半導体をc面以外の面から気相成長させる場合、その成長は、横方向成長又はファセット成長により進行する。横方向成長又はファセット成長は、c面成長と比較して、成長膜に酸素が取り込まれやすい。特に、低温(900℃程度)で気相成長すると、成長膜に多くの酸素が取り込まれる。そのため、900℃程度で原料ガスの導入を行うと、第1半導体層28内に酸素が過剰に取り込まれる。第1半導体層28内に酸素が過剰に取り込まれると、その酸素は、第1半導体層28の材料である窒素と置換される。そして、その酸素は、第1半導体層28のドナーとして機能する。すなわち、第1半導体層28のn型不純物の濃度が増大する。アパーチャ領域18の不純物濃度を所望する値に調整することが困難になる。半導体装置100がオフしているときは、埋込領域8からアパーチャ領域18に向けて空乏層が伸びる。アパーチャ領域18の不純物濃度を所望する値に調整しないと、半導体装置100の耐圧が低下したり、リーク電流が増加することがある。
【0036】
しかしながら、本実施例のように、第1半導体層28を980℃以上で気相成長させると、成長膜に取り込まれる酸素の量を低減することができる。具体的には、第1半導体層28に取り込まれる酸素濃度を、3×1016cm−3以下に抑制することができる。酸素濃度が3×1016cm−3以下であれば、半導体装置100の特性を所望するレベルに維持することができる。
【0037】
なお、第1半導体層28を980℃以上で成長させることができるのは、埋込領域8にアルミニウムがドーピングされているからである。上記したように、埋込領域8にアルミニウムがドーピングされていなければ、第1半導体層28を成長させる工程でマストランスポートが起こる。マストランスポートは高温になる程顕著になるので、埋込領域8にアルミニウムがドーピングされていなければ、第1半導体層28を980℃以上で成長させることができない。
【実施例2】
【0038】
図7を参照し、半導体装置200について説明する。半導体装置200は半導体装置100の変形例であり、半導体装置100と実質的に同じ構造については、同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。半導体装置200は、2つの単位構造200aと200bを有している。高抵抗n型領域206の材料は窒化ガリウムである。高抵抗n型領域206の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1016cm−3である。複数のp型の埋込領域208が、高抵抗n型領域206の表面に間隔を有して設けられている。埋込領域208の材料は窒化ガリウムである。埋込領域208の不純物としてマグネシウム(Mg)が用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1019cm−3である。なお、埋込領域208には、アルミニウムがドーピングされていない。
【0039】
複数のアパーチャ領域218が、高抵抗n型領域206の表面に間隔を有して設けられている。アパーチャ領域218は、埋込領域208間に位置している。アパーチャ領域218の材料は窒化ガリウムである。アパーチャ領域218の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ3×1016cm−3である。アパーチャ領域218にはさらに、不純物としてアルミニウムが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1020cm−3である。すなわち、半導体装置200は、埋込領域208にアルミニウムがドーピングされておらず、アパーチャ領域218にアルミニウムがドーピングされている点、及び、アパーチャ領域218にドーピングするシリコンの濃度が半導体装置100と異なる。アパーチャ領域218に含まれるシリコンの濃度は、高抵抗n型領域206に含まれるシリコンの濃度よりも濃い。半導体装置200では、アパーチャ領域218にアルミニウムがドーピングされている。そのため、アパーチャ領域218にドーピングするシリコンの濃度を高抵抗n型領域206にドーピングするシリコンの濃度と等しくすると、アパーチャ領域218の抵抗が高くなる。アパーチャ領域218の抵抗を低くするために、アパーチャ領域218にドーピングするシリコンの濃度を増加させている。
【0040】
図8〜図13を参照し、半導体装置200の製造方法について説明する。まず、図8に示すように、n型の高抵抗n型領域206をn型の第1低抵抗n型領域4の表面に気相成長させ、さらに、n型の半導体層218を高抵抗n型領域206の表面に気相成長させる。半導体層218は、アルミニウムをドーパントガスとして含む雰囲気下で気相成長させる。半導体層218の表面はc面である。その後、半導体層218の表面に、開口60aを有するマスク60を形成する。
【0041】
次に、図9に示すように、n型の半導体層218の表面からエッチングし、半導体層218の側壁218aと高抵抗n型領域206の表面206aとで画定されるトレンチ232を形成する。これにより、図7に示すアパーチャ領域218が完成する。なお、半導体層218を確実に除去するために、トレンチ232は、半導体層218を貫通して高抵抗n型領域206内に至ってもよい。アパーチャ領域218と高抵抗n型領域206と第1低抵抗n型領域4によって、トレンチ232を有する半導体下地層210が形成される。半導体層218の側壁218aには、不純物であるアルミニウムが1×1018〜1×1021cm−3含まれている。
【0042】
次に、図10に示すように、p型の半導体層208を、半導体下地層210のトレンチ232(図9も参照)内、及び、半導体下地層210の表面に気相成長させる(気相成長工程)。本実施例ではp型の半導体層208が、請求項に記載の半導体成長層に相当する。また、アパーチャ領域218が、請求項に記載の部分領域に相当する。気相成長工程では、雰囲気の温度がおよそ980℃以上になってから、原料ガスの供給を行う。次に、図11に示すように、アパーチャ領域218の表面が露出するまで、半導体層208を表面からエッチングする。これにより、図7に示す埋込領域208が完成する。埋込み領域208は、トレンチ232内を充填している。
【0043】
次に、図12に示すように、n型の第1半導体層28を、アパーチャ領域218と埋込領域208の表面に気相成長させる。次いで、n型の第2半導体層26を、第1半導体層28の表面に気相成長させる、それにより、ヘテロ接合を有するチャネル層30が形成される。その後、開口62aを有するマスク62を、第2半導体層26の表面に形成する。その後、マスク62の開口62aに対応する第2半導体層26に向けて、シリコンをイオン注入する。マスク62を除去した後、図13に示すように、開口64を有するマスク64を、第2半導体層26の表面に形成する。マスク64の幅は、図12に示すマスク62の幅よりも広い。その後、マスク64の開口64aに対応する第2半導体層26と第1半導体層28をイオンエッチングする。以下の製造工程は半導体装置100と同じなので省略する。
【実施例3】
【0044】
図14を参照し、半導体装置300について説明する。半導体装置300は半導体装置200の変形例であり、半導体装置200と実質的に同じ構造については、同じ参照番号を付すことにより説明を省略する。ここでは、半導体装置200との相違点だけを説明する。半導体装置300は、2つの単位構造300aと300bを有している。半導体装置300では、埋込領域308と、高抵抗n型領域206及びアパーチャ領域218との間に、n型の第3半導体層370が介在している。第3半導体層370の材料は窒化ガリウムである。第3半導体層370の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1016cm−3である。第3半導体層370は、埋込領域308が高抵抗n型領域206の表面に直接接触することを防止するために設けられている。
【0045】
図15〜図17を参照し、半導体装置300の製造方法及び、第3半導体層370を形成する効果について説明する。まず、半導体装置200と同様に、図8〜図9までの工程を実施する。図8〜図9までの工程については説明を省略する。半導体下地層210を形成した後に、図15に示すように、n型の第3半導体層370を、半導体下地層210の表面の全面に気相成長させる。第3半導体層370の気相成長は、980℃以上の温度で行う。第3半導体層370の厚みはおよそ0.5μmである。第3半導体層370を成長させても、第3半導体層370がトレンチ232内を完全に充填することはない。そのため、アパーチャ領域218の側壁218aから成長した部分第3半導体層370bと、高抵抗n型領域206の露出面206aから成長した部分第3半導体層370aとで画定されるトレンチ332が形成される。なお、第3半導体層370を980℃以上で気相成長させるので、過剰な酸素が第3半導体層370に取り込まれことを防止できる。
【0046】
次に、図16に示すように、p型の埋込領域308を、トレンチ332内及び第3半導体層370の表面370c上に気相成長させる。本実施例では、p型の埋込領域308が、請求項に記載の半導体成長層に相当する。次に、図17に示すように、アパーチャ領域218の表面が露出するまで、埋込領域308をエッチングする。その後の工程は、半導体装置200の製造方法の図12以降の工程に等しいので、説明を省略する。
【0047】
上記したように、第3半導体層370を設けることにより、図9に示す高抵抗n型領域206の露出面206aが被覆される。図8と図9に示すように、露出面206aは、半導体層218をエッチングすることによって露出する。そのため、露出面206aには、エッチングによる欠陥が形成される。露出面206a上に直接p型の埋込領域308を形成すると、埋込領域308に含まれる不純物(マグネシウム)が、その欠陥を通じて、高抵抗n型領域206に移動しやすくなる。第3半導体層370で露出面206aを被覆すると、埋込領域308から高抵抗n型領域206に不純物が移動することを抑制することができる。
【0048】
なお、第3半導体層370は、不純物としてアルミニウムが含まれていてもよい。第3半導体層370がマストランスポートすることを抑制することができる。なお、上記したように、第3半導体370を形成する目的は、埋込領域308が高抵抗n型領域206の露出面206aに直接接触することを防止することである。また、上記したように、第3半導体層370の厚みは非常に薄い。そのため、第3半導体層370がマストランスポートしたとしても、アパーチャ領域218がマストランスポートしなければ、半導体装置300の特性のほとんど影響を及ぼさない。そのため、必ずしも、第3半導体層370にアルミニウムをドーピングする必要はない。
【実施例4】
【0049】
図18は、半導体装置400の要部断面図を示す。半導体装置400は横型の半導体装置である。半導体装置400について裏面から順に説明する。なお、半導体装置100,2,300と実質的に同じ構造については、下二桁が同じ符号を付すことにより説明を省略する。サファイア基板471の表面にバッファ層472が設けられており、バッファ層472の表面にn型の半導体層474,476が設けられている。半導体層474,476の材料は窒化ガリウムである。半導体層474,476の不純物としてシリコンが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1014cm−3である。そのため、半導体層474,476を、一つの半導体層475とみなすこともできる。i型の第2半導体層426が、半導体層476の表面に設けられている。第2半導体層426の材料は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)である。第2半導体層426にはマグネシウム等の不純物が導入されていない。
【0050】
p型の埋込領域408が、半導体層475の内部に埋設されている。埋込領域408の材料は窒化ガリウムである。埋込領域408の不純物としてマグネシウムが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1019cm−3である。埋込領域408にはさらに、不純物としてアルミニウムが用いられており、その不純物濃度はおよそ1×1020cm−3である。半導体層476と第2半導体層426によって、ヘテロ接合が形成されている。半導体層476のうち、埋込領域408上に位置する第1半導体層428と第2半導体層426によって、チャネル層430が形成される。n型の第2低抵抗n型領域424とn型の第1低抵抗n型領域404が、第2半導体層426内に間隔を有して設けられている。第2低抵抗n型領域424にソース電極416が電気的に接続しており、第1低抵抗n型領域404にドレイン電極402が電気的に接続している。
【0051】
ソース電極416とドレイン電極402の間に、ゲート電極420が設けられている。ゲート電極420は、ゲート絶縁膜422を介して第2半導体層426に対向している。半導体装置400を平面視すると、ゲート電極420は、埋込領域408に対向している。半導体装置400では、電流が、第1低抵抗n型領域404と第2低抵抗n型領域424の間を横方向に流れる。
【0052】
図19〜図22を参照し、半導体装置400の製造方法について説明する。まず、図19に示すように、サファイア基板471の表面にバッファ層472を形成し、バッファ層472の表面にn型の半導体層474を形成する。次いで、不純物としてマグネシウムとアルミニウムを含む半導体層408を、半導体層474の表面に気相成長させる。半導体層408は、最終的に図18に示す埋込領域408になる。その後、開口480aを有するマスク480を、埋込領域408の表面に形成する。
【0053】
次に、図20に示すように、開口480aに露出している埋込領域408を、表面からドライエッチングして半導体層474の表面の一部を露出させる。エッチング後の埋込領域408と半導体層474は、半導体下地層410に相当する。埋込領域408の側壁408aと半導体層474の露出面474aにより、トレンチ432が形成される。埋込領域408の側壁408aには、アルミニウムがドーピングされている。マスク480を除去した後に、図21に示すように、トレンチ432の内部と埋込領域408の表面に、半導体層476を気相成長させる(気相成長工程)。半導体層476の不純物濃度は、半導体層474と等しい。半導体層476のうち、埋込領域408上に位置する部分が第1半導体層428である。本実施例では、n型の半導体層476が、請求項に記載の半導体成長層に相当する。また、半導体下地層410のうちのp型の埋込領域408が、請求項に記載の部分領域に相当する。
【0054】
次に、図22に示すように、半導体層476の表面に第2半導体層426を気相成長させる。これにより、チャネル層430が形成される。次に、開口482aを有するマスク482を形成し、開口482aに向けてシリコンをイオン注入することにより、第2低抵抗n型領域424及び第1低抵抗n型領域404を形成する。その後、ソース電極とドレイン電極を形成することにより、図18に示す半導体装置400が完成する。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0056】
8,218、408:部分領域
10,210,410:半導体下地層
28,208,308,476:半導体成長層
30,430:チャネル層
42,232,332,432:トレンチ
100,200,300,400:半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
表層部にトレンチが形成されている窒化物の半導体下地層の前記トレンチ内に、窒化物の半導体成長層を気相成長させる気相成長工程を備えており、
前記トレンチに露出する前記半導体下地層の表面の少なくとも一部が、InxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物である製造方法。
【請求項2】
前記半導体下地層は、表層部に前記半導体成長層とは異なる導電型の部分領域を有しており、
前記トレンチは、前記部分領域を貫通しており、
前記トレンチに露出する前記部分領域の表面が、前記Alドープ窒化物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記気相成長工程に先立って、
アルミニウムをドーパンドガスとして含む雰囲気下で、前記部分領域を気相成長させる工程と、
前記部分領域の表面からエッチングし、前記部分領域を貫通する前記トレンチを形成する工程と、をさらに備えている請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記気相成長工程の成長温度が、前記半導体下地層から前記半導体成長層内に取り込まれる酸素濃度が1×1016cm−3以下となるように設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記気相成長工程の成長温度が、980℃以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記半導体装置は、
前記半導体下地層上に設けられており、電流が横方向に流れる窒化物のチャネル層を備えており、
前記半導体下地層は、前記チャネル層と接する面がc面であり、前記半導体成長層の側面と接する面がa又はm面である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記半導体装置は、
前記チャネル層に電気的に接続する表面電極と、
前記半導体下地層の裏面に電気的に接続する裏面電極と、をさらに備えており、
前記表面電極と前記裏面電極の間を流れる電流が、前記チャネル層と前記半導体成長層を介して流れる請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記チャネル層は、ヘテロ接合を有する請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
半導体装置であって、
表層部にトレンチが形成されている窒化物の半導体下地層と、
前記トレンチ内に充填されている窒化物の半導体成長層と、を備えており、
前記半導体下地層と前記半導体成長層の界面のうちの前記半導体下地層側の表面の少なくとも一部が、InxAlyGa(1-x-y)N (0≦x≦1,0.00001≦y≦0.01,0<1-x-y≦1)で示されるAlドープ窒化物である半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−146441(P2011−146441A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4354(P2010−4354)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】