説明

半導体装置の製造方法および基板処理システム

【課題】 液体原料を用いてSi以外の金属膜を安定して成長させる。
【解決手段】 基板上に形成された第1の金属膜の表面を水酸基で終端する第1の前処理を行う工程と、第1の前処理後の第1の金属膜に対して水素含有ガスを供給して第2の前処理を行う工程と、第2の前処理後の第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理容器内で基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法、およびその工程において好適に用いられる基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の微細化に伴い、例えばゲート電極、ソースやドレインの引き出し電極として、Si系の金属膜に代わり、Si以外の金属膜が用いられつつある。これらSi以外の金属膜の成膜方法としては、金属を含有した液体原料を気化させたガスと、反応ガスとを基板に供給するMOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、もしくはこれらに類似した手法が利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、液体原料を用いて上述の金属膜を成膜させる場合、成長速度が下地の表面状態に顕著に影響を受け、例えば薄膜が成長しなかったり、インキュベーションが生じて成膜の立ち上がりのタイミングがずれ、成長が不安定になったりする場合があった。例えば、窒化チタニウム(TiN)膜上に液体原料を用いてアルミニウム(Al)等の金属膜を形成しようとする場合、下地のTiN表面が露出している場合と、下地のTiN表面が酸化チタニウム(TiO)や酸窒化チタニウム(TiON)等で覆われている場合とでは、成膜速度が異なる場合があった。これは、Al等の金属材料が、TiN等の導電膜に吸着し易く、酸化物等からなる絶縁膜には吸着し難い性質を有するためと考えられる。
【0004】
本発明は、液体原料を用いてSi以外の金属膜を安定して成長させることが可能な半導体装置の製造方法および基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板上に形成された第1の金属膜の表面を水酸基で終端する第1の前処理を行う工程と、前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して水素含有ガスを供給して第2の前処理を行う工程と、前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、基板を処理する第1の処理容器と、前記第1の処理容器内にHF水溶液を供給するHF水溶液供給系と、前記第1の処理容器内に収容した基板に対してHF水溶液を供給して基板上に形成された第1の金属膜の表面を水酸基で終端する第1の前処理を行うように前記HF水溶液供給系を制御する第1の制御部と、基板を処理する第2の処理容器と、前記第2の処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、前記第2の処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、前記第2の処理容器内に収容した基板に対して水素含有ガスを供給して前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して第2の前処理を行い、その後、基板に対して原料ガスを供給して前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成するように、前記水素含有ガス供給系および前記原料ガス供給系を制御する第2の制御部と、を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体原料を用いてSi以外の金属膜を安定して成長させることが可能な半導体装置の製造方法および基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。
【図2】(a)は本発明の一実施形態にかかる第1処理ユニット31の概略側面図であり、(b)は第1処理ユニット31の断面構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる第2処理ユニット32の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる第2処理ユニット32のウエハ処理時における断面構成図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる第2処理ユニット32のウエハ搬送時における断面構成図である。
【図6】本発明の他の実施形態にかかる第2処理ユニット32としての縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は処理炉302部分を(a)のA−A線断面図で示す。
【図7】第1の前処理工程、第2の前処理工程を実施した後のTiN膜の表面状態を示す図である。
【図8】本発明の実施例および比較例における評価サンプルの電子顕微鏡画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態にかかる基板処理システムの構成、および該基板処理システムにより実施される半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程について説明する。
【0010】
本実施形態にかかる基板処理システムは、後述する第1の前処理工程を実施する第1処理ユニットと、後述する第2の前処理工程および第2の金属膜を形成する工程を実施する第2処理ユニットと、を備えている。第1処理ユニットは洗浄装置として構成され、第2処理ユニットはCVD装置として構成されている。以下に、第1処理ユニットおよび第2処理ユニットの構成について順に説明する。
【0011】
(1)第1処理ユニットの構成
まず、洗浄装置として構成された本実施形態にかかる第1処理ユニット31、すなわち第1の基板処理装置の構成について、図2を参照しながら説明する。図2(a)は、本発明の一実施形態にかかる第1処理ユニット31の概略側面図であり、図2(b)は、第1処理ユニット31の断面構成図である。
【0012】
図2に示すとおり、本実施形態にかかる第1処理ユニット31は、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する第1の処理容器としての洗浄装置本体112を有している。洗浄装置本体112内にはウエハ200を洗浄する洗浄室114が構成されている。洗浄室114内には、ウエハ200を水平に支持する支持具118が配置されている。支持具118は、モータ等からなる回転機構120に回転軸121を介して接続されている。回転機構120により、水平に支持された状態のウエハ200を回転させるようになっている。
【0013】
支持具118の周囲はカバー122により囲まれている。カバー122は、後述するように、支持具118によりウエハ200が回転させられる際にウエハ200から飛ぶ薬液を受け止めるようになっている。
【0014】
図2(a)に示すように、洗浄装置本体112の側面には、基板搬送口124が形成さ
れている。基板搬送口124にはゲートバルブ126が設けられている。ゲートバルブ126により基板搬送口124が開閉される。また、洗浄装置本体112の外部には、基板搬送口124を介してウエハ200を支持具118に移載する基板移載機127が設けられている。
【0015】
洗浄室114には、例えばフッ化水素(HF)水溶液、すなわちフッ酸を純水で希釈した希フッ酸(DHF(Diluted HF))等の洗浄液を供給する洗浄液供給部128が設けられている。洗浄液供給部128は、その先端(下流端)が支持具118に支持されたウエハ200の中心付近手前まで延びるように水平に配置されている。洗浄液供給部128の上流側は、洗浄液を供給する洗浄液供給源132に接続されている。洗浄液供給部128には洗浄液の供給を制御する制御バルブ132aが設けられている。洗浄液供給部128からはDHF等の洗浄液がウエハ200の中心に向けて供給される。主に、洗浄液供給部128、洗浄液供給源132及び制御バルブ132aにより洗浄液供給系(洗浄液供給ライン)としてのHF水溶液供給系(HF水溶液供給ライン)が構成される。
【0016】
また、洗浄室114には、例えば純水(DIW(Deionized Water))からなるリンス水を供給するリンス水供給部130が設けられている。リンス水供給部130は、その先端(下流端)が支持具118に支持されたウエハ200の中心付近手前まで延びるように水平に配置されている。リンス水供給部130の上流側は、リンス水を供給するリンス水供給源134に接続されている。リンス水供給部130にはリンス水の供給を制御する制御バルブ134aが設けられている。リンス水供給部130からは純水等のリンス水がウエハ200の中心に向けて供給される。主に、リンス水供給部130、リンス水供給源134及び制御バルブ134aによりリンス水供給系(リンス水供給ライン)としての純水供給系(純水供給ライン)が構成される。
【0017】
また、洗浄室114には、純水(DIW)からなる水を供給する給水部140が設けられている。給水部140は、その先端(下流端)が前述したカバー122の内側上部の周囲に開口し、他端(上流端)が純水を供給する純水供給源142に接続されており、カバー122の内面に純水を供給できるようになっている。給水部140には、純水の供給を制御する制御バルブ142aが設けられている。主に、給水部140、純水供給源142及び制御バルブ142aにより純水供給系(純水供給ライン)が構成される。なお、純水供給源142は、リンス水供給源134と共用とするようにしてもよい。
【0018】
カバー122の下面には、ウエハ200に供給された洗浄液や純水や、カバー122に供給された純水を排出する排出管144が接続されている。排出管144は、洗浄装置本体112の外部へ延びている。排出管144を介してカバー122内の洗浄液や純水が排出される。排出管144には、洗浄液や純水の排出を制御する制御バルブ144aが設けられている。主に、排出管144及び制御バルブ144aにより排出系(排出ライン)が構成される。
【0019】
洗浄装置本体112の上部には、乾燥用ガス供給管146が接続されている。乾燥用ガス供給管146の上流側には、乾燥用ガス供給源148が接続されている。乾燥用ガス供給管146には、乾燥用ガスの供給を制御する制御バルブ148aが設けられている。乾燥用ガスとしては、例えば窒素(N)ガスが用いられる。さらに、洗浄装置本体112の下部には乾燥用ガスを排気する排気管150が接続されている。排気管150には、乾燥用ガスの排気を制御する制御バルブ150aが設けられている。主に、乾燥用ガス供給管146、乾燥用ガス供給源148及び制御バルブ148aにより乾燥用ガス供給系(乾燥用ガス供給ライン)としてのNガス供給系(Nガス供給ライン)が構成される。主に、排気管150及び制御バルブ150aにより排気系(排気ライン)が構成される。
【0020】
本実施形態にかかる第1処理ユニット31は、第1処理ユニット31の各部の動作を制御する第1の制御部としての第1コントローラ180を有している。第1コントローラ180は、回転機構120、ゲートバルブ126、基板移載機127、制御バルブ132a,134a,142a,148a,144a,150a等の動作を制御する。
【0021】
(2)第2処理ユニットの構成
続いて、CVD装置として構成された本実施形態にかかる第2処理ユニット32、すなわち第2の基板処理装置の構成について、図4,5を参照しながら説明する。図4は、本発明の一実施形態にかかる第2処理ユニット32のウエハ処理時における断面構成図であり、図5は、本発明の一実施形態にかかる第2処理ユニット32のウエハ搬送時における断面構成図である。
【0022】
<処理室>
図4,5に示すとおり、本実施形態にかかる第2処理ユニット32は、第2の処理容器202を備えている。第2の処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、第2の処理容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。第2の処理容器202内には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理室201が形成されている。
【0023】
<支持台>
処理室201内には、ウエハ200を支持する支持台203が設けられている。ウエハ200が直接触れる支持台203の上面には、例えば、石英(SiO)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al)、又は窒化アルミニウム(AlN)などから構成された支持板としてのサセプタ217が設けられている。また、支持台203には、ウエハ200を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ206が内蔵されている。なお、支持台203の下端部は、第2の処理容器202の底部を貫通している。
【0024】
<昇降機構>
処理室201の外部には、支持台203を昇降させる昇降機構207bが設けられている。この昇降機構207bを作動させて支持台203を昇降させることにより、サセプタ217上に支持されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。支持台203は、ウエハ200の搬送時には図5で示される位置(ウエハ搬送位置)まで下降し、ウエハ200の処理時には図4で示される位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。なお、支持台203下端部の周囲は、ベローズ203aにより覆われており、処理室201内は気密に保持されている。
【0025】
<リフトピン>
また、処理室201の底面(床面)には、例えば3本のリフトピン208bが鉛直方向に立ち上がるように設けられている。また、支持台203(サセプタ217も含む)には、かかるリフトピン208bを貫通させる貫通孔208aが、リフトピン208bに対応する位置にそれぞれ設けられている。そして、支持台203をウエハ搬送位置まで下降させた時には、図5に示すように、リフトピン208bの上端部がサセプタ217の上面から突出して、リフトピン208bがウエハ200を下方から支持するようになっている。また、支持台203をウエハ処理位置まで上昇させたときには、図4に示すようにリフトピン208bはサセプタ217の上面から埋没して、サセプタ217がウエハ200を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン208bは、ウエハ200と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0026】
<ウエハ搬送口>
処理室201(第2の処理容器202)の内壁側面には、処理室201の内外にウエハ200を搬送するウエハ搬送口250が設けられている。ウエハ搬送口250にはゲートバルブ251が設けられており、ゲートバルブ251を開くことにより、処理室201内と搬送室(予備室)271内とが連通するようになっている。搬送室271は搬送容器(密閉容器)272内に形成されており、搬送室271内にはウエハ200を搬送する搬送ロボット273が設けられている。搬送ロボット273には、ウエハ200を搬送する際にウエハ200を支持する搬送アーム273aが備えられている。支持台203をウエハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ251を開くことにより、搬送ロボット273により処理室201内と搬送室271内との間でウエハ200を搬送することが可能となっている。処理室201内に搬送されたウエハ200は、上述したようにリフトピン208b上に一時的に載置される。なお、搬送室271のウエハ搬送口250が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット273によりロードロック室内と搬送室271内との間でウエハ200を搬送することが可能となっている。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウエハ200を一時的に収容する予備室として機能する。
【0027】
<排気系>
処理室201(第2の処理容器202)の内壁側面であって、ウエハ搬送口250の反対側には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口260が設けられている。排気口260には排気チャンバ260aを介して排気管261が接続されており、排気管261には、処理室201内を所定の圧力に制御するAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器262、原料回収トラップ263、および真空ポンプ264が順に直列に接続されている。主に、排気口260、排気チャンバ260a、排気管261、圧力調整器262、原料回収トラップ263、および真空ポンプ264により排気系(排気ライン)が構成される。
【0028】
<ガス導入口>
処理室201の上部に設けられる後述のシャワーヘッド240の上面(天井壁)には、処理室201内に各種ガスを供給するガス導入口210が設けられている。なお、ガス導入口210に接続されるガス供給系の構成については後述する。
【0029】
<シャワーヘッド>
ガス導入口210と処理室201との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド240が設けられている。シャワーヘッド240は、ガス導入口210から導入されるガスを分散させる分散板240aと、分散板240aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台203上のウエハ200の表面に供給するシャワー板240bと、を備えている。分散板240aおよびシャワー板240bには、複数の通気孔が設けられている。分散板240aは、シャワーヘッド240の上面およびシャワー板240bと対向するように配置されており、シャワー板240bは、支持台203上のウエハ200と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド240の上面と分散板240aとの間、および分散板240aとシャワー板240bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口210から供給されるガスを分散させる第1バッファ空間(分散室)240c、および分散板240aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間240dとしてそれぞれ機能する。
【0030】
<排気ダクト>
処理室201(第2の処理容器202)の内壁側面には、段差部201aが設けられている。そして、この段差部201aは、コンダクタンスプレート204をウエハ処理位置近傍に保持するように構成されている。コンダクタンスプレート204は、内周部にウエ
ハ200を収容する穴が設けられた1枚のドーナツ状(リング状)をした円板として構成されている。コンダクタンスプレート204の外周部には、所定間隔を開けて周方向に配列された複数の排出口204aが設けられている。排出口204aは、コンダクタンスプレート204の外周部がコンダクタンスプレート204の内周部を支えることができるよう、不連続に形成されている。
【0031】
一方、支持台203の外周部には、ロワープレート205が係止している。ロワープレート205は、リング状の凹部205bと、凹部205bの内側上部に一体的に設けられたフランジ部205aとを備えている。凹部205bは、支持台203の外周部と、処理室201の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部205bの底部のうち排気口260付近の一部には、凹部205b内から排気口260側へガスを排出(流通)させるプレート排気口205cが設けられている。フランジ部205aは、支持台203の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部205aが支持台203の上部外周縁上に係止することにより、ロワープレート205が、支持台203の昇降に伴い、支持台203と共に昇降されるようになっている。
【0032】
支持台203がウエハ処理位置まで上昇したとき、ロワープレート205もウエハ処理位置まで上昇する。その結果、ウエハ処理位置近傍に保持されているコンダクタンスプレート204が、ロワープレート205の凹部205bの上面部分を塞ぎ、凹部205bの内部をガス流路領域とする排気ダクト259が形成されることとなる。なお、このとき、排気ダクト259(コンダクタンスプレート204およびロワープレート205)および支持台203によって、処理室201内が、排気ダクト259よりも上方の処理室201上部と、排気ダクト259よりも下方の処理室201下部と、に仕切られることとなる。なお、コンダクタンスプレート204およびロワープレート205は、排気ダクト259の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0033】
ここで、ウエハ処理時における処理室201内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口210からシャワーヘッド240の上部へと供給されたガスは、第1バッファ空間(分散室)240cを経て分散板240aの多数の孔から第2バッファ空間240dへと入り、さらにシャワー板240bの多数の孔を通過して処理室201内に供給され、ウエハ200上に均一に供給される。そして、ウエハ200上に供給されたガスは、ウエハ200の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウエハ200に接触した後の余剰なガスは、ウエハ200外周部に位置する排気ダクト259上、すなわち、コンダクタンスプレート204上を、ウエハ200の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート204に設けられた排出口204aから、排気ダクト259内のガス流路領域内(凹部205b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト259内を流れ、プレート排気口205cを経由して排気口260へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台203の裏面や処理室201の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0034】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口210に接続されるガス供給系の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の実施形態にかかる第2処理ユニット32の有するガス供給系および排気系の構成図である。
【0035】
本発明の実施形態にかかる第2処理ユニット32の有するガス供給系は、常温で液体状態であるアルミニウム(Al)を含む液体原料を気化する気化部としてのバブラと、バブラにて液体原料を気化させて得た原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給系と
、水素含有ガスを処理室201内に供給する水素含有ガス供給系と、パージガスを処理室201内に供給するパージガス供給系と、を有している。さらに、本発明の実施形態にかかる第2処理ユニット32は、バブラからの原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスするよう排気するベント(バイパス)系を有している。以下に、各部の構成について説明する。
【0036】
<バブラ>
処理室201の外部には、液体原料を収容する原料容器としてのバブラ220aが設けられている。バブラ220aは、内部に液体原料を収容(充填)可能なタンク(密閉容器)として構成されており、また、液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる気化部としても構成されている。なお、バブラ220aの周りには、バブラ220aおよび内部の液体原料を加熱するサブヒータ206aが設けられている。原料としては、例えば、アルミニウム(Al)元素を含む金属液体原料であるTMA(トリメチルアルミニウム、Al(CH)が用いられる。
【0037】
バブラ220aには、キャリアガス供給管237aが接続されている。キャリアガス供給管237aの上流側端部には、図示しないキャリアガス供給源が接続されている。また、キャリアガス供給管237aの下流側端部はバブラ220a内に収容した液体原料内に浸されている。キャリアガス供給管237aには、キャリアガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222aと、キャリアガスの供給を制御するバルブva1,va2が設けられている。なお、キャリアガスとしては、液体原料とは反応しないガスを用いることが好ましく、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが好適に用いられる。主に、キャリアガス供給管237a、MFC222a、バルブva1,va2により、キャリアガス供給系(キャリアガス供給ライン)が構成される。
【0038】
上記構成により、バルブva1,va2を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給し、バブラ220a内部に収容された液体原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させることが可能となる。
【0039】
<原料ガス供給系>
バブラ220aには、バブラ220a内で生成された原料ガスを処理室201内に供給する原料ガス供給管213aが接続されている。原料ガス供給管213aの上流側端部は、バブラ220aの上部に存在する空間に連通している。原料ガス供給管213aの下流側端部は、ガス導入口210に接続されている。原料ガス供給管213aには、上流側から順にバルブva5,va3が設けられている。バルブva5はバブラ220aから原料ガス供給管213a内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、バブラ220aの近傍に設けられている。バルブva3は、原料ガス供給管213aから処理室201内への原料ガスの供給を制御するバルブであり、ガス導入口210の近傍に設けられている。バルブva3と後述するバルブve3は高耐久高速ガスバルブとして構成されている。高耐久高速ガスバルブは、短時間で素早くガス供給の切り替えおよびガス排気ができるように構成された集積バルブである。なお、バルブve3は、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の空間を高速にパージしたのち、処理室201内をパージするパージガスの導入を制御するバルブである。
【0040】
上記構成により、バブラ220aにて液体原料を気化させて原料ガスを発生させるとともに、バルブva5,va3を開くことにより、原料ガス供給管213aから処理室201内へ原料ガスを供給することが可能となる。主に、原料ガス供給管213a、バルブva5,va3により原料ガス供給系(原料ガス供給ライン)が構成される。
【0041】
また、主に、キャリアガス供給系、バブラ220a、原料ガス供給系により、原料供給系(原料供給ライン)が構成される。
【0042】
<水素含有ガス供給系>
また、処理室201の外部には、還元性ガスである水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給源220bが設けられている。水素含有ガス供給源220bには水素含有ガス供給管213bの上流側端部が接続されている。水素含有ガス供給管213bの下流側端部はバルブvb3を介してガス導入口210に接続されている。水素含有ガス供給管213bには、水素含有ガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222bと、水素含有ガスの供給を制御するバルブvb1,vb2,vb3と、が設けられている。水素含有ガスとしては、例えば水素(H)ガスやアンモニア(NH)ガスが用いられる。主に、水素含有ガス供給源220b、水素含有ガス供給管213b、MFC222b、バルブvb1,vb2,vb3により水素含有ガス供給系(水素含有ガス供給ライン)が構成される。
【0043】
<パージガス供給系>
また、処理室201の外部には、パージガスを供給するパージガス供給源220c,220eが設けられている。パージガス供給源220c,220eには、パージガス供給管213c,213eの上流側端部がそれぞれ接続されている。パージガス供給管213cの下流側端部は、バルブvc3を介してガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213eの下流側端部は、バルブve3を介して、原料ガス供給管213aのバルブva3とガス導入口210との間の部分に合流して、ガス導入口210に接続されている。パージガス供給管213c,213eには、パージガスの供給流量を制御する流量制御器としてのマスフローコントローラ(MFC)222c,222eと、パージガスの供給を制御するバルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3がそれぞれ設けられている。さらに、メンテナンス用として、水素含有ガス供給管213bの水素含有ガス供給源220bとバルブvb1との間に、パージガス供給管213fがバルブvc4を介して接続されている。パージガス供給管213fはパージガス供給管213cのマスフローコントローラ222cとバルブvc2との間の部分から分岐して設けられている。パージガスとしては、例えばNガスやArガスやHeガス等の不活性ガスが用いられる。主に、パージガス供給源220c,220e、パージガス供給管213c,213e,213f、MFC222c,222e、およびバルブvc1,vc2,vc3,vc4,ve1,ve2,ve3により、パージガス供給系(パージガス供給ライン)が構成される。
【0044】
<ベント(バイパス)系>
また、原料ガス供給管213aのバルブva3よりも上流側には、ベント管215aの上流側端部が接続されている。また、ベント管215a下流側端部は排気管261の圧力調整器262よりも下流側であって原料回収トラップ263よりも上流側に接続されている。ベント管215aには、ガスの流通を制御するバルブva4が設けられている。
【0045】
上記構成により、バルブva3を閉じ、バルブva4を開くことで、原料ガス供給管213a内を流れるガスを、処理室201内に供給することなく、ベント管215aを介して処理室201をバイパスさせ、排気管261より排気することが可能となる。主に、ベント管215aおよびバルブva4によりベント系(ベントライン)が構成される。
【0046】
なお、バブラ220aの周りには、サブヒータ206aが設けられることは上述した通りだが、この他、キャリアガス供給管237a、原料ガス供給管213a、パージガス供給管213e、ベント管215a、排気管261、第2の処理容器202、シャワーヘッド240等の周囲にもサブヒータ206aが設けられている。サブヒータ206aはこれ
らの部材を、例えば100℃以下の温度に加熱することで、これらの部材内部での原料ガスの再液化を防止するように構成されている。
【0047】
<第2の制御部>
本実施形態にかかる第2処理ユニット32は、第2処理ユニット32の各部の動作を制御する第2の制御部としての第2コントローラ280を有している。第2コントローラ280は、ゲートバルブ251、昇降機構207b、搬送ロボット273、ヒータ206、サブヒータ206a、圧力調整器(APC)262、真空ポンプ264、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc4,ve1〜ve3、流量コントローラ222a,222b,222c,222e等の動作を制御する。
【0048】
(3)基板処理工程
続いて、半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理システムを用いてウエハ200上に金属膜を形成する基板処理工程について、主に図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる基板処理工程のフロー図である。なお、以下の説明において、第1処理ユニット31の動作は第1コントローラ180により制御され、第2処理ユニット32の動作は第2コントローラ280により制御される。
【0049】
なお、ここでは、ウエハ200上に形成された第1の金属膜としての窒化チタニウム(TiN)膜の表面を水酸基(OH基)で終端する第1の前処理を行い、第1の前処理後のTiN膜に対して水素含有ガスとしてのHガスを供給する第2の前処理を行い、第2の前処理後のTiN膜上に第2の金属膜としてのAl膜を形成する例について説明する。なお、第1の前処理は上述の第1処理ユニット31を用いて行い、第2の前処理およびAl膜の形成は上述の第2処理ユニット32を用いて行う。なお、Al膜の形成は、第2の処理容器202内に、アルミニウム(Al)を含む原料としてTMAを供給してウエハ200上に形成されたTiN膜上にアルミニウム膜(Al膜)を形成する工程と、第2の処理容器202内にパージガスを供給して第2の処理容器202内をパージする工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことで、CVD法により、第2の前処理がなされたTiN膜上に所定膜厚のAl膜を形成する例について説明する。
【0050】
なお、本明細書では、金属膜という用語は、金属原子を含む導電性の物質で構成される膜を意味しており、これには、金属単体で構成される導電性の金属単体膜の他、導電性の金属窒化膜、導電性の金属酸化膜、導電性の金属酸窒化膜、導電性の金属複合膜、導電性の金属合金膜、導電性の金属シリサイド膜等も含まれる。なお、第1の金属膜としてのTiN膜は導電性の金属窒化膜であり、第2の金属膜としてのAl膜は導電性の金属単体膜である。以下、これを詳細に説明する。
【0051】
<第1処理ユニットへの基板搬入工程(S1)、基板支持工程(S2)>
図2(a)における第1処理ユニット31のゲートバルブ126を開くことにより第1の処理容器としての洗浄装置本体112の基板搬送口124を開放し、基板移載機127により処理対象のウエハ200を洗浄室114内に搬入する(S1)。そして基板移載機127を制御してウエハ200を支持具118に受け渡し、ウエハ200を支持具118により支持させる(S2)。基板移載機127を洗浄室114の外部に戻した後、ゲートバルブ126を閉じることにより基板搬送口124を閉塞する。その後、回転機構120により回転軸121を介して支持具118を回転させることによりウエハ200の回転を開始する。なお、ウエハ200上には、第1の金属膜としてのTiN膜が形成されている。TiN膜は、例えばCVD法やALD法やPVD法により形成される。TiN膜の表面には、TiOやTiON等の酸化物が形成されている。上述したように、Al等の金属材料は、酸化物等からなる絶縁膜には吸着し難い性質を有する。第1処理ユニット31へ搬入されたウエハ200表面の状態を図7の(a)に例示する。
【0052】
<第1の前処理工程(S3)>
〔HF洗浄工程(S3a)〕
続いて、ウエハ200の回転を維持した状態で、制御バルブ132aを開き、洗浄液供給部128からDHFをウエハ200の中心に向けて供給する。このとき、制御バルブ142aを開き、給水部140からカバー122の内面に純水を供給する。これによりカバー122の内面に飛ばされたDHFを洗い流すことができる。制御バルブ144aを開くことで、ウエハ200に供給されたDHFや、カバー122の内面に供給された純水は、排水管144を介して外部に排出される。このときウエハ200上に供給されたDHFにより、ウエハ200に対して第1の前処理がなされる。すなわち、DHFがウエハ200に供給されることで、DHFに含まれるHF分子およびHO分子と、ウエハ200上に形成されているTiN表面上の酸化物であるTiO,TiON等とが反応し、TiFやO等が生成されてTiOやTiON等が除去されると共に、TiN膜の表面が露出される。そして、露出したTiN膜の表面がOH基により終端される。TiN膜の表面がOH基により終端された様子を図7の(b)に例示する。
【0053】
〔リンス工程(S3b)〕
TiN膜表面のOH基による終端が完了したら、ウエハ200の回転を維持した状態で、制御バルブ132aを閉じて洗浄液供給部128からのDHFの供給を停止し、制御バルブ134aを開き、リンス水供給部130からリンス水としての純水をウエハ200の中心に向けて供給し、ウエハ表面に残留するDHFを洗い流す。このときも、制御バルブ142aを開き、給水部140からカバー122の内面に純水を供給する。これによりカバー122の内面に飛ばされた残留DHFを洗い流すことができる。制御バルブ144aを開くことで、洗い流されたDHFや、カバー122の内面に供給された純水は、排水管144を介して外部に排出される。
【0054】
〔乾燥工程(S3c)〕
ウエハ表面に残留するDHFを洗い流した後、ウエハ200の回転を維持した状態で、制御バルブ134a,142aを閉じてリンス水供給部130からのリンス水の供給および給水部140からの純水の供給を停止し、ウエハ200上のリンス水等を回転による遠心力でふるい落とす。このとき、制御バルブ148aを開き、乾燥用ガス供給源148から乾燥用ガス供給管146を介して乾燥用ガスとしてのNを洗浄室114内に供給して、洗浄室114内をN雰囲気とし、このN雰囲気中でウエハ200を乾燥させる。制御バルブ150aを開くことで、洗浄室114内に供給されたNは排気管150を介して外部に排気される。ウエハ200が乾燥した後、回転機構120による支持具118の回転を停止することによりウエハ200の回転を停止する。また、制御バルブ148aを閉じることによりNの洗浄室114内への供給も停止する。
【0055】
<第1処理ユニットからの基板搬出工程(S4)>
その後、第1処理ユニット31のゲートバルブ126を開くことにより洗浄装置本体112の基板搬送口124を開放し、基板移載機127により第1の前処理が終了したウエハ200を洗浄室114内から搬出する。搬出後、ゲートバルブ126を閉じることにより基板搬送口124を閉塞する。洗浄室114内から搬出された第1の前処理が終了したウエハ200は、第2処理ユニット32に搬送される。このとき、ウエハ200上に形成されたTiN膜の表面はOH基により終端された状態が維持されている。なお、後述するように、TiN膜の表面は、OH基により終端されるだけではAlが吸着し易い状態とはならない。
【0056】
<第2処理ユニットへの基板搬入工程(S5)、基板載置工程(S6)>
続いて、第1の前処理が終了したウエハ200を、第2処理ユニット32のロードロッ
ク室内に搬入する。ロードロック室内に搬入されたウエハ200は、搬送ロボット273によりロードロック室内から搬送室271内に搬送される。このとき、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図5に示すウエハ搬送位置まで下降させる。そして、ゲートバルブ251を開き、処理室201と搬送室271とを連通させる。そして、搬送ロボット273により搬送室271内から処理室201内へ処理対象の第1の前処理が終了したウエハ200を搬送アーム273aで支持した状態で搬入する(S5)。処理室201内に搬入したウエハ200は、支持台203の上面から突出しているリフトピン208b上に一時的に載置される。搬送ロボット273の搬送アーム273aが処理室201内から搬送室271内へ戻ると、ゲートバルブ251が閉じられる。
【0057】
続いて、昇降機構207bを作動させ、支持台203を、図4に示すウエハ処理位置まで上昇させる。その結果、リフトピン208bは支持台203の上面から埋没し、ウエハ200は、支持台203上面のサセプタ217上に載置される(S6)。
【0058】
<圧力調整工程(S7)、温度調整工程(S8)>
続いて、圧力調整器(APC)262により、処理室201内の圧力が所定の処理圧力となるように制御する(S7)。また、ヒータ206に供給する電力を調整し、ウエハ200の表面温度が所定の処理温度となるように制御する(S8)。なお、温度調整工程(S8)は、圧力調整工程(S7)と並行して行うようにしてもよいし、圧力調整工程(S7)よりも先行して行うようにしてもよい。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述する原料供給工程(S10a)において、CVD法によりAl膜を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、原料供給工程(S10a)で用いる原料が自己分解する程度の処理温度、処理圧力である。なお、ここでいう所定の処理温度、処理圧力は、後述する水素含有ガス供給工程(S9a)において、ウエハ200に対して水素含有ガスによる第2の前処理がなされ得る処理温度、処理圧力でもある。
【0059】
なお、第2処理ユニットへの基板搬入工程(S5)、基板載置工程(S6)、圧力調整工程(S7)、および温度調整工程(S8)においては、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3,vb3を閉じ、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開くことで、処理室201内にNガスを常に流しておく。これにより、ウエハ200上へのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0060】
<第2の前処理工程(S9)>
〔水素含有ガス供給工程(S9a)〕
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブvb1,vb2,vb3を開いて、処理室201内への水素含有ガスとしてのHガスまたはNHガスの供給を開始する。水素含有ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウエハ200上に均一に供給される。余剰な水素含有ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このときウエハ200上に供給された水素含有ガスにより、ウエハ200に対して第2の前処理がなされる。すなわち、ウエハ200上のTiN膜表面を終端しているOH基が、処理室201内に供給された水素含有ガスと反応してHOとなって、TiN膜表面から除去されると共に、TiN膜表面が水素(H)により終端される。TiN膜の表面がHにより終端された様子を図7(c)に例示する。なお、TiN膜の表面がHにより終端されることで、TiN膜の表面にはAlが吸着し易くなる。
【0061】
なお、処理室201内への水素含有ガスの供給時には、原料ガス供給管213a内への水素含有ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における水素含有ガスの拡散を促すように、バルブve1,ve2,ve3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0062】
バルブvb1,vb2,vb3を開き水素含有ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブvb1,vb2,vb3を閉じ、処理室201内への水素含有ガスの供給を停止する。その後、水素含有ガス供給源220bに設けられた図示しないバルブを閉じた状態で、バルブvc1,vc4,vb1,vb2,vb3を開き、水素含有ガス供給管213b内にNガスを供給して、水素含有ガス供給管213b内をパージする。
【0063】
〔パージ工程(S9b)〕
その後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している水素含有ガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。パージ工程(S9b)を実施することにより、後述する原料供給工程(S10a)にて供給する原料ガスが水素含有ガス等と混合してしまうことを抑制できる。但し、パージ工程(S9b)は必ずしも実施しなくてもよい。
【0064】
工程S1〜S9と並行して、原料(TMA)を気化させて原料ガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、バルブva1,va2,va5を開き、キャリアガス供給管237aからMFC222aで流量制御されたキャリアガスをバブラ220a内に供給することにより、バブラ220a内部に収容された原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させておく(予備気化工程)。この予備気化工程では、真空ポンプ264を作動させつつ、バルブva3を閉じたまま、バルブva4を開くことにより、原料ガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。バブラにて原料ガスを安定して生成させるには所定の時間を要する。このため、本実施形態では、原料ガスを予め生成させておき、バルブva3,va4の開閉を切り替えることにより、原料ガスの流路を切り替える。その結果、バルブの切り替えにより、処理室201内への原料ガスの安定した供給を迅速に開始あるいは停止できるようになり、好ましい。
【0065】
<Al膜形成工程(S10)>
〔原料供給工程(S10a)〕
続いて、真空ポンプ264を作動させたまま、バルブva4を閉じ、バルブva3を開いて、処理室201内への原料ガス(Al原料)の供給を開始する。原料ガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内のウエハ200上に均一に供給される。余剰な原料ガスは、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。このとき処理温度、処理圧力は原料ガスが自己分解する程度の処理温度、処理圧力とされるので、ウエハ200上に供給された原料ガスが熱分解することでCVD反応が生じ、これにより第2の前処理がなされたウエハ200上にAl膜が形成される。
【0066】
なお、処理室201内への原料ガスの供給時には、水素含有ガス供給管213b内への原料ガスの侵入を防止するように、また、処理室201内における原料ガスの拡散を促すように、バルブvc1,vc2,vc3は開いたままとし、処理室201内にNガスを常に流しておくことが好ましい。
【0067】
バルブva3を開き原料ガスの供給を開始した後、所定時間が経過したら、バルブva3を閉じ、バルブva4を開いて、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。
【0068】
〔パージ工程(S8b)〕
バルブva3を閉じ、原料ガスの供給を停止した後は、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内にNガスを供給する。Nガスは、
シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留している原料ガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0069】
〔所定回数実施工程(S10c)〕
以上の原料供給工程(S10a)、パージ工程(S10b)を1サイクルとして、このサイクルを所定回数実施することにより、第2の前処理工程(S9)がなされたTiN膜上に、第2の金属膜としての所定膜厚のアルミニウム膜(Al膜)を形成する。なお、本実施形態では、原料をパルス状に流すだけでなく、連続的に流すようにしてもよく、原料供給工程とパージ工程とのサイクルを1回実施するのがこのケース(原料を連続供給するケース)に相当する。
【0070】
〔残留ガス除去工程(S11)〕
ウエハ200上に所定膜厚のAl膜が形成された後、処理室201内の真空引きを行い、バルブvc1,vc2,vc3,ve1,ve2,ve3を開き、処理室201内にNガスを供給する。Nガスは、シャワーヘッド240により分散されて処理室201内に供給され、排気ダクト259内を流れ、排気口260、排気管261へと排気される。これにより、処理室201内に残留しているガスや反応副生成物を除去し、処理室201内をNガスによりパージする。
【0071】
<第2処理ユニットからの基板搬出工程(S12)>
その後、上述した第2処理ユニットへの基板搬入工程(S5)、基板載置工程(S6)に示した手順とは逆の手順により、所定膜厚のAl膜を形成した後のウエハ200を処理室201内から搬送室271内へ搬出し、搬送室271内からロードロック室内へ搬送し、ロードロック室内から第2処理ユニット32の外部へ搬出して、本実施形態にかかる基板処理工程を完了する。
【0072】
なお、本実施形態における水素含有ガスによる第2の前処理工程(S9)でのウエハ200の処理条件としては、
処理温度(ウエハ温度):150〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):13〜1333Pa(0.1〜10Torr)、
水素含有ガス(HガスまたはNHガス)供給流量:0.1〜5slm、
水素含有ガス(HガスまたはNHガス)供給時間:10秒〜30分、
パージガス(N)供給流量:10〜10000sccm、
が例示される。
【0073】
また、本実施形態におけるAl膜形成工程(S10)でのウエハ200の処理条件としては、
処理温度(ウエハ温度):150〜400℃、
処理圧力(処理室内圧力):13〜1333Pa(0.1〜10Torr)、
バブリング用キャリアガス供給流量:10〜1000sccm、
(アルミニウム原料(TMA)ガス供給流量:0.1〜5slm)
パージガス(N)供給流量:10〜10000sccm、
1サイクルあたりの原料(TMA)供給時間:0.1〜600秒、
1サイクルあたりのパージ時間:0.1〜600秒、
サイクル数:1〜400回、
Al膜厚:10〜200nm
が例示される。なお、処理温度(ウエハ温度)および処理圧力(処理室内圧力)については、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)とで一定とすることが好まし
い。
【0074】
なお、上述の処理圧力帯で、処理温度を150℃未満とすると、原料供給工程(S8a)において、原料(TMA)が自己分解せず、CVDによる成膜反応が生じなくなる。また、上述の処理圧力帯で、処理温度が400℃を超えると、成膜レートが上昇し過ぎ、膜厚を制御するのが難しくなる。よって、原料供給工程(S10a)において、CVDによる成膜反応を生じさせ、膜厚を制御可能とするためには、処理温度を150℃以上、400℃以下とする必要がある。なお、この処理圧力帯、処理温度帯であれば、水素含有ガス供給工程(S9a)において、ウエハ200に対して第2の前処理がなされ得ることを確認している。よって、本実施形態では、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)とを、同様の処理温度帯、同様の処理圧力帯に設定して行っている。これにより、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)との間に、処理温度を変更する工程や処理圧力を変更する工程を設けることが不要となり、スループット、すなわち生産性を向上させることができる。なお、生産性向上の観点では、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)とを、同様の処理温度帯で行うことは重要であるが、処理圧力の変更については生産性に及ぼす影響は小さい。よって、第2の前処理工程(S9)では、第2の前処理に最適な圧力帯を選択するようにすればよい。
【0075】
本実施形態によれば、第2の前処理工程(S9)の前に、第1の前処理工程(S3)においてウエハ200に対してHF水溶液を用いた第1の前処理を施すことにより、TiN膜表面上の酸化物であるTiO,TiON等を除去すると共に、露出させたTiN膜の表面をOH基により終端する。また、Al膜形成工程(S10)の前に、第2の前処理工程(S9)においてウエハ200に対して水素含有ガスを用いた第2の前処理を施すことにより、TiN膜表面上のOH基を除去すると共に、露出させたTiN膜の表面をHにより終端する。これにより、TiN膜の表面にAlが吸着し易い状態を作り出すことができ、Al膜形成工程(S10)において初期核形成密度が密になり、その結果、薄膜領域での連続膜(低抵抗膜)の形成を安定して行うことが可能となり、表面ラフネスが少なく、良好な表面モフォロジを有する良質なAl膜を形成することが可能となる。
【0076】
なお、良質なAl膜を形成するには、下地となるTiN膜表面が上述のようにHで終端されていることが好ましい。そのため、第2の前処理工程(S9)をAl膜形成工程(S10)の直前に行うのが好ましい。本実施形態によれば、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)とを同一の第2の処理容器202内で連続的に行うようにしているため、第2の前処理工程(S9)をAl膜形成工程(S10)の直前に行うことが可能となる。なお、第2の前処理工程(S9)とAl膜形成工程(S10)とを別の処理容器で行うようにすると、TiN膜表面がHで終端された状態を、Al膜形成工程(S10)を実施するときまで維持できない可能性がある。
【0077】
上述の実施形態では、水素含有ガスとしてHガスまたはNHガスのいずれも用いることが出来るが、Hガスを用いると特に大きな効果を得ることができる。また、水素含有ガスとして、HガスまたはNHガスをプラズマや熱などの活性化手段により活性化させて生成したラジカル種やイオン種を用いることも出来る。
【0078】
上述の実施形態では、第1の金属膜としてTiN膜を用いたが、TiN膜の他、窒化タンタル(TaN)膜等を用いてもよい。なお、TaNは導電性の金属窒化膜である。
【0079】
上述の実施形態では、Al膜の形成に用いる金属原料としてTMAを用いたが、TMAの他、TEAL(トリエチルアルミニウム、Al(C)、TIBA(トリイソブチルアルミニウム、Al[(CHCHCH)、DMAH(ジメチルアルミハイドライド、Al(CHH)、DMEAA(ジメチルエチルアミノアラン、(C
N:AlH)等を用いてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、原料をバブリングにより気化させて原料ガスを生成させる例について説明したが、本発明はこれに限定されず、原料を気化器により気化させて原料ガスを生成するようにしてもよい。
【0081】
上述の実施形態では、金属原料を間欠的に供給するCVD法を用いてAl膜を形成する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、金属原料を連続的に供給するCVD法や、2種以上のガスを交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法を用いてAl膜を形成してもよい。
【0082】
上述の実施形態では、第2の金属膜としてAl膜を形成する例について説明したが、Al膜の他、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、チタニウム(Ti)、タングステン(W)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)等の金属元素を含む金属膜を第2の金属膜として形成する場合にも本発明は好適に適用できる。
【0083】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、第2処理ユニット32として1度に1枚の基板を処理する枚葉式のCVD装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、第2処理ユニット32として1度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型CVD装置を用いて成膜するようにしてもよい。以下、この縦型CVD装置について説明する。
【0084】
図6は、本実施形態にかかる第2処理ユニット32としての縦型CVD装置の縦型処理炉の概略構成図であり、(a)は、処理炉302部分を縦断面で示し、(b)は、処理炉302部分を図6(a)のA−A線断面図で示す。
【0085】
図6(a)に示されるように、処理炉302は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ307を有する。ヒータ307は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0086】
ヒータ307の内側には、ヒータ307と同心円状に反応管としてのプロセスチューブ303が配設されている。プロセスチューブ303は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ303の筒中空部には処理室301が形成されており、基板としてのウエハ200を、後述するボート317によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0087】
プロセスチューブ303の下方には、プロセスチューブ303と同心円状にマニホールド309が配設されている。マニホールド309は、例えばステンレス等からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド309は、プロセスチューブ303に係合しており、プロセスチューブ303を支持するように設けられている。なお、マニホールド309とプロセスチューブ303との間には、シール部材としてのOリング320aが設けられている。マニホールド309がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ303は垂直に据え付けられた状態となっている。プロセスチューブ303とマニホールド309とにより反応容器が形成される。
【0088】
マニホールド309には、第1ガス導入部としての第1ノズル333aと、第2ガス導入部としての第2ノズル333bとが、マニホールド309の側壁を貫通するように接続
されている。第1ノズル333aと第2ノズル333bは、それぞれ水平部と垂直部とを有するL字形状であり、水平部がマニホールド309に接続され、垂直部がプロセスチューブ303の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、プロセスチューブ303の下部より上部の内壁に沿って、ウエハ200の積載方向に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル333a、第2ノズル333bの垂直部の側面には、ガスを供給する供給孔である第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bがそれぞれ設けられている。この第1ガス供給孔348a、第2ガス供給孔348bは、それぞれ下部から上部にわたって同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0089】
第1ノズル333a、第2ノズル333bに接続されるガス供給系は、上述の実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、第1ノズル333aに原料ガス供給系が接続され、第2ノズル333bに水素含有ガス供給系が接続される点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、原料ガスと水素含有ガスとを、別々のノズルにより供給する。なお、原料ガスと水素含有ガスとは同一のノズルにより供給するようにしてもよい。
【0090】
マニホールド309には、処理室301内の雰囲気を排気する排気管331が設けられている。排気管331には、圧力検出器としての圧力センサ345および圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ342を介して、真空排気装置としての真空ポンプ346が接続されており、圧力センサ345により検出された圧力情報に基づきAPCバルブ342を調整することで、処理室301内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ342は弁を開閉して処理室301内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調整して処理室301内の圧力を調整することができるよう構成されている開閉弁である。
【0091】
マニホールド309の下方には、マニホールド309の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ319が設けられている。シールキャップ319は、マニホールド309の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ319は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ319の上面には、マニホールド309の下端と当接するシール部材としてのOリング320bが設けられている。シールキャップ319の処理室301と反対側には、後述するボート317を回転させる回転機構367が設置されている。回転機構367の回転軸355は、シールキャップ319を貫通して、ボート317に接続されており、ボート317を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ319は、プロセスチューブ303の外部に配置された昇降機構としてのボートエレベータ315によって、垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート317を処理室301内に対し搬入搬出することが可能となっている。
【0092】
基板保持具としてのボート317は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。なお、ボート317の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱部材318が設けられており、ヒータ307からの熱がシールキャップ319側に伝わりにくくなるように構成されている。プロセスチューブ303内には、温度検出器としての温度センサ363が設置されており、温度センサ363により検出された温度情報に基づきヒータ307への通電具合を調整することにより、処理室301内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。温度センサ363は、第1ノズル333aおよび第2ノズル333bと同様に、プロセスチューブ303の内壁に沿って設けられている。
【0093】
制御部(制御手段)であるコントローラ380は、APCバルブ342、ヒータ307、温度センサ363、真空ポンプ346、回転機構367、ボートエレベータ315、バルブva1〜va5,vb1〜vb3,vc1〜vc4,ve1〜ve3、流量コントローラ222a,222b,222c,222e等の動作を制御する。
【0094】
次に、上記構成にかかる縦型CVD装置の処理炉302を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、CVD法によりウエハ200上に金属膜を形成する基板処理工程について説明する。なお、以下の説明において、縦型CVD装置を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0095】
第1の前処理工程(S3)を実施した後の複数枚のウエハ200をボート317に装填(ウエハチャージ)する。そして、図6(a)に示すように、複数枚のウエハ200を保持したボート317を、ボートエレベータ315によって持ち上げて処理室301内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ319はOリング320bを介してマニホールド309の下端をシールした状態となる。
【0096】
処理室301内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ346によって処理室301内を真空排気する。この際、処理室301内の圧力を圧力センサ345で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ342をフィードバック制御する。また、処理室301内が所望の温度となるように、ヒータ307によって加熱する。この際、処理室301内が所望の温度分布となるように、温度センサ363が検出した温度情報に基づきヒータ307への通電具合をフィードバック制御する。続いて、回転機構367によりボート317を回転させることで、ウエハ200を回転させる。
【0097】
その後、上述の実施形態における第2の前処理工程(S9)、Al膜形成工程(S10)と同様な手順で、第2の前処理工程、Al膜形成工程を行う。ウエハ200上に、所定膜厚のAl膜が形成された後、上述の実施形態における残留ガス除去工程(S11)と同様な手順で残留ガス除去工程を行う。
【0098】
その後、ボートエレベータ315によりシールキャップ319を下降させて、マニホールド309の下端を開口させるとともに、所定膜厚のAl膜が形成された後のウエハ200を、ボート317に保持させた状態でマニホールド309の下端からプロセスチューブ303の外部に搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウエハ200をボート317より取り出す(ウエハディスチャージ)。
【0099】
以上のように第2処理ユニット32としてバッチ式の縦型CVD装置を用いても、上述の実施形態に係る基板処理工程と同様の工程を実施することが可能であり、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0100】
以下に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。図8は、本発明の実施例および比較例における評価サンプルの電子顕微鏡画像(SEM画像)を示す図である。
【0101】
(実施例1)
図8の(a)に、本実施例における評価サンプルの表面画像(SEM画像)を示す。本実施例では、厚さ100nmのSiO膜、厚さ10nmのTiN膜が表面に順に積層されたウエハに対して、上述の実施形態で説明した基板処理システムを用い、HF水溶液を用いた第1の前処理工程、水素含有ガスとしてのHガスを用いた第2の前処理工程、および原料としてのTMAを用いたAl膜形成工程を順に実施して、評価サンプルを作成した。そして、評価サンプルのAl膜の表面を電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。
なお、第1の前処理工程、第2の前処理工程、およびAl膜形成工程は、上述の実施形態における第1の前処理工程、第2の前処理工程、およびAl膜形成工程の処理フローと同様に行った。また、第2の前処理工程における水素含有ガス供給時間を3分とし、Al膜形成工程における原料供給工程の実施時間を1秒とし、Al膜形成工程におけるパージ工程の実施時間を5秒とした。それ以外の処理条件は、上述の実施形態における各工程の処理条件の範囲内の値に設定した。
【0102】
図8の(a)に示すように、本実施例では、厚さ50nm〜70nmの連続的なAl膜をTiN膜の表面に成膜させることができた。これは、本実施例では第1の前処理工程と第2の前処理工程とを実施しているため、図7の(c)に示すように、Al膜形成工程を実施する直前のTiN膜の表面がTiOやTiON等の酸化物で覆われることなく露出していると共にHにより終端され、Alが吸着し易い状態となっていることが原因と考えられる。すなわち、第1の前処理工程と第2の前処理工程とを実施することで、TiN膜の表面にAlが吸着し易い状態を作り出すことができることが分かる。
【0103】
(比較例1)
図8の(b)に、比較例1における評価サンプルの表面画像(SEM画像)を示す。本比較例では、上述のウエハに対して、第1の前処理工程を行った後、第2の前処理工程を行わずにAl膜形成工程を実施して、評価サンプルを作成した。第1の前処理工程、Al膜形成工程の処理フローおよび処理条件は実施例1と同様とした。そして、評価サンプルの表面を電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。
【0104】
図8の(b)に示すように、本比較例では、AlはTiN膜上にアイランド状に形成され、連続的な膜とならなかった。なお、Alの厚さは0〜20nmであった。これは、本比較例では第2の前処理工程を行っていないため、図7の(d)に示すように、Al膜形成工程を実施する直前のTiN膜の表面がTiOやTiON等の酸化物で覆われることなく露出しているものの、OH基で終端されたままの状態となっていることが原因と考えられる。すなわち、DHFを供給する第1の前処理工程を実施するだけでは、TiN膜の表面にAlが吸着しにくい状態が維持されてしまうことが分かる。
【0105】
(比較例2)
図8の(c)に、比較例2における評価サンプルの表面画像(SEM画像)を示す。本比較例では、上述のウエハに対して、第1の前処理工程を行わずに、第2の前処理工程およびAl膜形成工程を順に実施して、評価サンプルを作成した。第2の前処理工程、Al膜形成工程の処理フローおよび処理条件は実施例1と同様とした。そして、評価サンプルの表面を電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。
【0106】
図8の(c)に示すように、本比較例では、AlはTiN膜上にアイランド状に形成され、連続的な膜とならなかった。なお、Alの厚さは0〜20nmであった。これは、本比較例では第1の前処理工程を行っていないため、図7の(e)に示すように、Al膜形成工程を実施する直前のTiN膜の表面にはTiOやTiON等の酸化物が形成されたままの状態となっていることが原因と考えられる。すなわち、Hガスを供給する第2の前処理工程を実施するだけでは、TiOやTiON等の酸化物を除去することができず、TiN膜の表面にAlが吸着しにくい状態が維持されてしまうことが分かる。
【0107】
(比較例3)
図8の(d)に、比較例3における評価サンプルの表面画像(SEM画像)を示す。本比較例では、表面にTiN膜が形成されておらずSiが露出しているウエハに対して、第1の前処理工程、第2の前処理工程、Al膜形成工程を順に実施して、評価サンプルを作成した。そして、評価サンプルの表面を電子顕微鏡により観察した(SEM観察)。
【0108】
図8の(d)に示すように、本比較例では、第1の前処理工程及び第2の前処理工程を行ってもAl膜を成長させることができなかった。これは、本比較例では、ウエハ搬送時等にウエハ表面のSiが酸化されてしまい、Al膜形成工程直前においてウエハ表面にSiO膜が形成された状態となってしまったことが原因と考えられる。すなわち、第1の前処理工程及び第2の前処理工程を行っても、Al膜形成工程直前の下地が絶縁物となってしまうと、Alを成長させることができないことが分かる。
【0109】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0110】
本発明の一態様によれば、
基板上に形成された第1の金属膜(TiN膜)の表面を水酸基(OH基)で終端する第1の前処理を行う工程と、
前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して水素含有ガスを供給して第2の前処理を行う工程と、
前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0111】
好ましくは、前記第2の前処理を行う工程と前記第2の金属膜を形成する工程とは、同一の処理容器内で連続的に行われる。
【0112】
また好ましくは、前記第1の金属膜がTiN膜またはTaN膜である。
【0113】
また好ましくは、前記第2の金属膜がAl膜である。
【0114】
また好ましくは、前記第1の前処理が、基板上に形成された第1の金属膜(TiN膜)の表面の酸化物を除去し、その表面を水酸基(OH基)で終端する処理である。
【0115】
また好ましくは、前記第1の前処理が、HF水溶液による前記第1の金属膜の表面の洗浄処理である。
【0116】
また好ましくは、前記第2の前処理が、水酸基終端した前記第1の金属膜の表面を水素終端する処理である。
【0117】
また好ましくは、前記水素含有ガスがHガスまたはNHガスである。
【0118】
本発明の他の態様によれば、
基板上に形成された第1の金属膜(TiN膜)の表面を水酸基終端する工程と、
水酸基終端した前記第1の金属膜の表面を水素終端する工程と、
水素終端した前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0119】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する第1の処理容器と、
前記第1の処理容器内にHF水溶液を供給するHF水溶液供給系と、
前記第1の処理容器内に収容した基板に対してHF水溶液を供給して基板上に形成された第1の金属膜(TiN膜)の表面を水酸基(OH基)で終端する第1の前処理を行うように前記HF水溶液供給系を制御する第1の制御部と、
基板を処理する第2の処理容器と、
前記第2の処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記第2の処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記第2の処理容器内に収容した基板に対して水素含有ガスを供給して前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して第2の前処理を行い、その後、基板に対して原料ガスを供給して前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成するように、前記水素含有ガス供給系および前記原料ガス供給系を制御する第2の制御部と、
を有する基板処理システムが提供される。
【符号の説明】
【0120】
101 第1の処理容器
180 第1コントローラ(第1の制御部)
200 ウエハ(基板)
280 第2コントローラ(第2の制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1の金属膜の表面を水酸基で終端する第1の前処理を行う工程と、
前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して水素含有ガスを供給して第2の前処理を行う工程と、
前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の前処理を行う工程と前記第2の金属膜を形成する工程とは、同一の処理容器内で連続的に行われることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の金属膜がTiN膜またはTaN膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の金属膜がAl膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
基板を処理する第1の処理容器と、
前記第1の処理容器内にHF水溶液を供給するHF水溶液供給系と、
前記第1の処理容器内に収容した基板に対してHF水溶液を供給して基板上に形成された第1の金属膜の表面を水酸基で終端する第1の前処理を行うように前記HF水溶液供給系を制御する第1の制御部と、
基板を処理する第2の処理容器と、
前記第2の処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記第2の処理容器内に原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記第2の処理容器内に収容した基板に対して水素含有ガスを供給して前記第1の前処理後の前記第1の金属膜に対して第2の前処理を行い、その後、基板に対して原料ガスを供給して前記第2の前処理後の前記第1の金属膜上に第2の金属膜を形成するように、前記水素含有ガス供給系および前記原料ガス供給系を制御する第2の制御部と、
を有することを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−190499(P2011−190499A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57741(P2010−57741)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】