説明

半導体装置の製造方法

【課題】シリサイド層を備える半導体装置において、シリコン基板と不純物拡散層との間の接合リーク電流を低減することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る半導体装置の製造方法は、(a)シリコン基板1表面に不純物拡散層5,8を形成する工程と、(b)不純物拡散層のうち第2の不純物拡散層8上に、ニッケルからなる金属膜9を形成する工程とを備える。そして、(c)窒素濃度が80%以上の雰囲気で、スパッタによりチタンを含むチタンナイトライド膜10を金属膜9上に形成する工程を備える。そして、(d)工程(c)の後に、熱処理により第2の不純物拡散層8のシリコンと、ニッケルとを反応させてシリサイド層11を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものであり、特に、シリサイド層が形成されたMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のMISFETにおけるシリサイド層は、スパッタにより、高融点金属からなる金属膜をシリコン表面に形成する。そして、その金属膜上に、窒素濃度が70%程度の窒素とアルゴンの混合ガスを用いたスパッタにより、金属膜酸化防止用のチタンナイトライド膜を形成する。それから、熱処理を施し、いわゆるサリサイド法により金属膜とシリコンとを反応させて、シリサイド層を形成する。特許文献1には、上述の金属膜が、コバルトである場合の半導体装置が記載されている。
【0003】
一方、コバルトからなるシリサイド層では、パターンを微細化すると抵抗上昇が大きい。そのため、65nmプロセス以降の世代の半導体装置では、より抵抗上昇が小さいニッケルおよびその合金からなるシリサイド層を設けた半導体装置が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−288241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニッケルの採用により、細線抵抗は安定した。しかしながら、シリサイド層を形成する金属を、コバルトからニッケルに変更したことに伴い、シリコン基板と不純物拡散層との間の逆方向接合リーク電流が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、シリサイド層を備える半導体装置において、シリコン基板と不純物拡散層との間の接合リーク電流を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、(a)シリコン基板表面に不純物拡散層を形成する工程と、(b)前記不純物拡散層上に、第1の金属からなる第1の層を形成する工程とを備える。そして、(c)窒素濃度が80%以上の雰囲気で、スパッタにより第2の金属を含む第2の層を前記第1の層上に形成する工程を備える。そして、(d)前記工程(c)の後に、熱処理により前記不純物拡散層のシリコンと、前記第1の金属とを反応させてシリサイド層を形成する工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、シリサイド層を備える半導体装置において、シリコン基板と不純物拡散層との間の接合リーク電流を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する前に、本発明の前提となる半導体装置の製造方法について説明する。ここでいう半導体装置は、例えば、65nmプロセス以降の高集積なSoC、SRAMを形成するMISFETが該当する。図5は、本発明の前提となる製造方法により形成される半導体装置の断面を製造フローに従って示した図である。
【0010】
図5(a)は、シリサイド層形成プロセスを行う前の下地構造を示す。図5(a)に示すように、シリコン基板1表面に第1の不純物拡散層5、第2の不純物拡散層8よりなる不純物拡散層を形成する。図5(a)では、シリコン基板1に、素子分離絶縁膜2と、ゲート絶縁膜3と、ゲート電極4と、シリコン酸化膜6、シリコン窒化膜7よりなるサイドウォールがさらに形成されている。ここで、図5(a)の下地構造の形成について簡単に説明する。
【0011】
ゲート電極4は、素子分離絶縁膜2により画定されたシリコン基板1上にゲート絶縁膜3を介して形成される。このゲート電極4は、例えば、ポリシリコンとシリコン酸化膜との積層構造体から構成される。ゲート電極4の高さは、例えば、100nmとなるように形成される。
【0012】
第1の不純物拡散層5は、シリコン基板1表面に、ゲート電極4をマスクとするイオン注入により形成される。シリコン酸化膜6とシリコン窒化膜7との積層よりなるサイドウォールは、ゲート電極4の側面に形成される。第2の不純物拡散層8は、シリコン基板1表面に、ゲート電極4および上述のサイドウォールをマスクにして形成される。
【0013】
次に、外部に露出したシリコン表面の自然酸化膜を、例えば、希釈したフッ化水素水溶液にて除去する。その後、図5(b)に示すように、第2の不純物拡散層8上に、金属膜9を、例えば、スパッタにより形成する。図5(b)に係る半導体装置の製造方法では、ゲート電極4、上述のサイドウォール、素子分離絶縁膜2上にも形成される。金属膜9を構成する金属は、例えば、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれか一つが該当する。ここでは、金属膜9を構成する金属は、ニッケルであるものとして説明する。金属膜9の厚さは、例えば、10nmとなるように形成する。
【0014】
それから、窒素濃度が70%となる雰囲気で、スパッタによりチタンナイトライド膜10を金属膜9上に形成する。このチタンナイトライド膜10は、金属膜9の酸化を防止するための膜である。スパッタは、例えば、アルゴン流量:15sccm、窒素流量:35sccm、成膜温度:100℃、成膜圧力:5mTorr、スパッタパワー:1kWにて行う。ここで、チタンナイトライド膜10の厚さは、例えば、10nmとなるように形成する。
【0015】
その後、例えば、ランプアニール装置を用いて250〜400℃の熱処理を施す。こうして、いわゆるサリサイド法により、図5(c)に示すように、第2の不純物拡散層8のシリコンと、ニッケルとを反応させてシリサイド層11を形成する。図5(c)に係る半導体装置の製造方法では、ゲート電極4のシリコンにおいても、同様にシリサイド層13が形成される。シリサイド層11,13表面にはチタンナイトライド膜10が残り、また、素子分離絶縁膜2、ゲート電極4側面のサイドウォール表面にはシリサイド化しなかった金属膜9とチタンナイトライド膜10が残る。
【0016】
その後、図5(d)に示すように、例えば、硫酸と過酸化水素水の混合液により、金属膜9とチタンナイトライド膜10を除去する。その後、図5(e)に示すように、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜14を形成し、通常のCMOSプロセスを用いて配線工程を行うことでトランジスタを形成する。
【0017】
以上の工程からなる製造方法により形成した半導体装置において、シリコン基板1と、第1の不純物拡散層5、第2の不純物拡散層8よりなる不純物拡散層との間の逆方向接合リークについて測定した。なお、ここでは簡単のため、パターニングウェハに、上述の不純物拡散層に相当するN型拡散領域と、シリコン基板1に相当するP型ウェルと、シリサイド層11に相当するシリサイド層とを形成し、N型拡散領域とP型ウェルとの間に1.2Vの電圧を印加した場合の逆方向接合リーク電流を測定した。
【0018】
図6は、その測定結果を示す図である。この図6の横軸は接合リーク電流、縦軸は累積度数である。ここで、累積度数とは、製造した半導体装置全数のうち、横軸に示す接合リーク電流以下となる半導体装置が得られる割合を示す。この図に示すように、約90%の数の半導体装置において、接合リーク電流が1E−10(A)程度となるが、残りの約10%の数の半導体装置において、接合リーク電流が1E−7(A)以上となり、落ちこぼれが生じていることが分かる。このように、上述の工程からなる半導体装置の製造方法では、シリコン基板1と、上述の不純物拡散層との間の接合リーク電流が大きいという問題があった。
【0019】
図1は、スパッタによるチタンナイトライド膜10形成時の窒素分圧と、チタンナイトライド膜10の抵抗率との関係を示した図である。なお、図1横軸の窒素分圧は、窒素濃度に相当し、以下、同様の意味で用いる。図に示すように、80%以上の窒素分圧のスパッタによってチタンナイトライド膜10を形成すると、チタンナイトライド膜10の抵抗率が上がる。このような窒素分圧が80%以上の範囲で形成したチタンナイトライド膜10の膜質は、他の範囲で形成した膜質と異なり、スパッタ装置内に付着すると剥離しやすく、発塵する可能性が高い。そのため、従来の半導体装置の製造方法では、80%以上の窒素濃度のスパッタでチタンナイトライド膜10を形成していなかった。
【0020】
ここで、上述の発塵の可能性はあるが、従来の半導体装置の製造方法では用いられていない80%以上の窒素濃度でのスパッタを行った場合に、シリコン基板1と、上述の不純物拡散層との間の接合リークを低減できるかについて実験調査を行った。
【0021】
図2は、シリサイド層11中のチタン量を測定した結果を示す。ここで、チタン量は、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectormeter)により定性的に測定した。縦軸は、シリサイド層11中のチタン量を示し、横軸は、スパッタによるチタンナイトライド膜10形成時の窒素分圧を示す。この図の傾向から、窒素分圧70%以下では、窒素分圧80%以上のときに比べ、シリサイド層11中のチタン含有量が増加していることが分かる。
【0022】
この理由について考察すると、高い窒素分圧にてチタンナイトライド膜10が形成されない場合には、当該膜中には、窒素と結合しないチタンが多く含まれる。そのため、チタンナイトライド膜10中の、窒素と結合していないチタン原子12、または、結合の弱いチタン原子12が、熱処理による図5(c)のシリサイド化反応中に、金属膜9、および、シリサイド層11へ拡散したためであると考えられる。
【0023】
シリサイド層11へ拡散するチタン原子12が多くなると、チタン原子12が、シリコン基板1と上述の不純物拡散層との間の接合領域に達して、接合リーク電流を大きくする可能性がある。そこで、発明者はこのような知見に基づき、以下に説明する本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を行った。
【0024】
図3は、本実施の形態に係る製造方法により形成される半導体装置の断面を製造フローに従って示した図である。図3(a)は、シリサイド層形成プロセスを行う前の下地構造を示す。この図3(a)に示すように、シリコン基板1表面に第1の不純物拡散層5、第2の不純物拡散層8よりなる不純物拡散層を形成する。図3(a)では、シリコン基板1に、素子分離絶縁膜2と、ゲート絶縁膜3と、ゲート電極4と、シリコン酸化膜6、シリコン窒化膜7よりなるサイドウォールがさらに形成されている。ここで、図3(a)に示される下地構造の形成について簡単に説明する。
【0025】
ゲート電極4は、素子分離絶縁膜2により画定されたシリコン基板1上にゲート絶縁膜3を介して形成される。このゲート電極4は、例えば、ポリシリコンとシリコン酸化膜との積層構造体から構成される。ゲート電極4の高さは、例えば、100nmとなるように形成される。
【0026】
本実施の形態に係る第1の不純物拡散層5は、シリコン基板1表面に、ゲート電極4をマスクとするイオン注入により形成される。シリコン酸化膜6とシリコン窒化膜7との積層よりなるサイドウォールは、ゲート電極4の側面に形成される。本実施の形態に係る第2の不純物拡散層8は、シリコン基板1表面に、ゲート電極4および上述のサイドウォールをマスクにして形成される。
【0027】
次に、外部に露出したシリコン表面の自然酸化膜を、例えば、希釈したフッ化水素水溶液にて除去する。その後、図3(b)に示すように、不純物拡散層のうちの第2の不純物拡散層8上に、第1の金属からなる第1の層である金属膜9を、例えば、スパッタにより形成する。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、ゲート電極4、上述のサイドウォール、素子分離絶縁膜2上にも形成される。第1の金属は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金のいずれか一つを含む。本実施の形態では、第1の金属は、ニッケルであるものとする。金属膜9の厚さは、例えば、10nmとなるように形成する。
【0028】
それから、窒素濃度が80%以上の雰囲気で、スパッタにより第2の金属を含む第2の層を金属膜9上に形成する。第2の金属は、チタン、チタン合金のいずれか一つを含む。本実施の形態では、第2の金属は、チタンであるものとし、第2の層は、チタンナイトライド膜10であるものとする。特に、本実施の形態では、窒素濃度が100%の雰囲気で、スパッタによりチタンナイトライド膜10を金属膜9上に形成する。そのようなスパッタは、例えば、窒素流量:50sccm、成膜温度:100℃、成膜圧力:5mTorr、スパッタパワー:1kWにて行う。ここで、チタンナイトライド膜10の厚さは、例えば、10nmとなるように形成する。
【0029】
その後、例えば、ランプアニール装置を用いて250〜400℃の熱処理を施す。こうして、図3(c)に示すように、熱処理により不純物拡散層のうちの第2の不純物拡散層8のシリコンと、ニッケルとを反応させてシリサイド層11を形成する。本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、ゲート電極4のシリコンにおいても、同様にシリサイド層13が形成される。シリサイド層11,13表面にはチタンナイトライド膜10が残り、また、素子分離絶縁膜2、ゲート電極4側面のサイドウォール表面にはシリサイド化しなかった金属膜9とチタンナイトライド膜10が残る。
【0030】
その後、図3(d)に示すように、例えば、硫酸と過酸化水素水の混合液により、金属膜9とチタンナイトライド膜10を除去する。その後、図3(e)に示すように、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜14を形成し、通常のCMOSプロセスを用いて配線工程を行うことでトランジスタを形成する。
【0031】
以上の工程からなる本実施の形態に係る半導体装置の製造方法により形成した半導体装置において、シリコン基板1と、第1の不純物拡散層5、第2の不純物拡散層8よりなる不純物拡散層との間に1.2Vの電圧を印加した場合の逆方向接合リーク電流を測定した。図4は、図6の測定状態と同様にして測定した結果を示す図である。この図において、窒素濃度を70%で形成した本発明の前提となる製造方法による半導体装置を、白抜き四角の点、窒素濃度を100%で形成した本実施の形態に係る製造方法による半導体装置を、黒塗り丸の点で示している。
【0032】
図4に示すように、本実施の形態に係る製造方法による半導体装置は、従来の製造方法による半導体装置と同様、約90%の数の半導体装置において、接合リーク電流が1E−10(A)程度となる。一方、残りの約10%の数の半導体装置において、従来の製造方法による半導体装置では、接合リークが1E−7(A)を超えるのに対し、本実施の形態に係る製造方法による半導体装置では、それ以下に抑えることができる。
【0033】
以上のように、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法によれば、シリコン基板1と上述の不純物拡散層との間の接合リークを低減することができる。特に、65nmプロセス以降の半導体装置において、ニッケルシリサイド層の形成は必須となるが、その場合に生じる接合リークの増大を抑制できる点で有効である。
【0034】
なお、本実施の形態では、窒素濃度が100%以上の雰囲気で、スパッタによりチタンナイトライド膜10を形成したが、これに限ったものではなく、窒素濃度が80%以上の雰囲気であってもよい。この場合であっても、従来の半導体装置よりも、シリサイド層11に拡散するチタン量を低減させることができるのは、図2の傾向から明らかである。その結果、上述と同様に、シリコン基板1と上述の不純物拡散層との間の接合リークを低減することができる。
【0035】
しかしながら、窒素濃度を100%にしてチタンナイトライド膜10を形成すれば、ストイキオメトリックなチタンナイトライド膜10を形成することができ、チタンをシリサイド層11に拡散させることなく、良質なシリサイド層11を形成することができる。そのため、接合リークを低減させる観点からすれば、窒素濃度を100%にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置を説明する図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体装置を説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る半導体装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る半導体装置におけるリーク接合電流を示す図である。
【図5】本発明の前提となる半導体装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の前提となる半導体装置におけるリーク接合電流を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 シリコン基板、2 素子分離絶縁膜、3 ゲート絶縁膜、4 ゲート電極、5 第1の不純物拡散層、6 シリコン酸化膜、7 シリコン窒化膜、8 第2の不純物拡散層、9 金属膜、10 チタンナイトライド膜、11,13 シリサイド層、12 チタン原子、14 層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコン基板表面に不純物拡散層を形成する工程と、
(b)前記不純物拡散層上に、第1の金属からなる第1の層を形成する工程と、
(c)窒素濃度が80%以上の雰囲気で、スパッタにより第2の金属を含む第2の層を前記第1の層上に形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後に、熱処理により前記不純物拡散層のシリコンと、前記第1の金属とを反応させてシリサイド層を形成する工程とを備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の金属は、
ニッケル、ニッケル合金、コバルト,コバルト合金のいずれか一つを含み、
前記第2の金属は、
チタン、チタン合金のいずれか一つを含む、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)は、
窒素濃度が100%の雰囲気で、スパッタにより前記第2の層を前記第1の層上に形成する工程を含む、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−88432(P2009−88432A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259540(P2007−259540)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】