説明

半導体装置の製造方法

【課題】IGBTの耐圧及びリーク電流を改善する。
【解決手段】半導体装置70では、Nバッファ層2上のN高抵抗層3の表面領域にPベース層4、Pコンタクト層5、Nソース層6を形成し、N高抵抗層3上にゲート絶縁膜7及びゲート電極8を積層形成する。ゲート電極8上に絶縁膜9を形成後、Nバッファ層2の裏面に第1のレーザを照射して裏面を平坦化する。次に、Nバッファ層2の裏面にイオン注入と第2のレーザ照射によりPドレイン層1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置或いは半導体集積回路装置では、ウェハ表面に素子を形成する半導体製造工程が終了すると裏面研磨処理が行われる。裏面研磨後、裏面の面粗さを改善するために裏面の鏡面化処理やレーザ照射による平坦化が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1などに記載されるレーザ照射による裏面の平坦化はダイシング直前に行われる。一方、パワーデバイスであるIGBT(insulated gate bipolar transistor)では、表面側にベース層、ソース層、及びゲートを形成後に裏面研磨して所定の耐圧に対応するようにウェハ厚さを調整している。裏面研磨後、裏面側に高濃度バッファ層や高濃度ドレイン層を形成している。このため、IGBTでの裏面研磨工程で発生するマイクロクラックや凹凸等がIGBTの電気特性の劣化を引き起こすという問題点がある。また、高濃度バッファ層の裏面研磨後、裏面側に高濃度ドレイン層を形成する場合、高濃度バッファ層と高濃度ドレイン層の間の逆方向耐圧が低下するという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−45828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐圧及びリーク電流を改善する半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、第1導電型の高抵抗層の裏面領域に設けられた、前記高抵抗層よりも不純物濃度が高い第1導電型のバッファ層と、前記高抵抗層の表面領域に設けられた第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面領域に設けられた第1導電型のソース層と、前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極とを備える半導体装置の製造方法であって、前記バッファ層の裏面を研磨する工程と、研磨された前記バッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、平坦化された前記バッファ層の裏面に第2導電型の不純物イオンをイオン注入する工程と、前記バッファ層の裏面に第2のレーザを照射して、前記不純物イオンを活性化して前記バッファ層の裏面にドレイン層を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0007】
更に、本発明の他態様の半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1のバッファ層表面に設けられ、前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が低い第1の導電型の高抵抗層の表面領域に設けられた第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面領域に設けられた第1導電型のソース層と、前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極とを備える半導体装置の製造方法であって、前記第1のバッファ層の裏面を研磨する工程と、研磨された前記第1のバッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、研磨された前記第1のバッファ層の裏面に第1導電型の第1の不純物イオンと第2導電型の第2の不純物イオンをイオン注入する工程と、前記第1のバッファ層の裏面に第2のレーザを照射して前記第1及び第2の不純物イオンを活性化し、前記第1のバッファ層の裏面に前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が高い第1導電型の第2のバッファ層を形成し、前記第2のバッファ層の裏面に第2導電型のドレイン層を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐圧及びリーク電流を改善する半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置を示す断面図。
【図2】図1のA−A線に沿う半導体装置の不純物プロファイル。
【図3】本発明の実施例1に係る比較例の半導体装置の不純物プロファイル。
【図4】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】本発明の実施例1に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6】本発明の実施例1に係るダブルパルスレーザ照射を説明する図。
【図7】本発明の実施例1に係るラップ率を説明する図。
【図8】本発明の実施例1に係るオーバーラップしたダブルパルスレーザ照射を説明する図。
【図9】本発明の実施例1に係るパルスレーザ照射前後でのNバッファ層の不純物プロファイルの変化を示す図。
【図10】本発明の実施例1に係る半導体装置の裏面の平坦性を示す図。
【図11】本発明の実施例1に係る半導体装置を示す断面図。
【図12】本発明の実施例1に係る半導体装置を示す断面図。
【図13】本発明の実施例1に係るNバッファ層とPドレイン層の接合部の電気的特性を示す図。
【図14】本発明の実施例2に係る半導体装置を示す断面図。
【図15】図12のB−B線に沿う半導体装置の不純物プロファイル。
【図16】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図17】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図18】本発明の実施例2に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図19】本発明の実施例3に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本発明の実施例1に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。図1は半導体装置を示す断面図である。図2は図1のA−A線に沿う半導体装置の不純物プロファイルである。図3は比較例の半導体装置の不純物プロファイルである。本実施例では、裏面研磨後にパルスレーザを照射して裏面を平坦化している。
【0012】
図1に示すように、半導体装置70はパンチスルー型プレーナIGBT(insulated gate bipolar transistor)である。プレーナIGBTでは、ゲート電極8が半導体基板上にゲート絶縁膜7を介して設けられる。
【0013】
半導体装置70は、Pドレイン層1の第1主面(表面)にNバッファ層2が設けられる。Nバッファ層2の第1主面(表面)に不純物濃度が低いN高抵抗層3が設けられる。N高抵抗層3の第1主面領域(表面領域)には、Pベース層4が選択的に設けられる。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)には、Nソース層6が選択的に設けられる。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)には、端部がNソース層6と接し、Nソース層6よりも深いPコンタクト層5が設けられる。本実施例では、IGBTでドレイン、ソースという名称を採用しているが、ドレインをコレクタ或いはアノードとも呼称される。ソースはエミッタ或いはカソードとも呼称される。
【0014】
高抵抗層3、Pベース層4、及びNソース層6の第1主面(表面)上にゲート絶縁膜7を介してゲート電極8が設けられる。ゲート絶縁膜7及びゲート電極8の側面及び上面には、絶縁膜9が設けられる。
【0015】
ソース層6、Pコンタクト層5、及び絶縁膜9上には、Nソース層6及びPコンタクト層5と電気的に接続されるソース電極10が設けられる。Pドレイン層1の第1主面(表面)と相対向する第2主面(裏面)上には、Pドレイン層1と電気的に接続されるドレイン電極11が設けられる。
【0016】
図2に示すように、パンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70では、Pドレイン層1は、ソース電極10側の不純物濃度が高く、Nバッファ層2側になるほど不純物濃度が低く設定される。例えば、Pドレイン層1は膜厚が0.3μm、ソース電極10と接する部分の不純物濃度が3×1018/cm、Nバッファ層2と接する部分の不純物濃度が1×1017/cmに設定される。Nバッファ層2は、Pドレイン層1近傍の層中の不純物濃度が高く、Pドレイン層1側になるほど不純物濃度が低く設定され、N高抵抗層3側になるほど不純物濃度が低く設定される。Nバッファ層2は、例えば膜厚が3μm、Pドレイン層1と接する部分の不純物濃度が1×1017/cm、Pドレイン層1近傍の層中の不純物濃度が1×1018/cmに設定され、N高抵抗層3と接する部分の不純物濃度が1×1014/cmに設定される。
【0017】
ドレイン層1のネットの不純物濃度は、1×1015/cm以下に設定され、急峻なプロファイルを有しているのでアノードからのキャリアの注入効率を下げることができ、ライフタイム制御をすることがなくパンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70の高速化を達成できる。
【0018】
バッファ層2は、Pドレイン層1と接する部分が比較的低濃度に設定され、N高抵抗層3側になるほど不純物濃度が徐々に低下するプロファイルを有しているので、逆バイアス印加時での逆方向耐圧や順方向特性を十分確保でき、印加電圧に応じて徐々に空乏化させることができる。
【0019】
図3に示すように、パンチスルー型プレーナIGBTである比較例の半導体装置では、Pドレイン層は、ソース電極側の不純物濃度が高く、Nバッファ層側になるほど不純物濃度が低く設定される。例えば、Pドレイン層は膜厚が0.3μm、ソース電極と接する部分の不純物濃度が3×1018/cm、Nバッファ層と接する部分の不純物濃度が1×1018/cmに設定される。Nバッファ層は、Pドレイン層近傍の層中の不純物濃度が高く、Pドレイン層側になるほど不純物濃度が低く設定され、N高抵抗層側になるほど不純物濃度が低く設定される。Nバッファ層は、例えば膜厚が3μm、Pドレイン層と接する部分の不純物濃度が1×1018/cm、Pドレイン層近傍の層中の不純物濃度がそれよりも高く設定され、N高抵抗層と接する部分の不純物濃度が1×1014/cmに設定される。
【0020】
パンチスルー型プレーナIGBTである比較例の半導体装置では、Nバッファ層とPドレイン層が接する部分の濃度がパンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70(図2に示す)よりも高く設定される。このため、逆バイアス印加時での逆方向耐圧や順方向特性がパンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70よりも劣化する。
【0021】
なお、パンチスルー型プレーナIGBTである比較例の半導体装置では、Nバッファ層の裏面研磨後に、平坦化処理を行わずPドレイン層を形成している。このため、裏面研磨後に発生する裏面の凹凸やキズが半導体装置の電気的特性に大きな影響を与える。これについては詳細を後述する。
【0022】
次に、半導体装置の製造方法について図4乃至図12を参照して説明する。図4及び図5は半導体装置の製造工程を示す断面図である。図6はダブルパルスレーザ照射を説明する図である。図7はラップ率を説明する図である。図8はオーバーラップしたダブルパルスレーザ照射を説明する図である。図9はパルスレーザ照射前後でのNバッファ層の不純物プロファイルの変化を示す図である。図10は半導体装置の裏面の平坦性を示す図である。図11及び図12は半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図4、図5、図11、及び図12では、図中上側を裏面側にしている。
【0023】
図4に示すように、N型不純物が均一に低濃度にドープされたシリコン基板であるN高抵抗層3の第1主面(表面)にNバッファ層2を形成する。なお、Nバッファ層2がN高抵抗層3に形成されたシリコン基板(シリコンウェハ)を予め用意してもよい。
【0024】
高抵抗層3の第1主面領域(表面領域)にP型不純物がドープされたPベース層4を形成する。Pベース層4を形成後、ゲート絶縁膜7及びゲート電極8を選択的に積層形成する。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)に、端部がゲート絶縁膜7及びゲート電極8とオーバーラップしたNソース層6を形成する。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)に、端部がNソース層6と接するP型不純物がドープされるPコンタクト層5を形成する。ここで、ゲート電極8直下のPベース層4がパンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70のチャネル領域となる。Pコンタクト層5、Nソース層6、及びゲート電極8の第1主面(表面)上に絶縁膜9を形成する。
【0025】
次に、図5に示すように、パンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70の要求される特性に対応するためにNバッファ層2の第2主面(裏面)を所定の厚さ分だけ、裏面研磨する。裏面研磨後、Nバッファ層2の第2主面(裏面)に第1のレーザを照射して裏面を溶融して凹凸やキズを消失させ、裏面を平坦化する。
【0026】
具体的には、第1のレーザには図6に示す第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームから構成されるダブルパルスレーザを用いる。第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームが1ショットとして裏面の所定領域に照射される。第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームのパルス間隔PK1は、例えば700nsに、1ショットが1μsにそれぞれ設定される。ショット間隔SK1は、例えば0.3msから1msの範囲に設定され、被対象物であるシリコンの構造変化(溶融及び固化)が終了する期間よりも長い。つまり、構造変化後に新たなレーザが照射されるということである。
【0027】
第1及び第2のパルスレーザビームのレーザ波長(λ)は532nmである。ここでは、Nb;YAGレーザの第2高調波を使用しているがNb;YLFレーザやNb;YVO4レーザなどを用いてもよい。第1のパルスレーザビームは、レーザ光強度LK1が1.6J/cm、パルス幅PW1が130nsに設定される。第2のパルスレーザビームは、レーザ光強度LK2が1.6J/cm、パルス幅PW1が130nsに設定される。
【0028】
第1のレーザに使用されるダブルパルスレーザは、ラップ率が、例えば66.7%に設定される。ラップ率とは、図7に示すように、中心位置をずらしながらレーザスキャンして目標照射領域(1ショット領域)に複数回レーザ照射を行うことをいう。例えばラップ率50%とは目標照射箇所に4回レーザ照射を行い、ラップ率66.7%とは目標照射箇所に9回レーザ照射を行うことをいう。ラップ率が大きいほどレーザ光強度が大きくなり裏面のシリコンの溶融が促進される。
【0029】
なお、図8に示すように、ダブルパルスレーザにパルス間隔(PK1)を設ける代わりにオーバーラップを設けてもよい。ここでは、オーバーラップ率66%に設定している。オーバーラップされたダブルパルスレーザを用いるとレーザ光強度が大きくなり裏面のシリコンの溶融が促進される。なお、レーザ波長(λ)、レーザ光強度LK1、レーザ光強度LK2、パルス幅PW1、パルス幅PW2、ショット間隔SK1は図6と同一条件である。
【0030】
裏面に第1のレーザを照射すると、図9に示すように裏面から所定の深さの領域が高温度となり溶融される。同時に裏面から所定の深さの領域でのNバッファ層2が外方拡散され、Nバッファ層2の不純物プロファイルが裏面側になるほど急激に低下する。ここでは、第1のレーザ照射条件をNバッファ層2が一番高濃度の領域から裏面までの領域が溶融及び拡散するように設定される。
【0031】
図10に示すように、パンチスルー型プレーナIGBTである比較例の半導体装置では、裏面研磨後、裏面の平坦度が、例えば1μm乃至30μm(平均値10μm)であり、裏面に凹凸やマイクロクラックなどのキズ等が多発する。
【0032】
一方、パンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70では、第1のレーザ照射を照射するので、裏面が溶融、固化されて裏面の平坦度が、例えば10nm乃至30nm(平均値20nm)と大きく改善され、裏面の凹凸やキズが消失される。
【0033】
ここでは、第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームのレーザ光強度とパルス幅を同一に設定しているが、必ずしも同一に設定しなくともよい。例えば第1のパルスレーザビームのレーザ光強度を第2のパルスレーザビームのレーザ光強度よりも大きくしてもよい。また、裏面の溶融時間及び溶融深さを変更するために、レーザ光強度やラップ率などを適宜変更してもよい。
【0034】
続いて、図11に示すように、平坦化されたNバッファ層2の第2主面(裏面)にP型不純物であるボロンをイオン注入する。このとき、例えばレーザアニール後のネットの不純物量が1×1015/cm以下になるようにイオン注入量を設定し、ピーク位置がNバッファ層2の第2主面(裏面)近傍になるように加速電圧を比較的小さな値に設定する。
【0035】
そして、図12に示すように、ボロンがイオン注入された裏面のイオン注入層21に、第2のレーザを照射してイオン注入層21を活性化させてNバッファ層2の第2主面領域(裏面領域)にPドレイン層1を形成する。
【0036】
具体的には、第2のレーザの照射条件は、例えば第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームから構成されるダブルパルスレーザを用いる。第1及び第2のパルスレーザビームのレーザ波長(λ)は532nmである。ここでは、イオン注入層21を活性化させるだけ(溶融化させない)なので、第2のレーザでの第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームのレーザ光強度を第1のレーザの場合よりも小さく設定している。また、第2のレーザでの第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームのパルス幅も第1のレーザの場合よりも小さく設定している。また、ラップ率なども第1のレーザの場合よりも小さな値に設定している。この設定によりNバッファ層2の不純物プロファイルの変化が少なく、且つ急峻なプロファイルを有するPドレイン層1が得られる。
【0037】
これ以降は、周知な技術を用いて、コンタクト開口、ソース電極10、ドレイン電極11などが形成され、パンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70が完成する。
【0038】
次に、製造された半導体装置の電気的特性について図13を参照して説明する。図13はNバッファ層とPドレイン層の接合部の電気的特性を示す図である。
【0039】
破線に示すパンチスルー型プレーナIGBTである比較例の半導体装置では、裏面に発生した凹凸やキズの影響と、Pドレイン層とNバッファ層の接合部が比較的高不純物濃度である点とにより、Pドレイン層とNバッファ層の接合部での電気的特性が低下する。具体的には、逆方向耐圧の劣化や逆方向リーク電流が増大し、順方向リーク電流が増大する。
【0040】
一方、パンチスルー型プレーナIGBTである半導体装置70では、裏面が平坦化されて裏面の凹凸やキズ等が消失され、Pドレイン1層とNバッファ層2の接合部が比較的低不純物濃度であるので、Pドレイン層1とNバッファ層2の接合部での電気的特性が比較例よりも大幅に向上する。具体的には、逆方向耐圧が向上し、逆方向リーク電流が大幅に低減され、順方向リーク電流が大幅に低減される。
【0041】
上述したように、本実施例の半導体装置の製造方法では、裏面研磨後に第1のレーザ照射により裏面を平坦化し、裏面側のNバッファ層2の不純物プロファイルを低減化している。裏面平坦後に、イオン注入と第2のレーザ照射により急峻なプロファイルを有するPドレイン層1を形成している。
【0042】
このため、電気的特性の優れたパンチスルー型プレーナIGBTを提供することができる。
【0043】
なお、本実施例では、裏面平坦化用に使用する第1のレーザとイオン注入層の活性化用に使用する第2のレーザをダブルパルスレーザを用いているが、代わりにシングルパルスレーザや偏光渦ビームを用いた光渦レーザなどを用いてもよい。
【実施例2】
【0044】
次に、本発明の実施例2に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。図14は半導体装置を示す断面図である。図15は図14のB−B線に沿う半導体装置の不純物プロファイルである。本実施例では、第1のレーザを照射して裏面平坦後、Nバッファ層の裏面にN+バッファインプラ及びコレクタインプラを行い、第2のレーザを照射してイオン注入層を活性化している。
【0045】
図14に示すように、半導体装置71はパンチスルー型トレンチIGBTである。トレンチIGBTでは、ゲート電極8が半導体基板に設けられたトレンチ32にゲート絶縁膜7を介して埋設される。
【0046】
半導体装置71は、Pドレイン層1の第1主面(表面)にNバッファ層2aが設けられる。Nバッファ層2aの第1主面(表面)に不純物濃度が低いNバッファ層31が設けられる。Nバッファ層31の第1主面(表面)に不純物濃度が低いN高抵抗層3が設けられる。N高抵抗層3の第1主面領域(表面領域)には、Pベース層4が選択的に設けられる。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)には、Nソース層6が選択的に設けられる。Pベース層4の第1主面領域(表面領域)には、端部がNソース層6と接するPコンタクト層5が設けられる。
【0047】
ソース層6及びPベース層4を貫通し、N高抵抗層3表面に達するトレンチ32が設けられる。トレンチ32には、ゲート絶縁膜7aを介してゲート電極8aが埋設される。ここでは、ゲート電極8aの上端がNソース層6の上端よりも突き出た構造となっている。ゲート絶縁膜7及びゲート電極8の側面及び上面には、絶縁膜9が設けられる。
【0048】
ソース層6、Pコンタクト層5、及び絶縁膜9上には、Nソース層6及びPコンタクト層5と電気的に接続されるソース電極10が設けられる。Pドレイン層1の第1主面(表面)と相対向する第2主面(裏面)上には、Pドレイン層1と電気的に接続されるドレイン電極11が設けられる。
【0049】
図15に示すように、パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置71では、Pドレイン層1は、ソース電極10側の不純物濃度が高く、Nバッファ層2a側になるほど不純物濃度が低く設定される。例えば、Pドレイン層1は膜厚が0.3μm、ソース電極10と接する部分の不純物濃度が3×1018/cm、Nバッファ層2aと接する部分の不純物濃度が1×1017/cmに設定される。Nバッファ層2aは、Pドレイン層1とNバッファ層31の中間部での不純物濃度が高く、Pドレイン層1側になるほど不純物濃度が低く設定され、Nバッファ層31側になるほど不純物濃度が低く設定される。Nバッファ層2aは、例えば膜厚が1.5μm、Pドレイン層1と接する部分の不純物濃度が1×1017/cmに設定される。Nバッファ層31は、Nバッファ層2aと接する部分の不純物濃度が一番高く、N高抵抗層3側になるほど徐々に不純物濃度が低く設定される。
【0050】
Nバッファ層31を設けることにより、実施例1よりも逆バイアス時での耐圧を十分確保することができる。なお、Pドレイン層1の不純物プロファイルは実施例1と同様に設定される。
【0051】
次に、半導体装置の製造方法について図16乃至18を参照して説明する。図16乃至18は、半導体装置の製造工程を示す断面図である。なお、図16乃至18では、図中上側を裏面側にしている。
【0052】
図16に示すように、N型不純物が均一に低濃度にドープされたシリコン基板であるN高抵抗層3の第2主面(裏面)にNバッファ層31が形成されたシリコン基板(例えばOSL one side lap ウェハ)を用意する。
【0053】
高抵抗層3の第1主面領域(表面領域)にP型不純物がドープされたPベース層4を形成する。Pベース層4を形成後、Pベース層4の第1主面領域(表面領域)に、Nソース層6、端部がNソース層6と接するP型不純物がドープされるPコンタクト層5を形成する。
【0054】
ソース層6及びPベース層4を貫通し、N高抵抗層3の表面に達するトレンチ32を形成する。トレンチ32の側面及び底面にゲート絶縁膜7aを形成後、ゲート絶縁膜7aを介してトレンチ32にゲート電極8aを埋設する。パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置71の要求される特性に対応するためにNバッファ層31の第2主面(裏面)を所定の厚さ分だけ、裏面研磨する。裏面研磨後、Nバッファ層31の第2主面(裏面)に第1のレーザを照射して裏面を溶融して凹凸やキズを消失させ、裏面を平坦化する。
【0055】
具体的には、第1のレーザの照射は、実施例1と同様に、例えば第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームから構成されるダブルパルスレーザを用いる。ここで、Nバッファ層31は低濃度で、且つブロードな不純物プロファイルを有しているので、第1のレーザ照射による外方拡散が少なく、裏面側の不純物プロファイルの低下が比較的少ない。
【0056】
次に、図17に示すように、平坦化されたNバッファ層31の第2主面(裏面)に、例えばN型不純物であるリンとP型不純物であるボロンをイオン注入する。このとき、リンのイオン注入は、レーザアニール後に図13に示すNバッファ層2aの不純物プロファイルとなるようにイオン注入量と加速電圧が適切な値に設定される。ボロンのイオン注入は、実施例1と同様な条件が選択される。
【0057】
続いて、図18に示すように、裏面のリン及びボロンがイオン注入されたイオン注入層22に、第2のレーザを照射してイオン注入層22を活性化させてNバッファ層31の第2主面領域(裏面領域)にNバッファ層2aを形成し、Nバッファ層2aの第2主面領域(裏面領域)にPドレイン層1を形成する。
【0058】
具体的には、第2のレーザの照射は、例えば第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームから構成されるダブルパルスレーザを実施例1と同様に用いる。
【0059】
これ以降は、周知な技術を用いて、コンタクト開口、ソース電極10、ドレイン電極11などが形成され、パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置71が完成する。
【0060】
パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置71では、裏面の凹凸やキズが消失され、裏面が平坦化され、Pドレイン層1とNバッファ層2aの接合部が比較的低不純物濃度であるので、Pドレイン層1とNバッファ層2aの接合部での電気的特性が大幅に向上する。具体的には、逆方向耐圧が向上し、逆方向リーク電流が大幅に低減され、順方向リーク電流が大幅に低減される。
【0061】
このため、電気的特性の優れたパンチスルー型トレンチIGBTを提供することができる。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明の実施例3に係る半導体装置について、図面を参照して説明する。図19は半導体装置の製造工程を示す断面図である。本実施例では、裏面研磨を行わずレーザ照射による裏面平坦化を実施している。
【0063】
図19に示すように、パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置72の製造方法では、N型不純物が均一に低濃度にドープされたシリコン基板であるN高抵抗層3の第2主面(裏面)にNバッファ層41が形成されたシリコン基板(例えばOSL one side lap ウェハ)を用意する。このシリコン基板の厚さは、電鉄用等に使用される高耐圧IGBTの耐圧に対応できるように予め膜厚を、例えば450μmに設定されている(ウェハ薄化)。この設定により、裏面研磨する必要がない。
【0064】
ここで、Pベース層4からゲート形成までの工程は、実施例2と同様に行われるが、表裏の判別や製造工程でのウェハ搬送でのすべり防止用として裏面に凹凸面を形成している。なお、CVD等の堆積工程やRIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング工程で裏面の凹凸が増加する。
【0065】
Nバッファ層41の第2主面(裏面)に第1のレーザを照射して裏面を溶融して凹凸やキズを消失させ、裏面を平坦化する。
【0066】
具体的には、第1のレーザの照射は、実施例1と同様に、例えば第1のパルスレーザビームと第2のパルスレーザビームから構成されるダブルパルスレーザを用いる。ここで、Nバッファ層41は低濃度で、且つブロードな不純物プロファイルを有しているので、第1のレーザ照射による外方拡散が少なく、裏面側の不純物プロファイルの低下が比較的少ない。
【0067】
次に、平坦化されたNバッファ層41の第2主面(裏面)に、例えばN型不純物であるリンとP型不純物であるボロンを実施例2と同様にイオン注入する。
【0068】
続いて、裏面のリン及びボロンがイオン注入されたイオン注入層に、第2のレーザを実施例2と同様に照射してイオン注入層を活性化させてNバッファ層41の第2主面領域(裏面領域)にNバッファ層を形成し、Nバッファ層の第2主面領域(裏面領域)にPドレイン層を形成する。
【0069】
これ以降は、周知な技術を用いて、コンタクト開口、ソース電極、ドレイン電極などが形成され、パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置72が完成する。
【0070】
パンチスルー型トレンチIGBTである半導体装置72では、裏面の凹凸やキズが消失され、裏面が平坦化され、Pドレイン層とNバッファ層の接合部が比較的低不純物濃度であるので、Pドレイン層とNバッファ層の接合部での電気的特性が大幅に向上する。具体的には、逆方向耐圧が向上し、逆方向リーク電流が大幅に低減され、順方向リーク電流が大幅に低減される。また、シリコン基板厚を所定の耐圧に適合するように予め薄化しているので、裏面研磨する必要がない。
【0071】
このため、電気的特性の優れたパンチスルー型トレンチIGBTを提供することができる。
【0072】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々、変更してもよい。
【0073】
実施例では、パンチスルー型IGBTに適用したが、Nバッファ層が設けられないノンパンチスルー型IGBTにも適用することができる。ノンパンチスルー型IGBTでは、逆方向耐圧及び逆方向リーク電流が改善する。
【0074】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 第1導電型の高抵抗層の裏面領域に前記高抵抗層よりも不純物濃度が高い第1導電型のバッファ層を形成する工程と、前記高抵抗層の表面領域に第2導電型のベース層を形成する工程と、前記ベース層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極を形成する工程と、前記ゲート電極上に絶縁膜を堆積後、前記バッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、平坦化された前記バッファ層の裏面に第2導電型の不純物イオンをイオン注入する工程と、前記バッファ層の裏面に第2のレーザを照射して、前記不純物イオンを活性化して前記バッファ層の裏面にドレイン層を形成する工程とを具備する半導体装置の製造方法。
【0075】
(付記2) 第1導電型の高抵抗層の表面領域に第2導電型のベース層を形成する工程と、前記ベース層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極を形成する工程と、前記高抵抗層の裏面を研磨する工程と、研磨された前記バッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、平坦化された前記高抵抗層の裏面に第2導電型の不純物イオンをイオン注入する工程と、前記高抵抗層の裏面に第2のレーザを照射して、前記不純物イオンを活性化して前記高抵抗層の裏面にドレイン層を形成する工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0076】
1 Pドレイン層
2、2a Nバッファ層
3 N高抵抗層
4 Pベース層
5 Pコンタクト層
6 Nソース層
7、7a ゲート絶縁膜
8、8a ゲート電極
9 絶縁膜
10 ソース電極
11 ドレイン電極
21、22 イオン注入層
31、41 Nバッファ層
32 トレンチ
70〜72 半導体装置
DL1 ディレイ(遅れ)
LK1、LK2 レーザ光強度
OB1 オーバーラップ率
PK1 パルス間隔
PW1、PW2 パルス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の高抵抗層の裏面領域に設けられた、前記高抵抗層よりも不純物濃度が高い第1導電型のバッファ層と、前記高抵抗層の表面領域に設けられた第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面領域に設けられた第1導電型のソース層と、前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極とを備える半導体装置の製造方法であって、
前記バッファ層の裏面を研磨する工程と、
研磨された前記バッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、
平坦化された前記バッファ層の裏面に第2導電型の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記バッファ層の裏面に第2のレーザを照射して、前記不純物イオンを活性化して前記バッファ層の裏面にドレイン層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
第1導電型の第1のバッファ層表面に設けられ、前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が低い第1の導電型の高抵抗層の表面領域に設けられた第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面領域に設けられた第1導電型のソース層と、
前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極とを備える半導体装置の製造方法であって、
前記第1のバッファ層の裏面を研磨する工程と、
研磨された前記第1のバッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、
研磨された前記第1のバッファ層の裏面に第1導電型の第1の不純物イオンと第2導電型の第2の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記第1のバッファ層の裏面に第2のレーザを照射して前記第1及び第2の不純物イオンを活性化し、前記第1のバッファ層の裏面に前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が高い第1導電型の第2のバッファ層を形成し、前記第2のバッファ層の裏面に第2導電型のドレイン層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
第1導電型の第1のバッファ層表面に設けられ、前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が低い第1の導電型の高抵抗層の表面領域に設けられた第2導電型のベース層と、前記ベース層の表面領域に設けられた第1導電型のソース層と、
前記高抵抗層、前記ベース層、及び前記ソース層からゲート絶縁膜により絶縁されたゲート電極とを備える半導体装置の製造方法であって、
前記ゲート電極上に絶縁膜を堆積後、前記第1のバッファ層の裏面に第1のレーザを照射して、裏面を平坦化する工程と、
平坦化された前記第1のバッファ層の裏面に第1導電型の第1の不純物イオンと第2導電型の第2の不純物イオンをイオン注入する工程と、
前記第1のバッファ層の裏面に第2のレーザを照射して前記第1及び第2の不純物イオンを活性化し、前記第1のバッファ層の裏面に前記第1のバッファ層よりも不純物濃度が高い第1導電型の第2のバッファ層を形成し、前記第2のバッファ層の裏面に第2導電型のドレイン層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体装置は、ノンパンチスルー型プレーナIGBT或いはノンパンチスルー型トレンチIGBTであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項
に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1及び第2のレーザは、所定のショット間隔を有するダブルパルスレーザ或いはシングルパルスレーザであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2011−187753(P2011−187753A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52448(P2010−52448)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】