説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体基板の欠けや割れが抑制される半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1の表面1aに、外周端部から内側に向かって所定の幅を有して外周端部に沿って延在するパッシベーション膜3を形成する。半導体基板1の外周端部を研削することにより、表面1aおよび裏面1bと直交する外周端面1cを形成する。裏面1bを研削することにより、半導体基板1の厚みを所定の厚みにまで薄くする。研削された裏面を上方に向けた状態で、半導体基板1を回転させながら裏面上に混酸を吐出することにより、裏面にエッチング処理を施して破砕層を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、パワーデバイスに適用される半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、3次元実装等によるパッケージの高密度化が展開されている。これに伴って、ウェハの厚みを薄くすることが求められており、半導体装置のプロセス完了時におけるウェハの厚みは、25μm程度の厚みにまで薄くされている。
【0003】
半導体装置として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effective Transistor:MOS型電界効果トランジスタ)などのパワーデバイスがある。これらのパワーデバイス(パワー系半導体装置)は、たとえば、産業用モータや自動車用モータなどのインバータ回路、大容量サーバの電源装置、あるいは、無停電電源装置などの半導体スイッチとして広く使われている。
【0004】
このようなパワー系半導体装置では、オン特性などに代表される通電性能を改善するために、半導体基板を薄く加工することが行われている。近年では、コスト面と特性面を改善するために、FZ(Floating Zone)ウェハをベースとした極薄い半導体基板が用いられている。たとえば、600V耐圧のIGBTでは、半導体基板を60〜70μm程度にまで薄くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−335659号公報
【特許文献2】特開2003−59878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、半導体基板は、バックグラインド、ポリッシュによる研磨、あるいは、機械研磨によって薄く加工される。このような手法で半導体基板を薄く加工すると、半導体基板には歪が生じる。そこで、この歪が生じた部分を除去するために、半導体基板の裏面にはウェットエッチング処理やドライエッチング処理が施される。
【0007】
また、パワー系半導体装置では、半導体基板の裏面に注入層を形成したり、裏面電極を形成する必要があるため、半導体基板の裏面に対して、イオン注入処理、スパッタ処理、そして、熱処理が施されることになる。ところが、このような処理は半導体基板を薄く加工した後に行われることになるため、この処理の際に半導体基板が割れやすくなるという問題がある。
【0008】
このような半導体基板の割れを抑制するために、たとえば、特許文献1では、半導体基板の外周端部の裏面に段差(厚み)を設けて、半導体基板の強度を高める手法が提案されている。
【0009】
しかしながら、この手法では、研削等による加工歪みを除去するために、半導体基板の裏面にウェットエッチング処理を施す際に、薬液が外周端部の段差によって飛散してしまうおそれがある。また、ウェハを個々のチップにダイシングする工程において、半導体基板をダイシングフレームに貼り付ける際に、半導体基板とテープとの間に気泡が入ってしまうおそれがある。さらに、段差を除去する際に、半導体基板の裏面に形成されたアルミニウムの裏面電極が侵食したり、あるいは、段差を設けることによって、得られるチップの収率が低下するおそれもある。
【0010】
また、半導体基板が割れやすくなる原因として、特に、半導体基板の外周端部がナイフのエッジのようになってしまうことが挙げられる。これは、通常、半導体基板の外周端部は、断面形状が楕円の一部になる態様で面取りがされているため、半導体基板を研磨等により薄く加工すると、半導体基板の外周部がナイフのエッジのようになってしまうためであり、そのエッジの部分が欠けたり割れやすくなってしまう。
【0011】
このような半導体基板の外周端部の欠け等を抑制するために、特許文献2では、半導体基板の外周端部を研磨する手法が提案されている。ところが、この場合には、以下に示すように、加工歪を除去する際のウェットエッチングによって、半導体基板の外周端部が再びナイフのエッジのようにエッチングされることがあった。
【0012】
つまり、半導体基板を薄くするに際して、バックグラインド工程によって半導体基板に生じる加工歪みを除去するために、ストレスリリーフ工程が必要とされる。このストレスリリーフ工程では、フッ硝酸を用いた薬液によるウェットエッチング処理が半導体基板の裏面に施される。
【0013】
このとき、半導体基板の裏面から外周端部の表面側にフッ硝酸が回り込むことがある。そうすると、回り込んだフッ硝酸によって、半導体基板の外周端部の表面側がエッチングされて、半導体基板の外周端部が、再びナイフのエッジのようになってしまい、半導体基板の外周端部が欠けやすくなったり割れてしまうという問題が依然としてあった。
【0014】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体基板の欠けや割れが抑制される半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る一の半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。互いに対向する第1主表面および第2主表面を有する半導体基板の第1主表面に、半導体基板の外周端部から内側に向かって所定の幅を有して外周端部に沿って延在する保護膜を形成する。半導体基板の外周端部を研削することにより、第1主表面および第2主表面と直交する外周端面を形成する。半導体基板の第2主表面を研削することにより、半導体基板の厚みを所定の厚みにまで薄くする。研削された第2主表面を上方に向けた状態で、半導体基板を回転させながら第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、第2主表面にエッチング処理を施す。
【0016】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。互いに対向する第1主表面および第2主表面を有し、外周端部が研削された半導体基板を用意する。半導体基板の第1主表面に、半導体基板の外周端部から内側に向かって所定の幅を有して外周端部に沿って延在する保護膜を形成する。半導体基板の第2主表面を研削することにより、半導体基板の厚みを所定の厚みにまで薄くする。研削された第2主表面を上方に向けた状態で、半導体基板を回転させながら第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、第2主表面にエッチング処理を施す。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る一の半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の第1主表面に、半導体基板の外周端部から内側に向かって所定の幅を有して外周端部に沿って延在する保護膜を形成することで、研削された第2主表面を上方に向けた状態で、第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、第2主表面にエッチング処理を施す際に、薬液が外周端部の第1主表面側に回り込んだとしても、第1主表面側は外周端部に延在する保護膜によりエッチングされることがなくなる。その結果、半導体基板の外周端部がナイフのエッジのようになることが阻止されて、半導体基板の欠けや割れを抑制することができる。
【0018】
本発明に係る他の半導体装置の製造方法によれば、半導体基板の第1主表面に、半導体基板の外周端部から内側に向かって所定の幅を有して外周端部に沿って延在する保護膜を形成することで、研削された第2主表面を上方に向けた状態で、第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、第2主表面にエッチング処理を施す際に、薬液が外周端部の第1主表面側に回り込んだとしても、第1主表面側がエッチングされることがなくなる。その結果、半導体基板の外周端部がナイフのエッジのようになることが阻止されて、半導体基板の欠けや割れを抑制することができる。また、当初から、外周端部が研削された半導体基板を用意することで、半導体基板の外周端部を研削する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造フローを示すフローチャートである。
【図2】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図3】同実施の形態において、図2に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図4】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図5】同実施の形態において、図4に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図7】同実施の形態において、変形例に係る半導体基板を用いた場合の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図8】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図10】比較例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す部分断面図である。
【図11】図10に示す工程の後に行われる工程として、外周端部の研削を行わずに裏面研削を行う場合を示す部分断面図である。
【図12】図11に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図13】図10に示す工程の後に行われる工程として、外周端部の研削を行う場合の工程を示す部分断面図である。
【図14】図13に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図15】図14に示す工程の後に行われる工程を示す部分断面図である。
【図16】図15に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図17】図16に示す工程における第1の状態を示す断面図である。
【図18】図16に示す工程における、第1の状態の後の第2の状態を示す断面図である。
【図19】同実施の形態において、パッシベーション膜の膜厚と半導体基板の割れとの関係を示すグラフである。
【図20】同実施の形態において、パッシベーション膜のアスペクト比と半導体基板の割れとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。その半導体装置の製造フローを図1に示す。図1に示すように、まず、ステップS1では、ウェハプロセス投入として、新しい半導体基板(ウェハ)が用意される。図2に示すように、ウェハプロセス投入時では、半導体基板1の外周端部の断面形状は、円形の一部あるいは楕円形の一部の形状を呈する。
【0021】
次に、ステップS2では、図3に示すように、半導体基板1の表面1aに、所定のプロセスを経て、絶縁ゲート構造やトランジスタ素子等が形成される(点線枠2内)。次に、ステップS3では、半導体基板1の表面1aの所定の領域に電極が形成される(点線枠2内)。電極は、たとえばアルミニウム等の電極材料を半導体基板1の表面1a上に形成し、所定のパターニングを施すことにより形成される。
【0022】
次に、ステップS4では、パッシベーション膜が形成される。図4に示すように、トランジスタ素子等が形成された半導体基板1の表面1aを電気的に、また、機械的に保護するために、パッシベーション膜3が形成される。パッシベーション膜3としては、たとえば、シリコン窒化膜等の窒化物やポリイミド等によるパターンが形成される。
【0023】
このとき、半導体基板1の表面1aには、アルミニウム等からなる表面電極が形成されていることで、比較的高温度のもとでの処理を施すことができない。このため、窒化物を形成する場合には、窒化物は、まず、いわゆる化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって半導体基板1の表面1aに形成される。次に、写真製版処理によりレジストに所望のパターンが転写されるとともに、周辺露光により半導体基板1の外周部約3mm程度の領域にレジストが残される。
【0024】
次に、そのレジストをマスクとして、窒化物にドライエッチング処理あるいはウェットエッチング処理を施すことにより、所望のパターンのパッシベーション膜が形成される。そして、図5に示すように、半導体基板1の外周端部の領域(表面)はパッシベーション膜3で覆われることになる。
【0025】
また、パッシベーション膜として、ポリイミド膜を形成する場合には、窒化物の場合と同様に、写真製版とエッチングにより所望のパターンのポリイミド膜を形成するようにしてもよい。また、感光性ポリイミドを用いてパッシベーション膜を形成することも可能である。さらに、パッシベーション膜として、スクリーン印刷によってポリイミド膜の保護パターンを形成するようにしてもよい。
【0026】
次に、ステップS5では、半導体基板1の表面1aに保護テープ13(図9参照)が貼り付けられる。これは、表面1aに形成されたトランジスタ素子等や回路がウェハの研削等によって汚染されるのを防ぐためであり、また、そのようなトランジスタ素子等や回路による凹凸に起因した応力集中によって、後述する半導体基板1の研削時に、半導体基板1が割れるのを防止するためである。
【0027】
次に、ステップS6では、半導体基板(ウェハ)の外周端部が研削される。図5に示すように、半導体基板1の外周端部から研削幅5で示す部分が研削されて、図6に示すように、半導体基板1の外周端面1cが表面1a(裏面1b)に対してほぼ垂直になる。研削幅5は、当初の半導体基板の形状に依存するが、約0.5mm以下とされる。半導体基板1の表面1aでは、外周端部から内側に向かって所定の幅を有し、外周端部に沿って延在するパッシベーション膜3が残されている。このパッシベーション膜の幅は、外周端部より5mm以下に設定されることが望ましい。
【0028】
なお、半導体基板としては、図7に示すように、当初から外周端部が面取りされた半導体基板1を適用してもよい。このような半導体基板を適用することで、裏面研削を行った際に、半導体基板の外周端部がナイフのエッジのようにならないため、半導体基板の外周端部を研削する必要がなくなる。
【0029】
次に、ステップS7では、半導体基板(ウェハ)1の裏面1bが研削される。図6に示すように、半導体基板1の裏面1bから厚み7で示す部分が研削されて、図8に示すように、半導体基板1の厚みが所望の厚みにまで薄くされる。
【0030】
次に、ステップS8では、半導体基板(ウェハ)1の裏面1bにウェットエッチング処理が施される。半導体基板1の裏面は、砥石によって研削される。このため、半導体基板1の裏面1bには機械的な研削によって破砕層が形成される。破砕層は、半導体基板1が砥石から受ける応力等によって、単結晶シリコンの結晶構造が崩れて非晶質層等に変化したものであり、その厚みは数μmから10μm程度とされる。この破砕層を除去する手法として、フッ酸と硝酸を含んだ混酸によるウェットエッチング処理を施すことによって除去する手法がある。
【0031】
図9に示すように、まず、半導体基板1は、表面1aに表面保護テープ13が貼り付けられた状態で、チャックステージ17に設けられたウェハ吸着部15に吸着される。次に、チャックステージ17が回転を始め、所定の回転数に達した後、薬液吐出ノズル9より混酸11が、半導体基板1の裏面1bに向けて吐出される。なお、エッチング処理中では、半導体基板1の裏面1bに均一に吐出させるために、薬液吐出ノズル9を揺動させてもよい。
【0032】
半導体基板1の裏面1bに吐出された混酸は、遠心力により半導体基板1の外周端部へ向かって流れ、所定の回収方法によって回収されることになる。半導体基板1の外周端部へ向かって流れる混酸のうち一部の混酸は、その表面張力と重力によって飛散せずに半導体基板1の外周端部の表面1a側に回りこむことがある。このとき、半導体基板1の外周端部の表面1a側にパッシベーション膜3が残されていることで、その表面1a側が、混酸によってエッチングされるのを抑制することができる。これについては、後で詳しく説明する。混酸により破砕層が除去された半導体基板は、ウェハ吸着部15から取り外されて、次の工程へ送られる。
【0033】
図1に示すように、次の工程は、半導体装置の機種によって、たとえば2つのフローがある。一のフローでは、半導体基板の表面に貼り付けられていた保護テープが剥離(ステップS9)され、半導体基板の裏面に裏面電極が形成される(ステップS10)。その後、半導体基板が所定の部材にマウント(ステップS11)されて、パワーデバイスとして完成する。また、他のフローでは、半導体基板が所定の部材にマウント(ステップS12)され、その後、半導体基板の表面に貼り付けられていた保護テープが剥離(ステップS13)されて、パワーデバイスとして完成する。
【0034】
上述した半導体装置の製造方法では、半導体基板1の外周端部の表面側にパッシベーション膜3が残されていることで、破砕層を混酸により除去する際に、混酸によって半導体基板1の外周端部の表面1a側がエッチングされるのを抑制することができる。このことについて、比較例との関係で説明する。
【0035】
比較例に係る半導体装置の製造方法では、まず、図10に示すように、半導体基板101の表面101aに、所定のプロセスを経て、絶縁ゲート構造、トランジスタ素子および電極等が形成される(点線枠102内)。
【0036】
ここで、外周端部の断面形状が円形等の半導体基板において、図11に示すように、外周端部の研削を行わずに半導体基板基板101の裏面101bを研削すると、図12に示すように、半導体基板101の外周端部がナイフのエッジのように先鋭になり、半導体基板101の欠けや割れが発生しやすくなる。そこで、図13に示すように、半導体基板101の外周端部から研削幅105で示す部分が研削されて、図14に示すように、半導体基板101の外周端面101cが表面に対してほぼ垂直にされる。
【0037】
次に、図14に示すように、半導体基板101の裏面101bから厚み107で示す部分が研削されて、図15に示すように、半導体基板101の厚みが所望の厚みにまで薄くされる。次に、半導体基板101の裏面101b研削によって発生した破砕層が混酸によって除去される。図16に示すように、半導体基板101は、表面101aに表面保護テープ113が貼り付けられた状態で、チャックステージ117に設けられたウェハ吸着部115に吸着される。チャックステージ117の回転数が所定の回転数に達した後、薬液吐出ノズル109より混酸111が、半導体基板101の裏面101bに向けて吐出される。
【0038】
半導体基板101の裏面101bに吐出されて、遠心力により半導体基板101の外周端部へ向かって流れる混酸のうち一部の混酸は、その表面張力と重力によって飛散せずに半導体基板101の外周端部の表面101a側に回り込むことがある。
【0039】
半導体基板101の表面101aには、表面保護テープ113が貼り付けられているが、半導体基板101の外周端部の研削の際に、その保護テープ113を研削すると、砥石が目詰まりを起こして研削速度が低下する。これを防止するため、保護テープ113は半導体基板101の直径よりも小さい直径をもって半導体基板101に貼り付けられている。このため、図17に示すように、半導体基板101の外周端面101cから表面101a側に回り込んだ混酸によって、半導体基板101の表面101a側では抉られるようにエッチングが進むことになる(点線枠121内参照)。
【0040】
たとえば、混酸によって半導体基板101の裏面101bを約20μm分エッチングにより除去しようとすると、最終的には、図18に示すように、半導体基板101の外周端部から径方向Rでは約100μm程度、厚み方向Lでは約60μm程度の領域が除去されることになる。そうすると、半導体基板101の外周端部を研削したにもかかわらず、最終的な半導体基板101の外周端部の仕上がり形状がナイフのエッジのようになってしまうことになる(点線枠123内参照)。このため、後の工程において半導体基板101のハンドリング等の際に、半導体基板101が欠けてしまったり、あるいは、割れてしまうおそれが多分にある。
【0041】
これに対して、上述した半導体装置の製造方法では、半導体基板1の外周端部の表面1a側にリング状にパッシベーション膜3が残されている。これにより、混酸が半導体基板1の外周端面1cから表面1a側に回り込んだとしても、混酸によるエッチングが阻止されて、外周端部がナイフのエッジのようになるのを防止することができる。その結果、後の工程において半導体基板1のハンドリング等の際に、半導体基板1が欠けたり、あるいは、割れてしまうのを確実に阻止することができる。
【0042】
次に、発明者らによって評価された、パッシベーション膜と半導体基板(ウェハ)の割れとの関係について説明する。まず、パッシベーション膜の幅を1.5mmとし、膜厚を1μm、5μm、10μm、20μm、30μm、50μmに振り分けて、半導体基板の裏面を研削し、半導体基板が割れる割合(脱落率)を評価した。その評価結果のグラフを図19に示す。横軸は研削仕上げ厚み(μm)であり、縦軸は半導体基板の加工時の脱落率(%)である。
【0043】
図19に示すように、パッシベーション膜の膜厚が1μm、5μm、10μmの場合では、研削仕上げ厚みが100μmになるまで半導体基板の割れ率はきわめて低いのに対して、パッシベーション膜の膜厚が20μm、30μm、50μmの場合では、研削仕上げ厚みが200μmより薄くなると、割れ率が上がり始めることがわかる。すなわち、パッシベーション膜は半導体基板の外周部がナイフの形状になるのを抑制する観点から必要ではあるが、パッシベーション膜の膜厚が厚すぎると研削加工時に半導体基板が割れてしまう割合が増加する。
【0044】
今回の評価結果から、半導体基板の外周部がナイフの形状になるのを抑制しながら、半導体基板の研削による割れを抑えるには、パッシベーション膜の膜厚は10μmを越えないようにする必要があることが判明した。
【0045】
次に、アスペクト比(パッシベーション膜の膜厚/パッシベーション膜の膜幅)を、0.001、0.003、0.007、0.020、0.030.0.050に振り分けて、半導体基板の裏面を研削し、半導体基板が割れる割合(脱落率)を評価した。その評価結果のグラフを図20に示す。横軸は研削仕上げ厚み(μm)であり、縦軸は半導体基板の加工時の脱落率(%)である。
【0046】
図20に示すように、アスペクト比が0.001、0.003、0.007の場合では、研削仕上げ厚みが100μmになるまで半導体基板の割れ率はきわめて低いのに対して、アスペクト比が0.020、0.030.0.050の場合では、研削仕上げ厚みが200μmより薄くなると、割れ率が上がり始めることがわかる。すなわち、パッシベーション膜は半導体基板の外周部がナイフの形状になるのを抑制する観点から必要ではあるが、アスペクト比が高くなりすぎると研削加工時に半導体基板が割れてしまう割合が増加する。なお、このグラフは、膜幅が1.5nmの場合のグラフであるが、膜幅を変えた場合でも、同様の結果が得られた。
【0047】
今回の評価結果から、半導体基板の外周部がナイフの形状になるのを抑制しながら、半導体基板の研削による割れを抑えるには、アスペクト比は0.007を越えないようにする必要があることが判明した。
【0048】
なお、上述した半導体装置の製造方法では、破砕層を除去する薬液として、フッ酸と硝酸との混酸を例に挙げて説明したが、フッ酸、硝酸、燐酸および硫酸を混合した薬液を使用してもよい。
【0049】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、パワー系の半導体装置に有効に利用される。
【符号の説明】
【0051】
1 半導体基板、1a 表面、1b 裏面、1c 外周端面、2 点線枠、3 パッシベーション膜、5 研削幅、7 研削厚み、9 薬液吐出ノズル、11 薬液、13 表面保護テープ、15 ウェハ吸着部、17 チャックステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主表面および第2主表面を有する半導体基板の前記第1主表面に、前記半導体基板の外周端部から内側に向かって所定の幅を有して前記外周端部に沿って延在する保護膜を形成する工程と、
前記半導体基板の前記外周端部を研削することにより、前記第1主表面および前記第2主表面と直交する外周端面を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第2主表面を研削することにより、前記半導体基板の厚みを所定の厚みにまで薄くする工程と、
研削された前記第2主表面を上方に向けた状態で、前記半導体基板を回転させながら前記第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、前記第2主表面にエッチング処理を施す工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記保護膜は、厚みが10μmを越えないように形成された、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保護膜の膜厚を前記幅で除した比をアスペクト比とすると、前記保護膜は、前記アスペクト比の値が0.007を超えないように形成された、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
所定の前記薬液として、フッ酸、硝酸、燐酸および硫酸を含む混酸が用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記保護膜として、シリコン窒化膜およびポリイミド膜のいずれかの膜が形成される、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
互いに対向する第1主表面および第2主表面を有し、外周端部が研削された半導体基板を用意する工程と、
前記半導体基板の前記第1主表面に、前記半導体基板の前記外周端部から内側に向かって所定の幅を有して前記外周端部に沿って延在する保護膜を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第2主表面を研削することにより、前記半導体基板の厚みを所定の厚みにまで薄くする工程と、
研削された前記第2主表面を上方に向けた状態で、前記半導体基板を回転させながら前記第2主表面上に所定の薬液を吐出することにより、前記第2主表面にエッチング処理を施す工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記保護膜は、厚みが10μmを越えないように形成された、請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記保護膜の膜厚を前記幅で除した比をアスペクト比とすると、前記保護膜は、前記アスペクト比の値が0.007を超えないように形成された、請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
所定の前記薬液として、フッ酸、硝酸、燐酸および硫酸を含む混酸が用いられる、請求項6〜8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記保護膜として、シリコン窒化膜およびポリイミド膜のいずれかの膜が形成される、請求項6〜9のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2011−60893(P2011−60893A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207071(P2009−207071)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】