説明

半導体装置の製造方法

【課題】本発明は、半導体集積回路上及びスクライブ領域上を覆うパッシベーション膜を備えた半導体装置の製造装置に関し、パッシベーション膜に起因する半導体基板の反りを低減することを課題とする。
【解決手段】スクライブ領域B上に設けられたパッシベーション膜13に、複数の回路形成領域Aを囲むように格子状の溝47を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に係り、特に半導体集積回路及びスクライブ領域上を覆うパッシベーション膜を備えた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置は、半導体基板と、半導体基板上に形成された半導体集積回路と、パッシベーション膜とを有する。半導体集積回路は、その最上層に外部接続端子となる電極パッドと、電極パッドと電気的に接続された配線とを有する。パッシベーション膜は、電極パッドを露出した状態で、半導体集積回路及びスクライブ領域上を覆うように設けられている。パッシベーション膜は、半導体集積回路(特に最上層に形成された配線)を水分等から保護するための保護膜である(図18参照)。
【0003】
図18は、従来の半導体装置の断面図である。図18において、Hは半導体集積回路102が形成される半導体基板101上の領域(以下、「回路形成領域H」とする)、Iはスクライブ領域(以下、「スクライブ領域I」とする)をそれぞれ示している。
【0004】
図18を参照するに、半導体装置100は、半導体基板101と、半導体集積回路102と、パッシベーション膜103とを有する。
【0005】
半導体基板101は、薄板化された基板である。半導体基板101は、半導体集積回路102が形成される回路形成領域Hと、回路形成領域Hを囲むスクライブ領域Iとを有する。半導体基板101の厚さJ1は、例えば、300μmとすることができる。
【0006】
半導体集積回路102は、3層配線構造とされており、半導体基板101の回路形成領域Hに設けられており、拡散層105と、ゲート電極106と、絶縁層108〜110と、第1の配線パターン112A,112Bと、第2の配線パターン113A,113Bと、第3の配線パターン114A,114Bとを有する。
【0007】
拡散層105は、半導体基板101の表面101A側に設けられている。ゲート電極106は、半導体基板101上に設けられている。絶縁層108〜110は、拡散層105及びゲート電極106が形成された半導体基板101上に絶縁層108、絶縁層109、絶縁層110の順に積層されている。
【0008】
第1の配線パターン112Aは、絶縁膜108上に設けられている。第1の配線パターン112Aは、拡散層105上に位置する絶縁膜108を貫通しており、拡散層105と電気的に接続されている。第1の配線パターン112Bは、絶縁膜108上に設けられている。第1の配線パターン112Bは、ゲート電極106上に位置する絶縁膜108を貫通しており、ゲート電極106と電気的に接続されている。
【0009】
第2の配線パターン113Aは、第1の配線パターン112A上に位置する絶縁膜109を貫通するように絶縁膜109上に設けられている。第2の配線パターン113Aは、第1の配線パターン112A上に位置する絶縁膜109を貫通しており、第1の配線パターン112Aと電気的に接続されている。第2の配線パターン113Bは、第1の配線パターン112B上に位置する絶縁膜109を貫通するように絶縁膜109上に設けられている。第2の配線パターン113Bは、第1の配線パターン112Bと電気的に接続されている。
【0010】
第3の配線パターン114Aは、第2の配線パターン113A上に位置する絶縁膜110を貫通するように絶縁膜110上に設けられている。第3の配線パターン114Aは、電極パッド116と電気的に接続されている。第3の配線パターン114Bは、第2の配線パターン113B上に位置する絶縁膜110を貫通するように絶縁膜110上に設けられている。第3の配線パターン114Bは、電極パッド117と電気的に接続されている。
【0011】
電極パッド116,117は、半導体装置100の外部接続端子となるパッドであり、絶縁膜110上に設けられている。電極パッド116は、第3の配線パターン114Aと電気的に接続されている。電極パッド117は、第3の配線パターン114Bと電気的に接続されている。
【0012】
パッシベーション膜103は、半導体集積回路102及びスクライブ領域I上を覆うように設けられている。パッシベーション膜103は、電極パッド116を露出する開口部103Aと、電極パッド117を露出する開口部103Bとを有する。パッシベーション膜103は、第3の配線パターン114A,114Bを保護するための膜である。パッシベーション膜103としては、耐湿性に優れた窒化膜が用いられる。パッシベーション膜の厚さは、例えば、1μm〜2μm程度とすることができる。
【0013】
図19は、複数の半導体装置が製造される半導体基板の平面図である。図19において、Kはダイサーにより切断される半導体基板101の切断位置(以下、「切断位置K」とする)を示している。
【0014】
図19を参照するに、半導体基板101−1は、半導体集積回路102が形成される複数の回路形成領域Hと、複数の回路形成領域Hの外周を囲むスクライブ領域Iとを有する。スクライブ領域Iには、電気特性評価用パターン(TEG)やアライメントマーク等(共に図示せず)が形成されている。半導体基板101−1には、複数の半導体装置100が製造される。
【0015】
図20〜図24は、従来の半導体装置の製造工程を示す図である。図20〜図24において、図18に示す半導体装置100と同一構成部分には同一符号を付す。
【0016】
図20〜図24を参照して、図19に示す半導体基板101−1に複数の半導体装置100を製造する場合を例に挙げて、半導体装置100の製造方法について説明する。
【0017】
始めに、図20に示す工程では、半導体基板101の複数の回路形成領域Hに半導体集積回路102を形成する。この段階では、まだ半導体基板101−1は薄板化されていない。薄板化前の半導体基板101−1の厚さJ2は、例えば、700μmとすることができる。
【0018】
次いで、図21に示す工程では、図20に示した構造体上を覆うようにパッシベーション膜103を形成する。パッシベーション膜103としては、耐湿性に優れた窒化膜が用いられる。
【0019】
次いで、図22に示す工程では、パッシベーション膜103を異方性エッチングして電極パッド116を露出する開口部103Aと、電極パッド117を露出する開口部103Bとを形成する。
【0020】
次いで、図23に示す工程では、半導体基板101−1の裏面101−1B側から半導体基板101−1を薄板化する。薄板化後の半導体基板101−1の厚さJ1は、例えば、300μmとすることができる。
【0021】
次いで、図24に示す工程では、切断位置Kに対応する半導体基板101−1を切断する。これにより、複数の半導体装置100を製造される。なお、図18に示した半導体基板100は、半導体基板101−1が個片化されたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開平6−53210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の半導体装置100では、図20に示した構造体上を覆うようにパッシベーション膜103として膜応力の大きい窒化膜を設けていたため、窒化膜の影響により半導体基板101−1に反りが発生してしまうという問題があった。
【0024】
また、半導体基板101−1に反りが発生した場合、搬送装置による半導体基板101−1の搬送ミス(例えば、半導体基板101−1の落下)や、半導体集積回路製造用装置及び検査装置における半導体基板101−1の吸着ミス等が発生してしまうという問題があった。
【0025】
このような問題は、半導体基板101−1の薄板化後の工程(洗浄工程や検査工程等)や、配線パターンの積層数の多い(例えば、3層以上)半導体装置において顕著であった。
【0026】
そこで、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、パッシベーション膜に起因する半導体基板の反りを低減することのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一観点によれば、複数の半導体集積回路(12)と、前記半導体集積回路(12)が形成される複数の回路形成領域(A)と、該複数の回路形成領域(A)の外周を囲むように設けられたスクライブ領域(B)とを有する半導体基板(11−1)と、前記複数の半導体集積回路(12)及びスクライブ領域(B)を覆うパッシベーション膜(13)とを備えた半導体装置(10)の製造法方法であって、前記複数の半導体集積回路(12)を形成する半導体集積回路形成工程と、前記パッシベーション膜(13)を形成するパッシベーション膜形成工程と、前記スクライブ領域(B)上に設けられた前記パッシベーション膜(13)に溝(47)を形成する溝形成工程と、前記半導体基板(11−1)を400μm以下に薄板化する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置(10)の製造方法が提供される。
【0028】
本発明によれば、スクライブ領域(B)上に設けられたパッシベーション膜(13)に溝(47)を形成することにより、パッシベーション膜(13)が複数のエリアに分割されてパッシベーション膜(13)の膜応力が緩和されるため、パッシベーション膜(13)に起因する半導体基板(11−1)の反りを低減することができる。
【0029】
なお、上記参照符号は、あくまでも参考であり、これによって、本願発明が図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、パッシベーション膜に起因する半導体基板の反りを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】図1に示した半導体装置の平面図である。
【図3】複数の半導体装置が製造される半導体基板の平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その5)である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その6)である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図(その7)である。
【図11】図6に示す構造体を平面視した図である。
【図12】図8に示す構造体を平面視した図である。
【図13】パッシベーション膜に形成する溝の他の例を示す平面図である。
【図14】図14は、パッシベーション膜の溝の有無と半導体基板の反りの関係を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【図16】図15に示す半導体装置の平面図である。
【図17】第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図である。
【図18】従来の半導体装置の断面図である。
【図19】複数の半導体装置が製造される半導体基板の平面図である。
【図20】従来の半導体装置の製造工程を示す図(その1)である。
【図21】従来の半導体装置の製造工程を示す図(その2)である。
【図22】従来の半導体装置の製造工程を示す図(その3)である。
【図23】従来の半導体装置の製造工程を示す図(その4)である。
【図24】従来の半導体装置の製造工程を示す図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。図1において、Aは半導体集積回路12が形成される領域(以下、「回路形成領域A」とする)、Bは回路形成領域Aの外周を囲むように配置されたスクライブ領域(以下、「スクライブ領域B」とする)をそれぞれ示している。
【0034】
図1を参照するに、半導体装置10は、半導体基板11と、半導体集積回路12と、パッシベーション膜13とを有する。
【0035】
半導体基板11は、半導体集積回路12を形成するための基板であり、薄板化されている。半導体基板11の厚さM1は、例えば、300μmとすることができる。半導体基板11としては、例えば、Si基板やGa−As基板を用いることができる。
【0036】
半導体集積回路12は、回路形成領域Aに対応する半導体基板11に設けられている。半導体集積回路12は、3層配線構造とされており、ウェル拡散領域14と、ドレイン領域15と、ソース領域16と、素子分離膜18と、ゲート酸化膜19と、ゲート電極21と、絶縁膜22,29,36と、第1の配線パターン25,27と、第2の配線パターン34,35と、第3の配線パターン41,43と、電極パッド42,44とを有する。
【0037】
ウェル拡散領域14は、半導体基板11の表面11A側に位置する半導体基板11に設けられている。ウェル拡散領域14の上面は、半導体基板11の表面11Aと略面一とされている。また、ウェル拡散領域14間は、素子分離膜18により分離されている。
【0038】
ドレイン領域15は、ウェル拡散領域14の中央付近に設けられている。ドレイン領域15の上面は、ウェル拡散領域14の上面と略面一とされている。ドレイン領域15は、ウェル拡散領域14よりも深さの浅い拡散層である。
【0039】
ソース領域16は、ドレイン領域15から離間したウェル拡散領域14に設けられている。ソース領域16の上面は、ウェル拡散領域14の上面と略面一とされている。ソース領域16は、ウェル拡散領域14よりも深さの浅い拡散層である。
【0040】
素子分離膜18は、ウェル拡散領域14間を絶縁するように半導体基板11の表面11A側に設けられている。素子分離膜18としては、例えば、酸化膜を用いることができる。
【0041】
ゲート酸化膜19は、ドレイン領域15とソース領域16との間に位置する半導体基板11上に設けられている。ゲート電極21は、ゲート酸化膜19上に設けられている。ゲート電極21としては、例えば、ゲート酸化膜19上に、Poly-Si、WSiの順に積層したPoly-Si/WSi積層膜を用いることができる。
【0042】
絶縁膜22は、半導体基板11の表面11A、ドレイン領域15、ソース領域16、素子分離膜18、及びゲート電極21を覆うように設けられている。絶縁膜22は、貫通孔23,24を有する。貫通孔23は、ドレイン領域15を露出している。貫通孔24は、ゲート電極21の上面を露出している。
【0043】
第1の配線パターン25は、絶縁膜22の上面22A及び貫通孔23に設けられている。第1の配線パターン25は、ドレイン領域15と電気的に接続されている。第1の配線パターン27は、絶縁膜22の上面22A及び貫通孔24に設けられている。第1の配線パターン27は、ゲート電極21と電気的に接続されている。
【0044】
絶縁膜29は、絶縁膜22上及び第1の配線パターン25,27を覆うように設けられている。絶縁膜29は、第1の配線パターン25の上面を露出する貫通孔31と、第1の配線パターン27の上面を露出する貫通孔32とを有する。
【0045】
第2の配線パターン34は、絶縁膜29の上面29A及び貫通孔31に設けられている。第2の配線パターン34は、第1の配線パターン25と電気的に接続されている。第2の配線パターン35は、絶縁膜29の上面29A及び貫通孔32に設けられている。第2の配線パターン35は、第1の配線パターン27と電気的に接続されている。
【0046】
絶縁膜36は、絶縁膜29上及び第2の配線パターン34,35を覆うように設けられている。絶縁膜36は、第2の配線パターン34の上面を露出する貫通孔38と、第2の配線パターン35の上面を露出する貫通孔39とを有する。
【0047】
第3の配線パターン41は、絶縁膜36の上面36A及び貫通孔38に設けられている。第3の配線パターン41は、第2の配線パターン34と電気的に接続されている。第3の配線パターン43は、絶縁膜36の上面36A及び貫通孔39に設けられている。第3の配線パターン43は、第2の配線パターン35と電気的に接続されている。
【0048】
電極パッド42は、絶縁膜36上に設けられている。電極パッド42は、第3の配線パターン41と電気的に接続されている。これにより、電極パッド42は、ドレイン領域15と電気的に接続される。電極パッド44は、絶縁膜36上に設けられている。電極パッド44は、第3の配線パターン43と電気的に接続されている。これにより、電極パッド44は、ゲート電極21と電気的に接続される。電極パッド42,44は、半導体集積回路12をインタポーザやマザーボード等の基板に対して電気的に接続するためのパッドである。電極パッド42,44は、例えば、ワイヤやスタッドバンプ等を介して、インタポーザやマザーボード等の基板に設けられた配線と電気的に接続される。
【0049】
図2は、図1に示した半導体装置の平面図である。
【0050】
図1及び図2を参照して、パッシベーション膜13について説明する。
【0051】
パッシベーション膜13は、絶縁膜36上及び第3の配線パターン41,43を覆うように設けられており、開口部46A,46Bと、溝47とを有する。
【0052】
開口部46Aは、電極パッド42上に位置するパッシベーション膜13に形成されており、電極パッド42の上面を露出している。開口部46Bは、電極パッド44上に位置するパッシベーション膜13に形成されており、電極パッド44の上面を露出している。
【0053】
溝47は、スクライブ領域Bに設けられる電気特性評価用パターン及びアライメントマーク(共に図示せず)の配設位置(図4に示すパターン形成領域Fに相当する)よりも半導体集積回路12側に形成されたスクライブ領域Bのパッシベーション膜13に形成されている。溝47は、パッシベーション膜13を貫通しており、回路形成領域Aを囲むよう格子状に形成されている。回路形成領域Aから溝47までの距離C1は、例えば、数μm程度とすることができる。また、溝47の幅D1は、例えば、1μm〜10μmとすることができる。
【0054】
パッシベーション膜13としては、例えば、耐湿性に優れた窒化膜を用いるとよい。窒化膜は、膜応力の大きい膜である。
【0055】
図3は、複数の半導体装置が製造される半導体基板の平面図である。図3において、Eはダイサーが半導体基板11−1を切断する位置(以下、「切断位置E」とする)を示している。
【0056】
図3を参照するに、半導体基板11−1は、半導体集積回路12が形成される複数の回路形成領域Aと、回路形成領域Aの外周を囲むスクライブ領域Bとを有する。スクライブ領域Bには、電気特性評価用パターン(TEG)やアライメントマーク等(共に図示せず)のパターンが形成されている。半導体装置10は、図3に示すような半導体基板11−1に複数の半導体集積回路12を形成後、ダイサーにより切断位置Eに対応する半導体基板11−1を切断することで製造される。なお、半導体基板11−1は、半導体集積回路12を形成する前の段階では薄板化されていない。
【0057】
図4〜図10は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図であり、図11は、図6に示す構造体を平面視した図である。また、図12は、図8に示す構造体を平面視した図である。図4〜図12において、図1及び図2に示した半導体装置10と同一構成部分には同一符号を付す。また、図4〜図12において、Fは電気特性評価用パターン(TEG)やアライメントマーク等(共に図示せず)のパターンが形成される領域(以下、「パターン形成領域F」とする)を示している。また、パターン形成領域Fは、スクライブ領域Bの中央付近に配置されている。
【0058】
図4〜図12を参照して、図3に示した半導体基板11−1に複数の半導体装置10を製造する場合を例に挙げて、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。
【0059】
始めに、図4に示す工程では、周知の技術により、半導体基板11−1の複数の回路形成領域Aに半導体集積回路12を形成する(半導体集積回路形成工程)。このとき、スクライブ領域Bのパターン形成領域Fに対応する半導体基板11−1には、電気特性評価用パターン(TEG)やアライメントマーク等(共に図示せず)のパターンが形成される。
【0060】
半導体基板11−1としては、例えば、Siウエハを用いることができる。薄板化前の半導体基板11−1の厚さM2は、例えば、625μmとすることができる。
【0061】
次いで、図5に示す工程では、図4に示した構造体上を覆うようにパッシベーション膜13を形成する(パッシベーション膜形成工程)。これにより、複数の半導体集積回路12上及びスクライブ領域Bに対応する絶縁膜36上は、パッシベーション膜13で覆われる。
【0062】
具体的には、例えば、CVD法により、図4に示した構造体上を覆うようにパッシベーション膜13として窒化膜を形成する。パッシベーション膜13の厚さは、例えば、0.5μm〜2μmとすることができる。
【0063】
次いで、図6に示す工程では、パッシベーション膜13上に開口部51A〜51Cを有したレジスト膜51を形成する。開口部51A〜51Cは、パッシベーション膜13を露出している。開口部51Aは、パッシベーション膜13に形成される開口部46Aの形成位置に対応している。開口部51Bは、パッシベーション膜13に形成される開口部46Bの形成位置に対応している。
【0064】
図6及び図11に示すように、開口部51Cは、回路形成領域Aとパターン形成領域Fとの間のスクライブ領域Bに位置するレジスト膜51に形成されている。開口部51Cは、パッシベーション膜13に形成される溝47の形成位置に対応しており、複数の回路形成領域Aをそれぞれ囲む格子状とされている。回路形成領域Aから開口部51Cまでの距離C2は、例えば、数μmとすることができる。また、開口部51Cの幅D2は、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0065】
次いで、図7に示す工程では、レジスト膜51をマスクとして、パッシベーション膜13をエッチングして、溝47と、電極パッド42,44を露出する開口部46A,46Bとを同時に形成する(溝形成工程)。
【0066】
溝47は、回路形成領域Aとパターン形成領域Fとの間のスクライブ領域Bに位置するパッシベーション膜13を貫通しており、複数の回路形成領域Aを囲む格子状とされている。エッチングとしては、例えば、異方性エッチングを用いることができる。また、異方性エッチングとしては、例えば、ドライエッチングを用いることができる。溝47の幅D1は、開口部51Cの幅D2と略等しく、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0067】
このように、スクライブ領域Bに位置するパッシベーション膜13に、パッシベーション膜13を貫通すると共に、複数の回路形成領域Aを囲む格子状の溝47を形成することにより、パッシベーション膜13が複数のエリアに分割されてパッシベーション膜13の膜応力が小さくなるため、半導体基板11−1の反りを低減することができる。
【0068】
これにより、搬送装置による半導体基板11−1の搬送ミス(例えば、半導体基板11−1の落下)や、半導体集積回路製造用装置及び検査装置における半導体基板11−1の吸着ミス等を抑制することができる。
【0069】
また、溝47をパターン形成領域Fと回路形成領域Aとの間のスクライブ領域Bに位置するパッシベーション膜13に形成することにより、溝47が障害となることなく、露光装置でのアライメントや電気特性評価用パターンのテストを正常に行うことができる。
【0070】
さらに、エッチングにより、溝47を従来から形成されていた電極パッド42,44を露出する開口部46A,46Bと同時に形成することにより、製造工程数を増加させることなく、溝47を形成することができる。
【0071】
次いで、図8に示す工程では、レジスト膜51を除去する(図12参照)。図12は、図8に示す構造体の平面図である。
【0072】
次いで、図9に示す工程では、半導体基板11−1の裏面11−1B側から半導体基板11−1を薄板化する。具体的には、例えば、バックサイドグラインダーや裏面研磨装置等を用いて、半導体基板11−1の薄板化を行なう。薄板化後の半導体基板11−1の厚さM1は、例えば、300μmとすることができる。
【0073】
次いで、図10に示す工程では、ダイサー53により切断位置Eに対応する半導体基板11−1を切断する。これにより、複数の半導体装置10が製造される。
【0074】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、スクライブ領域Bに位置するパッシベーション膜13に複数の回路形成領域Aを囲む格子状の溝47を形成することにより、パッシベーション膜13が複数のエリアに分割されてパッシベーション膜13の膜応力が小さくなるため、半導体基板11−1の反りを低減することができる。これにより、搬送装置による半導体基板11−1の搬送ミス(例えば、半導体基板11−1の落下)や、半導体集積回路製造用装置及び検査装置における半導体基板11−1の吸着ミス等を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、パッシベーション膜13を貫通するように溝47を形成する場合を例に挙げて説明したが、絶縁膜36を露出しない程度に溝47を形成した場合でも本実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0076】
また、パッシベーション膜13に形成される開口部46A,46Bと溝47とを別々に形成してもよい。
【0077】
さらに、溝47の形状は、本実施の形態(図12に示す溝47の形状)に限定されない。例えば、図13に示すような形状の溝55をパッシベーション膜13に形成してもよい。また、溝47は、必ずしも複数の回路形成領域Aを囲むように設ける必要はない。例えば、一方向のみに延在する溝をパッシベーション膜13に複数設けた場合でもパッシベーション膜13の膜応力を小さくすることが可能である。
【0078】
図13は、パッシベーション膜に形成する溝の他の例を示す平面図である。図13において、図12に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0079】
図13に示すように、パッシベーション膜13に複数の額縁状(平面視した際の形状)の溝55を設けてもよい。溝55は、回路形成領域A毎に設けられており、回路形成領域Aを囲んでいる。
【0080】
このような複数の溝55をパッシベーション膜13に設けた場合も本実施の形態と同様な効果を得ることができる。溝55の幅D3は、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0081】
図14は、パッシベーション膜の溝の有無と半導体基板の反りの関係を示す図である。
【0082】
ここで、パッシベーション膜の溝の有無が半導体基板の反りに及ぼす影響を確認するための評価を行なった。評価用サンプルとしては、厚さを変えた複数の半導体基板11−1,101−1上に3層配線構造の半導体集積回路102,12を形成した構造体を用いた。また、パッシベーション膜13に溝47を有する構造体(図9に示す構造体、以下、「第1の実施の形態の構造体」とする)は、図4〜図9に示す工程により製造し、パッシベーション膜103に溝47が無い構造体(図23に示す構造体、以下、「従来の構造体」とする)は、図20〜図23に示す工程により製造した。また、評価条件として、半導体装置10,100のサイズ3mm□、溝47の幅D1を2μm、パッシベーション膜13,103の厚さを1μmとした。
【0083】
図14に示すように、半導体基板11−1,101−1の反りの測定結果から、第1の実施の形態の構造体の半導体基板11−1は、従来の構造体の半導体基板101−1よりも反りが小さくなることが確認できた。
【0084】
(第2の実施の形態)
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図であり、図16は、図15に示す半導体装置の平面図である。図15及び図16において、第1の実施の形態の半導体装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
【0085】
図15及び図16を参照するに、半導体装置60は、第1の実施の形態の半導体装置10に設けられた溝47の代わりに切欠き部61を設けた以外は、半導体装置10と同様に構成されている。
【0086】
切欠き部61は、パッシベーション膜13の外周を囲むように設けられている。切欠き部61は、パッシベーション膜13の外周面13Aと絶縁膜36の上面36Aとにより構成されている。切欠き部61の幅D4は、例えば、2μm〜10μmとすることができる。
【0087】
図17は、第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す図である。図17において、第2の実施の形態の半導体装置60と同一構成部分には同一符号を付す。
【0088】
次に、第2の実施の形態に係る半導体装置60の製造方法について説明する。始めに、第1の実施の形態で説明した図4〜図9に示す工程により、図9に示す構造体を形成する。次いで、図17に示す工程では、図10に示したダイサー53よりも幅広のダイサー63により、図9に示す構造体の切断位置Eに対応する半導体基板11−1を切断して、溝47間に位置するパッシベーション膜13を除去する(切断工程)。
【0089】
これにより、回路形成領域Aを囲むように設けられた溝47が変形して切欠き部61になると共に、複数の半導体装置60が製造される。ダイサー63としては、溝47間に位置するパッシベーション膜13を除去可能な切断幅Gを有するものを用いる。
【0090】
本実施の形態の半導体装置の製造方法によれば、切断位置Eに対応する半導体基板11−1を切断する際、幅広のダイサー63により溝47間に位置するパッシベーション膜13を除去するため、絶縁膜36の外周付近に幅が狭く、破損する恐れのあるパターン(第1の実施の形態の半導体装置10の溝47の外側に設けられたパッシベーション膜13)が形成されることを防止できる。
【0091】
なお、本実施の形態の半導体装置60の製造方法は、第1の実施の形態の半導体装置10の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、パッシベーション膜に起因する半導体基板の反りを低減することのできる半導体装置の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10,60 半導体装置
11,11−1 半導体基板
11A 表面
11B,11−1B 裏面
12 半導体集積回路
13 パッシベーション膜
13A 外周面
14 ウェル拡散領域
15 ドレイン領域
16 ソース領域
18 素子分離膜
19 ゲート酸化膜
21 ゲート電極
22,29,36 絶縁膜
22A,29A,36A 上面
23,24,31,32,38,39 貫通孔
25,27 第1の配線パターン
34,35 第2の配線パターン
41,43 第3の配線パターン
42,44 電極パッド
46A,46B,51A〜51C 開口部
47,55 溝
51 レジスト膜
53,63 ダイサー
61 切欠き部
A 回路形成領域
B スクライブ領域
C1,C2 距離
D1〜D4 幅
E 切断位置
F パターン形成領域
G 切断幅
M1,M2 厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体集積回路と、
前記半導体集積回路が形成される複数の回路形成領域と、該複数の回路形成領域の外周を囲むように設けられたスクライブ領域とを有する半導体基板と、
前記複数の半導体集積回路及びスクライブ領域を覆うパッシベーション膜とを備えた半導体装置の製造法方法であって、
前記複数の半導体集積回路を形成する半導体集積回路形成工程と、
前記パッシベーション膜を形成するパッシベーション膜形成工程と、
前記スクライブ領域上に設けられた前記パッシベーション膜に溝を形成する溝形成工程と、
前記半導体基板を400μm以下に薄板化する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記パッシベーション膜は、前記複数の半導体集積回路に設けられた電極パッドを露出する開口部を有し、
前記溝は、エッチングにより前記開口部と同時に形成することを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記溝は、前記パッシベーション膜を貫通することを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造法方法。
【請求項4】
前記パッシベーション膜は、窒化膜であることを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造法方法。
【請求項5】
前記溝は、前記複数の半導体集積回路を囲むように形成することを特徴とする請求項1ないし4のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造法方法。
【請求項6】
前記溝は、前記スクライブ領域に設けられる電気特性評価用パターン及びアライメントマークの配設位置よりも前記半導体集積回路側に形成することを特徴とする請求項1ないし5のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造法方法。
【請求項7】
前記溝形成工程後に、前記スクライブ領域に対応する前記半導体基板を切断する切断工程をさらに有し、
前記切断工程は、前記スクライブ領域に対応する前記半導体基板を切断しつつ、前記溝間に配置された前記パッシベーション膜を除去することを特徴とする請求項1ないし6のうち、いずれか一項記載の半導体装置の製造法方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−70004(P2012−70004A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280175(P2011−280175)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【分割の表示】特願2005−365366(P2005−365366)の分割
【原出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】