説明

半導体装置の製造方法

【課題】生産性の向上を図る。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板10上に、被処理膜13,16,21を形成する工程と、前記被処理膜の表面をCMP法により研磨する工程と、を具備し、前記CMP法は、回転する研磨パッド31を第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度に上昇させる工程と、前記被処理膜の表面を前記第2温度に上昇した前記研磨パッドに当接させる工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置における多層配線や素子分離の形成工程において、表面を平坦化する工程として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法が多用されている。CMPとしては、STI(Shallow Trench Isolation)のためのシリコン酸化膜等のCMPや、コンタクトプラグ、配線形成のためのタングステン、銅、またはアルミニウム膜等のCMPがある。
【0003】
次世代デバイスに対応したCMPの課題として、高平坦性、低欠陥、さらに高生産性が求められている。平坦性に関しては、リソグラフィー工程でのフォーカスエラーに直結する段差低減が求められている。また、欠陥に関しては、微細化に伴い、歩留まりへの影響が強くなるため、きわめて低い欠陥密度が求められている。さらに、生産性向上に関しては、処理時間短縮に向けた研磨レートの向上が必要とされている。
【0004】
上記要求に大きく寄与するCMP構成要素としては、研磨スラリーや研磨パッドが挙げられる。しかし、いずれの構成要素も温度変化に伴い、研磨特性が変化することが予想される。また、CMPでは、研磨する材料に応じて研磨特性の高い所望の温度が存在する。
【0005】
これに対し、温度の観点から研磨特性を改善するため、冷却機構を用いて研磨中における研磨スラリーや研磨パッドの温度を冷却して一定に制御する方法が提案されている。また、冷却機構を用いることで、研磨特性の高い所望の温度に制御することも可能である。
【0006】
しかしながら、研磨初期は低温であり、研磨特性の高い所望の温度に上昇するまでは研磨特性が変動する。すなわち、CMPにおいて、より早く所望の温度に上昇させ、その所望の温度を一定に維持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−249452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生産性の向上を図る半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板上に、被処理膜を形成する工程と、前記被処理膜の表面をCMP法により研磨する工程と、を具備し、前記CMP法は、回転する研磨パッドを第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度に上昇させる工程と、前記被処理膜の表面を前記第2温度に上昇した前記研磨パッドに当接させる工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る半導体装置における配線の製造工程を示す断面図。
【図2】本実施形態に係る半導体装置におけるSTIの製造工程を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るCMP装置の構成を示す斜視図。
【図4】CMPにおける被処理膜の研磨レートの温度依存性を示すグラフ。
【図5】本実施形態に係る第1のCMP方法における研磨パッド31の温度特性とその比較例とを示す図。
【図6】本実施形態に係るCMP工程における昇温機構37の圧力と研磨パッド31の到達温度との関係を示す図。
【図7】本実施形態に係る第1のCMP方法において複数のウェハが研磨される場合の研磨パッド31の温度特性を示すグラフ。
【図8】本実施形態に係る第2のCMP方法における研磨パッド31の温度変移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。
【0012】
[配線構造およびSTIの製造方法]
以下に図1および図2を用いて、本実施形態に係る半導体装置における配線およびSTIの製造方法について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る半導体装置における配線の製造工程を示す断面図である。
【0014】
まず、図1(a)に示すように、半導体素子(図示せず)が形成された半導体基板10上に、絶縁膜11が形成される。絶縁膜11は、例えばSiOで構成される。この絶縁膜11にコンタクトホールAが形成される。次に、全面に、バリアメタル12が形成される。バリアメタル12は、例えばTiNで構成される。その後、全面に、常法(例えば、CVD法)によりコンタクトプラグとなるW膜13が形成される。このとき、W膜13は、コンタクトホールA外にも形成される。
【0015】
次に、図1(b)に示すように、W膜13およびバリアメタル12を被処理膜としてCMPが行われ、表面が平坦化される。このCMP工程の詳細については、後述する。これにより、コンタクトホールA外のW膜13およびバリアメタル12が除去され、絶縁膜11、バリアメタル12、およびW膜13で構成されるコンタクト層が形成される。なお、コンタクトとしてW膜13に限らず、Cu膜が形成されてもよい。
【0016】
次に、図1(c)に示すように、コンタクト層上に、絶縁膜14が形成される。絶縁膜14は、例えばSiOで構成される。この絶縁膜14に、凹部としての配線溝Bが形成される。次に、全面に、常法(例えば、CVD法)によりバリアメタル15が形成される。バリアメタル15は、例えば、Tiで構成される。次に、全面に、常法(例えば、CVD法)により配線となるCu膜16が形成される。このとき、Cu膜16は、配線溝B外にも形成される。
【0017】
次に、図1(d)に示すように、Cu膜16およびバリアメタル15を被処理膜としてCMPが行われ、表面が平坦化される。このCMP工程の詳細については、後述する。これにより、配線溝B外のCu膜16およびバリアメタル15が除去され、絶縁膜14、バリアメタル15、およびCu膜16で構成される配線層が形成される。なお、配線としてCu膜16に限らず、W膜が形成されてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態に係る半導体装置におけるSTIの製造工程を示す断面図である。
【0019】
まず、図2(a)に示すように、半導体基板10上に、ストッパー膜となるシリコン窒化膜20が形成される。その後、シリコン酸化膜等をエッチングマスクとして、半導体基板10に、STIパターンCが形成される。なお、半導体基板10とシリコン窒化膜20との間に、例えばシリコン酸化膜等を設けてもよい。
【0020】
次に、全面に、例えば高密度プラズマCVD法(HDP−CVD)等によりシリコン酸化膜21が形成される。このとき、シリコン酸化膜21は、STIパターンC外にも形成される。
【0021】
次に、図2(b)に示すように、シリコン酸化膜21を被処理膜としてCMPが行われ、表面が平坦化される。このCMP工程の詳細については、後述する。これにより、配線溝C外のシリコン酸化膜(SiO膜)21が除去されSTI構造が形成される。
【0022】
上述したように、半導体装置における配線やSTI等の形成工程において、CMPが行われる。これらのCMP工程について、以下に詳説する。すなわち、本実施形態では、配線構造におけるW膜13、Cu膜16等、またはSTI構造におけるシリコン酸化膜21等をCMPの被処理膜として用いた例を示す。しかし、これに限らず、本実施形態は、種々の金属材料、絶縁材料を被処理膜として行うCMPに対して適用可能である。
【0023】
[CMP装置]
以下に図3を用いて、本実施形態に係るCMP装置の構成について説明する。
【0024】
図3は、本実施形態に係るCMP装置の構成を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、本実施形態に係るCMP装置は、ターンテーブル30、研磨パッド31、研磨ヘッド32、スラリー供給ノズル33、冷却ノズル35、および昇温機構37を備えている。
【0026】
ターンテーブル30上に貼付された研磨パッド31上には、表面に半導体基板(ウェハ)10が保持された研磨ヘッド32が当接される。半導体基板10上には、被処理膜(W膜13、Cu膜16、シリコン酸化膜21等)が形成されている。すなわち、研磨パッド31に、研磨ヘッド32を当接することで、被処理膜の研磨が行われる。
【0027】
ターンテーブル30は1〜200rpmで回転可能であり、研磨ヘッド32は1〜200rpmで回転可能である。これらターンテーブル30および研磨ヘッド32は、同じ方向に回転し、例えば時計回りに回転する。しかし、これに限らず、逆方向に回転してもよい。また、CMP中、ターンテーブル30および研磨ヘッド32はそれぞれ、一定方向に回転する。これらの圧力は、通常50〜500hPa程度である。
【0028】
また、研磨パッド31上には、スラリー供給ノズル33が配置されている。このスラリー供給ノズル33からは、スラリー34として所定の薬液を50〜500cc/minの流量で供給することができる。このスラリー34としては、被処理膜に対する研磨レートが大きい薬液が用いられる。また、スラリー供給ノズル33は、例えばターンテーブル30の中心付近に設けられているが、これに限らず、スラリー34が研磨パッド31の全面に供給されるように適宜配置されてもよい。
【0029】
さらに、研磨パッド31上には、圧縮空気または窒素ガスなどを研磨パッド31に向けて噴出する冷却ノズル35が配置されている。冷却ノズル35は、スラリー供給ノズル33(ターンテーブル30の回転軸)を中心にして研磨パッド31の半径上に配置されている。このため、研磨パッド31が回転することによって、その全面に圧縮空気等を噴出することができる。この冷却ノズル35は、0〜1000l/min程度の範囲で圧縮空気を研磨パッド31に噴出する。これにより、冷却ノズル35は、研磨パッド31やその表面に供給されたスラリー34の温度を下降させて制御することができる。
【0030】
ここで、本実施形態におけるCMP装置において、研磨パッド31上には、昇温機構37が配置されている。この昇温機構37は、CMP工程において、回転しながら研磨パッド31に当接されることで摩擦熱を発生し、研磨パッド31およびスラリー34の温度を上昇させる機能を有する。昇温機構37の各構成要素について、以下に詳説する。
【0031】
昇温機構37は、駆動軸によって回転可能なヘッド部38、およびヘッド部の表面に保持されたプレート36で構成されている。
【0032】
ヘッド部38は、駆動軸に接続され、1〜200rpmで回転可能である。また、ヘッド部38は、駆動軸から力を加えられることで、50〜500hPaの圧力で研磨パッド31に当接される。これらヘッド部38の回転数および研磨パッド31への圧力は、適宜調整可能である。
【0033】
プレート36は、ヘッド部38の表面に保持され、ヘッド部38とともに回転する。また、プレート36は、ヘッド部38の圧力に応じて、研磨パッド31に当接される。すなわち、駆動軸から力を加えられることで、プレート36が研磨パッド31に直接押し付けられる。
【0034】
プレート36は、表面が平滑でかつ硬度な材料からなり、例えば炭素(C)および/またはシリコン(Si)を含む材料からなる。炭素(C)および/またはシリコン(Si)を含む材料としては、例えばダイヤモンドや炭化珪素(SiC)が挙げられる。しかし、これに限らず、スラリー34による研磨レートが被処理膜よりも小さく、望ましくは1/100以下である材料であればよい。これにより、プレート36が回転しながら研磨パッド31およびスラリー34に当接されても、プレート36が研磨されることはない。また、プレート36は、研磨パッド31およびスラリー34の温度上昇を容易にするため、研磨パッド31との接触時において摩擦力が大きくなるような材料であることが望ましい。
【0035】
昇温機構37に取り付けられるプレート36は、表面が平滑であり、砥粒等は凝着していない。このため、プレート36は、研磨パッド31に対する研削能力はなく、低発塵性である。すなわち、表面に砥粒が凝着され、回転しながら研磨パッド31に当接されることで研磨パッド31の表面を研削してコンディショニングを行う、いわゆるドレッサーと、昇温機構37とは異なる。昇温機構37は、研磨パッド31に当接されても、研磨パッド31に対して摩擦熱(温度上昇)以外の影響を与えない。
【0036】
なお、本実施形態における昇温機構37は、ドレッサーとは研磨能力等の機能が異なるが、回転しながら研磨パッド31に当接されるといった基本動作は同様である。このため、ドレッサー着脱機能を有するCMP装置において、ドレッサーと本実施形態における昇温機構37とを付け替えることも可能である。
【0037】
上述したように、本実施形態に係るCMP装置によれば、冷却ノズル35による冷却のみならず、昇温機構37による昇温の温度制御も行うことができる。
【0038】
[第1のCMP方法]
以下に図4乃至図7を用いて、本実施形態に係る第1のCMP方法について説明する。なお、以下に示す検証結果等は、下記条件により実施されたものである。
【0039】
CMP装置:荏原製作所製 FREX300E
研磨パッド:ニッタハース製 発泡性パッド(IC1000)
酸化膜研磨用スラリー:日立化成製 セリアスラリー(DLS2)
Cu膜研磨用スラリー:JSR製 シリカスラリー(CMS76xx系)
W膜研磨用スラリー:Cabot製 シリカスラリー(W7573B)
研磨パッド冷却方法: 高圧空気噴射
研磨パッド昇温方法: 接触摩擦
図4は、CMPにおける被処理膜の研磨レートの温度依存性を示すグラフである。より具体的には、図4(a)は被処理膜がCu膜の場合、図4(b)は被処理膜がW膜の場合、図4(c)は被処理膜がSiO膜の場合をそれぞれ示している。
【0040】
図4(a)乃至図4(c)に示すように、通常、CMPにおいて研磨パッド31の温度が上昇すると、被処理膜の研磨レートは大きくなっていく。これは、研磨パッド31の温度とともにスラリー34の温度が上昇することで、スラリー34による被処理膜の機械的研磨力と化学的研磨力が大きくなるためである。
【0041】
しかし、さらに研磨パッド31の温度が上昇し、温度T(T1、T2、T3)を越えると、被処理膜の研磨レートは小さくなっていく。これは、温度Tを境にスラリー34による被処理膜の化学的研磨力が小さくなるためである。
【0042】
すなわち、CMPにおいて生産性を向上させるためには、研磨パッド31を研磨レートの最も大きくなる温度Tに設定してCMPを行うことが重要である。なお、温度Tは、被処理膜の材料や研磨パッド31またはスラリー34に応じて異なるが、20℃〜70℃程度である。
【0043】
図5は、本実施形態に係る第1のCMP方法における研磨パッド31の温度特性とその比較例とを示す図である。より具体的には、図5(a)は本実施形態に係る第1のCMP方法における研磨パッド31の温度変移とその比較例とを示すグラフであり、図5(b)は本実施形態に係る第1のCMP方法における研磨パッド31の温度の制御条件とその比較例を示す図である。
【0044】
なお、図5において、被処理膜は特に限定されていないが、種々の材料に対して同様に適用され得る。
【0045】
図5(a)および図5(b)に示すように、比較例1は、冷却ノズル33による冷却制御および昇温機構37による昇温制御をともに行わない例である。この場合、研磨パッド31と研磨ヘッド32(被処理膜)との摩擦によって、自然に研磨パッド31が温度T0から温度T’(例えば、60℃)に上昇し、この温度T’で一定となる。この温度T’は、研磨レートが大きい温度Tよりも高い温度である。また、研磨パッド31が温度T0から温度Tに上昇するまでに、後述する時間t1よりも長い時間t3がかかる。すなわち、比較例1によれば、到達する温度T’が高くなりすぎ、かつ到達温度T’に達するまでの時間が長いため、生産性が低下する。
【0046】
比較例2は、冷却ノズル33による冷却制御を行い、昇温機構37による昇温制御を行わない例である。この場合、研磨パッド31と研磨ヘッド32(被処理膜)との摩擦および冷却ノズル33による冷却制御によって、研磨パッド31が温度T0から温度T(例えば、40℃)に上昇し、この温度Tで一定となる。この温度Tは、研磨レートが大きい温度である。また、研磨パッド31が温度T0から温度Tに上昇するまでに、後述する時間t1よりも長い時間t2がかかる。すなわち、比較例2によれば、冷却制御によって、到達する温度を研磨レートの大きい温度Tに制御しているため、比較例1よりも生産性は高くなる。しかし、冷却制御のみであるため、温度Tに上昇させるまでの制御はできず、温度Tに上昇させるまでの時間が長いという問題がある。
【0047】
これに対し、本実施形態における第1のCMP方法は、冷却ノズル33による冷却制御および昇温機構37による昇温制御を行う。この場合、研磨パッド31と研磨ヘッド32(被処理膜)との摩擦、昇温機構37による昇温制御(研磨パッド31と昇温機構37との摩擦)、および冷却ノズル33による冷却制御によって、研磨パッド31が温度T0(常温、例えば20℃)から温度T(例えば、40℃)に上昇し、この温度Tで一定となる。また、研磨パッド31が温度T0から温度Tに上昇するまでに、時間t2よりも短い時間t1がかかる。
【0048】
すなわち、第1のCMP方法における研磨初期の研磨パッド31の温度上昇(温度T0から温度Tへの上昇)は、研磨パッド31と研磨ヘッド32との摩擦だけではなく、昇温機構37による昇温制御も行うことにより、比較例1および比較例2における研磨初期の研磨パッド31の温度上昇よりも急峻にすることができる。このとき、時間t1は、被処理膜の研磨工程(CMPの全工程)が終了するまでの時間t4の25%以下の時間である。なお、図5(a)において、研磨終了時の比較例1および比較例2は省略している。
【0049】
また、第1のCMP方法においては、研磨パッド31の温度上昇の初期(時間0)から研磨パッド31に昇温機構37および研磨ヘッド32(被処理膜)を当接させている。すなわち、研磨パッド31と研磨ヘッド32との摩擦熱、および研磨パッド31と昇温機構37との摩擦熱によって、研磨パッド31の温度を上昇させている。この際、スラリー34の供給は、研磨パッド31に被処理膜を当接させると同時に、すなわち、時間0から開始される。
【0050】
図6は、本実施形態に係るCMP工程における昇温機構37の圧力と研磨パッド31の到達温度との関係を示す図である。ここでは、昇温機構37にプレート36としてSiプレートを取り付け、Siプレートと研磨パッド31とを接触させた例を示している。
【0051】
上述したように、本実施形態では、図3に示す昇温機構37を熱源として用いる。すなわち、昇温機構37と研磨パッド31との接触面で摩擦熱を発生させ、その熱を研磨パッド31へと伝播させることで、研磨パッド31の温度を上昇させる。この際、昇温機構37の研磨パッド31への圧力を変えることで、研磨パッド31の到達温度(図4における温度T)を変えることが可能である。
【0052】
より具体的には、図6に示すように、実施例1において、Siプレートを500hPaの圧力で研磨パッド31に当接させた場合、研磨パッド31の到達温度は、70℃となる。また、実施例2において、Siプレートを300hPaの圧力で研磨パッド31に当接させた場合、研磨パッド31の到達温度は、40℃となる。
【0053】
このように、プレート36の研磨パッド31への圧力を大きくすることで摩擦力が上がり、研磨パッド31の到達温度を高くすることができる。一方、プレート36の研磨パッド31への圧力を小さくすることで摩擦力が下がり、研磨パッド31の到達温度を低くすることができる。これにより、研磨パッド31の温度を被処理膜の材料に応じて研磨レートの高い最適な温度に設定することができる。なお、プレート36の研磨パッド31への圧力は、CMPの動作中においても適宜変えることが可能であり、また圧力を0にする(プレート36を研磨パッド31から離す)ことも可能である。
【0054】
また、プレート36の研磨パッド31への圧力のみならず、プレート36(ヘッド部38)の回転速度を変えることでも研磨パッド31の到達温度を変えることが可能である。より具体的には、プレート36の回転速度を大きくすることで摩擦力が下がり、到達温度を低くすることができる。一方、プレート36の回転速度を小さくすることで摩擦力が上がり、到達温度を高くすることができる。
【0055】
すなわち、研磨パッド31の到達温度はプレート36と研磨パッド31との摩擦力を調整することで制御することが可能であり、この摩擦力はプレート36の研磨パッド31への圧力、およびプレート36の回転速度によって制御される。
【0056】
また、研磨パッド31の到達温度のみならず、到達温度までの温度上昇速度も同様に制御され得る。
【0057】
図7は、本実施形態に係る第1のCMP方法において複数のウェハが研磨される場合の研磨パッド31の温度特性を示すグラフである。
【0058】
図7に示すように、まず、時間t4までの間で第1ウェハの被処理膜の研磨が行われる。このとき、図5に示すCMPと同様の温度制御が行われる。その後、昇温機構37がドレッサーに付け替えられ、研磨パッド31の表面のコンディショニングが行われる。これにより、第1ウェハの研磨初期と同様、研磨パッド31の温度がT0に下降する。
【0059】
このとき、ドレッサーの表面には砥粒が凝着されており、回転しながら研磨パッド31に当接されることで研磨パッド31の表面を研削してコンディショニングが行われる。また、コンディショニングは、研磨パッド31の表面が研削された残留物を除去するため、例えば常温の純水を供給しながら行われる。すなわち、コンディショニングでは、温度が上昇した研磨パッド31の表面を研削して除去するため、研磨パッド31の温度が上昇することはなく、T0に下降する。
【0060】
次に、第2ウェハの被処理膜の研磨が行われる。すなわち、図示するように、第2ウェハの被処理膜の研磨の開始(時間0’)も第1ウェハの研磨の開始(時間0)と同様、研磨パッド31の温度はT0である。このため、第2ウェハの被処理膜の研磨においても第1ウェハの被処理膜の研磨と同様の温度制御が行われる。すなわち、時間0’から時間t1’までに研磨パッド31を温度Tまで上昇させ、時間t4’まで被処理膜の研磨が行われる。このとき、時間0’から時間t1’までの時間は、第2ウェハの被処理膜の研磨工程(第2ウェハの被処理膜のCMPの全工程)が終了するまでの時間(時間0’から時間t4’までの時間)の25%以下の時間である。
【0061】
なお、複数のウェハが研磨される場合において、ドレッサーによる研磨パッド31の表面のコンディショニングが行われる間(時間t4から時間0’の間)、昇温機構37も動作させることで、研磨パッド31の温度を温度Tに維持してもよい。これにより、第2ウェハの研磨を研磨パッド31の温度変移なく行うことができる。しかし、研磨パッド31が高温(温度T)を維持することで、研磨パッド31の研磨特性が劣化することが懸念される。このため、図7に示すように、第1ウェハの研磨と第2ウェハの研磨の間に、一旦温度を温度T0に下げることが望ましい。
【0062】
[第1のCMP方法による効果]
上記第1のCMP方法によれば、研磨パッド31に対して昇温機構37による昇温制御が行われる。これにより、被処理膜の研磨初期において、研磨パッド31の温度を早急に、初期温度T0から研磨レートの高い温度Tまで上昇させることができる。したがって、CMPにおける生産性の向上を図ることができる。
【0063】
より具体的には、研磨パッド31の温度を初期温度T0から研磨レートの高い温度Tまで上昇させる時間t1を被処理膜の研磨工程(CMPの全工程)が終了するまでの時間t4の25%以下の時間にする。これにより、図5に示す比較例2に対して、研磨時間を10%程度短縮することができる。
【0064】
また、昇温機構37による昇温制御とともに冷却ノズル33による冷却制御も行われる。これにより、研磨パッド31のより精密な温度制御が可能となる。すなわち、生産性のみならず、その他の研磨特性の向上も図ることができる。
【0065】
[第2のCMP方法]
以下に図8を用いて、本実施形態に係る第2のCMP方法について説明する。なお、第2のCMP方法において、上記第1のCMP方法と同様の点については説明を省略し、異なる点について説明する。
【0066】
図8は、本実施形態に係る第2のCMP方法における研磨パッド31の温度変移を示すグラフである。
【0067】
なお、図8において、被処理膜は特に限定されていないが、種々の材料に対して同様に適用され得る。また、図8に示す時間0,t1,t4は、図5および図7に示す時刻0,t1,t4と同様の時間とは限らない。
【0068】
本実施形態における第2のCMP方法は、冷却ノズル33による冷却制御および昇温機構37による昇温制御を行う。この場合、昇温機構37による昇温制御(研磨パッド31と昇温機構37との摩擦)、および冷却ノズル33による冷却制御によって、研磨パッド31が温度T0から温度T(例えば、40℃)に上昇し、この温度Tで一定となる。
【0069】
ここで、第2のCMP方法においては、研磨パッド31の温度上昇の初期から研磨パッド31が温度Tで一定になるまでの間(時間0から時間t1までの間)、研磨パッド31に昇温機構37のみを当接させている。すなわち、研磨パッド31に研磨ヘッド32(被処理膜)は当接していない。このため、研磨パッド31と昇温機構37との摩擦熱のみによって、研磨パッド31の温度を上昇させている。そして、研磨パッド31が温度Tまで上昇した時間t1から研磨パッド31に被処理膜を当接させて研磨を開始している。すなわち、被処理膜の研磨は、初めから研磨パッド31が温度Tで一定の状態で行われる。また、この際、スラリー34の供給は、研磨パッド31に被処理膜を当接させると同時に、すなわち、時間t1から開始される。
【0070】
[第2のCMP方法による効果]
上記第2のCMP方法によれば、被処理膜の研磨前に昇温機構37による昇温制御が行われ、研磨パッド31の温度を初期温度T0から研磨レートの高い温度Tまで上昇させる。その後、研磨パッド31が温度Tになった後に、研磨パッド31に被処理膜を当接させて被処理膜の研磨を開始する。すなわち、研磨パッド31の温度を研磨レートの高い温度Tに維持したまま、被処理膜を研磨することができる。このため、CMPにおける生産性の向上を図ることができる。
【0071】
より具体的には、Cu膜16のCMPにおいて時間t1(温度上昇の時間)が30秒である場合に上記第2のCMP方法を適用すると、図5に示す比較例2に対して、研磨時間を10%程度短縮することができる。
【0072】
また、上記第2のCMP方法によれば、研磨パッド31の温度を温度Tで一定にした状態で被処理膜の研磨を行う。すなわち、被処理膜の研磨中の研磨パッド31の温度変化がなくなる。これにより、被処理膜の研磨中の温度変化による研磨特性の変化を抑制することができる。
【0073】
さらに、上記第2のCMP方法によれば、スラリー34は、研磨パッド31が温度Tに上昇してから使用される。すなわち、スラリー34の供給は、研磨レートの高い温度Tで行われる。このため、スラリー34の供給時間のうち、研磨レートの高い状態で処理する時間が増加する。実質的には、スラリー34の供給時間の全てが研磨レートの高い状態である。その結果、スラリー34の使用量を削減することができる。
【0074】
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0075】
10…半導体基板、13…W膜、16…Cu膜、21…シリコン酸化膜、31…研磨パッド、32…研磨ヘッド、33…冷却ノズル、34…スラリー、36…プレート、37…昇温機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、被処理膜を形成する工程と、
前記被処理膜の表面をCMP法により研磨する工程と、
を具備し、
前記CMP法は、
回転する研磨パッドを第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度に上昇させる工程と、
前記被処理膜の表面を前記第2温度に上昇した前記研磨パッドに当接させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2温度における前記被処理膜の研磨レートは、前記第1温度における研磨レートよりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記被処理膜の表面を前記研磨パッドに当接させる工程において、前記研磨パッドは前記第2温度で一定に維持されることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記CMP法は、前記研磨パッドを前記第2温度に上昇させた後に、前記研磨パッドの表面にスラリーを供給する工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板上に、被処理膜を形成する工程と、
前記被処理膜の表面をCMP法により研磨する工程と、
を具備し、
前記CMP法は、
回転する研磨パッドを第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度に上昇させる工程と、
前記被処理膜の表面を前記研磨パッドに当接させる工程と、
を有し、
前記研磨パッドを前記第1温度から前記第2温度に上昇させる工程は、前記CMP法の全工程の時間の25%以下の時間で行われることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2温度における前記被処理膜の研磨レートは、前記第1温度における研磨レートよりも高いことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記研磨パッドを前記第1温度から前記第2温度に上昇させる工程の開始と前記被処理膜の表面を前記研磨パッドに当接させる工程の開始とは、同時であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記CMP法は、前記研磨パッドを前記第1温度から前記第2温度に上昇させる工程および前記被処理膜の表面を前記研磨パッドに当接させる工程と同時に、前記研磨パッドの表面にスラリーを供給する工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
回転する研磨パッドと、
前記研磨パッドにスラリーを供給するスラリー供給ノズルと、
表面に被処理膜を保持し、前記研磨パッドに当接することで前記被処理膜を研磨する研磨ヘッドと、
表面に前記スラリーによる研磨レートが前記被処理膜よりも小さい材料で構成されるプレートを有し、回転しながら前記研磨パッドに当接することで前記研磨パッドの温度を上昇させる昇温機構と、
を具備することを特徴とする研磨装置。
【請求項10】
前記研磨パッドの温度を下降させる冷却ノズルをさらに具備することを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記プレートは、表面が平滑であり、砥粒が凝着していないことを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記昇温機構は、回転速度および前記研磨パッドへの圧力を調整することにより前記研磨パッドの温度上昇を制御することを特徴とする請求項9に記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42066(P2013−42066A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179470(P2011−179470)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】