説明

半導体装置の金属電極形成方法

【課題】 切削量の要求精度より大きい厚さばらつきを有する半導体基板に対し、切削量の要求精度を満足する切削加工により金属膜をパターニングして金属電極を形成する半導体装置の金属電極形成方法を実現する。
【解決手段】 平面だしされた基準面26aを有する平坦化ステージ26を用意し、基準面26aが表面吸着ステージ25の吸着面25aと平行になるように配置する。基準面26aと裏面11bとからなる間隙に、充填材を充填、硬化させて、下面が平坦な平坦部16を形成する。半導体基板11から表面吸着ステージ25及び平坦化ステージ26を取り外し、平坦部16において半導体基板11を裏面吸着ステージ27に吸着固定する。裏面吸着ステージ27と平行に設定された切削面に沿ってバイト31により金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切削加工により金属膜をパターニングして金属電極を形成する半導体装置の金属電極形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造方法において、半導体基板に形成された回路面にはんだ接合用などの金属電極を安価に形成する要求がある。
この要求に対し、例えば、パターニングにホトリソグラフィー工程を行わずに金属電極を形成する技術として、特許文献1に、半導体基板の一面上に下地電極を形成し、下地電極の上に保護膜を形成し、保護膜に開口部を形成するとともに、開口部から臨む下地電極の表面上に、接続用の金属電極を形成してなる半導体装置において、保護膜の上面に対して開口部から臨む下地電極の表面が引っ込むように段差が形成されていることを利用して、下地電極及び保護膜の上に形成した金属膜を切削加工によりパターニングすることによって金属電極を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−186304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の技術のように、切削により金属電極のパターンを形成する場合、半導体基板の全面において、金属膜の表面を基準した切削量のばらつきが、例えば2μm以内、という高い精度で切削加工を行う必要がある。
ここで、半導体基板を吸着ステージ上に吸着固定すると、半導体基板の裏面が平坦になるように変形されるため、主面は、裏面の元の凹凸形状を反映して、凹凸が大きい形状となる。
切削加工は吸着ステージと平行な面に沿って行われるため、半導体基板が切削量の要求精度より大きい厚さのばらつき、例えば3μm以上のばらつきを有する場合には、面内の一部に切削量の要求精度を満足しない領域が存在し、製品歩留まりが低下するという問題があった。
【0004】
そこで、この発明では、切削量の要求精度より大きい厚さばらつきを有する半導体基板に対し、切削量の要求精度を満足する切削加工により金属膜をパターニングして金属電極を形成する半導体装置の金属電極形成方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、前記下地電極を覆って保護膜を形成し、前記保護膜の表面から前記下地電極に向かって、前記下地電極を表出させる開口部を形成する工程と、前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆って金属膜を形成する工程と、半導体基板を平坦面に吸着固定する第1の吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を前記金属膜側から吸着固定する工程と、前記第1の吸着ステージの平坦面と平行に設定された第2の平坦面を備えたステージを用意し、前記半導体基板の主面に対向する裏面と前記第2の平坦面との間隙に充填材を充填し硬化させることにより前記裏面を平坦にする平坦部を形成する工程と、前記平坦部が形成された半導体基板を前記平坦部側から第2の吸着ステージに吸着固定して、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すように切削加工によりパターニングして金属電極を形成する工程と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成し、下地電極を覆って保護膜を形成し、保護膜の表面から下地電極に向かって、下地電極を表出させる開口部を形成し、保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆って金属膜を形成し、切削加工により金属膜のうち開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして金属電極を形成することができる。
また、第1の吸着ステージにより半導体基板を金属膜側から吸着固定して、金属膜の表面を平面だしし、第1の吸着ステージの平坦面と平行に設定された第2の平坦面を備えたステージを用意し、半導体基板の裏面と第2の平坦面との間隙に充填材を充填し硬化させることにより裏面を平坦にする平坦部を形成するため、金属膜の表面の平坦度が向上されているとともに、半導体基板を切削加工の際に吸着固定しても、金属膜の表面が裏面の元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、金属膜の表面の凹凸差を小さくし、切削加工における切削面と金属膜の表面との距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法において、前記充填材は、加熱により流動性を有する材料からなる、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明のように、熱可塑性樹脂のように加熱により流動性を有する材料からなる充填材を用いると、加熱により流動性がある状態で間隙を充填し、冷却するだけで硬化させることができるので、平坦部を容易に形成することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の金属電極形成方法において、前記平坦部を形成する工程において、前記充填材を前記第2の平坦面上に塗布し、前記半導体基板の裏面に押しあてることにより、前記充填材を前記裏面と前記第2の平坦面との間隙に充填する、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、平坦部を形成する工程において、充填材を前記第2の平坦面上に塗布し、半導体基板の裏面に押しあてることにより、充填材を裏面と前記第2の平坦面との間隙に充填するため、充填材として粘度が高く間隙に侵入しにくい材料を用いた場合にも、確実に間隙に充填することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、前記下地電極を覆って保護膜を形成し、前記保護膜の表面から前記下地電極に向かって、前記下地電極を表出させる開口部を形成する工程と、前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆って金属膜を形成する工程と、半導体基板を平坦面に吸着固定する第1の吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を前記金属膜側から吸着固定する工程と、前記半導体基板を前記裏面側から吸着固定する第3の吸着ステージと、前記第3の吸着ステージに対して前記半導体基板が吸着固定される面の反対側の面から変位を与える変位手段とを用意し、前記変位手段により前記第3の吸着ステージに変位を与えて、前記第1の吸着ステージに吸着固定された半導体基板の裏面に沿って当接するように変形させる工程と、前記変位を維持した状態で、前記半導体基板を前記裏面側から第3の吸着ステージに吸着固定して、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すように切削加工によりパターニングして金属電極を形成する工程と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成し、下地電極を覆って保護膜を形成し、保護膜の表面から下地電極に向かって、下地電極を表出させる開口部を形成し、保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆って金属膜を形成し、切削加工により金属膜のうち開口部の内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして金属電極を形成することができる。
また、半導体基板を前記裏面側から吸着固定する第2の吸着ステージと、第2の吸着ステージに対して半導体基板が吸着固定される面の反対側の面から変位を与える変位手段とを用意し、変位手段により第2の吸着ステージに変位を与えて、第1の吸着ステージに吸着固定された半導体基板の裏面に沿って当接するように変形させ、この変位を維持した状態で、半導体基板を裏面側から第2の吸着ステージに吸着固定して切削加工によりパターニングして金属電極を形成するため、金属膜の表面の平坦度が向上されているとともに、半導体基板を切削加工の際に吸着固定しても、金属膜の表面が裏面の元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、金属膜の表面の凹凸差を小さくし、切削加工における切削面と金属膜の表面との距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の半導体装置の金属電極形成方法において、前記変位手段は、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを備えている、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、変位手段は、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを備えているため、半導体基板の裏面の形状に応じて異なる変位を与えることができるので、第3の吸着ステージを精度良く半導体基板の裏面に沿って当接するように変形させることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の半導体装置の金属電極形成方法において、前記アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータである、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータであるため、変位制御の精度を高くすることができる。また、圧電アクチュエータは、バックラッシュが少なく、作動時の発熱量も小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
この発明に係る半導体装置の金属電極形成方法の第1実施形態について、図を参照して説明する。図1は、第1実施形態の金属電極形成方法により金属電極が形成された半導体装置の断面説明図である。図2ないし図4は、金属電極形成方法の工程図である。図5は、平坦部を形成するために充填材を充填する方法の変更例の説明図である。
なお、各図では、説明のために一部を拡大し、一部を省略して示している。
【0018】
パワーカードなどに用いられる半導体装置10は、シリコン等により形成された半導体基板11を本体として形成されている。半導体基板11の主面11aには、素子の電極である下地電極12が、純AlやAl−Si、Al−Si−CuなどのAl合金などにより形成されている。
【0019】
主面11aと下地電極12の一部とを覆って絶縁材料からなる保護膜13が形成されている。保護膜13は、例えば、厚さ1〜20μmのポリイミド系樹脂により形成されている。
保護膜13には、表面から下地電極12に向かって開口して形成され、下地電極12を表出させる開口部13aが形成されている。
ここで、保護膜13の上面に対して開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むように段差が形成されている。
【0020】
開口部13aにより表出した下地電極12の表面12aを覆って、配線が接続される金属電極15が形成されている。金属電極15は、下地電極12側から積層形成したTi/Ni/Au膜やNi/Au膜などにより形成され、下地電極12と電気的に接続されている。
【0021】
次に、金属電極15の形成方法について説明する。
まず、図2(A)に示すように、図示しない半導体素子が形成された半導体基板11を用意し、ホトリソグラフィー法によりパターニングされ、半導体素子と電気的に接続された下地電極12を主面11aに形成する。
【0022】
次に、スピンコート法などによりポリイミド系樹脂からなる厚さが例えば10μmの保護膜13を形成し、下地電極12を表出させる開口部13aをホトリソグラフィー法により表面から下地電極12に向かって開口して形成する。
ここで、保護膜13の上面に対して開口部13aから臨む下地電極12の表面12aが引っ込むような段差を形成する。
【0023】
続いて、図2(B)に示すように、下地電極12及び保護膜13を覆って、めっき法、スパッタ法などにより金属膜14を形成する。金属膜14は、Ti/Ni/Au膜、Ni/Au膜のような積層膜でもよいし、単層の金属膜でもよい。
【0024】
続いて、図2(C)に示すように、平面だしされた吸着面25aを有する表面吸着ステージ25に半導体基板11の表面部11cを吸着固定する。このとき、吸着面25aにおいて発生する吸着力により、表面部11cの平坦度が向上される。
ここで、表面部11cとは、金属膜14のうち、保護膜13を覆っている部分を示す。
【0025】
続いて、図3(D)に示すように、平面だしされた基準面26aを有する平坦化ステージ26を用意し、基準面26aが表面吸着ステージ25の吸着面25aと平行になるように配置する。そして、基準面26aと裏面11bとからなる間隙に、裏面11bの端部から、充填材を充填し、硬化させて、下面が平坦な平坦部16を形成する。
ここで、充填材として、加熱により流動性を有する材料、例えば、ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂が好適に用いられる。このような充填材を用いると、加熱により流動性がある状態で間隙を充填し、冷却するだけで硬化させることができるので、平坦部16を容易に形成することができる。
また、基準面26aと裏面11bとの間隔は、樹脂が間隙に流れこんで裏面11bの凹凸を埋めて平坦にすることができる間隔を設けてあればよく、例えば1mm以内になるように設定する。
【0026】
続いて、図3(E)に示すように、半導体基板11から表面吸着ステージ25及び平坦化ステージ26を取り外し、裏面11bに形成された平坦部16において半導体基板11を裏面吸着ステージ27に吸着固定する。
【0027】
続いて、図4(F)に示すように、裏面吸着ステージ27と平行に設定された切削面Pに沿ってバイト31により金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する。
【0028】
本実施形態では、バイト31と半導体装置10との相対速度は20m/s、切削加工のピッチは70μmに設定した。また、バイト31の金属膜14に対する高さ精度は0.1μm以下とした。
【0029】
上述の切削条件で、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。
【0030】
そして、図4(G)に示すように、半導体基板11を裏面吸着ステージ27から取り外し、加熱、溶剤などにより平坦部16を除去することにより、半導体基板11に金属電極15を形成することができる。
【0031】
上述の工程によれば、半導体基板11の主面11a全面にわたって切削加工を行うことにより、保護膜13の上面上に位置する金属膜14を除去し、開口部13aの内部にのみ金属膜14を残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。
【0032】
また、裏面11bには、表面吸着ステージ25により表面部11cが平面だしされた状態で、裏面11bの凹凸を平坦化する平坦部16が形成されているため、表面部11cの平坦度が向上されているとともに、半導体基板11を裏面吸着ステージ27に吸着固定しても、表面部11cが裏面11bの元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0033】
(変更例)
平坦部16を形成する充填材として、樹脂以外に、ワックス、はんだ、インジウム合金などの低融点材料を用いることもできる。
平坦化ステージ26を透明な材料、例えば、ガラス、アクリルなどで形成し、充填材として光硬化性樹脂を用いることもできる。この構成を用いる場合、光硬化性樹脂を間隙に充填した後に、平坦化ステージ26の下面から紫外線を照射して硬化させることにより平坦部16を形成することができる。
【0034】
充填材の充填は、図3(D)を参照して説明した方法に限定されるものではない。例えば、まず、図5(A)に示すように、充填材を平坦化ステージ26の基準面26a上に塗布し、図5(B)に示すように、裏面11bに押しあてることにより充填することもできる。これによれば、例えば、粘度が高く間隙に侵入しにくい材料を用いた場合にも、確実に充填材を間隙に充填することができる。
【0035】
図4(F)に示す切削工程では、半導体基板11から平坦化ステージ26を取り外さずに、平坦化ステージ26ごと吸着固定して切削加工してもよい。また、半導体装置10の動作などに悪影響を及ぼさないならば、平坦部16は除去しなくてもよい。
【0036】
[第1実施形態の効果]
(1)半導体基板11の主面11aに、半導体素子と電気的に接続された下地電極12を形成し、下地電極12を覆って保護膜13を形成し、保護膜13の表面から下地電極12に向かって、下地電極12を表出させる開口部13aを形成し、保護膜13及び開口部13aから臨む下地電極12の表面を覆って金属膜14を形成し、切削面Pにおいて切削を行う切削加工により、金属膜14のうち開口部13aの内部に形成された部分のみを残すようにパターニングして金属電極15を形成することができる。
また、裏面11bには、表面吸着ステージ25により表面部11cが平面だしされた状態で、裏面11bの凹凸を平坦化する平坦部16が形成されているため、表面部11cの平坦度が向上されているとともに、半導体基板11を裏面吸着ステージ27に吸着固定しても、表面部11cが裏面11bの元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0037】
(2)充填材として、加熱により流動性を有する材料、例えば、ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂を用いるため、加熱により流動性がある状態で間隙を充填し、冷却するだけで硬化させることができるので、平坦部16を容易に形成することができる。
【0038】
(3)平坦部16を形成する工程において、充填材を平坦化ステージ26の基準面26a上に塗布し、裏面11bに押しあてることにより充填する構成を採用した場合には、粘度が高く間隙に侵入しにくい材料を用いた場合にも、確実に充填材を基準面26aと裏面11bとからなる間隙に充填することができる。
【0039】
[第2実施形態]
この発明に係る半導体装置の金属電極形成方法の第2実施形態について、図を参照して説明する。図6は、第2実施形態の金属電極形成方法で用いる変位制御吸着装置の説明図である。図6(A)は、断面図であり、図6(B)は、半導体基板側から見た平面説明図である。図7及び図8は、第2実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0040】
第2実施形態の金属電極形成方法で用いる変位制御吸着装置20の構成について、図6(A)及び(B)を参照して説明する。
変位制御吸着装置20は、半導体基板11を載置するステージ21と、半導体基板11を吸着固定するための吸着装置22と、半導体基板11に裏面11bから変位を与えるための変位装置23と、これらの装置を制御するための制御コンピュータ24とから構成されている。
【0041】
ステージ21は、吸着ステージ21bと下部ステージ21cとの間に中空部21dを有する中空形状に形成されており、吸着ステージ21bには、半導体基板11を吸着固定する吸着面21aと、真空ポンプなどの吸着装置22を用いて中空部21dを減圧することにより生じる吸着力を半導体基板11に作用させる吸着孔21eとが形成されている。
【0042】
吸着ステージ21bは、変位装置23による変位を半導体基板11に加えるために、変形しやすく形成されている。ここでは、吸着ステージ21bは、厚さ1mmの板状のステンレス鋼により形成されている。
下部ステージ21cには、吸着装置22を接続するための減圧孔21fと変位装置23とが設けられている。
【0043】
本実施形態では、変位装置23として、複数個の圧電アクチュエータ23aを用いた。圧電アクチュエータ23aは、所定の間隔、例えば1cm間隔で格子状に配置されており、吸着ステージ21bの裏面21gに当接し、上向きの変位を発生させることができるように設けられている。なお、図6(A)及び(B)には、便宜上、縦4個、横4個ずつの計16個の圧電アクチュエータ23aが配置されている場合を例示した。各圧電アクチュエータ23aは、制御コンピュータ24により独立して変位を制御することができ、それぞれ異なる変位を発生させることができる。ここで、圧電アクチュエータ23aは、変位制御の精度が高く、バックラッシュが少ないとともに、作動時の発熱量も小さい。
【0044】
第2実施形態の金属電極形成方法では、第1実施形態の図2(C)に示した工程までは同じなので、続く工程から説明する。図2(C)に示した工程に続いて、図7(A)に示すように、変位制御吸着装置20を用意し、変位装置23の圧電アクチュエータ23aに上向きの変位を与えて、半導体基板11の裏面11bに沿うように吸着ステージ21bを当接させる。
このとき、各圧電アクチュエータ23aの誘電率(容量)を制御コンピュータ24によりモニターし、吸着ステージ21bが裏面11bに沿うように当接していることを検知する。
【0045】
続く工程では、図7(B)に示すように、変位装置23の圧電アクチュエータ23aの変位を維持した状態で、半導体基板11を吸着ステージ21bに吸着固定し、表面吸着ステージ25を取り外す。
このとき、制御コンピュータ24により検出された各圧電アクチュエータ23aの誘電率(容量)に基づいて、各圧電アクチュエータ23aにその変位を維持するための電圧が印加されて変位が維持されている。
【0046】
続いて、図8(C)に示すように、吸着ステージ21bと平行に設定された切削面Pに沿ってバイト31により金属膜14の表面から切削加工を行い、金属膜14をパターニングして金属電極15を形成する。
【0047】
そして、図8(D)に示すように、圧電アクチュエータ23aの変位を解除して、半導体基板11をステージ21から外すことにより、半導体基板11に金属電極15を形成することができる。
【0048】
上述の工程によれば、表面吸着ステージ25により表面部11cが平面だしされた状態を維持するように、圧電アクチュエータ23aにより半導体基板11の裏面11bから変位が与えられ、半導体基板11を吸着ステージ21bに吸着固定したときにその変位を維持することができる。
これにより、表面部11cの平坦度が向上されるとともに、半導体基板11を吸着ステージ21bに吸着固定しても、表面部11cが裏面11bの元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0049】
(変更例)
上述した実施形態では、変位装置として圧電アクチュエータ23aを用いたが、これに限定されるものではなく、変位を制御して加えることができればよく、例えば、電磁ソレノイド、油圧アクチュエータなどを用いることもできる。この構成を用いると、圧電アクチュエータ23aより大きな変位を発生させることができる。
【0050】
吸着ステージ21bに貫通孔を形成し、圧電アクチュエータ23aを直接接触させて変位を加えてもよい。この構成を用いると、変位を与える際に吸着ステージ21bを介さないので、圧電アクチュエータ23aが変位を発生するために必要な力を小さくすることができるので、小型の圧電アクチュエータを使用することができる。
【0051】
[第2実施形態の効果]
(1)表面吸着ステージ25により表面部11cが平面だしされた状態を維持するように、圧電アクチュエータ23aにより半導体基板11の裏面11bから変位が与えられ、半導体基板11を吸着ステージ21bに吸着固定したときにその変位を維持することができる。
これにより、表面部11cの平坦度が向上されるとともに、半導体基板11を吸着ステージ21bに吸着固定しても、表面部11cが裏面11bの元の凹凸形状を反映して凹凸が大きい表面形状となることがない。
つまり、表面部11cの凹凸差を小さくし、切削面Pと表面部11cとの距離を所定の範囲(加工の要求精度)内にすることができる。これにより、切削加工の加工精度を向上させることができるため、金属電極形成における製品歩留まりを向上させることができる。
【0052】
(2)変位装置23は、変位をそれぞれ制御可能な複数個の圧電アクチュエータ23aを備えているため、半導体基板11の裏面11bの形状に応じて吸着ステージ21bに異なる変位を与えることができるので、吸着ステージ21bを精度良く裏面11bの形状に沿って当接させることができ、表面吸着ステージ25により表面部11cが平面だしされた状態を精度良く維持することができる。また、圧電アクチュエータ23aは、変位制御の精度を高く、バックラッシュが少ないとともに、作動時の発熱量も小さい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施形態の金属電極形成方法により金属電極が形成された半導体装置の断面説明図である。
【図2】第1実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
【図3】第1実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
【図4】第1実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
【図5】平坦部を形成するために充填材を充填する方法の変更例の説明図である。
【図6】第2実施形態の金属電極形成方法で用いる変位制御吸着装置の説明図である。図6(A)は、断面図であり、図6(B)は、半導体基板側から見た平面説明図である。
【図7】第2実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
【図8】第2実施形態の金属電極形成方法の工程図である。
【符号の説明】
【0054】
10 半導体装置
11 半導体基板
11a 主面
11b 裏面
11c 表面部
12 下地電極
13 保護膜
13a 開口部
14 金属膜
15 金属電極
20 変位制御吸着装置
21a 吸着ステージ(第3の吸着ステージ)
23 変位装置(変位手段)
23a 圧電アクチュエータ
25 表面吸着ステージ(第1の吸着ステージ)
25a 吸着面(平坦面)
26 平坦化ステージ(第2の平坦面を備えたステージ)
26a 基準面(第2の平坦面)
27 裏面吸着ステージ(第2の吸着ステージ)
P 切削面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
前記下地電極を覆って保護膜を形成し、前記保護膜の表面から前記下地電極に向かって、前記下地電極を表出させる開口部を形成する工程と、
前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆って金属膜を形成する工程と、
半導体基板を平坦面に吸着固定する第1の吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を前記金属膜側から吸着固定する工程と、
前記第1の吸着ステージの平坦面と平行に設定された第2の平坦面を備えたステージを用意し、前記半導体基板の主面に対向する裏面と前記第2の平坦面との間隙に充填材を充填し硬化させることにより前記裏面を平坦にする平坦部を形成する工程と、
前記平坦部が形成された半導体基板を前記平坦部側から第2の吸着ステージに吸着固定して、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すように切削加工によりパターニングして金属電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項2】
前記充填材は、加熱により流動性を有する材料からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項3】
前記平坦部を形成する工程において、前記充填材を前記第2の平坦面上に塗布し、前記半導体基板の裏面に押しあてることにより、前記充填材を前記裏面と前記第2の平坦面との間隙に充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項4】
半導体基板の主面に、半導体素子と電気的に接続された下地電極を形成する工程と、
前記下地電極を覆って保護膜を形成し、前記保護膜の表面から前記下地電極に向かって、前記下地電極を表出させる開口部を形成する工程と、
前記保護膜及び前記開口部から臨む前記下地電極の表面を覆って金属膜を形成する工程と、
半導体基板を平坦面に吸着固定する第1の吸着ステージに、前記金属膜が形成された半導体基板を前記金属膜側から吸着固定する工程と、
前記半導体基板を前記裏面側から吸着固定する第3の吸着ステージと、前記第3の吸着ステージに対して前記半導体基板が吸着固定される面の反対側の面から変位を与える変位手段とを用意し、前記変位手段により前記第3の吸着ステージに変位を与えて、前記第1の吸着ステージに吸着固定された半導体基板の裏面に沿って当接するように変形させる工程と、
前記変位を維持した状態で、前記半導体基板を前記裏面側から第3の吸着ステージに吸着固定して、前記金属膜のうち前記開口部の内部に形成された部分のみを残すように切削加工によりパターニングして金属電極を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項5】
前記変位手段は、変位をそれぞれ制御可能な複数個のアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項6】
前記アクチュエータは、圧電素子を用いた圧電アクチュエータであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の金属電極形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−54955(P2009−54955A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222762(P2007−222762)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】