半導体装置及びその製造方法
【課題】放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持基材11と、接合材16により支持基材11に接合された半導体素子15と、が含まれている。接合材16には、支持基材11及び半導体素子15と接触する多孔質金属材16aと、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部に充填されたはんだと、が含まれている。前記半導体装置等によれば、多孔質金属材16aにより良好な放熱性及び応力緩和性を得ることができ、はんだ16cにより良好な接合強度を得ることができる。
【解決手段】支持基材11と、接合材16により支持基材11に接合された半導体素子15と、が含まれている。接合材16には、支持基材11及び半導体素子15と接触する多孔質金属材16aと、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部に充填されたはんだと、が含まれている。前記半導体装置等によれば、多孔質金属材16aにより良好な放熱性及び応力緩和性を得ることができ、はんだ16cにより良好な接合強度を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上方にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。GaN系HEMTでは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面に発生する高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が利用されている。
【0003】
GaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。つまり、GaNは高い破壊電界強度を有する。また、GaNは大きい飽和電子速度も有している。このため、GaNは、高電圧動作、且つ高出力が可能な化合物半導体装置の材料として極めて有望である。そして、GaN系HEMTは、高効率スイッチング素子、電気自動車等に用いられる高耐圧電力デバイスとして期待されている。
【0004】
近年、このようなGaN系HEMTだけでなく、種々の半導体素子に関し、半導体素子を含んだ半導体装置の小型化及び薄型化が進められている。このような半導体装置では、リードフレーム上に、はんだ材又はナノAgペースト等のダイボンド材により半導体素子が接合されている。
【0005】
しかしながら、はんだ材により半導体素子がリードフレームに接合された構造では、十分な放熱性を得ることが困難である。また、はんだ材による接合が強固であるため、半導体素子の動作時に接合部及びその近傍に生じる熱応力を十分に緩和することができない。このため、接合信頼性が良好であるとはいいがたい。また、熱応力に伴って半導体素子に多大な機械的ストレスが作用し、半導体素子が誤動作する可能性もある。例えば、トランジスタの閾値電圧が変動することがある。更に、半導体素子をリードフレームに搭載するためにはんだ材を溶融させると、この際に半導体素子の位置ずれが生じることもある。
【0006】
一方、ナノAgペーストにより半導体素子がリードフレームに接合された構造では、はんだ材により接合された構造よりも応力緩和及び半導体素子の位置ずれの影響が小さい。また、高い放熱性を得ることもできる。しかし、十分な接合強度を確保することが困難である。
【0007】
他にも種々の提案がされているが、従来、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−230351号公報
【特許文献2】特開2007−201314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
半導体装置の一態様には、支持基材と、接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、が含まれている。前記接合材には、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、が含まれている。
【0011】
半導体装置の製造方法の一態様では、支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置し、前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する。加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる。冷却により、前記はんだを凝固させる。
【発明の効果】
【0012】
上記の半導体装置等によれば、多孔質金属材により良好な放熱性及び応力緩和性を得ることができ、はんだにより良好な接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図2A】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2B】図2Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】半導体素子の一態様を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図5A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5B】図5Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図7A】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図9A】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9B】図9Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】第5の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図11A】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11B】図11Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12】第6の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図13A】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13B】図13Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図14】第7の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図15A】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図15B】図15Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図16】GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージを示す図である。
【図17】電源装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0016】
第1の実施形態では、図1(a)に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材16を介して接合されている。複合材16は接合材の一例である。半導体素子15には端子が設けられており、この端子はボンディングワイヤ17を介して、リードフレーム11のリードに接続されている。そして、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17がモールド樹脂18により封止されている。
【0017】
第1の実施形態では、複合材16に、図1(b)に示すような膜状の多孔質金属材16aが含まれている。多孔質金属材16aの一方の主面は半導体素子15に接触し、他方の主面はリードフレーム11に接触している。そして、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部、例えば全体にはんだ16cが充填されている。なお、図1(b)では、空隙16bが規則的に配列しているが、空隙16bが規則的に配列している必要はない。
【0018】
第1の実施形態では、半導体素子15で発生した熱は、複合材16に含まれる多孔質金属材16aを介してリードフレーム11に十分に伝達され得る。また、発熱に伴って応力が発生したとしても、多孔質金属材16aにより当該応力が緩和される。更に、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部にはんだ16cが充填されているため、リードフレーム11と半導体素子15との間の十分な接合強度を確保することも可能である。
【0019】
そして、応力を十分に緩和することが可能であるため、半導体素子にGaN系HEMT等のトランジスタが含まれていたとしても、その閾値電圧の変動を抑制することができる。また、例えば、高温放置、温度サイクル試験を行ったとしても、半導体素子15へのダメージを著しく低減することができる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図2A〜図2Bは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0021】
先ず、図2A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域にナノAgペースト12を塗布する。ナノAgペースト12は、例えば粒径が1μm以下のAg粒子を含むペーストである。粒径が100nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよく、粒径が10nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよい。ナノAgペースト12の塗布方法は特に限定されず、ディスペンス法、印刷法又は転写法等により塗布することができる。
【0022】
次いで、図2A(b)に示すように、ナノAgペースト12上にはんだシート13を配置する。
【0023】
その後、図2A(c)に示すように、はんだシート13上にナノAgペースト14を塗布する。ナノAgペースト14も、例えば粒径が1μm以下のAg粒子を含むペーストである。粒径が100nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよく、粒径が10nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよい。ナノAgペースト14の塗布方法も特に限定されず、ディスペンス法、印刷法又は転写法等により塗布することができる。
【0024】
なお、はんだシート13としては、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じる温度よりも融点が高く、Ag粒子の融点よりも融点が低いものを用いれば、特に限定されるものではない。例えば、SnAgCu系のはんだシートをもちいることができる。
【0025】
続いて、図2A(d)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト14上にフェースアップで搭載する。半導体素子15の種類は特に限定されず、例えばGaN系HEMT等を用いることができる。
【0026】
次いで、少なくともナノAgペースト12、はんだシート13、及びナノAgペースト14を加熱して、はんだシート13を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。はんだシート13の融点が、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じる温度よりも高いため、この過程では、はんだシート13が溶融する前に、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材16aが形成される。そして、はんだシート13が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材16aの空隙16bに流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図2B(e)に示すように、多孔質金属材16aと、空隙16bの少なくとも一部に充填されたはんだとを含む複合材16が形成される。また、多孔質金属材16aの一方の主面は半導体素子15と接触し、他方の主面はリードフレーム11と接触する。なお、加熱方法は特に限定されず、加熱温度及び加熱時間も、はんだシート13が溶融する温度及び時間であれば特に限定されない。例えば、コンベア式リフロー炉にて、240℃で10分間の加熱を行えばよい。
【0027】
その後、図2B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。ボンディングワイヤ17としては、例えばAlワイヤを用いる。半導体素子15がGaN系HEMTである場合、例えば、半導体素子15のゲート端子をリードフレーム11のゲートリードに接続し、半導体素子15のソース端子をリードフレーム11のソースリードに接続し、半導体素子15のドレイン端子をリードフレーム11のドレインリードに接続する。
【0028】
続いて、図2B(g)に示すように、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。例えば、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17を含む組立体を樹脂封止(モールド)装置の金型に設置し、熱硬化性の封止用樹脂によって封止する。
【0029】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0030】
このような方法では、従来と比して高価な材料を用いる必要がないため、コストの上昇を抑えながら、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することが可能な半導体装置を得ることができる。
【0031】
なお、多孔質金属材16aの材料は特に限定されない。例えば、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0032】
また、はんだシート13の材料も、多孔質金属材16aの材料の焼結が生じる温度よりも融点が高いものであれば特に限定されない。例えば、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0033】
また、半導体素子15の裏面には、図3に示すように、金属膜15aが形成されていることが好ましい。金属膜15aにより、はんだシート13のはんだの濡れ性が向上し、より確実な接合が可能となり、また、多孔質金属材16aとの間の熱伝導性が向上するからである。金属膜15aは、スパッタリング法、蒸着法、めっき法等により形成することができ、例えば、Ti膜、Pt膜、及びAu膜をこの順で形成する。また、金属膜15aの材料も特に限定されず、例えば、Ni、Cu、Zn、Al、Ag、Au、W、Ti、Pt、及びCrからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0035】
第2の実施形態では、図4に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材26及びはんだ層23aを介して接合されている。複合材26及びはんだ層23aは接合材の一例である。つまり、半導体素子15の少なくとも一部が複合材26と接触し、半導体素子15の少なくとも他の一部がはんだ層23aと接触している。例えば、半導体素子15の外周部分が複合材26と接触し、その内側の部分がはんだ層23aと接触している。複合材26には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較してより高い接合強度を得ることができる。特に、半導体素子15の外周部分が複合材26と接触し、その内側の部分がはんだ層23aと接触している場合には、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力を効果的に緩和しながら、応力が作用しにくい中央部分において高い接合強度を得ることができる。
【0037】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図5A〜図5Bは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0038】
先ず、図5A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート23を配置する。はんだシート23の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0039】
次いで、図5A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート23の周囲にナノAgペースト22を塗布する。ナノAgペースト22としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0040】
その後、図5B(c)に示すように、半導体素子15をはんだシート23及びナノAgペースト22上にフェースアップで搭載する。
【0041】
続いて、少なくともナノAgペースト22及びはんだシート23を加熱して、はんだシート23を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート23が溶融する前に、ナノAgペースト22に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート23が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込み、残部は中央部に残る。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図5B(d)に示すように、複合材26が形成され、その内側にはんだ層23aが形成される。
【0042】
その後、図5B(e)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図5B(f)に示すように、半導体素子15、複合材26、はんだ層23a、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0043】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0045】
第3の実施形態では、図6に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材36を介して接合されている。複合材36は接合材の一例である。複合材36には、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。ただし、複合材16とは異なり、中央部から外周部にかけて、はんだの割合が減少し、多孔質金属材の割合が高くなっている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0046】
第3の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力を効果的に緩和しながら、応力が作用しにくい中央部分において高い接合強度を得ることができる。
【0047】
次に、第3の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図7A〜図7Bは、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0048】
先ず、図7A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の外周部にナノAgペースト32を塗布する。ナノAgペースト32としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0049】
次いで、図7A(b)に示すように、環状のナノAgペースト32上に、ナノAgペースト32の内側の開口部分も覆うように、はんだシート33を配置する。はんだシート33としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0050】
その後、図7A(c)に示すように、はんだシート33の外周部にナノAgペースト34を塗布する。ナノAgペースト34としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0051】
続いて、図7B(d)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト14上にフェースアップで搭載する。
【0052】
次いで、少なくともナノAgペースト32、はんだシート33、及びナノAgペースト34を加熱して、はんだシート33を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート33が溶融する前に、ナノAgペースト32及び34に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート33が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材の空隙に流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図7B(e)に示すように、はんだの割合が中央部から外周部にかけて減少する複合材36が形成される。
【0053】
その後、図7B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図7B(g)に示すように、半導体素子15、複合材36、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0054】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0056】
第4の実施形態では、図8に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材49が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材46を介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部が複合材26と接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材49と接触している。複合材46は接合材の一例である。複合材46には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
第4の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において、樹脂材49により応力をより効果的に緩和することができる。
【0058】
次に、第4の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図9A〜図9Bは、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0059】
先ず、図9A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にナノAgペースト42を塗布する。ナノAgペースト42としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0060】
次いで、図9A(b)に示すように、ナノAgペースト42上にはんだシート43を配置する。はんだシート43としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0061】
その後、図9A(c)に示すように、はんだシート43上にナノAgペースト44を塗布する。ナノAgペースト44としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0062】
続いて、図9B(d)に示すように、ナノAgペースト42、はんだシート43、及びナノAgペースト44の積層体の周囲に樹脂材49を設ける。樹脂材49としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0063】
次いで、図9B(e)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト44及び樹脂材49上にフェースアップで搭載する。
【0064】
その後、少なくともナノAgペースト42、はんだシート43、及びナノAgペースト44を加熱して、はんだシート43を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート43が溶融する前に、ナノAgペースト42及び44に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート43が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材の空隙に流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図9B(f)に示すように、多孔質金属材と、空隙の少なくとも一部に充填されたはんだとを含む複合材46が形成される。また、複合材46の側面は樹脂材49により覆われる。つまり、樹脂材49が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0065】
続いて、図9B(g)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図9B(h)に示すように、半導体素子15、複合材46、樹脂材49、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0066】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0067】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0068】
第5の実施形態では、図10に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材59が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材56及びはんだ層53aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部の少なくとも一部が複合材56と接触し、半導体素子15の中央部の少なくとも他の一部がはんだ層53aと接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材59と接触している。例えば、半導体素子15の中央部では、複合材56の内側にはんだ層53aが位置している。複合材56及びはんだ層53aは接合材の一例である。複合材56には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0069】
第5の実施形態によれば、第2の実施形態及び第4の実施形態の効果を得ることができる。即ち、第4の実施形態と比較して、応力が作用しにくい中央部分においてより高い接合強度を得ることができる。
【0070】
次に、第5の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図11A〜図11Bは、第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0071】
先ず、図11A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート53を配置する。はんだシート53の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0072】
次いで、図11A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート53の周囲にナノAgペースト52を塗布する。ナノAgペースト52としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0073】
その後、図11A(c)に示すように、ナノAgペースト52の周囲に樹脂材59を設ける。樹脂材59としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0074】
続いて、図11B(d)に示すように、半導体素子15をはんだシート53、ナノAgペースト52、及び樹脂材59上にフェースアップで搭載する。
【0075】
次いで、少なくともナノAgペースト52及びはんだシート53を加熱して、はんだシート53を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート53が溶融する前に、ナノAgペースト52に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート53が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込み、残部は中央部に残る。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図11B(e)に示すように、複合材56が形成され、その内側にはんだ層53aが形成される。また、複合材56の側面は樹脂材59により覆われる。つまり、樹脂材59が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0076】
その後、図11B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図11B(g)に示すように、半導体素子15、複合材56、はんだ層53a、樹脂材59、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0077】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0078】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図12は、第6の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0079】
第6の実施形態では、図12に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材66、及びはんだを含まない多孔質金属材62aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の少なくとも一部が複合材66と接触し、半導体素子15の少なくとも他の一部が多孔質金属材62aと接触している。例えば、半導体素子15の外周部分が多孔質金属材62aと接触し、その内側の部分が複合材66と接触している。複合材66及び多孔質金属材62aは接合材の一例である。複合材66には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0080】
第6の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力をより効果的に緩和することができる。
【0081】
次に、第6の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図13A〜図13Bは、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0082】
先ず、図13A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート63を配置する。はんだシート63の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート63としては、第2の実施形態のはんだシート23よりも小さいものを用いる。
【0083】
次いで、図13A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート63の周囲にナノAgペースト62を塗布する。ナノAgペースト62としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート63がはんだシート23より小さい分だけ、ナノAgペースト62は、第2の実施形態のナノAgペースト22よりも広く塗布する。
【0084】
その後、図13B(c)に示すように、半導体素子15をはんだシート63及びナノAgペースト62上にフェースアップで搭載する。
【0085】
続いて、少なくともナノAgペースト62及びはんだシート63を加熱して、はんだシート63を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート63が溶融する前に、ナノAgペースト62に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート63が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込む。このとき、第6の実施形態では、はんだシート63の量が少ないため、はんだの全体が多孔質金属材の空隙に流れ込む。その一方で、多孔質金属材の外周部では、はんだが流れ込んで来ない。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図13B(d)に示すように、外周部に多孔質金属材62aが形成され、その内側に複合材66が形成される。
【0086】
次いで、図13B(e)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図13B(f)に示すように、半導体素子15、複合材66、多孔質金属材62a、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0087】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0088】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図14は、第7の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0089】
第7の実施形態では、図6に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材79が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材76、及びはんだを含まない多孔質金属材72aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部の少なくとも一部が複合材76と接触し、半導体素子15の中央部の少なくとも他の一部が多孔質金属材72aと接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材79と接触している。例えば、半導体素子15の中央部では、多孔質金属材72aの内側に複合材76が位置している。複合材76及び多孔質金属材72aは接合材の一例である。複合材76には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0090】
第7の実施形態によれば、第4の実施形態及び第6の実施形態の効果を得ることができる。即ち、第4の実施形態と比較して、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力をより効果的に緩和することができる。
【0091】
次に、第7の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図15A〜図15Bは、第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0092】
先ず、図15A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート73を配置する。はんだシート73の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート73としては、第2の実施形態のはんだシート23よりも小さいものを用いる。
【0093】
次いで、図15A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート73の周囲にナノAgペースト72を塗布する。ナノAgペースト72としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート73がはんだシート23より小さい分だけ、ナノAgペースト72は、第2の実施形態のナノAgペースト22よりも広く塗布する。
【0094】
その後、図15A(c)に示すように、ナノAgペースト72の周囲に樹脂材79を設ける。樹脂材79としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0095】
続いて、図15B(d)に示すように、半導体素子15をはんだシート73、ナノAgペースト72、及び樹脂材79上にフェースアップで搭載する。
【0096】
次いで、少なくともナノAgペースト72及びはんだシート73を加熱して、はんだシート73を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート73が溶融する前に、ナノAgペースト72に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート73が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込む。このとき、第7の実施形態では、はんだシート73の量が少ないため、はんだの全体が多孔質金属材の空隙に流れ込む。その一方で、多孔質金属材の外周部では、はんだが流れ込んで来ない。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図15B(e)に示すように、外周部に多孔質金属材72aが形成され、その内側に複合材76が形成される。また、多孔質金属材72aの側面は樹脂材79により覆われる。つまり、樹脂材79が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0097】
次いで、図15B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図15B(g)に示すように、半導体素子15、複合材76、多孔質金属材72a、樹脂材79、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0098】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0099】
なお、いずれの実施形態においても、はんだペーストとして、Sn−Bi系はんだ粒子及びCu粒子を含有するものを用いることが好ましい。この場合、はんだペーストを溶融させる加熱の際に、Cu粒子の表面にCu及びSnを含有する層が形成される。この層の融点は、Sn−Bi系はんだの融点(約240℃)よりも高いため、より高温での接合強度を十分に確保することができる。
【0100】
半導体素子がGaN系HEMTである場合、これら実施形態に係る半導体装置は、例えばディスクリートパッケージの高出力増幅器として用いることができる。図16に、GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの例を示す。この例では、半導体素子としてHEMTチップ81が用いられている。そして、ゲートリード11g、ドレインリード11d、及びソースリード11sを含むリードフレームのランド上に接合材82を介してHEMTチップ81が接合されている。HEMTチップ81のゲート端子81gはゲートリード11gに、ドレイン端子81dはドレインリード11dに、ソース端子81sはソースリード11sに、それぞれ、ボンディングワイヤ17を介して接続されている。そして、これらがモールド樹脂18により封止されている。
【0101】
また、GaN系HEMTは、例えば電源装置に用いることもできる。図17(a)は、PFC(power factor correction)回路を示す図であり、図17(b)は、図17(a)に示すPFC回路を含むサーバ電源(電源装置)を示す図である。
【0102】
図17(a)に示すように、PFC回路90には、交流電源(AC)が接続されるダイオードブリッジ91に接続されたコンデンサ92が設けられている。コンデンサ92の一端子にはチョークコイル93の一端子が接続され、チョークコイル93の他端子には、スイッチ素子94の一端子及びダイオード96のアノードが接続されている。スイッチ素子94は上記の実施形態における半導体素子(HEMT)に相当し、当該一端子はHEMTのドレイン電極に相当する。また、スイッチ素子94の他端子はHEMTのソース電極に相当する。ダイオード96のカソードにはコンデンサ95の一端子が接続されている。コンデンサ92の他端子、スイッチ素子94の当該他端子、及びコンデンサ95の他端子が接地される。そして、コンデンサ95の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。また、スイッチ素子94(HEMT)のゲートリードにはゲートドライバが接続される。
【0103】
そして、図17(b)に示すように、PFC回路90は、サーバ電源100等に組み込まれて用いられる。
【0104】
このようなサーバ電源100と同様の、より高速動作が可能な電源装置を構築することも可能である。また、スイッチ素子94と同様のスイッチ素子は、スイッチ電源又は電子機器に用いることができる。更に、これらの半導体装置を、サーバの電源回路等のフルブリッジ電源回路用の部品として用いることも可能である。
【0105】
本願発明者らが、第2の実施形態に沿ってGaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの半導体装置を製造し、半導体素子の動作時のパッケージ全体の熱抵抗を測定したところ、0.5℃/W以下であった。また、−65℃と+150℃との間で3000サイクルの温度サイクル試験を実施したところ、熱抵抗の変化率は+5%以下であった。更に、各試験後に半導体素子とリードフレームとの接合部の断面SEM解析を行ったところ、接合部にクラックや破断箇所は認められず、初期の接合状態を良好に維持していることが確認された。なお、この半導体装置の製造に際しては、はんだペーストとして、SnBiはんだ粒子及びCu粒子を含むものを用いた。
【0106】
本発明者らは、比較のために、ナノAgペーストを用いずにSnBiはんだペーストのみを用いて半導体素子をリードフレームに接合したことを除き、第2の実施形態に沿って、GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの半導体装置を製造した。そして、上記と同様の試験を行った。この結果、熱抵抗は、0.7℃/Wと上記の結果の1.4倍以上であった。また、温度サイクル試験に伴う熱抵抗の変化率は、上記の結果の約10倍であった。更に、接合部の断面SEM解析を行ったところ、半導体素子の外周近傍の接合部にクラックが認められた。
【0107】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0108】
(付記1)
支持基材と、
接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、
を有し、
前記接合材は、
前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、
前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0109】
(付記2)
前記多孔質金属材の融点は、前記はんだの融点よりも高いことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0110】
(付記3)
前記多孔質金属材は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0111】
(付記4)
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0112】
(付記5)
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0113】
(付記6)
前記金属膜は、Ni、Cu、Zn、Al、Ag、Au、W、Ti、Pt、及びCrからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記5に記載の半導体装置。
【0114】
(付記7)
前記接合材の周囲に設けられ、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0115】
(付記8)
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0116】
(付記9)
平面視で、前記半導体素子の中央から外周に向かうほど、連続的又は段階的に前記はんだの割合が低くなっていることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0117】
(付記10)
前記はんだはCu粒子を含有することを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0118】
(付記11)
前記多孔質金属材の平面形状は環状であり、
前記接合材は、前記多孔質金属材の内側に位置するはんだ層を有することを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0119】
(付記12)
付記1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0120】
(付記13)
付記1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0121】
(付記14)
支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置する工程と、
前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する工程と、
加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる工程と、
冷却により、前記はんだを凝固させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0122】
(付記15)
前記はんだの融点は、前記金属粒子が焼結する温度よりも高く、前記金属粒子の融点よりも低いことを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【0123】
(付記16)
前記金属粒子は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【0124】
(付記17)
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記14乃至16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0125】
(付記18)
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0126】
(付記19)
前記多孔質金属材の周囲に、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を形成する工程を有することを特徴とする付記14乃至18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0127】
(付記20)
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする付記14乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0128】
11:リードフレーム
12、14、22、32、34、42、44、52、62、72:ナノAgペースト
13、23、33、43、53、63、73:はんだシート
23a、53a:はんだ層
15:半導体素子
15a:金属膜
16、26、36、46、56、66、76:複合材
16a、62a、72a:多孔質金属材
16b:空隙
16c:はんだ
17:ボンディングワイヤ
18:モールド樹脂
49、59、79:樹脂材
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上方にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。GaN系HEMTでは、AlGaNとGaNとのヘテロ接合界面に発生する高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が利用されている。
【0003】
GaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。つまり、GaNは高い破壊電界強度を有する。また、GaNは大きい飽和電子速度も有している。このため、GaNは、高電圧動作、且つ高出力が可能な化合物半導体装置の材料として極めて有望である。そして、GaN系HEMTは、高効率スイッチング素子、電気自動車等に用いられる高耐圧電力デバイスとして期待されている。
【0004】
近年、このようなGaN系HEMTだけでなく、種々の半導体素子に関し、半導体素子を含んだ半導体装置の小型化及び薄型化が進められている。このような半導体装置では、リードフレーム上に、はんだ材又はナノAgペースト等のダイボンド材により半導体素子が接合されている。
【0005】
しかしながら、はんだ材により半導体素子がリードフレームに接合された構造では、十分な放熱性を得ることが困難である。また、はんだ材による接合が強固であるため、半導体素子の動作時に接合部及びその近傍に生じる熱応力を十分に緩和することができない。このため、接合信頼性が良好であるとはいいがたい。また、熱応力に伴って半導体素子に多大な機械的ストレスが作用し、半導体素子が誤動作する可能性もある。例えば、トランジスタの閾値電圧が変動することがある。更に、半導体素子をリードフレームに搭載するためにはんだ材を溶融させると、この際に半導体素子の位置ずれが生じることもある。
【0006】
一方、ナノAgペーストにより半導体素子がリードフレームに接合された構造では、はんだ材により接合された構造よりも応力緩和及び半導体素子の位置ずれの影響が小さい。また、高い放熱性を得ることもできる。しかし、十分な接合強度を確保することが困難である。
【0007】
他にも種々の提案がされているが、従来、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−230351号公報
【特許文献2】特開2007−201314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
半導体装置の一態様には、支持基材と、接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、が含まれている。前記接合材には、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、が含まれている。
【0011】
半導体装置の製造方法の一態様では、支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置し、前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する。加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる。冷却により、前記はんだを凝固させる。
【発明の効果】
【0012】
上記の半導体装置等によれば、多孔質金属材により良好な放熱性及び応力緩和性を得ることができ、はんだにより良好な接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図2A】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2B】図2Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】半導体素子の一態様を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図5A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5B】図5Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図7A】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7B】図7Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】第4の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図9A】第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図9B】図9Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図10】第5の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図11A】第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11B】図11Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12】第6の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図13A】第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13B】図13Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図14】第7の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【図15A】第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図15B】図15Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図16】GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージを示す図である。
【図17】電源装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0016】
第1の実施形態では、図1(a)に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材16を介して接合されている。複合材16は接合材の一例である。半導体素子15には端子が設けられており、この端子はボンディングワイヤ17を介して、リードフレーム11のリードに接続されている。そして、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17がモールド樹脂18により封止されている。
【0017】
第1の実施形態では、複合材16に、図1(b)に示すような膜状の多孔質金属材16aが含まれている。多孔質金属材16aの一方の主面は半導体素子15に接触し、他方の主面はリードフレーム11に接触している。そして、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部、例えば全体にはんだ16cが充填されている。なお、図1(b)では、空隙16bが規則的に配列しているが、空隙16bが規則的に配列している必要はない。
【0018】
第1の実施形態では、半導体素子15で発生した熱は、複合材16に含まれる多孔質金属材16aを介してリードフレーム11に十分に伝達され得る。また、発熱に伴って応力が発生したとしても、多孔質金属材16aにより当該応力が緩和される。更に、多孔質金属材16aの空隙16bの少なくとも一部にはんだ16cが充填されているため、リードフレーム11と半導体素子15との間の十分な接合強度を確保することも可能である。
【0019】
そして、応力を十分に緩和することが可能であるため、半導体素子にGaN系HEMT等のトランジスタが含まれていたとしても、その閾値電圧の変動を抑制することができる。また、例えば、高温放置、温度サイクル試験を行ったとしても、半導体素子15へのダメージを著しく低減することができる。
【0020】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図2A〜図2Bは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0021】
先ず、図2A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域にナノAgペースト12を塗布する。ナノAgペースト12は、例えば粒径が1μm以下のAg粒子を含むペーストである。粒径が100nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよく、粒径が10nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよい。ナノAgペースト12の塗布方法は特に限定されず、ディスペンス法、印刷法又は転写法等により塗布することができる。
【0022】
次いで、図2A(b)に示すように、ナノAgペースト12上にはんだシート13を配置する。
【0023】
その後、図2A(c)に示すように、はんだシート13上にナノAgペースト14を塗布する。ナノAgペースト14も、例えば粒径が1μm以下のAg粒子を含むペーストである。粒径が100nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよく、粒径が10nm以下のAg粒子を含むペーストを用いてもよい。ナノAgペースト14の塗布方法も特に限定されず、ディスペンス法、印刷法又は転写法等により塗布することができる。
【0024】
なお、はんだシート13としては、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じる温度よりも融点が高く、Ag粒子の融点よりも融点が低いものを用いれば、特に限定されるものではない。例えば、SnAgCu系のはんだシートをもちいることができる。
【0025】
続いて、図2A(d)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト14上にフェースアップで搭載する。半導体素子15の種類は特に限定されず、例えばGaN系HEMT等を用いることができる。
【0026】
次いで、少なくともナノAgペースト12、はんだシート13、及びナノAgペースト14を加熱して、はんだシート13を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。はんだシート13の融点が、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じる温度よりも高いため、この過程では、はんだシート13が溶融する前に、ナノAgペースト12及び14に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材16aが形成される。そして、はんだシート13が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材16aの空隙16bに流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図2B(e)に示すように、多孔質金属材16aと、空隙16bの少なくとも一部に充填されたはんだとを含む複合材16が形成される。また、多孔質金属材16aの一方の主面は半導体素子15と接触し、他方の主面はリードフレーム11と接触する。なお、加熱方法は特に限定されず、加熱温度及び加熱時間も、はんだシート13が溶融する温度及び時間であれば特に限定されない。例えば、コンベア式リフロー炉にて、240℃で10分間の加熱を行えばよい。
【0027】
その後、図2B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。ボンディングワイヤ17としては、例えばAlワイヤを用いる。半導体素子15がGaN系HEMTである場合、例えば、半導体素子15のゲート端子をリードフレーム11のゲートリードに接続し、半導体素子15のソース端子をリードフレーム11のソースリードに接続し、半導体素子15のドレイン端子をリードフレーム11のドレインリードに接続する。
【0028】
続いて、図2B(g)に示すように、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。例えば、半導体素子15、複合材16、及びボンディングワイヤ17を含む組立体を樹脂封止(モールド)装置の金型に設置し、熱硬化性の封止用樹脂によって封止する。
【0029】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0030】
このような方法では、従来と比して高価な材料を用いる必要がないため、コストの上昇を抑えながら、放熱性、応力緩和性、及び接合強度を両立することが可能な半導体装置を得ることができる。
【0031】
なお、多孔質金属材16aの材料は特に限定されない。例えば、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0032】
また、はんだシート13の材料も、多孔質金属材16aの材料の焼結が生じる温度よりも融点が高いものであれば特に限定されない。例えば、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0033】
また、半導体素子15の裏面には、図3に示すように、金属膜15aが形成されていることが好ましい。金属膜15aにより、はんだシート13のはんだの濡れ性が向上し、より確実な接合が可能となり、また、多孔質金属材16aとの間の熱伝導性が向上するからである。金属膜15aは、スパッタリング法、蒸着法、めっき法等により形成することができ、例えば、Ti膜、Pt膜、及びAu膜をこの順で形成する。また、金属膜15aの材料も特に限定されず、例えば、Ni、Cu、Zn、Al、Ag、Au、W、Ti、Pt、及びCrからなる群から選択された少なくとも1種を含有する物質(金属単体、合金、又は混合物等)を用いることができる。以下の実施形態でも同様である。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0035】
第2の実施形態では、図4に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材26及びはんだ層23aを介して接合されている。複合材26及びはんだ層23aは接合材の一例である。つまり、半導体素子15の少なくとも一部が複合材26と接触し、半導体素子15の少なくとも他の一部がはんだ層23aと接触している。例えば、半導体素子15の外周部分が複合材26と接触し、その内側の部分がはんだ層23aと接触している。複合材26には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と比較してより高い接合強度を得ることができる。特に、半導体素子15の外周部分が複合材26と接触し、その内側の部分がはんだ層23aと接触している場合には、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力を効果的に緩和しながら、応力が作用しにくい中央部分において高い接合強度を得ることができる。
【0037】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図5A〜図5Bは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0038】
先ず、図5A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート23を配置する。はんだシート23の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0039】
次いで、図5A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート23の周囲にナノAgペースト22を塗布する。ナノAgペースト22としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0040】
その後、図5B(c)に示すように、半導体素子15をはんだシート23及びナノAgペースト22上にフェースアップで搭載する。
【0041】
続いて、少なくともナノAgペースト22及びはんだシート23を加熱して、はんだシート23を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート23が溶融する前に、ナノAgペースト22に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート23が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込み、残部は中央部に残る。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図5B(d)に示すように、複合材26が形成され、その内側にはんだ層23aが形成される。
【0042】
その後、図5B(e)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図5B(f)に示すように、半導体素子15、複合材26、はんだ層23a、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0043】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、第3の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0045】
第3の実施形態では、図6に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材36を介して接合されている。複合材36は接合材の一例である。複合材36には、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。ただし、複合材16とは異なり、中央部から外周部にかけて、はんだの割合が減少し、多孔質金属材の割合が高くなっている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0046】
第3の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力を効果的に緩和しながら、応力が作用しにくい中央部分において高い接合強度を得ることができる。
【0047】
次に、第3の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図7A〜図7Bは、第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0048】
先ず、図7A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の外周部にナノAgペースト32を塗布する。ナノAgペースト32としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0049】
次いで、図7A(b)に示すように、環状のナノAgペースト32上に、ナノAgペースト32の内側の開口部分も覆うように、はんだシート33を配置する。はんだシート33としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0050】
その後、図7A(c)に示すように、はんだシート33の外周部にナノAgペースト34を塗布する。ナノAgペースト34としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0051】
続いて、図7B(d)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト14上にフェースアップで搭載する。
【0052】
次いで、少なくともナノAgペースト32、はんだシート33、及びナノAgペースト34を加熱して、はんだシート33を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート33が溶融する前に、ナノAgペースト32及び34に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート33が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材の空隙に流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図7B(e)に示すように、はんだの割合が中央部から外周部にかけて減少する複合材36が形成される。
【0053】
その後、図7B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図7B(g)に示すように、半導体素子15、複合材36、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0054】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図8は、第4の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0056】
第4の実施形態では、図8に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材49が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材46を介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部が複合材26と接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材49と接触している。複合材46は接合材の一例である。複合材46には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0057】
第4の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において、樹脂材49により応力をより効果的に緩和することができる。
【0058】
次に、第4の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図9A〜図9Bは、第4の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0059】
先ず、図9A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にナノAgペースト42を塗布する。ナノAgペースト42としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0060】
次いで、図9A(b)に示すように、ナノAgペースト42上にはんだシート43を配置する。はんだシート43としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0061】
その後、図9A(c)に示すように、はんだシート43上にナノAgペースト44を塗布する。ナノAgペースト44としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0062】
続いて、図9B(d)に示すように、ナノAgペースト42、はんだシート43、及びナノAgペースト44の積層体の周囲に樹脂材49を設ける。樹脂材49としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0063】
次いで、図9B(e)に示すように、半導体素子15をナノAgペースト44及び樹脂材49上にフェースアップで搭載する。
【0064】
その後、少なくともナノAgペースト42、はんだシート43、及びナノAgペースト44を加熱して、はんだシート43を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート43が溶融する前に、ナノAgペースト42及び44に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート43が溶融すると、溶融したはんだが多孔質金属材の空隙に流れ込む。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図9B(f)に示すように、多孔質金属材と、空隙の少なくとも一部に充填されたはんだとを含む複合材46が形成される。また、複合材46の側面は樹脂材49により覆われる。つまり、樹脂材49が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0065】
続いて、図9B(g)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図9B(h)に示すように、半導体素子15、複合材46、樹脂材49、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0066】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0067】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0068】
第5の実施形態では、図10に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材59が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材56及びはんだ層53aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部の少なくとも一部が複合材56と接触し、半導体素子15の中央部の少なくとも他の一部がはんだ層53aと接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材59と接触している。例えば、半導体素子15の中央部では、複合材56の内側にはんだ層53aが位置している。複合材56及びはんだ層53aは接合材の一例である。複合材56には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0069】
第5の実施形態によれば、第2の実施形態及び第4の実施形態の効果を得ることができる。即ち、第4の実施形態と比較して、応力が作用しにくい中央部分においてより高い接合強度を得ることができる。
【0070】
次に、第5の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図11A〜図11Bは、第5の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0071】
先ず、図11A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート53を配置する。はんだシート53の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。
【0072】
次いで、図11A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート53の周囲にナノAgペースト52を塗布する。ナノAgペースト52としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。
【0073】
その後、図11A(c)に示すように、ナノAgペースト52の周囲に樹脂材59を設ける。樹脂材59としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0074】
続いて、図11B(d)に示すように、半導体素子15をはんだシート53、ナノAgペースト52、及び樹脂材59上にフェースアップで搭載する。
【0075】
次いで、少なくともナノAgペースト52及びはんだシート53を加熱して、はんだシート53を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート53が溶融する前に、ナノAgペースト52に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート53が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込み、残部は中央部に残る。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図11B(e)に示すように、複合材56が形成され、その内側にはんだ層53aが形成される。また、複合材56の側面は樹脂材59により覆われる。つまり、樹脂材59が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0076】
その後、図11B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図11B(g)に示すように、半導体素子15、複合材56、はんだ層53a、樹脂材59、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0077】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0078】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図12は、第6の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0079】
第6の実施形態では、図12に示すように、リードフレーム11に半導体素子15が複合材66、及びはんだを含まない多孔質金属材62aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の少なくとも一部が複合材66と接触し、半導体素子15の少なくとも他の一部が多孔質金属材62aと接触している。例えば、半導体素子15の外周部分が多孔質金属材62aと接触し、その内側の部分が複合材66と接触している。複合材66及び多孔質金属材62aは接合材の一例である。複合材66には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0080】
第6の実施形態によれば、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力をより効果的に緩和することができる。
【0081】
次に、第6の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図13A〜図13Bは、第6の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0082】
先ず、図13A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート63を配置する。はんだシート63の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート63としては、第2の実施形態のはんだシート23よりも小さいものを用いる。
【0083】
次いで、図13A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート63の周囲にナノAgペースト62を塗布する。ナノAgペースト62としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート63がはんだシート23より小さい分だけ、ナノAgペースト62は、第2の実施形態のナノAgペースト22よりも広く塗布する。
【0084】
その後、図13B(c)に示すように、半導体素子15をはんだシート63及びナノAgペースト62上にフェースアップで搭載する。
【0085】
続いて、少なくともナノAgペースト62及びはんだシート63を加熱して、はんだシート63を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート63が溶融する前に、ナノAgペースト62に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート63が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込む。このとき、第6の実施形態では、はんだシート63の量が少ないため、はんだの全体が多孔質金属材の空隙に流れ込む。その一方で、多孔質金属材の外周部では、はんだが流れ込んで来ない。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図13B(d)に示すように、外周部に多孔質金属材62aが形成され、その内側に複合材66が形成される。
【0086】
次いで、図13B(e)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図13B(f)に示すように、半導体素子15、複合材66、多孔質金属材62a、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0087】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0088】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図14は、第7の実施形態に係る半導体装置の構造を示す図である。
【0089】
第7の実施形態では、図6に示すように、半導体素子15の外周部において、半導体素子15とリードフレーム11との間に樹脂材79が介在し、その内側において、リードフレーム11に半導体素子15が複合材76、及びはんだを含まない多孔質金属材72aを介して接合されている。つまり、半導体素子15の中央部の少なくとも一部が複合材76と接触し、半導体素子15の中央部の少なくとも他の一部が多孔質金属材72aと接触し、半導体素子15の外周部が樹脂材79と接触している。例えば、半導体素子15の中央部では、多孔質金属材72aの内側に複合材76が位置している。複合材76及び多孔質金属材72aは接合材の一例である。複合材76には、複合材16と同様に、多孔質金属材が含まれており、この多孔質金属材の空隙の少なくとも一部にはんだが充填されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0090】
第7の実施形態によれば、第4の実施形態及び第6の実施形態の効果を得ることができる。即ち、第4の実施形態と比較して、比較的大きな応力が作用する外周部分において応力をより効果的に緩和することができる。
【0091】
次に、第7の実施形態に係る半導体装置を製造する方法について説明する。図15A〜図15Bは、第7の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0092】
先ず、図15A(a)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域の中央部にはんだシート73を配置する。はんだシート73の材料としては、はんだシート13と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート73としては、第2の実施形態のはんだシート23よりも小さいものを用いる。
【0093】
次いで、図15A(b)に示すように、リードフレーム11の半導体素子15を搭載する予定の領域において、はんだシート73の周囲にナノAgペースト72を塗布する。ナノAgペースト72としては、ナノAgペースト12及び14と同様のものを用いればよい。なお、はんだシート73がはんだシート23より小さい分だけ、ナノAgペースト72は、第2の実施形態のナノAgペースト22よりも広く塗布する。
【0094】
その後、図15A(c)に示すように、ナノAgペースト72の周囲に樹脂材79を設ける。樹脂材79としては、例えば樹脂ペーストを用いることができる。
【0095】
続いて、図15B(d)に示すように、半導体素子15をはんだシート73、ナノAgペースト72、及び樹脂材79上にフェースアップで搭載する。
【0096】
次いで、少なくともナノAgペースト72及びはんだシート73を加熱して、はんだシート73を溶融させ、その後に冷却して溶融したはんだを凝固させる。この過程では、はんだシート73が溶融する前に、ナノAgペースト72に含まれるAg粒子の焼結が生じて膜状の多孔質金属材が形成される。そして、はんだシート73が溶融すると、溶融したはんだの一部が多孔質金属材の空隙に流れ込む。このとき、第7の実施形態では、はんだシート73の量が少ないため、はんだの全体が多孔質金属材の空隙に流れ込む。その一方で、多孔質金属材の外周部では、はんだが流れ込んで来ない。その後の冷却に伴ってはんだが凝固すると、図15B(e)に示すように、外周部に多孔質金属材72aが形成され、その内側に複合材76が形成される。また、多孔質金属材72aの側面は樹脂材79により覆われる。つまり、樹脂材79が半導体素子15の下面及びリードフレーム11の上面に接した状態で残存する。
【0097】
次いで、図15B(f)に示すように、ダイボンディングにより、半導体素子15の端子をリードフレーム11のリードにボンディングワイヤ17を用いて接続する。続いて、図15B(g)に示すように、半導体素子15、複合材76、多孔質金属材72a、樹脂材79、及びボンディングワイヤ17をモールド樹脂18により封止する。
【0098】
その後は、封止樹脂された組立体を金型から外し、リードフレーム11のアウターリードを切断して個々の半導体装置に分離する。このようにして、GaN系HEMT等の半導体素子15を含むディスクリートパッケージが得られる。
【0099】
なお、いずれの実施形態においても、はんだペーストとして、Sn−Bi系はんだ粒子及びCu粒子を含有するものを用いることが好ましい。この場合、はんだペーストを溶融させる加熱の際に、Cu粒子の表面にCu及びSnを含有する層が形成される。この層の融点は、Sn−Bi系はんだの融点(約240℃)よりも高いため、より高温での接合強度を十分に確保することができる。
【0100】
半導体素子がGaN系HEMTである場合、これら実施形態に係る半導体装置は、例えばディスクリートパッケージの高出力増幅器として用いることができる。図16に、GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの例を示す。この例では、半導体素子としてHEMTチップ81が用いられている。そして、ゲートリード11g、ドレインリード11d、及びソースリード11sを含むリードフレームのランド上に接合材82を介してHEMTチップ81が接合されている。HEMTチップ81のゲート端子81gはゲートリード11gに、ドレイン端子81dはドレインリード11dに、ソース端子81sはソースリード11sに、それぞれ、ボンディングワイヤ17を介して接続されている。そして、これらがモールド樹脂18により封止されている。
【0101】
また、GaN系HEMTは、例えば電源装置に用いることもできる。図17(a)は、PFC(power factor correction)回路を示す図であり、図17(b)は、図17(a)に示すPFC回路を含むサーバ電源(電源装置)を示す図である。
【0102】
図17(a)に示すように、PFC回路90には、交流電源(AC)が接続されるダイオードブリッジ91に接続されたコンデンサ92が設けられている。コンデンサ92の一端子にはチョークコイル93の一端子が接続され、チョークコイル93の他端子には、スイッチ素子94の一端子及びダイオード96のアノードが接続されている。スイッチ素子94は上記の実施形態における半導体素子(HEMT)に相当し、当該一端子はHEMTのドレイン電極に相当する。また、スイッチ素子94の他端子はHEMTのソース電極に相当する。ダイオード96のカソードにはコンデンサ95の一端子が接続されている。コンデンサ92の他端子、スイッチ素子94の当該他端子、及びコンデンサ95の他端子が接地される。そして、コンデンサ95の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。また、スイッチ素子94(HEMT)のゲートリードにはゲートドライバが接続される。
【0103】
そして、図17(b)に示すように、PFC回路90は、サーバ電源100等に組み込まれて用いられる。
【0104】
このようなサーバ電源100と同様の、より高速動作が可能な電源装置を構築することも可能である。また、スイッチ素子94と同様のスイッチ素子は、スイッチ電源又は電子機器に用いることができる。更に、これらの半導体装置を、サーバの電源回路等のフルブリッジ電源回路用の部品として用いることも可能である。
【0105】
本願発明者らが、第2の実施形態に沿ってGaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの半導体装置を製造し、半導体素子の動作時のパッケージ全体の熱抵抗を測定したところ、0.5℃/W以下であった。また、−65℃と+150℃との間で3000サイクルの温度サイクル試験を実施したところ、熱抵抗の変化率は+5%以下であった。更に、各試験後に半導体素子とリードフレームとの接合部の断面SEM解析を行ったところ、接合部にクラックや破断箇所は認められず、初期の接合状態を良好に維持していることが確認された。なお、この半導体装置の製造に際しては、はんだペーストとして、SnBiはんだ粒子及びCu粒子を含むものを用いた。
【0106】
本発明者らは、比較のために、ナノAgペーストを用いずにSnBiはんだペーストのみを用いて半導体素子をリードフレームに接合したことを除き、第2の実施形態に沿って、GaN系HEMTを含むディスクリートパッケージの半導体装置を製造した。そして、上記と同様の試験を行った。この結果、熱抵抗は、0.7℃/Wと上記の結果の1.4倍以上であった。また、温度サイクル試験に伴う熱抵抗の変化率は、上記の結果の約10倍であった。更に、接合部の断面SEM解析を行ったところ、半導体素子の外周近傍の接合部にクラックが認められた。
【0107】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0108】
(付記1)
支持基材と、
接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、
を有し、
前記接合材は、
前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、
前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0109】
(付記2)
前記多孔質金属材の融点は、前記はんだの融点よりも高いことを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0110】
(付記3)
前記多孔質金属材は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0111】
(付記4)
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0112】
(付記5)
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0113】
(付記6)
前記金属膜は、Ni、Cu、Zn、Al、Ag、Au、W、Ti、Pt、及びCrからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記5に記載の半導体装置。
【0114】
(付記7)
前記接合材の周囲に設けられ、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0115】
(付記8)
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0116】
(付記9)
平面視で、前記半導体素子の中央から外周に向かうほど、連続的又は段階的に前記はんだの割合が低くなっていることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0117】
(付記10)
前記はんだはCu粒子を含有することを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0118】
(付記11)
前記多孔質金属材の平面形状は環状であり、
前記接合材は、前記多孔質金属材の内側に位置するはんだ層を有することを特徴とする付記1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0119】
(付記12)
付記1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【0120】
(付記13)
付記1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0121】
(付記14)
支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置する工程と、
前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する工程と、
加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる工程と、
冷却により、前記はんだを凝固させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0122】
(付記15)
前記はんだの融点は、前記金属粒子が焼結する温度よりも高く、前記金属粒子の融点よりも低いことを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
【0123】
(付記16)
前記金属粒子は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【0124】
(付記17)
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする付記14乃至16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0125】
(付記18)
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする付記14乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0126】
(付記19)
前記多孔質金属材の周囲に、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を形成する工程を有することを特徴とする付記14乃至18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0127】
(付記20)
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする付記14乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0128】
11:リードフレーム
12、14、22、32、34、42、44、52、62、72:ナノAgペースト
13、23、33、43、53、63、73:はんだシート
23a、53a:はんだ層
15:半導体素子
15a:金属膜
16、26、36、46、56、66、76:複合材
16a、62a、72a:多孔質金属材
16b:空隙
16c:はんだ
17:ボンディングワイヤ
18:モールド樹脂
49、59、79:樹脂材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材と、
接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、
を有し、
前記接合材は、
前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、
前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記多孔質金属材の融点は、前記はんだの融点よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記多孔質金属材は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接合材の周囲に設けられ、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項10】
支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置する工程と、
前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する工程と、
加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる工程と、
冷却により、前記はんだを凝固させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
支持基材と、
接合材により前記支持基材に接合された半導体素子と、
を有し、
前記接合材は、
前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材と、
前記多孔質金属材の空隙の少なくとも一部に充填されたはんだと、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記多孔質金属材の融点は、前記はんだの融点よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記多孔質金属材は、Ag、Au、Ni、Cu、Pt、Pd、及びSnからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記はんだは、Sn、Ni、Cu、Zn、Al、Bi、Ag、In、Sb、Ga、Au、Si、Ge、Co、W、Ta、Ti、Pt、Mg、Mn、Mo、Cr、及びPからなる群から選択された少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子の前記支持基材側の面に金属膜が形成されており、
前記多孔質金属材は前記金属膜に接触していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接合材の周囲に設けられ、前記支持基材及び前記半導体素子と接触する樹脂材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子は、GaN系トランジスタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする高出力増幅器。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【請求項10】
支持基材上に、金属粒子を含むペースト及びはんだを配置する工程と、
前記金属粒子を含むペースト及びはんだ上に半導体素子を搭載する工程と、
加熱により、前記金属粒子を焼結させて前記支持基材及び前記半導体素子と接触する多孔質金属材を形成し、前記はんだを溶融させてその少なくとも一部を前記多孔質金属材の空隙に流れ込ませる工程と、
冷却により、前記はんだを凝固させる工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−174927(P2012−174927A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36273(P2011−36273)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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