説明

半導体装置

【課題】半導体装置で発生する異常発熱をより確実に検出し得る構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置2は、半導体素子10と、一対の信号パッド12、14と、温度検出ダイオードD1〜D5と、を備える。温度検出ダイオードD1〜D5は、それぞれ、一対の信号パッド12、14間に並列に接続されている。そのため、一対の信号パッド12、14間に一定の電圧を印加すると、温度検出ダイオードD1〜D5のそれぞれにおいて、温度検出ダイオードD1〜D5の近傍の温度に応じた電流I1〜I5が流れる。従って、一対の信号パッド12、14間を流れる電流Iは、各温度検出ダイオードD1〜D5を流れた電流I1〜I5の和となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板の表面に、半導体基板の温度を検出するための温度検出用ダイオードが形成された半導体装置が開示されている。この半導体装置では、温度検出用ダイオードのアノード層はアノード電極に接続され、カソード層はカソード電極に接続されている。これらアノード電極とカソード電極は、半導体基板上に形成されている。アノード電極とカソード電極には一定の電圧が印加され、両電極間(即ち、温度検出用ダイオード)を流れる電流を検出することで、半導体基板の温度が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−66184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体装置では、温度検出用ダイオードが、半導体基板の表面に1個のみ形成されている。このため、特許文献1の半導体装置では、半導体基板の表面のうち最も高温になると考えられる位置に温度検出用ダイオードを形成し、その位置の近傍の温度を検出している。しかしながら、半導体装置を量産した場合、半導体装置によっては最も高温となる場所が異なることがある。例えば、半導体基板と放熱板とを接合するハンダ層の一部にボイドが形成された場合、ボイドが形成された位置の温度が最も高くなることがある。ボイドが形成される位置は一定とはならないため、最も高温になると考えられる位置とボイドが形成される位置とは異なる場合がある。そのため、1個の温度検出用ダイオードによってその近傍の温度のみを測定していては、半導体装置で発生する異常発熱を検出できない場合がある。
【0005】
本明細書では、半導体装置で発生する異常発熱をより確実に検出することができる構造を有する半導体装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する半導体装置は、半導体素子と、一対の電極と、半導体素子内の互いに異なる位置に設けられており、一対の電極の一方に一端が接続される一方で、一対の電極の他方に他端が接続されている複数個の第1温度検出素子と、を備える。
【0007】
上記の半導体装置では、複数個の第1温度検出素子が、半導体素子内の互いに異なる位置に設けられ、複数個の第1温度検出素子のそれぞれは、一対の電極に互いに並列に接続されている。そのため、一対の電極間に一定の電圧を印加すると、複数個の第1温度検出素子のそれぞれに一定の電圧が印加される。その結果、複数個の第1温度検出素子のそれぞれにおいて、当該第1温度検出素子の近傍の温度に応じた電流が流れる。従って、一対の電極間を流れる電流は、各第1温度検出素子を流れた電流の和となる。そのため、一対の電極間を流れる電流を検出することで、いずれかの第1温度検出素子の近傍で温度が高温となっているか否かを判断することができる。すなわち、上記の半導体装置では、半導体素子内の複数個所のいずれかにおいて異常発熱が生じているか否かを検出することができる。従って、上記の半導体装置では、温度検出用ダイオードを1個のみ備える従来の構成と比較して、半導体装置で起こる異常発熱をより確実に検出し得る。さらに、複数個の第1温度検出素子を備えていても、第1温度検出素子毎に電極を設けるのではなく、これらが一対の電極間に並列に接続されているので、半導体装置が大型化することを抑制することができる。
【0008】
複数個の第1温度検出素子の少なくとも1個について、一対の電極間において当該第1温度検出素子と直列に接続されている抵抗素子をさらに備えることが好ましい。この構成によると、抵抗素子が接続されている第1温度検出素子では、抵抗素子が接続されていない第1温度検出素子と比較して、温度変化に伴う電流値の変化率が小さくなる。従って、抵抗素子の抵抗値を調整することで、各第1温度検出素子に適切な重みを付けることができ、半導体装置の異常発熱を適切に検出することができる。例えば、発熱による影響の小さい部分(耐熱性の高い部分)に設置される第1温度検出素子に大きい抵抗値の抵抗素子を接続し、発熱による影響の大きい部分(耐熱性の低い部分)に設置される第1温度検出素子に小さい抵抗値の抵抗素子を接続する又は抵抗素子を接続しないことによって、発熱による影響の大きい部分の温度変化が検出され易いようにすることができる。
【0009】
上記の半導体装置は、半導体素子の一方の表面に接続される放熱板と、半導体素子の他方の表面に接続される端子と、半導体素子と放熱板の少なくとも一部と端子の少なくとも一部を被覆するモールド樹脂と、モールド樹脂内であって半導体素子と接触しない位置に配置された少なくとも1個の第2温度検出素子をさらに備えていてもよい。第2温度検出素子の一端は一対の電極の一方に接続されており、第2温度検出素子の他端は一対の電極の他方に接続されていてもよい。この構成によると、半導体素子内の複数個所のいずれかにおいて異常発熱が生じているか否かを検出することができるとともに、さらに、モールド樹脂内であって半導体素子と接触しない位置で異常発熱が生じているか否かをも検出することができる。従って、上記の半導体装置では、半導体装置で発生する異常発熱をより確実に検出することができる。
【0010】
上記の半導体装置は、一対の電極に一定の電圧を印加する定電圧源と、定電圧源により一対の電極の間に一定の電圧を印加したときに、一対の電極の間に流れる電流を計測する電流計をさらに備えてもよい。
【0011】
半導体素子は、当該半導体素子に電流が流れるオン状態と、当該半導体素子に電流が流れないオフ状態とに切替可能となっていてもよい。上記の半導体装置は、半導体素子のオン/オフ状態を制御するための駆動信号を半導体素子に供給する制御装置をさらに備えていてもよい。制御装置は、電流計で検出される電流値から半導体装置に異常発熱が生じていると判断される場合に、半導体装置に異常発熱が生じていないと判断される場合に比べて、半導体素子をオン状態とする時間tonとオフ状態とする時間toffとの比ton/toffを小さくするようにしてもよい。この構成によると、半導体装置に異常発熱が生じているときに、半導体装置の駆動が抑えられるため、半導体装置の熱による破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施例の半導体装置を模式的に示すブロック図。
【図2】第1実施例の半導体装置の動作を示すグラフ。
【図3】第2実施例の半導体装置を模式的に示すブロック図。
【図4】図3の半導体装置の具体的構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
図1に示すように、本実施例の半導体装置2は、半導体素子10と、モールド樹脂20と、電流計30と、定電圧源40と、制御装置50を備えている。半導体素子10は、その外周がモールド樹脂20で被覆されている。
【0014】
半導体素子10は、電力用のスイッチング素子であり、本実施例では、縦型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられている。半導体素子20は、Si、SiC、GaN等により形成することができる。
【0015】
半導体素子10の表面には、3個の信号パッド12、14、16が設けられている。また、半導体素子10内には、5個の温度検出ダイオードD1〜D5と、5個の抵抗素子R1〜R5が設けられている。温度検出ダイオードD1〜D5と、抵抗素子R1〜R5とは、半導体素子10の非セル領域(IGBTが形成されていない領域)に形成されている。信号パッド12、14、16は、半導体素子10の非セル領域の上方に形成されている。
【0016】
信号パッド12、14、16は、Al等の導電材料によって形成されている。本実施例では、信号パッド12、14は、温度検出ダイオードD1〜D5からの検出信号を出力するために用いられる。一方、信号パッド16は、外部の制御装置50から出力されるゲート信号(小電流の信号)を入力するために用いられる。ゲート信号は、半導体素子10のオン/オフ状態を制御するための駆動信号である。
【0017】
5個の温度検出ダイオードD1〜D5は、互いに、半導体素子10内の非セル領域の異なる位置に形成されている。具体的には、温度検出ダイオードD3は半導体素子10の略中央に配置されており、温度検出ダイオードD1、D2、D4、D5は半導体素子10の4つのコーナ部にそれぞれ配置されている。図1に示すように、5個の温度検出ダイオードD1〜D5は、いずれも、アノード側の端子が抵抗素子R1〜R5を介して信号パッド14に接続され、カソード側の端子が信号パッド12に接続されている。各温度検出ダイオードD1〜D5は、それぞれ、半導体素子10内のうち、当該温度検出ダイオードが形成されている位置の近傍の温度を検出する。本実施例では、温度検出ダイオードD1〜D5は、いずれも、検出温度が上昇すると抵抗値が上昇する特性を備えている。
【0018】
5個の抵抗素子R1〜R5は、それぞれ、一対の信号パッド12、14間において、対応する温度検出ダイオードD1〜D5と直列に接続されている。抵抗素子R1〜R5の抵抗値は互いに異ならせることができる。例えば、半導体素子10の4つのコーナ部に配置される温度検出ダイオードD1、D2、D4、D5と直列に接続される抵抗素子R1、R2、R4、R5の抵抗値は同一とし、半導体素子10の略中央に配置される温度検出ダイオードD3と直列に接続される抵抗素子R3は抵抗素子R1、R2、R4、R5の抵抗値より小さくすることができる。このような構成とすると、後述するように半導体素子10の略中央の温度変化が検出され易くなる。
【0019】
なお、以下では、温度検出ダイオードD1と、一対の信号パッド12、14間において当該温度検出ダイオードD1と直列に接続されている抵抗素子R1との組合せを組合せA1と呼ぶ場合がある。同様に、D2とR2との組合せ、D3とR3との組合せ、D4とR4との組合せ、D5とR5との組合せを、それぞれ、組合せA2、A3、A4、A5と呼ぶ場合がある。
【0020】
モールド樹脂20は、上記の半導体素子10を被覆する絶縁樹脂により形成されている。モールド樹脂20には、例えば、エポキシ、ポリイミド等の絶縁樹脂を用いることができる。なお、図1には示していないが、モールド樹脂20は、半導体素子10の裏面電極と接合される放熱板や、半導体素子の表面電極と接合されるリードフレームの一端等を、半導体素子10とともに被覆している。
【0021】
定電圧源40は、正極側が信号パッド14に接続されているとともに、負極側が信号パッド12に接続されている。定電圧源40は、一対の信号パッド12、14間に一定の電圧を印加する。
【0022】
電流計30は、定電圧源40によって一対の信号パッド12、14間に一定の電圧を印加した際に、一対の信号パッド12、14の間に流れる電流Iを計測する。電流計30が計測した電流Iの値は、制御装置50に出力される。
【0023】
制御装置50は、信号パッド16にゲート信号(小電流の信号)を入力する装置である。制御装置50は、電流計30で計測した電流値が電流計30から入力され、その電流値に応じて、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間(デューティ比)を変化させることができる。半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間が変化すると、半導体素子10をオン状態とする時間tonと、オフ状態とする時間toffとの比ton/toffも変化する。
【0024】
本実施例の半導体装置2における電流の流れをさらに詳しく説明する。上記の定電圧源40によって一対の信号パッド12、14間に一定の電圧を印加すると、一対の信号パッド12、14に互いに並列に接続されている組合せA1〜A5のそれぞれに一定の電圧が印加される。その結果、組合せA1〜A5には、それぞれ、異なる電流I1〜I5が流れる。即ち、一対の信号パッド12、14間を流れる電流Iは、各電流I1〜I5の和となる。
【0025】
上述の通り、本実施例では、温度検出ダイオードD1〜D5は、温度が上昇すると抵抗値が上昇する特性を備える。そのため、各組合せA1〜A5の抵抗値(例えば組合せA1の場合、温度検出ダイオードD1と抵抗素子R1の合成抵抗値)は、温度検出ダイオードD1〜D5が検出する温度に応じて変化する。従って、組合せA1〜A5に流れる電流I1〜I5の値は、それぞれ、温度検出ダイオードD1〜D5が検出する温度に応じた値となる。
【0026】
従って、本実施例の半導体装置2では、電流計30で一対の信号パッド12、14間を流れる電流Iの値を検出することで、制御装置50は、温度検出ダイオードD1〜D5のいずれかの近傍で温度が高温となっているか否かを判断することができる。即ち、本実施例の半導体装置2では、半導体素子10内の複数個所のいずれかにおいて異常発熱が生じているか否かを検出することができる。
【0027】
続いて、制御装置50が行う制御の内容を、図2を参照して説明する。図2は、本実施例の半導体装置2における、経過時間Tと電流計30が計測する電流値Iとの関係を示すグラフである。
【0028】
図2の例では、時間T0〜T1の間は、温度検出ダイオードD1〜D5がいずれも異常発熱を検出していない。即ち、半導体装置2は通常状態で駆動されている。この場合、電流計30が計測する電流値はIxを示している。半導体装置2が通常状態で駆動されている間は、制御装置50は、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間を所定時間に維持している。そのため、半導体素子10をオン状態とする時間tonと、オフ状態とする時間toffとの比ton/toffも所定の値で維持されている。
【0029】
図2の例では、T1の時点で、半導体装置2で異常発熱が発生する。即ち、T1の時点で、温度検出ダイオードD1〜D5のいずれか1個以上が異常な高温を検出する。その結果、T1の時点から、電流計30が計測する電流値Iが低下し始める。なお、T1の時点では、制御装置50は、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間をまだ変化させない。
【0030】
続くT2の時点で、電流計30が計測する電流値Iが所定の閾値Iyを下回る。制御装置50は、電流値Iが所定の閾値Iyを下回ると、半導体装置2で異常発熱が発生していると判断する。その場合、制御装置50は、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間を、上記所定時間よりも少なくする。その結果、ton/toffの値も、上記所定の値より小さくなる。制御装置50がこのような制御を行うと、半導体素子10がオン状態である時間が、半導体装置2で異常発熱が発生する前(即ち通常状態で駆動されている間)と比較して短くなり、半導体装置2の駆動が抑えられる。なお、制御装置50によって半導体装置2の駆動が抑えられた直後は、半導体装置2は、しばらくの間は温度上昇を続ける。そのため、電流計30が計測する電流値Iは一時的にIzまで低下する。その後、半導体装置2の駆動が抑えられた状態が継続するため、半導体装置2の温度が低下して、異常発熱状態が解消される。その場合、電流値IはIxに戻る。その結果、半導体装置2の熱による破壊が防止される。なお、電流計30で計測する電流値Iが閾値Iy以上となると、制御装置50は、半導体装置2の駆動状態を通常状態に復帰させる。これによって、半導体装置2の駆動状態が抑えられた状態が解消される。
【0031】
以上、第1実施例の半導体装置2について説明した。上記の通り、本実施例の半導体装置2では、温度検出ダイオードD1〜D5が、半導体素子10内の互いに異なる位置に設けられている。また、組合せA1〜A5は、それぞれ、一対の信号パッド12、14間に並列に接続されている。そのため、定電圧源40によって一対の信号パッド12、14間に一定の電圧を印加すると、組合せA1〜A5のそれぞれに一定の電圧が印加される。その結果、組合せA1〜A5それぞれにおいて、温度検出ダイオードD1〜D5の近傍の温度に応じた電流I1〜I5が流れる。従って、一対の信号パッド12、14間を流れる電流Iは、各組合せA1〜A5を流れた電流の和I1〜I5となる。そのため、一対の信号パッド12、14間を流れる電流を検出することで、いずれかの温度検出ダイオードの近傍で温度が高温となっているか否かを判断することができる。すなわち、上記の半導体装置2では、半導体素子10内の複数個所のいずれかにおいて異常発熱が生じているか否かを検出することができる。従って、上記の半導体装置2では、温度検出用ダイオードを1個のみ備える従来の構成と比較して、半導体装置2で起こる異常発熱をより確実に検出することができる。さらに、複数個の温度検出ダイオードD1〜D5を備えていても、これらが一対の信号パッド12、14間に並列に接続されているので、信号パッドを温度検出ダイオードD1〜D5毎に設ける必要はない。そのため、半導体装置2が大型化することを抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施例では、一対の信号パッド12、14間において、温度検出ダイオードD1〜D5のそれぞれについて、当該温度検出ダイオードと直列に抵抗素子R1〜R5が接続されている。これら抵抗素子R1〜R5の抵抗値は互いに異ならせることができる。従って、抵抗素子R1〜R5の抵抗値を調整することで、各温度検出ダイオードD1〜D5に適切な重みを付けることができ、半導体装置2の異常発熱を適切に検出することができる。なお、上述した実施例では、抵抗素子R1、R2、R4、R5の抵抗値を同一とし、抵抗素子R3の抵抗値をこれらよりより小さくしたが、このような例に限られない。例えば、発熱による影響の小さい部分(耐熱性の高い部分)に設置される温度検出ダイオードに大きい抵抗値の抵抗素子を接続し、発熱による影響の大きい部分(耐熱性の低い部分)に設置される温度検出ダイオードに小さい抵抗値の抵抗素子を接続することによって、発熱による影響の大きい部分の温度変化が検出され易いようにすることができる。
【0033】
また、上述の通り、本実施例の半導体装置2では、制御装置50は、電流計30で検出される電流値Iが所定の閾値Iyを下回る場合に、半導体装置2に異常発熱が生じていると判断する。その場合、制御装置50は、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の単位時間当りの出力時間を調整し、半導体装置2の駆動を抑える。従って、半導体装置2の熱による破壊を防止することができる。
【0034】
本実施例では、一対の信号パッド12、14が「一対の電極」の一例である。温度検出ダイオードD1〜D5のそれぞれが「第1温度検出素子」の一例である。
【0035】
(第2実施例)
第2実施例の半導体装置102について説明する。図3に示すように、本実施例の半導体装置102も、第1実施例と同様に、半導体素子10と、モールド樹脂20と、電流計30と、定電圧源40と、制御装置50とを備える。
【0036】
本実施例の半導体装置102は、温度検出ダイオードD11〜D15及び抵抗素子R11〜R15の配置が第1実施例とは異なる。なお、本実施例でも、温度検出ダイオードD11〜D15は、いずれも、検出温度が上昇すると抵抗値が上昇する特性を備えている。また、抵抗素子R11〜R15の抵抗値は互いに異なる。
【0037】
温度検出ダイオードD11〜D13は、互いに、半導体素子10内の非セル領域の異なる位置に形成されている。3個の温度検出ダイオードD11〜D13は、いずれも、信号パッド14及び信号パッド12に接続されている。また、抵抗素子R11〜R13は、それぞれ、対応する温度検出ダイオードD11〜D13と直列に接続されている。
【0038】
一方、温度検出ダイオードD14、D15は、互いに、モールド樹脂20内であって、半導体素子10と接触しない位置に配置されている。温度検出ダイオードD14、D15は、いずれも、アノード側の端子がリードフレーム110に接続されるとともに、カソード側の端子がリードフレーム120に接続されている。リードフレーム110、120は、モールド樹脂20内に配置されている。リードフレーム110は、ワイヤ112を介して、半導体素子10の信号パッド12と接続されている。同様に、リードフレーム120は、ワイヤ122を介して、半導体素子10の信号パッド14と接続されている。また、抵抗素子R14、R15は、それぞれ、一対のリードフレーム110、120間において、対応する温度検出ダイオードD14、D15と直列に接続されている。
【0039】
以下では、温度検出ダイオードD11と当該検出ダイオードD11と直列に接続されている抵抗素子R11との組合せを組合せA11と呼ぶ場合がある。同様に、D12とR12の組合せ、D13とR13の組合せを、それぞれ、組合せA12、A13、と呼ぶ場合がある。また、温度検出ダイオードD14と当該検出ダイオードD14と直列に接続されている抵抗素子R14との組合せを組合せA14と呼び、D15とR15の組合せを組合せA15と呼ぶ場合がある。上記の通り、本実施例では、5個の組合せA1〜A5は、一対のリードフレーム110、120間において、互いに並列に接続されている。
【0040】
本実施例では、定電圧源40は、その正極側がリードフレーム120に接続されているとともに、その負極側がリードフレーム110に接続されている。また、電流計30は、一対のリードフレーム110、120間に流れる電流Iを計測する。電流計30が計測した電流Iの値は、制御装置50に出力される。なお、本実施例の制御装置50が行う制御の内容は第1実施例と同様である。
【0041】
本実施例の半導体装置102の具体的構成の一例を、図4を参照して説明する。図4の例では、半導体素子10の裏面電極(図示しない)に、ハンダ150を介して放熱板160が接合されている。また、半導体素子10の表面電極(図示しない)には、ハンダ140を介してリードフレーム130の一端側が接合されている。また、モールド樹脂20は、半導体素子10と、放熱板160と、リードフレーム130の一端側と、ワイヤ112、122と、リードフレーム110、120の一端側とを被覆している。温度検出ダイオードD14は、ハンダ150内に配置されている。即ち、温度検出ダイオードD14は、ハンダ150の温度を検出する。温度検出ダイオードD15は、モールド樹脂20内に配置されている。即ち、温度検出ダイオードD15は、モールド樹脂20の温度を検出する。なお、図4では、半導体素子10内に設けられている組合せA11〜A13(図3参照)は図示されていない。
【0042】
本実施例の半導体装置102における電流の流れをさらに詳しく説明する。上記の定電圧源40によって一対のリードフレーム110、120間に一定の電圧を印加すると、一対の信号パッド120、110に互いに並列に接続されている組合せA11〜A15のそれぞれに一定の電圧が印加される。その結果、図3に示すように、組合せA11〜A15には、それぞれ、異なる電流I11〜I15が流れる。即ち、一対のリードフレーム110、120間を流れる電流Iは、各電流I11〜I15の和となる。
【0043】
本実施例の半導体装置2では、電流計30で一対のリードフレーム110、120間を流れる電流Iの値を検出することで、制御装置50は、温度検出ダイオードD11〜D15のいずれかの近傍で温度が高温となっているか否かを判断することができる。即ち、本実施例の半導体装置102では、半導体素子10内の複数個所のいずれかにおいて異常発熱が生じているか否かを検出することができるとともに、ハンダ150内やモールド樹脂20内(図4参照)で異常発熱が生じているか否かをも検出することができる。従って、本実施例の半導体装置102では、半導体装置102で起こる異常発熱をより確実に検出することができる。
【0044】
本実施例では、一対のリードフレーム110、120が「一対の電極」の一例である。温度検出ダイオードD11〜D13のそれぞれが「第1温度検出素子」の一例である。また、温度検出ダイオードD14、D15のそれぞれが「第2温度検出素子」の一例である。また、リードフレーム130が「端子」の一例である。
【0045】
上記の各実施例の変形例を以下に列挙する。
(1)複数個の温度検出ダイオードの一部についてのみ、直列に抵抗素子を接続するようにしてもよい。この変形例の場合も、抵抗素子が接続されている温度検出ダイオードでは、抵抗素子が接続されていない温度検出ダイオードと比較して、温度変化に伴う電流値の変化率が小さくなる。従って、例えば、発熱による影響の小さい部分に設置される温度検出ダイオードに抵抗素子を接続し、発熱による影響の大きい部分に設置される温度検出ダイオードに抵抗素子を接続しないことによって、発熱による影響の大きい部分の温度変化が検出され易いようにすることができる。また、複数個の温度検出ダイオードのいずれにも抵抗素子を接続しないようにしてもよい。
(2)温度検出素子には、温度検出ダイオードに代えて、サーミスタ等他の温度検出素子を用いてもよい。
(3)複数個の温度検出ダイオードは、検出温度が上昇すると抵抗値が低下する特性を備えるものであってもよい。その場合、制御装置50は、電流計30で検出される電流値Iが所定の閾値を上回る場合に、半導体装置に異常発熱が生じていると判断する。
(4)制御装置50は、半導体装置に異常発熱が生じていると判断する場合に、半導体素子10をオン状態にするゲート信号の出力を停止してもよい。
(5)半導体素子10には、IGBTに限らず、MOSFETやダイオード等の他のパワー半導体素子が用いられていてもよい。
【0046】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0047】
2:半導体装置
10:半導体素子
12、14、16:信号パッド
20:モールド樹脂
30:電流計
40:定電圧源
50:制御装置
D1、D2、D3、D4、D5:温度検出ダイオード
R1、R2、R3、R4、R5:抵抗素子
102:半導体装置
110、120、130:リードフレーム
112、122:ワイヤ
140、150:ハンダ
160:放熱板
D11、D12、D13、D14、D15:温度検出ダイオード
R11、R12、R13、R14、R15:抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
一対の電極と、
半導体素子内の互いに異なる位置に設けられており、前記一対の電極の一方に一端が接続される一方で、前記一対の電極の他方に他端が接続されている複数個の第1温度検出素子と、を備える、
半導体装置。
【請求項2】
前記複数個の第1温度検出素子の少なくとも1個について、前記一対の電極間において当該第1温度検出素子と直列に接続されている抵抗素子をさらに備える、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子の一方の表面に接続される放熱板と、
前記半導体素子の他方の表面に接続される端子と、
前記半導体素子と、前記放熱板の少なくとも一部と、前記端子の少なくとも一部を被覆するモールド樹脂と、
前記モールド樹脂内であって前記半導体素子と接触しない位置に配置された少なくとも1個の第2温度検出素子と、をさらに備えており、
前記第2温度検出素子の一端は前記一対の電極の一方に接続されており、前記第2温度検出素子の他端は前記一対の電極の他方に接続されている、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記一対の電極に一定の電圧を印加する定電圧源と、
前記定電圧源により前記一対の電極の間に一定の電圧を印加したときに、前記一対の電極の間に流れる電流を計測する電流計と、をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子は、当該半導体素子に電流が流れるオン状態と、当該半導体素子に電流が流れないオフ状態とに切替可能となっており、
前記半導体素子のオン/オフ状態を制御するための駆動信号を前記半導体素子に供給する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記電流計で検出される電流値から半導体装置に異常発熱が生じていると判断される場合に、前記半導体装置に異常発熱が生じていないと判断される場合に比べて、前記半導体素子をオン状態とする時間tonとオフ状態とする時間toffとの比ton/toffを小さくする、
請求項4に記載の半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73969(P2013−73969A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209879(P2011−209879)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】