説明

半導体記憶装置及びその製造方法

【課題】キャパシタの周囲を覆う下部水素バリア膜と上部水素バリア膜とによって、キャパシタを構成する容量絶縁膜の水素による劣化を防止すると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の増大を防止できるようにする。
【解決手段】半導体記憶装置は、半導体基板101の上に形成された下部水素バリア膜110と、下部水素バリア膜110の上に形成され、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜113を含む少なくとも1つのキャパシタ115と、キャパシタ115の上方及び側方を覆うと共に、キャパシタ115の周辺領域において下部水素バリア膜110と接続される接続部119を有する上部水素バリア膜118とを有している。ここで、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119における接続面は、半導体基板101の主面に向かう方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体記憶装置及びその製造方法に関し、特に、強誘電体又は高誘電体を容量絶縁膜とするキャパシタを水素バリア膜で被覆した半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容量絶縁膜に強誘電体又は高誘電体を用いたキャパシタを有する半導体記憶装置は、ヒステリシス特性による残留分極及び高い比誘電率を持つため、不揮発性メモリ装置及びDRAM(dynamic random access memory)装置の分野において、容量絶縁膜に酸化シリコン又は窒化シリコンを用いた半導体記憶装置と置き換わる可能性がある。
【0003】
しかしながら、強誘電体又は高誘電体は結晶構造自体がその物理的特性を決定する金属酸化物であるため、水素による還元作用の影響が大きく、特性の劣化を起こしやすい。一方、MOS(metal oxide semiconductor)トランジスタ形成工程、多層配線形成工程及び保護膜形成工程等においては、水素ガスはもとより、水素原子を含むシラン(SiH)ガス、レジスト材料及び水(水分)等を多用する場合が多い。
【0004】
そこで、近年、キャパシタの周囲に水素バリア膜を設け、キャパシタを単体ごとに又は複数のキャパシタを一単位としてその全体を水素バリア膜で覆う技術が提示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
以下、特許文献1に開示された従来例に係る、強誘電体を用いた容量絶縁膜を有する半導体記憶装置について、図8を参照しながら説明する。
【0006】
図8に示すように、従来例に係る半導体記憶装置は、半導体基板1の上部に形成されたMOSトランジスタ10と、該MOSトランジスタ10の上に層間絶縁膜18を介して配設され、下部電極32及び上部電極36とこれらの間に挟まれた強誘電体膜34とからなる強誘電体キャパシタ30とを備えた強誘電体メモリ装置である。ここで、層間絶縁膜18には、MOSトランジスタ10と下部電極32とを電気的に接続するコンタクトプラグ28が形成されている。
【0007】
層間絶縁膜18の上にはビット線22が設けられ、該ビット線22と下部電極32との間には、層間絶縁膜24を介して下部水素拡散防止膜26が設けられている。強誘電体キャパシタ30は、層間絶縁膜40、44に覆われており、強誘電体キャパシタ30の上部電極36には、層間絶縁膜40、44に設けられたコンタクトプラグ46が接続されている。強誘電体キャパシタ30の上面及び側面は、コンタクトプラグ46との接続部を除いて、上部水素拡散防止膜42によって覆われている。
【0008】
強誘電体キャパシタ30の側方において、下部水素拡散防止膜26と上部水素拡散防止膜42とが接続され、下部水素拡散防止膜26が成膜された方向(半導体基板1の主面と平行な方向)に互いの接続部が延伸している。
【0009】
従来の半導体記憶装置においては、上記の構成を採ることにより、配線及び保護膜形成工程において発生する水素雰囲気での熱処理工程において、下部水素拡散防止膜26及び上部水素拡散防止膜42の接続部からの水素の浸入による強誘電体膜34の還元を防止することが可能となり、信頼性が高いメモリ素子を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−19571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の半導体記憶装置は、キャパシタの周囲を覆う上部及び下部の水素拡散防止膜同士の接続部によって、キャパシタ形成領域の面積が大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明は、前記の問題を解決し、キャパシタの周囲を覆う下部水素バリア膜と上部水素バリア膜とによって、キャパシタを構成する容量絶縁膜の水素による劣化を確実に防止すると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の増大を防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体記憶装置を、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部における接続面が基板の主面に向かう方向に形成する構成とする。
【0014】
具体的に、本発明に係る半導体記憶装置は、半導体基板の上に形成された下部水素バリア膜と、下部水素バリア膜の上に形成され、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタと、キャパシタの上方及び側方を覆うと共に、キャパシタの周辺領域において下部水素バリア膜と接続される接続部を有する上部水素バリア膜とを備え、接続部における接続面は、半導体基板の主面に向かう方向に延びている。
【0015】
本発明の半導体記憶装置によると、キャパシタの上方及び側方を覆うと共にキャパシタの周辺領域において下部水素バリア膜と接続される接続部を有する上部水素バリア膜は、下部水素バリア膜との接続部における接続面が半導体基板の主面に向かう方向に延びている。このため、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部の半導体基板の主面への投影面積が小さくなるので、容量絶縁膜の水素による劣化を確実に防止できると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の拡大を防止することができる。
【0016】
本発明の半導体記憶装置において、接続部の接続長さは、少なくとも下部水素バリア膜の膜厚よりも長くてもよい。
【0017】
本発明の半導体記憶装置において、接続部における接続面は、半導体基板の主面に対して垂直であってよい。
【0018】
本発明の半導体記憶装置において、接続部は、半導体基板の主面に対して垂直な方向に延びる垂直部分と半導体基板の主面に対して平行な方向に延びる平行部分とからなる階段状を有していてもよい。
【0019】
本発明の半導体記憶装置において、キャパシタは複数であって、半導体基板の上に複数のキャパシタが行列状に配置され、下部水素バリア膜及び上部水素バリア膜は、複数のキャパシタを一括に覆っており、接続部は、複数のキャパシタの周囲に形成されていてもよい。
【0020】
本発明の半導体記憶装置において、下部水素バリア膜は、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、珪化酸化チタン又は珪化酸化タンタルからなってもよい。
【0021】
本発明の半導体記憶装置において、上部水素バリア膜は、酸化チタンアルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルアルミニウム、珪化酸化チタン又は珪化酸化タンタルからなってもよい。
【0022】
本発明の半導体記憶装置において、容量絶縁膜は、SrBi(Ta1−xNb、Pb(ZrTi1−x)O、(BaSr1−x)TiO、(BiLa1−xTi12(但し、xは、0≦x≦1である。)又はTaからなってもよい。
【0023】
本発明に係る第1の半導体記憶装置の製造方法は、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜を形成する工程(a)と、第1の層間絶縁膜の上部で且つキャパシタ形成領域の周囲に溝部を選択的に形成する工程(b)と、溝部を含む第1の層間絶縁膜の上に、下部水素バリア膜を形成する工程(c)と、下部水素バリア膜の上におけるキャパシタ形成領域に、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタを形成する工程(d)と、キャパシタを含む下部水素バリア膜の上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程(e)と、第2の層間絶縁膜の上に、キャパシタを覆うと共に端部が溝部の中央部に位置するマスクを選択的に形成する工程(f)と、マスクを用いて、第2の層間絶縁膜、下部水素バリア膜、及び第1の層間絶縁膜の上部に対してエッチングを行う工程(g)と、工程(g)よりも後に、マスクを除去し、第2の層間絶縁膜及び露出した第1の層間絶縁膜の上に上部水素バリア膜を形成する工程(h)とを備え、工程(c)において、下部水素バリア膜は、第1の層間絶縁膜の溝部に埋め込むように形成し、工程(h)において、上部水素バリア膜は、溝部に残存する下部水素バリア膜の露出面に沿って形成されることにより、キャパシタの周辺領域において下部水素バリア膜と接続される接続部が形成され、接続部における接続面は、半導体基板の主面に向かう方向に延びるように形成される。
【0024】
第1の半導体記憶装置の製造方法によると、キャパシタの上方及び側方を覆うと共にキャパシタの周辺領域において下部水素バリア膜と接続される接続部を有する上部水素バリア膜は、下部水素バリア膜との接続部における接続面が半導体基板の主面に向かう方向に延びるように形成される。このため、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部の半導体基板の主面への投影面積が小さくなるので、容量絶縁膜の水素による劣化を確実に防止できると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の拡大を防止することができる。
【0025】
本発明に係る第2の半導体記憶装置の製造方法は、半導体基板の上に第1の層間絶縁膜を形成する工程(a)と、第1の層間絶縁膜の上部で且つキャパシタ形成領域の周囲に溝部を選択的に形成する工程(b)と、溝部を含む第1の層間絶縁膜の上に、下部水素バリア膜を形成する工程(c)と、下部水素バリア膜の上におけるキャパシタ形成領域に、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタを形成する工程(d)と、キャパシタを含む下部水素バリア膜の上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程(e)と、第2の層間絶縁膜の上に、キャパシタを覆うと共に端部が溝部の中央部に位置するマスクを選択的に形成する工程(f)と、マスクを用いて、第2の層間絶縁膜、下部水素バリア膜、及び第1の層間絶縁膜の上部に対してエッチングを行う工程(g)と、工程(g)よりも後に、マスクを除去し、第2の層間絶縁膜及び露出した第1の層間絶縁膜の上に上部水素バリア膜を形成する工程(h)とを備え、工程(c)において、下部水素バリア膜は、第1の層間絶縁膜の溝部に埋め込むように形成し、工程(g)において、下部水素バリア膜は、該下部水素バリア膜の膜厚分のみを除去し、工程(h)において、上部水素バリア膜は、溝部に残存する下部水素バリア膜の露出面に沿って形成されることにより、キャパシタの周辺領域において下部水素バリア膜と接続される接続部が形成され、接続部における接続面は、半導体基板の主面に向かう方向に延びるように形成され、且つ、半導体基板の主面に対して垂直な方向に延びる垂直部分と半導体基板の主面に対して平行な方向に延びる平行部分とからなる階段状となる。
【0026】
第2の半導体記憶装置の製造方法によると、第1の半導体記憶装置の製造方法と同様の効果を得られる上に、接続部における接続面が半導体基板の主面に対して垂直な方向に延びる垂直部分と半導体基板の主面に対して平行な方向に延びる平行部分とからなる階段状となるため、キャパシタ形成領域の周辺部の面積を大きく広げることなく、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部の接続距離を十分に確保できる。その結果、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部の耐水素性を向上することができる。
【0027】
第1又は第2の半導体記憶装置の製造方法において、接続部の接続長さは、少なくとも下部水素バリア膜の膜厚よりも長くてもよい。
【0028】
第1又は第2の半導体記憶装置の製造方法において、キャパシタは、その複数が半導体基板の上に行列状に配置され、下部水素バリア膜及び上部水素バリア膜は、複数のキャパシタを一括に覆っており、接続部は複数のキャパシタの周囲に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る半導体記憶装置及びその製造方法によると、キャパシタの周囲を覆う下部水素バリア膜と上部水素バリア膜とによって容量絶縁膜の水素による劣化が確実に防止できると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の増大を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置を示す部分的な平面図である。
【図2】図1のII−II線における模式的な断面図である
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の一変形例を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)は本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す工程順の断面図である。
【図5】(a)は本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法における下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続状態を示す部分的な断面図であり、(b)は比較例に係る断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法を示す工程順の断面図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一変形例を示す要部の工程順の断面図である。
【図8】従来例に係る半導体記憶装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(一実施形態)
本発明の一実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る半導体記憶装置は、メモリ領域200とその周辺回路領域210とに区画された半導体基板101を有し、該半導体基板101におけるメモリ領域200には、例えばマトリクス状に配置された複数のメモリセルが形成されている。複数のキャパシタ115からなるメモリセルアレイを囲む領域(メモリ領域200内の周辺部)には溝部105aが形成され、この溝部105aにおいて、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118とが接続されている。ここで、符号110aは下部水素バリア膜110の端面を表し、符号118aは上部水素バリア膜118の端面を表している。
【0033】
下部電極112と上部電極114との間に挟まれる容量絶縁膜は、例えばペロブスカイト型酸化物等の高誘電体又は強誘電体で構成されている。具体的には、例えばPb(ZrTi1−x)O、(BaSr1−x)TiO又は(BiLa1−xTi12(但し、いずれもxは0≦x≦1である。)等により構成される。なお、容量絶縁膜の一部に高誘電体膜又は強誘電体膜が含まれていてもよい。
【0034】
図2の断面図に示すように、各メモリセルは、例えばゲート絶縁膜を介して半導体基板101の上に形成されたゲート電極104、及び半導体基板101におけるゲート電極104の両側方の領域に形成されたn型不純物を含む不純物拡散層103を有するMOSトランジスタ(セル選択トランジスタ)220と、該MOSトランジスタ220の上方に形成されたキャパシタ115とを有している。ここで、各MOSトランジスタ220は、半導体基板101の上部に選択的に形成された素子分離領域102によって絶縁分離されている。また、それぞれ下部電極112と上部電極114との間に容量絶縁膜113を有するキャパシタ115は、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118とによって一括に覆われている。なお、メモリ領域200に形成された複数のキャパシタ115は、下部水素バリア膜110及び上部水素バリア膜118によって一括に囲まれているが、個々のキャパシタ115の周囲がそれぞれ下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118とによって覆われた構造であってもよい。
【0035】
以下に、本実施形態に係る半導体記憶装置の構成をより詳細に説明する。
【0036】
半導体基板101の主面上には、酸化シリコン等からなる第1の層間絶縁膜105が形成され、第1の層間絶縁膜105の上には下部水素バリア膜110が形成されている。下部水素バリア膜110は、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍において、その端部が下方(基板側)に屈曲した断面L字形状を有している。ここで、下部水素バリア膜110は、例えば水素が透過しにくい窒化シリコン等によって構成される。
【0037】
下部水素バリア膜110の上には、それぞれ基板側から順次成膜された下部電極112、容量絶縁膜113及び上部電極114からなる複数のキャパシタ115が形成されている。下部電極112は、第1の層間絶縁膜105及び下部水素バリア膜110を貫通する第1のコンタクトプラグ109によって、MOSトランジスタ220の不純物拡散層103と電気的に接続されている。
【0038】
メモリ領域200には、各キャパシタ115の上面及び周囲を覆うように、酸化シリコン等からなる第2の層間絶縁膜108が形成されている。さらに、第2の層間絶縁膜108は、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍において、その端面が基板面に垂直に又は上方がメモリ領域200の内側に傾く順テーパ状にパターニングされている。
【0039】
ここで、上部水素バリア膜118には、下部水素バリア膜110の溝部105aの壁面に断面L字状に下方に屈曲した端部との間で接続部119が形成されている。より具体的には、接続部119は、第2の層間絶縁膜108の端部を第1の層間絶縁膜105に設けた溝部105aと合わせるパターニングの際に形成された、第1の層間絶縁膜105の側面上に形成されている。従って、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の接続面は、垂直又は斜め下方に半導体基板101に向かうように延びている。ここで、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の長さは、少なくとも下部水素バリア膜110の膜厚以上に形成されていることが好ましい。
【0040】
周辺回路領域210に形成された第1の層間絶縁膜105の上、及びメモリ領域200に形成された上部水素バリア膜118の上には、酸化シリコンからなる第3の層間絶縁膜117が形成され、該第3の層間絶縁膜117の上には配線121が選択的に形成されている。配線121における周辺回路領域210の上側部分において、第3の層間絶縁膜117及び第1の層間絶縁膜105を貫通する第2のコンタクトプラグ120が形成されており、該第2のコンタクトプラグ120は、配線121と半導体基板101に形成された不純物拡散層103と接続されている。
【0041】
このように、本実施形態に係る半導体記憶装置は、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍において、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119が、下部水素バリア膜110の膜厚以上となるように形成されており、且つ下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118の接続部119の接続面は、半導体基板101にほぼ垂直に向かうように延伸していることを特徴とする。
【0042】
このような構成とすることにより、製造工程中に水素が浸入する経路となり易い水素バリア膜110、118同士の接続部119の接続距離を長くできるため、水素の浸入が抑止される。その上、水素バリア膜110、118同士の接続部119の基板面と平行な方向の接続距離を短くすることができるため、メモリ領域200における占有面積の増大を防止することができる。
【0043】
従って、メモリ領域200の面積を大きく広げることなく、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の接続距離を十分に確保できるため、容量絶縁膜113が強誘電体からなる場合には、誘電率の変化及びヒステリシス特性の劣化等が抑制されて、不揮発性メモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。また、容量絶縁膜113が高誘電体からなる場合には、誘電率の変化等が抑制されることにより、通常のメモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。
【0044】
なお、図2においては、下部水素バリア膜110が下方に向かってL字状に屈曲し、且つ上部水素バリア膜118と接続する接続部119の接続面は、半導体基板101に向かって垂直に延伸している。しかしながら、この接続部119の形状は、接続面が基板面に垂直に延伸する構成に限られない。すなわち、メモリ領域200の面積の増大がある程度許容できるのであれば、接続部119は、半導体基板101に対して斜め下方に延伸していてもよい。さらには、接続部119の接続形状は、本実施形態の一変形例である、図3に示すような、階段状でもよく、基板面に対して斜め成分を持った階段状であっても構わない。但し、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119は、基板面に対して垂直に延伸する方が基板面に対して斜めに延伸するよりも、メモリ領域200の面積の拡大を防止する効果が高いため、より好ましい。
【0045】
また、図2及び図3の構成においては、周辺回路領域210に形成された上部水素バリア膜118を除去した後に、第2のコンタクトプラグ120を形成しているため、上部水素バリア膜118は絶縁性であっても導電性であっても構わない。但し、キャパシタ115を構成する上部電極114と上部水素バリア膜118の距離が近く、上部電極114と上部水素バリア膜118との間の層間容量の影響が懸念される場合には、上部水素バリア膜118は絶縁性であることが好ましい。
【0046】
また、図2及び図3においては、キャパシタ115はプレーナスタック型としているが、凹型又は凸型の立体型キャパシタにより構成されていても構わない。
【0047】
また、本実施形態に係る半導体記憶装置は、キャパシタ115の下部電極112がMOSトランジスタ220の不純物拡散層103と電気的に接続される構成を採るが、下部電極112がMOSトランジスタ220のゲート電極104と接続される構成の半導体記憶装置であっても、本実施形態の構成を適用することにより、同様の効果を得ることができる。
【0048】
(一実施形態の製造方法)
以下、本発明の一実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について、図4〜図6を参照しながら説明する。
【0049】
まず、図4(a)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、例えばp型シリコン(Si)からなる半導体基板101の上部に、深さが約300nmの溝部を選択的に形成する。続いて、化学的気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により、半導体基板101の主面上にシリコン酸化膜を形成し、その後、化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法によって、形成されたシリコン酸化膜を平坦化することにより、溝部に埋め込まれた酸化シリコンからなる素子分離領域102を形成する。
【0050】
その後、例えば熱酸化法により、半導体基板101の主面上に膜厚が約10nmのゲート絶縁膜(図示せず)を形成する。続いて、低圧CVD法により、ゲート絶縁膜の上に膜厚が約200nmのポリシリコン膜を形成し、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、形成されたポリシリコン膜をパターニングして、ポリシリコンからなる複数のゲート電極104を形成する。
【0051】
続いて、CVD法により、半導体基板101の上にゲート電極104を覆い、且つ膜厚が約50nmのシリコン酸化膜(図示せず)を形成し、形成したシリコン酸化膜に対してエッチバックを行なって、ゲート電極104の両側面上にサイドウォール絶縁膜104Aを形成する。続いて、ゲート電極104及びサイドウォール絶縁膜104Aをマスクとして、半導体基板101の上部に、例えば高濃度のヒ素(As)イオンを注入することにより、n型の不純物拡散層(ドレイン拡散層/ソース拡散層)103をそれぞれ形成する。これにより、MOSトランジスタ220が形成される。
【0052】
続いて、CVD法により、半導体基板101上の全面にゲート電極104を埋め込むようにシリコン酸化膜を形成し、その後、CMP法により、形成されたシリコン酸化膜を、各ゲート電極104の上側部分の膜厚が200nm以上、より好ましくは約300nmとなるように平坦化して、酸化シリコンからなる第1の層間絶縁膜105を形成する。なお、ここでは、第1の層間絶縁膜105にシリコン酸化膜を用いる例を示したが、より詳細には、ホウ素(B)及びリン(P)を添加したいわゆるBPSG(Boro-Phospho-Silicate Glass)膜、高密度プラズマにより形成され、ホウ素及びリンが添加されない、いわゆるHDP−NSG(High Density Plasma-Non Silicate Glass)膜、又は酸化雰囲気にオゾン(O)を用いたO−NSGを用いることが好ましい。
【0053】
また、一例として、半導体基板101にp型シリコンを用い、該半導体基板101にnチャネル型MOSトランジスタ220を形成する場合について説明したが、n型シリコンからなる半導体基板を用い、該半導体基板にpチャネル型MOSトランジスタを形成した場合でも、本実施形態は有効である。
【0054】
次に、図4(b)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、第1の層間絶縁膜105におけるメモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍に幅が60nmで、深さが200nmの溝部105aを形成する。続いて、CVD法により、溝部105aが形成された第1の層間絶縁膜105の全面を覆うと共に溝部105aに充填するように、膜厚が約50nmの窒化シリコンからなる下部水素バリア膜110を堆積する。
【0055】
なお、下部水素バリア膜110には、膜厚が約50nmの窒化シリコンを用いたが、これに限られず、酸化窒化シリコン(SiON) 、酸化アルミニウム(Al)、珪化酸化チタン(TiSiO) 又は珪化酸化タンタル(TaSiO)を用いてもよい。但し、下部水素バリア膜110は絶縁性膜に限られる。
【0056】
また、水素バリア性を確保するのに必要な下部水素バリア膜110の膜厚は、使用する膜種ごとに異なるが、一般には、20nm以上且つ200nm以下程度とすれば有効である。但し、下部水素バリア膜110の膜厚は、第1の層間絶縁膜105の上部に形成された溝部105aの溝幅Sと関係し、該溝幅Sは下部水素バリア膜110の成膜時の膜厚の2倍以内が好ましい。言い換えれば、溝部105aは下部水素バリア膜110で埋め込まれる必要がある。
【0057】
なぜなら、図5(b)の比較例に示すように、溝幅Sが下部水素バリア膜110の成膜時の膜厚の2倍を超える場合は、溝部105aの中央部分に下部水素バリア膜110が堆積されない空隙部が発生する。この空隙部には、後の工程で上層に形成される第2の層間絶縁膜108が埋め込まれることになる。この状態で以降に説明するように、後工程において、下部水素バリア膜110における溝部105aの中央部からメモリ領域200の外側部分を除去すると、残存した溝部105aの中央部分からメモリ領域200の内側の領域では溝部105aに埋め込まれた第2の層間絶縁膜108が露出することになる。従って、残存した溝部105aの中央部分からメモリ領域200の内側の領域に形成される上部水素バリア膜118の大半は、溝部105aに埋め込まれた第2の層間絶縁膜108と接することになる。その結果、上部水素バリア膜118と下部水素バリア膜110との直接の接続距離L1は、溝部105aの底面上の領域のみとなる。すなわち、上部水素バリア膜118と下部水素バリア膜110との接続部119の長さが短くなって、該接続部119における水素バリア性が不十分となる。
【0058】
これに対し、本実施形態においては、図5(a)に示すように、第1の層間絶縁膜105に形成された溝部105aの溝幅Sが、下部水素バリア膜110の成膜時の膜厚の2倍を超えない幅に設定されているため、溝部105aが下部水素バリア膜110によって埋め込まれるので、溝部105aの中央部分に下部水素バリア膜110が埋め込まれない空隙部が生じない。従って、この状態で以降に説明するように、後工程において、下部水素バリア膜110における溝部105aの中央部分からメモリ領域200の外側部分を除去しても、残存した溝部105aの中央部分からメモリ領域200の内側の領域では、溝部105aに埋め込まれた下部水素バリア膜110が露出することになる。従って、残存した溝部105aの中央部分からメモリ領域200の内側の領域に形成される上部水素バリア膜118は、溝部105aに埋め込まれた下部水素バリア膜110と接することになる。その結果、上部水素バリア膜118と下部水素バリア膜110との直接の接続距離L2は、溝部105aの深さを越えるようになる。すなわち、上部水素バリア膜118と下部水素バリア膜110との接続部119の長さは、図5(a)に示す場合と比べて長くなるため、該接続部119における水素バリア性は十分に大きくなる。
【0059】
なお、第1の層間絶縁膜105の上部に形成する溝部105aの深さは、ゲート電極104と抵触しない程度の深さとする必要がある。そこで、溝部105aの深さは、第1の層間絶縁膜105におけるゲート電極104の上側部分の膜厚と連動して調整すればよい。
【0060】
次に、図4(c)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、下部水素バリア膜110と第1の層間絶縁膜105とを貫通して一方の不純物拡散層103を露出する、径が約110nmのコンタクトホールを形成する。その後、CVD法により、下部水素バリア膜110の上に、膜厚が約5nmのチタン(Ti)膜、膜厚が約7nmの窒化チタン(TiN)膜及び膜厚が約90nmのタングステン(W)膜をコンタクトホールに充填するように順次堆積する。続いて、CMP法により、堆積した金属膜における下部水素バリア膜110の上に残る部分を除去する。これにより、第1の層間絶縁膜105に、MOSトランジスタ220の一方の不純物拡散層103と電気的に接続される第1のコンタクトプラグ109が形成される。
【0061】
次に、図4(d)に示すように、スパッタ法により、第1のコンタクトプラグ109を含め第1の層間絶縁膜105の上の全面に、膜厚がそれぞれ約50nmの酸化イリジウム(IrO)及び白金(Pt)を順次成膜して下部電極形成膜を形成する。その後、有機金属分解(MOD)法、有機金属化学気相堆積(MOCVD)法、スパッタ法又は塗布法により、下部電極形成膜の上に、膜厚が40nm以上且つ150nm以下のビスマス層状ペロブスカイト構造を有する強誘電体であるSrBi(Ta1−xNbからなる絶縁膜を形成する。続いて、スパッタ法により、絶縁膜の上に膜厚が約50nmの白金からなる上部電極形成膜を堆積する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、これらの積層膜に対して、各第1のコンタクトプラグ109の上面を覆う共にその近傍領域を残すようにパターニングを行って、下部電極形成膜から下部電極112を形成し、絶縁膜から容量絶縁膜113を形成し、上部電極形成膜から上部電極114を形成することにより、それぞれが下部電極112、容量絶縁膜113及び下部電極112からなる複数のキャパシタ115を得る。
【0062】
ここで、下部電極112には、膜厚がそれぞれ約50nmの酸化イリジウム及び白金からなる積層膜を用いたが、これに代えて、膜厚がそれぞれ50nm以上且つ300nm以下程度の酸化イリジウムと酸化ルテニウム(RuO)等との積層膜を用いてもよい。また、下部電極112として、膜厚がそれぞれ50nm以上且つ300nm以下程度のルテニウムと酸化ルテニウムとを順次積層した積層膜を用いてもよい。さらには、酸化チタンアルミニウム(TiAlO)又はイリジウム(Ir)等の単層膜でもよく、また、少なくともTiAlO膜及びIr膜を含む積層膜により下部電極112を構成してもよい。
【0063】
また、容量絶縁膜113の構成材料には、SrBi(Ta1−xNbに代えて、ビスマス層状ペロブスカイト型酸化物である強誘電体、例えばPb(ZrTi1−x)O、(BaSr1−x)TiO又は(BiLa1−xTi12(但し、いずれもxは0≦x≦1である。)を用いることができる。また、高誘電体材料である五酸化タンタル(Ta)を容量絶縁膜113に用いてもよい。
【0064】
次に、図6(a)に示すように、CVD法により、下部水素バリア膜110の上に、各キャパシタ115を覆うように、酸化シリコンからなる第2の層間絶縁膜108を形成する。続いて、リソグラフィ法により、第2の層間絶縁膜108の上に、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍に設けられた溝部105aの中央部に端部が位置するようにメモリ領域200を覆うレジストマスク116を形成する。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、ドライエッチング法により、レジストマスク116(図示せず)を用いて、第2の層間絶縁膜108、下部水素バリア膜110、及び第1の層間絶縁膜105の上部におけるメモリ領域200の外側部分を除去する。ここでは、レジストマスク116を用いることにより、下部水素バリア膜110における溝部105aに充填された部分をその中央部において上端部から下端部まで一気にエッチングする。これにより、第1の層間絶縁膜105の溝部105aにおいて、メモリ領域200の外側面の一部となる下部水素バリア膜110の外側の端部が、半導体基板101の主面に向かう方向、例えば垂直な方向に延びるように露出する。
【0066】
続いて、レジストマスク116を除去した後、スパッタ法により、露出した第1の層間絶縁膜105、露出した下部水素バリア膜110の基板面に向かって延びる端部、及び第2の層間絶縁膜108を覆うように、膜厚が約50nmの酸化チタンアルミニウムからなる上部水素バリア膜118を形成する。これにより、上部水素バリア膜118は、半導体基板101の主面に向かう方向に延びる下部水素バリア膜110の端部と接続されて、基板面方向に延びる接続部119が形成される。
【0067】
ここで、上部水素バリア膜118は、膜厚を5nm以上且つ50nm以下程度とすれば水素に対するバリア性が十分に発揮される。また、本実施形態によれば、上部水素バリア膜118は、導電性であっても絶縁性であっても構わない。
【0068】
すなわち、本実施形態においては、上部水素バリア膜118として、膜厚が約50nmの酸化チタンアルミニウムを用いたが、これに限られない。例えば、上部水素バリア膜118は、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタルアルミニウム(TaAlO)、珪化酸化チタン(TiSiO)又は珪化酸化タンタル(TaSiO)により構成されていてもよい。
【0069】
なお、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118とに必要な接続部119の長さは、部材の組み合わせによっても異なるが、一般的な配線総数が4層から8層程度を想定して、約100nm以上は確保する必要がある。
【0070】
下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118の接続部119が、従来のように、半導体基板101の主面に平行な方向(横方向)に延びる構成を採る場合には、接続部119に最低限必要な接続距離を確保するには、メモリ領域200の周囲に100nm程度拡張した面積が必要となる。これに対し、本実施形態においては、溝部105aの溝幅Sを60nmとしてその中央部でエッチング加工すれば、横方向に30nm程度の拡張が必要である。さらに、上部水素バリア膜118の被覆率が100%として成膜された場合は、さらに横方向に20nm程度の拡張が必要となり、合計で50nm程度の拡張が必要となる。
【0071】
しかしながら、従来の、横方向への100nmの拡張が必要となるのと比べて、本実施形態においては、横方向の拡張が50nm程度も小さくなるため、メモリ領域200の面積の増大を大幅に抑制することができる。
【0072】
なお、上述した、各水素バリア膜110、118に必要とされる膜厚の範囲内であれば、水素バリア性には問題がないため、下部水素バリア膜110及び上部水素バリア膜118の膜厚をさらに薄くすることができ、その結果、メモリ領域200における面積縮小の効果はより大きくなる。
【0073】
また、本実施形態に係る構成は、下部水素バリア膜110及び上部水素バリア膜118の構成材料が変わる等の理由により、水素の侵入に対して各水素バリア膜110、118に最低限必要とされる接続距離が長くなるほど、従来技術と比べてメモリ領域200における面積縮小の効果が大きくなる。
【0074】
次に、図6(c)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、上部水素バリア膜118における下部水素バリア膜110との接続部119から外側(周辺回路領域210側)に残存する部分を除去する。続いて、CVD法により、露出した第1の層間絶縁膜105及び上部水素バリア膜118の上に、シリコン酸化膜を堆積する。その後、CMP法により、堆積されたシリコン酸化膜を平坦化して、酸化シリコンからなる第3の層間絶縁膜117を形成する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、周辺回路領域210に、第3の層間絶縁膜117及び第1の層間絶縁膜105を貫通して、MOSトランジスタ220の他方の不純物拡散層103を露出する、径が約110nmのコンタクトホールを形成する。その後、CVD法により、第3の層間絶縁膜117の上に、膜厚が約5nmのチタン膜、膜厚が約7nmの窒化チタン膜及び膜厚が約90nmのタングステン膜をコンタクトホールに充填するように順次堆積する。続いて、CMP法により、堆積した金属膜における第3の層間絶縁膜117の上に残る部分を除去する。これにより、第3の層間絶縁膜117及び第1の層間絶縁膜105に、MOSトランジスタ220の他方の不純物拡散層103と電気的に接続される第2のコンタクトプラグ120が形成される。
【0075】
続いて、スパッタ法により、第2のコンタクトプラグ120を含む第3の層間絶縁膜117の上に、膜厚が約10nmのチタン膜、膜厚が約50mの窒化チタン膜、膜厚が約500nmのアルミニウム膜及び膜厚が約50nmの窒化チタン膜を順次成膜する。その後、成膜された金属積層膜に対して、ドライエッチング法によりパターニングを行なって、金属積層膜からなり、且つ第2のコンタクトプラグ120と接続された配線121を形成する。
【0076】
これ以降は、図示はしていないが、公知の製造プロセスにより、多層配線の形成、保護膜の形成及びパッドの形成等の工程を経て、所望の半導体記憶装置を得る。
【0077】
ここでも、第3の層間絶縁膜117の構成材料には、BPSG、HDP−NSG又はO−NSG等の酸化シリコンを用いるとよい。また、第3の層間絶縁膜117は、上部水素バリア膜118の上側において、50nm以上且つ500nm以下程度の厚さがあればよい。
【0078】
本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法は、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍において、複数のキャパシタ115の下面、側面及び上面を一括に覆う下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の接続長さが、下部水素バリア膜110の膜厚以上となるように形成されている。その上、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118の接続部119は、その接続面が半導体基板101の主面に向かうように延びていることにある。
【0079】
このような構成とすることにより、製造工程中に水素が浸入する経路となり易い水素バリア膜110、118同士の接続部119の接続距離が長くなるため、水素の浸入が抑止される。その上、水素バリア膜110、118同士の接続部119の基板面と平行な方向の接続距離を短くすることができるため、メモリ領域200における占有面積の増大を防止することができる。
【0080】
従って、メモリ領域200の面積を大きく広げることなく、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の接続距離を十分に確保できるため、容量絶縁膜113が強誘電体からなる場合には、誘電率の変化及びヒステリシス特性の劣化等が抑制されて、不揮発性メモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。また、容量絶縁膜113が高誘電体からなる場合には、誘電率の変化等が抑制されることにより、通常のメモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。
【0081】
(製造方法の一変形例)
以下に、本実施形態に係る半導体記憶装置の一変形例の製造方法について、図7(a)〜図7(c)を参照しながら説明する。本変形例に係る製造方法は、図3に示した一変形例に係る半導体記憶装置の製造方法である。なお、ここでは、図4〜図6を用いた製造方法との相違点のみを説明する。
【0082】
まず、図7(a)は、図4及び図6(a)までの工程と同様の工程を経て得られた状態の断面構成を示している。ここでも、レジストマスク116は、その周辺回路領域210側の端部が、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍に設けられた溝部105aの中央部に位置するようにパターニングされている。
【0083】
次に、図7(b)に示すように、ドライエッチング法により、レジストマスク116(図示せず)を用いて、第2の層間絶縁膜108、下部水素バリア膜110、及び第1の層間絶縁膜105の上部におけるメモリ領域200の外側部分を除去する。但し、本変形例においては、成膜された下部水素バリア膜110は、溝部105aの底面上に少なくともその膜厚分が残る程度にエッチングを行っている。このため、下部水素バリア膜110が埋め込まれた溝部105aにおいては、該溝部105aの上端部よりも上側に形成された下部水素バリア膜110のみが除去される。その結果、下部水素バリア膜110は、溝部105aの中央部からメモリ領域200の外側の領域においては、該溝部105aの底部にのみ残存し、溝部105aの中央部からメモリ領域200の内側の領域においては、該溝部105aの内部とその上端よりも上側とに残存する。このため、下部水素バリア膜110の断面形状は、溝部105aとその近傍の領域で階段状となる。
【0084】
続いて、レジストマスク116を除去した後、スパッタ法により、露出した第1の層間絶縁膜105、露出した下部水素バリア膜110の階段状の端部、及び第2の層間絶縁膜108を覆うように、膜厚が約50nmの酸化チタンアルミニウムからなる上部水素バリア膜118を形成する。これにより、上部水素バリア膜118は、階段状であってその一部が半導体基板101の主面に向かう方向に延びる下部水素バリア膜110の端部と接続されて、基板面方向に延びる接続部119が形成される。さらに、本変形例においては、上述した製造方法における、幅が60nmで、深さが200nmの溝部105aに、膜厚が50nmの上部水素バリア膜118を形成する場合と比較して、上部水素バリア膜118と下部水素バリア膜110との接続距離は、半導体基板101の主面に垂直な方向に延びる部分については200nm+50nmと同一であるものの、階段状の部分、すなわち溝部105aの加工面の幅である約30nm(溝部105aの幅の約2分の1)に相当する分だけ接続距離を長くすることができる。
【0085】
また、下部水素バリア膜110を階段状に加工することにより、下部水素バリア膜110自体のエッチング量を少なくすることができるため、メモリ領域200と周辺回路領域210との段差が小さくなる。これにより、後工程において形成するアルミニウム(Al)又は銅(Cu)等からなる配線の形成を容易にする効果もある。
【0086】
次に、図7(c)に示すように、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、上部水素バリア膜118における下部水素バリア膜110との接続部119から外側(周辺回路領域210側)に残存する部分を除去する。続いて、CVD法により、露出した第1の層間絶縁膜105及び上部水素バリア膜118の上に、シリコン酸化膜を堆積する。その後、CMP法により、堆積されたシリコン酸化膜を平坦化して、酸化シリコンからなる第3の層間絶縁膜117を形成する。続いて、リソグラフィ法及びドライエッチング法により、周辺回路領域210に、第3の層間絶縁膜117及び第1の層間絶縁膜105を貫通して、MOSトランジスタ220の不純物拡散層103を露出する、径が約110nmのコンタクトホールを形成する。その後、CVD法により、第3の層間絶縁膜117の上に、膜厚が約5nmのチタン膜、膜厚が約7nmの窒化チタン膜及び膜厚が約90nmのタングステン膜をコンタクトホールに充填するように順次堆積する。続いて、CMP法により、堆積した金属膜における第3の層間絶縁膜117の上に残る部分を除去する。これにより、第3の層間絶縁膜117及び第1の層間絶縁膜105に、MOSトランジスタ220の不純物拡散層103と電気的に接続される第2のコンタクトプラグ120が形成される。
【0087】
続いて、スパッタ法により、第2のコンタクトプラグ120を含む第3の層間絶縁膜117の上に、膜厚が約10nmのチタン膜、膜厚が約50mの窒化チタン膜、膜厚が約500nmのアルミニウム膜及び膜厚が約50nmの窒化チタン膜を順次成膜する。その後、成膜された金属積層膜に対して、ドライエッチング法によりパターニングを行なって、金属積層膜からなり、且つ第2のコンタクトプラグ120と接続された配線121を形成する。
【0088】
これ以降は、図示はしていないが、公知の製造プロセスにより、多層配線の形成、保護膜の形成及びパッドの形成等の工程を経て、所望の半導体記憶装置を得る。
【0089】
本実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法の一変形例の特徴は、メモリ領域200と周辺回路領域210との境界部の近傍において、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118の接続部119の長さが下部水素バリア膜110の膜厚以上となるように形成されている。その上、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118の接続部119の接続面が、半導体基板101の主面にほぼ垂直な方向に向かう部分と半導体基板101の主面にほぼ平行な方向に向かう部分とによって階段状に形成されていることにある。
【0090】
このような構成とすることにより、製造工程中に水素が浸入する経路となり易い水素バリア膜110、118同士の接続部119の接続距離が長くなるため、水素の浸入が抑止される。その上、水素バリア膜110、118同士の接続部119の基板面と平行な方向の接続距離を短くすることができるため、メモリ領域200における占有面積の増大を防止することができる。
【0091】
従って、メモリ領域200の面積を大きく広げることなく、下部水素バリア膜110と上部水素バリア膜118との接続部119の接続距離を十分に確保できるため、容量絶縁膜113が強誘電体からなる場合には、誘電率の変化及びヒステリシス特性の劣化等が抑制されて、不揮発性メモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。また、容量絶縁膜113が高誘電体からなる場合には、誘電率の変化等が抑制されることにより、通常のメモリ装置としての性能の劣化を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る半導体記憶装置及びその製造方法は、キャパシタの周囲を覆う下部水素バリア膜と上部水素バリア膜とによって容量絶縁膜の水素による劣化が確実に防止できると共に、下部水素バリア膜と上部水素バリア膜との接続部によるキャパシタ形成領域の面積の増大を防止することが可能となり、特に、強誘電体又は高誘電体を容量絶縁膜とするキャパシタを水素バリア膜で被覆した半導体記憶装置及びその製造方法等に有用である。
【符号の説明】
【0093】
101 半導体基板
102 素子分離領域
103 不純物拡散層
104 ゲート電極
104A サイドウォール絶縁膜
105 第1の層間絶縁膜
105a 溝部
108 第2の層間絶縁膜
109 第1コンタクトプラグ
110 下部水素バリア膜
110a 下部水素バリア膜の端面
112 下部電極
113 容量絶縁膜
114 上部電極
115 キャパシタ
116 レジストマスク
117 第3の層間絶縁膜
118 上部水素バリア膜
118a 上部水素バリア膜の端面
119 接続部
121 配線
122 下部水素バリア膜の境界
123 上部水素バリア膜の境界
200 メモリ領域
210 周辺回路領域
220 MOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上に形成された下部水素バリア膜と、
前記下部水素バリア膜の上に形成され、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタと、
前記キャパシタの上方及び側方を覆うと共に、前記キャパシタの周辺領域において前記下部水素バリア膜と接続される接続部を有する上部水素バリア膜とを備え、
前記接続部における接続面は、前記半導体基板の主面に向かう方向に延びていることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記接続部の接続長さは、少なくとも前記下部水素バリア膜の膜厚よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記接続部における接続面は、前記半導体基板の主面に対して垂直であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記半導体基板の主面に対して垂直な方向に延びる垂直部分と前記半導体基板の主面に対して平行な方向に延びる平行部分とからなる階段状を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記キャパシタは複数であって、前記半導体基板の上に前記複数のキャパシタが行列状に配置され、
前記下部水素バリア膜及び上部水素バリア膜は、前記複数のキャパシタを一括に覆っており、
前記接続部は、前記複数のキャパシタの周囲に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記下部水素バリア膜は、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、珪化酸化チタン又は珪化酸化タンタルからなることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記上部水素バリア膜は、酸化チタンアルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタルアルミニウム、珪化酸化チタン又は珪化酸化タンタルからなることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記容量絶縁膜は、SrBi(Ta1−xNb、Pb(ZrTi1−x)O、(BaSr1−x)TiO、(BiLa1−xTi12(但し、xは、0≦x≦1である。)又はTaからなることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
半導体基板の上に第1の層間絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1の層間絶縁膜の上部で且つキャパシタ形成領域の周囲に溝部を選択的に形成する工程(b)と、
前記溝部を含む前記第1の層間絶縁膜の上に、下部水素バリア膜を形成する工程(c)と、
前記下部水素バリア膜の上における前記キャパシタ形成領域に、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタを形成する工程(d)と、
前記キャパシタを含む前記下部水素バリア膜の上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程(e)と、
前記第2の層間絶縁膜の上に、前記キャパシタを覆うと共に端部が前記溝部の中央部に位置するマスクを選択的に形成する工程(f)と、
前記マスクを用いて、前記第2の層間絶縁膜、下部水素バリア膜、及び第1の層間絶縁膜の上部に対してエッチングを行う工程(g)と、
前記工程(g)よりも後に、前記マスクを除去し、前記第2の層間絶縁膜及び露出した前記第1の層間絶縁膜の上に上部水素バリア膜を形成する工程(h)とを備え、
前記工程(c)において、前記下部水素バリア膜は、前記第1の層間絶縁膜の前記溝部に埋め込むように形成し、
前記工程(h)において、前記上部水素バリア膜は、前記溝部に残存する前記下部水素バリア膜の露出面に沿って形成されることにより、前記キャパシタの周辺領域において前記下部水素バリア膜と接続される接続部が形成され、前記接続部における接続面は、前記半導体基板の主面に向かう方向に延びるように形成されることを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板の上に第1の層間絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記第1の層間絶縁膜の上部で且つキャパシタ形成領域の周囲に溝部を選択的に形成する工程(b)と、
前記溝部を含む前記第1の層間絶縁膜の上に、下部水素バリア膜を形成する工程(c)と、
前記下部水素バリア膜の上における前記キャパシタ形成領域に、強誘電体又は高誘電体からなる容量絶縁膜を含む少なくとも1つのキャパシタを形成する工程(d)と、
前記キャパシタを含む前記下部水素バリア膜の上に、第2の層間絶縁膜を形成する工程(e)と、
前記第2の層間絶縁膜の上に、前記キャパシタを覆うと共に端部が前記溝部の中央部に位置するマスクを選択的に形成する工程(f)と、
前記マスクを用いて、前記第2の層間絶縁膜、下部水素バリア膜、及び第1の層間絶縁膜の上部に対してエッチングを行う工程(g)と、
前記工程(g)よりも後に、前記マスクを除去し、前記第2の層間絶縁膜及び露出した前記第1の層間絶縁膜の上に上部水素バリア膜を形成する工程(h)とを備え、
前記工程(c)において、前記下部水素バリア膜は、前記第1の層間絶縁膜の前記溝部に埋め込むように形成し、
前記工程(g)において、前記下部水素バリア膜は、該下部水素バリア膜の膜厚分のみを除去し、
前記工程(h)において、前記上部水素バリア膜は、前記溝部に残存する前記下部水素バリア膜の露出面に沿って形成されることにより、前記キャパシタの周辺領域において前記下部水素バリア膜と接続される接続部が形成され、前記接続部における接続面は、前記半導体基板の主面に向かう方向に延びるように形成され、且つ、前記半導体基板の主面に対して垂直な方向に延びる垂直部分と前記半導体基板の主面に対して平行な方向に延びる平行部分とからなる階段状となることを特徴とする半導体記憶装置の製造方法。
【請求項11】
前記接続部の接続長さは、少なくとも前記下部水素バリア膜の膜厚よりも長いことを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体記憶装置の製造方法。
【請求項12】
前記キャパシタは、その複数が前記半導体基板の上に行列状に配置され、
前記下部水素バリア膜及び上部水素バリア膜は、前記複数のキャパシタを一括に覆っており、
前記接続部は、前記複数のキャパシタの周囲に形成されていることを特徴とする請求項9〜11のうちのいずれか1項に記載の半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−124478(P2011−124478A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282676(P2009−282676)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】