説明

半導体送受信装置システム、メモリカードおよびメモリカードホスト機器

【課題】インピーダンス調整、ドライブ能力調整の柔軟性があり、かつ高速な信号伝送が可能な半導体送受信装置システムを小面積にて得ること。
【解決手段】双方向に信号の送受信を行なう半導体送受信装置システムであって、1つのマスター半導体送受信装置と少なくとも1つのスレーブ半導体送受信装置で構成され、前記マスター半導体送受信装置、前記スレーブ半導体送受信装置ともに信号の送受信を行なうための送信回路と受信回路と、伝送線路とのインピーダンスの整合を図る終端回路を具備し、前記マスター半導体送受信装置のみに信号駆動用の電流源を持たせる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速な信号伝送を可能にする半導体送受信装置システムであって、メモリカードなどの実装面積が制約される部分に搭載され、かつ様々なタイプのホスト機器に接続されるインターフェースにおいて、実装面積を抑え、かつインピーダンス整合を柔軟に図れる半導体技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型なSDメモリカード、メモリースティックなどの半導体メモリカードがブリッジメディアとして、PC、デジタルカメラ、デジタルオーディオ、携帯電話などに使用され、高精細な画像ファイル、動画などを扱うようになってきたため、記憶容量も年々増加してきている。それに伴って、大容量なデータを瞬時に移動できるように、データ転送レートの高速化が望まれているが、半導体メモリカードは小型であることが特徴のため、安易にバス幅を拡張して転送レートを向上させることができない。
【0003】
PCあるいはAV機器においては、USB、SerialATA、HDMIなどの高速シリアルインターフェース技術が広く浸透し、転送レートもGHzオーダーまで高速化されてきているが、IF部の面積および電力消費は大きく、小型である半導体メモリカードにそのまま高速シリアルインターフェース技術を導入することは困難である。また、半導体メモリカードは、PC、AV機器、モバイル機器、家電機器と幅広く使われるため、高速シリアルインターフェースにおいて重要となるインピーダンス調整機能の柔軟性と、ドライブ能力の柔軟性が要求される。
【0004】
メモリカードとして、小型であり、かつインピーダンス調整、ドライブ能力の柔軟性がある特許は知られていないが、半導体デバイスとしては、特許文献1に示されているように、受信側半導体デバイスに内蔵された終端抵抗と伝送線路との間でインピーダンス整合をとるために、伝送線路のインピーダンス値に比例したリファレンス抵抗を受信側半導体デバイスに外付けし、終端抵抗を、抵抗素子とMOSトランジスタのON抵抗で構成し、リファレンス抵抗を参照して、終端抵抗を調整する構成としたものなどがある。
【0005】
この特許のようにインピーダンス調整の柔軟性だけを単独にあげる特許は提案されているが、これだけではドライブ能力の柔軟性はなく、一般的に図5に示すように信号駆動用の電流源は、マスター機器、スレーブ機器ともに内蔵され、単純にドライブ能力を可変にするために複数の駆動電流源を内蔵してドライブ能力の柔軟性を持たせると、実装面積が大きくなり、小型化が要求されるメモリカードのインターフェースとしては適さないという課題がある。
【特許文献1】特開2002−344300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するものであり、メモリカードなどの小型機器に導入可能で、PC、AV機器、モバイル機器、家電機器などのメモリカードホスト機器に応じて、インピーダンス調整、ドライブ能力の柔軟性な半導体送受信装置システム、メモリカードおよびメモリカードホスト機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、双方向に信号の送受信を行なう半導体送受信装置システムであって、マスター半導体送受信装置と少なくとも1つのスレーブ半導体送受信装置で構成され、前記マスター半導体送受信装置、前記スレーブ半導体送受信装置ともに信号の送受信を行なうための送信回路と受信回路と、伝送線路とのインピーダンスの整合を図る終端回路を具備し、前記マスター半導体送受信装置のみに信号駆動用の電流源を持たせることによって、スレーブ半導体送受信装置のインターフェース回路の実装面積を小さくすることができる。
【0008】
また、マスター半導体送受信装置は、信号駆動用の電流源を持ったオープンドレインタイプの送信回路と、信号駆動用の電流源を持った終端回路からなり、スレーブ半導体送受信装置は、オープンドレインタイプの送信回路と、終端回路からなること特徴とすることによって、マスター半導体送受信装置からの電流供給だけで、双方向にインピーダンス整合を図りつつ通信することが可能となる。
【0009】
また、マスター半導体送受信装置からスレーブ半導体送受信装置へ信号を伝送する場合は、スレーブ半導体送受信装置の終端回路を働かせて伝送線路とのインピーダンス整合を図り、マスター半導体送受信装置の送信回路の電流源をON/OFFすることによって信号伝送を行なう、また、スレーブ半導体送受信装置からマスター半導体送受信装置へ信号を伝送する場合は、マスター半導体送受信装置の終端回路を働かせて伝送線路とのインピーダンス整合を図り、かつ信号駆動用の電流を働かせて信号駆動用の電流を供給し、スレーブ半導体送受信装置の送信回路をON/OFFすることによって信号伝送を行なうことによって、より電流源の電流を小さくすることが可能となり、実装面積および不要輻射などが小さくできる。
【0010】
また、繋がるマスター半導体送受信装置に応じて、スレーブ半導体送受信装置の終端回路のインピーダンスを変更させて双方向の信号伝送を行なうことによって、スレーブ側の実装面積を最小に抑えた状態で、マスター半導体送受信装置の設計の違いだけでインピーダンス調整、ドライブ能力の調整を柔軟に図ることができる。
【0011】
また、上記スレーブ半導体送受信装置の特徴を持ったメモリカードにすることによって、小型であり、かつメモリカードホスト機器とのインピーダンス整合が柔軟に対応できるインターフェースが構築可能となる。
【0012】
また、上記マスター半導体送受信装置の特徴を持ったメモリカードホスト機器にすることによって、メモリカードホスト機器とのインピーダンス整合、ドライブ能力を柔軟に図れるメモリカードとのインターフェースが構築可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体送受信装置システムによれば、スレーブ半導体送受信装置の回路部の実装面積を小さくすることができる。
【0014】
また、本発明の半導体送受信装置システムによれば、マスター半導体送受信装置からの電流供給だけで、双方向にインピーダンス整合を図りつつ通信することが可能となる。
【0015】
また、本発明の半導体送受信装置システムによれば、より電流源の電流を小さくすることが可能となり、実装面積および不要輻射などが小さくできる。
【0016】
また、本発明の半導体送受信装置システムによれば、スレーブ側の実装面積を最小に抑えた状態で、マスター半導体送受信装置の設計の違いだけでインピーダンス調整、ドライブ能力の調整を柔軟に図ることができる。
【0017】
また、本発明のメモリカードによれば、小型であり、かつメモリカードホスト機器とのインピーダンス整合が柔軟に対応できるインターフェースが構築可能となる。
【0018】
また、本発明のメモリカードホスト機器によれば、メモリカードホスト機器とのインピーダンス整合、ドライブ能力を柔軟に図れるメモリカードとのインターフェースが構築可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体送受信装置システムの構成を示す図である。
【0021】
図1において、伝送線路100の両端に、マスターとなるマスター半導体送受信装置101とスレーブとなるスレーブ半導体送受信装置102が接続されている。
【0022】
マスター半導体送受信装置101、スレーブ半導体送受信装置102は、各々、伝送線路100とのインピーダンスの整合を図るための終端回路103、104と、信号を送信するためのオープンドレインタイプの送信回路107、108と、信号を受信するための受信回路105、106を持つ。
【0023】
マスター半導体送受信装置101の詳細な構成としては、終端回路103は、終端電位109にインピーダンス調整のための終端抵抗111が接続され、かつスレーブ側が信号を送信するときの信号駆動用の電流源113が終端抵抗111に接続され、送受信によって、終端回路103を伝送線路100から切り離すためのスイッチ115が電流源113に接続された構成となる。送信回路107は、マスター側が信号を送信するときの信号駆動用の電流源119がグランドに接続され、マスター側から送信する1、0の信号を伝送線路100に与えるためのスイッチ117がマスター側の信号を送信するときの信号駆動用の電流源119に接続される構成となる。
【0024】
スレーブ半導体送受信装置102の詳細な構成としては、終端回路104は、終端電位110にインピーダンス調整のための終端抵抗112が接続され、送受信によって、終端回路104を伝送線路から切り離すためのスイッチ116が終端抵抗112に接続される。送信回路108は、スレーブ側から送信する1、0の信号を伝送線路100に与えるためのスイッチ118がグランド122に接続される構成となる。
【0025】
マスター半導体送受信装置101からスレーブ半導体送受信装置102に信号を送信する場合、マスター側の終端回路103はスイッチ115によって伝送線路100から切り離され、受信端のスレーブ側の終端回路104はスイッチ116によって伝送線路100に接続されてインピーダンス整合が図られる。また、マスター側のスイッチ117をON/OFFさせて、電流源119による電流吸収/電流開放が生じることによって、スレーブ側の受信回路106に信号信号を伝達させる。なお、この時のスレーブ側の送信回路108はOFF状態にして伝送線路を開放しておく。
【0026】
スレーブ半導体送受信装置102からマスター半導体送受信装置101に信号を送信する場合、スレーブ側の終端回路104はスイッチ116によって伝送線路100から切り離され、受信端のマスター側の終端回路103はスイッチ115によって伝送線路100に接続されてインピーダンス整合が図られ、かつ電流源113によって、伝送線路に電流を供給する。また、スレーブ側のスイッチ118をON/OFFさせて、伝送線路100に供給されている電流を電流吸収/電流開放させることによって、マスター側の受信回路105に信号を伝達させる。なお、この時のマスター側の送信回路107はOFF状態にして伝送線路を開放しておく。
【0027】
これにより、本発明では、マスター側だけに信号伝送用の電流源を配置することによって、双方向の信号伝送を高品位に行なうことが可能となり、スレーブ半導体送受信装置のインターフェース部の実装面積を小さくすることができる。また、信号の送受信によって、終端抵抗を的確に伝送線路に切り離すことのよって、電流源の電流を小さくすることができる。
【0028】
なお、本実施の形態において、シングルエンド伝送での例を示したが、図2、または図6に示すような差動伝送のような構成してもよく、これにより、より電流源の電流を小さくすることが可能となり、実装面積および不要輻射などが小さくできる。
【0029】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における半導体送受信装置システムの構成を示す図である。
【0030】
この例では、スレーブ半導体送受信装置302の終端回路304の終端抵抗312を可変抵抗タイプとしている。
【0031】
これにより、ドライブ能力の調整の方は、マスター半導体装置の仕様に応じて電流源を最適に設計すればよく、スレーブ半導体送受信装置のインピーダンス調整のみを接続されるマスター機器および伝送線路に応じて調整すればよく、スレーブ側の実装面積を最小に抑えた状態で、マスター半導体送受信装置の設計の違いだけでインピーダンス調整、ドライブ能力の調整を柔軟に図ることができる。
【0032】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3におけるメモリカードホスト機器およびメモリカードの構成を示す図である。
【0033】
この例では、マスター機器として、メモリカードホスト機器451、453の2台と、スレーブ機器として、メモリカード452を示し、マスター機器側のメモリカードIF部455、457や、スレーブ側の送受信部456の回路構成は実施の形態1および2で示した回路構成をしている。また、メモリカードホスト機器451のメモリカードIF部455の終端抵抗インピーダンスは50Ω、電流源の電流量は4mA、メモリカードホスト機器453のメモリカードIF部457の終端抵抗インピーダンスは200Ω、電流源の電流量は1mAとする。
【0034】
メモリカード452の構成としては、メモリカードホスト機器451、453のメモリカードIF部455、457と接続するための端子群454、終端抵抗、送信回路、受信回路からなる送受信部456、データの蓄積を行なうデータ記憶部460、終端抵抗値の設定が行なわれる終端抵抗値レジスタ462と、メモリカードホスト機器451、453とのデータのやり取りや、送受信部456、データ記憶部460、終端抵抗値レジスタ462の各種制御を行なう制御部460で構成される。
【0035】
メモリカード452が、メモリカードホスト機器451に接続された場合、最初は低速なモードでメモリカードホスト機器451とデータのやり取りを行ない、メモリカードホスト機器451から終端抵抗値レジスタ462にメモリカードホスト機器451との接続で最適な50Ωのインピーダンス値が設定されると、送受信部456の可変抵抗の値が50Ωとなり、それ以降、インピーダンス整合が図られるため高速なモードでのアクセスが可能となる(この場合、50Ωx4mA=200mVでのアクセスとなる。)。
【0036】
また、メモリカード452が、メモリカードホスト機器453に接続された場合、上記と同様に、最初は低速なモードでメモリカードホスト機器453とデータのやり取りを行ない、メモリカードホスト機器453から終端抵抗値レジスタ462にメモリカードホスト機器453との接続で最適な200Ωのインピーダンス値が設定されると、送受信部456の可変抵抗の値が200Ωとなり、それ以降、インピーダンス整合が図られるため高速なモードでのアクセスが可能となる。この場合、メモリカードホスト機器451と同様に200mVの信号振幅を得るためには、ドライブ能力1mAの電流量があればよい。
【0037】
これにより、メモリカードを小型にでき、かつメモリカードホスト機器とのインピーダンス整合、ドライブ能力を柔軟に図れるメモリカードとのインターフェースが構築可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる半導体送受信装置システムは、信号の反射やクロストークが問題となる高速信号伝送技術において、特にメモリカードなどのI/O回路部の実装面積が小さいことが要求される分野でのインターフェース技術として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体送受信装置システムの構成図
【図2】本発明の実施の形態1(差動伝送)における半導体送受信装置システムの構成図
【図3】本発明の実施の形態2における半導体送受信装置システムの構成図
【図4】本発明の実施の形態3におけるメモリカードホスト機器およびメモリカードの構成図
【図5】従来の構成図
【図6】本発明の実施の形態1(差動伝送)における半導体送受信装置システムの構成図
【符号の説明】
【0040】
100,200 伝送線路
101,201,601 マスター半導体送受信装置
102,202,302,602 スレーブ半導体送受信装置
103,103’,603,104,104’,604 終端回路
105,205,605,106,206,606 受信回路
107,107’,607,108,108’,608 送信回路
109,110 終端電位
111,112,312 終端抵抗
113,119 電流源
115,116,117,117’,118,118’ スイッチ
121,122 グランド
451,453 メモリカードホスト機器
452 メモリカード
454 端子部
455,457 メモリカードIF部
456 送受信部
458 制御部
460 データ記憶部
462 終端抵抗値レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向に信号の送受信を行なう半導体送受信装置システムであって、マスター半導体送受信装置と少なくとも1つのスレーブ半導体送受信装置で構成され、前記マスター半導体送受信装置、前記スレーブ半導体送受信装置ともに信号の送受信を行なうための送信回路と受信回路と、伝送線路とのインピーダンスの整合を図る終端回路を具備し、前記マスター半導体送受信装置のみに信号駆動用の電流源を持たせることを特徴とする半導体送受信装置システム。
【請求項2】
マスター半導体送受信装置は、信号駆動用の電流源を持ったオープンドレインタイプの送信回路と、信号駆動用の電流源を持った終端回路からなり、スレーブ半導体送受信装置は、オープンドレインタイプの送信回路と、終端回路からなること特徴とする請求項1記載の半導体送受信装置システム。
【請求項3】
マスター半導体送受信装置からスレーブ半導体送受信装置へ信号を伝送する場合は、スレーブ半導体送受信装置の終端回路を働かせて伝送線路とのインピーダンス整合を図り、マスター半導体送受信装置の送信回路の電流源をON/OFFすることによって信号伝送を行なう、また、スレーブ半導体送受信装置からマスター半導体送受信装置へ信号を伝送する場合は、マスター半導体送受信装置の終端回路を働かせて伝送線路とのインピーダンス整合を図り、かつ信号駆動用の電流を働かせて信号駆動用の電流を供給し、スレーブ半導体送受信装置の送信回路をON/OFFすることによって信号伝送を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体送受信装置システム。
【請求項4】
繋がるマスター半導体送受信装置によって、スレーブ半導体送受信装置の終端回路のインピーダンスを変更させて双方向の信号伝送を行なうことを特徴とする請求項1から3いずれかに記載の半導体送受信装置システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4いずれかに記載のスレーブ半導体送受信装置の特徴を持ったメモリカード。
【請求項6】
請求項1から請求項4いずれかに記載のマスター半導体送受信装置の特徴を持ったメモリカードホスト機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−306267(P2007−306267A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132165(P2006−132165)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】