説明

半導体集積回路及びその制御方法

【課題】外部から故障原因を特定可能な半導体集積回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体集積回路100は、電源投入を検出する検出信号Sに基づいて、リセット信号Sを出力するパワーオンリセット回路11と、リセット信号Sに基づいて、初期設定が行われる初期化対象回路12と、パワーオンリセット回路12から出力されたリセット信号S及び初期値が設定された初期化対象回路11の出力信号Sに基づいて、リセット信号Sをモニタするパワーオンリセットモニタ信号Sを生成して出力するパワーオンリセットモニタ回路13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リセット機能を有する論理回路を含んだ半導体集積回路及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
論理回路を含む半導体集積回路を始動させる場合には、電源投入時に回路内部の信号状態、例えば論理回路の出力信号の状態等をHighもしくはLowに初期設定することが必要である。具体的には、伝送経路の入出力方向を決める回路部や、データ記憶領域に対して、リセット信号を入力し、初期設定する必要がある。ここでは、初期設定が必要な論理回路を初期化対象回路と称する。初期化対象回路に対してリセット信号を与える方法については、半導体集積回路の外部からリセット信号を与える方式と、電源投入時に半導体集積回路内部のパワーオンリセット生成回路においてリセット信号を生成し、生成したリセット信号を初期化対象回路に与える方式がある。
【0003】
半導体集積回路の内部でリセット信号を生成する方式においては、リセット信号を外部に出力できない構成では、どのようなリセット信号が生成されているかを判断することができない。そのため、外部インタフェイスから初期化対象回路の状態を確認することによってのみ電源投入時にリセット機能が有効になっているか判断することになる。また、リセット信号が外部に出力できない回路では、初期化対象回路の動作に異常が発生している場合であっても、初期化対象回路自身の故障なのか、若しくはパワーオンリセット回路の故障なのかを判断することができない。
【0004】
特許文献1には、半導体集積回路に含まれる順序回路の初期化が完了したか否かを示す初期化完了判定信号を外部に出力可能な回路構成が開示されている。図12は、特許文献1に開示された回路の一部を示す図である。パワーオンリセット信号生成部101は、フリップフロップ回路102に対して初期値を設定するパワーオンリセット信号PONを出力する。初期化完了判定回路103は、内部にフリップフロップ回路102の初期化動作を模擬する初期化模擬回路を備え、初期化模擬回路の初期化が完了したことを検出して初期化完了信号RJを出力する。初期化完了信号RJは、フリップフロップ回路102の初期化が完了したことを示す信号であり、この初期化完了信号RJは、パワーオンリセット信号生成部101に入力される。パワーオンリセット信号生成部101は、例えば最後段のフリップフロップ回路102の初期化が完了したこと知らせる初期化完了信号RJが入力されると、パワーオンリセット信号PONをアクティブレベルに設定する。
【0005】
セレクタ104には、一方に初期化完了信号RJが入力され、他方にデータ信号DOUTが入力されている。セレクタ104は、テスト信号TESTに基づいて、初期化完了信号RJ又はデータ信号DOUTを選択し、データ出力/テスト出力兼用端子105から出力する。通常動作時には、半導体集積回路の内部で生成された出力信号DOUTがデータ出力/テスト出力兼用端子105から出力される。また、テスト時には、セレクタ104にアクティブレベルのテスト信号TESTを入力することによって、初期化完了信号RJをデータ出力/テスト出力兼用端子105から出力することができる。
【特許文献1】特開2002−43918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された回路では、初期化完了信号RJ又はデータ信号DOUTのうちいずれか一方しか外部に出力できず、テスト信号TESTによってセレクタ104の出力を切り替えてそれぞれの信号を出力しなければ、故障原因がパワーオンリセット回路にあるのか、初期化対象回路にあるのかを判断することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体集積回路の一態様は、電源投入を検知したことを示す検出信号に基づいて、リセット信号を出力するパワーオンリセット回路と、前記リセット信号に基づいて、初期設定が行われる初期化対象回路と、前記パワーオンリセット回路から出力された前記リセット信号と、前記初期設定がされた前記初期化対象回路の出力信号に基づいて、前記初期設定が正常に実行されたか否かを示すパワーオンリセットモニタ信号を生成して出力するパワーオンリセットモニタ回路と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る半導体集積回路の一態様によれば、パワーオンリセット回路から出力されたリセット信号と初期設定がされた初期化対象回路の出力信号に基づいて、パワーオンリセットモニタ信号が生成されるため、パワーオンリセットモニタ信号をモニタすることで、故障の原因が、初期化対象回路にあるのか、若しくはパワーオンリセット回路にあるのかを特定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、半導体集積回路の外部から故障原因を特定できる半導体集積回路を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して本発明の最良な実施の形態について説明する。
[第1の実施形態]
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路の構成例を示す図である。本発明に係る半導体集積回路100は、パワーオンリセット回路11、初期化対象回路12、及びパワーオンリセットモニタ回路13を備えている。
【0012】
パワーオンリセット回路11は、半導体集積回路100の電源投入時に、初期化対象回路12に対してリセット信号Sを出力することにより、初期化対象回路12の初期設定を行うよう構成されている。パワーオンリセット回路11は、電源供給源10より電源投入を検出する検出信号Sに基づいて、初期化対象回路12に対して初期値を設定するためのリセット信号Sを出力する。
【0013】
初期化対象回路12は、電源投入時に初期設定が行われる回路である。初期化対象回路12は、順序回路を有する論理回路であり、パワーオンリセット回路11から入力されるリセット信号Sによって初期設定がなされる。
【0014】
パワーオンリセットモニタ回路13は、パワーオンリセット回路11から出力されるリセット信号Sに基づいてパワーオンリセットモニタ信号Sを生成するよう構成されている。後述するように、パワーオンリセットモニタ信号Sをモニタすることで、リセット信号Sの状態を検知することができる。
【0015】
パワーオンリセットモニタ回路13には、更に、初期化された初期化対象回路12の出力信号Sが入力される。パワーオンリセットモニタ回路13は、リセット信号S及び出力信号S基づいて、パワーオンリセットモニタ信号Sを生成する。このパワーオンリセットモニタ信号Sは、半導体集積回路100に設けられた任意の出力機能端子14から半導体集積回路100の外部に出力される。
【0016】
パワーオンリセットモニタ回路13は、インバータ131及び論理和回路132を備えている。インバータ131は、パワーオンリセット回路11から出力されるリセット信号Sを反転して論理和回路132に出力する。論理和回路132は、一方にインバータ131の出力を入力し、他方に初期化対象回路12の出力信号Sを入力し、論理和をとってパワーオンリセットモニタ信号Sとして出力機能端子14に出力する。
【0017】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路100の有する初期化対象回路12の具体例を示す図である。初期化対象回路12は、例えば、順序回路21〜23、及び組合せ回路24、25を備えている。順序回路21〜23は、出力が過去の回路の状態に依存する回路である。組合せ回路24、25は、入力の状態に応じて出力が決定される回路である。順序回路21〜23は、例えば、フリップフロップ、ラッチ、カウンタ又はレジスタ等であるが、ここでは説明のため、順序回路をフリップフロップ回路として説明する。
【0018】
順序回路21〜23は、データを保持するデータ保持機能と、保持されたデータをリセットするリセット機能を有したフリップフロップ回路である。なお、順序回路21〜23の詳細な構成については後述するものとする。組合せ回路24及び25は、入力信号の任意の状態によって出力が決まる論理ゲート群である。組合せ回路24は、入力機能端子A〜Cから入力される信号の状態に応じて、順序回路21〜23のそれぞれのデータ入力端子(D)にデータを出力するよう構成されている。入力機能端子A、B、Cは、半導体集積回路100の内部、外部から入力される任意の信号入力端子である。
【0019】
クロック供給源20は、クロックを生成し、順序回路21〜23のそれぞれのクロック入力端子(CLK)に生成したクロックを出力する。なお、クロック供給源20は、半導体集積回路100の内部にあっても外部にあってもよい。
【0020】
順序回路21の出力端子(Q)は、出力機能端子Aに接続されている。順序回路21の出力は、出力機能端子Aを介して論理和回路132に入力される。順序回路22の出力端子(Q)及び順序回路23の出力端子(Q)は組合せ回路25に接続されている。組合せ回路25の出力側には、出力機能端子B、Cが接続されている。すなわち、出力機能端子A、B、Cは、前段回路に依存する任意の信号出力端子である。
【0021】
図3は、図2の順序回路21〜23の端子と真理値表を示す図である。図3に示す順序回路21〜23は、遅延フリップフロップ(delay flip−flop)の代表的なものであり、一般的にリセット入力を有するD−FFと呼ばれる回路である。図3において、Dはデータ信号の入力端子、CLKはクロック信号の入力端子、Qはデータ信号の出力端子、RBは負論理のリセット信号Sの入力端子を示している。
【0022】
この順序回路21〜23は、入力端子CLKから入力されるクロック信号の状態がLowからHighに変化するときに、入力端子Dから入力されたデータ信号の状態を保持し、出力端子Qに出力する機能を有している。順序回路21〜23は、入力端子RBの入力がLowの状態において、入力端子Dに入力されるデータ信号の入力状態及び入力端子CLKに入力されるクロック信号の入力状態に依らずに、出力端子QをLowに設定する機能を有している。
【0023】
具体的に、真理値表に従って順序回路21〜23のデータの入出力について説明する。リセット信号が「1」(例えば、High)のときに、入力されたデータ信号が「0」(例えば、Low)であれば、クロック信号の立ち上がりにおいて、出力端子Qからデータ信号「0」が出力される。リセット信号が「1」のときに、入力されたデータ信号が「1」であれば、クロック信号の立ち上がりにおいて、データ信号「1」が出力される。リセット信号が「1」のときに、クロック信号が立ち下がったに場合は、入力されたデータ信号の状態に関わらず、直前のクロック立ち上がりの際に設定された状態を保持する。また、リセット信号が「0」のときは、クロック信号の状態に関わらず、データ信号「0」が出力される。
【0024】
図4は、図2の一部を示す図であり、前段の組合せ回路24に依らずに初期値が設定される組合せ回路25の例を示している。図4には、図2における組合せ回路25と、その前段の順序回路22、23のみが示されている。順序回路22、23は、図3に示された真理値表によって入出力が表されるフリップフロップ回路である。組合せ回路25は、例えば、論理積回路251、252を備えている。
【0025】
論理積回路251には、一方に順序回路22の出力信号Qが入力され、他方に順序回路23の出力信号Qが入力され、入力された2つの信号の論理積をとって出力機能端子Bに出力する。論理積回路252は、一方に前段の組合せ回路24から順序回路23に入力されるデータ信号Dを入力し、他方に順序回路23の出力信号Qを入力し、入力された2つの信号の論理積をとって出力機能端子Cに出力する。
【0026】
このように構成された回路では、電源投入時にパワーオンリセット回路11が有効に働くと、順序回路22、23のへのリセット機能が動作し、順序回路22、23の各々の出力Qは、前段の組合せ回路24に関わらずLowとなる。これにより、論理積回路251には、いずれの入力端子にもLowが入力されるため、論理積回路251から出力機能端子Bに対してLowレベルの信号が出力される。また、論理積回路252の一方には、順序回路23からLowレベルの信号が入力されるため、他方の入力である前段の組合せ回路24の出力に関わらず、論理積回路252から出力機能端子CにLowレベルの信号が出力される。このように、組合せ回路25の前段の順序回路22、23の初期設定を行うことで、前段の組合せ回路24の出力に依らずに組合せ回路25の出力を決定することができる。
【0027】
次に、このように構成された半導体集積回路100の動作について説明する。図5は、電源電圧、リセット信号S、初期化対象回路12の出力信号S、インバータ131の出力信号、パワーオンリセットモニタ信号Sのそれぞれにおける、時間と電圧の関係を示す略図である。
【0028】
電源が投入され、半導体集積回路100へ供給される電源電圧が任意の電圧V2に達したと判定すると、パワーオンリセット回路11は、Lowレベルの信号を生成し初期化対象回路12に出力する。このLowレベルの信号がリセット信号Sとなる。
【0029】
電源投入後は電源電圧が次第に上昇し、時間t1で回路内部の素子が動作を開始する。電源電圧の立ち上がりは、電源供給源の出力と、接地との間に接続される負荷容量(図示せず)により決定される。時間t1は、負荷容量に電荷が蓄積され、電圧V2で示すように安定した電圧が供給されるまでに要する時間であり、インバータ131が論理ゲートとして正常動作ができる電源電圧に至った時間を示している。
【0030】
時間t1で論理ゲートが正常に動作すると、順序回路21〜23のリセット端子RBには、Lowレベルのリセット信号Sが入力される。図3の真理値表により、Lowレベルのリセット信号Sが入力されると、順序回路21〜23は、出力端子QよりLowレベルの信号を出力する。ここで、一般的には、リセット端子RBにLowレベルの信号が入力されてからリセット動作が有効になるまでには一定の時間を要する。これは、半導体の特性に依存するためである。このリセット動作が有効になった時刻を時間t2とする。
【0031】
なお、時間t2までは、リセット信号Sが有効な状態に至っておらず、初期化対象回路12の出力信号Sは、Sで示すように不定状態と考えられる。すなわち、時間t2までは、Low状態とHigh状態である場合が発生すると考えられる。
【0032】
時間t3において、リセット信号Sの電圧は、Lowレベルから上がり始め、時間t4で電圧V4に至る。電圧V4は、論理ゲートがHighレベルであると認識する電圧である。その後、リセット信号Sは、更に電圧が電圧V3まで上昇し、電圧V3で安定状態となる。
【0033】
インバータ131の出力信号は、リセット信号Sを反転した信号であり、電源投入後時間t1でHighレベルとなる。そして、インバータ131の出力信号は、リセット信号Sが電圧V4に達した時間t4で反転しLowレベルとなる。
【0034】
なお、時間t3から時間t4の間は十分に長く、初期化対象回路12の初期値の設定が完了するのに十分な時間であるものとする。パワーオンリセットモニタ信号Sは、インバータ131の出力信号と、初期化対象回路12の出力信号Sの論理和であるため、パワーオンリセットモニタ信号Sは、不定状態Sを含む出力信号Sの状態に依らずにインバータ131の出力信号と同じとなる。
【0035】
時間t4で初期化対象回路12の初期設定は完了する。時間t4以降では、パワーオンリセット回路11の出力はHighレベルとなり、初期化対象回路12は通常の動作状態に遷移する。なお、時間t4以降のパワーオンリセットモニタ信号Sは、初期化対象回路12の外部より更にリセット信号RBが入力されない限りLowのままとなる。
【0036】
ここで、第1の実施形態におけるパワーオンリセットモニタ信号Sは、リセット信号Sそのものではなく、初期化対象回路12の出力信号Sにも依存する。そのため、パワーオンリセットモニタ信号Sをモニタしたとしても、初期化対象回路12が故障している等の状態では、リセット信号Sの状態を的確に把握できるわけではない。しかしながら、初期化対象回路12が故障している状態であっても、以下のように、パワーオンリセットモニタ信号Sに基づいてリセット信号Sの状態を検出することができる。
【0037】
図6及び図7は、初期化対象回路12に含まれる順序回路21が故障している場合のパワーオンリセットモニタ信号Sの状態を示す図である。初期化対象回路12(順序回路21)が故障している場合には、順序回路21の出力信号SがLow状態のままである場合と(図6)、High状態のままである場合(図7)の2通りがある。
【0038】
図6は、初期化対象回路12(順序回路21)の出力信号QがLowのままで、初期設定期間が過ぎても正常に動作しない場合における各信号における時間と電圧の関係のタイミングの略図である。なお、図6及び図7に示す各信号は、図5に示す信号のそれぞれに対応している。
【0039】
順序回路21の出力信号QがLowの状態のままでは、図5に示す初期化対象回路12の出力信号Sの不定状態Sは存在せず、常にLowの状態になる。この場合では、パワーオンリセットモニタ信号Sは、リセット信号Sの反転信号と同じとなる。そのため、図5に示す正常な状態と同じように、パワーオンリセットモニタ信号Sをモニタすることでリセット信号の動作が確認できる。
【0040】
図7は、初期化対象回路12の出力信号SがHigh状態のままで初期設定期間が過ぎても正常に動作しない場合における、各信号における時間と電圧の関係を示す略図である。図7に示すように、電源が投入されて時間t1に至ったときに、初期化対象回路12の出力信号Sは、Highレベルのままとなる。そのため、パワーオンリセットモニタ信号Sは、リセット信号Sの状態に依らずに、時間t1からHigh状態のままになる。
【0041】
このような状態では、パワーオンリセットモニタ信号Sをモニタしてもリセット信号Sの状態をモニタすることはできない。しなしながら、半導体集積回路100に設けられた出力機能端子14が2本以上であり、パワーオンリセットのモニタ機能を付加した以外の出力機能端子を動作させることが可能な構成であれば、初期化対象回路12の故障であるか、パワーオンリセット回路11の故障であるか判断することができる。すなわち、他の出力機能端子が正常に動作していれば、リセット状態は解除されていると判断でき、初期化対象回路12の故障であると判断することができる。
【0042】
このように、本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路100によれば、パワーオンリセット回路11から出力されるリセット信号Sと、初期化対象回路12の出力信号Sに基づいてパワーオンリセットモニタ信号Sが生成されるため、外部からパワーオンリセットモニタ信号Sをモニタすることで、リセット信号Sの状態及び出力信号Soの状態を把握することができる。これによって、故障原因がパワーオンリセット回路11の故障であるか、若しくは、初期化対象回路12の故障であるかを容易に特定することができる。また、リセット信号Sと出力信号Sの論理和をパワーオンリセットモニタ信号Sとして出力することで、従来のように、セレクタや、セレクタの出力を選択するテスト信号を入力する機能を設けなくて良く、回路規模を削減することができる。
【0043】
また、従来の回路では、製造バラつきによる初期化対象回路内に含まれる各回路のリセット信号の信号遅延の差を考慮するために、リセット信号の信号遅延量が最も大きくなると推定される箇所に、各回路の初期化完了を判定する回路を設置し、すべての回路の初期化が完了してからリセット信号を解除するよう構成されていた。
【0044】
すなわち、従来の回路では、1つの初期化対象回路に対して複数の初期化完了を判定する回路が設置されていた。しかしながら、現在では、製造バラつきが低減され、安定した素子容量を製造することが可能となったため、初期化完了を判定する回路を複数設けることは、回路規模が増大すると共に、回路構成が複雑となり故障を招きやすくなっている。
【0045】
これに対し、本実施形態に係る半導体集積回路100は、初期化対象回路12に対して、少なくとも1つのパワーオンリセットモニタ回路13を設ければよいため、初期設定が正常に行われたか否かを外部からモニタするための構成を省略でき、回路規模を大幅に削減することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、順序回路21〜23の出力信号Qをパワーオンリセットモニタ回路13に入力するよう構成しているが、順序回路21〜23の後段にある組合せ回路の出力決定が順序回路21〜23の出力Qに依存していれば、後段の組合せ回路の出力を、パワーオンリセットモニタ回路13に入力してもよい。このように順序回路の出力を直接パワーオンリセットモニタ回路13に入力しなくても、後段の組合せ回路を介して順序回路の出力を入力すれば、パワーオンリセットモニタ回路13に順序回路の出力を入力した場合と同じ結果を得ることができる。
【0047】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路200の構成について説明する。第2の実施形態の1つの特徴は、初期化対象回路83が接続される出力機能端子が、初期設定においてHighレベル若しくはHighインピーダンスに設定される場合であっても、リセット信号Sのモニタが可能なように構成した点にある。また、第2の実施形態の他の特徴は、1つの初期化対象回路83に対してパワーオンリセットモニタ回路13、81を複数設けた点にある。なお、全体構成については、第1の実施形態の図1と略同一であるためその説明を省略する。
【0048】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路200の全体構成例を示す図である。この半導体集積回路200は、1つの初期化対象回路83に対して複数のパワーオンリセットモニタ回路13、81を備えている。パワーオンリセットモニタ回路13については、第1の実施形態の構成と略同一構成を有しているためその説明を省略する。
【0049】
パワーオンリセットモニタ回路81は、接続された出力機能端子Cが初期状態においてHighもしくはHighインピーダンスである端子に接続される場合のリセット信号Sをモニタするための回路である。パワーオンリセットモニタ回路81は、論理積回路82を備えて構成されている。論理積回路82には、パワーオンリセット回路11から出力されるリセット信号Sと、初期化対象回路83に含まれる順序回路の出力信号Sが入力されている。パワーオンリセットモニタ回路81は、リセット信号Sと出力信号Sの論理積をとって、出力機能端子Cに出力するよう構成されている。
【0050】
図9は、図8に示す半導体集積回路200の有する初期化対象回路周辺の具体的な構成を示す図である。論理積回路82は、内部に複数の順序回路21、22及び91を備えている。順序回路21、22は、図3に示すように、初期化されることで後段にLowレベルの出力信号を出力するよう構成されたフリップフロップ回路である。一方、順序回路91は、初期化されることで後段にHighレベルの出力信号を出力するように構成されたフリップフロップ回路であり、その端子と真理値表は、図10に示す通りである。すなわち、順序回路91の出力信号QBは、図3に示す出力信号Qが反転したものである。
【0051】
次に、パワーオンリセットモニタ回路81の動作について説明する。図11は、パワーオンリセットモニタ回路81から出力されるパワーオンリセットモニタ信号Sの状態を説明するための図である。図11において、電圧V1〜V4、時間t1〜t4、及び不定状態Sは、それぞれ第1の実施形態で説明した通りであるため、その説明を省略する。
【0052】
時間t1において、電源電圧が立ち上がる。時間t2までは、順序回路91の出力は、HihgかLowかどちらになっているかは保証できない不定状態Sである。順序回路91は、図10で示すように、リセット信号RBにLowレベルの電圧が印加された場合に、出力信号QBはHighになるため、順序回路91が正常動作している場合には、時間t2に至ったときに、順序回路91の出力信号QBはHighになる。
【0053】
次に、パワーオンリセットモニタ回路81の出力であるパワーオンリセットモニタ信号Sは、パワーオンリセット回路11のリセット信号Sと順序回路91の出力信号Sの論理積を出力する。すなわち、パワーオンリセットモニタ信号Sは、順序回路91の出力信号S(QB)に依存せず、パワーオンリセット回路11から出力されるリセット信号Sの状態となる。
【0054】
このように第2の実施形態では、リセット信号Sと順序回路91の出力信号Sの論理積をとってリセットモニタ信号Sとすることで、初期状態において順序回路91がHighレベル若しくはHighインピーダンスに設定される場合であってもリセット信号Sをモニタすることができる。
【0055】
また、第1の実施形態では、順序回路の出力の初期状態がLowレベルであるものに対しリセット信号Sの反転信号と、順序回路を有する論理回路の出力機能端子への接続信号との論理和をとりリセットモニタ信号Sを生成した。この場合、順序回路を有する初期化対象回路が故障であり、出力機能端子への接続信号がHighのまま初期化されないと、パワーオンリセット信号はHighとの論理輪となり出力機能端子の状態は常にHighとなり、リセット信号Sがモニタできなくなる状況が発生する。これに対し、第2の実施形態では、1つの初期化対象回路83に対してパワーオンリセットモニタ回路13、81を複数配置することにより、故障箇所を確実に判断できるようになった。
【0056】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路100の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体集積回路100の有する初期化対象回路12の具体例を示す図である。
【図3】図2の順序回路21〜23の端子と真理値を示す図である。
【図4】図2の一部を示す図であり、前段の組合せ回路24に依らずに初期値が設定される組合せ回路25の例を示している。
【図5】電源電圧、リセット信号S、初期化対象回路12の出力信号S、インバータ131の出力信号、パワーオンリセットモニタ信号Sのそれぞれにおける、時間と電圧の関係を示す略図である。
【図6】初期化対象回路12である順序回路21が故障している場合のパワーオンリセットモニタ信号Sの状態を示す図である。
【図7】初期化対象回路12である順序回路21が故障している場合のパワーオンリセットモニタ信号Sの状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路200の構成例を示す図である。
【図9】図8に示す半導体集積回路200の有する初期化対象回路周辺の具体な構成を示す図である。
【図10】図9の順序回路91の端子と真理値を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る半導体集積回路200の動作を示す図である。
【図12】従来の半導体集積回路の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 電源供給源
11 パワーオンリセット回路
12、83 初期化対象回路
13、81 パワーオンリセットモニタ回路
14 出力機能端子
20 クロック供給源
21〜23 順序回路
24、25 組合せ回路
82 論理積回路
91 順序回路
100 半導体集積回路
101 パワーオンリセット信号生成部
102 フリップフロップ回路
103 初期化完了判定回路
104 セレクタ
105 テスト出力兼用端子
131 インバータ
132 論理和回路
200 半導体集積回路
251、252 論理積回路
検出信号
パワーオンリセットモニタ信号
出力信号
リセット信号
t1〜t4 時間
V1〜V4 電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源投入を検知したことを示す検出信号に基づいて、リセット信号を出力するパワーオンリセット回路と、
前記リセット信号に基づいて初期設定が行われる初期化対象回路と、
前記パワーオンリセット回路から出力された前記リセット信号と、前記初期設定がされた前記初期化対象回路の出力信号に基づいて、前記初期設定が正常に実行されたか否かを示すパワーオンリセットモニタ信号を生成して出力するパワーオンリセットモニタ回路と、
を備えた半導体集積回路。
【請求項2】
前記パワーオンリセットモニタ回路は、1つの前記初期化対象回路に対して複数設けられている
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記パワーオンリセットモニタ回路は、
前記パワーオンリセット回路から入力された前記リセット信号を反転して出力するインバータと、
一方に前記インバータの出力を入力し、他方に前記初期化対象回路の前記出力信号を入力し、論理和をとって前記パワーオンリセットモニタ信号として出力する論理和回路と、
を備えた
請求項1又は2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記パワーオンリセットモニタ回路は、
一方に前記パワーオンリセット回路から出力された前記リセット信号を入力し、他方に前記初期化対象回路から出力された前記出力信号を入力し、論理積をとって前記パワーオンリセットモニタ信号として出力する論理積回路を備えた
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記初期化対象回路は、前記リセット信号の状態に依存して出力が決定される順序回路を含む
請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記初期化対象回路の前記出力信号は、前記順序回路の出力である
請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記順序回路の出力は、前記初期化対象回路に含まれる組合せ回路を介して前記パワーオンリセットモニタ回路に入力される
請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記順序回路は、フリップフロップ、ラッチ、カウンタ、及びレジスタの少なくとも1つを含む
請求項5乃至7のうちいずれか1項に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
電源投入を検出し、
リセット信号を出力して、初期設定が行われる初期化対象回路の初期設定を行い、
前記リセット信号及び前記初期値が設定された前記初期化対象回路の出力信号に基づいて、前記初期設定が正常に実行されたか否かを示すパワーオンリセットモニタ信号を生成して出力する
半導体集積回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−109717(P2010−109717A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279984(P2008−279984)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】