説明

半導体集積装置における遅延回路及びインバータ

【課題】静電気放電に対する耐性が強く且つ低消費電力にて、遅延時間のバラツキを抑えることが可能な遅延回路及びインバータを提供する。
【解決手段】遅延回路のインバータとして、低電位部は、夫々のソース端子及びドレイン端子が第1共通接続点にて接続されている一対のFETを有し、高電位部は、夫々のソース端子及びドレイン端子が第2共通接続点にて接続されている一対のFETを有する。インバータ出力L2が高電位状態となった場合には、上記第1共通接続点に電源電位VDDを印加する一方、低電位状態となった場合には、上記第2共通接続点に接地電位GNDを印加することによりヒステリシス特性を持たせる。更に、製造上のバラツキ又は環境温度の変化に伴う遅延時間の変動を抑制させるべく、上記した電源電位VDD又は接地電位GNDの供給元となり、かつ常時オン状態のFETを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積装置における遅延回路と、この遅延回路を構築するインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積装置において遅延回路を実現する方法としては、インバータ素子を所望とする遅延時間の数だけ直列に接続するという設計手法が知られている。しかしながら、このような遅延回路では、製造上のバラツキ、電源電位の変動、或いは環境温度の変化に伴い所望の遅延時間に対して比較的大きな誤差が生じてしまうという問題があった。
【0003】
そこで、温度変化に伴う遅延時間の変動を抑制させるようにしたヒステリシスインバータ回路が提案された(例えば、特許文献1参照)。このヒステリシスインバータ回路においては、FET(Field effect transistor)及び抵抗が直列接続されてなる感熱回路(特許文献1の第1図のP4及びR1、N4及びR2参照)にて、環境温度に対応した電位をインバータ素子に印加することにより、インバータ素子の閾値を環境温度に追従させて変更するようにしている。これにより、環境温度の変化に拘わらず、常に一定の遅延時間を得ることが可能となる。
【0004】
ところで、上記感熱回路では、温度変化に追従してオン抵抗が変化するというFETの特性を利用し、FET(P4、N4)を抵抗として用いるべく、そのゲート端に直接、接地電位或いは電源電位を印加するようにしている。よって、静電気放電の発生によりFET(P4、N4)のゲートが破壊される虞があった。
【0005】
更に、上記感熱回路は、所望の電位を生成すべくFET及び抵抗を直列接続した分圧回路である為、この感熱回路内には、常時、直流電流が流れており電力消費量が大になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−226110号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる問題を解決すべく為されたものであり、静電気放電に対する耐性が高く且つ低消費電力にて遅延時間のバラツキを抑えることが可能な半導体集積装置における遅延回路及びインバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による半導体集積装置における遅延回路は、一方のドレインと他方のソースとが第1接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が入力点において接続されており前記一方のソースには第1電位が印加されており前記他方のドレインには出力点が接続されている互いに第1導電型のチャネルを有する一対の第1FETと、一方のドレインと他方のソースとが第2接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が前記入力点において互いに接続されており前記一方のソースには第2電位が印加されており前記他方のドレインには前記出力点が接続されている互いに第2導電型のチャネルを有する一対の第2FETと、を含むインバータの複数が互いに縦列接続された遅延回路であって、前記インバータは、前記出力点が前記第2電位の状態となる場合に前記第2電位を前記第1接続点に印加する第1付加FETと、前記第1付加FETに前記第2電位を供給する第2付加FETと、ソースに前記第1電位が印加されておりドレインが前記第2付加FETのゲートに接続されている第3付加FETと、ソースに前記第2電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第3付加FETのゲートに接続されている第4付加FETと、前記出力点が前記第1電位の状態となる場合に前記第1電位を前記第2接続点に印加する第5付加FETと、前記第5付加FETに前記第1電位を供給する第6付加FETと、ソースに前記第2電位が印加されておりドレインが前記第6付加FETのゲートに接続されている第7付加FETと、ソースに前記第1電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第7付加FETのゲートに接続されている第8付加FETと、を更に有する。
【0009】
本発明による半導体集積装置におけるインバータは、入力信号のレベルを反転させた信号を出力する半導体集積装置におけるインバータであって、一方のドレインと他方のソースとが第1接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が入力点において接続されており前記一方のソースには第1電位が印加されており前記他方のドレインには出力点が接続されている互いに第1導電型のチャネルを有する一対の第1FETと、一方のドレインと他方のソースとが第2接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が前記入力点において互いに接続されており前記一方のソースには第2電位が印加されており前記他方のドレインには前記出力点が接続されている互いに第2導電型のチャネルを有する一対の第2FETと、前記出力点が前記第2電位の状態となる場合に前記第2電位を前記第1接続点に印加する第1付加FETと、前記第1付加FETに前記第2電位を供給する第2付加FETと、ソースに前記第1電位が印加されておりドレインが前記第2付加FETのゲートに接続されている第3付加FETと、ソースに前記第2電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第3付加FETのゲートに接続されている第4付加FETと、前記出力点が前記第1電位の状態となる場合に前記第1電位を前記第2接続点に印加する第5付加FETと、前記第5付加FETに前記第1電位を供給する第6付加FETと、ソースに前記第2電位が印加されておりドレインが前記第6付加FETのゲートに接続されている第7付加FETと、ソースに前記第1電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第7付加FETのゲートに接続されている第8付加FETと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、インバータにヒステリシス特性を持たせるべく、その出力が高電位となった場合にはインバータの低電位部に電源電位を印加し、出力が低電位となった場合にはインバータの高電位部に接地電位を印加するにあたり、遅延時間の変動を抑制させる為に、上記した電源電位又は接地電位の供給元となるトランジスタを設けるようにしている。この際、かかるトランジスタを常時オン状態にすべく、このトランジスタのゲート端子に直に電源電位又は接地電位印加するのではなく、2段のトランジスタを介して電源電位又は接地電位印加するようにしている。よって、静電気放電が発生した場合であっても、電源電位又は接地電位の供給元となるトランジスタが破壊される虞がなくなる。更に、インバータにヒステリシス特性を持たせる為にその高電位部及び低電位部に夫々電源電位、接地電位を印加する際に、回路内に直流電流が流れることは無いので低消費電力化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による遅延回路の構成を示す回路図である。
【図2】図1に遅延回路に含まれるインバータの単体の遅延特性を示すタイムチャートである。
【図3】図1に示す遅延回路の遅延動作を示すタイムチャートである。
【図4】環境温度(高温、低温)毎のインバータの単体の遅延特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明においては、半導体集積装置における遅延回路のインバータとして、以下の如き高電位部及び低電位部を備えたインバータを用いる。すなわち、低電位部は、夫々のソース端子及びドレイン端子が第1共通接続点(CL1)にて接続されている一対のFET(MN21、MN22)を有する。高電位部は、夫々のソース端子及びドレイン端子が第2共通接続点(CL2)にて接続されている一対のFET(MP21、MP22)を有する。この際、インバータ出力が高電位状態となった場合には、上記第1共通接続点に電源電位を印加する一方、低電位状態となった場合には、上記第2共通接続点に接地電位を印加することによりインバータの動作にヒステリシス特性を持たせる。そして、製造上のバラツキ又は環境温度変化に伴う遅延時間の変動を抑制させるべく、上記した電源電位又は接地電位の供給元となるFET(MP41、MN41)を設ける。この際、かかるFET(MP41、MN41)を常時オン状態にすべく、そのゲート端子に、2段のFET(MP12及びMN42、MN12及びMP42)を介して接地電位又は電源電位を印加する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明による半導体集積装置における遅延回路の構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、かかる遅延回路は、夫々がヒステリシスを有するインバータC〜Cが直列に接続されてなるものである。
【0015】
インバータC〜Cは同一の内部構成を有し、夫々、ヒステリシスインバータ回路C100(以下、HSインバータ回路C100と称する)、電源電位印加回路C101及び接地電位印加回路C102を備える。
【0016】
HSインバータ回路C100は、インバータとしての高電位生成部を為すpチャネルMOS(metal-oxide semiconductor)型のFET(Field effect transistor)であるトランジスタMP21及びMP22と、低電位生成部を為すnチャネルMOS型のFETであるトランジスタMN21及びMN22とからなる。トランジスタMP21、MP22、MN21及びMN22各々のゲート端子は入力ラインL1に接続されている。トランジスタMP21のソース端子には、抵抗RP1を介して電源電位VDDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMP22のソース端子に接続されている。トランジスタMN21のソース端子には、抵抗RN1を介して接地電位GNDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMN22のソース端子に接続されている。トランジスタMP22及びMN22各々のドレイン端子には出力ラインL2が接続されている。
【0017】
かかる構成により、HSインバータ回路C100では、入力ラインL1を介して供給された信号が電源電位VDDに対応した高電位のレベルである場合には、トランジスタMP21、MP22、MN21及びMN22各々の内のMN21及びMN22がオン状態となり、接地電位GNDを出力ラインL2に印加する。又、入力ラインL1を介して供給された信号が接地電位GNDに対応した低電位のレベルである場合には、これらトランジスタMP21、MP22、MN21及びMN22各々の内のMP21及びMP22がオン状態となり、電源電位VDDを出力ラインL2に印加する。すなわち、HSインバータ回路C100は、入力ラインL1を介して高電位(VDD)の信号、つまり論理レベル1に対応した信号が供給された場合には、これを論理レベル0に反転、つまり低電位(GND)に反転させた信号を出力ラインL2に送出する。一方、低電位(GND)の信号、つまり論理レベル0に対応した信号が供給された場合には、HSインバータ回路C100はこれを論理レベル1に反転、つまり高電位(VDD)に反転させた信号を出力ラインL2に送出する。
【0018】
電源電位印加回路C101は、夫々がpチャネルMOS型のFETとしてのトランジスタMP41及びMP42と、nチャネルMOS型のFETとしてのトランジスタMN11及びMN12と、からなる。トランジスタMP42のソース端子には電源電位VDDが印加されており、そのゲート端子及びドレイン端子は共にトランジスタMN12のゲート端子に接続されている。トランジスタMN12のソース端子には接地電位GNDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMP41のゲート端子に接続されている。トランジスタMP41のソース端子には電源電位VDDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMN11のドレイン端子に接続されている。すなわち、上記構成により、トランジスタMP41、MP42及びMN12は常時オン状態となる。これにより、トランジスタMP41を介して、常時、電源電位VDDがトランジスタMN11のドレイン端子に印加されることになる。トランジスタMN11のゲート端子は出力ラインL2に接続されており、そのソース端子は、HSインバータ回路C100のトランジスタMN21のドレイン端子及びトランジスタMN22のソース端子同士を接続する接続点CL1に接続されている。
【0019】
かかる構成により、電源電位印加回路C101では、上記したHSインバータ回路C100が高電位(VDD)の信号を出力ラインL2に送出した場合にだけ、トランジスタMN11がオン状態となる。これにより、電源電位印加回路C101は、電源電位VDDをトランジスタMP41及びMN11を介して、HSインバータ回路C100のトランジスタMN21及びMN22同士を接続する接続点CL1に印加する。
【0020】
接地電位印加回路C102は、夫々がpチャネルMOS型のFETとしてのトランジスタMP11及びMP12と、nチャネルMOS型のFETとしてのトランジスタMN41及びMN42と、からなる。トランジスタMN42のソース端子には接地電位GNDが印加されており、そのゲート端子及びドレイン端子は共にトランジスタMP12のゲート端子に接続されている。トランジスタMP12のソース端子には電源電位VDDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMN41のゲート端子に接続されている。トランジスタMN41のソース端子には接地電位GNDが印加されており、そのドレイン端子はトランジスタMP11のドレイン端子に接続されている。すなわち、上記構成により、トランジスタMN41、MN42及びMP12は常時オン状態となる。これにより、トランジスタMN41を介して、常時、接地電位GNDがトランジスタMP11のドレイン端子に印加されることになる。トランジスタMP11のゲート端子は出力ラインL2に接続されており、そのソース端子は、HSインバータ回路C100のトランジスタMP21のドレイン端子及びトランジスタMP22のソース端子同士を接続する接続点CL2に接続されている。
【0021】
かかる構成により、接地電位印加回路C102では、上記したHSインバータ回路C100が低電位(GND)の信号を出力ラインL2に送出した場合にだけ、トランジスタMP11がオン状態となる。これにより、接地電位印加回路C102は、接地電位GNDをトランジスタMN41及びMP11を介して、HSインバータ回路C100のトランジスタMP21及びMP22同士を接続する接続点CL2に印加する。
【0022】
以下に、上記した如きHSインバータ回路C100、電源電位印加回路C101及び接地電位印加回路C102からなるインバータCの単体の動作について説明する。
【0023】
インバータCでは、図2に示す如く、入力信号のレベルの立ち上がり部では、そのレベルが第1閾値T1に到達した時点t1で出力信号のレベル低下が開始される一方、入力信号のレベルの立ち下がり部では、そのレベルが第2閾値T2に到達した時点t2で出力信号のレベル上昇が開始される。
【0024】
すなわち、先ず、入力信号の立ち上がり部の直前においては、HSインバータ回路C100が高電位(VDD)の信号を出力ラインL2に送出しているので、電源電位印加回路C101のトランジスタMN11がオン状態となっている。よって、この間、MN11を介して電源電位VDDがHSインバータ回路C100のトランジスタMN21及びMN22同士を接続する接続点CL1に印加される。従って、その後、入力信号の立ち上がり部において、トランジスタMN21のゲート端子に印加される電圧がこのMN21自体の閾値を超えるとMN21がオン状態となる。これにより、MP41、MN11及びMN21各々のオン抵抗と、抵抗RN1とによる分圧回路が形成され、この分圧回路によって電源電位VDDに基づき生成された高電位がトランジスタMN22のソース端子に印加される。すると、バックゲートバイアス効果により、トランジスタMN22の見かけ上の閾値が高くなり、インバータの閾値が高くなる。よって、HSインバータ回路C100においては、入力信号の立ち上がり部においてその信号レベルが上記第1閾値T1を超えた時に論理レベル1に対応した高電位が印加されたと判定し、出力信号のレベルを反転させるべく低下させるのである。
【0025】
一方、入力信号の立ち下がり部の直前においては、HSインバータ回路C100が低電位(GND)の信号を出力ラインL2に送出しているので、接地電位印加回路C102のトランジスタMP11がオン状態となっている。よって、この間、MP11を介して接地電位GNDがHSインバータ回路C100のトランジスタMP21及びMP22同士を接続する接続点CL2に印加される。従って、その後、入力信号の立ち下がり部において、トランジスタMP21のゲート端子に印加される電圧がこのMP21自体の閾値を下回るとMP21がオン状態となる。これにより、MN41、MP11及びMP21各々のオン抵抗と、抵抗RP1とによる分圧回路が形成され、この分圧回路によって接地電位GNDに基づき生成された低電位がトランジスタMP22のソース端子に印加される。すると、バックゲートバイアス効果により、トランジスタMP22の見かけ上の閾値が低くなり、インバータの閾値が低くなる。よって、HSインバータ回路C100においては、入力信号の立ち下がり部においてその信号レベルが上記第2閾値T2を下回った時に論理レベル0に対応した低電位が印加されたと判定し、出力信号のレベルを反転させるべく上昇させるのである。
【0026】
つまり、インバータCは、入力信号のレベルが接地電位GNDの状態(論理レベル0)から上昇する立ち上がり部では、そのレベルが第1閾値T1に到達した時点t1から、電源電位VDDの状態(論理レベル1)に維持されていた出力信号のレベルを低下させ、接地電位GNDの状態(論理レベル0)にまで到らせる。一方、図2に示す如く、入力信号のレベルが電源電位VDDの状態(論理レベル1)から下降する立ち下がり部では、そのレベルが第2閾値T2(T1>T2)に到達した時点t2から、出力信号のレベルを上昇させ、電源電位VDDの状態(論理レベル1)にまで到らせるのである。
【0027】
よって、インバータCは、入力信号の立ち上がり部では、図2に示す如く遅延時間dly1だけ遅延させてから、そのレベルを反転させるべく出力信号のレベルを低下させる。一方、入力信号の立ち下がり部では、図2に示す如く遅延時間dly2だけ遅延させてから、そのレベルを反転させるべく出力信号のレベルを上昇させるのである。
【0028】
この際、図2に示す如き第1閾値T1と、第2閾値T2との差がヒステリシスの幅Δhとなり、このヒステリシス幅Δhが広いほど遅延時間dly1、dly2が長くなる。尚、かかるヒステリシス幅Δhは、電源電位印加回路C101のトランジスタMN11、MP41、接地電位印加回路C102のトランジスタMP11及びMN41各々のドレイン電流が大なるほど広くなる。よって、トランジスタMN11、MP41、MN41及びMP11各々のドレイン電流値によって、インバータCの遅延時間dly1、dly2を任意の遅延時間に設定することができる。又、HSインバータ回路C100に設けられている抵抗RP1及びRN1の抵抗値によっても、任意の遅延時間dly1、dly2を設定することが可能である。つまり、抵抗RP1及びRN1の抵抗値を高くするほど、出力信号における時間経過に伴うレベル推移が緩やかになるので、遅延時間dly1、dly2が長くなる。一方、抵抗RP1及びRN1の抵抗値を低くするほど、出力信号における時間経過に伴うレベル推移が急峻になるので、遅延時間dly1、dly2が短くなるのである。このように、抵抗RP1及びRN1によって遅延時間dly1、dly2の設定を行う場合は、トランジスタのドレイン電流によって遅延時間dly1、dly2の設定を行う場合に比して、製造バラツキの影響が少ないので、高精度に所望の遅延時間dly1、dly2に設定することが可能となる。
【0029】
図1に示す遅延回路は、上述した如き夫々が遅延時間dly1、dly2を有する4つのインバータC〜Cを直列に接続することにより、図3に示すように、入力信号INを遅延時間(2・dly1+2・dly2)だけ遅延させて出力(OUT)するようにしたものである。尚、インバータCを直列に接続する段数は4段に限らず、2段位以上、或いは1段だけでも良い。要するに、インバータCの段数に比例して遅延時間が変化するので、所望の遅延時間が得られる段数分だけインバータCを直列に接続すれば良いのである。
【0030】
ここで、MOS構造の半導体集積装置においては、環境温度によって動作速度が変化することが知られている。
【0031】
例えば、環境温度が低い場合には図4の(A)、環境温度が高い場合には図4の(C)の如き波形を有する入力信号がインバータCに供給される。つまり、図4の(A)及び(C)に示すように、環境温度が高い場合には低い場合に比して、入力信号の立ち上がり部及び立ち下がり部のレベル推移が緩やかになる。
【0032】
ここで、環境温度が低い場合には、トランジスタMP41及びMN11のオン抵抗が低くなる為、トランジスタMN22のソース端子の電位が高くなる。一方、環境温度が高い場合には、トランジスタMP41及びMN11のオン抵抗が高くなる為、トランジスタMN22のソース端子の電位が低くなる。よって、入力信号の立ち上がり部に対するインバータCの第1閾値T1は、図4の(A)に示す如き環境温度が低い場合に比べて、図4の(C)に示す如き環境温度が高い場合の方が低くなる。
【0033】
同様に、環境温度が低い場合には、トランジスタMN41及びMP11のオン抵抗が低くなる為、トランジスタMP22のソース端子の電位が低くなる。一方、環境温度が高い場合には、トランジスタMN41及びMP11のオン抵抗が高くなる為、トランジスタMP22のソース端子の電位が高くなる。よって、入力信号の立ち下がり部に対するインバータCの第2閾値T2は、図4の(A)に示す如き環境温度が低い場合に比べて、図3の(C)に示す如き環境温度が高い場合の方が高くなる。すなわち、図4に示すように、環境温度が高い場合のヒステリシス幅Δhは、環境温度が低い場合のヒステリシス幅Δhよりも小さくなる。
【0034】
環境温度が高い場合には、低い場合に比べて入力信号の立ち上がり部及び立ち下がり部のレベル推移が緩やかになって遅延時間が増大することになるが、環境温度が高くなるほどヒステリシス幅Δhが小さくなるので、遅延時間の増大分が抑制される。これにより、低温時において図4の(A)に示す入力信号に基づいて得られた図4の(B)に示す如き出力信号の遅延時間dly2と、高温時において図4の(C)に示す入力信号に基づいて得られた図4の(D)に示す如き出力信号の遅延時間dly2との差を抑制することが可能となる。
【0035】
このように、インバータCでは、トランジスタMP41、MN11、MN41及びMP11のオン抵抗が環境温度によって変化することを利用して、環境温度の変化に拘わらず遅延時間が一定となるように自己調整しているのである。
【0036】
尚、図1に示す如きインバータCの構成によれば、製造上のバラツキ、或いは電源電位VDDの変動に伴ってトランジスタのドレイン電流にバラツキが生じても、その遅延時間の変動分を抑制することができる。つまり、トランジスタのドレイン電流が所定よりも小さい場合には、図3に示す如き環境温度が高い場合と同様に、出力信号の立ち上がり部及び立ち下がり部のレベル推移が緩やかになり、遅延時間が増加する。しかしながら、前述した如く、トランジスタのドレイン電流が大なるほどヒステリシス幅△hは狭くなるので、その遅延時間の増大を抑制させる方向に作用する。従って、インバータCにおいては、トランジスタのドレイン電流の変動に拘わらず、その遅延時間を抑制することが可能となる。
【0037】
更に、インバータCでは、電源電位印加回路C101において電源電位VDDの供給元となるトランジスタMP41をオン状態に固定する為に、そのゲート端子に接地電位GNDを直に印加するのではなく、図1に示す如きトランジスタMP42及びMN12を介して接地電位GNDをMP41のゲート端子に印加している。又、接地電位印加回路C102において接地電位GNDの供給元となるトランジスタMN41をオン状態に固定する為に、そのゲート端子に電源電位VDDを直に印加するのではなく、図1に示す如きトランジスタMN42及びMP12を介して電源電位VDDをMN41のゲート端子に印加している。
【0038】
よって、静電気放電が発生した場合にも、トランジスタMP41及びMN41各々のゲート端子からの静電破壊を回避することが可能となる。
【0039】
図1に示す電源電位印加回路C101及び接地電位印加回路C102においては、常時、直流電流が流れて電流を大きく消費する素子が存在しないので、低消費電力化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
C100 ヒステリシスインバータ回路
C101 電源電位印加回路
C102 接地電位印加回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のドレインと他方のソースとが第1接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が入力点において接続されており前記一方のソースには第1電位が印加されており前記他方のドレインには出力点が接続されている互いに第1導電型のチャネルを有する一対の第1FETと、一方のドレインと他方のソースとが第2接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が前記入力点において互いに接続されており前記一方のソースには第2電位が印加されており前記他方のドレインには前記出力点が接続されている互いに第2導電型のチャネルを有する一対の第2FETと、を含むインバータの複数が互いに縦列接続された遅延回路であって、
前記インバータは、
前記出力点が前記第2電位の状態となる場合に前記第2電位を前記第1接続点に印加する第1付加FETと、
前記第1付加FETに前記第2電位を供給する第2付加FETと、
ソースに前記第1電位が印加されておりドレインが前記第2付加FETのゲートに接続されている第3付加FETと、
ソースに前記第2電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第3付加FETのゲートに接続されている第4付加FETと、
前記出力点が前記第1電位の状態となる場合に前記第1電位を前記第2接続点に印加する第5付加FETと、
前記第5付加FETに前記第1電位を供給する第6付加FETと、
ソースに前記第2電位が印加されておりドレインが前記第6付加FETのゲートに接続されている第7付加FETと、
ソースに前記第1電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第7付加FETのゲートに接続されている第8付加FETと、を更に有することを特徴とする半導体集積装置における遅延回路。
【請求項2】
前記第1FETにおける前記一方のソースには第1の抵抗を介して前記第1電位が印加されており、
前記第2FETにおける前記一方のソースには第2の抵抗を介して前記第2電位が印加されていることを特徴とする請求項1記載の半導体集積装置における遅延回路。
【請求項3】
前記第1付加FET、前記第3付加FET、前記第6付加FET及び前記第8付加FETの各々は前記第1導電型のチャネルを有し、
前記第2付加FET、前記第4付加FET、前記第5付加FET及び前記第7付加FETの各々は前記第2導電型のチャネルを有することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体集積装置における遅延回路。
【請求項4】
入力信号のレベルを反転させた信号を出力する半導体集積装置におけるインバータであって、
一方のドレインと他方のソースとが第1接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が入力点において接続されており前記一方のソースには第1電位が印加されており前記他方のドレインには出力点が接続されている互いに第1導電型のチャネルを有する一対の第1FETと、
一方のドレインと他方のソースとが第2接続点において互いに接続されており且つ夫々のゲート同士が前記入力点において互いに接続されており前記一方のソースには第2電位が印加されており前記他方のドレインには前記出力点が接続されている互いに第2導電型のチャネルを有する一対の第2FETと、
前記出力点が前記第2電位の状態となる場合に前記第2電位を前記第1接続点に印加する第1付加FETと、
前記第1付加FETに前記第2電位を供給する第2付加FETと、
ソースに前記第1電位が印加されておりドレインが前記第2付加FETのゲートに接続されている第3付加FETと、
ソースに前記第2電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第3付加FETのゲートに接続されている第4付加FETと、
前記出力点が前記第1電位の状態となる場合に前記第1電位を前記第2接続点に印加する第5付加FETと、
前記第5付加FETに前記第1電位を供給する第6付加FETと、
ソースに前記第2電位が印加されておりドレインが前記第6付加FETのゲートに接続されている第7付加FETと、
ソースに前記第1電位が印加されておりゲート及びドレインが共に前記第7付加FETのゲートに接続されている第8付加FETと、を有することを特徴とする半導体集積装置におけるインバータ。
【請求項5】
前記第1FETにおける前記一方のソースには第1の抵抗を介して前記第1電位が印加されており、
前記第2FETにおける前記一方のソースには第2の抵抗を介して前記第2電位が印加されていることを特徴とする請求項4記載の半導体集積装置におけるインバータ。
【請求項6】
前記第1付加FET、前記第3付加FET、前記第6付加FET及び前記第8付加FETの各々は前記第1導電型のチャネルを有し、
前記第2付加FET、前記第4付加FET、前記第5付加FET及び前記第7付加FETの各々は前記第2導電型のチャネルを有することを特徴とする請求項4又は5記載の半導体集積装置におけるインバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80399(P2012−80399A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224891(P2010−224891)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】