説明

半田形成方法及び装置並びに導線半田付方法及び装置

【課題】ガラス、セラミック、ITO、難半田付金属等の半田付が困難な部材によって構成される基板に予め半田を形成し、超音波振動させ且つ加熱されるチップにより導線を基板側に押圧することにより半田付を行うにあたって、導線を高い強度で基板に半田付可能な半田形成方法及び装置並びに導線半田付け方法及び装置を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明は、基板1上に導線18を半田付けする前に、基板1上に半田を形成する半田形成方法であって、振動子31によって超音波加振されるとともに加熱手段26によって加熱されるチップ24側に向って線状半田27を繰出し、該チップを基板1に近接又は当接させた状態で、配線方向に沿って移動させることにより、基板1上に配線方向に延びる帯状の半田層19を連続的に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半田形成方法及び装置並びに導線半田付方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半田付の対象となる部材は種々あるが、そのなかでも、合金結合をしない又は合金結合し難い部材であるガラス、セラミック、透明電極として用いられる酸化インジウムスズ(ITO)、難半田付金属等の半田付が困難な材料によって構成される基板に半田付を行う場合には、半田を単に溶融させるのみでは表面に溶着させることは困難である。
【0003】
特に、近年、注目が集まっている太陽光発電の際に用いるソーラーパネルでは、ガラス基板側のITOや、ガラスパネル等への導線の半田付が必要になり、上述のような特性を有する基板に半田付けを行う必要性は高まっている。
【0004】
これに対して、振動子によって超音波加振されるとともに加熱手段によって加熱されるチップによって、繰出し部から繰出された導線を基板側に押圧するとともに半田を溶融させ、導線の基板への半田付作業を行う導線半田付方法が従来公知である。
【0005】
このように超音波振動を利用して半田付を行う導線半田付方法では、半田の供給をどのような手段によって行うかが問題となるが、この問題に対して、振動子によって超音波加振されるとともに加熱手段によって加熱されるチップに向って線状半田を繰出し、該チップによって線状半田を基板側に押付けて溶融させ、導線が半田付けされる前の基板に、配線方向に沿って半田バンプ(半田)を列状に複数形成する特許文献1に示す半田形成方法が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−135842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した半田形成方法によれば、超音波振動され且つ加熱されるチップによって、配線方向に沿って列状に配置された複数の半田バンプに導線を順次押付けることにより、配線方向への導線の半田付を効率的に行うことが可能になる一方で、導線が断続的に基板側に半田付けされるため、強度が不足し、導線の基板からの剥離、該剥離に伴う配線の不具合等が生じる場合がある。
【0008】
本発明は、ガラス、セラミック、ITO、難半田付金属等の半田付が困難な部材によって構成される基板に予め半田を形成し、超音波振動させ且つ加熱されるチップにより導線を基板側に押圧することにより半田付を行うにあたって、導線を高い強度で基板に半田付可能な半田形成方法及び装置並びに導線半田付方法及び装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、基板1上に導線18を半田付けする前に、基板1上に半田を形成する半田形成方法であって、振動子31によって超音波加振されるとともに加熱手段26によって加熱されるチップ24側に向って線状半田27を繰出し、該チップを基板1に近接又は当接させた状態で、配線方向に沿って移動させることにより、基板1上に配線方向に延びる帯状の半田層19を連続的に形成することを特徴としている。
【0010】
第2に、線状半田27及び基板1をチップ24側からとは別に補助的に加熱することを特徴としている。
【0011】
第3に、チップ24に対して、配線下流側と、上流側とからそれぞれ各別に線状半田27を繰出すことを特徴としている。
【0012】
第4に、該半田形成方法によって基板1に半田層19を形成し、表面に半田がコーティングされた導線18を繰出し部53から繰出し、振動子48により超音波加振されるとともに加熱手段44により加熱されるチップ43によって、該繰出された導線18を前記半田層19上に押付けるようにして該チップ43を配線方向に沿って移動させることにより、半田層19に沿って基板1上に導線18を半田付けすることを特徴としている。
【0013】
第5に、半田層19の形成中に、半田層19が形成された箇所から順次導線18を半田付けすることにより、半田形成と導線の半田付けとを同時に行うことを特徴としている。
【0014】
第6に、半田層19の形成が完了した後に、導線18を半田付けすることを特徴としている。
【0015】
第7に、導線18をチップ43側からとは別に補助的に加熱することを特徴としている。
【0016】
第8に、振動子31によって超音波加振されるとともに加熱手段26によって加熱されるチップ24と、線状半田27がチップ24側に向って繰出される繰出し部37と、前記チップ24及び繰出し部37を基板1の上方側に支持する支持部21とを備え、前記チップ24が基板1に近接又は当接した状態で配線方向に沿って変位するように駆動機構によって支持部21を移動駆動させることにより、基板1上に配線方向の帯状の半田層19を連続的に形成することを特徴としている。
【0017】
第9に、繰出し部37を、チップ24の配線上流側と、下流側とにそれぞれ設けたことを特徴としている。
【0018】
第10に、電磁誘導によって起電力を生じさせることによりチップ24を発熱させる電磁誘導手段と、チップ24側に接触するように設けられたヒータとの何れかによって前記加熱手段26を構成したことを特徴としている。
【0019】
第11に、線状半田27及び基板1を補助的に加熱する補助加熱手段29を加熱手段26とは別に設けたことを特徴としている。
【0020】
第12に、該半田形成装置8を備えた導線半田付装置であって、表面が半田コーティングされた導線18が巻付けられたリール52と、振動子48によって超音波加振されるとともに加熱手段44によって加熱されるチップ43と、リール52からの導線18が繰出される繰出し部53と、該リール52、チップ43及び繰出し部53を基板1の上方側に支持する支持部22とを備え、該支持部22を線状半田27が繰出される側の支持部21の配線方向上流側に配置し、繰出し部53から繰出される導線18がチップ43によって半田層19に押付けられるようにして、導線18が繰出される側の支持部22を、駆動機構によって、配線方向に沿って移動駆動させることにより、半田層19に沿って基板1上に導線18を半田付けすることを特徴としている。
【0021】
第13に、線状半田27が繰出される側の支持部21と、導線18が繰出される側の支持部22とを一体的に形成してなる支持体7を設け、該支持体7を配線方向に沿って移動駆動させる単一の駆動機構を備えたことを特徴としている。
【0022】
第14に、線状半田27が繰出される側の支持部21と、導線18が繰出される側の支持部22とを別体形成し、該2つの支持部21,22にそれぞれ各別に前記駆動機構を設けたことを特徴としている。
【0023】
第15に、電磁誘導によって起電力を生じさせることによりチップ43を発熱させる電磁誘導手段と、チップ43側に接触するように設けられたヒータとの何れかによって、チップ43側の加熱手段44を構成したことを特徴としている。
【0024】
第16に、導線18及び基板1を補助的に加熱する補助加熱手段47を前記加熱手段44とは別に設けたことを特徴としている。
【0025】
第17に、導線18を通電させて抵抗熱により加熱する通電手段と、熱風吹付け装置との何れかによって、導線18及び基板1を補助的に加熱する補助加熱手段44を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の構成によれば、配線方向に沿って連続的に形成された帯状の半田層によって、導線が連続的に基板に半田付けされるため、導線を高い強度で基板に半田付けすることができる。特に、突起状の半田バンプのように部分的に導線を基板に接着させるものとは異なり、帯状の半田層が導線を基板に接着させる接着層として機能するため、導線をより確実に基板に半田付可能になるめ、導線の基板からの剥離、該剥離に伴う配線の不具合等もより確実に防止することができる。
【0027】
また、線状半田及び基板をチップ側からとは別に補助的に加熱することにより、線状半田をより円滑に溶融させることが可能になる。
【0028】
また、チップに対して、配線下流側と、上流側とからそれぞれ各別に線状半田を繰出すことにより、より確実に所望の半田層を基板上に形成することが可能になる。
【0029】
また、電磁誘導によって起電力を生じさせることによりチップを発熱させる電磁誘導手段によって加熱手段を構成すれば、チップ自体を発熱させることができるため、効率的な加熱が可能になる他、チップを非接触で発熱させることが可能であるため、超音波加振するチップの振動特性に影響を与えることなく、該チップを加熱することができる。
【0030】
さらに、半田形成装置を備えた導線半田付装置であって、表面が半田コーティングされた導線が巻付けられたリールと、振動子によって超音波加振されるとともに加熱手段によって加熱されるチップと、リールからの導線が繰出される繰出し部と、該リール、チップ及び繰出し部を基板の上方側に支持する支持部とを備え、該支持部を線状半田が繰出される側の支持部の配線方向上流側に配置し、繰出し部から繰出される導線がチップによって半田層に押付けられるようにして、導線が繰出される側の支持部を、駆動機構によって、配線方向に沿って移動駆動させることにより、半田層に沿って基板上に導線を半田付けすれば、導線表面にコーティングされた半田によって、基板上の半田層の接触層としての機能がより高まり、より高い強度で、より確実に、導線を基板上に半田付けすることができる。
【0031】
なお、線状半田が繰出される側の支持部と、導線が繰出される側の支持部とを一体的に形成してなる支持体を設け、該支持体を配線方向に沿って移動駆動させる単一の駆動機構を備えれば、半田層の形成中に、半田層が形成された箇所から順次導線を半田付けすることにより、半田形成と導線の半田付けとを同時に行うにあたって、半田形成側の支持部及び駆動機構と、半田付側の支持部及び駆動機構とを各別に設ける必要が無く、部品点数の増加を抑制して、製造コストを低く抑えることが可能になる。
【0032】
また、導線及び基板を補助的に加熱する補助加熱手段を前記加熱手段とは別に設けることにより、導線及び基板をより効率的に加熱することが可能になる。
【0033】
また、導線を通電させて抵抗熱により加熱する通電手段によって、導線及び基板を補助的に加熱する補助加熱手段を構成することにより、導線自体が発熱するため、より効率的な補助加熱が可能になる他、余計な箇所を補助加熱することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した導線半田装置の要部側面図である。
【図2】(A)はソーラーパネル及び導線半田付装置の構成を示す要部平面図であり、(B)はソーラーパネルの構成を示す側断面図である。
【図3】半田形成機構の要部構成を示す側面図である。
【図4】加熱装置の構成を示す側面図である。
【図5】半田付機構の要部構成を示す側面図である。
【図6】本発明の別実施形態を示す導線半田装置の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明を適用した導線半田装置の要部側面図であり、図2(A)はソーラーパネル及び導線半田付装置の構成を示す要部平面図であり、(B)はソーラーパネルの構成を示す側断面図である。図示する導線半田付装置は、ソーラーパネル(基板,太陽電池)1への配線を行うためのものであって、ソーラーパネル1を上面側に載置した状態で移動駆動される可動フレーム2と、ソーラーパネル1の配線方向(図1の矢印で示す方向)に形成されて可動フレーム2上方に配置される支持フレーム3と、可動フレーム2及び支持フレーム3を支持する本体フレーム4と、支持フレーム3に取付固定された配線方向の支持レール6にスライド自在に支持される可動テーブル(支持体)7と、該可動テーブル7を配線方向に往復スライド移動駆動させる駆動機構(図示しない)と、可動テーブル7側に配置される半田形成機構(半田形成装置)8及び半田付機構9と、を備えている。
【0036】
上記ソーラーパネル1は、ITO等の透明な膜状の電極である一対の電極層11,12と、該一対の電極層11,12の間に位置する半導体層13等とを、基盤14の一方側の面に積層することにより構成されている。このソーラーパネル1全体は上記積層方向が厚み方向となる方形板状に成形され、このソーラーパネル1の表裏面は透明なガラス板等の保護パネル16,17によってそれぞれカバーされており、電極層11及び保護パネル16を透過させ半導体層13に至る光のエネルギーが、半導体層13の発電作用によって、電力に変換され、この電力が一対の電極層11,12から取出される。
【0037】
なお、図示する例では、ソーラーパネル1の基盤14側の面(裏面)と反対側の面(表面)から光を照射するように構成されているため、基盤14から遠い側の電極層である表面電極層11は透明電極とする必要があるが、基盤14から近い側の電極層である裏面電極層12は非透明電極であってもよい。また、基盤14に透光性を有する部材を用いることにより、ソーラーパネル1の裏面側から光を照射させてもよい。
【0038】
このソーラーパネル1の一方側の面(図示する例では、表面)から電力を取出すため、該面の一対の長辺側端部をそれぞれ帯状の半田付領域P1,P2とし、この表面電極層11の一対の各半田付領域P1,P2に、リボン線18を半田付けすることにより、ソーラーパネル1の配線作業を行う。
【0039】
このリボン線18は、扁平な導線であって、その周囲(表面)が半田コーティングされており、一方側の半田付領域である表面接続側半田付領域P1に半田付けされたリボン線18は、そのまま表面電極層11に電気的に接続されるが、他方側の半田付領域である裏面接続側半田付領域P2に半田付けされたリボン線18を、裏面電極層12と電気的に接続するとともに上記表面接続側半田付領域P1から電気的に切断するため、ソーラーパネル1に加工を施す。
【0040】
この加工を具体的に説明すると、裏面接続側半田付領域P2には、その全長方向に沿って、ソーラーパネル1の一対の短辺側端の一方から他方に至る取出溝1aが凹設されるとともに、取出溝1aに平行であって方形状のソーラーパネル1表面の一対の短辺側端の一方から他方に至るように凹設された一対の切断溝1b,1bの間に該裏面接続側半田付領域P2が配置されている。
【0041】
この取出溝1a及び一対の切断溝1b,1bは、それぞれ表面電極層11から裏面電極層12に至る深さを有しているため、ソーラーパネル1表面における切断溝1b,1bよりも表面接続側半田付領域P1寄り箇所と、一対の切断溝1b,1bの間とは、電気的に切断され、それぞれ表面電極取出領域11aと、裏面電極取出領域11bとになる。
【0042】
この表面接続側半田付領域P1側の表面電極取出領域11aは、裏面接続側半田付領域P2側の裏面電極取出領域11bに比べて、面積が非常に広くなっている。ちなみに、該裏面接続側半田付領域P2に全長方向に沿ってリボン線18を半田付けすると、取出溝1aが半田によって充填されて裏面電極層12と該リボン線18とが電気的に接続される。
【0043】
すなわち、方形状のソーラーパネル1の長手方向がリボン線18の配線方向になり、該配線方向と可動テーブル7のスライド方向が一致するように、ソーラーパネル1が、可動フレーム2上に載置されるとともに、可動テーブル7の真下側にソーラーパネル1の半田付領域P1,P2が位置するように、該可動フレーム2が該配線方向に対して交差方向(さらに具体的には直交方向)に移動駆動される。
【0044】
そして、可動テーブル7を、配線方向下流側(図1における右側,配線下流側)に移動駆動させ、半田形成機構8によって、半田付領域P1,P2に、配線方向に延びる薄膜状且つ帯状の半田層19を連続的に形成し、半田付機構9によって、半田層19に沿ってリボン線18をソーラーパネル1表面に半田付けする。
【0045】
このため、可動テーブル7の配線下流側半部が、ソーラーパネル1の上方側で半田形成機構8を支持する形成側支持部(支持部)21になり、可動テーブル7の配線上流側半部が、ソーラーパネル1の上方側で半田付機構9を支持する半田付側支持部(支持部)22になる。すなわち、形成側支持部21と半田付側支持部22とを一体成形することにより、半田形成機構8及び半田付機構9を配線方向に沿って一体的に移動させる可動テーブル7を構成し、該可動テーブル7を単一の駆動機構にスライド駆動させることにより、部品点数の増加が抑制している。
【0046】
次に、図1,3及び4に基づき、半田形成機構8の構成について説明する。
図3は、半田形成機構の要部構成を示す側面図であり、図4は加熱装置の構成を示す側面図である。半田形成装置8は、上下方向に延びる鏝23と、鏝23下端部のチップ(鏝先)24を加熱する加熱装置(加熱手段)26と、鏝先24に向って糸半田(線状半田)27を繰出す繰出し装置28と、繰出された糸半田27等を補助的に加熱する補助加熱装置(補助加熱手段)29と、鏝23、加熱装置26、繰出し装置28及び補助加熱装置29が取付支持される上述の形成側支持部21とを備えている。
【0047】
上記鏝23は、先端部の上記チップ24と、基端部の振動子31と、振動子31とチップ24とを接続するように中途部に配された円柱状のホーン32とを備え、これらの部材は、それぞれ同一軸心上に配された上下方向の円柱状に形成されている。これに加えて、該鏝23は、鏝側ブラケット33を介して形成側支持部21に上下往復移動可能に支持されており、該上下動によって、チップ24を半田付領域P1,P2に対して当接、近接及び離間させることが可能になる。ちなみに、半田形成の際には、チップ24が、ソーラーパネル1の表面に対して、近接又は当接状態になる。
【0048】
振動子31は中途部のピエゾ等の電歪素子31aを有し、超音波発振器(図示しない)で発生された高周波電力によって超音波振動する。ホーン32は、振動子31からの超音波振動をチップ24側に伝えるように構成されており、その上側半部が先端側に向って径が小さくなるテーパ状に形成された増幅部32aになる一方で、その下側半部が増幅部32aの最小径よりも若干小さい径を有する伝播部32bとなり、振動子31からの超音波振動は増幅部32aを伝播する際に振幅が増幅され、この振幅が増幅された超音波振動が伝播部32bを介してチップ24に伝えられ、チップ24を超音波加振する。この超音波振動するチップ24は、耐摩耗性が良好で、熱伝導率も高いモリブデンやモリブデン合金等によって構成されている。
【0049】
上記加熱装置26は、上下方向の円筒状をなすコイルによって構成され、該コイル26の内周側にチップ24を挿通させた状態で、コイル26の導線の両端に交流電圧を印加すると、電磁誘導によって、導体である鏝23(特に、チップ24側)に起電力が生じ、この起電力による過電流によってジュール熱が発生し、鏝23(特に、チップ24)が加熱される。すなわち、該コイル26は、磁束を変化させる電磁誘導手段となる。ちなみに、このコイル26は、鏝23と非接触状態で、鏝側ブラケット33側に取付支持されている。
【0050】
なお、チップ24の外周に接触状態で巻き付けられる抵抗線によりなるヒータ又はチップ24内に接触状態で設けられるヒータによって上記加熱装置26を構成してもよい。
【0051】
上記補助加熱装置29は、加熱装置26とは別体で設けられた熱風を吹付けるブロワー(熱風吹付け装置)であって、該ブロワー29は、ソーラーパネル1表面にけるチップ24が近接又は当接している箇所に、熱風を吹付け、糸半田27及びソーラーパネル1の半田付領域P1,P2を加熱するように構成されている。なお、ソーラーパネル1表面に直に接触してソーラーパネル1表面を加熱するヒータ等によって補助加熱装置29を構成してもよい。
【0052】
上記繰出し装置28は、糸半田27が巻き付けられたリール34と、リール34からの糸半田27を弾力的に挟持して送出す一対の送りローラ36,36と、ソーラーパネル1表面のチップ24との近接又は当接箇所に糸半田27を繰出す繰出しノズル(繰出し部)37と、リール34からの糸半田27を上記一対の送りローラ36,36の間にガイドする筒状部材やローラ等からなるガイド部38と、送りローラ36,36によって送出された糸半田27を繰出しノズル37に導入する導入管39と、繰出しノズル37を位置調整可能に支持する支持体41と、を備えている。
【0053】
一対の送りローラ36が回転駆動されると、リール34からの糸半田27が、導入管39から繰出しノズル37の基端側に導入され、該導入された糸半田27が導入管39の先端側から所定量繰出される。この所定量繰出された糸半田27がチップ24によって溶融され、ソーラーパネル1表面に付着される。
【0054】
この繰出し装置28は一対設けられ、2つの繰出しノズル37,37の一方はソーラーパネル1に近接又は接触した際のチップ24の配線方向下流側に配置され、他方は該チップ24の配線方向上流側に配置されており、両繰出しノズル37,37は共に先端側がチップ24側に向けられている。すなわち、チップ24の配線上流側と、下流側とから各別に糸半田27が繰出される。
【0055】
該構成の半田形成機構8による半田形成方法について説明すると、加熱装置26によって加熱され且つ振動子31によって超音波加振された状態のチップ24を、半田付領域P1,P2に近接又は当接させたるとともに、繰出しノズル37から該チップ24先端側に順次糸半田27が繰出される状態で、駆動機構によって可動テーブル7を配線方向下流側に移動駆動させると、チップ24が、糸半田27を半田付領域P1、P2上で溶融させながら、半田付領域P1、P2方向に沿って配線方向下流側に移動し、該半田付領域P1,P2に配線方向の延びる薄膜状且つ帯状の半田層19が連続的に形成される。
【0056】
そして、可動テーブル7を始端から終端まで移動駆動させると、該半田付領域P1,P2の全長方向全体に亘り半田層19が連続的に形成される。また、必要に応じて、補助加熱装置29による補助加熱も行う。ちなみに、この半田層19形成によって、上述の取出溝1aには、半田が充填され、半田層19と、裏面電極層12とは通電された状態になる。
【0057】
次に、図1,4及び5に基づき、半田付機構9の構成について説明する。
図5は、半田付機構の要部構成を示す側面図である。半田付機構9は、上下方向に延びる鏝42と、鏝42下端部のチップ(鏝先)43を加熱する加熱装置(加熱手段)44と、リボン線18を繰出す繰出し装置46と、繰出されたリボン線18を補助的に加熱する補助加熱装置(補助加熱手段)47と、鏝42、加熱装置44、繰出し装置46及び補助加熱装置47が取付支持される上述の半田付側支持部22とを備えている。
【0058】
上記鏝42は、上述の鏝23と略同一に構成され、上記チップ43と、電歪素子48aを有する振動子48と、増幅部49a及び伝播部49bをホーン49とを有し、鏝側ブラケット51によって全体が上下往復移動可能なように支持されており、該上下動によって、チップ43を半田付領域P1,P2に対して当接、近接及びは離間させることが可能になる。ちなみに、半田付の際、チップ43は、リード線18を半田層19上面に押付けるように、ソーラーパネル1表面に近接又は当接した状態になる。
【0059】
上記加熱装置44は、電磁誘導手段となるコイルからなり、上述の加熱装置26と略同一に構成されている。ちなみに、チップ43の外周に接触状態で巻き付けられる抵抗線によりなるヒータ又はチップ43内に接触状態で設けられるヒータによって上記加熱装置44を構成してもよい。
【0060】
上記補助加熱装置47は、加熱装置44とは別体で設けられた熱風を吹付けるブロワー(熱風吹付け装置)であって、該ブロワー47は、ソーラーパネル1表面におけるチップ43が近接又は当接している箇所に、熱風を吹付け、リボン線18及びソーラーパネル1の半田付領域P1,P2を加熱するように構成されている。
【0061】
上記繰出し装置46は、リボン線18が巻き付けられたリール52と、該リール52からのリボン線18が繰出されるノズル状の繰出し部53と、リール52から繰出し部53に向うリボン線18が掛け回される複数のローラ54,56,57,58,59,61と、を備えている。
【0062】
繰出し部53は、繰出されるリボン線18の保持・保持解除を行う保持体62を有し、配線方向上流側に先端側が向けられている。複数のローラ54,56,57,58,59,61の内の1つは、上下にスライド移動可能に支持されてリボン線18へのテンションを調整するテンションローラ56であり、もう1つのローラは繰出し部53のリード線18導入側に配置されて回転駆動される送りローラ61になる。
【0063】
保持体62によって繰出し部53側で保持され且つテンションローラ56によって緊張力が付与されたリボン線18は繰出し部53から導出されるが、このように繰出し部53から導出されたリード線18の先端部(導出側端部)は、ソーラーパネル1よりもリボン線18の導出側寄りに位置する本体フレーム4側の係止機構63によって係止される。
【0064】
この係止機構63は、本体フレーム4側に取付固定された固定片64と、固定片64に上下揺動駆動可能に支持された可動片66とを備え、この固定片64と可動片66とによって、リボン線18の先端部を挟持して係止するように構成されている。そして、リボン線18の先端側が係止機構63に係止された状態で、送りローラ61を正転駆動させながら、可動テーブル7を配線方向下流側に移動させると、リボン線18は、半田付領域P1,P2に沿うようにして(配線方向に沿って)、配線方向下流側に順次繰出されていく。
【0065】
この繰出し部53から繰出されて半田付領域P1,P2の真上近傍に位置するリボン線18を、平面視、係止機構63と繰出し部53の間に配置されて該繰出しリボン線18の真上に位置する上述のチップ43によって、半田付領域P1,P2の半田層19上に押圧する。
【0066】
該構成の半田付機構9による半田付方法について説明すると、先端部が係止機構63に係止されたリボン線18が、加熱装置44により加熱され且つ振動子48により超音波加振された状態のチップ43によって、半田付領域P1,P2の半田層19に押付けられ、送りローラ61が正転駆動された状態で、駆動機構によって可動テーブル7を配線方向下流側に移動駆動させると、該チップ43は、リボン線18周囲の半田及び半田層19を溶融させながら、半田付領域P1,P2に沿って配線方向下流側に移動し、該半田付領域P1,P2へのリボン線18の半田付作業を順次行う。
【0067】
そして、可動テーブル7を始端から終端まで移動駆動させると、リボン線18が、半田層19に沿って半田付領域P1,P2の全長方向全体に亘り連続的に半田付けされる。なお、必要に応じて、補助加熱装置47による補助加熱も行う。
【0068】
以上のように構成される導線半田付装置及び導線半田付方法によれば、半田成形機構8を支持する形成側支持部21と、形成側支持部21の配線方向上流側に配置されて半田付機構9を支持する半田付側支持部22とが一体成形された可動テーブル7を配線方向下流側に移動駆動させ、半田付領域P1,P2に半田層19を形成する半田形成作業と、半田層19を介して半田付領域P1,P2にリボン線18を半田付する半田付作業とを同時に行うことにより、導線半田付作業の全体の作業時間を短縮させることが可能になる。
【0069】
具体的には、半田付機構9は、半田形成機構8によって半田付領域P1,P2上に形成された半田層19に対して、形成された箇所から順次、リード線18の半田付作業を行う。すなわち、半田付領域P1,P2の異なる箇所において、半田層19を形成する半田成形作業と、リボン線18の半田付作業とが同時に実行される。
【0070】
なお、リボン線18を通電させる通電手段によって、補助加熱手段47を構成してもよい。具体的には、繰出し装置46の何れかのローラ54,56,57,58,59,61と、係止機構63とが導体からなり、この一対の導体の間に電圧を印加する電源とによって通電手段47を構成する。この通電手段47によって、リード線18を通電状態とすれば、その抵抗熱によって、リード線18を直接に加熱することが可能になる。ちなみに、該ローラ54,56,57,58,59,61と、チップ43とを導体とし、該一対の導体の間に電圧を印加する電源によって通電手段47を構成してもよい。
【0071】
また、半田付機構9を停止させ、まず、半田形成機構8によって、半田付領域P1,P2全体への半田層19の形成を完了させた後、続いて、半田成形機構8を停止させ、半田付機構9によって、半田付領域P1,P2全体へのリボン線18の半田付作業を行って、導線半田付作業を完了させてもよい。該構成によれば、導線半田付作業全体の時間は長くなるが、半田形成機構8及び半田付機構9のタイミング制御の内容が簡略化される。
【0072】
さらに、上述の例では、半田付領域P1,P2への導線半田付作業にあたり、半田層19を形成する半田形成作業と、半田層11を介してリボン線の半田付を行う半田付作業とを行う構成につき説明したが、この半田形成作業と半田付作業の内、半田形成作業を省略してもよい。この場合には、リボン線18がチップ43によって、ソーラーパネル1上の半田付領域P1,P2に直に押付けられた状態で、半田付作業が行われる。この際のその他の構成は、上述の例と略同一であるが、リボン線18が半田コーティングされているため、このような作業を行うことが可能になる。これに加えて、半田形成作業を行わない場合には、半田形成機構8を導線半田付装置から省いてもよい。
【0073】
次に、図6に基づき、本発明の別実施形態について説明する。
図6は、本発明の別実施形態を示す導線半田装置の要部側面図である。同図に示す例では、半田成形機構8を支持する形成側支持部21と、形成側支持部21の配線方向上流側に配置されて半田付機構9を支持する半田付側支持部22とを別体形成し、それぞれ形成側可動テーブル21、半田付側可動テーブル22としている。形成側可動テーブル21と、半田付側可動テーブル22とには各別に駆動機構(図示しない)が設けられており、形成側可動テーブル21と、半田付側可動テーブル22とは、この2つの駆動機構によって、各別に、配線方向にスライド移動駆動される。
【0074】
このように導線半田付装置を構成することにより、導線半田付作業機において、半田形成作業と半田付作業とを同時に行う場合や、半田形成作業の完了後に半田付作業を行う場合や、半田形成作業を行わずに半田付作業のみを行う場合に、柔軟に対応することが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1 ソーラーパネル(基板)
8 半田形成機構(半田付装置)
18 リボン線(導線)
19 半田層
21 形成側支持部(支持部,形成側可動テーブル)
22 半田付側支持部(支持部,半田付側可動テーブル)
24 チップ(鏝先)
26 加熱装置(加熱手段,電磁誘導手段,コイル,ヒータ)
27 糸半田(線状半田)
29 補助加熱装置(補助加熱手段,熱風吹出し装置,ブロワー,ヒータ)
31 振動子
37 繰出しノズル(繰出し部)
43 チップ(鏝先)
44 加熱装置(加熱手段,電磁誘導手段,コイル,ヒータ)
47 補助加熱手装置(補助加熱手段,熱風吹出し装置,ブロワー,通電手段)
48 振動子
52 リール
53 繰出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(1)上に導線(18)を半田付けする前に、基板(1)上に半田を形成する半田形成方法であって、振動子(31)によって超音波加振されるとともに加熱手段(26)によって加熱されるチップ(24)側に向って線状半田(27)を繰出し、該チップを基板(1)に近接又は当接させた状態で、配線方向に沿って移動させることにより、基板(1)上に配線方向に延びる帯状の半田層(19)を連続的に形成する半田形成方法。
【請求項2】
線状半田(27)及び基板(1)をチップ(24)側からとは別に補助的に加熱する請求項1に記載の半田形成方法。
【請求項3】
チップ(24)に対して、配線下流側と、上流側とからそれぞれ各別に線状半田(27)を繰出す請求項1又は2の何れか一に記載の半田形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載の半田形成方法によって基板(1)に半田層(19)を形成し、表面に半田がコーティングされた導線(18)を繰出し部(53)から繰出し、振動子(48)により超音波加振されるとともに加熱手段(44)により加熱されるチップ(43)によって、該繰出された導線(18)を前記半田層(19)上に押付けるようにして該チップ(43)を配線方向に沿って移動させることにより、半田層(19)に沿って基板(1)上に導線(18)を半田付けする導線半田付方法。
【請求項5】
半田層(19)の形成中に、半田層(19)が形成された箇所から順次導線(18)を半田付けすることにより、半田形成と導線の半田付けとを同時に行う請求項4に記載の導線半田付方法。
【請求項6】
半田層(19)の形成が完了した後に、導線(18)を半田付けする請求項4に記載の導線半田付方法。
【請求項7】
導線(18)をチップ(43)側からとは別に補助的に加熱する請求項4乃至6の何れか一に記載の導線半田付方法。
【請求項8】
振動子(31)によって超音波加振されるとともに加熱手段(26)によって加熱されるチップ(24)と、線状半田(27)がチップ(24)側に向って繰出される繰出し部(37)と、前記チップ(24)及び繰出し部(37)を基板(1)の上方側に支持する支持部(21)とを備え、前記チップ(24)が基板(1)に近接又は当接した状態で配線方向に沿って変位するように駆動機構によって支持部(21)を移動駆動させることにより、基板(1)上に配線方向の帯状の半田層(19)を連続的に形成する半田形成装置。
【請求項9】
繰出し部(37)を、チップ(24)の配線上流側と、下流側とにそれぞれ設けた請求項8に記載の半田形成装置。
【請求項10】
電磁誘導によって起電力を生じさせることによりチップ(24)を発熱させる電磁誘導手段と、チップ(24)側に接触するように設けられたヒータとの何れかによって前記加熱手段(26)を構成した請求項8又は9の何れか一に記載の半田形成装置。
【請求項11】
線状半田(27)及び基板(1)を補助的に加熱する補助加熱手段(29)を加熱手段(26)とは別に設けた請求項8乃至10の何れか一に記載の半田形成装置。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れか一に記載の半田形成装置(8)を備えた導線半田付装置であって、表面が半田コーティングされた導線(18)が巻付けられたリール(52)と、振動子(48)によって超音波加振されるとともに加熱手段(44)によって加熱されるチップ(43)と、リール(52)からの導線(18)が繰出される繰出し部(53)と、該リール(52)、チップ(43)及び繰出し部(53)を基板(1)の上方側に支持する支持部(22)とを備え、該支持部(22)を線状半田(27)が繰出される側の支持部(21)の配線方向上流側に配置し、繰出し部(53)から繰出される導線(18)がチップ(43)によって半田層(19)に押付けられるようにして、導線(18)が繰出される側の支持部(22)を、駆動機構によって、配線方向に沿って移動駆動させることにより、半田層(19)に沿って基板(1)上に導線(18)を半田付けする導線半田付装置。
【請求項13】
線状半田(27)が繰出される側の支持部(21)と、導線(18)が繰出される側の支持部(22)とを一体的に形成してなる支持体(7)を設け、該支持体(7)を配線方向に沿って移動駆動させる単一の駆動機構を備えた請求項12に記載の導線半田付装置。
【請求項14】
線状半田(27)が繰出される側の支持部(21)と、導線(18)が繰出される側の支持部(22)とを別体形成し、該2つの支持部(21),(22)にそれぞれ各別に前記駆動機構を設けた請求項12に記載の導線半田付装置。
【請求項15】
電磁誘導によって起電力を生じさせることによりチップ(43)を発熱させる電磁誘導手段と、チップ(43)側に接触するように設けられたヒータとの何れかによって、チップ(43)側の加熱手段(44)を構成した請求項12乃至14の何れか一に記載の導線半田付装置。
【請求項16】
導線(18)及び基板(1)を補助的に加熱する補助加熱手段(47)を前記加熱手段(44)とは別に設けた請求項12乃至15の何れか一に記載の導線半田付装置。
【請求項17】
導線(18)を通電させて抵抗熱により加熱する通電手段と、熱風吹付け装置との何れかによって、導線(18)及び基板(1)を補助的に加熱する補助加熱手段(44)を構成した請求項16に記載の導線半田付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−198950(P2011−198950A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63026(P2010−63026)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501109253)黒田テクノ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】