説明

協調送信方法、協調送信システム、集約局及び無線基地局

【課題】複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉だけでなく協調クラスタ外からの干渉も回避することを可能とする。
【解決手段】本発明の協調送信方法は、前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択するステップと、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信するステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局を協調させて無線端末に対する信号を送信する協調送信方法、協調送信システム、集約局及び無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動無線通信システムでは、面的周波数利用効率を向上させるために、周波数繰返し回数を出来るだけ少なくすることが求められる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代のセルラ方式では、隣接セルで同一周波数帯の電波を利用する1セル周波数繰返し(周波数繰返し回数=1)が実現されている。
【0003】
一方、次世代のセルラ方式の下り回線では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が有力である。このOFDMA方式を用いたセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、隣接セル及び隣接セクタからの干渉が特性劣化の大きな原因となる。具体的には、隣接セル及び隣接セクタからの干渉電力の増加に伴いSINR(Signal−to―Interference and Noise power Ratio)が低下するため、特にMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送を行う際にその効果を発揮することが難しくなる。
【0004】
したがって、OFDMA方式でMIMO伝送を行うセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、MIMO伝送による著しいスループットの増大効果を得るためには、隣接セル及び隣接セクタからの干渉を回避する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような場合の干渉回避技術として、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対して信号を同時送信する協調送信が注目されている。この協調送信によると、協調する複数の無線基地局のセル又はセクタの集合によって形成される協調クラスタ内の空間を直交化できるので、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)が回避される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。
【0006】
具体的には、非特許文献1に示された協調送信では、図12に示すように、隣接する複数の無線基地局1が集約局2に接続され、集約局2が複数の無線基地局1を協調させる。協調クラスタCLは、協調する複数の無線基地局1のセルCの集合によって形成される。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、複数の無線基地局1による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてブロック対角化Zero−forcing(BD−ZF)法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を除去することが可能になり、ユーザスループットが改善される。
【0007】
また、非特許文献2に示された協調送信では、図13に示すように、隣接する3つの無線基地局1が集約局2に接続され、集約局2が3つの無線基地局1を協調させる。協調クラスタCLは、協調する3つの無線基地局1の隣接3セクタによって形成される。さらに、協調クラスタCLを形成する隣接3セクタは、各無線基地局1のセクタアンテナからのビームが向き合うように構成されている。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、3つの無線基地局1による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてBD−ZF法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を除去することが可能になり、ユーザスループット及びセルスループットが改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Benjebbour, M.Shirakabe,Y.Ohwatari, J.Hagiwara, and T.Ohya, “Evaluation of user throughput forMU-MIMO coordinated wireless networks,” IEEE PIMRC 2008, pp.1-5, Sept.2008.
【非特許文献2】CMCC, “DownlinkCoMP-MU-MIMO transmission schemes,” 3GPP RAN1 #56, R1-090922, Feb.2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、複数の無線基地局による協調送信を用いた上述の干渉回避技術では、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)を回避できるが、協調クラスタ外からの干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局以外からの干渉)を回避できないという問題点があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉だけでなく協調クラスタ外からの干渉も回避することが可能な協調送信方法、協調送信システム、集約局及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の協調送信方法は、複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信(協調送信)する協調送信方法であって、前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択するステップと、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信するステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、無線端末の在圏するエリアに応じて選択される複数の指向性パタンが、複数の無線基地局から無線端末の在圏するエリアの中心に向けて送信される同一周波数領域の指向性ビームが向き合うように構成されるので、協調送信により無線端末の在圏するエリア内での干渉を防止することができるとともに、当該エリアの中心に位置する無線端末の信号品質の悪化を防止することができる。また、上記指向性パタンは、無線端末の在圏するエリアに隣接する隣接エリアでは、無線端末の在圏するエリアと同一周波数領域の指向性ビームが送信されないように構成されるので、無線端末の在圏するエリア内外からの干渉を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明は、上記協調送信方法において、前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数領域に加えて複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記協調送信方法において、前記複数の指向性パタンは、前記エリアにおけるトラヒック状況に応じて、前記複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0015】
また、本発明は、上記協調送信方法において、前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数ブロックのそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0016】
また、本発明は、上記協調送信方法において、前記指向性パタンに従って分配された信号は、ブロック対角化Zero‐Forcing法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送を用いて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信されてもよい。
【0017】
本発明の協調送信システムは、複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムであって、前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、を具備する。
【0018】
本発明の集約局は、複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムにおいて、前記複数の無線基地局に接続された集約局であって、前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、を具備することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記集約局において、前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数領域に加えて複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0020】
また、本発明は、上記集約局において、前記複数の指向性パタンは、前記エリアにおけるトラヒック状況に応じて、前記複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0021】
また、本発明は、上記集約局において、前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数ブロックのそれぞれに対応させて定められてもよい。
【0022】
また、本発明は、上記集約局において、前記配信部は、前記指向性パタンに従って分配された信号を、ブロック対角化Zero‐Forcing法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送を用いて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信してもよい。
【0023】
また、本発明は、上記集約局において、前記配信部は、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配する信号分配部と、前記複数の無線基地局に収容可能な無線端末数に対応した複数の変調部と、前記集約局に接続された無線基地局数に対応した複数の送信部と、を具備し、前記複数の変調部の各々は、前記信号分配部によって分配された信号を変調し、前記複数の送信部の各々は、変調された信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に送信してもよい。
【0024】
本発明の無線基地局は、複数の無線基地局との隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムにおける無線基地局であって、前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の無線基地局による協調送信において、協調クラスタ内の干渉だけでなく協調クラスタ外からの干渉も回避することが可能な協調送信方法、協調送信システム及び集約局を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る協調送信システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る協調送信システムで形成される協調クラスタを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る指向性パタンを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る指向性パタン選択情報を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において、指向性パタンが協調送信を行う全無線基地局10に割り当てられた様子を示す図を示す図である。
【図6A】本発明の第1の実施形態に係る集約局及び無線基地局の概略機能ブロック図である。
【図6B】本発明の第1の実施形態に係る集約局の詳細機能ブロック図である。
【図6C】本発明の第1の実施形態に係る無線基地局の詳細機能ブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る協調送信方法を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る指向性パタン選択情報を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る集約局の詳細機能ブロック図である。
【図10】本発明の変更例に係る無線基地局の詳細機能ブロック図である。
【図11】本発明の変更例に係る協調送信方法を示すシーケンス図である。
【図12】従来の協調送信システムを説明するための図である。
【図13】従来の協調送信システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
【0028】
[第1の実施形態]
<第1の実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成>
図1は、第1の実施形態に係る協調送信システムの概略構成図である。図1に示すように、協調送信システムは、複数の無線基地局10−1乃至10−7と、複数の無線基地局10−1乃至10−7と光ファイバ20により接続される集約局30と、集約局30に接続されるネットワーク網40とから構成されている。複数の無線基地局10−1乃至10−7は、六角形のセルC−1乃至C−7を形成する。セルC−1乃至C−7は、それぞれ無線基地局10−1乃至10−7のサービスエリアである。セルC−1乃至C−7は、それぞれ6個のセクタに分割されている。
【0029】
この協調送信システムでは、複数の無線基地局10の隣接セクタによって形成されるエリア(協調クラスタ)に在圏する無線端末50(図示なし)に対して複数の無線基地局10が信号を同時送信(協調送信)する。図2は、第1の実施形態に係る協調送信システムで形成される協調クラスタを示す図である。図2(b)に示すように、セルC−1乃至C−7の各々が6個のセクタS1乃至S6に分割されているとする。かかる場合、図2(a)に示すように、3つの無線基地局10−1、10−2、10−3の隣接セクタS1、S3、S5によって協調クラスタCL1が形成される。
【0030】
協調クラスタCL1では、マルチユーザMIMO伝送により、無線基地局10−1、10−2、10−3が、協調クラスタCL1に在圏する無線端末50に対する信号を同時送信する。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてBD−ZF法を用いると、協調クラスタCL1の空間を直交化できるので、協調クラスタCL1内で協調送信を行う無線基地局10間の干渉を回避できる。同様に、協調クラスタCL2乃至CL6が形成され、各協調クラスタCLにおいて協調送信が行われる。
【0031】
また、協調送信システムでは、複数の指向性パタンの中から無線端末50の在圏する協調クラスタCLに対応した指向性パタンが選択される。図3は、協調送信システムで用いられる指向性パタンを示す図である。ここで、指向性パタンとは、各無線基地局10から同一周波数領域で送信される複数の指向性ビームの組み合わせを示すものである。例えば、図3(a)の指向性パタン1は、水平方向を0度とした場合に、0度、120度、240度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。また、図3(b)の指向性パタン2は、30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。なお、指向性パタンを構成する指向性ビームは、各無線基地局10に設けられた複数のセクタアンテナによって形成されてもよいし、各無線基地局10に設けられたアレイアンテナに加えられる重みによって形成されてもよい。
【0032】
複数の指向性パタンは、複数の周波数領域にそれぞれ対応させて定められる。具体的には、集約局30は、周波数領域毎に定められた指向性パタンを、協調送信を行う複数の無線基地局10の全てに割り当てる。図4は、集約局30による指向性パタン選択情報の一例を示す図である。ここで、指向性パタン選択情報とは、1周波数領域と1時間領域とによって構成されるリソース単位で、当該リソース単位用に定められた指向性パタンを示す情報である。第1の実施形態では、通信方式としてOFDMA方式を用いるものとし、図4に示すように、周波数ブロック(周波数領域)毎に指向性パタン1と指向性パタン2とが交互に定められ、時間スロット(時間領域)ではその指向性パタンが変更されないものとする。
【0033】
また、指向性パタン1及び2は、複数の無線基地局10から協調クラスタCLの中心に向けて送信される同一周波数領域の指向性ビームが向き合うように、かつ、当該協調クラスタCLに隣接する隣接エリアでは協調クラスタCLと同一周波数領域の指向性ビームが送信されないように構成されている。図5は、以上のような指向性パタン1及び2が、協調送信を行う全無線基地局10に割り当てられた様子を示す図である。
【0034】
図5(a)に示すように、周波数ブロック番号2n(n≧0)の場合、指向性パタン1が全無線基地局10に割り当てられる。かかる場合、3つの無線基地局10−1、10−2、10−7の隣接3セクタ(すなわち、無線基地局10−1のセクタS6、無線基地局10−2のセクタS4、無線基地局10−7のセクタS2(図2(b)参照))によって形成される協調クラスタCL6に着目すると、複数の無線基地局10−1、10−2、10−7から協調クラスタCL6の中心に向けて送信される同一周波数ブロックの指向性ビームが向き合っている。また、協調クラスタCL6に隣接する隣接エリア(すなわち、無線基地局10−1のセクタS1及びS5、無線基地局10−2のセクタS3及びS5、無線基地局10−7のセクタS1及びS3(図2(b)参照))では、協調クラスタCL6と同一周波数ブロックの指向性ビームが送信されていない。協調クラスタCL2、CL4についても、同様である。
【0035】
図5(a)に示す場合、複数の無線基地局10が協調クラスタCL内に在圏する無線端末50に対して協調送信を行うことにより、協調クラスタCL内の空間を直交化でき、協調クラスタCL内の干渉を防止できる。さらに、指向性パタンが複数の無線基地局10から協調クラスタCLの中心に向けて送信される同一周波数ブロックの指向性ビームが向き合うように構成されるので、協調クラスタCLの中心部に位置する無線端末50でも、3つの無線基地局10からの指向性ビームを効率良く受信でき、協調クラスタCLの中心に位置する無線端末50の信号品質の悪化を防止することができる。また、指向性パタンが協調クラスタCLに隣接する隣接エリアでは、協調クラスタCL6と同一周波数ブロックの指向性ビームが送信されないように構成されるので、協調クラスタCL6外からの干渉を防ぐことができる。
【0036】
一方、図5(b)に示すように、周波数ブロック番号2n+1(n≧0)の場合、指向性パタン2が全無線基地局10に割り当てられる。かかる場合、図5(a)に示した周波数ブロック番号2n(n≧0)の場合に指向性ビームが送信されなかったセクタによって協調クラスタCL1、CL3、CL5が形成される。したがって、図5(a)に示す協調クラスタCL2、CL4、CL6に存在しない、協調クラスタCL1、CL3、CL5に存在する無線端末50に対しても信号を送信することが可能となる。
【0037】
以上、第1の実施形態に係る協調送信システムの概略構成について説明した。なお、以上では、協調送信システムが7セルC−1乃至C−7から構成されるセルラ方式である例を説明したが、本発明は、2セル以上で構成されるセルラ方式に適用可能である。同様に、以上では、集約局30に接続する無線基地局10の数が7個の場合の例を説明したが、集約局30に接続する無線基地局10の数は、協調送信を行う無線基地局10の数に応じて変更可能である。また、1セルあたりのセクタ数も6つに限られるものではなく、1以上であればよい。また、協調クラスタCLを形成するセクタ数は、3つに限られるものではなく、2以上であればよい。また、指向性パタンを構成する指向性ビームの数は、3つに限られるものではなく、2つ以上であればよい。
【0038】
<第1の実施形態に係る協調送信システムの機能構成>
次に、第1の実施形態に係る協調送信システムを構成する集約局30及び各無線基地局10の機能構成について説明する。図6Aは、集約局30及び各無線基地局10の概略機能ブロック図、図6Bは、集約局30の詳細機能ブロック図、図6Cは、各無線基地局の詳細機能ブロック図である。本実施形態では、一例として、協調送信を行う無線基地局10の数をM、各無線基地局10のアンテナ素子11の数をNt、無線端末50の数をNuとする。
【0039】
≪第1の実施形態に係る集約局30の機能構成≫
図6A及び図6Bに示すように、集約局30は、指向性パタン選択部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部33と、プリコーディング部34と、協調送信を行う無線基地局数M個の送信部35とを具備する。
【0040】
指向性パタン選択部31は、協調クラスタCLに対して、協調クラスタCLを囲む複数の無線基地局10から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、協調クラスタCLに隣接する隣接エリアに対して、協調クラスタCLと同一の周波数領域の指向性ビームが送信されないように構成された複数の指向性パタンを保持する。具体的には、指向性パタン選択部31は、周波数ブロック毎に選択された指向性パタンを図4に示す指向性パタン選択情報を保持し、信号分配部32に入力する。
【0041】
信号分配部32は、集約局30配下の全無線基地局10に接続される全無線端末50−1乃至50−Nuに対するデータ信号を、ネットワーク網40から受信する。信号分配部32は、指向性パタン選択部31から入力された指向性パタン選択情報を用いて、複数の指向性パタンの中から無線端末50の在圏する協調クラスタCLに対応した指向性パタンを選択する。信号分配部32は、選択された指向性パタンに従って、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。信号分配部32は、Nu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0042】
変調部33は、符号化部331と、インタリーブ部332と、直並列変換部333と、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr毎の信号変調部334(すなわち、サブキャリア数L×送信ストリーム数Nr個の信号変調部334)とを具備する。
【0043】
符号化部331は、所定の符号化方法を用いて、信号分配部32から入力されたデータ信号に対する符号化を行う。ここで、符号化方法としては、ターボ符号を用いても良いし、畳み込み符号を用いても良いし、LDPC符号を用いても良く、本発明は符号化方法に係わりなく実施可能である。符号化部331は、符号化が行われたデータ信号をインタリーブ部332に入力する。
【0044】
インタリーブ部332は、符号化部331から入力されたデータ信号に対するインタリーブを行う。ここで、インタリーブ方法としては、いずれの方法を用いて良く、本発明はインタリーブ方法に係りなく実施可能である。インタリーブ部332は、インタリーブが行われたデータ信号を直並列変換部333に入力する。
【0045】
直並列変換部333は、インタリーブ部332から入力されたデータ信号系列を、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr分のデータ信号に並列変換する。直並列変換部333は、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎のデータ信号を、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎に設けられた信号変調部334に入力する。
【0046】
各信号変調部334は、直並列変換部333から入力されたデータ信号に対して多値変調を行う。ここで、変調多値数は、固定的であってもよいし、チャネルの状況に応じて適応的に変更されてもよい。各信号変調部334は、多値変調が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。
【0047】
プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、プリコーディングを行う。プリコーディング部34は、入力されたデータ信号に対して、BD−ZF法によるプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、集約局30配下のM個の無線基地局10の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号(すなわち、無線基地局数M×各無線基地局10のアンテナ素子数Nt分のデータ信号)を生成する。プリコーディング部34は、生成されたM×Nt個のデータ信号を、M個の無線基地局10毎に設けられた第1送信部35乃至第M送信部35にそれぞれ入力する。
【0048】
送信部35は、各無線基地局10のアンテナ素子数Nt毎に、逆フーリエ変換部351と、並直列変換部352と、ガードインターバル挿入部353と、搬送波周波数変調部354と、電気−光変換部355とを具備する。
【0049】
逆フーリエ変換部351は、プリコーディング部34から入力されたデータ信号を周波数領域から時間領域に変換する。逆フーリエ変換部351は、時間領域に変換されたデータ信号を並直列変換部352に変換する。
【0050】
並直列変換部352は、逆フーリエ変換部351から入力された、サブキャリア数L及びアンテナ素子分のデータ信号系列をアンテナ素子数Nt分のデータ信号系列に直列変換する。並直列変換部352は、アンテナ素子数Nt毎のデータ信号系列を、アンテナ素子数Nt毎に設けられたガードインターバル挿入部353に入力する。
【0051】
ガードインターバル挿入部353は、並直列変換部352から入力されたデータ信号系列に対してガードインターバルを挿入し、ガードインターバルが挿入されたデータ信号系列を搬送波周波数変調部354に入力する。
【0052】
搬送波周波数変調部354は、ガードインターバル挿入部353から入力されたデータ信号系列を搬送波周波数に変調し、変調されたデータ信号を電気−光変換部355に入力する。
【0053】
電気−光変換部355は、搬送波周波数変調部354から入力されたデータ信号を電気信号から光信号に変調し、変調されたデータ信号を、光ファイバ20を介して無線基地局10に入力する。
【0054】
≪第1の実施形態に係る無線基地局10の機能構成≫
図6Cに示すように、集約局30に光ファイバ20を介して接続された各無線基地局10は、Nt個のアンテナ素子11と、Nt個のアンテナ素子11にそれぞれ接続されるNt個の光−電気変換部12と、を具備する。
【0055】
光−電気変換部12は、集約局30から光ファイバ20を介して入力されたデータ信号を光信号から電気信号に復調し、復調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0056】
<第1の実施形態に係る協調送信システムの動作>
次に、以上のように構成された協調送信システムにおける協調送信方法について説明する。図7は、第1の実施形態に係る協調送信方法を示すシーケンス図である。ここで、本シーケンス図では、無線基地局10−1乃至10−3の隣接セクタによって協調クラスタCL(例えば、図5(b)の協調クラスタCL1)が形成されるものとする。また、無線基地局10−1乃至10−3は、協調クラスタCL1が形成される指向性パタン2が適用される周波数領域(例えば、図5(b)の周波数ブロック番号が2n+1の周波数ブロック)を用いて、協調クラスタCL1内に在圏する無線端末50−1乃至50−3に対して信号を送信するものとする。
【0057】
集約局30は、無線基地局10−1乃至10−3に対してチャネル推定用の参照信号を送信する(ステップS101)。無線基地局10−1は、自局に接続する全ての無線端末50−1乃至50−3(すなわち、協調クラスタCL1に在圏する無線端末50)に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS102)。同様に、無線基地局10−2及び10−3は、自局に接続する全ての無線端末50−1乃至50−3に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS103、S104)。
【0058】
なお、ステップS102乃至S104で無線基地局10−1乃至10−3から無線端末50−1乃至50−3に送信される参照信号は、無線端末50−1乃至50−3が在圏する協調クラスタCL(ここでは、協調クラスタCL1とする)を形成する指向性パタン2に従って送信される。
【0059】
無線端末50−1乃至50−3は、無線基地局10−1乃至10−3から受信した参照信号を用いてチャネル推定を行い、チャネル推定結果であるチャネル情報を無線基地局10−1乃至10−3に送信する(ステップS105)。ここで、無線端末50−1乃至50−3は、チャネル情報として、全周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよいし、上り回線の逼迫を防ぐために、一部の周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよい。
【0060】
無線基地局10−1乃至10−3は、無線端末50−1乃至50−3から受信したチャネル情報をそれぞれ集約局30に送信する(ステップS106)。集約局30は、無線基地局10−1乃至10−3から受信したチャネル情報に基づいて、BD−ZF法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送処理を行い、プリコーディングが行われた無線端末50−1乃至50−3宛てのデータ信号を無線基地局10−1乃至10−3に送信する(ステップS107)。
【0061】
無線基地局10−1は、集約局30から受信した無線端末50−1乃至50−3宛てのデータ信号を、それぞれ無線端末50−1乃至50−3に送信する(ステップS108)。同様に、無線基地局10−2及び10−3は、集約局30から受信した無線端末50−1乃至50−3宛てのデータ信号を、それぞれ無線端末50−1乃至50−3に送信する(ステップS109、S110)。
【0062】
<第1の実施形態に係る作用・効果>
第1の実施形態に係る協調送信システムによれば、無線端末の在圏する協調クラスタCLに応じて選択される複数の指向性パタンが、協調クラスタCLに対して、複数の無線基地局10から送信される同一周波数領域の指向性ビームが向き合うように構成される。この結果、協調送信により協調クラスタCL内の空間を直交化することができ、協調クラスタCL内での干渉を防止することができる上に、協調クラスタCLの中心に位置する無線端末の信号品質の悪化を防止することができる。また、上記指向性パタンは、協調クラスタCLに隣接する隣接エリアでは、協調クラスタCLと同一周波数領域の指向性ビームが送信されないように構成されるので、協調クラスタCL外からの干渉を防ぐことができる。
【0063】
また、周波数領域毎に異なる指向性パタンを割り当てることにより、ある周波数領域では形成されなかった協調クラスタを他の周波数領域で形成することができるので、いずれの協調クラスタに存在する無線端末50に対しても信号を送信することが可能となる。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る協調送信システムについて、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。第1の実施形態では、複数の指向性パタンが複数の周波数領域にそれぞれ対応させて定められたが、第2の実施形態では、複数の指向性パタンが複数の周波数領域に加えて複数の時間領域にそれぞれ対応させて定められる。さらに、第2の実施形態では、無線端末50が在圏する協調クラスタCLのトラヒック状況に応じて、複数の指向性パタンが複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められる。
【0065】
図8は、第2の実施形態に係る指向性パタン選択情報の一例を示す図である。第2の実施形態では、通信方式としてOFDMA方式を用いるものとし、図8に示すように、周波数ブロック(周波数領域)毎に加えて、時間スロット(時間領域)においても、指向性パタンが定められる。
【0066】
具体的には、図8においては、まず、周波数ブロック毎に指向性パタン1と指向性パタン2とが交互に定められる。その後、指向性パタン1がカバーする協調クラスタCL(例えば、図5(a)の協調クラスタCL2、CL4、CL6)におけるトラヒック量が、指向性パタン2がカバーする協調クラスタCL(例えば、図5(b)の協調クラスタCL1、CL3、CL5)におけるトラヒック量よりも多い場合、指向性パタン1の選択量を増やす。例えば、図8の周波数ブロック1に対しては最初に指向性パタン2が定められたが、指向性パタン1がカバーする協調クラスタCLのトラヒック量の増加に伴い、周波数ブロック1の時間スロット1に対して指向性パタン2の代わりに指向性パタン1が定められる。
【0067】
さらに、時間的なトラヒック量の変動に追従するために、周波数ブロック1の時間スロット2で指向性パタン2がカバーする協調クラスタCLのトラヒック量が増加した場合、指向性パタン2の選択量を増やす。例えば、図8の周波数ブロック2に対しては最初に指向性パタン1が定められたが、指向性パタン2がカバーする協調クラスタCLのトラヒック量の増加に伴い、周波数ブロック2の時間スロット3に対して指向性パタン1の代わりに指向性パタン2が定められる。
【0068】
<第2の実施形態に係る集約局30の機能構成>
図9は、第2の実施形態に係る集約局30の詳細機能ブロック図である。図9に示すように、第2の実施形態に係る集約局30は、指向性パタン選択部31にネットワーク網40から入力されたトラヒック情報が入力される点で、第1の実施形態と異なる。
【0069】
指向性パタン選択部31は、複数の無線基地局10の各々から協調クラスタCLに向けて同一の周波数領域を用いて送信されるビームが向き合うように、かつ、協調クラスタCLに隣接するエリアでは協調クラスタCLと同一の周波数領域でビームが送信されないように構成された指向性パタンを、周波数ブロック(周波数領域)毎及び時間スロット(時間領域)毎に定める。
【0070】
具体的には、図8を参照して説明したように、指向性パタン選択部31は、ネットワーク網40から入力された各指向性パタンのカバーする協調クラスタにおけるトラヒック量に基づいて、周波数ブロック毎及び時間スロット毎に指向性パタンを選択する。指向性パタン選択部31は、周波数ブロック毎及び時間スロット毎に選択された指向性パタンを図8に示す指向性パタン選択情報を保持し、信号分配部32に入力する。
【0071】
信号分配部32は、指向性パタン選択部31から入力された指向性パタン選択情報を用いて、複数の指向性パタンの中から無線端末50の在圏する協調クラスタCLに対応した指向性パタンを選択する。信号分配部32は、選択された指向性パタンに従って、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。その他の機能構成については、第1の実施形態と同様である。
【0072】
<第2の実施形態に係る作用・効果>
第2の実施形態に係る協調送信システムによれば、各指向性パタンのカバーする協調クラスタCLにおけるトラヒック量に基づいて、周波数領域毎及び時間領域に異なる指向性パタンを定めることにより、協調送信システムにおけるスループットを向上させることが可能となる。
【0073】
[変更例]
次に、変更例に係る協調送信システムについて、第1及び第2の実施形態との相違点を中心に説明する。第1及び第2の実施形態では、協調送信を行う複数の無線基地局10が集約局30に接続されており(図6A参照)、無線端末50の在圏する協調クラスタCLに対応した指向性パタンを集約局30が選択する例について説明した。変更例では、集約局30を設けずに、複数の無線基地局10間で指向性パタン選択情報を共有し、無線端末50の在圏する協調クラスタCLに対応した指向性パタンを各無線基地局10が選択する例について説明する。
【0074】
<変更例に係る無線基地局10の機能構成>
図10は、変更例に係る各無線基地局10の詳細機能ブロック図である。図10に示すように、各無線基地局10は、第1又は第2の実施形態の集約局30が具備する指向性パタン選択部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部13と、プリコーディング部34と、1つの送信部35とを具備する。
【0075】
指向性パタン選択部31は、第1又は第2実施形態と同様に、指向性パタン選択情報(図4又は図8参照)を保持する。指向性パタン選択部31は、協調送信を行う他の無線基地局10と指向性パタン選択情報を共有する点で、第1又は第2実施形態と異なる。
【0076】
信号分配部32は、第1又は第2実施形態と同様の機能を有し、協調送信の対象となるNu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0077】
無線端末数Nu個の変調部33は、変調処理が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、BD−ZF法によるプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、自局の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号を生成する。プリコーディング部34は、生成されたNt個のデータ信号を送信部35に入力する。
【0078】
送信部35は、電気−光変換部355を備えていない点で第1又は第2実施形態と異なるがその他は同様の機能を有する。送信部15は、搬送波周波数に変調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0079】
<変更例に係る協調送信システムの動作>
次に、以上のように構成された協調送信システムにおける協調送信方法について説明する。図11は、変更例に係る協調送信方法を示すシーケンス図である。ここで、本シーケンス図は、集約局30を設けずに、無線基地局10−1乃至10−3が互いに接続される点で、図7を参照して説明したシーケンス図と異なる。なお、本シーケンス図では、無線基地局10−1乃至10−3の隣接セクタによって協調クラスタCL(例えば、図5(b)の協調クラスタCL1)が形成されるものとする。また、無線基地局10−1乃至10−3は、協調クラスタCL1が形成される指向性パタン2が適用される周波数領域(例えば、図5(b)の周波数ブロック番号が2n+1の周波数ブロック)を用いて、協調クラスタCL1内に在圏する無線端末50−1乃至50−3に対して信号を送信するものとする。
【0080】
図11に示すように、無線基地局10−1は、自局に接続する全ての無線端末50−1乃至50−3(すなわち、協調クラスタCL1に在圏する無線端末50)に対して、無線基地局10−1からの参照信号を送信する(ステップS201)。同様に、無線基地局10−2及び10−3は、自局に接続する全ての無線端末50−1乃至50−3に対して、それぞれの無線基地局10からの参照信号を送信する(ステップS202、S203)。
【0081】
なお、ステップS201乃至S203で無線基地局10−1乃至10−3から無線端末50−1乃至50−3に送信される参照信号は、無線端末50−1乃至50−3が在圏する協調クラスタCL(ここでは、協調クラスタCL1とする)を形成する指向性パタン2に従って送信される。
【0082】
無線端末50−1乃至50−3は、無線基地局10−1乃至10−3から受信した参照信号を用いてチャネル推定を行う。無線端末50−1乃至50−3は、チャネル推定結果であるチャネル情報を無線基地局10−1乃至10−3のいずれか1つの無線基地局10(例えば、最も受信電力が強い無線基地局10)に送信する。
【0083】
ここでは、無線端末50−1は、無線基地局10−1に対して、チャネル情報を送信するものとする(ステップS204)。無線基地局10−1は、無線端末50−1に対して協調送信を行う他の無線基地局10−2及び10−3に対して、受信したチャネル情報を送信する(ステップS205)。同様に、無線端末50−2及び無線端末50−3から送信されたチャネル情報が、無線端末50−2及び無線端末50−3に対して協調送信を行う全ての無線基地局10−1乃至10−3の間で共有される(ステップS206乃至S209)。
【0084】
無線基地局10−1乃至10−3は、受信したチャネル情報に基づいて、BD−ZF法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送処理を行い、プリコーディングが行われたデータ信号を無線端末50−1乃至50−3に対してそれぞれ送信する(ステップS210乃至S212)。
【0085】
[その他の実施形態]
上述の実施形態の協調送信システムでは、通信方式としてOFDMA方式を用いたが、通信方式として通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いてもよい。通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いる場合、指向性パタンを周波数ブロック毎に選択する代わりに、搬送波周波数毎に選択することによって、本発明を適用することが可能である。
【0086】
また、上述の実施形態の協調送信方法においては、BD−ZF法によりプリコーディングを行ったが、Zero−Forcing法や非線形プリコーディング、最小2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)などその他の方法を用いてプリコーディングを行ってもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…無線基地局、20…光ファイバ、30…集約局、40…ネットワーク網、50…無線端末、11…アンテナ素子、12…光−電気変換部、31…指向性パタン選択部、32…信号分配部、33…変調部、34…プリコーディング部、35…送信部、331…符号化部、332…インタリーブ部、333…直並列変換部、334…信号変調部、351…逆フーリエ変換部、352…並直列変換部、353…ガードインターバル挿入部、354…搬送波周波数変調部、355…電気−光変換部、C、C1〜C7…セル、CL、CL1〜CL6…協調クラスタ、S1〜S6…セクタ、1…従来の無線基地局、2…従来の集約局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信方法であって、
前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択するステップと、
前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信するステップと、
を有することを特徴とする協調送信方法。
【請求項2】
前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数領域に加えて複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項1に記載の協調送信方法。
【請求項3】
前記複数の指向性パタンは、前記エリアにおけるトラヒック状況に応じて、前記複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項2に記載の協調送信方法。
【請求項4】
前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、
前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数ブロックのそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の協調送信方法。
【請求項5】
前記指向性パタンに従って分配された信号は、ブロック対角化Zero‐Forcing法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送を用いて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の協調送信方法。
【請求項6】
複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムであって、
前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、
前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、
を具備することを特徴とする協調送信システム。
【請求項7】
複数の無線基地局の隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムにおいて、前記複数の無線基地局に接続された集約局であって、
前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、
前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、
を具備することを特徴とする集約局。
【請求項8】
前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数領域に加えて複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項7に記載の集約局。
【請求項9】
前記複数の指向性パタンは、前記エリアにおけるトラヒック状況に応じて、前記複数の時間領域のそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項8に記載の集約局。
【請求項10】
前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、
前記複数の指向性パタンは、前記複数の周波数ブロックのそれぞれに対応させて定められることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の集約局。
【請求項11】
前記配信部は、前記指向性パタンに従って分配された信号を、ブロック対角化Zero‐Forcing法によるプリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送を用いて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信することを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の集約局。
【請求項12】
前記配信部は、
前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配する信号分配部と、
前記複数の無線基地局に収容可能な無線端末数に対応した複数の変調部と、
前記集約局に接続された無線基地局数に対応した複数の送信部と、を具備し、
前記複数の変調部の各々は、前記信号分配部によって分配された信号を変調し、
前記複数の送信部の各々は、変調された信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に送信する
ことを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の集約局。
【請求項13】
複数の無線基地局との隣接セクタによって形成されるエリアに在圏する無線端末に対して前記複数の無線基地局が信号を同時送信する協調送信システムにおける無線基地局であって、
前記エリアに対して、前記エリアを囲む前記複数の無線基地局から同一周波数領域の指向性ビームを向き合うように送信し、かつ、前記エリアに隣接する隣接エリアに対して、前記エリアと同一周波数領域の指向性ビームを送信しないように構成された複数の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応させて定められ、前記複数の指向性パタンの中から無線端末の在圏する前記エリアに対応した指向性パタンを選択する選択部と、
前記無線端末に送信する信号を選択された前記指向性パタンに従って分配し、分配された信号の周波数領域及び指向性ビームの方向を定めて、該信号を前記無線端末に同時送信する前記複数の無線基地局の各々に配信する配信部と、
を具備することを特徴とする無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−78025(P2011−78025A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229947(P2009−229947)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】