説明

単一分岐ヘパリン結合増殖因子類似体

配列が、ヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)に結合する特定のHBGFの類似体であるか、あるいは任意の特定のHBGFの類似体ではなくてもHBGFRに結合する、単一のアミノ酸残基で分岐している2つの実質的に同様の配列(ホモ二量体配列)を有するヘパリン結合増殖因子(HBGF)類似体。ホモ二量体配列は、HBGFの任意の部分から誘導されうる。合成HBGF類似体は、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン又はインターロイキンの類似体であることができ、任意のHBGFRに結合することができる。更に提供されるものは、医療装置用の調合剤、医薬組成物、及びこれらを使用する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の配列が単一分岐点から分岐し、単一分岐点が少なくとも1個の三官能性アミノ酸残基を含み、分岐点が更にヘパリン結合配列に共有結合している、ホモ二量体合成ヘパリン結合増殖因子類似体を含む、ヘパリン結合増殖因子の合成ペプチド及び類似体の分野に関する。本発明は、更に、可溶性薬剤としての及び医療装置用の被覆としての、そのような類似体の臨床使用に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第60/655,570号(2005年2月22日出願)の表題「単一分岐ヘパリン結合増殖因子」の出願の優先権及び利益を主張し、この明細書及び請求の範囲は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
以下の考察は、多数の筆者及び出版年の出版物を参照する。本明細書におけるそのような出版物の考察は、より完全な背景を提供し、そのような出版物が特許性を決定する目的において従来技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【0004】
ヘパリン結合増殖因子(HBGF)は、現在同定されている23個の線維芽細胞増殖因子(FGF1〜23)、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進因子)、HB−GAF(ヘパリン結合増殖関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(ヘパリン結合増殖関連分子)、TGF−α(形質転換増殖因子α)、TGF−β(形質転換増殖因子β)、PDGF(血小板由来増殖因子)、EGF(表皮増殖因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子1)、IGF−2(インスリン様増殖因子2)、HGF(肝細胞増殖因子)、IL−1(インターロイキン1)、IL−2(インターロイキン2)、IFN−α(インターフェロンα)、IFN−γ(インターフェロンγ)、TNF−α(腫瘍壊死因子α)、SDGF(シュワン細胞腫由来増殖因子)、並びにヘパリンに親和性を有する他の多くの増殖因子、サイトカイン、リンホカイン及びケモカインを含む、多数の種類の増殖因子から構成される。
【0005】
ヘパリン結合増殖因子レセプターに結合する天然HBGFからのペプチドも同定されている。例えば、Ray et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:7047-7052 (1997)を参照すること。これらの著者は、FGF−2からの2個のアミノ酸配列が、神経前駆細胞のFGF−2の分裂促進活性を阻止するのに十分であることを実証した。第1ペプチドは、アミノ酸65−74からの10個のアミノ酸配列であり、第2ペプチドはアミノ酸115−129から延びている。
【0006】
代替的な手法において、ヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)に結合する人工ペプチドが、ファージディスプレー法により同定された。Ballinger et al., Nature BioTechnology 17:1199-1204 (1999)は、この技術を使用して、C19と呼ばれ、FGF−2レセプターに結合するが、それ自体生物学的活性を刺激できない、28個のアミノ酸ペプチドを単離した。このペプチドは、あらゆる既知のFGFにより同定されるアミノ酸配列を有さない。
【0007】
広範囲の疾患及び傷害の予防又は治療に有用なHBGFを、天然の供給源から精製することができるか、又は組み換えDNA法により産生することができるが、そのような調製は、高価であり、一般に調製することが難しい。
【0008】
ヘパリン結合増殖因子類似体を生成するために幾つかの努力がなされてきた。例えば、天然PDGFは、頭−頭(AA若しくはBB)ホモ二量体、又は(AB若しくはBA)ヘテロ二量体で配列されるA鎖及びB鎖として生じる。したがって、米国特許第6,350,731号(Jehanliら)は、2つの合成PDGFレセプター結合ドメインが、ポリグリシン又はN−(4−カルボキシ−シクロヘキシルメチル)−マレイミド(SMCC)鎖を介して共有結合して、天然活性ポリペプチド二量体を模倣することを開示する。
【0009】
米国特許第6,235,716号(Ben-Sasson)は、血管新生因子の類似体を開示する。この類似体は、マルチリンカー主鎖により結合している2つ以上の血管新生相同性領域を含む分岐多価リガンドである。
【0010】
米国特許第5,770,704号(第′704号特許)(Godowski)は、レセプターチロシンキナーゼ、サイトカインレセプター及び多数の神経成長因子レセプタースーパーファミリーを活性化する複合体を開示する。複合体は、同族レセプターに結合することができる少なくとも2個のリガンドを含み、それにより、それぞれのリガンドの結合がこれらのレセプターのオリゴマー化を誘導する。第′704号特許に開示されているリガンドは、多様な非タンパク質性ポリマーに、特に、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンのような疎水性ポリマーに、並びにポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールを含むポリビニルアルケンエーテルに、共有結合により結合する。リガンドは、それぞれHGFに結合し、それによって、レセプター二量体化及びHGFレセプター二量体の生物学的活性の活性化を引き起こす、肝細胞増殖因子(HFG)ペプチド変異体を含む。
【0011】
米国特許第6,284,503号(第′503号特許)(Caldwellら)は、細胞付着、細胞増殖、細胞選択及び生物学的アッセイのために、疎水性表面及び疎水性被覆表面への細胞及び生体分子の付着を調節する組成物及び方法を開示する。この組成物は、反応性末端基活性化ポリマーに結合している生体分子である。末端基活性化ポリマーは、ブロックコポリマー界面活性剤主鎖及び活性化又は反応性基を含む。ブロックコポリマーは、疎水性表面に吸着することができる疎水性領域と、疎水性領域が疎水性表面に吸着するときに表面から延びる親水性領域とを有する、あらゆる界面活性剤であることができる。第′503号特許は、PDGF、EGF、TGFα、TGFβ、NGF、IGF−I、IGF−II、GH及びGHRF、並びにマルチ−CSF(II−3)、GM−CSF、G−CSF及びM−CSFのような天然及び組み換え増殖因子を含む末端基活性化ポリマーに、結合していることができる生体分子を開示する。
【0012】
他の研究者たちは、線維芽細胞増殖因子(FGF)の相同体及び類似体を含む組成物を記載する。例えば、米国特許第5,679,673号(Lappi及びBaird)、米国特許第5,989,866号(Deisherら)、及び米国特許第6,294,359号(Fiddesら)を参照すること。これらの開示は、毒性部分に結合し、FGFレセプター担持細胞を標的にするFGF同位体又は類似体であるか、或いはFGF相同体又は類似体により結合されるとFGFレセプターにより伝達されるシグナルを通す生物学的経路を調節する相同体又は類似体のいずれかに関連する。
【0013】
Kochendoerferらの一連の特許出願は、合成ケモカイン及び赤血球生成刺激タンパク質を含むポリマー改質タンパク質を開示する。例えば、国際公報第02/04105、同第02/19963号及び同第02/20033号を参照すること。これらは、ポリペプチド鎖が得られるように、タンパク質の1つ以上のグリコシル化部位に結合している水溶性ポリマーと化学的に連結した、赤血球生成合成タンパク質のポリペプチド鎖のペプチドセグメントを含む。これらの出願は、同じくポリマー改質され、アンタゴニストであると言われている合成ケモカインも開示する。しかし、ヘパリン結合ドメインは開示されていない。米国特許第5,773,569号及び同第5,830,851号(Wrightonら)に開示されているように、他のエリスロポエチン模倣が知られている。
【0014】
国際公報第00/18921号(Ballinger及びKavanaugh)は、直接的に又は結合基を介して「オリゴマー化ドメイン」に結合している、FGFレセプター親和性を有する融合タンパク質からなる組成物を開示する。オリゴマー化ドメインは、約20〜300個の残基の長さの範囲であり、転写因子、IgGのFc部分、ロイシンジッパーなどのような作成物を含む。開示されたオリゴマー化ドメインはホモ二量体ドメインである、ここでは、単一のFGFレセプター親和性融合タンパク質がロイシンジッパーのような単一のドメインに結合し、次に、それぞれ単一のFGFレセプター親和性融合タンパク質を有する2個の平行したロイシンジッパーがジスルフィド結合により架橋するように、ロイシンジッパーのアミノとカルボキシの両方の末端でシステイン残基により同様の分子に結合する。融合タンパク質は、ヘパリン結合ドメインと言われる多量体化ドメインとしてjunを使用する、ヘパリン結合ドメインを含むことができることも開示される。したがって、Ballinger及びKavanaughにより開示された組成物は、オリゴマー化ドメインに共有結合している単一レセプター結合配列から全て構成され、それによって、それぞれ単一のレセプター結合配列を有する2つ以上の同様のオリゴマー化ドメインが、オリゴマー化ドメインによりもたらされる連合により結合するか、あるいは化学架橋されて個別の成分の共有結合をもたらす。米国特許出願第10/644,703号(表題 合成ヘパリン結合増殖因子類似体、2003年8月19日出願)及び米国特許出願第10/224,268号(表題 合成ヘパリン結合増殖因子類似体、2002年8月20日出願)を含む幾人かの発明者が共通している一連の出願は、2つのレセプター結合ドメインが、2個の異なるアミノ酸残基の側鎖に、又は末端基と側鎖に結合している作成物を開示する。
【0015】
上記に記載された相同体、類似体、複合体又はリガンドは、それぞれレセプター結合ドメインを含む。しかし、開示されたどの組成物も、単一の残基の末端基と側鎖基を介して単一の残基に結合している2つのレセプター結合ドメインを更に含まない。HBGFの新規ペプチド類似体、特にアゴニストとして機能するもの、好ましくはHBGFRに特異性の2つのレセプター結合ドメインを含有するものに対する必要性が依然として存在する。ヘパリン結合増殖因子レセプターの費用効果の高い合成ペプチドアゴニスト、特に、医療装置を被覆するため、可溶性の生物学的製剤として、及び多様な状態を治療する医薬品として有用な、合成ヘパリン結合増殖因子アゴニストの必要性が依然として存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の一つの態様は、式I:
【0017】
【化1】

【0018】
〔式中、
Xは、それぞれ、(i)最低3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、(iii)ヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)に結合する、ペプチド鎖であり;
1は、各Xに共有結合している単一の三官能性アミノ酸残基であり;
2は、それぞれ独立して、R1とXに共有結合している、炭素、酸素、硫黄、窒素及びその混合物を含む0〜約20個の主鎖原子の鎖を含むリンカーであり;
3は、それぞれ、末端基がNH2のように水素(H)であるか、或いはN−末端NH2、NH3+若しくはNH基又は対応するアシル化誘導体を含む直鎖又は分岐鎖C1〜C17のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基であり;
4は、末端基がカルボキシルのようにOHであるか、NH2であるか、N−末端NH2、NH3+若しくはNH基又は対応するアシル化誘導体を含む直鎖又は分岐鎖C1〜C17のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基であるか、又はNH−R3であり;
Yは、R1とZに共有結合している0〜約50個の主鎖原子の鎖を含むリンカーであり;そして
Zは、(i)最低1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最大約30個のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを含む、非シグナル伝達ペプチド鎖である〕
で示される、ヘパリン結合増殖因子類似体である。
【0019】
本発明の別の態様は、Yが、(i)疎水性であり、(ii)最低約9個、最大約50個の原子の鎖を含み、(iii)Xが結合するヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)の天然リガンドにおいて見出されないリンカーを更に含むことを提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、式I〜IVのヘパリン結合増殖因子類似体が、合成ヘパリン結合増殖因子類似体が0.15MのNaCl中でヘパリンに結合するが、1MのNaClにより溶離されるようなヘパリン結合活性を有することを提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、式II:
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、R1はジアミンアミノ酸である)で示されるヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。他の特徴は全て式Iにおいて表されたとおりである。
【0024】
本発明の別の態様は、式IIのヘパリン結合増殖因子類似体のR1が、2,3−ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4−ジアミノブチルアミノ酸、リシン及びオルニチンからなる群より選択されるL−又はD−ジアミンアミノ酸残基であることを提供する。
【0025】
本発明の別の態様は、式III:
【0026】
【化3】

【0027】
〔式中、
Cは炭素であり、Hは水素であり、Nは窒素であり、そしてOは酸素である〕で示されるヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。他の特徴は全て式Iにおいて表されたとおりである。
【0028】
本発明のさらに別の態様は、式IV:
【0029】
【化4】

【0030】
〔式中、
1は、R1の側鎖が反応性スルフヒドリルを含む三官能性アミノ酸であり;そして
2は、側鎖が反応性スルフヒドリルを含む三官能性アミノ酸を含み、ここでR2はジスルフィド結合によりR1に共有結合している〕
で示されるヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。
【0031】
本発明の別の態様は、R1及びR2が、それぞれ独立して、L−又はD−システイン、L−又はD−ペニシラミン、3−メルカプトフェニルアラニン及び前記のいずれかの誘導体からなる群より選択されるL−又はD−3−メルカプトアミノ酸である、式IIIのヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。
【0032】
本発明の別の態様は、式V:
【0033】
【化5】

【0034】
〔式中、
Prg Grpは、OH又はカルボキシ末端保護基であり;そして
Cは炭素であり、Hは水素であり、Nは窒素であり、Oは酸素であり、そしてSは硫黄である〕で示されるヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。他の特徴は全て式Iにおいて表されたとおりである。
【0035】
本発明のなお別の態様は、式VI:
【0036】
【化6】

【0037】
〔式中、
1は、側鎖が第1反応性基を含む三官能性アミノ酸であり;そして
2は、側鎖が第2反応性基を含む三官能性アミノ酸を含み、ここでR2は、第1反応性基と第2反応性基の間の共有結合によりR1に共有結合している〕で示されるヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。他の特徴は全て式Iにおいて表されたとおりである。
【0038】
本発明のなお別の態様は、式I〜VIのうちのいずれかのX及びZが合成ペプチド鎖であることを提供する。
【0039】
本発明のさらに別の態様は、2個の配列が、同一であり、かつヘパリン結合増殖因子レセプターに特異的に結合し、1個の配列が、単一の残基に共有結合している非増殖因子ヘパリン結合配列を含む、単一の残基から分岐している2個の配列を有する合成ペプチドを含む、ヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。
【0040】
別の態様において、単一の残基は三官能性アミノ酸残基を含む。
【0041】
なお別の態様では、非増殖因子ヘパリン結合配列がリンカーにより単一の残基に共有結合していることが提供される。
【0042】
さらに別の態様は、2〜約50個の主鎖原子を有するヘパリン結合増殖因子類似体を提供する。
【0043】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのYは、1〜約33個のエチレングルコール単位を含む。
【0044】
本発明の別の態様によると、式I〜VIのいずれかのYは、1〜約20個の炭素原子の、分岐鎖又は非分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル鎖を含む。
【0045】
本発明のさらに別の態様において、式I〜VIのいずれかのYは、〔NH2−(CH2pCO〕qを含み、ここで、pは1〜約10であり、そしてqは1〜約20である。
【0046】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのYは、1〜約16個のGly残基を含むペプチド配列を含む。
【0047】
本発明の別の態様では、式I〜VIのいずれかのZは、BxBB又はBBBxxBであり、ここで、Bは、それぞれ独立して、リシン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンであり、そしてxは、それぞれ独立して、天然に生じるアミノ酸である。
【0048】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのZは、少なくとも2個のヘパリン結合モチーフを含む。
【0049】
本発明のなお別の態様において、式I〜VIのいずれかのR1とYの間の共有結合は、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む。
【0050】
本発明のなお別の態様において、式I〜VIのいずれかのR1と各Xとの間の共有結合は、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む。
【0051】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのYとZの間の共有結合は、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む。
【0052】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのXは、配列番号7から配列番号107のいずれか、その一部分、その相同体、又はその一部分の相同体であり、そしてZは、配列番号1から配列番号6のいずれかを含む。
【0053】
本発明のなお別の態様において、式I〜VIのいずれかのR2は、グリシン、直鎖アミノカルボン酸、二官能性アミノ−PEG−酸スペーサー及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1〜約3個のアミノ酸残基を含む。
【0054】
本発明のさらに別の態様において、式I〜VIのいずれかのYは、グリシン、直鎖アミノカルボン酸、二官能性アミノ−PEG−酸スペーサー及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1〜約10個のアミノ酸残基を含む。
【0055】
本発明の別の態様において、式I〜VIのいずれかのXは、FGF−1、FGF−2、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、FGF−10、FGF−11、FGF−12、FGF−13、FGF−14、FGF−15、FGF−16、FGF−17、FGF−18、FGF−19、FGF−20、FGF−21、FGF−22、FGF−23、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進因子)、HB−GAF(へパリン結合増殖関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(プレイオトロフィン、PTN、HARPとしても知られている、ヘパリン結合増殖関連分子)、TGF−α(形質転換増殖因子α)、TGF−β(形質転換増殖因子β)、VEGF(血管内皮増殖因子)、EGF(表皮増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子1)、IGF−2(インスリン様増殖因子2)、PDGF(血小板由来成長因子)、ランテス、SDF−1、分泌ちぢれ毛関連タンパク質1(SFRP−1)、小型誘導性サイトカインA3(SCYA3)、誘導性サイトカインサブファミリーAメンバー20(SCYA20)、誘導性サイトカインサブファミリーBメンバー14(SCYB14)、誘導性サイトカインサブファミリーDメンバー1(SCYD1)、ストローマ細胞由来因子1(SDF−1)、トロンボスポンジン1、2、3及び4(THBS1〜4)、血小板第4因子(PF4)、水晶体上皮由来増殖因子(LEDGF)、ミジキン(MK)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1)、モエシン(MSN)、肝細胞増殖因子(SFとも称される、HGF)、胎盤増殖因子、IL−1(インターロイキン1)、IL−2(インターロイキン2)、IL−3(インターロイキン3)、IL−6(インターロイキン6)、IL−7(インターロイキン7)、IL−10(インターロイキン10)、IL−12(インターロイキン12)、IFN−α(インターフェロンα)、IFN−γ(インターフェロンγ)、TNF−α(腫瘍壊死因子α)、SDGF(シュワン細胞腫由来増殖因子)、神経成長因子、神経突起成長促進因子2(NEGF2)、ニューロトロフィン、BMP−2(骨形成タンパク質2)、OP−1(BMP−7とも称される、骨形成タンパク質1)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、インターフェロンγ誘導性タンパク質20、ランテス、及びHIV−tat−トランス活性化因子、アンフィレグリン(AREG)、血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)、アンギオスタチン、ベータセリン(BTC)、結合組織増殖因子(CTGF)、高システイン血管新生インデューサー61(CYCR61)、エンドスタチン、フラクタルカイン/ニューロアクチン、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、GRO2、肝細胞癌由来増殖因子(HDGF)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)のうちのいずれかで見出されるアミノ酸配列、又は前記のいずれかで見出されるアミノ酸配列の相同体を含む。
【0056】
本発明のなお別の態様において、医薬組成物は、式I〜VIのいずれかのヘパリン結合増殖因子類似体又は薬学的に許容されるその塩と、医薬担体とを含む。
【0057】
本発明の他の態様、目的、利点及び新規特性、並びに特許性の更なる範囲は、部分的には以下の詳細な説明で記載され、部分的には以下の実験により当業者に明白になるか、又は本発明の実施により学ぶことができる。本発明の目的及び利点を、添付の請求項で特に指摘されている有用性及び組み合わせによって理解及び実現することができる。
【0058】
本発明の追加の目的及び利点は、以下の詳細な説明を添付図面と一緒に読むことにより明白となる。
【課題を解決するための手段】
【0059】
本発明のそれぞれの合成HBGF類似体は、HBGFRに結合する特定のHBGFの類似体であるか、あるいはあらゆる特定のHBGFの類似体であることなくHBGFRに結合する、2個の実質的に同様の配列(ホモ二量体配列)を含む。ホモ二量体配列は、HBGFの任意の部分から誘導されうる。合成HBGF類似体は、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン又はインターロイキンの類似体であることができ、前記のいずれかのうちの任意のHBGFRに結合することができる。
【0060】
本発明の一つの態様は、本発明の合成HBGF類似体が式I〜VIのいずれかの式の分子であることを提供する。HBGFには、ヘパリンに選択的に結合するあらゆる増殖因子が含まれる。例えば、HBGFは、既知のFGF(FGF−1〜FGF−23)、アクチビンV、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進因子)、HB−GAF(へパリン結合増殖関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(プレイオトロフィン、PTN、HARPとしても知られている、ヘパリン結合増殖関連分子)、TGF−α(形質転換増殖因子α)、TGF−β(形質転換増殖因子β)、VEGF(血管内皮増殖因子)、EGF(表皮増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子1)、IGF−2(インスリン様増殖因子2)、PDGF(血小板由来成長因子)、ランテス、SDF−1、分泌ちぢれ毛関連タンパク質1(SFRP−1)、小型誘導性サイトカインA3(SCYA3)、誘導性サイトカインサブファミリーAメンバー20(SCYA20)、誘導性サイトカインサブファミリーBメンバー14(SCYB14)、誘導性サイトカインサブファミリーDメンバー1(SCYD1)、ストローマ細胞由来因子1(SDF−1)、トロンボスポンジン1、2、3及び4(THBS1〜4)、血小板第4因子(PF4)、水晶体上皮由来増殖因子(LEDGF)、ミジキン(MK)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1)、モエシン(MSN)、肝細胞増殖因子(SFとも称される、HGF)、胎盤増殖因子、IL−1(インターロイキン1)、IL−2(インターロイキン2)、IL−3(インターロイキン3)、IL−6(インターロイキン6)、IL−7(インターロイキン7)、IL−10(インターロイキン10)、IL−12(インターロイキン12)、IFN−β、IFN−α(インターフェロンα)、IFN−γ(インターフェロンγ)、TNF−α(腫瘍壊死因子α)、SDGF(シュワン細胞腫由来増殖因子)、神経成長因子、神経突起成長促進因子2(NEGF2)、ニューロトロフィン、BMP−2(骨形成タンパク質2)、OP−1(BMP−7とも称される、骨形成タンパク質1)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、インターフェロンγ誘導性タンパク質20、ランテス、及びHIV−tat−トランス活性化因子、アンフィレグリン(AREG)、血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)、アンギオスタチン、ベータセリン(BTC)、結合組織増殖因子(CTGF)、高システイン血管新生インデューサー61(CYCR61)、エンドスタチン、フラクタルカイン/ニューロアクチン、又はグリア由来神経栄養因子(GDNF)、GRO2、肝細胞癌由来増殖因子(HDGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、並びにヘパリンに親和性を有する多くの増殖因子、サイトカイン、インターロイキン及びケモカインのいずれかであることができる。本発明の作用物質を、通常ヘパリンに結合しない増殖因子、サイトカイン、インターロイキン及びケモカインの直接の類似体への適切な結合配列の導入によって、ヘパリン結合親和性を持つように修飾できることも考慮される。
【0061】
これら及び他のHBGFの多くのアミノ酸配列は、ncbi.nlm.nih.gov/entrezで見出されるワールドワイドウエブのアドレスによってアクセス可能なインターネットサイトで、National Library of Medicine Protein Databaseから入手可能である。前記のインターネットサイトのHBGFアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれる。これら及び他のHBGFのレセプター結合ドメインのアミノ酸配列を組み込んでいる合成HBGF類似体の使用が、本発明において特に考慮される。
【0062】
本発明の特定の実施態様において、本発明の合成HBGF類似体は、式I〜VIのいずれかの式の分子から実質的になり、すなわち、式I〜VIのいずれかの式の分子は、合成HBGF類似体組成物において主要な活性成分である。
【0063】
式I〜VIのヘパリン結合増殖因子:式I〜VIの合成HBGF類似体の領域X及びZは、アミノ酸残基を含み、場合により領域Yは、アミノ酸残基を含む。アミノ酸残基は、−NHRCO−として定義され、ここでRは、水素又は任意の有機基であることができる。アミノ酸はD−アミノ酸又はL−アミノ酸であることができる。加えて、アミノ酸は、アミノ酸の炭素鎖の長さに応じて、αアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸又はδアミノ酸などであることができる。
【0064】
本発明の合成HBFG類似体のX、Y及びX成分領域のアミノ酸は、タンパク質で天然に見出される20個のアミノ酸のいずれかを含むことができ、すなわち、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパルギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸、(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)である。
【0065】
更に、本発明の合成HBFG類似体のX、Y及びX成分領域のアミノ酸は、タンパク質に天然に見出されない天然に生じるアミノ酸のいずれかを含むことができ、例えば、βアラニン、ベタイン(N,N,N−トリメチルグリシン)、ホモセリン、ホモシステイン、γアミノ酪酸、オルニチン及びシトルリンである。
【0066】
加えて、本発明の合成HBFG類似体のX、Y及びX成分領域のアミノ酸には、非生物アミノ酸のいずれかを含むことができ、すなわち、例えば天然で見出されない直鎖アミノカルボン酸のような生物系で通常見出されないものである。直鎖アミノカルボン酸の例には、6−アミノヘキサン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸などが含まれる。
【0067】
式Iにおいて、2つのX領域が直接に又はR2基を介してR1に共有結合しており、ここでR1は、三官能性アミノ酸残基、好ましくは三官能性αアミノ酸残基である。そのような共有結合は、化学的に許容されるあらゆる官能基でありうることが理解されるべきである。三官能性アミノ酸残基が、システインのような反応性スルフヒドリル側鎖を有するアミノ酸である場合、第1のXは、N末端アミン基を介して共有結合し、第2のXは、R2がジスルフィド結合を介して共有結合している第2のシステイン残基を含む場合では、反応性スルフヒドリル側鎖を介して共有結合し、そしてYは、そのC末端カルボキシル基を介して第2のシステインに共有結合していることが可能であり、考慮される。
【0068】
特に好ましい実施態様において、R1はジアミン三官能性アミノ酸残基であり、ここで、R1は、R1のカルボキシル基を介してYに共有結合しており、そして2個のX基は、αアミノ酸と側鎖のεアミノ酸を介してR1に共有結合している。したがって、R1の好ましい基には、2,3−ジアミノプロピルアミノ酸、2,4−ジアミノブチルアミノ酸、リシン又はオルニチンが含まれる。
【0069】
式I〜VIのX領域として特に有用なアミノ酸配列には、天然増殖因子のアミノ酸配列と1若しくは2か所が異なるか、又はほとんど異ならない、天然に生じるHBGFのフラグメントの相同体が含まれる。そのような配列は、好ましくは、元のアミノ酸が周知の原則に従って同様の性質のアミノ酸に代えられる保守的変化を含み、例えば、アラニンのような非極性アミノ酸を、バリン、ロイシン、イソロイシン又はプロリンと代えること、又は1つの酸性若しくは塩基性アミノ酸を同じ酸性若しくは塩基性の性質を持つ別のアミノ酸で置換することである。
【0070】
別の代替案では、合成HBGF類似体のX領域は、あらゆるHBGFのアミノ酸配列に検出可能な相同性を示さないアミノ酸配列を含むことができる。同族増殖因子とほとんど又は全くアミノ酸配列相同性を有さないが、それでもHBGFRに結合する、本発明の合成類似体のX領域の成分として有用なペプチド又は増殖因子類似体を、例えばファージディスプレーによる選択を含む広範囲な方法にいずれかにより得ることができる。例えば、Sidhu et al. Phage display for selection of novel binding peptides. Methods Enzymol. 328:333-63 (2000)を参照すること。
【0071】
本発明の合成HBGF類似体のX領域は、HBGFRに効果的に結合するアミノ酸配列を含むあらゆる長さを有することができる。好ましくは合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ3個のアミノ酸残基の最小長を有する。より好ましくは合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ6個のアミノ酸残基の最小長を有する。最も好ましくは合成HBGF類似体のX領域は、少なくともおよそ10個のアミノ酸残基の最小長を有する。本発明の合成HBGF類似体のX領域は、また、好ましくはおよそ50個までのアミノ酸残基の最大長、より好ましくはおよそ40個までのアミノ酸残基の最大長、最も好ましくはおよそ30個までのアミノ酸残基の最大長を有する。
【0072】
式I、IV又はVIのR2領域は、原子の鎖又は鎖を形成する原子の組み合わせを含むことができる。典型的には、鎖は、例えば、アミノ酸(例えば、上記で提示されているような、タンパク質で見出されるアミノ酸;オルニチン及びシトルリンのような、タンパク質で見出されない天然に生じるアミノ酸;若しくはアミノヘキサン酸の様な非天然アミノ酸;又は前記のアミノ酸のいずれかの組み合わせ)から形成される原子の鎖のような、場合により酸素、窒素又は硫黄原子も含むことができる、炭素原子の鎖である。ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アミノポリエチレングルコール、ビス−アミン−PEG、及び当業者に既知の他のポリエチレングルコールの変異体のような作用物質を同様に使用することができることも考慮される。
【0073】
式I、IV又はVIのR2領域の原子の鎖は、XとR1に共有結合している。共有結合は、例えば、ペプチド結合若しくは他のアミド結合、又はチオエーテル若しくはエステル結合であることができる。存在する場合、R2領域は、好ましくは最低約3個の主鎖原子の鎖を含む。例えば、共有結合がペプチド結合である場合、R2領域は、少なくとも1個、少なくとも2個又は少なくとも3個のアミノ酸の鎖から形成されうる。しかし、ペプチド結合以外が用いられる場合、R2領域は、架橋部分を更に含むことができる。例えば、R1がCys又は反応性スルフヒドリルを有する別の三官能性アミノ酸である場合、R2領域は、スルフヒドリル反応性ホモ−二官能性架橋リンカー及び第2のCysからなるリンカーであることができるか、あるいは、R1側鎖のスルフヒドリルとXのカルボキシル基に結合している架橋のようなヘテロ−二官能性架橋リンカーを含むことができる。
【0074】
本発明の合成HBGF類似体において、一つの好ましい実施態様では、式I〜VIのいずれかのY領域は、HBGF類似体をポリスチレン又はポリカプロラクトン表面などに非共有結合するのに十分なほど疎水性であるリンカーである。加えて、Y領域は、他の疎水性表面、特に医療装置で使用される物質で形成された疎水性表面に結合することができる。そのような表面は典型的には疎水性表面である。適切な表面の例には、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチルビニルアセテート、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルレン−コ−ビニルアセテート)、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド及び前記のいずれかの2個以上のコポリマーのような疎水性ポリマー;2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンのようなシロキサン;天然及び人造ゴム;ガラス;並びにステンレススチール、チタン、白金及びニチノールを含む金属から形成されるものが含まれるが、これらに限定はされない。好ましくは、疎水性表面へのHBGF類似体の結合は、酵素結合免疫測定法又は生物学的検定法のような分析法により検出されるのに十分な量である。
【0075】
本発明の実施態様によると、式I〜VIのY領域は、原子の鎖又は鎖を形成する原子の組み合わせを含む。典型的には、鎖は、例えば、アミノ酸(例えば、上記で提示されているような、タンパク質で見出されるアミノ酸;オルニチン及びシトルリンのような、タンパク質で見出されない天然に生じるアミノ酸;若しくは直鎖アミノカルボン酸のような非天然アミノ酸;又は前記のアミノ酸のいずれかの組み合わせ)から形成される原子の鎖のような、場合により酸素、窒素又は硫黄原子も含むことができる、炭素原子の鎖である。
【0076】
式I〜VIのY領域の原子の鎖は、R1とペプチドZに共有結合している。共有結合は、例えば、ペプチド、アミド、チオエーテル又はエステル結合であることができる。好ましくは、Y領域は、最低約9個の主鎖原子の鎖を含む。より好ましくは、Y領域は、最低約12個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最低約15個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、少なくとも4個、少なくとも5個、又は少なくとも6個のアミノ酸の鎖から形成されうる。あるいは、Y領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、又は少なくとも3個のアミノヘキサン酸残基の鎖から形成されうる。
【0077】
好ましくは、Y領域は、最大約50個の主鎖原子の鎖を含む。より好ましくは、Y領域は、最大約45個の原子の鎖を含む。最も好ましくは、Y領域は、最大約35個の原子の鎖を含む。例えば、Y領域は、約12個まで、約15個まで、又は約17個までのアミノ酸の鎖から形成されうる。
【0078】
Y領域のアミノ酸配列は、好ましくは人工配列であり、すなわち、HBGFの天然リガンドで見出される4個以上のアミノ酸残基のアミノ酸配列を一つも含まない。
【0079】
特定の実施態様において、Y領域は、疎水性アミノ酸残基又は疎水性アミノ酸残基の鎖を含む。例えば、Y領域は、例えばアミノヘキサン酸残基、例えば1個、2個、3個又はそれ以上のアミノヘキサン酸残基のような、1個以上の直鎖アミノカルボン酸を含む。あるいは、Y領域は、約12個まで、約15個まで、又は約17個までのエチレングリコール残基を含むことができる。別の代替的実施態様において、Y領域は、アミノ酸疎水性残基の組み合わせを含むことができる。
【0080】
別の特定の実施態様において、分子のY領域は、1〜約20個の炭素原子の、分岐鎖又は非分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル鎖を含むことができる。更なる実施態様において、Y領域は、例えばエチレングリコール残基のような親水性残基の鎖を含むことができる。例えば、Y領域は、少なくとも約3個、又は少なくとも約4個、又は少なくとも約5個のエチレングリコール残基を含むことができる。
【0081】
式Iの分子のZ領域は、ヘパリン結合領域であり、Verrecchio et al. J.Biol.Chem. 275:7701 (2000)で記載されているように、1個以上のヘパリン結合モチーフ、BBxB又はBBBxxBを含むことができる。あるいは、Z領域は、BBxBとBBBxxBのモチーフの両方を含むことができる(ここでBは、リシン、アルギニン又はヒスチジンを表し、そしてxは、天然に生じる又は非天然に生じるアミノ酸を表す)。例えば、ヘパリン結合モチーフは、配列[KR][KR][KR]X(2)[KR](配列番号1)により表すことができ、最初の3個のアミノ酸がそれぞれ独立してリシン又はアルギニンから選択され、続く任意の2個のアミノ酸及び6個のアミノ酸がリシン又はアルギニンであることを示す。
【0082】
ヘパリン結合モチーフの数は変わる。例えば、Z領域は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、又は少なくとも5個のヘパリン結合モチーフを含むことができる。1個を越えるヘパリン結合モチーフがある場合、モチーフは同一でも異なっていてもよい。あるいは、Z領域は、最大約10個までのヘパリン結合モチーフを含む。別の代替的実施態様において、Z領域は、少なくとも4個、少なくとも6個、又は少なくとも8個のアミノ酸残基を含む。更に、特定の実施態様において、Z領域は、約20個まで、約25個まで、又は約30個までのアミノ酸残基を含む。部分的にはZ領域のヘパリンへの結合活性は、選択された特定のヘパリン結合モチーフ及びZにおけるそのようなモチーフの数によって決定されることが理解される。したがって、特定の用途において、そのようなモチーフの選択及び数は、Z領域の最適なヘパリン結合を提供するために変わることができる。
【0083】
好ましい実施態様において、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIAR(配列番号2)である。別の実施態様において、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLGRIAR(配列番号3)である。なお別の実施態様において、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLWRARA(配列番号4)である。なお別の実施態様において、Z領域のアミノ酸配列は、RKRLDRIAR(配列番号5)であり、Jun/AP−1 DNA結合ドメインの残基270−279の配列の修飾から誘導されるヘパリン結合モチーフを提供する(Busch et al. Trans-Repressor Activity of Nuclear Glycosaminoglycans on Fos and Jun/AP-1 Oncoprotein-mediated Transcription. J. Cell Biol. 116:31-42, 1992)。なお別の実施態様において、Z領域のアミノ酸配列は、RKRKLERIARC(配列番号6)である。末端システイン残基の存在によって、場合により、蛍光色素、放射性同位体及び他の検出可能なマーカーのような検出可能な試薬を含む他の分子を、Z領域に結合する機会、並びに毒素、免疫原などを結合する機会を得る。
【0084】
既知のヘパリン結合ドメインにほとんど又は全く配列相同性を持たないヘパリン結合ドメインも、本発明において考慮される。本明細書で使用されるとき、用語「ヘパリン結合」は、−NHSO3-及び硫酸修飾多糖、ヘパリンに結合すること、また、関連する修飾多糖、ヘパランに結合することを意味する。そのようなドメインは、0.15MのNaClを含む生理溶液中で結合を示すことが考慮され、0.5M NaClを越える塩濃度で非錯化することが予測される。
【0085】
本発明の合成HBGF類似体のZ領域は、約0.15MのNaClまで、場合により約0.48MのNaClまでの低塩濃度でヘパリンに対する結合特性を付与し、ヘパリンと因子類似体のZ領域との間に錯体を形成する。錯体は、1MのNaClで解離して、ヘパリン錯体から合成HBGF類似体を放出することができる。
【0086】
Z領域は、非シグナル伝達ペプチドである。したがって、単独で使用する場合、Z領域は、HBGFのレセプターに結合できるヘパリンに結合するが、Z領域ペプチドの結合だけでは、レセプターによるシグナル伝達を開始又は阻止しない。
【0087】
Z領域のC末端は、ブロックされていても遊離であってもよい。例えば、Z領域のC末端は、末端アミノ酸の遊離カルボキシル基であることができるか、あるいはZ領域のC末端は、例えばアミド基のようなブロックトカルボキシル基であることができる。
【0088】
定義:ここで及び他で使用されるとき、以下の用語は示された意味を有する。
【0089】
用語「アルケン」には、1個以上の二重炭素−炭素結合を含む不飽和炭化水素が含まれる。そのようなアルケン基の例には、エチレン、プロピレンなどが含まれる。
【0090】
用語「アルケニル」には、少なくとも1個の二重結合を含む、炭素原子2〜6個の直鎖一価炭化水素基又は炭素原子3〜6個の分岐鎖一価炭化水素基が含まれ、その例には、エテニル、2−プロペニルなどが含まれる。
【0091】
本明細書で特定される「アルキル」基には、直鎖又は分岐鎖の配置での指定された長さのアルキル基が含まれる。そのようなアルキル基の例にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、第三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどが含まれる。
【0092】
用語「アリール」には、環原子6〜12個の、場合により、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ニトロ、アシル、シアノ、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ又はアルコキシカルボニルから選択される1つ以上の置換基で独立して置換されている、一価又は二環式芳香族炭化水素が含まれる。アリール基の例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、1−ナフチル及び2−ナフチル、それらの誘導体などが含まれる。
【0093】
用語「アラルキル」には、基−Rabが含まれ、ここで、Raはアルキレン(二価アルキル)基であり、そしてRbは上記で定義されたアリール基である。アラルキル基の例には、ベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどが含まれる。用語「脂肪族」には、例えばアルカン、アルケン、アルキン及びこれらの誘導体のような、炭化水素鎖を有する化合物が含まれる。
【0094】
用語「アシル」には、基RCO−が含まれ、ここでRは、有機基である。一例は、アシル基CH3CO−である。
【0095】
ペプチド又は脂肪族部分は、上記で定義されたアルキル又は置換アルキル基が1個以上のカルボニル{−(C=O)−}基を介して結合している場合、「アシル化」されている。ペプチドは、最も一般的には、N末端においてアシル化されている。
【0096】
「アミド」には、カルボニル基(−CO.NH2)に結合している三価窒素を有する化合物が含まれる。
【0097】
「アミン」には、アミノ基(−NH2)を含む化合物が含まれる。
【0098】
「ジアミンアミノ酸」は、2個の反応性アミン基と1個の反応性カルボキシル基を含むアミノ基又は残基である。代表的な例には、2,3−ジアミノプロピルアミノ酸、2,4−ジアミノブチルアミノ酸、リシン又はオルニチンが含まれる。
【0099】
本明細書で使用されるとき、用語「相同性」は、配列が整列したとき、アミノ酸の位置の1か所以上でアミノ酸配列が異なるペプチドを意味する。例えば、2個の相同性ペプチドのアミノ酸配列では、整列したアミノ酸配列の5〜10個のアミノ酸のうちで1個のアミノ酸残基しか異なることができない。あるいは、2個の、アミノ酸が10〜15個の相同性ペプチドでは、整列したとき2個以下のアミン酸残基が異なることができる。別の代替案において、2個の、アミノ酸が15〜20個又はそれ以上の相同性ペプチドでは、整列したとき3個までのアミン酸残基が異なることができる。もっと長いペプチドにおいて、相同性ペプチドでは、2個のペプチド相同体のアミノ酸配列が整列したとき、およそ5%、10%、20%又は25%までのアミノ酸残基が異なることができる。
【0100】
「三官能性アミノ酸」は、3個の反応性基を持つアミノ酸又は残基であり、第1はN−末端アミンであり、第2はC末端カルボキシルであり、第3は側鎖の全て又は一部を含む。したがって三官能性アミノ酸には、単なる例として、ジアミンアミノ酸;システイン、ペニシラミン又は3−メルカプトフェニルアラニンを含む、メルカプトアミノ酸のような側鎖に反応性スルフヒドリル基を有するアミノ酸;アスパルギン酸及びグルタミン酸のような、側鎖に反応性カルボキシル基を有するアミノ酸;並びにアルギニンのような、側鎖に反応性グアナジウム基を有するアミノ酸が含まれる。
【0101】
FGF合成類似体:別の特定の態様において、本発明は合成FGFペプチド類似体を提供する。合成FGF類似体は、Xが、FGF−1〜FGF−23の23個のFGFを全て含む、既知のFGFのいずれかのような任意のFGFでありうるFGF類似体である、上記の式I〜VIのいずれかにより表される。
【0102】
式I〜VIの分子のX領域は、例えばFGF−2又はFGF−7のような、FGFで見出されるアミノ酸配列を含むことができる。あるいは、X領域は、分子により結合されているFGFRの天然リガンドで見出されない配列を含むことができる。
【0103】
式I〜VIのいずれかの合成FGFペプチド類似体のY領域は、必ずしも疎水性でなくてもよく、したがって、存在する場合は、極性、塩基性、酸性、親水性又は疎水性であることができる。したがって、合成FGFペプチド類似体のY領域のアミノ酸残基は、あらゆるアミノ酸、又は極性、イオン性、疎水性又は親水性基を含むことができる。
【0104】
合成FGFペプチド類似体のX領域は、線維芽細胞増殖因子で見出されるアミノ酸配列又は線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列に相同性のアミノ酸配列と100%同一であるアミノ酸配列を含むことができる。例えば、X領域は、線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列に、少なくとも約50%、少なくとも約75%、又は少なくとも約90%相同性があるアミノ酸配列を含むことができる。線維芽細胞増殖因子は、既知又は未だに同定されていない線維芽細胞増殖因のうちのいずれかを含む、あらゆる線維芽細胞増殖因であることができる。
【0105】
特定の実施態様において、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合すると、合成HBGF類似体は、HBGFRによるシグナルを開始する。
【0106】
更なる特定の実施態様において、本発明の合成FGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストトである。HBGFRに結合すると、合成HBGF類似体は、HBGFRによるシグナル伝達を阻止する。
【0107】
本発明の別の特定の実施態様において、合成FGF類似体は、FGF−2(塩基性FGF又はbFGFとしても知られている)の類似体である。本発明の別の特定の実施態様において、合成FGF類似体の、FGFレセプターへの結合は、FGFレセプターによるシグナルを開始する。更なる特定の実施態様において、合成FGF類似体の、FGFレセプターへの結合は、FGFレセプターによるシグナル伝達を阻止する。
【0108】
なお更なる特定の実施態様において、本発明は、FGF−2の合成FGF類似体を提供する。別の特定の実施態様において、本発明は、FGF−2のX領域のアミノ酸配列がYRSRKYTSWYVALKR(配列番号7)である、FGF−2のFGF類似体を提供する。なお別の特定の実施態様において、本発明は、X領域のアミノ酸配列がNRFHSWDCIKTWASDTFVLVCYDDGSEA(配列番号8)である、合成FGF類似体を提供する。なお別の特定の実施態様において、本発明は、X領域のアミノ酸配列がHIKLQLQAEERGVVS(配列番号9)である、合成FGF−2類似体を提供する。
【0109】
なお更なる特定の実施態様において、本発明は、X領域がYISKKHAEKNWFVGLKK(配列番号10)である、FGF−1の合成FGF類似体を提供する。この配列は、FGF−1のβ9及びβ10ループを架橋するアミノ酸から誘導される。なお別の特定の実施態様において、X領域が、FGF−1のβ4及びβ5領域から誘導されるアミノ酸に対応するHIQLQLSAESVGEVY(配列番号11)である、FGF−1類似体が提供される。
【0110】
なお更なる特定の実施態様において、本発明は、X領域がYASAKWTHNGGEMFVALNQK(配列番号12)である、FGF−7の合成FRG類似体を提供する。FGF−7の合成FRG類似体合のなお別の実施態様において、X領域は、アミノ酸配列YNIMEIRTVAVGIVA(配列番号13)である。
【0111】
ヒトFGFのC末端における標的配列から主に誘導される他のFGFレセプター結合ドメインは、表1で示される以下の配列を含む。
【0112】
【表1】

【0113】
VEGF合成類似体:別の特定の態様において、本発明は合成VEGFペプチド類似体を提供する。一つの実施態様において表される合成VEGF類似体には、X領域のアミノ酸配列がAPMAEGGGQNHHEWKFMDV(配列番号25)である、VEGF類似体が含まれる。別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がGATWLPPNPTK(配列番号26)である、合成VEGFペプチド類似体が提供される。なお別の実施態様では、X領域のアミノ酸配列がNFLLSWVHWSLALLLYLHHA(配列番号27)である、合成VEGFペプチド類似体が提供される。
【0114】
BMP合成類似体:別の特定の態様において、本発明は合成BMPペプチド類似体を提供する。合成骨形成タンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列LYVDFSDVGWNDW(配列番号:28)、AISMLYLDENEKVVL(配列番号:29)、ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号30)、EKVVLKNYQDMVVEG(配列番号:31)、LVVKENEDLYLMSIAC(配列番号:32)、AFYCHGECPFPLADHL(配列番号:33)、PFPLADHLNSTNHAIVQTLVNSV(配列番号:34)、TQLNAISVLYFDDSSNVILKKYRNMVV(配列番号87)及び/又はHELYVSFRDLGWQDWIIAPEGYAAY(配列番号:88)を含む実施態様を含む。
【0115】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成アビニンAを提供し、合成アビニンAタンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列SMLYYDDGQNIIKK(配列番号89)、KKIINQGDDYYLMS(配列番号90)及び/又はSMLYYDDGQNIIKKDI(配列番号91)を含む実施態様を含む。
【0116】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成G−CSFを提供し、合成G−CSFタンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列ASSLPQSFLLKCLEQVRKIQ(配列番号92)、LDVADFATTIWQQMEEL(配列番号93)及び/又はYKLAHPEELVL(配列番号94)を含む実施態様を含む。
【0117】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成GM−CSFを提供し、合成GM−CSFタンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列WEHVNAIQEARRLLNL(配列番号95)、LQTRLELYKQGLRGSLTKLKGPLTMMASHYKQH(配列番号96)及び/又はSFKENLKDFLLVI(配列番号97)を含む実施態様を含む。
【0118】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成IFN−βを提供し、合成IFN−βタンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列SVQARWEAAFDLDLY(配列番号98)、YLDLDFAAEWRAQVS(配列番号99)及び/又はSSSTGWNETIVENLI(配列番号100)を含む実施態様を含む。
【0119】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成PDGFを提供し、合成PDGFタンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列KTRTEVFEISRRLIDRTNANFLVW(配列番号101)及び/又はQVRKIEIVRKKPIFKK(配列番号102)を含む実施態様を含む。
【0120】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、合成SDF−1を提供し、合成SDF−1タンパク質類似体は、X領域がアミノ酸配列KPVSLSYRCPCRFFESHVA(配列番号103)及び/又はKWIQEYLEK(配列番号104)を含む実施態様を含む。
【0121】
あるいは、別の特定の態様において、本発明は、形質転換増殖因子ファミリーメンバーペプチドが内在性又は人工BMPペプチド又はTGFペプチドの活性を増強するのに特に有用であり、かつ式I〜VIのいずれかの作成物のX領域の全て又は一部を形成する配列を(「好ましいレセプター結合ドメイン」の項目の下に)示している表2で示されている、合成BMP、TGF及びGDF(増殖分化因子)ペプチド類似体を提供する。
【0122】
【表2】

【0123】
驚くべきことに、また有利なことに、式I〜VIのものを含む本発明の化合物において、通常のN→C配向で示されている配列AISMLYLDENEKVVL(配列番号29)を考慮し、式IIを使用すると、R1側鎖又はN末端アミンに結合している第1のアミノ酸は、(そのカルボキシル基を介して結合して、それによってペプチド結合を形成する)N末端アミノ酸残基であり、N末端アミノ酸残基に結合している第2のアミノ酸は2位の残基であるなどのように、X領域を逆方向で合成することができ、それにもかかわらず化合物は、生物活性を保持し、BMPレセプターに特異的に結合していることが見出された。R1がジアミンアミノ酸であるR1のアミンを有するペプチド結合を形成するのは従来のN末端アミノ酸残基のカルボニル基であるので、そのような作成物は、従来のN→C配向に対して逆配列を有することを見ることができる。したがって、この場合でも従来のN→C配向を用いて、前記の配列を逆方向で用いることができ、得られた本発明の化合物は、生物活性があり、本明細書に記載されたとおりに用いることができる。好ましい実施態様によると、X領域は、配列LVVKENEDLYLMSIA(配列番号57)であり、ここでも配列は従来のN→C配向で考慮されている。
【0124】
LVVKENEDLYLMSIA(配列番号57)に加えて、その相同体を含み、全体的に又は部分的に用いることができる他の逆配列には、YNKLVVKENEDLYLMSI(配列番号58)、KKLIVNSSEDFYL(配列番号59)、WDNWGVDSFDVYL(配列番号60)、GEVVMDQYNKLVVKE(配列番号61)、LHDALPFPCEGHCYFA(配列番号62)、VSNVLTQVIAHNTSNLHDALPFP(配列番号63)及びLVVKENEDLYLMSIAC(配列番号64)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0125】
本発明の特定の実施態様において、式IのR2領域は、それぞれ異なっており、式IV及びVIにおいて、1個のR1基しか提供されていない。式Iにおいてさえも、そのような領域は異なっていることができることが考慮され、例えば式Iにおいて、R1は、リシンのようなジアミンアミノ酸であることができる。合成の際に直交保護基を利用してαアミン又はεアミンのいずれかを保護し、その後、アミノ酸残基又は他の基のうちの1つを加えてR2基を形成し、次に直交保護基を除去し、R1の脱保護アミンとR2の末端アミンからのX基の平行合成を進めることが可能である。
【0126】
ヘパリン結合増殖因子類似体を合成する方法:本発明の類似体の合成は、当該技術分野で周知の多様な化学的方法のいずれかにより達成することができる。そのような方法には、多くの市販のペプチド合成機のうちのいずれかによる、ベンチスケール固相合成及び自動ペプチド合成が含まれる。好ましくは、合成機は、99%を越える1サイクルあたりのカップリング効率を有する。
【0127】
本発明の類似体は、段階的合成によるか、又は同様の周知の技術によりカップリングできる一連のフラグメントの合成により産生することができる。例えば、Nyfeler, Peptide synthesis via fragment condensation. Methods Mol. Biol. 35:303-16 (1994);及びMerrifield, Concept and early development of solid-phase peptide synthesis. Methods in Enzymol. 289:3-13 (1997)を参照すること。これらの方法は、個別のペプチドを調製するのに日常的に使用されている。本発明の類似体を、X、Y及びZ成分を構成するペプチドのような成分の部分から組み立て、その後、そのような成分の部分を類似体に組み立てることが可能である。例えば、Dawson and Kent, Synthesis of native proteins by chemical ligation. Annu. Rev. Biochem. 69:923-960 (2000);及びEom et al., Tandem ligation of multipartite peptides with cell-permeable activity. J. Am. Chem. Soc. 125:73-82 (2003)を参照すること。しかし、好ましい実施態様において、本発明の化合物は、樹脂に結合している式I〜VIのZ領域のC末端残基及び段階的に進行する合成を用いて、固相合成により合成される。樹脂からのペプチドの開裂の前、その間又はその後のいずれかでの脱保護のために、必要であれば、従来の保護基が用いられる。単なる例として、式IのR1の位置のものに加えて、1つ以上のリシン残基を含む本発明の化合物において、そのような追加的なリシン残基は、保護基により慣用的に保護され、合成の後で脱保護される。
【0128】
HBGFRへの結合のように、望ましい特性のためにスクリーニングするのに使用できるペプチドライブラリーは、これらの方法を適合させて調製できる。例えば、 Fox, Multiple peptide synthesis, Mol. Biotechnol. 3:249-58 (1995);及びWade and Tregear, Solid phase peptide synthesis: recent advances and applications. Austral. Biotechnol. 3:332-6 (1993)を参照すること。
【0129】
特定の実施態様において、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアゴニストである。HBGFRに結合すると、合成HBGF類似体は、HBGFRによるシグナルを開始する。
【0130】
別の特定の実施態様において、本発明の合成HBGF類似体は、HBGFRのアンタゴニストである。HBGFRに結合すると、合成HBGF類似体は、HBGFRによるシグナル伝達を阻止する。
【0131】
特定の態様において、本発明は、細胞と、式I〜VIの合成HBGF類似体の有効量とを接触させることによって、細胞における増殖因子レセプターシグナル伝達を刺激する方法を提供する。有効量は、当業者によって容易に決定することができる。シグナル伝達は、細胞からのサイトカイン放出、細胞の増殖又は分化の刺激又は阻害、細胞の走化性、哺乳動物の免疫系の刺激又は阻害により生じることができる。
【0132】
本発明のHBGFの使用方法:例えば癌療法及び放射線防護での使用を含む、例えば多様な疾患の予防又は治療のための可溶性薬剤としての投与のような、可溶性の予防又は治療用医薬品を含む、多数の方法で有用な生物活性分子の費用効果の高い潜在的に無制限の供給源を提供する。
【0133】
本発明の合成HBGF類似体は、例えば、細胞の成長および増殖を刺激するため又は傷を治癒するための、例えば生物学的反応を促進する縫合糸、移植片及び医用器具のような医療装置の被覆用の生物活性剤としても有用である。
【0134】
一つの態様において、本発明は、放射線の有害な量に暴露された哺乳類を治療する方法及び組成物を提供する。方法は、FGF類似体である本発明の合成HBGF類似体の有効量を哺乳動物に投与することを含む。この治療は、粘膜炎、胃腸管系症候群(GI症候群)又は放射線への暴露により起こりうるような放射線壊死の予防又は治療に特に有用である。HBGF類似体は、非経口、経口、又は局所投与することができる。あるいは、HBGF類似体は、例えば類似体被覆医療装置により局所領域的に送達できる。関連する実施態様において、本発明は、化学療法剤の毒性を改善する用量の化学療法剤を哺乳動物に投与する、哺乳動物の治療方法を提供する。上記に記載された特定の実施態様において、哺乳動物はヒトである。方法の別の特定の実施態様において、HBGF類似体は、FGF−2類似体又はFGF−7類似体である。
【0135】
別の態様において、本発明は、BMP−2の類似体のような、BMP HBGFRに反応性のあるX領域を有する本発明のHBGF類似体を提供することによる、骨損傷のある哺乳動物を治療する方法及び組成物を提供する。例えば、本発明のそのようなHBGF類似体を、医薬品として投与することができるか、又は骨基質若しくは骨移植材料への添加剤として用いることができる。
【0136】
別の態様において、本発明は、細胞又は臓器移植部位を調製するための方法及び組成物を提供する。一つの実施態様において、本発明のFGF−2のホモ二量体HBGF類似体を、経皮経路により投与して、インスリン分泌膵臓細胞の移植の前に、局所血管形成を刺激し、それによって移植細胞の生存を改善する。同様に、本発明のFGF−2のホモ二量体HBGF類似体は、筋幹細胞の移植の前に虚血性心臓組織に投与される。
【0137】
別の態様において、本発明は、医療装置の血液接触表面への細胞付着及びその上での細胞保持を増やす方法及び組成物を提供する。一つの実施態様において、本発明のVEGFのホモ二量体HBGF類似体を、血管移植片材料に適用し、これにより、結合された類似体が血液から循環内皮幹細胞を動員して結合させ、それによって移植片表面の内皮化をもたらし、それによりもたらされた長期血栓抵抗性が移植片に付与される。
【0138】
別の態様において、本発明は、膜誘導組織増殖を増加及び提供する方法及び組成物を提供する。
【0139】
別の態様において、本発明は、潰瘍を含む治療が困難な皮膚損傷の治療のための方法及び組成物を提供する。一つの実施態様において、TGF−β1のホモ二量体HBGF類似体を、潰瘍化褥瘡及び同様の治療が困難な皮膚損傷の治療のために、薬学的に許容されるクリーム又はゲルで局所適用する。
【0140】
なお別の態様において、本発明は、インビトロで細胞集団を選択的に増加する方法及び組成物を提供する。例えば、TGF−β1のホモ二量体HBGF類似体を、組織培地中で配合して、軟骨細胞、軟骨細胞を生じる幹細胞又は軟骨細胞を生じる多機能細胞の増殖を特異的に刺激する。同様に、VEGFのホモ二量体HBGF類似体を用いて、内皮細胞の増殖を刺激することができる。
【0141】
本明細書で使用されるとき、用語「医療装置」は、生物体、好ましくは哺乳動物、特にヒトにおいて、臓器、組織、血液又は他の体液に接触する1つ以上の表面を有する装置を意味する。医療装置には、例えば、患者に戻される血液に接触する、血液酸素供給器、血液ポンプ、血液センサー、血液を運ぶ管などのような外科手術で使用される体外装置が含まれる。この用語は、血管又は心臓に移植された、移植血管、ステント、ペースメーカー導出、心臓弁などのようなヒト又は動物の体内において血液に接触するように移植された内部人工器官も含むことができる。この用語は、更に、モニタリング又は修復の目的で血管又は心臓に入れられたカテーテル、ガイドワイヤなどのような、一時的な血管内使用のための装置を含むことができる。この用語は、更に、神経電極、筋肉電極、植え込み型パルス発生器、植え込み型薬剤ポンプ、及び細動除去器を含むことができる。更に、医療装置という用語は、縫合糸、移植片材料、創傷被覆、神経誘導、骨ロウ、動脈瘤コイル、塞栓形成粒子、マイクロビーズ、人工歯根、人工骨、組織骨格、人工関節、又は制御放出薬剤送達装置を含むことができる。
【0142】
医療装置の表面は、例えば、ステンレススチール、チタン、白金、タングステン、セラミック、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、発泡ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリカプロラクトン、ポリアクチド、ポリグリコシド、ポリシロキサン(例えば、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン)、天然ゴム若しくは人造ゴム、又はこれらのブロックポリマー若しくはコポリマーのような、医療装置での使用が適切な慣用的に使用される材料のいずれかにより形成することができる。
【0143】
生物分子を医療装置の表面に被覆する方法は既知である。例えば、米国特許第5,866,113号(Hendriksら)を参照すること(この明細書は参照により本明細書に組み込まれる)。米国特許第5,955,588号(Tsangら)は、抗血栓性被覆組成物及び医療装置におけるその使用方法を教示し、参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第6,342,591号(Zamoraら)は、細胞付着組成物を調節するための、医療装置用の両親媒性被覆を教示し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0144】
一つの実施態様において、本発明は、活性ペプチドを哺乳動物へ送達する方法を提供し、その方法は、(i)医療装置の表面に非共有結合で結合している式I〜VIの合成HBGF類似体で表面が被覆されている医療装置を提供すること、及び(ii)医療装置を哺乳動物の表面に設置するか又は医療装置を哺乳動物の中に移植することを含む。
【0145】
上記の方法の特定の実施態様において、非共有結合は、合成HBGF類似体のヘパリン結合ドメインと、医療装置の表面に結合しているヘパリン含有化合物との間の会合である。医療装置の表面に結合しているヘパリン含有化合物は、例えばベンジル−ビス(ジメチルシリルメチル)オキシカルバモイル−ヘパリンのような、あらゆるヘパリン含有化合物であることができる。
【0146】
上記の方法の別の特定の実施態様において、医療装置は、式I〜VIの合成HBGF類似体で被覆される前に、ヘパリン含有化合物でプレコートされていない。
【0147】
ヘパリン結合増殖因子類似体の医薬用途:本発明のHBGF類似体を、医療用途と畜産又は獣医用との両方において医薬組成物の活性成分として使用することができる。典型的には、HBGF類似体又は医薬組成物は、ヒトで使用されるが、他の哺乳動物で使用することもできる。用語「患者」は、個々の哺乳類を示すことが意図され、明細書及び請求項全体を通してそのように使用される。本発明の主な用途はヒトの患者に関わるが、本発明は、実験室、農場、動物園、野生、ペット、競技用、又は他の動物に適用することができる。
【0148】
本発明のHBGF類似体は、任意の薬学的に許容される塩の形態であることができる。用語「薬学的に許容される塩」は、無機又は有機塩基及び無機又は有機酸を含む、薬学的に許容される非毒性塩基又は酸から調製される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好ましいものは、アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチル−モルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどのような、第一級、第二級及び第三級アミン、天然に生じるアミンを含む置換アミン、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0149】
本発明のHBGF類似体が塩基性である場合、酸付加塩は、無機及び有機酸を含む薬学的に許容される非毒性酸から調製することができる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、カルボン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが含まれる。本発明のHBGF類似体の酸付加塩は、HBGF類似体に適切な溶媒と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸又はメタンスルホン酸のような酸の過剰量で調製される。酢酸塩形態が特に有用である。本発明のHBGF類似体が酸性部分を含む場合、適切な薬学的に許容される塩は、ナトリウム若しくはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、又はカルシウム若しくはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩を含むことができる。
【0150】
本発明は、本発明のHBGF類似体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。担体は、液体配合物であることができ、一つの実施態様において、緩衝された等張の水溶液であることができる。薬学的に許容される担体は、本明細書後記で記載される、稀釈剤、担体などのような賦形剤、及び安定剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤などのような添加剤も含む。
【0151】
したがって、本発明のHBGF類似体組成物は、本発明のHBGF類似体の少なくとも1つを、所望であれば、稀釈剤、担体などのような賦形剤、及び安定剤、防腐剤、可溶化剤、緩衝剤などのような添加剤を含む薬学的に許容される担体の1つ以上と一緒に含む、医薬組成物に配合又は混合することができる。配合賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ヒドロキシセルロース、アカシア、PEG、PEO、マンニトール、塩化ナトリウム又はクエン酸ナトリウム、並びにスクロース、デキストロース、ラクトースなど及び前記の組み合わせを含むいくつもの単糖類を含むことができる。注入又は他の液体投与製剤では、少なくとも1つ以上の緩衝構成成分を含む水が好ましく、安定剤、防腐剤及び可溶化剤を用いることもできる。固体投与製剤では、デンプン、糖、脂肪酸などのような、多様な増粘、充填、増量及び担体添加剤のいずれかを用いることができる。局所投与製剤では、多様なクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどのいずれかを用いることができる。大部分の医薬製剤では、非活性成分が、重量又は容量に基づいて調合剤の大部分を構成する。医薬製剤では、多様な計量放出、徐放又は徐効製剤及び添加剤のいずれかを用いることができることも考慮され、これによって本発明のHBGF類似体の送達を経時的に実施するように、用量を配合することができる。
【0152】
実際に使用する場合には、本発明のHBGF類似体を、活性成分として、従来の医薬混合技術に従って医薬担体と混合物中で組み合わせることができる。担体は、例えば経口、非経口(静脈内を含む)、尿道、膣内、経鼻、口腔内、舌下などの投与に望ましい調製形態に応じた多様な形態を取ることができる。組成物を経口投与形態に調製するには、例えば懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような経口液体調合剤の場合は、例えば水、グリコール、油、アルコール、風味剤、防腐剤、着色剤などのような、又は例えば粉末剤、硬質及び軟質カプセル剤及び錠剤のような経口固体調合剤の場合は、デンプン、糖、微晶質セルロース、稀釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのような担体のような、通常の医薬媒質のいずれかを用いることができる。
【0153】
注入用に適切な医薬形態には、滅菌水性液剤又は分散剤、及び滅菌注入用液剤又は分散剤のその場での調製用の滅菌粉末剤が含まれる。全ての場合において、形態は滅菌でなければならず、シリンジにより投与できる程度に流体でなければならない。形態は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール、例えばグリセロール、プロピレングルコール又は液体ポリエチレングルコール、これらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散体媒質であることができる。
【0154】
HBGF類似体医薬組成物が注入により投与される場合、注入は、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は当該技術分野で既知の他の方法であることができる。あるいは本発明のHBGF類似体を、当該技術分野で既知のあらゆる方法により、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、懸濁剤、粉末剤、凍結乾燥調合剤、坐剤、点眼薬、皮膚パッチ剤、経口可溶性製剤、噴霧剤、エアゾール剤などが含まれるが、これらに限定はされない製剤に配合することができ、緩衝剤、結合剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤及び当該技術で既知の他の作用物質と混合し、配合することができる。一般に、本発明のHBGF類似体が細胞の表皮層を越えて導入される、あらゆる投与経路を用いることができる。したがって投与方法には、粘膜を通す投与、口腔内投与、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、尿道投与、膣内投与などが含まれる。
【0155】
一般に、患者に投与される本発明のHBGF類似体の実際の量は、投与様式、使用される製剤、及び望ましい反応に応じてかなり広範囲にわたって変わる。前記の方法のいずれかにより又は当該技術分野で既知の他の方法のいずれかにより、望ましい治療効果をもたらすのに十分な量の治療用量が投与される。
【0156】
ヘパリン結合増殖因子:線維芽細胞増殖因子FGFは、間葉、上皮及び神経外胚葉細胞型の正常な増殖及び分化を制御する関連するタンパク質のファミリーを構成する。相同体は、多種多様な種で見出されている。FGFは、ヘパリンに非常に高い親和性を示し、したがって、ヘパリン結合増殖因子(HBGF)とも称される。本明細書中で使用されるように、用語HBGFには、全てのFGFが含まれる。
【0157】
2つの主要な型のFGFが知られている。FGFの第1の型は、最初に脳組織から単離された。これは、3T3細胞のようなネズミ線維芽細胞に対するその増殖促進活性により同定された。その塩基性のpIのため、因子は、塩基性FGF(bFGF又はHBGF−2、ヘパリン結合増殖因子−2)と命名され、現在は、一般にFGF−2と称される。これはFGFファミリーのプロトタイプである。
【0158】
同様に脳組織から単離されているFGFの別の型は、酸性FGF(aFGF、またHBGF−1、ヘパリン結合増殖因子−1又はHBGF−α、ヘパリン結合増殖因子αとしても知られている)であり、現在、一般にFGF−1と称される。これは、筋芽細胞に対するその増殖促進活性による同定された。
【0159】
同じファミリーに属する他の線維芽細胞増殖因子には、FGF−3(又はHBGF−3、ヘパリン結合増殖因子3、元はint−2と称される;Fekete, Trends in Neurosci. 23:332 (2000)を参照すること)、FGF−4(又HBGF−4、ヘパリン結合増殖因子4、最初は腫瘍遺伝子hstの産物として認識される;Sakamoto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:12368-7を参照すること)、及びFGF−5(元はHBGF−5と称される、Bates et al. Biosynthesis of human fibroblast growth factor 5. Mol. Cell. Biol. 11:1840-1845 (1991); Burgess and Maciag, The heparin-binding (fibroblast) growth factor family of proteins. Ann. Rev. Biochem. 58: 575-606 (1989);及びZhan et al. The human FGF-5 oncogene encodes a novel protein related to fibroblast growth factors. Mol. Cell. Biol. 8:3487-3495 (1988)を参照すること)が含まれる。
【0160】
FGF−6は、HBGF−6としても知られており、時々、hst−2又は腫瘍遺伝子hst−1関連増殖因子と称される(Iida et al. Human hst-2 (FGF-6) oncogene: cDNA cloning and characterization. Oncogene 7:303-9 (1992);及びMaries et al. Characterization of the HST-related FGF-6 gene, a new member of the fibroblast growth factor gene family. Oncogene 4:335-40 (1989)を参照すること)。
【0161】
FGF−7又はK−FGFは、KGF又はケラチノサイト増殖因子としても知られている(Aaronson et al. Keratinocyte growth factor. A fibroblast growth factor family member with unusual target cell specificity. Annals NY Acad. Sci. 638:62-77 (1991)); Finch et al. Human KGF is FGF-related with properties of a paracrine effector of epithelial cell growth. Science 245:752-5 (1989); Marchese et al. Human keratinocyte growth factor activity on proliferation and differentiation of human keratmocytes: differentiation response distinguishes KGF from EGF family. J. Cellular Physiol. 144: 326-32 (1990)を参照すること)。
【0162】
FGF−8は、アンドロゲン誘導増殖因子AIGFと同一であることが見出されており、十分に研究されてきた(Blunt et al. Overlapping expression and redundant activation of mesenchymal fibroblast growth factor (FGF) receptors by alternatively spliced FGF-8 ligands. J. Biol. Chem. 272:3733-8 (1997); Dubrulle et al. FGF signaling controls somite boundary position and regulates segmentation clock control of spatiotemporal Hox gene activation. Cell 106:219-232 (2001); Gemel et al. Structure and sequence of human FGF8. Genomics 35:253-257 (1996); Tanaka et al. A novel isoform of human fibroblast growth factor 8 is induced by androgens and associated with progression of esophageal carcinoma. Dig. Dis. Sci. 46:1016-21 (2001)を参照すること)。
【0163】
FGF−9は、元はグリア活性化因子又はHBGF−9と呼ばれていた。Miyamoto et al. Molecular cloning of a novel cytokine cDNA encoding the ninth member of the fibroblast growth factor family, which has a unique secretion pattern. Mol. Cell. Biol. 13:4251-9 (1993);及びNaruo et al. Novel secretory heparin-binding factors from human glioma cells (glia-activating factors) involved in glial cell growth. J. Biol. Chem. 268: 2857-64 (1993)を参照すること。
【0164】
FGF−10は、KGF−2、ケラチノサイト増殖因子2とも称される(Kok et al. Cloning and characterization of a cDNA encoding a novel fibroblast growth factor preferentially expressed in human heart. Biochem. Biophys. Res. Comm. 255:717-721, (1999)を参照すること)。
【0165】
幾つかのFGF関連因子が線維芽細胞増殖因子相同性因子(FHF)として記載されており、FGF−11(FHF−3)、FGF−12(FHF−1)、FGF−13(FHF−2、Greene et al. Identification and characterization of a novel member of the fibroblast growth factor family. Eur. J. Neurosci. 10:1911-1925 (1998)を参照すること)及びFGF−14(FHF−4)とも称される。
【0166】
FGF−15は、神経系の発生中で発現し、転写因子E2A−Pbx1により調節される遺伝子として同定された。McWhirter et al. A novel fibroblast growth factor gene expressed in the developing nervous system is a downstream target of the chimeric homeodomain oncoprotein E2A-Pbx1. Development 124:3221-3232 (1997)。
【0167】
FGF−16を、207アミノ酸のFGFを発現する相同性に基づくポリメラーゼ鎖反応により、ラットの心臓からcDNAクローンとして単離した。FGF−16はFGF−9と73%同一である。Miyake et al. Structure and expression of a novel member, FGF-16, of the fibroblast growth factor family. Biochem. Biophys. Res. Commun. 243:148-152 (1998).
【0168】
FGF−17をコードするcDNAを、ラットの胚から単離し、216アミノ酸のタンパク質をコードする。3T3線維芽細胞で発現すると、マウスFGF−17は形質転換している。胚形成の際に、FGF−17は、前脳、中脳−後脳接合部、骨格発生及び動脈発生の特定の部位で発現する。Hoshikawa et al. Structure and expression of a novel fibroblast growth factor, FGF-17, preferentially expressed in the embryonic brain. Biochem. Biophys. Res. Commun. 244:187-191 (1998);及びXu et al. Genomic structure, mapping, activity and expression of fibroblast growth factor 17. Mechanisms of Development 83:165-178 (1999)を参照すること。
【0169】
FGF−18をコードするcDNAを、ラットの胚から単離し、207アミノ酸のタンパク質をコードする。FGF−18は、グリコシル化されたタンパク質であり、FGF−8及びFGF−17に最も類似している。組み換えネズミFGF−18の注入は、間葉と上皮の両方由来の組織において、特に肝臓及び小腸において、増殖を誘発することが示された。組み換えラットFGF−18は、PC12細胞において神経突起成長を誘発する。組み換えネズミFGF−18タンパク質は、インビトロでNIH 3T3線維芽細胞の増殖をヘパラン硫酸依存的に刺激する。一般的な情報については、Hu et al. FGF-18, a novel member of the fibroblast growth factor family, stimulates hepatic and intestinal proliferation. Mol. Cell. Biol. 18:6063-6074 (1998);及びOhbayashi et al. Structure and expression of the mRNA encoding a novel fibroblast growth factor, FGF-18. J. Biol. Chem. 273:18161-18164 (1998)を参照すること。
【0170】
FGF−19は、FGFファミリーの他のファミリーとかすかに関係している。FGF−19mRNAは、胎生軟骨、皮膚及び網膜、並びに成人の胆嚢を含む幾つかの組織で発現する。これは、結腸腺癌細胞株で過剰発現する。FGF−19は、FGF−4レセプターに対して高い親和性のあるヘパリン依存性リガンドである。Xie et al. FGF-19, a novel fibroblast growth factor with unique specificity for FGFR4 Cytokine 11:729-735 (1999)を参照すること。
【0171】
FGF−20は、正常な脳、特に小脳及び一部の癌細胞株で発現する。FGF−20mRNAは、黒質緻密部で優先的に発現する。組み換えFGF−20タンパク質は、多様な細胞型でDNA合成を誘導し、複数のFGFレセプターにより認識される。FGF−20は腫瘍遺伝子のように機能し、3T3線維芽細胞株で発現すると、形質転換表現型を生じる。これらの形質転換細胞は、ヌードマウスにおいて腫瘍形成性である。Jeffers et al. Identification of a novel human fibroblast growth factor and characterization of its role in oncogenesis. Cancer Res. 61:3131-8 (2001);及びOhmachi et al. FGF-20, a novel neurotrophic factor, preferentially expressed in the substantia nigra pars compacta of rat brain. Biochem. Biophys. Res. Commun. 277:355-60 (2000)を参照すること。
【0172】
FGF−21をマウスの胚から単離した。FGF−21mRNAは、肝臓で最も豊富にあり、胸腺ではレベルが低い。FGF−21は、ヒトFGF−19に最も類似している。Nishimura et al. Identification of a novel FGF, FGF-21, preferentially expressed in the liver. Biochim. Biophys. Acta 1492:203-6 (2000)を参照すること。
【0173】
FGF−22(170アミノ酸)をコードするcDNAを、ヒトの胎盤から単離した。FGF−22は、FGF−10及びFGF−7に最も類似している。ネズミFGF−22mRNAは、皮膚に優先的に発現する。皮膚におけるFGF−22mRNAは、毛嚢の内毛根鞘で優先的に見出される。Nakatake et al. Identification of a novel fibroblast growth factor, FGF-22, preferentially expressed in the inner root sheath of the hair follicle. Biochim. Biophys. Acta 1517:460-3 (2001)を参照すること。
【0174】
FGF−23は、FGF−21及びFGF−19に最も類似している。ヒトFGF−23遺伝子は、ヒトFGF−6遺伝子に結合する染色体12p13に位置する。FGF−23mRNAは、主に脳に(視床腹外側核に優先的に)発現し、胸腺に低レベルで発現する。FGF−23遺伝子のミスセンス突然変異は、常染色体優性低リン酸血症性くる病の患者で見出された。FGF−23の過剰産生は、腎臓リン酸の消耗により引き起こされる低リン酸血症により特徴づけられる腫瘍随伴性疾患である、腫瘍誘発骨軟化症を引き起こす。Yamashita et al. Identification of a novel fibroblast growth factor, FGF-23, preferentially expressed in the ventrolateral thalamic nucleus of the brain. Biochem. Biophys. Res. Commun. 277:494-8 (2000);及びShimada et al. Cloning and characterization of FGF23 as a causative factor of tumor-induced osteomalacia. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 98:6500-5 (2001)を参照すること。
【0175】
HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進因子)を、最初に、幾つかの種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離し、それは、ヘパリン結合神経突起促進因子と同一である。Huber et al. Amino-terminal sequences of a novel heparin- binding protein with mitogenic activity for endothelial cells from human bovine, rat, and chick brain: high interspecies homology. Neurochem. Res. 15:435-439 (1990)を参照すること。
【0176】
HB−GAF(ヘパリン結合増殖関連因子)は、HBNF(ヘパリン結合神経突起促進因子)と同一な神経栄養及び分裂促進因子である。Kuo et al. Characterization of heparin-binding growth-associated factor receptor in NIH 3T3 cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 182:188-194 (1992)を参照すること。
【0177】
HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)は、細胞株U937の調整培地で見出され、また、マクロファージ及びヒト血管平滑筋細胞により合成される。HB−EGFは、86アミノ酸のモノマーヘパリン結合O−グリコシル化タンパク質であり、208アミノ酸の前駆体からプロセスされる。HB−EGFの幾つかの切断型が記載されている。HB−EGFは、NIH 3T3細胞、ケラチノサイト及び平滑筋細胞にとって強力な分裂促進因子であるが、内皮細胞にとってはそうではない。平滑筋細胞に対する分裂促進活性は、EGFよりもかなり強力であり、細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの相互作用を伴うと思われる。HB−EGFは創傷液の主要な増殖因子成分であり、創傷治癒に重要な役割を果たすことができる。Abraham et al. Heparin-binding EGF-like growth factor: characterization of rat and mouse cDNA clones, protein domain conservation across species, and transcript expression in tissues. Biochem. Biophys. Res. Commun. 190:125-133 (1993); Higashiyama et al. A heparin-binding growth factor secreted by macrophage like cells that is related to EGF. Science 251:936-9 (1991);及びMarikovsky et al. Appearance of heparin-binding EGF-like growth factor in wound fluid as a response to injury. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90:3889-93を参照すること。
【0178】
HBNF(ヘパリン結合神経突起促進因子)とも称されるHB−GAM(ヘパリン結合増殖関連分子)は、幾つかの種の脳組織からヘパリン結合タンパク質として単離された15.3kDaのタンパク質である。HB−GAMは、軟寒天においてSW−13細胞の増殖を促進する。Courty et al. Mitogenic properties of a new endothelial cell growth factor related to pleiotrophin. Biochem. Biophys. Res. Commun. 180: 145-151 (1991);及びHampton et al. Structural and functional characterization of full-length heparin-binding growth associated molecule. Mol. Biol. Cell. 3:85-93 (1992)。
【0179】
TGF−ベータ(TGF−β)は、TGF−αと関係しない、既知のTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4及びTGF−β5の少なくとも5個のアイソフォームで存在する。これらのアミノ酸配列は、70〜80%のオーダーで相同性を示す。TGF−β1が一般的な形態であり、ほぼ偏在的に見出されるが、他のアイソフォームは、細胞及び組織のより限定された範囲で発現する。
【0180】
TGF−ベータは、TGF−ベータスーパーファミリーとして知られているタンパク質のファミリーのプロトタイプである。このファミリーには、インヒビン、アクチビンA、MIS(ミュラー活性化物質)及びBMP(骨形成タンパク質)が含まれる。Burt, Evolutionary grouping of the transforming growth factor-beta superfamily. Biochem. Biophys. Res. Commun. 184:590- 5 (1992)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0181】
実施例1.本発明の化合物を、Xが配列AISMLYLDEKVVL(配列番号105)を有するBMP−2レセプター結合アミノ酸配列であり、ここで配列が、R2が0原子であり、そしてR1がリシンである式IのR1の三官能性アミノ酸から平行に成長している一般構造式Iを用いて、固相ペプチド化学により合成した。得られた合成増殖修飾因子類似体は、以下の特定の構造:
【0182】
【化7】

【0183】
であり、時々、B2A2−K−NSと称される。前記の構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、時々、「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。この単一の文字は、天然にコードされたアミノ酸のための標準的なアミノ酸単一文字略号である。
【0184】
実施例2.本発明の化合物を、Xが配列LYFDESSNVILKK(配列番号106)を有するBMP−2レセプター結合アミノ酸配列であり、ここで配列が、R2が0原子であり、そしてR1がリシンである式IのR1の三官能性アミノ酸から平行に成長している一般構造式Iを用いて、固相ペプチド化学により合成した。得られた合成増殖修飾因子類似体は、以下の特定の構造:
【0185】
【化8】

【0186】
であり、時々、B7A1−K−NSと称される。前記の構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、時々、「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。この単一の文字は、天然にコードされたアミノ酸のための標準的なアミノ酸単一文字略号である。
【0187】
実施例3.本発明の化合物を、Xが配列ISMLYLDENEKVVLKNY(配列番号30)を有するBMP−2レセプター結合アミノ酸配列であり、ここで配列が、R1がリシンである式IのR1三官能性アミノ酸から平行に成長している一般構造式Iを用いて、固相ペプチド化学により合成する。得られた合成増殖修飾因子類似体は、以下の特定の構造:
【0188】
【化9】

【0189】
である。
【0190】
前記の構造において、「Ahx」は6−アミノヘキサン酸であり、時々、「6−Ahx」又は「Hex」とも称される。この単一の文字は、天然にコードされたアミノ酸のための標準的なアミノ酸単一文字略号である。
【0191】
実施例4.合成FGF類似体YRSRKYSSWYVALKRK(H−YRSRKYSSWYVALKR)−Ahx−Ahx−Ahx−RKRKLDRIAR−NH2は、標準固相ペプチド合成法により合成した。化合物YRSRKYSSWYVALKRK(H−YRSRKYSSWYVALKR)−Ahx−Ahx−Ahx−RKRKLDRIAR−NH2において、式IのR1基は、単一の三官能性アミノ酸残基であり、ここではジアミノアミノ酸、リシン(K)であった。実施例4のペプチドは、推定分子量の5681を有する。
【0192】
実施例4のペプチドを、反復サイクルでアミノ基を一時的に保護するためにFmoc化学を使用して、置換樹脂で固相合成により段階的に組み立てた。保護基は必要に応じて使用した。鎖の分岐は、単一のリシル残基のαアミノ基及び側鎖アミノ基からの同一の鎖の段階的な成長によって達成された。完成したペプチド鎖を、酸不安定側鎖保護基も除去する酸分解により、C末端アミドとして樹脂から切断した。実施例4のペプチドを、Aが水中の0.1%トリフルオロ酢酸であり、Bがアセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸である、0〜60%のBの連続勾配溶離を1mL/分で60分間実施するC18カラムを使用する、逆相HPLCにより精製した。実施例4の化合物の一般構造を、下記に示す。
【0193】
【化10】

【0194】
実施例5.以下の構造:
T1A1-K-NS
H-PIVYYVGRKPKVEQK(H-PIVYYVGRKPKVEQ)-Ahx-Ahx-Ahx- RKRKLERIAR-NH2
T1A2-K-NS
H-YIWSLDTQYSKVLK(H-YIWSLDTQYSKVL)-AhX-AhX-AhX- RKRKLERIAR-NH2
の2つのペプチドを、実施例4のTGFの類似体として合成した。
【0195】
実施例6.ペプチドを、PDGF−BBの候補アゴニストとして合成し、PBA2−1Cと表した。このペプチドをR1位置で単一のリシン(K)から分岐し、ここで分岐配列CVRKIEIVRKK(配列番号107)のN末端残基はシステイン(C)残基であった。得られた作成物は、2つのX領域がN末端システインでジスルフィド結合により連結している環状ペプチドであった。
【0196】
【化11】

【0197】
ペプチドを、1ml/分の流速(214nmで検出)で60分間実施する0〜60%のアセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸)の直線勾配を使用する、C18カラムのRP−HPLCにより精製した。精製したペプチドは、図6で示されているように、RP−HPLCによる分析で単一の均一ピークを生成した。
【0198】
表面プラスモン共鳴(SPR)分析。実時間生体分子相互作用をBIAcore 2000システム(Biacore Inc., Piscataway, NJ)で分析した。可溶性PDGFレセプター、ヒトPDGF−R−α及びPDGF−R−βの組み換えキメラ(R &D Systems, Minneapolis, MN)を、研究等級CM5チップ(Biacore Inc., Piscataway, NJ)に固定した。EDC/NHSによる活性化に続いて、レセプターを活性化CM5チップに固定した。動態学データを得るために、HBS−EP緩衝剤中の検体の異なる濃度を、50μl/分の流速でセンサーチップの上に注入した。ペプチド結合を共鳴単位(RU)で測定した。それぞれの検体注入の終了時に(120秒)、緩衝剤をセンサーの表面を通過させて、解離相をモニタリングした。ブランクフローセルの基準共鳴を、それぞれの注入用検体についてレセプター含有フローセルから引いて、それぞれの相互作の動態パラメーターを、BIAEVALUATIONソフトウエア(Biacore Inc., Piscataway, NJ)により実験データを1:1相互作用に大域的に当てはめて決定した。会合速度定数及び解離速度定数(それぞれka及びkd)、並びに平衡解離定数(KD)を、レセプター及びPAB2−1について表3で表す。
【0199】
【表3】

【0200】
細胞増殖。細胞増殖に対するPBA2−1Cの効果を、C2C12細胞で決定した。細胞を96ウエルプレートに1ウエルあたり2000細胞で播種し、付着させた。培地を、低血清を含有するものに代えて、10ng/mlのヘパリン、次にPBA2−1を加えた。3日間のインキュベーションの後、細胞数を、Molecular ProbesからのCyQUANT(登録商標) Cell Proliferation Assay Kit (C-7026)で決定した。図7は、細胞増殖に対するペプチドPBA2−1の効果を示す。データは、平均±SDで報告されている。
【0201】
実施例7.以下の一般構造のペプチドを合成する。
【0202】
【化12】

【0203】
望ましい場合には、任意の適切なカルボキシル保護基を、R1の位置でシステインとジスルフィド結合を形成するのに用いた第2のシステインに対して用いる。合成は、保護基なしで進行できるが、ほとんどの合成方法では、保護基を用いることが望ましい。保護基を合成の後に除去することができるか、あるはその場所に放置することができる。一つの実施態様において、メチル、エチル、ベンジル又は置換ベンジルエステルのようなエステルを、C末端保護基として用いる。アリルエステル又はt−ブチルエステルを含む、他のエステルを用いることができる。
【0204】
実施例8.SDF−1の模倣、SD1−1と表されるペプチドを、NovaSyn TGR樹脂(EMD BioSciences, La Jolla, CA)を使用して、標準Fmocプロトコールに従って合成した。アミノヘキサン酸(Ahx)を含むFmocアミノ酸を、Peptides International, Inc. (Lexington, KY)から得た。SD1−1は、以下の配列:
KPVSLSYRAPARFFESHVAK(KPVSLSYRAPARFFESHVA)HXHXHXRKRKLERIAR-アミド
を有する。
【0205】
SDF−1を、1ml/分の流速(214nmで検出)で60分間実施する0〜60%のアセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸)の直線勾配を使用する、C18カラムのRP−HPLCにより精製した。精製したペプチドは、図1で示されているように、RP−HPLCによる分析で単一の均一ピークを生成した。
【0206】
細胞増殖。Sup−T1細胞を、American Type Culture Collection (Manassas, VA)から得て、培養中で増殖させた。細胞増殖に対するSD1−1の効果をモニタリングするために、Sup−T1細胞を、96ウエルプレートに1ウエルあたり100,000細胞で播種し、付着させた。培地を、低血清+SD1−1を含有するものに代え、細胞を3日間インキュベートし、その後、相対的な細胞数を、市販のキットを使用して決定した。ここで図2を参照すると、グラフの下のデータは、平均±SDで報告されている。市販の組み換えヒトSDF−1(菱形)を、SDF−1(三角)により刺激された増殖と比較する基準及び陽性対照として使用した。
【0207】
細胞移動。SD1−1を、市販の細胞移動アッセイを使用して、C2C12細胞の移動を誘導するその能力について評価した。C2C12細胞を、重合コラーゲンの薄層で被覆されている8μm孔径のポリカーボネート膜を含むトランスウエルインサートに播種した。インサートを、SD1−1を含む培地を有するウエルの中に入れた。膜を通して移動する細胞を、インサート膜の底部で見出した。これらの細胞を染色し、染色を抽出し、標準マイクロプレート読取機(560nm)で検出した。ここで図3を参照すると、SD1−1ペプチドに反応した細胞移動の結果が、SDF−1ペプチド又は対照と比較して示されている。データは、平均±SDで報告されている。
【0208】
実施例9.PDGFの模倣、PBA2−1と表されるペプチドを、NovaSyn TGR樹脂(EMD BioSciences, La Jolla, CA)を使用して、標準Fmocプロトコールに従って合成した。アミノヘキサン酸(Ahx)を含むFmocアミノ酸を、Peptides International, Inc. (Lexington, KY)から得た。PBA2−1は、以下の配列:
VRKIEIVRKKK(VRKIEIVRKK)HxHxHxRKRKLERIAR-アミド
を有する。
【0209】
PBA2−1を、1ml/分の流速(214nmで検出)で60分間実施する0〜60%のアセトニトリル/水(0.1%トリフルオロ酢酸)の直線勾配を使用する、C18カラムのRP−HPLCにより精製した。精製したペプチドは、図4で示されているように、RP−HPLCによる分析で単一の均一ピークを生成した。
【0210】
表面プラスモン共鳴(SPR)分析。実時間生体分子相互作用をBIAcore 2000システム(Biacore Inc., Piscataway, NJ)で分析した。可溶性PDGFレセプター、ヒトPDGF−R−α及びPDGF−R−βの組み換えキメラ(R &D Systems, Minneapolis, MN)を、研究等級CM5チップ(Biacore Inc., Piscataway, NJ)に固定した。EDC/NHSによる活性化に続いて、レセプターを活性化CM5チップに固定した。動態学データを得るために、HBS−EP緩衝剤中の検体の異なる濃度を、50μl/分の流速でセンサーチップの上に注入した。ペプチド結合を共鳴単位(RU)で測定した。それぞれの検体注入の終了時に(120秒)、緩衝剤をセンサーの表面を通過させて、解離相をモニタリングした。ブランクフローセルの基準共鳴を、それぞれの注入用検体についてレセプター含有フローセルから引いて、それぞれの相互作の動態パラメーターを、BIAEVALUATIONソフトウエア(Biacore Inc., Piscataway, NJ)により実験データを1:1相互作用に大域的に当てはめて決定した。会合速度定数及び解離速度定数(それぞれka及びkd)、並びに平衡解離定数(KD)を、レセプター及びPAB2−1について表4で表す。
【0211】
【表4】

【0212】
細胞増殖。細胞増殖に対するPBA2−1の効果を、C2C12細胞で決定した。細胞を96ウエルプレートに1ウエルあたり2000細胞で播種し、付着させた。培地を、低血清を含有するものに代えて、10ng/mlのヘパリン、次にPBA2−1を加えた。3日間のインキュベーションの後、細胞数を、Molecular ProbesからのCyQUANT(登録商標) Cell Proliferation Assay Kit (C-7026)で決定した。図5は、PBA2−1ペプチドの濃度範囲にわたる、細胞増殖に対するペプチドPBA2−1の効果を示す。データは、平均±SDで報告されている。
【0213】
前記実施例は、前記実施例で使用された本発明の一般的又は特別に記載されたペプチド配列、反応体及び/又は操作条件を換えて繰り返しても同様の成功を収めることができる。
【0214】
実施例10.ペプチドを、BMP−7の配列に基づいて合成した。ペプチドをB7A1−6と表し、配列:
AISVLYFDDSSNVILKKK(AISVLYFDDSSNVILKK)HxHxHxRKRKLERIAR-アミド
を有した。
【0215】
このペプチドを、C2C12細胞を使用し、組み換えBMP−7の存在下で、終点としてアルカリホスファターゼ産生を使用して評価した。アルカリホスファターゼアッセイを、マウスの多機能細胞株C2C12を使用して実施した。細胞を96ウエル(1×104/ウエル)プレートで平板培養し、24時間かけて付着させた。次に培地を、BMP−7及び/又はB7A1−6を含む低血清培地と代えた。数日後、細胞をすすぎ、溶解し、アルカリフォスファターゼ活性を、p−ニトロフェニルホスフェートを基質として使用して測定した。B7A1−6は、図8で示されているように、BMP−7の活性の用量依存的抑制を有した。
【0216】
実施例11.ペプチドを、G−CSFの配列に基づいて合成し、GCSF1と表した。GCSF1は、配列:
SFLLKALEQVRKIQYK(SFLLKALEQVRKIQY)HxHxHxRKRKLERIAR-アミド
を有した。このペプチドを、0.01ngのrhGCSFの存在下、M−NSF−60細胞を使用して、増殖の増加を評価した。図9で示されているように、市販のMTXキットを使用してモニタリングすると、ペプチドは細胞増殖を増加した。
【0217】
本発明は、好ましい実施態様に対する特定の参照によって詳細に記載されてきたが、他の実施態様でも同じ結果を達成することができる。本発明の変更及び修正は、当業者には明白であり、そのような修正及び等価物は、全て添付の請求項で網羅されていることが意図される。上記で引用された全ての参考文献、出願、特許、及び公報の開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0218】
本発明は、好ましい実施態様の観点から記載されてきたが、多様な修正及び改善を、本発明の範囲を逸脱することなく、記載された実施態様に対して行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明の一つの実施態様のSD1−1類似体のRP−HPLCプロフィールを示す。
【図2】本発明の一つの実施態様の細胞増殖のSDF−1及びSD1−1類似体濃度依存性誘導のグラフを示す。
【図3】本発明の一つの実施態様のSDF−1及びSD1−1類似体誘導細胞移動のグラフを示す。
【図4】本発明の一つの実施態様のPDGF類似体のRP−HPLCプロフィールを示す。
【図5】本発明の一つの実施態様のPDGF類似体PBA2−1を用いる細胞増殖アッセイの結果を示す。
【図6】本発明の一つの実施態様のPBA2−1C類似体のRP−HPLCによる分析を示す。
【図7】本発明の一つの実施態様の細胞増殖に対する類似体PBA2−1の効果を示す。
【図8】本発明の一つの実施態様のB7A1−6類似体によるB7A1−6の活性の用量依存性抑制を示す。
【図9】本発明の一つの実施態様のGCSF−1類似体により増加された細胞増殖を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


〔式中、
Xは、それぞれ、(i)最低3個のアミノ酸残基を有し、(ii)最大約50個のアミノ酸残基を有し、(iii)ヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)に結合する、ペプチド鎖であり;
1は、各Xに共有結合している単一の三官能性アミノ酸残基であり;
2は、それぞれ独立して、R1とXに共有結合している、炭素、酸素、硫黄、窒素及びその混合物を含む0〜約20個の主鎖原子の鎖を含むリンカーであり;
3は、それぞれ、末端基がNH2のように水素(H)であるか、或いはN−末端NH2、NH3+若しくはNH基又は対応するアシル化誘導体を含む直鎖又は分岐鎖C1〜C17のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基であり;
4は、末端基がカルボキシルのようにOHであるか、NH2であるか、N−末端NH2、NH3+若しくはNH基又は対応するアシル化誘導体を含む直鎖又は分岐鎖C1〜C17のアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルケン、アルケニル又はアラルキル鎖を有するアシル基であるか、又はNH−R3であり;
Yは、R1とZに共有結合している0〜約50個の主鎖原子の鎖を含むリンカーであり;そして
Zは、(i)最低1個のヘパリン結合モチーフ、(ii)最大約10個のヘパリン結合モチーフ、及び(iii)最大約30個のアミノ酸を含むアミノ酸配列を含むヘパリン結合ドメインを含む、非シグナル伝達ペプチド鎖である〕
で示される、ヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項2】
X及びZが合成ペプチド鎖である、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項3】
Yが、(i)疎水性であり、(ii)最低約9個、最大約50個の原子の鎖を含み、(iii)Xが結合するヘパリン結合増殖因子レセプター(HBGFR)の天然リガンドにおいて見出されないリンカーを更に含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項4】
ヘパリン結合増殖因子類似体が、合成ヘパリン結合増殖因子類似体が0.15MのNaCl中でヘパリンに結合するが、1MのNaClにより溶離されるようなヘパリン結合活性を有する、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項5】
式II:
【化2】


(式中、R1はジアミンアミノ酸である)
で示される、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項6】
1が、2,3−ジアミノプロピオニルアミノ酸、2,4−ジアミノブチルアミノ酸、リシン及びオルニチンからなる群より選択されるL−又はD−ジアミンアミノ酸残基である、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項7】
式III:
【化3】


〔式中、
Cは炭素であり、Hは水素であり、Nは窒素であり、そしてOは酸素である〕
で示される、請求項5記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項8】
作成物が、式IV:
【化4】


〔式中、
1は、R1の側鎖が反応性スルフヒドリルを含む三官能性アミノ酸であり;そして
2は、側鎖が反応性スルフヒドリルを含む三官能性アミノ酸を含み、ここでR2はジスルフィド結合によりR1に共有結合している〕
で示される、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項9】
1及びR2が、それぞれ独立して、L−又はD−システイン、L−又はD−ペニシラミン、3−メルカプトフェニルアラニン及び前記のいずれかの誘導体からなる群より選択されるL−又はD−3−メルカプトアミノ酸である、請求項8記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項10】
式V:
【化5】


〔式中、
Prg Grpは、OH又はカルボキシ末端保護基であり;そして
Cは炭素であり、Hは水素であり、Nは窒素であり、Oは酸素であり、そしてSは硫黄である〕
で示される、請求項8記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項11】
作成物が、式VI:
【化6】


〔式中、
1は、側鎖が第1反応性基を含む三官能性アミノ酸であり;そして
2は、側鎖が第2反応性基を含む三官能性アミノ酸を含み、ここでR2は、第1反応性基と第2反応性基の間の共有結合によりR1に共有結合している〕
で示される、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項12】
2個の配列が、同一であり、かつヘパリン結合増殖因子レセプターに特異的に結合し、1個の配列が、単一の残基に共有結合している非増殖因子ヘパリン結合配列を含む、単一の残基から分岐している2個の配列を有する合成ペプチドを含む、ヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項13】
非増殖因子ヘパリン結合配列がリンカーにより単一の残基に共有結合している、請求項12記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項14】
リンカーが、2〜約50個の主鎖原子を含む、請求項13記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項15】
単一の残基が三官能性アミノ酸残基を含む、請求項12記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項16】
Yが1〜約33個のエチレングルコール単位を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項17】
Yが、1〜約20個の炭素原子の、分岐鎖又は非分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル鎖を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項18】
Yが、〔NH2−(CH2pCO〕qを含み、ここで、pが1〜約10であり、そしてqが1〜約20である、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項19】
Yが、1〜約16個のGly残基を含むペプチド配列を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項20】
Zのヘパリン結合モチーフが、BxBB又はBBBxxBであり、ここで、Bが、それぞれ独立して、リシン、アルギニン、オルニチン又はヒスチジンであり、そしてxが、それぞれ独立して、天然に生じるアミノ酸である、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項21】
Zが少なくとも2個のヘパリン結合モチーフを含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項22】
1とYの間の共有結合が、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項23】
1と各Xとの間の共有結合が、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項24】
YとZの間の共有結合が、アミド、ジスルフィド、チオエーテル、シッフ塩基、還元シッフ塩基、イミド、第二級アミン、カルボニル、尿素、ヒドラゾン又はオキシム結合を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項25】
Xが、配列番号7から配列番号107のいずれか、その一部分、その相同体、又はその一部分の相同体であり、そしてZが、配列番号1から配列番号6のいずれかを含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項26】
2が、グリシン、直鎖アミノカルボン酸、二官能性アミノ−PEG−酸スペーサー及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1〜約3個のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項27】
Yが、グリシン、直鎖アミノカルボン酸、二官能性アミノ−PEG−酸スペーサー及びこれらの組み合わせからなる群より選択される1〜約10個のアミノ酸残基を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項28】
Xが、FGF−1、FGF−2、FGF−3、FGF−4、FGF−5、FGF−6、FGF−7、FGF−8、FGF−9、FGF−10、FGF−11、FGF−12、FGF−13、FGF−14、FGF−15、FGF−16、FGF−17、FGF−18、FGF−19、FGF−20、FGF−21、FGF−22、FGF−23、HBBM(ヘパリン結合脳分裂促進因子)、HB−GAF(へパリン結合増殖関連因子)、HB−EGF(ヘパリン結合EGF様因子)、HB−GAM(プレイオトロフィン、PTN、HARPとしても知られている、ヘパリン結合増殖関連分子)、TGF−α(形質転換増殖因子α)、TGF−β(形質転換増殖因子β)、VEGF(血管内皮増殖因子)、EGF(表皮増殖因子)、IGF−1(インスリン様増殖因子1)、IGF−2(インスリン様増殖因子2)、PDGF(血小板由来成長因子)、ランテス、SDF−1、分泌ちぢれ毛関連タンパク質1(SFRP−1)、小型誘導性サイトカインA3(SCYA3)、誘導性サイトカインサブファミリーAメンバー20(SCYA20)、誘導性サイトカインサブファミリーBメンバー14(SCYB14)、誘導性サイトカインサブファミリーDメンバー1(SCYD1)、ストローマ細胞由来因子1(SDF−1)、トロンボスポンジン1、2、3及び4(THBS1〜4)、血小板第4因子(PF4)、水晶体上皮由来増殖因子(LEDGF)、ミジキン(MK)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1)、モエシン(MSN)、肝細胞増殖因子(SFとも称される、HGF)、胎盤増殖因子、IL−1(インターロイキン1)、IL−2(インターロイキン2)、IL−3(インターロイキン3)、IL−6(インターロイキン6)、IL−7(インターロイキン7)、IL−10(インターロイキン10)、IL−12(インターロイキン12)、IFN−α(インターフェロンα)、IFN−γ(インターフェロンγ)、TNF−α(腫瘍壊死因子α)、SDGF(シュワン細胞腫由来増殖因子)、神経成長因子、神経突起成長促進因子2(NEGF2)、ニューロトロフィン、BMP−2(骨形成タンパク質2)、OP−1(BMP−7とも称される、骨形成タンパク質1)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、インターフェロンγ誘導性タンパク質20、ランテス、及びHIV−tat−トランス活性化因子、アンフィレグリン(AREG)、血管関連遊走細胞タンパク質(AAMP)、アンギオスタチン、ベータセリン(BTC)、結合組織増殖因子(CTGF)、高システイン血管新生インデューサー61(CYCR61)、エンドスタチン、フラクタルカイン/ニューロアクチン、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、GRO2、肝細胞癌由来増殖因子(HDGF)、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)のうちのいずれかで見出されるアミノ酸配列、又は前記のいずれかで見出されるアミノ酸配列の相同体を含む、請求項1記載のヘパリン結合増殖因子類似体。
【請求項29】
請求項1、5、7、8,10若しくは11のいずれか1項記載のヘパリン結合増殖因子類似体又は薬学的に許容されるその塩と、医薬担体とを含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−531505(P2008−531505A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556427(P2007−556427)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/006397
【国際公開番号】WO2006/091727
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(503044709)バイオサーフェス エンジニアリング テクノロジーズ,インク. (5)
【Fターム(参考)】