説明

単一硬化工程で製造される切り替え可能な狭帯域反射体

本発明は、非反応性液晶および二色性光開始剤の存在下でモノマーを重合し、重合を直線偏光の使用により開始させることによって、多相ポリマーベースフィルムを製造する方法に関し、該初期混合物は、重合前はコレステリックである。本発明は、さらに、本発明に従う方法によって得られ得る多相ポリマーベースフィルム、およびこのようなフィルムを含む製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、切り替え可能な狭帯域または広帯域反射体としての使用に好適な多相ポリマーベースフィルムを製造するための新規な方法、該方法によって得られ得るフィルム、ならびに種々のタイプの機器における切り替え可能な狭帯域または広帯域反射体としての該フィルムの使用に関する。
【0002】
現在、レーザーホログラフィーは、フィルムの奥行き方向における屈折率の調節を有する多相ポリマーベースフィルムを製造するために使用される。これらのフィルムは、切り替え可能な狭帯域反射体として機能し得る。これは、例えば、米国特許第4,938,568号明細書;R.L.Sutherland、「Proc.SPIE」、1989年、1080、83;R.L.Sutherland、「J.Opt.Soc.Am.」、1991年、B 8、1516;R.T.IngwallおよびT.Adams、「Proc.SPIE」、1991年、1555、279;S.Tanakaら、「Proc.SID」、1993年、24、109;T.J.Bunning、L.V.Natarajan、V.P.Tondiglia、R.L.Sutherland、「Annu.Rev.Mater.Sci.」、2000年、30、83;およびM.J.Escuti、G.P.Crawford、「Mat.Res.Soc.Symp.Proc.」、2002年、709、293に記載されている。それらはまた、広帯域反射体として使用され得る。
【0003】
レーザーホログラフィーがモノマーおよび液晶分子の混合物について使用される場合、高分子分散液晶(PDLC)が形成され得る。2つの干渉レーザービームの干渉縞は、ポリマーリッチかつ液晶リッチな層の周期を規定する。この周期は、干渉レーザービームの波長によって物理的に限定される。レーザーホログラフィーは、高価かつ高感度な光学機器を必要とし、そして、レーザービームの直径に起因して小さな領域表面に限定され;したがって、ホログラフィーは、ハイスループットな製造プロセスを好まない。
【0004】
反射回折格子を製造する別の方法は、例えば、EP−A−1087253号明細書;米国特許第5,493,430号明細書;LuおよびMin−Hua、「Journal of Applied Physics」、1997年、81(3)、1063−1066;D.−K.Yang、L−C.ChienおよびY.K.Fung、「Liquid Crystals in Complex Geometries」(G.CrawfordおよびS.Zumer編)、TaylorおよびFrancis、1996年、第5章、103頁;およびH.Yuan、「Liquid Crystals in Complex Geometries」(G.CrawfordおよびS.Zumer編)、TaylorおよびFrancis、1996年、第12章、265頁に記載されるように、キラル液晶の使用であり、それによってコレステリックテクスチャ液晶(CTLC)が形成される。
【0005】
CTLC自体は、コレステリックヘリックスと一致する1つの偏光方向の光のみを反射する。したがって、他の偏光方向の光は、反射されず、しかし、前記フィルムを透過される。このタイプの反射回折格子では、光の半分だけが反射される。エネルギー効率を考慮すると、これは、大抵は望まれない。
【0006】
本発明の目的は、フィルムが使用される際の効率的な光管理を可能にしつつ、多相フィルムのより複雑でない製造方法を提供することである。本発明者らは、非反応性液晶および二色性光開始剤の存在下で反応性モノマーを重合することによって多相ポリマーベースフィルムを製造することが可能であることを見出し、ここで、該重合は、直線偏光を使用することによって開始され、該初期混合物は、重合前はコレステリックである。
【0007】
前記反応性モノマー、前記非反応性液晶、および前記二色性光開始剤は、自己組織化コレステリック混合物を形成する。該コレステリック混合物を直線偏光へ暴露することによって、偏光入射光の電場ベクトルに対して二色性光開始剤の双極子モーメントが平行になる深さで、重合反応が開始する。形成されたポリマーと前記液晶分子との光重合の間に、相分離が生じる。この様式で、屈折率の周期が、該反応混合物のコレステリックピッチおよび該コレステリック混合物を通っての直線偏光の伝播に依存して、得ることが出来る。これらの因子、ならびに反応混合物の組成、光化学および温度を制御することによって、フィルム中の個々の層の厚みを選択しそして反射体の波長を調節する可能性が提供される。
【0008】
干渉レーザー光の代わりに、直線偏光を使用することの可能性は、さらに、広い表面積に対しておよび連続プロセスにおいて本方法を使用することを可能にする。
【0009】
全ての公知の二色性光開始剤が、本発明に従う方法に好適であり、例えば以下が挙げられる:1−(4−エチル−[1,1’;4’,1’’]テルフェニル−4’’−イル)−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン、または1−(4’’−エチル−2’−フルオロ−[1,1’;4’,1’’]テルフェニル−4−イル)−2−メチル−2−モルホリン−4−イル−プロパン−1−オン。
【0010】
例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」、1984年DemusおよびZascke編、VEB Deutscher Verlag fur Grundstoffindustrieに記載されるような、全ての非反応性液晶が、本発明に従う方法における使用に好適である。好適な好ましい非反応性液晶の例は、4−シアノ−4’−n−ペンチルビフェニル、4−シアノ−4’−n−ヘキシルオキシビフェニル、または4−シアノ−4’’−n−ヘキシル−p−テルフェニル等のシアノビフェニルとして当業者に公知であるクラスの材料である。ブレンドすることによって低融点液晶が作製され得るので、ほとんどの場合、液晶のブレンドが使用されている。4つの異なるシアノビフェニルを含有する市販の混合物は、Merck(ドイツ)によって市販されているE7である。本発明の好ましい実施形態において、非反応性液晶は、キラル非反応性液晶である。好適なキラル非反応性液晶の例は、以下である:
【化1】


(商品名Liquid Crystal C15(左旋性)またはCB15(右旋性)でMerckによって市販される)、あるいは
【化2】


(商品名Liquid Crystal S811でMerckによって市販される)。
【0011】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記非反応性液晶は、ネマチック非反応性液晶である。好適なネマチック非反応性液晶の例は、上述されている。
【0012】
用語「反応性モノマー」とは、反応性粒子、即ち、フリーラジカルまたはカチオン性粒子と接触した際に重合するいかなる化合物をも意図する。好ましくは、前記モノマーは、以下のクラスの反応性基を含む分子である:ビニル、アクリレート、メタクリレート、エポキシド、ビニルエーテルまたはチオール−エン。
【0013】
反応性モノマーは、1分子当たり1以上の反応基を有し得る。好ましい実施形態において、2以上の反応基を有する少なくとも1つのモノマーが使用される。これは、重合時に高分子網目構造が形成され、より速い反応および/または得られるフィルムのより良好な機械的特性が生じるという利点を有する。
【0014】
1分子当たり少なくとも2つの架橋基を有する反応性モノマーの例としては、以下が挙げられる:(メタ)アクリロイル基を含むモノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ−およびジ(メタ)アクリレート、C−C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、および前述のモノマーのいずれかのアルコキシル化型、好ましくは、エトキシル化および/またはプロポキシル化、ならびにまた、ビスフェノールAへのエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加化合物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAへのエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加化合物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ジグリシジルエーテルのビスフェノールAへの(メタ)アクリレート付加化合物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレート、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、アクリル酸ヒドロキシエチルの付加化合物(ジイソシアン酸イソホロンおよびアクリル酸ヒドロキシエチル)、アクリル酸ヒドロキシエチルの付加化合物(ジイソシアン酸トルエンおよびアクリル酸ヒドロキシエチル)、ならびにアミドエステルアクリレート。
【0015】
1分子当たり反応性基を1つだけ有する好適なモノマーの例としては、以下が挙げられる:ビニル基を含むモノマー、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン;(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4−ブチルシクロヘキシル、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、モノ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ベータ−カルボキシエチル、フタル酸(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルカルバミルエチル、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル;および下記の一般式(I)によって示される化合物:
CH=C(R)−COO(RO)−R (I)
[式中、Rは、水素原子またはメチル基であり;Rは、2〜8、好ましくは2〜5の炭素原子を含むアルキレン基であり;そしてmは、0〜12、そして好ましくは1〜8の整数であり;Rは、水素原子、または1〜12、好ましくは1〜9の炭素原子を含むアルキル基であるか;あるいは、Rは、1〜2の炭素原子を有するアルキル基で必要に応じて置換された、4〜20の炭素原子を有するテトラヒドロフラン基含有アルキル基であるか;あるいは、Rは、メチル基で必要に応じて置換された、4〜20の炭素原子を有するジオキサン基含有アルキル基であるか;あるいは、Rは、C−C12アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基によって必要に応じて置換された、芳香族基である]、ならびにアルコキシル化脂肪族単官能性モノマー、例えば、エトキシル化イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシル化ラウリル(メタ)アクリレート等。
【0016】
反応性モノマーとしての使用に好適なオリゴマーは、例えば、芳香族または脂肪族ウレタンアクリレートまたはフェノール樹脂に基づくオリゴマー(例えば、ビスフェノールエポキシジアクリレート)、およびエトキシレートで鎖伸長された任意の上記のオリゴマーである。ウレタンオリゴマーは、例えば、ポリオール骨格、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリル系ポリオール等に基づき得る。これらのポリオールは、個々に、または2以上を組み合わせて使用され得る。これらのポリオール中の構造単位の重合の様式に特別な限定はない。ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合のいずれもが、許容可能である。ウレタンオリゴマーの形成のために好適なポリオール、ポリイソシアネートおよびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの例は、国際公開第00/18696号パンフレットに開示されており、これは、参照により本明細書中に援用される。
【0017】
上記材料のいずれの組み合わせも使用され得る。共に架橋相を形成し得、そしてしたがって組み合わせて反応性モノマーとして使用されるに好適である化合物の組み合わせは、例えば、エポキシと組み合わされたカルボン酸および/または無水カルボン酸、ヒドロキシ化合物(例えば、2−ヒドロキシアルキルアミド)と組み合わされた酸、イソシアネート(例えば、ブロックトイソシアネート、ウレトジオン、またはカルボジイミド)と組み合わされたアミン、アミンまたはジシアンジアミドと組み合わされたエポキシ、イソシアネートと組み合わされたヒドラジンアミド、イソシアネートと組み合わされたヒドロキシ化合物(例えば、ブロックトイソシアネート、ウレトジオン、またはカルボジイミド)、無水物と組み合わされたヒドロキシ化合物、(エーテル化)メチロールアミド(「アミノ−樹脂」)と組み合わされたヒドロキシ化合物、イソシアネートと組み合わされたチオール、アクリレートまたは他のビニル性化学種(必要に応じてラジカル開始される)と組み合わされたチオール、アクリレートと組み合わされたアセトアセテート、およびカチオン性架橋が使用される場合、エポキシまたはヒドロキシ化合物とエポキシ化合物である。モノマーの混合物も使用され得る。
【0018】
本発明の別の実施形態において、前記モノマーは、反応性液晶として存在し(exist of)得るかまたはこれを含み得る。好適な反応性液晶の例は、「Photoinitiated polymerization and crosslinking of LC systems’ by DJ.Broer in ‘Radiation curing in polymer science and technology」、1993年、第III巻(12)、383−493頁に与えられている。
【0019】
本発明のなお別の実施形態において、前記モノマーは、キラル液晶性反応性モノマーとして存在し(exist of)得るかまたはこれを含み得る。好適なキラル液晶性反応性モノマーの例は、以下である:
【化3】

【0020】
1つの好ましい実施形態において、キラルおよびネマチック非反応性液晶ならびに二色性光開始剤と共に混合された非液晶性モノマーは、反応混合物を形成する。別の好ましい実施形態において、前記キラル液晶は、反応性であり、そして非液晶性モノマー、ネマチック非反応性液晶および二色性光開始剤と共に反応混合物を形成する。好ましくは、該非反応性液晶または該反応性モノマーのいずれか1つは、キラリティーを含む。反応性モノマーまたは反応性モノマーの混合物は、ポリマーを形成し、これは、該モノマーの性質に依存して、異方性または等方性となる。本発明の好ましい実施形態において、得られるポリマーは、等方性である。これは、均一な屈折率を有し、したがって異方性媒体におけるようなその異なる成分中における光の異なる回折および導光(light guiding)を受けないことによって、利点を有する。
【0021】
前記ポリマーは、その形成時に、液晶相から層分離する。該相は、全ての種類の様式で、例えば液滴様様式でまたは層様式で、分散され得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態において、液晶相は、重合時に、形成されたポリマーから、ポリマーと非反応性液晶との交互層の積み重ねが生じる周期的な様式で分離し、多層フィルムが生じる。これはまた、液晶を含む層が連続層ではない多層化実施形態を含み、例えば、ここで、それは、例えば液晶の液滴の形態で、ポリマー層中に埋め込まれた液晶を含む。
【0023】
前記ポリマー層は、非反応性液晶層を横断するポリマー突起部によって互いに連結され得る。このような突起部は、安定性を増加させ得、そしてフィルムの機械的特性を改善し得る。これらのポリマー突起部は、例えば、硬化光(即ち、UV光または可視光)を用いてのマスクされた暴露によって、多層形成より前に作製され得る。多層形成より前に作製される場合、製造の間の該系のさらなる安定性が与えられる。
【0024】
前記初期混合物の平均キラルピッチは、最終フィルムにおける相の周期を制御する。初期混合物の平均キラルピッチは、好ましくは50〜2000nm、なおより好ましくは200〜500nm、最も好ましくは300〜400nmである。ピッチは、種々の従来の方法によって測定され得る。
【0025】
前記初期混合物のコレステリックピッチは、該混合に渡って均一であり得、あるいは不均一であり得る。初期混合物のコレステリックピッチが不均一である場合、最終フィルムの層周期は均一でない。フィルムのこの不均一性は、2つの方向、フィルムの表面に対して横方向および/または奥行き方向に、存在し得る。周期が横方向において不均一である場合、これは、パターニングを生じ;それによって、異なる波長の光(例えば、赤、緑、および/または青)を反射する領域が形成される。これは、形成されるフィルムをカラーディスプレイにおいて使用することについて好適であり得、それによって、画素は、このような領域に基づき得る。周期が層の奥行き方向において不均一である場合、反射バンドは広げられる。これは、形成されるフィルムを広帯域反射体、サンスクリーン等として使用することについて好適であり得る。
【0026】
非反応性液晶の層は、好ましくは、前記モノマーの重合前の前記ブレンドのそれよりも短いピッチを有するキラルであり;より好ましくは、該ピッチは、前記適用において反射される光の波長よりも短い。例えば、前記適用において反射される光が可視光である場合、非反応性液晶の層におけるピッチは、可視光の波長の範囲よりも短くするべきである。本発明の1実施形態において、非反応性液晶層は、ネマチックであり、かつ、一軸配向されている。一軸配向は、層面に対して平面、傾斜、または垂直で生じ得、好ましくは層面に対して垂直である。本発明の別の実施形態において、非反応性液晶層は、ネマチックであり、かつ、ランダム配向されている。
【0027】
本発明はまた、本発明に従う方法によって得られ得る多相ポリマーベースフィルムに関する。ホログラフィーによって形成される反射回折格子と比較しての本発明の利点は、本発明の方法によれば、多相フィルムについてのサイズ制限が生じず、本方法は、ホログラフィーの場合におけるような高価な光学機器を必要としないことである。さらに本発明は、層周期が横方向および奥行き方向の両方において変化され得ることを可能にし、これは、類似方法で、ホログラフィーによっては実行可能でない。
【0028】
前記液晶相は、例えば液滴の形状でまたは分離層として、ポリマーの層中に埋め込まれ得る。好ましくは、本発明に従うフィルムは、多層フィルムである。本発明のこの実施形態において、フィルムは、好ましくは、少なくとも1層のポリマーおよび1層のネマチック非反応性液晶を含み、それによって、該ネマチック非反応性液晶は、電場によって該ポリマーと同一の屈折率を得ることができる。なおより好ましくは、該ネマチック液晶は、キラルネマチック液晶である。全ての層が同一の厚み、または異なる厚みを有することが可能である。別の実施形態において、同一タイプの全ての層は、同一の厚みを有し、一方、別のタイプの層は全て、異なる厚みを有する。層の厚みは、フィルムの断面に渡って変化することも可能である。
【0029】
本発明の別の実施形態において、前記多層フィルムは、少なくとも1層のポリマーおよび1層のネマチック液晶を含み、これによって、該ネマチック液晶は、該ポリマー面に対して垂直に配向され、そして屈折率が一致され、これによって、それは、電場によって該ポリマーとの屈折率ミスマッチを得ることができる。一般的に、該液晶の屈折率(nLC)および該ポリマーの屈折率(npol)は、いったん偏差が0.005超、好ましくは0.01超、最も好ましくは0.02超となると、不一致となる。
【0030】
本発明の別の実施形態において、前記多層フィルムは、少なくとも1層のポリマーおよび1層のネマチック液晶を含み、これによって、該ネマチック液晶は、該ポリマー面に対して垂直に配向され、そして屈折率が不一致にされ、これによって、それは、電場によって該ポリマーと一致する屈折率を得ることができる。一般的に、該液晶の屈折率(nLC)および該ポリマーの屈折率(npol)は、いったん偏差が0.02未満、好ましくは0.01未満、最も好ましくは0.005未満となると、一致となる。
【0031】
本発明に従うフィルムは、透明電極を備えた透明支持体間に適用され得る。
【0032】
本発明の1実施形態において、本発明に従う方法によって得られ得るフィルムは、切り替え可能な狭帯域反射体として使用され得る。反応性モノマーと非反応性液晶との組み合わせの適用は、電場、磁場、温度、高輝度光等による前記反射体の切り替えを可能にする。該フィルムはまた、例えば、感光性化合物を備え得る。
【0033】
このような狭帯域反射体は、切り替え可能な多層フィルムを必要とする任意の適用、例えば、スイッチ、ディスプレイ、電気通信におけるビームステアリングデバイス、サンスクリーン、化粧コーティング、温室用のフィルム、および他の農業適用において使用され得る。
【0034】
本発明に従うフィルムがサンスクリーンにおいて使用される場合、本発明の1実施形態において、該フィルムは、太陽光での暴露時に屈折率を変化させる感光性材料をさらに含み得る。好ましくは、使用される感光性材料は、液晶状態から等方性状態への転移の結果として、太陽光での暴露時に屈折率を変化させる。
【0035】
本発明の別の実施形態において、本発明に従う方法によって得られ得るフィルムは、上記と同一の目的について広帯域反射体として使用され得る。
【0036】
ここで、本発明を、下記の実施例によって例示する。実施例は、決して本発明を限定するように意図されない。
【0037】
材料
【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

【0038】
実施例1
下記の成分を含む反応性混合物を作製した:
・0.4グラムのモノマー1
・1.0グラムのモノマー3
・0.5グラムのモノマー4
・以下を含有する7.4グラムの液晶混合物:
・50重量%の液晶1
・50重量%の液晶2
・0.1グラムの光開始剤1
【0039】
前記混合物は、液晶であり、そしてキラル−ネマッチクオーダーを有し、キラル−ネマチックからアイソトロピックへのその転移温度は、12℃であった。キラル−ネマチックヘリックスのピッチは370nmであり、そして該材料は555nmの光を反射した。反射された光の強度は、偏光の状態に依存し、即ち、それは右円偏光を反射し、そしてそれは左円偏光を透過した。
【0040】
インジウムスズ酸化物電極を備えたガラスプレートを、30nmポリイミドフィルムをN−メチルピロリドン中のその溶液からスピンコーティングすることによって作製し、180℃で90分間硬化し、引き続いてポリエステル布でラビングした。これらのガラスプレートを2枚、ガラス繊維スペーサーを使用して6マイクロメートル離れて、かつ、前記ポリイミド層が互いに面するように、搭載した。毛管力を使用して室温で、前記ガラスプレート間の空間を等方性混合物で充填することにより、前記反応性混合物の薄膜を形成した。
【0041】
10℃へ冷却後(ここで、前記フィルムは、そのキラル−ネマチック相にあった)、このフィルムを、偏光UV光へ30分間暴露する。該偏光UV光は、蛍光UVランプ(Philips PL10、360nm、5mW/cm)および偏光子(ワイヤーグリッド偏光子、ORIELインストルメンツUV直線二色性偏光子、Fairlight BV、ロッテルダム、NL製)を含むセットアップによって、発生させた。
【0042】
暴露後、前記フィルムを分析し、そしてその特性について試験した。それは、周期的な相分離した液晶リッチ層およびポリマー層を示した。液晶はネマチックであった。該フィルムは、透明な外観を有し、そして45nmの波長の光を反射した。反射された光の強度は、50%を超え、そして入射光の偏光状態とは無関係であった。前記インジウムスズ酸化物電極を使用して断面に渡って60ボルトの電場を印加することによって、前記フィルムは、いかなる反射もない完全な透明となった。
【0043】
比較実験A
照射セットアップ中に偏光子は存在しなかったこと以外は、実施例1と同一の材料および手順を使用した。この場合において、得られたフィルムは、反射よりもむしろ散乱光であった。いくらかの反射(20%未満)を、前記反応混合物と同一の波長:555nmで記録した。この反射は、重合の間、前記コレステリック構造における固定に由来し、そして、それは、明らかに右旋選択的であった。前記フィルムの断面にわたって電圧を印加することによって、前記散乱は調節され得た。いわゆる高分子分散液晶が、ここで形成され、これは、切り替え可能な反射素子を作製するためには適切ではなかった。
【0044】
比較実験B
前記二色性光開始剤を従来の光開始剤(Irgacure 651、CIBA Specialty Chemicals、CH)と取り替えたこと以外は、実施例1と同一の材料および手順を使用した。結果は、比較実験Bのそれと匹敵した。散乱高分子分散液晶が形成された。
【0045】
実施例2
下記の成分を含む反応性混合物を作製した:
・0.5グラムのモノマー2
・1.0グラムのモノマー3
・0.5グラムのモノマー4
・8.0グラムの液晶1
・0.1グラムの光開始剤1
【0046】
前記混合物は、液晶であり、そしてキラル−ネマッチクオーダーを有し、キラル−ネマチックからアイソトロピックへのその転移温度は、40℃であった。キラル−ネマチックヘリックスのピッチは460nmであり、そして該材料は700nmの光を反射した。反射された光の強度は、偏光の状態に依存し、即ち、それは右円偏光を反射し、そしてそれは左円偏光を透過した。
【0047】
インジウムスズ酸化物電極を備えたガラスプレートを、30nmポリイミドフィルムをN−メチルピロリドン中のその溶液からスピンコーティングすることによって作製し、180℃で90分間硬化し、引き続いてポリエステル布でそれをラビングした。これらのガラスプレートを2枚、ガラス繊維スペーサーを使用して6マイクロメートル離れて、かつ、前記ポリイミド層が互いに面するように、搭載した。毛管力を使用して60℃の高温で、前記ガラスプレート間の空間を等方性混合物で充填することにより、前記反応性混合物の薄膜を形成した。
【0048】
60℃の高温で、前記等方性反応混合物を、1分間マスクを介してUV光によって暴露し、重合された壁の間に900×900μmの未反応領域を有する四角形パターンの100μmの壁を作製した。35℃へ冷却後(ここで、前記反応混合物は、キラル−ネマチックである)、壁を有するこのフィルムを、偏光UV光へ30分間暴露した。該UV光は、蛍光UVランプ(Philips PL10、360nm、5mW/cm)を含むセットアップによって発生させ、そして該偏光UV光については、偏光子(ワイヤーグリッド偏光子、ORIELインストルメンツUV直線二色性偏光子、Fairlight BV、ロッテルダム、NL製)を使用した。
【0049】
暴露後、前記フィルムを分析し、そしてその特性について試験した。それは、周期的な相分離した液晶リッチ層および100μmポリマー壁の間の領域においてポリマー層を示した。液晶はネマチックであった。フィルムは、透明な外観を有し、そして650nmの波長の光を反射した。反射された光の強度は、50%を超え、そして入射光の偏光状態とは無関係であった。前記インジウムスズ酸化物電極を使用して断面に渡って60ボルトの電場を印加することによって、前記フィルムは、いかなる反射もない完全な透明となった。
【0050】
比較実験C
照射セットアップ中に偏光子は存在しなかったこと以外は、実施例2と同一の材料および手順を使用した。この場合において、得られたフィルムは、反射よりもむしろ散乱光であり、そして壁は同定されなかった。いくらかの反射(20%未満)を、前記反応混合物と同一の波長:700nmで記録した。この反射は、重合の間、前記コレステリック構造における固定に由来し、そして、それは、明らかに右旋選択的であった。前記フィルムの断面にわたって電圧を印加することによって、前記散乱が調節され得た。いわゆる高分子分散液晶が、ここで形成され、これは、切り替え可能な反射素子としての使用に適切ではなかった。
【0051】
比較実験D
前記二色性光開始剤を、従来の光開始剤(Irgacure 651、CIBA Specialty Chemicals、スイス)と取り替えたこと以外は、実施例2と同一の材料および手順を使用した。結果は、比較実験Cのそれと匹敵した。散乱高分子分散液晶が形成された。
【0052】
実施例3
下記の成分を含む反応性混合物を作製した:
・1.0グラムのモノマー2
・2.0グラムのモノマー3
・1.0グラムの液晶1
・2.0グラムの液晶3
・0.5グラムの光開始剤1
【0053】
前記混合物は、液晶であり、そしてキラル−ネマッチクオーダーを有し、キラル−ネマチックからアイソトロピックへのその転移温度は、42℃であった。キラル−ネマチックヘリックスのピッチは450nmであり、そして該材料は675nmの光を反射した。反射された光の強度は、偏光の状態に依存し、即ち、それは、右円偏光を反射し、そしてそれは左円偏光を透過した。
【0054】
インジウムスズ酸化物電極を備えたガラスプレートを、30nmポリイミドフィルムをN−メチルピロリドン中のその溶液からスピンコーティングすることによって作製し、180℃で90分間硬化し、引き続いてポリエステル布でそれをラビングした。これらのガラスプレートを2枚、ガラス繊維スペーサーを使用して6マイクロメートル離れて、かつ、前記ポリイミド層が互いに面するように、搭載した。毛管力を使用して70℃の高温で、前記ガラスプレート間の空間を充填することにより、前記反応性混合物の薄膜を形成した。
【0055】
38℃へ冷却後(ここで、前記反応混合物は、そのキラル−ネマチック相にあった)、このフィルムを、偏光UV光へ30分間暴露した。該偏光UV光は、蛍光UVランプ(Philips PL10、360nm、5mW/cm)および偏光子(ワイヤーグリッド偏光子、ProFlux偏光子、MOXTEK,Inc.、North Orem、UT 84057製)を含むセットアップによって、発生させた。
【0056】
暴露後、前記フィルムを分析し、そしてその特性について試験した。それは、周期的な相分離した液晶リッチ層およびポリマー層を示した。液晶は、310nmの推定ピッチを有するキラル−ネマチックであった。該フィルムは、透明な外観を有し、そして630nmの波長の光を反射した。反射された光の強度は、50%を超え、そして入射光の偏光状態とは無関係であった。前記インジウムスズ酸化物電極を使用して断面に渡って60ボルトの電場を印加することによって、前記フィルムは、いかなる反射もない完全な透明となった。
【0057】
比較実験E
照射セットアップ中に偏光子は存在しなかったこと以外は、実施例3と同一の材料および手順を使用した。この場合において、得られたフィルムは、反射よりもむしろ散乱光であった。前記フィルムの断面にわたって電圧を印加することによって、前記散乱が調節され得た。いわゆる高分子分散液晶が、ここで形成され、これは、切り替え可能な反射素子を作製する本発明者らの意図には合わなかった。
【0058】
比較実験F
前記二色性光開始剤を従来の光開始剤(Irgacure 651、CIBA Specialty Chemicals、スイス)と取り替えたこと以外は、実施例3と同一の材料および手順を使用した。結果は、比較実験Eのそれと匹敵した。散乱高分子分散液晶が、可視光の反射無しに、形成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反応性液晶および二色性光開始剤の存在下でモノマーを重合することによって、多相ポリマーベースフィルムを製造する方法であって、ここで、該重合は、直線偏光によって開始され、該初期混合物は、重合前はコレステリックである、方法。
【請求項2】
得られる異なる相が層として堆積されて、多層フィルムが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応性モノマーおよび/または前記非反応性液晶がキラルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応性モノマーが反応性液晶である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記初期混合物のキラルピッチが50〜2000nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記初期混合物のキラルピッチが奥行き方向におよび/または横方向に一定でない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記初期混合物のキラルピッチが一定である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
得られるポリマーが等方性である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
得られる非反応性液晶層が、前記モノマーの重合前の前記混合物のそれよりも短いピッチを有するキラルネマチックである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
得られる非反応性液晶層が、ネマチックであり、そして一軸配向されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
得られる非反応性液晶層が、ネマチックであり、そしてランダム配向されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
得られるポリマー層が、前記非反応性液晶層を横断するポリマー突起部によって互いに接続されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法によって得られ得る、多相ポリマーベースフィルム。
【請求項14】
前記液晶が、ポリマー中に埋め込まれた液滴の形状を有する、請求項13に記載の多相ポリマーフィルム。
【請求項15】
少なくとも1層のポリマーおよび1層の(キラル)ネマチック液晶を含む、請求項13に記載の多相ポリマーベースフィルム。
【請求項16】
前記層の厚みが前記フィルムの断面に渡って変化する、請求項15または16に記載の多層ポリマーフィルム。
【請求項17】
前記(キラル)ネマチック液晶が、スイッチング手段によって、前記ポリマーに対する屈折率マッチまたはミスマッチを得ることができる、請求項13〜16のいずれか一項に記載の多相ポリマーベースフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが、透明電極が備えられた透明支持体間に適用されている、請求項13〜17のいずれか一項に記載の多相ポリマーフィルム。
【請求項19】
請求項13〜18のいずれか一項に記載のフィルムを含む、狭帯域反射体、ディスプレイ、スイッチまたはサンスクリーン。
【請求項20】
請求項13〜18のいずれか一項に記載のフィルムを含む、広帯域反射体、ディスプレイ、スイッチまたはサンスクリーン。

【公表番号】特表2008−524340(P2008−524340A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545395(P2007−545395)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000831
【国際公開番号】WO2006/085743
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505307806)スティッチング ダッチ ポリマー インスティテュート (18)
【Fターム(参考)】