説明

単細胞及びその小集合体を操作するための方法及び装置

液体及び該液体内部に含まれる微小体を保持するためにウェル、特に、垂直軸(101)を有する上端部を備えた開口ウェル(14)であって、それは、誘電泳動効果の手段によってウェル内部の微小体を操作することができように、電圧、特に交流電圧で電力が供給されることが可能な少なくとも2つの操作電極(1、2、3、31、32、36、17、40、41)から構成されている。上記されたような複数のウェルからなるプラットホーム及び該ウェルを使用するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単細胞、微生物及びその小集合体といった微小体を選択及び改質するための技術に関する。解析及びそれと関連した装置の適用分野としては、バイオテクノロジーがあり、例えば、異なる化合物の存在を含む細胞間の相互作用の結果を観察するために用いられ、また、医療分野にも適用可能であり、例えば、どのように免疫システムが免疫制御の変化において細胞に新しい刺激を与えるかを究明するために用いられ、また、産業生物学の分野にも適用することが可能である。すなわち、本発明の方法及び装置は、細胞及びバクテリアが改質されることを可能とし、そして非常に大きな工業的関心物が多くの試料から引き出され得るように、それらを選択することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
非常に小さなスケールの生物学的又は化学的実験に取り組む人々に利用可能な通常の補助器具として、複ウェルプレート(multi−well plate)があり、これはマイクロタイターと呼ばれている。そのプラットホーム上にある各々のウェルは化学及び生体物質を保持することができるが、そこに統合される操作を目的とした能動的な機能を全く有していない。1つのプレート上に同時に存在するウェルの数は、現在1000個にまで拡大している。例えば単細胞又は細胞集合体といった生体物質に能動的なやり方で介入する能力の必要性は、前述の適用分野においてますます高まっている。この問題を解決するために、現在幾つかの解決策が利用可能である。
【0003】
使用可能な多数の同様のウェルを備えたプラットホームを実装したものが特許文献1“分析、合成かつ保管のための装置、及び製造、使用かつそれを操作するための方法”に記載されており、そこでは、マイクロウェルの設計が、材料及びそれを特徴づける関係する表面を適切に選択することによって最適化される方法が説明されている。そこに統合されるセンサー及びアクチュエータが存在しなくても、ここにおいて存在している編成と競合することはない。
【0004】
そのなかに保持された物質の成長を測定することを目的としてウェルを作るやり方が、特許文献2“生体物質を分割及び隔離するための小型装置の使用、及び使用される方法”に提案されている。この文献には、物質が挿入され、該物質が測定電極によって分析及び維持されているウェルを製造することが記載されている。この編成には多くの限界がある。すなわち、ウェルに含まれる微小体の成長が制御不可能であり、肉眼で見えるタイプに制限されている測定では細胞といった中程度の細部の物体も制御不可能である。この問題は、とりわけ、ウェルに配置されている細胞が測定及び分析を実行することができない領域にある可能性に由来する。そうであるならば、なおさら、装置は単細胞をそれらの接触を確実にする位置に配置させることができない。良くないことに、免疫学的関心のある細胞間の相互作用は、細胞ウェル間の接触によってとりなされるので、このタイプの研究を行うことができなくなる。また、下端部が閉じられているために、細胞が変化して成長した際に生じる上清(supernatant)、例えば代謝残留物を除去することができない。最終的に、その装置はエレクトロポレーション及び電気融合効果の適用において必要とされる電圧を生み出すことができない。
【0005】
流体内部にある微小体の操作は、特許文献3“場ケージ(field cages)のための電極アレイ”において提案されている誘電泳動現象によってなされ得る。この文献では、誘電泳動ケージの形成ために生み出された電場に関する特殊な性質を有する電極の構成が提案されている。この編成は、次のような数々の不利点を有している。1)電極の構成が複雑であり、その製造のための位置決め手順を必要とするため、コストが増大し生産性が減少する。2)ケージは、微小体が存在している上清が改質されることを妨げる閉構造をしていると考えられる、又は流体流の内部で作られる場形成と考えられる。後者の場合、互いに接触したままでいなければならない微小体の相互作用を研究することが不可能である。3)測定手順は、微小体を適切に動かすことを可能とするような利点を有していない。この特許文献は、流体に含まれる材料の特性のインピーダンスを測定するための様々なスキームを提案している。インピーダンスのバリエーションによって細胞の性質を測定するという点に関しては、非特許文献1を参照することができる。単細胞の存在によって示されているインピーダンスにおける変化を測定することが可能なことが、非特許文献1には記されている。しかし、インピーダンスの測定と分析された材料の制御された動きとを結びつけるための必要性が満たされておらず、この不備は測定の質に重大な影響を与える。
【0006】
特許文献4“誘電泳動現象の手段によって微小体を操作するための方法及び装置”では、組み込まれたセンサーの手段によって特性を測定すると同時に、内部に取り込まれている微小体を捕捉する及び移動させることさえするトラップを作り出すことが可能な電気プラットホームが提案されている。この方法は、細胞又は一般には微小体の取り込み及びそれに続く操作の両方を単一のプラットホームに統合する。この技術の不利な点は、取り込みプロセスが実行される閉チャンバーを作る必要があることに関する。これによって、内部に捕捉されている細胞に酸素を供給することが難しくなる。加えて、総じてチャンバーにおいて微小体を変化させない場合、チャンバーでは微小体が配置された流体の構成を研究者の裁量によって改質することができなくなる。最終的に、単一のチャンバー構造は数が限定された入り口通路を有することになり、これでは、関心のある化学的又は生物学的反応が実行される空間の内容物に容易に介入することができない。
【0007】
薬又は他の混合物が存在する際の生体組織における成長が、非特許文献2で扱われている。ここでは、有機組織の小さなサンプルにおける成長が観察されており、これによって診断及び治療といった観点から有用な現象が示されている。しかし、使用される微小流体システムはかなり複雑であり、位置の制御が目的に適していないという事実によって細胞間の相互作用が可能でない。その方法論は、かなり多数の類似のサンプルにおけるテストが必要な適用のために要求されるレベルまでスケールアップすることができず、なんとか数十の類似したサンプルのみしか用いることができないので、流体システムの最適化には大きな努力をかけないといけない。
【0008】
また、微生物の遺伝物質を改質するための手順を実行する能力があることが望ましく、それは、例えば、ウェル又はそれら遺伝物質を共有することが可能な2つあるいはそれ以上の細胞の融合体の内部でエレクトロポレーションを行うことでなされる。単細胞のエレクトロポレーションは、新しい遺伝物質を細胞の及びバクテリアのDNAに導入することによって細胞及びバクテリアのDNAを改質することが必要とされるために、これは非常に関心を引くプロセスである。例示するだけにとどめるが、非特許文献3には、DNAを真核細胞に導入する可能性について記載されている。この技術は、そのプロセス、事実上の突然変異細胞の測定、及び細胞の生存の効率性ゆえに、特別な関心が払われている。この特許は、単細胞を透過可能にする電極の前に複数の単細胞を配置する能力を有するがゆえに、細胞のエレクトロポレーションに関係している当業者の間に広まっている。より洗練された手順にとって特別に必要であることに加え、この特許は、制御されたやり方で幾つかの微生物を融合させる方法について教示している。制御された単細胞融合の重要性及びそれを獲得する方法は、特許文献5に記載されており、そこには、単細胞の組を接触させ、それらを融合させることを目的としてそれら細胞に適切な電圧を加えることが可能な装置が示されている。そこに示されている技術は、適用が必要とされるとき及びこの文献にある記載に基づいて可能なようにするとき、細胞の集団にまでスケールアップすることができない細胞の位置決めに関して特別な複雑さを有している。
【特許文献1】米国特許第6716629号明細書
【特許文献2】欧州特許第1390467A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6610188号明細書
【特許文献4】米国特許第6942776号明細書
【特許文献5】米国特許第7018819B2号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0104588号明細書
【非特許文献1】Capacitance cytometry:measuring biological cells one by one,PNAS,vol 97,10687−10690,2000
【非特許文献2】A Multicellular Spheroid−Based Sensor for Anti−Cancer Therapeutics,Thielecke et al.Biosens.Bioelectron.,2001,16,261−9
【非特許文献3】A microchip for electroporation of primary enndothelial cells,Sensors and Actuators,A,Vol108,2003pp12−19
【非特許文献4】AC Electrokinetics:colloids and nanoparticles,H.Morgan and N.Green,2003,Reseach Studies Press,Baldock,England,pp.59−62
【非特許文献5】PNAS,Sohen et al.,Sept.26,2000,Vol.97
【非特許文献6】Lab on a Chip,2005,pp.1355−1359
【非特許文献7】Becker F.PNAS,1995,92:86
【非特許文献8】Hu et al.Biochim,Biophys.Acta,1991,1021:191
【非特許文献9】Biotechnology & Bioengineering,1999,65:537−541
【非特許文献10】Khine M.et al.Lab Chip,2005,5,38−43
【非特許文献11】Applied and Environmental Microbiology 2004,p.2391−2397
【非特許文献12】Salter,R.D.,and P.Cresswell,1986,EMBO J.5:943−949
【非特許文献13】51Cr−release assay adapted to a 96−well format sample reading,Hillman GG,Roessler N,Fulbright RS,Pontes JE,Haas GP,Biotechniques,1993;15(4):774−9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の問題は、本発明におけるウェル、特に物質の操作及び/又は測定をするのに適したマイクロウェル、幾つかのウェルからなるプラットホーム、及びウェル及びプラットホームが付属の独立請求項にしたがって使用される方法によって解決される。ここで、前記物質とは、特に、ウェル内部にある液体のなかに保持された微小体(細胞、微生物、それらの集合体、残留物、及びリポソームを含む他のタイプの物質)といった生体物質ある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のウェルは、生体物質を保持し、チャンネルの適切なシステム手段によって1つ以上の源から液体を引き入れることで微小体が浸けられている上清を変化させることが可能である。ウェルの内部には、正確に個々の又は小さな集まりの微小体を移動させる機能を有する一集まりの電極が配置されており、それは、例えば微小体が測定電極の面前に動かされることから生じるインピーダンスの変化を測定する他の電極の面前に微小体を配置することによって、微小体を相互接触させるためになされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
細胞の機能的選択は、免疫学的及び生物工学的な調査において重要なポイントとなる。特別な膜受容体の存在といった細胞の生化学的特性に関連して、又は関心のある特別な状況における細胞の振る舞いに基づいて、細胞が選択され得るという事実から、この問題における関心は引き出される。後者の場合、選択は複雑な予備評価を必要とせず、望ましい特性を正確に定義するだけでよい。また、機能的選択の問題は、望ましい特性を有する微生物を発生させるための“直接的進化(direct evolution)”手順における重要なステップでもある。このアプローチは、実質的にランダムなやり方で微生物の遺伝物質を改質し、それから異なる試料、したがって機能的により有望な試料のなかから選択することができる能力に基づいている。典型的な選択パラメータは、例えば、通常とは異なるpH値を有する環境にて生存することができる能力を含んでいる。この場合、選択は、ゆっくりとpHを変化させてどの微生物が生き残るかを観察することことによって実行され得る。生き残ることができない微生物を破壊することによってだけでは選択を成し遂げることができないといった、より複雑な状況もある。例えば、関心のある物質を微生物に生み出させる能力には、その物質の測定が必要とされる。ここにおいて提案される装置は、インピーダンス変数によって決定可能な測定パラメータを作ること、又は、誘電泳動、特には負の誘電泳動(negative dielectrophoresis)(DEP)の手段によって、類似の単細胞を移動させる能力と後述される他の既存の分析方法とを結合させることで、選択を可能とするものである。本発明にしたがう装置は、これまでに記載されてきたものとは異なる機能を実行するために使用されることが可能である。
【0012】
記載の装置をより簡単に理解するために、誘電泳動の原理を利用する、微小体の運動を可能とするための装置の操作、いわゆる駆動の原理について以下に記載する。本発明は、異なる方法で達成されるため、したがって柔軟性と製品獲得の容易性の間の異なる歩み寄りを可能とするため、議論は最も簡単な実施例から最も複雑な実施例へと進んでいく。
【0013】
一般的に、誘電泳動効果を生み出す空間によって異なっている電場は流体の内部に働く。特に、関心のある当の現象では、誘電泳動効果は低い電界強度の領域に向かって微小体を押す力として作用する。この現象は負の誘電泳動現象と呼ばれ、生理溶液といった高伝導溶液が用いられるときには特に重要となる。一般的に、関心のある微小体又は細胞が水より重い場合、この力はとりわけ微小体が沈もうとする傾向に対抗する。例えば、重力と誘電泳動でバランスをとることによって、微小体はウェルの井戸型領域にトラップされることが可能である。
【0014】
(システムの構造及び操作)
図1aを参照すると、そこには本発明にしたがうウェル14の、続く図においてA−A’で指示されている断面図が示されている。まず、関心のある物質を含有する流体液滴を沈積させるために配置された、ノズル13が見受けられる。このノズルは、単細胞又は微小体を沈積させることが可能な装置の一部を形成している。そのような装置は、単細胞沈積の分野において知られているものであり、望ましいタイプの単細胞又は微小体の存在が保証される流体液滴を沈積させることが可能な市販の製品が存在している。生体材料のためのこれらの沈積システムは、例えばダコサイトメーション社(DakoCytomation)及びベクトンディッキンソン社(Becton Dickinson)により市販されており、それは異なる容器から取り出された物質を沈積させることができ、したがって異なる細胞及び/又は微小体を同一のサイトに存在させることを可能とする。沈積は数ミクロンというオーダーの寸法精度でなされる。
【0015】
その装置はウェル14の内部に物質を沈積させることができる。ウェル12を規定している内壁103は適切な材料よりなり、ウェルに導入される液体が水性のものであれば親水性の材料が好ましく、液体が脂質性のものであれば疎水性の材料が好ましい。ウェルの内部では、誘電材料8より形成されている電極1、2及び3が互いに対向して配置されている。これらの電極は、ウェルの内部にある液体に適切な電位、好ましくは時間によって変化する電位を加えることが可能である。本発明の特別な実施形態にしたがうウェルは、下端にてチャンネル10に結合されることが可能で、開放型又は半閉鎖型をしている。後者の場合、半透過性膜9が、チャンネル10の端部に適用される圧力差の値によって流されることが可能な底流からウェルを隔離している。半透過膜は、ウェルが開放型の場合はなくてもよい。また、チャンネル10は、生物学的に適合しており、本発明の可能的な実施形態にしたがうと、透明な材料から製造されることが可能である。チャンネル10は、もしウェルが有機化されたマトリックスであるプラットホーム又はマイクロタイターの一部であるとしたら、単一の列若しくはウェル又は列の集合と関係することが可能である。チャンネル10で使用される材料としては、液体の流れを容易にするために親水性又は疎水性のものにするべきであり、ウェルの内壁103と同じ特性を好ましくは備えている壁部を有する。もし構造の基部11が透明であるならば、装置の基部に光を当てることでウェルの内部を照らすことが可能となる。この特性は、半透過性膜が設けられていても維持され得る。
【0016】
チャンネル10は、自身を及びチャンネルに向かっているウェル14を液体で満たすために使用されることが可能である。前記チャンネルの典型的な実施形態は図18に示されている。チャンネル10において、必要であるならば、その入り口16と出口17の間の圧力が僅かに変えてある。この圧力差によって流体が流れ、続いて入り口16からウェル14へ及びウェル14から出口17へと流体が移送される。図1aに示されているように、ウェルは親水性又は疎水性の内部表面を有しており、よって、ウェルに液体を保持するように意図されている通常の空間である上端部105に到達するまで液体は毛細管現象によって上方に押し上げられる。好ましい実施形態にしたがうと、例えば円筒形状をしたウェルは、ウェルを規定している内壁103(すなわち、液体を保持する空間を規定している壁部)が有する特性の反対特性を好ましくは備えた壁部12を有する上部分を有している。前述の反対特性とは、内壁が親水性の特性を有しているのならば反対の疎水性の特性を有するということで、その逆も同様である。上部分は、ウェルの内壁部から大きくなっている断面を好ましくは有し、もし液体を受け取る部分におけるウェルが円筒形状をしているのなら、その上部分は円錐形状をなしている。液体の水位は、上部分の表面12が前述の特性を有しているために安定する。可能な実施形態にしたがえば、内壁に隣接している、ウェルへと延長している壁部は十分に、前述の増大している断面部分がないときにおいてさえ、後者の反対である性質であることを満足する。この効果は、ウェルのアレイの写真が示されている図2において図示されており、そこでは、各々のウェルにおいて、水性の液体を保持しかつ親水性の内壁を有している壁部に拡がっている表面の疎水性処理のために、メニスカス(meniscus)が形成されている様子が示されている。続く完全な記述において、単純化のために、関心の液体は、必要とされる適切な混合物が溶解した水性タイプのものであると仮定する。液体が本質的に脂質のものである場合、ウェル14の内部及びその外部12の表面の特性はそれぞれ親水性と疎水性とになる。
【0017】
ウェルが満たされたら、必要な動作を達成するために、ウェルに配置された電極1、2及び3に電位がかけられる。
【0018】
多くのウェルにおいて多くの同様な作業を実行するために、通常のプラットホーム又はマイクロタイターにおいて秩序だった方法でウェルが形成されている必要がある。ウェルの集合体の好ましい実施形態としては、ウェルが列及び行によって構成されている二次元状アレイがある。下記にて詳述するが、それらが活性化されるやり方から独立して、一般のウェルは、それが属している列及び行を特定する一組のコードを設計することによって明白に特定される。
【0019】
また、本発明の装置は、前述のウェルにおける細胞株の成長を可能とするのにも適している。細胞株はウェルに沈積させられた細胞から成長し、ウェルの中で取り扱われる。しばしば、細胞を長い期間電界にさらすことが適切でない場合があるので、本発明の可能的な実施形態は、かけられる電圧が除去されるときにチャンネル10のなかに細胞が落ちてしまうことを防ぐ半透過性膜9を有している。この方法によって、細胞がチャンネルへと流れ落ちることが防がれ、そして細胞は吸引によってウェルから取り除かれる必要がある。つまり、微小体、特に細胞や微生物は膜9に付着することが可能である。本発明の異なる実施形態では、半透過性膜が設けられておらず、ウェルの基部が直接チャンネル10のなかへと開いている。もし必要ならば、前記方法によって細胞をチャンネルを通して排出したり回収したりすることもできる。また、本発明は、我々が直接的な構成又は反対の構成と呼ぶ2つの異なる構成におけるシステムの使用からなるウェル又はプラットホームを使用するための方法に関する。第1の構成はたった今記載されたものであり、それはウェルにおいて実行されるべき操作、取り込み及び/又は測定の工程のためだけに使用される。第2の構成は装置全体が逆になっており、ウェルが下流で装置と面するように配置されている。細胞が水よりも重い場合、細胞は空気−液体の表面に沈積されて、それらを保持するための膜を必要とすることなく維持される。この操作のやり方は図3に示されており、そこでは、水性の液体で満たされたウェルの図が逆さになった位置から示されており、外部表面12の疎水性のためにその液体は減少しない。また、暗い染みは、空気−水の表面にあるK562細胞を視覚化したものである。
【0020】
明らかに、逆さまの構成においては、ウェルの上部開放端として規定されていた部分が下部部分となるのであるが、それは単純性のために同じやり方でいつも設計される。また、“下部”という用語からしても、これは明白な真実である。この方法は本発明のウェルの場合のように、微小体を適切に浮遊させる直接的な構成で操作電極が電力を与えられるときには特に適切であり、一方、逆さまの構成では、電界の発生を中止することが可能である。これは、特に細胞又は微生物を取り扱う場合、膜が設置されていないチャンネルのなかに落下する微小体、又は膜が存在するときはそれに付着する微小体、又は互いの表面に付着する微小体が存在しないときに、微小体にかかる潜在的に危険なストレスを避けるためになされる。
【0021】
ウェルは例えば以下のように製造されることが可能である。例えば1ミクロンから数ミクロンの範囲の厚さを有し、かつポリアミド、カプトン(Kapton)(登録商標)又はピラルクス(Pyralux)(登録商標)といったマイクロシステム産業において一般的に使用される材料から作られた誘電材料の層がシート1、2及び3からなり、かつこれは数ミクロン又はウェルの深さの一定の割合と等しい率のオーダーの厚さを有する金又はアルミニウムといった生物学的に適合した金属から好ましくは作られている電極を分割する。これらの金属の層は、例えば上部電極1において最初に記載されたさらなる上部分を特に無視することが必要とされる場合に、それらの層を疎水性にする他の材料で順に覆われることが可能である。この構造においては、液体を受け入れるのに適した実際のウェルを形成することを目的として貫通孔が設けられており、その孔の壁部には必要な親水特性を与える処理をなすことが可能である。
【0022】
適切な直径を有する、ウェル14を形成するための貫通孔は、例えば機械又はレーザーなどの一般的な穿孔技術によって作られることが可能である。関心のある適用において、本発明の可能的な実施形態にしたがうと、ウェルの直径は30から150μm、好ましくは50から100μmの範囲である。必要ならば円錐形状又は三角錐形状又は適切な形状をした上部分の開口部も、機械穿孔又は火薬爆破といった既存の方法で作られる。例えばシリコンといった適切な誘電材料からなる上部層7が形成され、それから、適切に考慮して、メッシュ状の壁部に疎水的な振る舞いを付与するための処置がなされる。もし材料がシリコンであり、特に三角錐形状が必要とされるならば、壁部12を有する穴は異方性エッチングによって開けられることも可能である。また、全ウェルは火薬爆発によって得られることも可能である。上記の製造方法はプラットホームの製造に特に向いており、位置決め問題を減少又は排除することができる。例えば、誘電層8は、電極、又は一緒に結合された電極のグループを形成するための、組み込み導電プレート(そられは、全てのウェル、又はマトリックス構造におけるウェルの1つの行又は1つの列に関係する全てのストリップを含む連続したプレートであってよい、又は、ストリップは異なるアレイ間の接触を避けるために垂直接触部の手段(図15の108)によって1つに結合され及びそこに結合された一連の電極に対して、異なるレベルで設けられることが可能であり、そうすることで、必要な結合、特にマトリックス組織を確かなものにすることができる)から形成されることが可能であり、それから穿孔を進めることができる。可能的な実施形態にしたがうと、完全な構造が導電プレートと上部層7とを有する誘電部8のために形成され、それから適切な1つ以上の異なる技術を用いた穿孔がなされる。そうでなければ、誘電部8及び孔を有する層7は別個に形成されてから適切な方法で組み合わされるのであるが、それには精密な位置決めが要求される。この装置の製造は、異なる平面の間、特には穿孔作業によって1つにされた電極間の位置決めを必要としないので、とても簡単である。このことは、図1b、1c及び1dにおいて、それぞれ図1aで規定されている断面B−B’、C−C’及びD−D’で示されており、そこでは電極1、2及び3の形状が記載されている。
【0023】
本発明ではウェルの異なる実施形態が可能であり、それは図を参照しながらこれまでに記載されてきた。構成及び他の特性に関しては、図1a、1b、1c及び1dに記載の実施形態とともに前述されているものを参照することができる。
【0024】
より簡単な別様態は、電極31及び32のみしかない図4aに記載されている。
【0025】
正弦波電圧が下部電極32に加えられ、ゼロ又は他の位相に対して反対の位相の正弦波電圧が上部電極31に加えられるとき、電場係数の分布を様々な色で示している図5に示されているように、2つの電極の中央領域にそれぞれ位置している2つの最小地点を示す場形状が得られる。場形状は次のことを観察することによって容易に説明される。1)対称中心軸101に沿った電場は軸に対して垂直なゼロ成分を有している。2)2つの電極の間には、電位によって与えられた場成分が存在する。3)2つの電極間を含む領域では、それらの後者の厚さが対称軸に垂直な場のサイズを小さくするという重要な役割を有している。これらの条件の下、電極間の領域は、電場係数を減少させる及び特には隣接する領域に対して最小値を作り出すという状況の利益を享受する。このタイプの操作の一例が図6に示されており、そこでは、90ミクロンの直径を有するポリスチレンの球体が、最大振幅で15Vがかけられている直径300ミクロンの穴における前述の最小領域に維持されている。分極電圧が存在しない場合、その球体は水より重いので落下するであろう。図5における矢印は微小体に作用する力の結果方向を示しており、それは負の電気誘導及び重力を考慮に入れている。上部電極に位置している最小領域は微小体を止めて取り込むための電位ケージとして使用するのに適しており、一方、下部の最小領域はウェルの基部の方に開いており、微小体を落下させることが可能である。
【0026】
もう少し複雑な作動装置構成が図1aに示されている。この場合、電極及び金属のレベルが前述の構造に付け加えられている。電極1、2及び3はそれらの位置決めを考慮する必要なく形成される。図1aで規定されているそれぞれの断面B−B’、C−C’及びD−D’が図示されている図1b、1c及び1dにて、それらの構造は示されている。当面の間、上部電極1及び下部電極3は正弦波電圧によって分極され、一方、中央電極2は逆位相において正弦波電圧によって分極されていると仮定する。これらの条件の下、負の誘電泳動で制御されることが可能な微小体を取り込む場形状が形成される。前述の場合とは反対に、中央の最小領域は下部端及び上部閉ケージによって取り囲まれている。数値シミュレーションによって得られた場形状が図7に示されている。例えば、ゼロ電圧で中央電極を維持し、他の電極に2倍の電圧を加えるなどすることで、電極に電圧を与える他のスキームも同じように導かれ得る。
【0027】
微小体の導入は、可能的な操作方法にしたがうと、次の工程を必要とする。1)上部電極及び中央電極は等しい電圧を与えられ、下部電極には逆位相の電圧が与えられる。このステップの間、微小体が導入され、もし水よりも重いならば、それは中間電極の近くにある最小場へと沈む。2)上部電極に適用される電圧位相を反対にする。この変化は次の2つの効果をもたらす。すなわち、それは中央電極の近くに作り出されたケージを“閉じて”、その構造のためのある種のストッパーを作り出すことで、さらなる微小体の放出をふせぐことができ、もし微小体が放出されたとしても上部電極によって作り出された最小領域によってそれを捕捉することができる。
【0028】
半透過性膜が存在しない場合、ウェル14からの微小体の放出は、電極に加えられる電位を単に取り除くことによって達成され得る。この場合、微小体は、重力によってウェルから、もし存在するならばチャンネル10のなかへと移動する。このアプローチは、ウェルに保持される全ての微小体を放出するために、典型的には用いられる。後述にて、関心のあるウェルにある微小体を選択的に放出することが可能な、マトリックス形式におけるターゲッティング技術について説明する。
【0029】
もし操作される微小体が生物学的関連性を有しているのならば、互いに対して反対に適用されている全ての電位は、ダメージを生み出すリスクを減少させるためにゼロの平均値を有することが適切であり、これによって、微小体にかけられる場の最小値を減少させることができる。
【0030】
前述の構造は、ウェルの対称中央軸にそって微小体をブロックする電場構成が作り出されることを可能とする。これは、壁部に微小体が付着することを避けるという利点を有している。一部の例では、所定の電極に近い領域にありかつ所定の構成をしている微小体を取り込むことが可能な場構成を作り出すことが適切である。
【0031】
これまでに記載された実施形態にしたがうウェルは、ウェルの所定の領域、例えば基準電極に近い領域にある微小体を取り込むという特性を有している。
【0032】
図8aに示されている、電極を形成する2つの金属層間に誘電材料の層を入れることによって形成される構造を参照する。電極34及び35は、ウェルの内壁に面している、同一平面上にあるプレートとして形成されており、各々はウェル断面の周囲の位置でリム部を形成している。すなわち、そのリム部はウェルに対して対称的に配置されている。この構造の形成は、上部電極33と、内部電極34及び35と、ウェル14との間の位置決めを必要としないので簡単であり、その構造は上述した構造と同じやり方で構築される。唯一、ウェル14と、図8aで規定されている断面D−D’を表す図8cに示されている電極34と電極35とを分ける領域と、の間においてのみ位置決めが必要とされる。上部電極33は、図8aで規定されている断面B−B’を表す図8bに記載されているように形成される。
【0033】
接触部34及び35に正弦波電圧をかけ、それぞれに同じ大きさで180度位相が異なる電圧をかけ、接触部33を接地することによって、得られた電場は次のタイプの分布を示す。
1.接触部34と35の間の環状領域において、場係数は、それら接触部が近接しておりかつ電極間の距離のために中央領域に落ち込む傾向を有するような、非常に高い値を有している。
2.電極33内部の環状領域において、場係数は、接触部の近接にために非常に小さい値を有している。
3.円筒形状領域14において、場係数は垂直表面付近で最も大きくなり、構造の中央へと移動するにしたがって小さくなる。
【0034】
ゆえに、電場係数の勾配は図9に示されているようになる。このようにして、電極33に向かう電極34、35からの直接的な力と、重力に対抗することが可能な力とを与える誘電泳動場が作られる。この力場の特性は、壁部の近くに位置した低い場強度の領域に微小体を進ませることにある。微小体が配置される正確な場所は、重力と誘電泳動力とのバランスに依存する。
【0035】
微小体をウェルの非常に正確な領域に位置させることが可能な電極の構成は、図10a、10b、10c及び10dに示されているような構造を作ることによって得られる。この場合、上部電極36及び37は、図8aにおける下部電極34及び35のように構成されている下部電極40及び41と同様なやり方で電気的に分割され、これによって、異なる電圧が2つの電極に適用され得る。前記電極は、図10aに規定されている軸B−B’及びD−D’に沿った断面を示す図10b及び10dに図示されている。好ましくは、その構造は、ウェルの軸に垂直でかつ電極の組37及び37と40及び41とを分ける表面に平行な軸に沿って配されている一組の電極38及び39も有している。前記電極は、図10aに規定されている軸C−C’に沿った断面を表している図10cに示されている。
【0036】
今、大きさが等しくかつ互いに逆位相をしたゼロ平均になる値を有する一組の正弦波電圧を電極36及び37に適用するために、電極41に加えられるものと同様である電極36に加えられる電圧の位相及び大きさと電極40に加えられるものと同様である電極37に加えられる電圧の位相及び大きさとを選ぶことによって、図11の実施例は装置の可能的な操作方法を明瞭なものとすることが可能である。図11に示されている断面は、図10b、10c及び10dの軸A−A’に沿った場合のものである。関心のある応用として、他の可能的な実施形態も必要に応じて採用することができるのであるが、流体と接触している電極36及び40、36及び37、37及び41のこれら領域間の距離は同じとする。電界は図に示されている矢印によって図示されているパターンを有している。特に、電極の組36、37と40、41が互いに向かい合っている領域においてそれは高くなる。電極36、40と電極37、41の間の距離が電極36、37と電極40、41の間の距離と等しくなるように、重要な電場がこれら2つの後者の領域間に存在する。中央領域に近づくにつれ、力線は互いにうち消し合うようになり、これによって、場自体の強度が減少し、ウェルの中央点における場係数のゼロ値が生じる。対称であるがゆえに、図11に図示されている断面の横断軸に沿っており、構造の中央点を通過している電場係数はゼロである。この効果は図12で明らかであり、そこでは、表面102が、前述の構造で実行された物理シミュレーションの結果から得られた定電場(交流)の強度に存在している。前述したが、この領域はウェル内部に存在している微小体を取り込むことが可能な場形状であることを特徴としている。
【0037】
場係数が変化することによって、微小体に働く誘電泳動力の強度が変化することに注意する。例えば、水より明白に重い、したがってウェルのなかに沈む傾向を有する微粒子が存在すると仮定すると、電極36及び37にかけられる電圧が例えばゼロ(又は一定)である一方、電極40及び41にかけられる電圧は、もし前記大きさの変化が粘性流体における微小体の運動の時定数と比較して遅い場合、微小体がウェル内部において垂直方向に交互に直線的に動くように調節される。この観察は下記にて示されるであろうセンサーの適用にとって非常に重要である。
【0038】
上記に基づいて、電場係数がゼロである装置、又は、電圧を調節することによって、誘電泳動及び重力にさらされる微小体がそれ自体の位置にいく傾向を有している装置の内部において、中央領域が作り出される。この領域は、ウェル14の内径と等しい長さを有し、かつウェル14の中間領域におけるA−A’平面に対して垂直である。
【0039】
多くの場合、閉ケージがどのようにして作られるのかを考察することは有益であり、この有意なケージによって、上述の一次元最小領域において見られる微小体間の接触が矯正される。この結果を得るために、ウェルにおける場のより洗練されたモデルを展開することが可能であり、それは、どのようにして電場が、もし電極38及び39が接地されている場合において、その電極の近くに配置されている微小体を引きつけることが可能な2つの領域を作り出すことができるように構成されるのかを示す。最初に、例えば粘着現象を避けるために微小体が電極38及び39と接触しないようにいることが求められる場合について調べてみる。これを行うために、図13に示されている場合を調査する。負の誘電泳動にさらされている2つの微小体22及び23がウェルに入れられ、場の最小領域の内部に取り込まれていると仮定すると、それらはほぼ図13に示されている位置にある。単純化のために、重力による力は前記微小体において見られるレベルよりはるかに低くはならず、及び、電場最小線で並べられかつA−A’平面に垂直になるように構成されている電極38及び39が並べられている垂直位置に微小体が留まっていると仮定する。電極の組38及び39の使用を伴う操作は、それに対する正弦波電圧の適用を必要とする。ゼロ平均値は、上記の電圧と、電極36における位相を参照して電極38及び39にそれぞれ適用される90から270度に等しい位相とから選択されるものと仮定する。もし電極38と39の間のピーク電位差が電極36と37の間及び電極40と41の間に適用されるものよりも小さいならば、例えば10分の1であるならば、中央軸に沿った最小領域を有する場形状は実質的に保存される。周囲の流体のものよりも小さな値の誘電定数及び電気伝導度を通常は有しておりかつこれによって負の誘電泳動状態において見られる細胞22及び23に、電極38及び39によって代わりに生じさせられた場は重大な影響を与える。これらの条件下で及び保持されている細胞のほぼ球形状のため、細胞22及び23は電場を発散させるレンズのように振る舞う。これは、例えば細胞22が細胞22と電極38の間の領域において増大する電場を作り出し、その一方、細胞23は細胞23と電極39の間の領域において同じようには働かないということを意味している。同じ理由のために、細胞22は電極38の反対側の領域における場の強度を減少させ、細胞23は電極39の反対側の領域の強度を減少させる。このような関連する電場強度の最大値及び最小値は、2つの細胞がほぼ触れ合うまでそれら細胞を近づけるように進めるという効果を有する。この目的を達成するために求められる力は、重力といった他の力に対抗する必要がないように、非常に小さいものである。これらの条件の下、細胞及び/又は他の物体の間の接触を生み、それらを互いに接触したままにすることが可能である。加えて、測定電極と細胞の位置決めは、測定電極にとって好ましい位置に配置されることでなされる。
【0040】
前述の構成の別法は、電極38及び39のどちらか1つだけを分極し、他方を接地させることによって得られる。この場合、ウェルに導入された微小体は、接地している電極に接近し、最小場に沿って並ぶ。このタイプの構成は図14に示されており、そこでは、2つのポリスチレンの球体が接地した電極の近くに並んでいる。
【0041】
これらの事柄の詳細な論文は、非特許文献4に記載されている。
【0042】
次に、本発明の装置がどのようにしてセンサーとして使用されるのかを説明する。図1に記載の構造を参照すると、当業者は、上部環状電極1と下部環状電極3の間を流れる電流が、中央電極2によって取り込まれた微小体が存在することによって調節されるということがわかるであろう。その状況は、細胞などの微小体の数を高い精度で数えることが可能なコールターカウンターが使用されるときに、作り出される。この実施形態において、カウンターの目的とは、例えば、ウェル内部にある微小体の数の変化を測定することである。微小なウェルにおけるこのような測定の結果は、前述の非特許文献2に記載されているコールターカウンターと同様の技術によって得られる。全てのこうしたスキームにおいては、励起信号が電極1に結合されており、一方、電極2及び3がウェルに既知の電圧又は電流を導入し、結合された電気量を測定することを目的としたセンサーとして使用され得る。2つの電極2及び3の測定を実行する能力は、垂直軸に沿った微小体の運動と結びつけられる場合に特に興味深いものであり、測定によって微小体の位置を変化させることができる。また、異なる周波数における同時測定では、例えば2つのはっきりと異なる周波数において、適切な信号が電極1を通して適用されることも可能である。
【0043】
次に、図10に示されている構造を参照すると、電極36、37、40及び41によって形成された統合アクチュエータは、電極38及び39が配置されている平面とは別の平面上に構成されている。これらの電極は、前述したように微小体を正確な位置に配置させることが可能であること以外にも、それら電極の間に存在する抵抗を測定するというさらなる目的のために使用されることも可能である。このために、それらの電極は前述のように位置決めに使用される他にも、もし望むなら、測定電極として規定されもする。生物学的な関心のある微小体は、周囲の培地と比較して、実質的な容量が違い、及び場合によっては抵抗も違うので、微小体の有無は2つの電極間で測定される全抵抗を変化させる。測定は、電極間に見られる細胞のタイプを測定することによっても、より正確になされ得るのであり、例えばそれは非特許文献5の教示を本発明のウェルに適用することによってなされる。本発明の進歩的な実施形態は、電極38及び39の前面にある微小体の位置決めが測定の間に得られる信号/雑音比を最大にするために重要であるという事実とリンクしている。微小体をウェルの内部に移動させる能力によって、抵抗変数が最大となる場所に微小体を配置させることができる。本発明のさらに進歩的な実施形態は、微小体が動いている、すなわち微小体が末端にかかる電圧の大きさの変化によって又は熱変動にさらされている流体によって引き起こされたランダム運動によって動かされている間に、微小体を幾らかの時間測定することができる能力を有している。微小体を移動させることによって、長期間にわたって抵抗を変化させることができる。もし前記値が異なる位置において幾つかの時間で取られたものであるなら、抵抗値は、長期間において得られた最大値といったキーパラメータの値を求めることによって決められるのであり、それは電極38と39の間の微小体の正確な位置決めをすることを目的としてなされる。
【0044】
それゆえ、センサーは伝導電極38及び39からなり、好ましくはアクチュエータ36、37、40及び41として働いている電極の幅よりも実質的に短い幅を有する。電極38及び39の寸法を確かに決定することは、例えば、観測されている微小体の直径のオーダーの厚さ及び微小体の直径の2から10倍の幅をこれら電極に与えるということである。この幅というのは、アクチュエータ(操作電極)によって生み出された電場が、他の電極よりも小さな電圧がかけられているセンサーによって変えられるという事実を考察するのに好都合である。最初の近似としてセンサーが1つの塊であると仮定すると、電場は前面に配置されている領域においてゼロ係数を有する。これは小さな空間的広がりではあるが、周辺領域に対して構造の中央に位置している電場の最小領域を強化するのであり、これは構造の取り込み能力の増大に寄与している。測定の質は、測定電極を駆動のために必要される電極に結びつける容量結合部に影響を受ける。駆動のために使用される電極における時間変動電圧によって生じるノイズは、それゆえに、望ましい信号が読みとられる前に排除されねばならない。可能的な技術としては次のものがある:ノイズを頻繁にフィルタリングする、又は、抵抗が読みとられている間、駆動電極を切る。
【0045】
一番目の場合、それは駆動のために適用される振動が抵抗を読みとるために使用されるものと異なる周波数を有することがあるという事実によって使用される。この場合、望ましくない周波数を適切に拒絶する値を有するパスボンドフィルター(pass−bond filter)が結合を強力に減少させることを当業者は知っている。もう1つの技術は、運動中の微小体を測定することをコンセプトとして使用している。この場合、次のような順番でなされる。1)駆動電極36、37、40及び41が、測定電極38及び39の位置より上方に微小体を位置させることが可能な電圧を加える。2)駆動電極が参照電位又は接地電位で固定される。3)測定電極38及び39がそれらの電極の間の抵抗を長時間にわたって連続的に測定する。最も一般的な場合、微小体はそれが包含されている液体よりも重いので、重力による力が微小体を下方に移動させ、抵抗の測定は、微小体がセンサーの上方にある第1のステージ、微小体がセンサーの前面に位置する第2のステージ、微小体がセンサーを追い越して下方に移動する最終ステージへと推移する。したがって、データは、微小体の運動が知られている力学を利用することで量が集められる。
【0046】
(マトリックスの組織)
これより、センサー及びアクチュエータのアレイとして装置がどのように働くかについて説明する。
【0047】
マトリックス形態で組織されたプラットホームが、図1で示されているような環状電極として構成されたウェルである要素と考えると、ウェルの一部分からの、そこに保持された微小体の選択的な放出が必要とされている場合、その順序は以下のように進む。a)電極1が、ウェルのアレイの上部電極の全てに電気的連続性を提供する均一な構造として、又は電極3を形成するために使用されるものと同様の分割金属ストリップの集まりとして形成されている。そして、電極2及び3は、金属ストリップのそれぞれに異なる電位が適用されることが可能な電気的に分割された金属ストリップの集まりとして形成されている。そして、続く記載においては、電極2は行連結されており、及び電極3は列連結されている。b)ウェルに微小体を沈積させて取り込むための前述した手順が実行された後、電極3及び1にかけられる正弦波電圧が等しい大きさ及び位相を有し、一方、電極2にかけられる正弦波電圧は等しい大きさで逆位相を有している。c)二次元アレイにおけるx、yの列及び行の座標をウェル上で特定することによって、+90度の位相回転が列xの電極3に導入され、かつ−90度の位相回転が行yの電極2に導入され、これによって、前述の場合と比較して、約30%正弦波電圧の大きさが増大する。この手順は、様々なウェルに次のような場形状を導入する。a)ウェルx、yは電極2及び3の間にゼロ場を有している。これによって、誘電泳動の最小部を取り除き、微小体を重力によって落とすことができる。b)列xに沿って留まっているウェルでは、電極2及び3の間でただいま導入された位相の差において90度の減少があったために、誘電泳動力の強度が減少している。この減少は、電極にかけられた電圧の大きさの増大分によって補正される。c)行yに沿ったウェルは、電極1及び2の間及び電極2及び3の間にただいま導入された位相の差において90度の減少があったために、誘電泳動力の強度が減少している。この減少は、電極にかけられた電圧の大きさの増大分によって補正される。d)アレイにおける他のウェルでは、何の変化もない。
【0048】
記載された本発明の他の実施形態にしたがうウェル構造のための操作スキームは、当業者によって処理されることが可能である。
【0049】
図10aに示されているタイプの非常に多数の装置の組成は、センサーに関する図16及び幾つかのアクチュエータに関する図15に示されているようにして簡単に得られる。
【0050】
センサーの組織に焦点をあてると、電極38及び39を有する平面を表している図16に示されているアレイの操作は、以下のようになる。電極39、39’、38及び38’は、4つのウェルから構成されているアレイの場合を示している。より多くのウェルにすることも可能である。次に、電極39’を20に適用されているものと等しい参照電圧に結合したままで、正弦波電圧が電極39に変えられているとする。この条件の下では、参照電圧に結合している非反転入力20を有する2つの操作増幅器18は、電極38及び38’に結合されている。例えば抵抗といった形態をしたインピーダンス19によって加えられた反作用(retroaction)は、電極38及び38’における電圧を、電極20にかけられた参照電圧と同じ値にする。前述したように電圧を一定に保持するためにインピーダンス19を通して流れる電流は、インピーダンス19を隔てて電圧の低下を導き、したがってアンプの出力21における電圧が変化する。もし電極39のみが刺激されているならば、行38又は38’によって必要とされる電流吸収は、電極39にかけられる電圧によって刺激されるウェルを通して流れる電流の、必要な吸収によるものであり、一方、他の全てのウェルに関しては等電位である電極の組39’−38及び39’−38’を渡った電位の減少はない。このようにして、それぞれのウェルの間で作り出されるインピーダンスは、逐次的なやり方でアレイを走査することによって制御される。必要であれば、循環的なやり方で走査を繰り返すことも可能である。
【0051】
電極40及び41といった電極が配置されている平面の1つが示されている図15にあるような、アクチュエータとしての装置のアレイタイプの操作はより単純である。特に、ウェルが微小体を取り込み、それを選択的に放出する工程は最も重要である。取り込み工程においては、上部電極36及び37にかけられた電圧が微小体導入の間にゼロであることが必要である。これによって、微小体がウェルに入ることを妨げる電極間の高場領域の生成を避ける。微小体が導入された後でのみ、電極36及び37には電圧がかけられる。排出チャンネル10へと至る微小体の流れは、次のようにして制御される。前記排出チャンネル10は、流体入り口16及び流体出口17を結合し、前述したようにウェルから放出された細胞又は微小体を集めることができる。ウェルに保持されている全ての微小体は回収される必要があるが、全てのウェルに存在する電極40及び41にかけられる電圧は接地するだけで十分である。重力の力によって、微小体は収集チャンネルへと流れることができる。ほんの少数の微小体の回収が必要とされるのであるが、単純化のために、予め選択されたウェルを明白に定める列及び行とそれぞれ関連して、2つの数i及びjによって規定される座標を有している単一のウェルによる内容物の放出のみが必要とされていると仮定する。回収手順は次のようになる。1)電極36及び37、38及び39にかけられる全ての電位は接地している。2)電極40及び41にかけられる電圧の大きさは増大されており、これは、電極40又は41のうちの1つが大きさゼロに設定されているとしても、微小体がウェルから離れることを防ぐのに十分なほどであるように電圧の大きさが選択されることでなされている。3)列iの電極40及び行jの電極41と関連している電圧の大きさは、ゼロに設定される。この選択によって、次の状況を生じさせることが可能である。a)ウェル内容物の下流への流れを妨害することができるように、関連する0から180度の位相の電圧及び大きさを電極40及び41が有する。b)ウェルi,jを除く、行j及び列iに沿ったウェル。この場合、少なくとも電極40又は41のうちの1つは、ウェル内容物の下流への流れが妨げられるような、関連する大きさの電圧を有する。c)ウェルi,jは、大きさがゼロであるその関連電圧を有するで求心電極(afferent electrodes)40及び41の両方を有していなければならない唯一のものである。全ての関心のあるウェルのための手順を繰り返すことで、利用可能な少数のウェルの必要な内容物が、その内容物をチャンネル10のなかに落として出口17へと移送することによって、回収される。
【0052】
もし細胞が放出された場所に関する情報が必要とされないのであれば、流体の流れ自体が材料を移送することが可能である。こういった、材料が放出されたウェルの場所に関する正確な情報が必要とされない場合、単純な流体装置を使用して吸引することによってウェルに保持されている材料を動かすことが可能である。
【0053】
(誘電泳動現象及び蒸発を用いた方法による微小体の位置の制御)
誘電泳動力は、重力の力に対して反対に加えられる。上部開口部を有するウェルの構造では、液体の蒸発を、必要とされる誘電泳動力の強度を減少させるために相乗的に使用することが可能であり、これによって、必要とされる電場及び流体における力の散逸を減少させることができる。微小体のマイクロ流体制御は、多くの分野における文献に報告されている。例えば、非特許文献6を参照することができ、そこには、流体の制御された流れが微小体を移動させるためにどのようにして使用されるのかについて記載されている。正確な移動を実行するためには、本出願において記載されているようなアレイによっては容易に作り出すことができない複雑な温度制御構造が必要とされる。
【0054】
また、一例として、親水性又は疎水性の表面上に形成するわずかな水滴は異なる形状を有する。今、メニスカス30を作り出す液体の存在を示している図1について考察する。前記メカニズムは、ウェルのアレイのための図2に記載されている。表面30は空気の流れにさらされており、その空気の流れは液体の蒸発を含む適当なメカニズムによって生じている可能性がある。蒸発はウェルにおける流体の上方への運動の原因であり、重力の力によって生じる運動に対して対抗する運動を生み出している。特に、重力の力に対して完全に対抗するために必要とされる液体流速度は、微粒子の降下速度と等しくなくてはならない。例えば、水に浸けられた真核性細胞では、降下速度は毎秒10ミクロンというオーダーである。電極が存在している領域における50ミクロンという直径を有するウェル14のなかへと流れる同等かつ反対の速度の流れは、1nL/分という流体流率を生じさせる。もし電極が位置している領域にあるウェルの形状がその上部分において1mm以上の直径まで急激に増大していることが見て取れたのならば、及びもし疎水処理がプラットホームの外部表面のみになされて、ウェルの内部壁及び上部部分7の壁部12にはなされなかったのならば、メニスカスは穴の直径が最大でかつ約1mmと等しい表面上にできる。これを助けるために、本発明の可能的な実施形態にしたがうと、ウェルの壁部12と内壁103とは、本発明の前述した実施形態において構想されたものとは対照的に、等しい浸水又は疎水特性を有している。そのとき、必要とされる流率のバランスを取るために求められる蒸発は、露点と比べて温度が7K急騰した強制対流における空気の流れによって得られる流率と矛盾しない。もし流体の流れが微小体を制御するたった1つの方法であったならば、ここに記載された条件下で微小体の位置を制御することは不明確である。代わりに、誘電泳動現象の原理に基づいた技術と流体の蒸発についての技術を結合させることによって、第1の方法によって提供された正確性と、第2の方法によって可能となった電場の減少とによる有用な相乗効果が得られる。理論的なモデル及びこのアプローチに関する実験結果は、フランスのグルノーブルで開かれるトランスデューサー・カンファレンス2007にて発表される“蒸発流を測定するための統合電気メニスカスセンサー”(An Integrated Electronic Meniscus Sensor for Measurement of Evaporative Flow)に記載されている。
【0055】
(生物学の分野における、記載のウェルに基づいた装置の適用)
同様なウェルにある単細胞の動きは、個々のウェルにおける培養条件を変更する能力と同様に、数々の適用を可能とし、その詳細は以下に記載される。装置の可能な適用は、誘電泳動による運動と、異なる生物分析方法とを、様々なセンサーを使用することで統合することが可能ということによって、拡大している。
【0056】
また、その装置は、微小体を分ける及び/又は選択するための適切な方法よりなる。
【0057】
好ましい実施形態では、センサーは測定電極であり、特にウェルのインピーダンス及びその内容物を測定する。電場における異なる細胞の挙動及び関連するインピーダンスの測定のおかげで、生物学の分野においてすでに獲得されている、血液からのガン細胞の分離(非特許文献7参照)といった結果が重要である。
【0058】
この点に関して、生物学的膜の電気容量及び伝導度は、細胞活性化にしたがって変化し(非特許文献8参照)、及び1つの細胞のタイプごとに異なっていることが観察されている。これらは、記載の装置を用いた、個々のウェルにおける単細胞又は幾つかの細胞に適用される選択手順のための基礎を形成している。インピーダンス特性又はその他のものを測定することによって、細胞、細胞質又はその他のものの脂質含量(非特許文献9参照)、及び脂質生産の又はインピーダンスを変更する他の分子の単細胞における活性化のための膜の条件を測定することも可能である。
【0059】
インピーダンスを測定することで得られる、培地又は細胞の脂質含量に関する生物学的特性は、例えば細胞障害(cytoxicity)現象による壊死又はアポトーシスによって細胞が溶解するにつれて膜の状態が変化する又はダメージを受けるという特性であり、これゆえに、前記細胞障害現象は個々のウェルにおいて検出可能となる。
【0060】
インピーダンス及び/又は光学的な測定は、細胞複製、よって細胞応答によって増複を生じさせる刺激条件にしたがう細胞増複の測定を可能とする。
【0061】
もう1つ別の好ましい実施形態にしたがうと、誘電泳動運動及び/又は閉じこめシステムに統合されたセンサーは光学タイプであり、異なる波長におけるルミネッセンス、蛍光又は光学密度(optical density)を示している。
【0062】
光学信号として蛍光発光を測定することによって、例えば受容体活性化によって又は第2の細胞メッセンジャーとの相互作用によって生じたカルシウム流出が探知されるのであり、そのカルシウム流出は成長条件における変化に続いて生じさえもする。したがって、これらの細胞応答は、単細胞において及び同様に個々のウェルにおいて測定可能である。細胞溶解現象は、溶解又は細胞浸透性の変化の後においてのみ培地中に放出される蛍光発光又は発色団を微小体が担っている場合における蛍光信号として考えられる。
【0063】
光学及び/又は誘電信号は細胞の形態変化と関係があり、それは、例えば細胞粘着又は細胞移動、又は死(アポトーシス)又は細胞障害によってプログラムされた溶解による膜特質の重大な変化のための刺激にしたがい、したがって、それは培養における既知の刺激と同定され及び正確に訂正されることが可能である。
【0064】
それゆえに、インピーダンス及び光学測定に適したセンサーは、微小体又は培地の形態学的、化学的、生化学的又は代謝的特質を同定することが可能である。
【0065】
(DNA細胞の改質への適用)
細胞の遺伝材料の改質は、エロクトロポレーション又は細胞融合によって好ましくはなされる。この場合、微小体は生物学的微小体、例えば微生物といったものであり、それは真核性細胞、酵母又はバクテリア、又はそれらの断片、又はそれらの小さな集合体、又はプロトプラストといったその派生物からなる。しかし、その方法は、脂質又はリン脂質、例えばリポソームから主になる生化学的微小体にも適用される。
【0066】
次に、本発明の装置が細胞エレクトロポレーター(electroporator)及び改質装置としてどのように機能するのかを調べる。続く記載において使用される参照構造は、図10に示されている。微小体の動き及び微小体特質の測定に影響を及ぼす力に当てられる範囲のウェルのアレイを利用することによって、多数の単細胞に同じように作用することが可能な効果的なエレクトロポレーターを作ることが可能である。その捜査に関する前述の記載から理解されるが、その装置は、この手順にとって基本的なものである多数の操作に影響を及ぼすことが可能である。特に、微生物を測定電極38及び39の面前に配置すること、及びインピーダンスを測定することでこれを確実にすることが可能である。これらの測定の終了段階において、例えば非特許文献10に記載されているように、同じ電極が必要な大きさの電圧によってエレクトロポレーションを達成するために使用され得る。電位パルスは、通常のエレクトロポレーションで一般的に使用されるときよりも低い強度で用いられる。これは、エレクトロポレーションが1つ若しくは非常に少数の細胞を含むのに適したサイズのチャンバーにおいて実行されるためである。サイズを小さくすることで、電位の適度なシフトを重要な場において得ることができる。これらの適切に加えられる電位は、細胞膜に一時的な細孔を作り出し、細胞質における濃度よりも高い濃度である上清に存在する種が細胞の内部に移動することを可能とする。特にはこれを使用することで、微生物が配置されている範囲内にある上清を変化させることが可能である。エレクトロポレーションは、電流の過度の流れ、したがって生物学的材料の過度の加熱を避けるために、低い伝導度の上清を必要とする。しかし、これらの上清は、エレクトロポレーションに続いて長期間微生物を保持するには適していない。したがって、内部において手順が実行されるチャンバーから微生物を取り除き、膜が直る間の危険な段階を克服するためにより適切な環境の中に前記微生物を移すことが通常となっている。この手順は少数の細胞のみを処理するときには難しく、加えて、微生物の配置はこのデリケートな段階の間において微生物を妨害する傾向がある。本発明において提案される解決策はこの問題を解消するものであり、すなわち、誘電泳動ケージによって当場に維持されている微生物が安定的な場所に留まっている間に上清液が変化するのである。様々な説明を図式的に要約するために、まずは、最適条件において微生物を維持するための生理溶液から上清液がなるという段階から説明を始める。前述の上清は低伝導の溶液に代用される。この段階の間、微小体の位置は前述のアクチュエータを伴う手順によって制御される。エレクトロポレーションに続いて、成長培地の替わりになることによって微生物を動かすことなくダメージを負った膜を再構成するために、最適条件において微生物を配置することで、低伝導の上清は取り除かれる又は置き換えられる。遺伝子組み替えは、エレクトロポレーションによって又は2つのゲノムを融合することによって外来性DNAを導入することによって、前記のメカニズムにしたがって達成される。また、エレクトロポレーションは、例えば細胞膜を越えることができない薬剤又は高分子といった、DNA以外の外来性の物質のもとでなされることも可能である。
【0067】
微生物の遺伝物質を改質するためのもう1つ他の非常に重要な手順としは電気融合があり、それは例えば特許文献6に記載されているようにして実行される。この場合、前述の手順は変化しないが、同様の細胞間の多くの融合を作り出すチャンバーの内部にある、異なるタイプの単細胞の沈積を使用する。特に、前記特許文献にて広く記載されているように、多くの細胞又はバクテリアにとって、DNA交換を容易にするように適切に扱われる微生物の融合をより簡単に行うことができるように電位が適用されるように、細胞集合体は作り出される。バクテリアの場合、有機物は、膜がその防御層を失うような方法で処理される。したがって、得られたプロトプラストは、アクチュエータについての断面図において記載されている電位を適用できるように、及びプロトプラストを同じ空間領域に留める誘電泳動力を生み出すように、互いに接触するように配置されている。
【0068】
前述のようにして作り出される電位の存在の下で、又は単純なアプローチを用いることでそのような電位が存在しないとしても、微小体間又は細胞間の融合を効果的に得る又は改善するために当業者に知られている可能的な方法として、既知の手順(例えば、プロトプラストのハイブリドーマ(hybridomas)を準備するために溶融を参照)にしたがって溶融(すなわち、ポリスチレングリコール、ポリブレン、ジエチルアミノエチル−デキストラン、フィコール(Fycoll)(登録商標))を容易に行う化合物を使用するやり方がある。細胞間の接着は、通常のものよりも低いオスモル濃度によって特徴づけられる環境において得られる。例えば、非特許文献11における手順では、溶融される細胞が異なる混合物にさらされる工程が記載されている。特に、細胞同士の接触、したがってそれらの接着を増進するように、細胞を含有する溶液を再び混ぜ合わせることによって溶融は実行される。この文献に記載されているような場合、接着は誘電泳動力によって与えられた推進力によって達成される。
【0069】
他の手順では、適切な電圧を適用(電気溶融)することによって細胞の溶融がなされる。その手順は、生き残った微生物又は細胞が、それらの膜を再構築し、エレクトロポレーション又は細胞溶融がなされる細胞の培養条件を変更することによって前述の段階でダメージを受けた生体機能を回復することを可能とする。
【0070】
前記選択は次のように構成された実験によって実証された。a)ウェルは生理液の伝導と等しい伝導度を有する流体で満たされている。b)設置されたセンサーは液体の伝導度を測定する。c)低い伝導度を有しかつエレクトロポレーションをなすのに適した液がチャンネル10のなかに導入される。d)新しい流体の伝導度が測定される。この実験の結果は図18に示されており、そこでは、この制御された流体流を供給することによってウェルの上清が正確に改質されることが可能であることが見て取れる。特に、電極36と37の間のインピーダンスの実部分の簡単な測定によって、内部に液体を有していないウェルと、細胞の遺伝物質を改質するための手順の間における緩衝剤としてしばしば使用される低伝導度の溶液が入れられているウェルと、典型的には生理溶液といった高伝導溶液を有するウェルとを区別することが可能である。
【0071】
また、この手順はエレクトロポレーションの手順に適用されることも可能である。特に、異なる段階において上清を変化させる能力によって、プロトプラストの融合が必要とされるときに低伝導の液体を導入することができ、その液体とは、準備段階の間に膜保護層を除去することが可能な液体であり、及び最終的には機能的再活性化の段階の間に適切な栄養物を含有している液体である。ウェルによってこれら全ての段階が単細胞のレベルにおいて実行されることが可能であるが、全体手順は巨視的規模で使用されるときでも変化することなく、それ故に、保持されるべきすでに利用可能な手順における投資が可能であり、一方、溶融手順の結果が非常に制御されたものであり、それ故に、一定のタイプの結果が得られる細胞間の正確な相互作用に関する知識に基づいた最適化アルゴリズムが適用される場合には、手順を構成する新しい可能性が開ける。
【0072】
前述の手順は、a)処理を生き残って、b)互いに異なる機能特性を実行する、細胞の個体群が生じさせる。
【0073】
ウェルにおいて利用可能なセンサーは、次のような段階の間において基本的なものである。a)細胞集団が成長し、それ故に、測定のために使用される電極間において測定されるインピーダンスが変化するという事実のために、生き残った細胞が測定される。b)必要とされる表現型(phenotype)のタイプに基づいて、前記表現型のより大きな表現をはっきりと示すクローンを選択することが時折可能である。一例として、脂質の誘電率及び絶縁抵抗が、細胞が構成されている他の材料のものと非常にことなるという事実から、細菌試料の脂質物質を製造する能力が測定される。したがって、この例の場合、測定されるインピーダンスは脂質濃度に依存している。
【0074】
(細胞選択の適用)
本発明のプラットホームは、適切な標的細胞に対するその選択的溶解能力に基づいた、クローンされた細胞の選択に直接的に適用される。一例として、CTL及びNK群に属する幾つかの免疫システム細胞は、腫瘍細胞に対する重大な活性化を示しており、同様のことは健康な細胞においても認められる。なぜ溶解作用を有するこれらの細胞が患者において減少するのかということ、さらに重要なことには、どうしたら特別な関心のあるこれらの細胞を分離することができるかについては、未だに不明である。細胞の機能的選択の問題は解決されている。すなわち、細胞は、既知の表面マーカーが存在するからではなく、それらが特殊な機能的性質を示しているから選択されているのである。
【0075】
前述の説明によると、信号細胞を沈積させることが可能な装置の利用することに基づいたこのプラットホームに、選択手順が用いられることが可能であり、例えばそれらはダコサイトメーション社によって及び次の工程によって製造される。1)標的細胞、例えば腫瘍細胞が既知の個数でウェルに、例えば1つのウェルにつき1つで沈積されている。この結果は、沈積された細胞は装置によって捕捉されることを必要とする。2)推定される溶融効果を有する既知の個数の細胞、例えばCTL又はNK細胞がウェルに沈積される。電圧が、ウェルに入れられた微小体を捕捉するためにかけ続けられている。3)ウェルにおける細胞間の表面を相互作用させる場形状を作り出すことによって、溶融効果の存在が前述の手順と同様の手順を用いて異なるインピーダンスを測定することによって測定される。4)溶融効果の生じた細胞が回復し、通常の容器に単クローンで(monoclonally)増大する。5)もし選択された細胞が異なる効果を有していたら、1)から4)において記載された手順が検証を受ける。すなわち、それらは健康な細胞といった望ましくない標的を攻撃しないのである。6)もし選択性が確証されたなら、細胞が再び増殖する。この場合、本出願のプラットホームは、in vitroで細胞が増殖する間に検証及び細胞の可能的な選択をするのにも有用である。実際、CTL細胞の増殖は、少数の再生産サイクルの後に幾つかの危険な細胞の遺伝子コードの変化を示すことが知られている。このことは、治療的な観点からして役に立つには数百万の細胞が必要であるのに対して、手順の最初の段階の間に選択される細胞の数は数十であることを考慮するとき、特に重要となる。必要とされる増殖サイクルの数は、オリジナルの遺伝コードが保存されている間の増殖サイクルの数よりも大きい。その問題は、前述したものにより類似した選択工程を有する手順を実行することによって解決される。一例として、選択の手段によって抽出された細胞は最初に増殖され、それから適切な数の増殖の後に、その機能的特性が選択手順を繰り返すことによって確かなものとなる。このようにして、治療的レベルに到達するために必要とされる増殖の数は減少し、細胞の機能的特性の再現性が確実なものとなる。今まで記載された構成は、一連の適切な電圧を適用することによって獲得される。特に、図10にある構造を参照すると、ウェルの中に沈積させる段階の間、電極40及び41における電圧が活性化され、一方、他の電極ではゼロの大きさの電圧を有することになる。この選択は、セルの出口が閉められて、ウェルへの細胞の導入が妨げられないようにする。相互作用段階は、前述したように、電極に相互作用を引き起こすことを目的として、全ての電極に適切な電圧をかけることによって進展する。様々なウェルに設けられたセンサーによって、又は細胞が溶解するときに放出される適切な染料の放出に基づいた光学的観察によって、いかなる溶解も探知される。これらの観察によって、回復されるべき細胞がいつ及びどこに存在するのかを決定することができる。
【0076】
溶解作用を有する細胞の機能的選択のための手順の実行可能性は、図19−21に示されている実験に記載されており、そこでは、市販のプラットホームである、イタリアのボローニャにあるシリコンバイオシステムズ社(Silicon Biosystems)によって製造されたDEPアレイを用いて達成されている。
【0077】
図19には、本発明のものと類似した物理原理にしたがう誘電泳動ケージをDEPアレイが製造し、及び誘電泳動効果が細胞の諸条件の光学型測定と、特に、カルセインで分類した後の蛍光発光による測定と矛盾することがないことが示されている。全部で95個の細胞がDEPアレイにおかれ、カルセインで分類され、本発明において必要とされるものと同等である100MHzの大きさで電場に20分以上さらされる。これらの細胞は、電場にさらされている全期間で強度が減少することなしに、測定可能な蛍光発光信号を与え、そして、これらの条件の下では重大な自然溶解現象は存在しないことを確証する。また、これによって、機能的選択手順を、分離が特に問題である又はあまり効果的でない細胞、例えば幹細胞、リンパ球、特異的細胞毒性リンパ球(specific cytotoxic lymphocytes)などに適用することが可能となる。
【0078】
腫瘍抗原が存在している標的細胞に対するエフェクターCTLsの溶解作用を決定する能力が、図20の実験で示されている。実験内容は次の通りである。リンパ芽球様細胞株(LCL)は、ヒトBリンパ球にエプスタイン・バーウィルス(EBV)B95.8株(非特許文献12参照)を感染させた後に獲得された。EBV特異ペプチドHPVGEADYFEY(EBNA1タンパク質のaa407−417に対応)が刺激のために使用された。HLA−B35ドナーから得た末梢血リンパ球(PBL)が、10%FCS(ハイクローン社)のRPMI1640培地において、24−ウェルのプレートで1つのウェルにつき3.5×10個という濃度で培養され、及びHPVペプチド(10μM)で刺激された。培地は7日後及び14日後に再び刺激され、培養部が10U/ml rlL−2(カイロン社)で補われる。14日目及び21日目では、T細胞培地が、細胞毒性標準分析法(51Crリリース法)(非特許文献13参照)を使用してCTL活性のために分析された。
【0079】
図20に結果が与えられている実験では、EBV(LCL)に影響を与えられ、EBVペプチド(LCL−B35陽性)をさらに負わされ、及びカルセインで分類されるヒトリンパ芽球様株が、単球が欠乏した末梢血のPBL(末梢血リンパ球)から得られるCTLsで培養され、及びEBV特異ペプチド(EBVのEBNA1タンパク質のaa407−417に対応)とIL−2とによってin vitroで刺激を与えられた。図20は、特異CTLsで予め試験された標的リンパ球が、DEP力によって動かされ、異なる電極に対応するケージの内部にあるアレイ形式において4−5の細胞の集団に沈積されることを示している。12分後、蛍光信号として検知可能なCLTsを含む胞複体は、特異的溶解が起こっている場所でのみ姿を消すのであり(12分、左側のパネル)、それは、CTLsによって認識される腫瘍エピトープ(EBVペプチド)の標的細胞における存在によって可能となった。特異的溶解の再現性は、3つの異なる実験手段が与えられて図20に記載のように実行された、図21に示されている実験において検証された。リアルタイムで30秒毎に実行された蛍光信号の測定は、DEPケージで構築されたシステムによってCTLからなる複体の特異的溶解が決定されることを可能とし、及び前記溶解が2分後においてさえ対照(ペプチドを負っていない“標的”細胞)から区別されることを示している。
【0080】
したがって、本発明にしたがうことで、生物活性、例えばCTLsによる標的リンパ球の認識及び特異的溶解の活性は、カルセインといった蛍光染料を使用する生存分類方法と例えば関連がある場合、誘電移動条件によって変化することはなく、そして、前記カルセインは、本発明にしたがうと、誘電泳動における光学信号として用いることができ、少数の標的細胞からなる胞複体における変化を測定することが可能である。
【0081】
したがって、本発明は、細胞の変性、例えば溶融、アポトーシス、壊死を含み、かつ前記変性が緩衝媒体又は他の生体適合媒体における光学的又は電気的信号の変化(例えば、インピーダンス)によって決定される、実験条件の機能的選択のための記載された装置の使用に関する。前記方法では、細胞の相互作用を目的としたウェルの内部における細胞の運動と、同じウェル又はマイクロチャンバーの内部におけるインピーダンスの変化の探知と共にアレイに細胞を沈積させることの両者を可能とする、一続きに配置された本発明のウェルからなる、固体の支持部、好ましくはマイクロプレートを使用する。
【0082】
したがって、本発明は、以下の利点を有している
a)細胞障害反応を探知するために、細胞を放射線を用いて分類する必要がない。
b)同じ条件下で含まれる多数の細胞の集団はみな同様に監視され、統計的に重大な価値を提供する。
c)単細胞の分析が可能であり、これは最小数の標的細胞を使用するだけで可能であるという利点を伴っている。
d)手順が速く、結果を数分で得ることが可能である。
e)細胞における変化(例えば、細胞崩壊)の測定がリアルタイムにできる。
【0083】
好ましい実施形態にしたがうと、この方法は、自己細胞障害、又は異種リンパ球、又は詳細棒を認識及び特に溶解するNK、又は微生物、バクテリア及び/又はウィルスの影響を受けた細胞、又はさらに通常の細胞と比較して抗原性及び/又は機能的な特性が認められる、病的状態で存在している細胞の選択及び拡大を目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1a】3つの環状電極を有する形態である本発明の1つの実施形態にしたがうウェルを通した、続く図1bから図1dにおいてA−A’で指示されている断面図を示している。
【図1b】図1aの電極1の断面B−B’における上面図を示している。
【図1c】図1aの電極2の断面C−C’における上面図を示している。
【図1d】図1aの電極3の断面D−D’における上面図を示している。
【図2】流体で満たされたウェルのアレイ、及び表面の疎水処理によって生じたメニスカスの図像を示している。
【図3】逆位置(上下逆転)において液体に満たされたウェル及び空気−液体接合部における細胞の蓄積を示している。
【図4a】2つの環状電極を有する形態である本発明の1つの実施形態にしたがうウェルを通して、続く図4b及び4cにおいてA−A’で指示されている断面図を示している。
【図4b】図4aの電極31の断面B−B’における上面図を示している。
【図4c】図4aの電極32の断面D−D’における上面図を示している。
【図5】図4に記載されている2つの環状電極を備えた構造を有するウェルの断面A−A’に沿った電場係数の分布を示している。電極31と電極32とにかけられた電位は、同じ大きさの正弦波であるが、180度だけ位相が動かされている。
【図6】300ミクロンの直径と図4に記載の構造とを有するウェルの内部に入れられた、90ミクロンの直径を有するポリスチレン球の図像を示している。最大振幅が15Vの大きさの正弦波分極電圧をかけることによって、その球は図5に表示されている最小領域に維持される。分極電圧がなければ、その球は水よりも重いので下に落ちる。
【図7】図1に記載の3つの環状電極を備えた構造を有するウェルの断面A−A’に沿った電場係数の分布を示している。電極1と電極2と電極3とにかけられた電位は、同じ大きさの正弦波であり、電極1及び3の位相は同じであるが、それらは電極2にかけられた電圧に対して位相を180度変えてある。
【図8a】2つの対向する馬蹄型電極と環状電極とを有する形状である本発明のさらなる実施形態にしたがうウェルを通した、続く図8bから8cにおけるA−A’によって指示されている断面図を示している。
【図8b】図8aの電極33の断面B−B’における上面図を示している。
【図8c】馬蹄形状でかつ物理的に分離されている、図8aの電極34及び35の断面D−D’における上面図を示している。この場合、電極は異なる電位で維持されている。
【図9】図8に記載の構造を有しているウェルの断面にA−A’に沿った電場係数の分布を示している。電極34と電極35とにかけられた電位は、同じ大きさの正弦波であるが、接触部33が接地されている一方、位相が180度動かされている。
【図10a】馬蹄型電極を有する形状である本発明のさらなる実施形態にしたがうウェルを通した、続く図10bから図10dにおいてA−A’で指示されている断面図を示している。
【図10b】図10aの電極36及び37の断面B−B’における上面図を示している。
【図10c】電極38及び39を有する図10aの断面C−C’における断面図であるが、しかし特にそれらの電極だけでなく、図10aの実施形態における測定電極がそこにあってもよい。
【図10d】図10aの電極40及び41の断面D−D’における上面図を示している。
【図11】電極36−41にかけられた電位が電極37−40にかけられた電位と同位相である場合における、図10に示されているように構成されたウェルの断面A−A’に沿った電場のパターンを示している。この場合、電極36−41及び電極37−40の組にかけられた電位は、180度だけ位相が動かされている。
【図12】図10に示されている構造のウェルのための定電場表面、及び図11に示されている分極電圧について示している。その表面は、“誘電泳動ケージ”を決定する電場の最小領域を同定する。
【図13】図10aに記されている構造を有するウェルに前に入れられた負の電気泳動をかけられた2つの微小体22及び23の位置合わせを示している。
【図14】電極38及び39における分極電圧の活性化の結果、放射状方向に整列した直径300ミクロンのウェルのなかに入れられた、直径90ミクロンの2つのポリスチレン球の図像を示す。参考となる構造は、図10a及び10cに与えられている。
【図15】本発明にしたがうプラットホームにおける電極のアレイの構成を示す。
【図16】本発明にしたがうプラットホームにおける電極、特に測定電極(センサーとしても知られている)のアレイの構成を示す。
【図17】前述の図におけるウェル14を供給する流体が制御されたやり方で流れることが可能なチャンネル10の実施形態を示す。
【図18】上清を変えて測定されたインピーダンスの変化を示す。
【図19】DFP刺激にしたがうカルセインの安定性を示す。誘電処理が蛍光信号を変えはしないことを調べるために、カルセインを付加されたLCLsが100MHzで処理され、スマートスライド(SmartSlide)(登録商標)及びDEPアレイ上に配置された。示されているように、蛍光強度は長期間においてある程度一定の強さを維持している。分ごとに計測される蛍光信号は、スマートスライド(登録商標)のプラットホームの場合においては125個の細胞から、及びDEPアレイのプラットホームの場合においては95個の細胞から決定される。
【図20】ペプチドEBVを付加されたカルセイン分類LCLs(左側パネル)及び非付加制御LCLsが、15分間活性化されたCTLで培養された。胞複体は分割されており、それはマンニトール緩衝剤で再懸濁され、DEPアレイに分布されている。それから、蛍光信号は0分のときと12分後に測定された。矢印はLCLを含有していない胞複体を示している。12分の時点において、LCLの特異的溶解が制御されずに生じる(右側パネル)場合にのみ、蛍光信号は姿を消す。
【図21】パネルAにおいて、ヒストグラムはEBVペプチドを付加された又はペプチドを付加されていないLCLの溶解による蛍光信号の減少を示しており、それは、15分間及び30分間CTLで培養されたのち、マンニトール緩衝剤中のDEPアレイ上で分割されたものである。パネルAにおいてヒストグラムは0分を参照し、パネルBにおいて曲線はx軸上に指示されている時間を参照している。黒:可能的なLCLsの溶解(ペプチドが付加されている)、白:制御(非付加LCLs)。
【符号の説明】
【0085】
1 電極
2 電極
3 電極
7 上部層
8 誘電材料
9 半透過性膜
10 チャンネル
11 基部
12 壁部
13 ノズル
14 ウェル
16 チャンネルの入り口
17 チャンネルの出口
18 増幅器
19 インピーダンス
20 非反転入力
21 出力
22 微小体
23 微小体
31 電極
32 電極
33 接触部
34 電極
35 電極
36 電極
37 電極
38 電極
38’ 電極
39 電極
39’ 電極
40 電極
41 電極
101 対称中心軸
102 表面
103 内壁
105 上端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及び該液体の内部に含まれる微小体を保持するためのウェル、特に、垂直軸(101)を有する、少なくとも上端部が開放してあるウェル(14)であって、
誘電泳動効果の手段によってウェル内部にある微小体を操作することができように、電圧、特には交流電圧が供給されている少なくとも2つの操作電極(1、2、3、31、32、36、17、40、41)から構成されるウェル。
【請求項2】
少なくとも3つの操作電極から構成されることを特徴とする請求項1に記載のウェル。
【請求項3】
少なくとも4つの操作電極から構成されることを特徴とする請求項2に記載のウェル。
【請求項4】
前記電極は、前記軸を横断する、異なる平面に実質的に配置される導電材料からなるプレートから構成されることを特徴とする前記のいずれかの請求項に記載のウェル。
【請求項5】
前記電極は、ウェルを規定する側壁部(103)をまたいで互いに対向していることを特徴とする前記のいずれかの請求項に記載のウェル。
【請求項6】
前記側壁部は、前記電極が埋め込まれている誘電材料(8)から構成されることを特徴とする請求項5に記載のウェル。
【請求項7】
ウェルのなかに液体を供給する又はウェルから液体を除去することが可能なチャンネル(10)へと続く開口部が下端部に設けられていることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項8】
半透過膜(11)によって前記チャンネルから分離されていることを特徴とする請求項7に記載のウェル。
【請求項9】
ウェルを規定する側壁部は親水性表面を有することを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項10】
ウェルを規定する側壁部は疎水性表面を有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のウェル。
【請求項11】
前記側壁部から始まって外側に向かって幅が広くなっている上部分(12)から構成されることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項12】
前記側壁部が親水性表面を有するとき前記上部分は疎水性表面を有し、その逆の場合もあることを特徴とする請求項11に記載のウェル。
【請求項13】
前記側壁部が親水性表面を有するとき前記上部分は親水性表面を有し、前記側壁部が疎水性表面を有するとき前記上部分は疎水性表面を有することを特徴とする請求項11に記載のウェル。
【請求項14】
少なくとも1つの前記電極はウェルの規定壁に沿った環状リムを形成しており、そのリムはウェルの対称軸を横断する平面に実質的に配置されることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項15】
平行な平面に配置され、かつ前記環状リムを形成する2つの電極から構成されることを特徴とする請求項14に記載のウェル。
【請求項16】
平行な平面に配置され、かつ前記環状リムを形成する3つの電極から構成されることを特徴とする請求項15に記載のウェル。
【請求項17】
ウェルの垂直対称軸を横断する同じ平面に配置され、かつウェルの規定壁に沿った2つの環状リム部分を形成し、特にウェルの軸と平行な表面によって互いに分離されている一組の電極から構成されることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項18】
前記一組の電極及び環状リムを形成する前記電極は、好ましくは該一組の電極に対してウェルの上分部に対して配置される環状リムを形成する前記電極とともに、異なる横断平面上に配置されることを特徴とする請求項14及び17に記載のウェル。
【請求項19】
ウェルの軸を横断する2つの異なる平面に配置された、前述の2組の電極から構成されることを特徴とする請求項17に記載のウェル。
【請求項20】
一組の測定電極から構成され、該測定電極によって該測定電極間のインピーダンスを測定することが可能であることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項21】
前記測定電極はウェルの側壁部をまたいで互いに対向しており、かつ前記2つの電極組が配置される平面の中間にある平面に配置されることを特徴とする請求項19及び20に記載のウェル。
【請求項22】
前記測定電極は、前記2つの電極組を分割する前記表面に実質的に平行な方向にウェルの軸を横断する線に沿って配置されることを特徴とする請求項21に記載のウェル。
【請求項23】
前記測定電極は、適切に電源が供給されるとき、ウェルに保持された微小体を適切に移動させる、及び/又はエレクトロポレーション又は溶解反応を生じさせることを特徴とする請求項20から22のいずれかに記載のウェル。
【請求項24】
ウェルの軸に対して平行な側面部を有し、該側面部の直径が30から150μm、好ましくは50から100μmの範囲にあることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項25】
ひっくり返された場合でも毛細管現象によって内部に液体を保持することが可能であることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項26】
ウェルの内容物の物理的及び/又は化学的特性を測定するためのセンサー、特にはインピーダンス、光学又は電位差測定タイプのセンサーが設けられていることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項27】
前記操作電極のうち少なくとも1つはセンサーとして機能することもできることを特徴とする前記の請求項のいずれかに記載のウェル。
【請求項28】
前記の請求項のいずれかに記載の複数のウェルから構成されることを特徴とするプラットホーム。
【請求項29】
1つの列に属しているそれぞれのウェルの少なくとも1つの操作又は測定電極は、それと同じ列に属している他のウェルの対応する電極と結合されていることを特徴とする請求項28に記載のプラットホーム。
【請求項30】
1つの行に属しているそれぞれのウェルの少なくとも1つの電極は、それと同じ行に属している他のウェルの対応する電極と結合されていることを特徴とする請求項28又は29に記載のプラットホーム。
【請求項31】
それぞれのウェルの少なくとも1つの操作電極は、他のウェルの対応する電極に結合されていることを特徴とする請求項28から30のいずれかに記載のプラットホーム。
【請求項32】
それぞれのウェルの少なくとも1つの測定電極は、他のウェルの対応する電極に結合されていることを特徴とする請求項28から31のいずれかに記載のプラットホーム。
【請求項33】
それぞれのウェルにある液体の液滴及び/又は微小体を沈積させるシステム(13)を有することを特徴とする請求項26から32のいずれかに記載のプラットホーム。
【請求項34】
液体及び前記液体を保持することが可能なウェルを使用する方法、特に、垂直軸(101)を有する、上端部が開放してあるウェル(14)又は幾つかのウェルから構成されるプラットホームを使用する方法であって、
上方を向いている前記上端部を有する通常の形態をした、又は液体が毛細管現象によってウェルに保持されている下方を向いた前記上端部を有する逆さま形態をした前記ウェルを使用することからなるウェルを使用する方法。
【請求項35】
前記ウェル内部に保持されている少なくとも1つの微小体に、誘電泳動効果、特に負の誘電泳動効果を生じさせるために、交流、好ましくは正弦波電圧を前記電極の少なくとも1つにかけることからなる請求項1から27のいずれかに記載のウェルを使用する方法。
【請求項36】
請求項16に記載のウェルにおいて、実質的に同位相の正弦波電圧がウェルの軸に沿った方向にある2つの最も離れた電極にかけられ、かつ実質的に逆位相の電圧がその中間位置に配置された電極にかけられる、又は、ウェル内部に同様の電場を形成するのに適した電圧がかけられることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項15に記載のウェルにおいて、ゼロ電圧がウェルの軸に沿った方向にある上端部に最も近い電極にかけられ、かつ正弦波電圧が前記端部から最も離れた位置に配置された電極にかけられる、又は、ウェル内部に同様の電場を形成することが可能な電圧がかけられることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
請求項18に記載のウェルにおいて、逆位相の正弦波電圧が前記組になった電極にかけられ、かつゼロ電圧が残りの電極にかけられる、又は、ウェルの内部に同様の電場を形成することが可能な電圧がかけられることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
請求項19に記載のウェルにおいて、実質的に逆位相の正弦波電圧がそれぞれの前記組なった電極にかけられ、それによってウェルの軸方向に重ね合わされた2つの電極の電圧が実質的に逆位相にもなる、又は、ウェルの内部に同様の電場を形成することが可能な電圧がかけられることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記測定電極が一列に並べられている直線に沿って実質的に配置されている電場の最小領域を作り出すことができるように、請求項22に記載のウェルに電圧がかけられることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
微小体が物理的、生物的又は化学的性質の刺激を受けることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記刺激に対する反応が測定されることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細胞を分離する最終段階から構成されることを特徴とする請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
測定センサーは、ウェルに保持された微小体又は培地と関連する、インピーダンス、光学又は電位差信号を測定することを特徴とする請求項35から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記信号は、微小体又は培地の特性の変化であることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記光学信号は、蛍光、ルミネッセンス又は光学密度信号であることを特徴とする請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記信号又は前記そのバリエーションは、微小体又は培地の形態学的、化学的、生化学的又は代謝的特質を特定することを特徴とする請求項44から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記特性は、微小体又は培地における脂質の含有量又は濃度であることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記信号又は前記そのバリエーションは、細胞溶解を識別することを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項50】
誘電泳動の手段によって微小体を閉じこめること、及びウェルの内部で液体を変化させることから構成されることを特徴とする請求項41から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
微小体、特に分離した細胞は、エレクトロポレーションに適した電場にさらされていることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項52】
前記エレクトロポレーションは、外来性物質の存在によって実行されることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
微小体同士を相互作用させるのに適していることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項54】
適切な電極は微小体の電気融合を引き出すことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
微小体間の前記相互作用は、細胞溶解を生じやすくさせる因子、好ましくはPEG、デキストラン、フィコール(Fycoll)(登録商標)、低浸透圧条件又は高浸透圧条件の存在下で実行されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
細胞溶解は、遺伝物質の再結合を導くことを特徴とする請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
インピーダンス、光学又は電位差信号を測定することによって実行される機能的選択工程から構成されることを特徴とする請求項51から56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
誘電泳動によって微小体を閉じこめること、及びウェルにおいて液体を変化させることから構成されることを特徴とする請求項51から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
微小体は、分離した細胞又は脂質小胞又はリポソームであることを特徴とする請求項41から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記分離した細胞は、真核細胞、微生物(酵母、バクテリア)又はプロトプラストであることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記真核細胞は人間のものであることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記人間の細胞は、幹細胞、リンパ球細胞、肝細胞又は上皮細胞であることを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
光学又は誘電特質を有するマーカーがあることで微小体は改質されることを特徴とする請求項41から62に記載の方法。

【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図7】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図6】
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【図8a】
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【図10a】
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【図14】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−539096(P2009−539096A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512700(P2009−512700)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001427
【国際公開番号】WO2007/138464
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508354821)マインドシーズ ラボラトリーズ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】