説明

単結晶ワイヤおよびその製造方法

本発明は、単結晶ワイヤおよびその製造方法を開示する。この方法は、金、銅、銀、アルミニウムおよびニッケルよりなる群から選択された少なくとも1種の金属を成長坩堝に収容させる段階と、成長坩堝に収容された金属を加熱して溶融させる段階と、金属結晶をシードとして用いてチョコラルスキまたはブリッジマン方法によって単結晶を成長させる段階と、育成された単結晶を放電加工を用いて切断する段階と、切断された前記単結晶を線材に形成させる段階とを含んでなる。本方法において、前記育成された金属単結晶は放電加工によって円形欠片に形成し、前記欠片はワイヤカット放電加工によって単結晶ワイヤに形成する。前記単結晶ワイヤは、指輪、パンダント、またはオーディオと映像機器間を連結する高品位ケーブル内部の線材として活用される。また、放電加工によって円形欠片に形成された単結晶は、基板および蒸着用ターゲットとして用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶ワイヤおよびその製造方法に係り、さらに詳しくは、単結晶育成方法で単結晶を成長させた後、成長した単結晶をワイヤに加工することにより製造された単結晶ワイヤ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
70年代までは高品位ケーブルに対する概念が未だ定立されていなかったが、無酸素銅(Oxygen Fee Copper、以下「OFC」という)が開発されてからケーブルは飛躍的に発展してきた。
【0003】
特に、オーディオ機器などを連結させる線材であるケーブルの場合、ケーブルの品質が音質に影響を及ぼすというのは周知のことであって、低級のケーブルを高品位ケーブルで取り替えると、大幅な音質向上が得られる。
【0004】
このような線材に交流信号を流すと、交流磁界が発生し、それが交流に対する抵抗として作用する。特に周波数が高くなればなるほど抵抗は大きくなるが、これをインダクタンスという。ケーブルの場合、被覆線材をぐるぐると円形に巻くか、被覆線材を+、−に分離すると、インダクタンスは増加する。インダクタンスが増加する場合、音の純度は低下する。ところが、被覆線材を+、−に分離した後、縄のように撚ると、寧ろインダクタンスが小さくなって音の純度が高くなる。
【0005】
一般にケーブルを撚ると、インダクタンスは小さくなるが、静電容量が増加して帯域が狭くなり、音が濁り気味になるおそれもある。ケーブルによるオーディオの音質変化は明らかな事実であるが、その理由は未だあまり解明されていない。
【0006】
たとえば、線材の高純度化は、音質の純度は高めるが、一般に直流抵抗を増加させる。これは、ケーブルのエネルギーを減少させることもある。ケーブルの音質は、線材自体の材質および物性によっても影響されるが、被覆の材質、線材の結晶構造、端末処理によるインダクタンス、静電容量、表皮効果のみならず、オーディオ間のインピーダンスによっても大きく影響される。
【0007】
すなわち、大部分のケーブルの音質は、線材自体の特性にも影響されるが、それよりはケーブルの被覆材質や線材の結晶構造などに大きく影響されている。
【0008】
したがって、純度99.9999%の6N銅線ケーブルの音質よりは純度99.99%のOFCケーブルの音質が優れる場合が殆どである。線材の金属導体として良い電気伝導性を持つものは、電気伝導性の高い順によって、銀、金、銅、アルミニウムの順で挙げられるが、その中でも銅が導体として最も多く用いられている。その理由は、コストが低く、電気伝導性および加工性に優れるからである。
【0009】
通常の銅線は、純度3N(99.9%)が標準であって、製造の際に作業性を良くするために酸素を吹き込むが、これを省略したものをOFCという。酸素以外の不純物、すなわち金属、硫黄の除去の度合いによって6N(99.9999%)、7N(99.99999%)などがある。酸素以外の不純物を除去する方法によって従来の技術を羅列すると、次の通りである。
【0010】
タフピッチ銅(以下、「TPC」という)の製造は、一般な銅線製造方法であって、酸素を挿入して銅を溶かした後、急激に冷却させて製造し、大量生産方式に適した工程である。この製造方法は、硫黄および亜酸化銅が添加されており、酸素含有量3000〜4000ppm、純度99.9%の3N銅を製造する方法である。
【0011】
OFCは、高純度銅線開発の始発点になった線材であり、銅を溶かして冷却させるときに酸素を吹き込む既存のTPC方式ではなく、酸素によって発生する亜酸化銅という不純物を除去するために酸素含有量を10ppm以下まで減少させた4N(99.99%)製品である。このOFC線材の使用により、濁り音が除去され、音の純度が高くなって音の明瞭度が向上した。
【0012】
線形結晶無酸素銅(Linear Crystal Oxygen Free Copper、以下「LC−OFC」という)は、金属結晶の境界面に音質を歪ませる何かがあるという理論に基づいて開発された銅線である。銅は、溶いた状態で急冷させると、微細な結晶構造を持つが、結晶が多ければ、信号伝達の差支えになるという理論に基づき、OFC銅線の結晶構造を一方向構造にするために、銅をゆっくり冷却させて結晶を大きくした後、結晶構造を強制的に線形に長く伸ばしたものである。この工程は、結晶構造を線形に伸ばす過程で機械的なストレスが発生し、加工の際に銅に熱が発生するため、結晶構造に影響を与えるので、音質劣化の原因になることもある。
【0013】
単結晶状高純度無酸素銅(Pure Crystal Ohno Continuous Casting、以下「PCOCC」という)は、LC−OFCが結晶体を強制的に伸ばす過程において銅線に熱と物理的ストレスが発生して音質に悪影響を与えるという欠点を補完したもので、LC−OFCに比べ、冷却過程において、線材を一つの結晶体に作るために徐々に冷却させる構造を加え、線材を結晶体に作ったものである。
【0014】
一般に強度の高い導体としては、LC−OFC、PCOCCが代表的であるが、これらは、単結晶構造が変化するのを防ぐために熱処理過程を経ない。ところが、熱処理を経ていない銅線は、線材加工から発生する機械的圧迫、すなわちストレスを受けるから、結晶構造に影響を及ぼす。このため、機械的ストレスを減らすために行う若干の熱処理を施したものがミュー(μ)導体である。これまで線材を開発する技術の種類において、単結晶の構造が高品位ケーブルの製造に重要な変数として作用することが分かる。ところが、単結晶の構造が変化するのを防ぐ技術は、未だに完璧な技術が開発されていない。
【0015】
また、銀(Ag)は、銅より優れた電気的特性を持っており、特に電気抵抗が少ないものである。これにより、オーディオケーブルにおいて銅より銀が明らかに有利であり、特に、銀は銅に比べて酸化状態で利点を持っている。すなわち、銅は酸化しやすく、酸化した銅は半導体などの皮膜を形成するが、酸化銀は化学的に安定しており、導体としての役割を十分に行うことができるという利点を持っている。
【0016】
一般に、銀導体は、銅線と同様に、高純度化と熱処理法によって多くの改善が行われている。よって、オーディオ専用線として開発された最近の銀線材と銀コートOFC線材は、一般通信用銀線とは異なり、情報量が多いながらも柔らかい音を出すものとして知られている。
【0017】
アルミニウムは、銀と同様に、非常に個性の強い導体である。アルミニウムは、銅より電気抵抗が多少高いが、高音域で特有の色で非常に個性のある音を出すものとして知られている。したがって、銀または銅と混合されたアルミニウム線材は、独特で品格のある音を出す。
【0018】
したがって、高品位ケーブルを確保するためには、結晶構造がよく備えられた高純度単結晶を用いた銅、銀、アルミニウムの線材製造技術の開発が至急であると思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、本発明は、前述した従来の技術の問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、種結晶を用いて金属単結晶を育成した後、円形欠片に形成してワイヤを製造させる単結晶ワイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、金、銅、銀、アルミニウム、ニッケルよりなる群から選択された少なくとも1種の金属を成長坩堝に収容させる段階と、成長坩堝に収容された金属を加熱して溶融させる段階と、金属結晶をシードとして用いてチョコラルスキまたはブリッジマン方法によって単結晶を成長させる段階と、育成された単結晶を放電加工を用いて切断する段階と、切断された前記単結晶を線材に形成させる段階とを含んでなる、単結晶ワイヤ製造方法を提供する。
【0021】
ここで、前記成長坩堝は黒鉛坩堝、窒化ホウ素(BN)坩堝、アルミナ坩堝、石英坩堝よりなる群から選択されたいずれか一つであり、前記成長坩堝に収容された金属の加熱はRF誘導コイルまたは炭素ヒータを用いて行われ、前記切断段階では単結晶が円板状に形成され、前記切断段階後の線材加工はワイヤカット放電加工またはパターン付き金型を用いたプレス加工によって行われ、前記円板状に形成された単結晶は金属単結晶基板または金属蒸着用ターゲットとして使用され、前記プレス加工によって形成された線材はリング状を持つことが好ましい。
【0022】
前記切断段階では単結晶が円筒状に形成されることが好ましい。また、前記切断段階で形成された円筒状の単結晶はリング状に切断されることが好ましい、また、切断段階の後、前記単結晶は、研磨工程またはウェットエッチング工程を経ることが好ましい。
【0023】
また、前記線材は外表面に合成樹脂被覆が形成され、前記線材の両端部には端子が形成されることが好ましい。
【0024】
一方、本発明の他の観点によれば、金、銅、銀、アルミニウム、ニッケルよりなる群から選択されたいずれか1種の金属を加熱、溶融させ、金属結晶をシードとして用いてチョコラルスキまたはブリッジマン方法によって単結晶を成長させ、成長した単結晶を切断することにより形成される単結晶ワイヤを提供する。
【0025】
ここで、前記切断された単結晶は、リング状に形成されて指輪などとして用いられるか、ワイヤ状に形成されて連結ケーブルとして用いられることが好ましい。
【0026】
また、前記ワイヤ状に形成された連結ケーブルは外表面に合成樹脂被覆が形成され、前記連結ケーブルの両端部には端子が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
前記構成による本発明は、種結晶を用いて金属単結晶を育成し、放電加工によって円形欠片に形成した後、前記欠片を、ワイヤカット放電加工などによって、一方向の結晶構造を持つ単結晶ワイヤおよびワイヤ製品に形成させることができるという効果がある。
【0028】
また、前記単結晶ワイヤは、オーディオと映像機器間を連結する高品位ケーブル内部の線材、指輪またはペンダントなどの製品として活用されるという効果がある。
【0029】
また、円板状に形成された単結晶は、薄膜製造用単結晶基板または蒸着用ターゲットとして活用される付加的な効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0031】
まず、育成しようとする金属塊、すなわち金、銅、銀、アルミニウム、ニッケルよりなる群から選択された少なくとも1種の金属塊を成長坩堝(BN坩堝、石英坩堝、黒鉛坩堝、アルミナ坩堝など)に入れて、前記金属塊の含まれている成長坩堝の前記金属塊を、誘導コイルを用いた誘導加熱または炭素ヒータを用いて溶融させる。本発明では、成長坩堝としては、黒鉛坩堝、あるいは黒鉛坩堝を外部坩堝とし且つBN坩堝、石英坩堝、アルミナ坩堝のいずれか1種を内部坩堝とした二重構造坩堝を使用した。
本発明では、銅、銀単結晶を育成することについて詳細に述べる。
【0032】
ここで、銅と銀が炭素と化学的結合をしないので、成長坩堝として黒鉛坩堝、または外部坩堝が黒鉛坩堝である二重構造坩堝を使用した。成長坩堝を発熱体として使用する理由は、金属単結晶が育成されながら坩堝に残留した溶融状態の塊の量が減少する場合に誘導加熱の温度調節が難しいためである。よって、成長坩堝を発熱体として用いて坩堝自体の温度を制御することが金属単結晶の育成に有利である。成長坩堝、一般な銅および銀はRFコイルを用いて金属の融点で誘導加熱する。銅と銀の融点がそれぞれ1083°C、962°Cなので、融点より30°C程度高い温度まで加熱して銅と銀を完全に溶かす。
【0033】
所望の結晶構造を持った種結晶を製造してチョコラルスキ方法によって単結晶を育成させるところ、種結晶は、(100)、(110)、(111)方向に棒状にそれぞれ製造した。また、銅単結晶を育成するための成長温度は1100°C〜1000°Cの範囲内とし、銀単結晶を育成するための成長温度は1000°C〜900°Cの範囲内とした。また、液相の温度を0.1〜1°C/min程度下げながら成長させる種結晶を用いたチョコラルスキ方法によって銅と銀の高純度金属単結晶を育成する。
【0034】
以上、チョコラルスキ方法によって単結晶を育成する方法について説明したが、ブリッジマン方法によって単結晶を形成してもよく、それが本発明の範疇に属するのは自明なことである。
前述した過程を経ると、図1のような銅単結晶が形成される。
【0035】
次いで、形成された単結晶を用いて線材を製造しなければならないところ、前記育成された高純度単結晶を線材加工するための工程として放電加工を行い、所望の厚さの円板状の欠片に切断する。ここで、銅と銀を薄い円板状の欠片に加工するとき、応力による変形を最小化するために放電加工を施す。
【0036】
円板状の欠片の厚さは、製造しようとする線材の直径によって決定されるが、本発明では、約1mmの厚さに薄い円板状の欠片を製造した。
【0037】
製造された円板状の欠片は、ワイヤカット(wire-cut)方式の放電加工によって直径1mmの線材に製造されなければならないところ、放電加工によって製造された円板状の欠片の断面に対する応力の一部を完全に除去するために、粒子サイズ0.3μmのアルミナ粉末を用いて円形欠片の表面を研磨する。
【0038】
このような研磨過程を経た円板状の欠片から所望の線材を確保するために、円板状の欠片を外部モールドを用いて固定させた後、ワイヤカット放電加工を用いて線材を製造する。円形欠片から線材を製造する方法は、円形断面の外部から内部へ所望の直径の大きさだけ削り出す方式で線材を形成し、放電加工を行う途中で線材の撚りを防ぐために別途の巻きを行う。
【0039】
または、ワイヤドリルを用いて円形断面の中心部に小さい孔を穿設し、内部から外部へ所望の直径の線材として作り出す方式で線材を形成させる。
【0040】
前述した製造工程によって得られた線材は、加工過程で形成された応力の影響が残っているので、線材に対する光学的研磨が必要とされる。円形欠片に対する研磨の時と同様にアルミナ粉末を使用し、線材の表面応力の影響を除去する。
【0041】
また、線材の表面に形成された応力の影響は、希釈されたフッ酸を用いて除去される。放電加工中に形成された金属の表面応力は殆ど酸化膜からなっている。このような酸化膜はHO:HF=5:1の溶液を用いてウェットエッチング法によって除去可能であり、ウェットエッチング時間は3分程度に維持する。
【0042】
このような過程によって製造された線材を図2に示した。
表面加工またはウェットエッチング済みの線材は、オーディオなどを連結させる連結ケーブルとして利用可能なので、ケーブルとして用いるために線材の外表面を被覆する。
【0043】
被覆工程は、公知の技術として知られた方法の他にも、自体の手作業過程によって行う。これにより、商業用音響および映像資料の伝送に必要な単結晶ワイヤ製品が生産される。
【0044】
通常、製造された線材は、この線材より大きい直径を持つ絶縁性圧縮チューブなどで被覆する。すなわち、音響関連ケーブルとして活用するためには、必要な直径にポリウレタンまたは絶縁性圧縮チューブで被覆し、内部線材を酸化または外部応力から保護する単結晶ワイヤ製品を製造する。
【0045】
銅軸ケーブルとして活用するためには、合成樹脂の被覆を行った後、さらに天然皮被覆を行うことにより、外部電流のノイズから保護される単結晶ワイヤ製品を製造する。また、ケーブルの両端をRCA端子、または金属単結晶で製造された端子で処理し、映像および音響機器との連結においてノイズを完璧に遮断することにより、音響の品質を向上させる。
【0046】
ここでは前記円形基板を用いて線材を形成させる方法について説明したが、前記過程によって生成された円形基板は、一方向性を持つ蒸着用基板およびターゲットとしての活用も可能なので、蒸着用ターゲットの規格に合わせて2、3、4インチ用ターゲットの活用が可能である。正確な外径を得るために、放電加工によって形成された円形欠片を所望の直径に再加工し、あるいは銅単結晶を最初に必要とする外径を持つように放電加工し、蒸着用基板およびターゲットとしての活用が可能である。これも本発明の範疇に属する。
【0047】
以上、放電加工作業を用いて線材を形成させる方法などについて説明したが、図3のように金型を用いて線材を加工してもよい。
【0048】
図3に示すように、放電加工を用いて形成された円板状の欠片100を所望のパターン111が形成された金型110の上面に位置させた後、プレス加工を行うことにより、前記金型110のパターン111の形状と同一の線材が加工される。すなわち、図3のようなパターン111を持った金型110を用いると、リング形状の線材が形成され、パターンが連続的に連結形成された金型を用いると、連結された線材が形成される。
【0049】
ここで、リング状の線材の場合は、指輪またはペンダントなどとして利用可能であり、連結された線材の場合は、前記放電加工を含むミリング作業によって線材を加工する方式と同様に光学的研磨などの後加工を施すか、あるいはウェットエッチングを用いて表面酸化膜を除去する方法によって、単結晶ワイヤケーブルに製造する。
【0050】
以上、連結型単結晶ワイヤケーブルについて説明したが、前述したように、チョコラルスキ法またはブリッジマン法によって成長させた単結晶を用いて高純度の指輪(リング)などを製造することができるので、図1のように成長した単結晶の上面をワイヤカット放電加工器を用いて切断した後、図4の如く、直径0.5mm以下のワイヤ放電加工ドリル器とワイヤカット放電加工器を用いて円柱状に形成させた後、放電加工を用いて円筒状の円筒体120を形成させ、円筒体120を横方向に切断すると、高純度の指輪(リング)が製造される。金属の加工に対する放電加工器の加工技術は、公知の技術を活用する。ところが、製品の酸化を防止し且つ微細加工によって高付加価値として活用されるためには、非電気式放電加工装備などの最先端加工装備を使用すると、単結晶製品の価値は向上する。
【0051】
前記の方法で製造されたリング形状の指輪製品は、人体の健康に役に立つ補助的役割として活用され得る。リング形状において金属原子が一方向に構成された単結晶指輪の場合は、一般金属指輪よりリング形状の内部に流れる電流に対して誘導される磁場の変化またはこの磁場の変化に誘導される渦電流(eddy current)がさらに増加する。結晶構造が一方向である単結晶指輪の場合、構造的安定化によって電流の妨害要素が減少して、リング形状から誘導される電流の量は一般リング形状の指輪より大きいのである。したがって、単結晶指輪から生成される渦電流の量は、人体の血流流れを円滑となるように刺激し、このような血流の変化により生体磁気的変化が時間経過に伴って蓄積されると、一般人より血流の変化が活動性を持つ。血流の流れが一定で常に活動的であれば人体の健康に役に立つというのは、現在の医学によって十分裏付けられている。
【0052】
前記の方法によって製造された高純度単結晶ワイヤに対する結晶構造の問題点が改善されたかを確認するために、XRD(X線回折装置)を用いて、銅単結晶を用いて製造された単結晶ワイヤ、および溶融状態で固まった多結晶銅ワイヤを測定した結果を図5に示した。
【0053】
図5に示すように、前記の方法で製造された単結晶ワイヤが種結晶の方向と同一の一方向の結晶構造を持っていることを確認することができる。
【0054】
また、商業用線材として活用されるために必要な不純物の含有量を確認するために、多結晶銅と単結晶ワイヤに対してGDS(glow discharge spectroscopy)測定を行い、その結果を図6に提示した。
【0055】
図6に示すように、製造された単結晶ワイヤの銅純度が5Nであって、線材としての活用が可能であることが分かる。
【0056】
製造された単結晶ワイヤの表面と多結晶銅ワイヤの表面に対してエッチングを行い、その結果を図7に示した。
【0057】
図7に示すように、多結晶銅ワイヤの場合は結晶の方向性を示すエッチングのパターンが形成されなかったが、単結晶ワイヤの場合は(100)方向を示す四角形のエッチングパターンが形成されたことを確認することができる。
【0058】
製造された単結晶ワイヤは、現在の資料のみからも、高純度であり、一方向性の結晶構造を持つ単結晶であることが分かる。
【0059】
このような単結晶に対して温度変化による電気抵抗値を測定し、その結果を図8に示した。
【0060】
多結晶銅ワイヤの電気抵抗値の場合、高純度の銅に対して1.7×10−6Ωcmであると知られている。ところが、図8に示すように、本発明によって製造された単結晶ワイヤの電気抵抗値は1.2×10−7Ωcmであり、低温になればなるほど、多結晶銅ワイヤの電気抵抗値より単結晶ワイヤの電気抵抗の特性値が非常に低くなることを確認した。
【0061】
特に、ケーブルの場合、図9に示すように、単結晶ワイヤの最終外部被覆を天然皮で形成することにより、音響の信号伝達において既存の製品に比べて卓越した優秀性を示しており、その結果を図10に示した。
【0062】
図10に示すように、天然皮の特性によって外部からの音および電磁気波を完全遮断することにより、既存の多結晶ケーブルより振動数によるインピーダンスの値が全振動数領域にわたって変動なく低いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によって製造された単結晶ワイヤおよびその製造方法は、様々な分野に適用可能であり、特に商業的映像、音響ケーブル、リング状の貴金属指輪および各種医療用装身具として活用可能であって、産業的見地から優れる技術である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施例によって形成させた銅単結晶の写真を示す図である。
【図2】本発明の実施例によって形成させた線材の写真を示す図であるである。
【図3】本発明の実施例に係る円板状の単結晶欠片および金型を示す図である
【図4】本発明の実施例に係る単結晶をリング状に加工する工程を示す図である。
【図5】銅単結晶ワイヤと多結晶銅ワイヤとのXRD結果を示す図である。
【図6】銅単結晶ワイヤと多結晶銅ワイヤとのGDS結果を示す図である。
【図7】銅単結晶ワイヤ(b)と多結晶銅ワイヤ(a)との表面イメージ写真を示す図である。
【図8】銅単結晶ワイヤと多結晶銅ワイヤとの比抵抗結果を示す図である。
【図9】銅単結晶ワイヤの外部に絶縁性皮を被覆して製造した音響ケーブルを示す図である。
【図10】単結晶ケーブルと多結晶ケーブルの振動数の変化によるインピーダンスの比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金、銅、銀、アルミニウム、ニッケルよりなる群から選択された少なくとも1種の金属を成長坩堝に収容させる段階と、
成長坩堝に収容された金属を加熱して溶融させる段階と、
金属結晶をシードとして用いてチョコラルスキまたはブリッジマン方法によって単結晶を成長させる段階と、
育成された単結晶を放電加工によって切断する段階と、
切断された前記単結晶を線材に形成させる段階とを含んでなることを特徴とする、単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項2】
前記成長坩堝は、黒鉛坩堝、窒化ホウ素(BN)坩堝、アルミナ坩堝および石英坩堝よりなる群から選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項3】
前記成長坩堝に収容された金属の加熱は、RF誘導コイルまたは炭素ヒータを用いて行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項4】
前記切断段階では、単結晶が円板状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項5】
前記切断段階の後、前記切断された単結晶は、ワイヤカット放電加工、またはパターン付き金型を用いたプレス加工によって線材に加工されることを特徴とする、請求項4に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項6】
前記円板状に形成された単結晶は、金属単結晶基板または金属蒸着用ターゲットとして用いられることを特徴とする、請求項4に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項7】
前記プレス加工によって形成された線材は、リング状であることを特徴とする、請求項5に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項8】
前記切断段階では、単結晶が円筒状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項9】
前記切断段階で形成された前記円筒状の単結晶は、リング状に切断されることを特徴とする、請求項8に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項10】
前記切断段階の後、研磨工程またはウェットエッチング工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項11】
前記線材は、外表面に合成樹脂被覆が形成されることを特徴とする、請求項5に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項12】
前記合成樹脂被覆の外表面には、天然皮被覆がさらに形成されることを特徴とする、請求項11に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項13】
前記線材の両端部には、端子が形成されることを特徴とする、請求項11または12に記載の単結晶ワイヤ製造方法。
【請求項14】
金、銅、銀、アルミニウムおよびニッケルよりなる群から選択された少なくとも1種の金属を加熱、溶融させ、金属結晶をシードとして用いてチョコラルスキまたはブリッジマン方法によって単結晶を成長させ、成長した単結晶を切断することにより形成されることを特徴とする、単結晶ワイヤ。
【請求項15】
前記切断された単結晶は、リング状に形成されることを特徴とする、請求項14に記載の単結晶ワイヤ。
【請求項16】
前記切断された単結晶は、ワイヤ状に形成されて連結ケーブルとして用いられることを特徴とする、請求項14に記載の単結晶ワイヤ。
【請求項17】
前記ワイヤ状に形成された連結ケーブルは、外表面に合成樹脂被覆が形成されることを特徴とする、請求項16に記載の単結晶ワイヤ。
【請求項18】
前記合成樹脂被覆の外表面には、天然皮被覆がさらに形成されることを特徴とする、請求項17に記載の単結晶ワイヤ。
【請求項19】
前記連結ケーブルの両端部には、端子が形成されることを特徴とする、請求項17または18に記載の単結晶ワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−513332(P2008−513332A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532238(P2007−532238)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003050
【国際公開番号】WO2006/033534
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(507083515)プサン ナショナル ユニバーシティー インダストリー−ユニバーシティー コーオペレイション ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】