説明

印刷回路基板の表面処理方法及び印刷回路基板

【課題】本発明は、印刷回路基板の表面処理方法及びその方法により製造された表面処理層を含む印刷回路基板に関する。
【解決手段】本発明による印刷回路基板の表面処理方法は、印刷回路基板の表面をプラズマ処理する段階と、前記プラズマ処理された基板に有機半田付け性保存剤を処理する段階と、前記有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理する段階と、前記熱処理された基板に半田ペーストを印刷する段階と、前記半田ペーストが印刷された基板をリフローして、前記半田ペーストを固定する段階と、前記基板をデフラックス洗浄する段階と、を含むことを特徴とする。
本発明のように、有機半田付け性保存剤を処理した後、一定の条件で熱処理することにより、銅の酸化による変色問題を解決することができる。従って、従来の製品に比べ、多様なマルチ−リフロー仕様に対応することができる効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷回路基板の表面処理方法及びその方法により製造された表面処理層を含む印刷回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、印刷回路基板(PCB)の業界では、表面処理中の金メッキのための原材料価格の上昇により、無電解スズメッキ(Immersion Tin plating)/銀(Silver)及び有機半田付け性保存剤(Organic Solderability Preservative;OSP)が求められている。このうち、有機半田付け性保存剤工法は、単価の面だけでなく、管理の面でも長所が多いため、使用が増加している。
【0003】
図1は、従来の印刷回路基板の表面処理過程を示す模式図である。まず、プラズマ処理された基板に、有機半田付け性保存剤工法を利用して表面処理する。前記表面処理された基板に半田ペーストを印刷した後、リフロー(Reflow)硬化工程、及びデフラックス(Deflux)洗浄工程を行う。
【0004】
表面処理方法のうち、前記有機半田付け性保存剤工法は、上記のような長所にも関わらず、構成成分が有機物からなっているという特性のため、リフロー工程の後には熱的損傷が発生し、デフラックス洗浄工程の後には有機半田付け性保存剤の被膜が除去されるという問題がある。
【0005】
即ち、有機半田付け性保存剤で表面処理する工程を経てリフロー工程を行う途中に有機半田付け性保存剤の被膜の約70%が除去され、デフラックスの後には約90%以上が除去される。これにより、露出したCuが空気中の酸素と反応して、酸化銅であるCuO及びCuOが生成される。前記酸化銅のうちCuOの場合、銅パッドに露出して変色するという問題がある。
【0006】
具体的な例として、有機半田付け性保存剤の被膜が全て除去された純粋な銅(Bare Cu)は、酸素と結合及び酸化されて不完全燃焼され、黄赤色を呈する茶色のCuO(図2参照)を形成する。この際の反応式は4Cu+O→2CuOであり、表面SEM写真は図3に示されたとおりである。
【0007】
また、純粋な銅は、酸素と結合及び酸化されて完全燃焼されることができ、この際、赤黒い色を呈するCuO(図4参照)を形成する。この際の反応式は2Cu+O→2CuOであり、その表面SEM写真は図5に示されたとおりである。
【0008】
このうち、前記CuOは実質的に変色不良の問題を引き起こさないが、図4に示すように、前記CuOには激しい変色が発生し、それが不良につながる。
従って、印刷回路基板の表面処理中に発生する、銅の酸化により形成されたCuOによる変色の問題を解決するための方法が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004−0041241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、印刷回路基板の表面処理中に、銅の酸化によって発生する変色の問題を解決することができる印刷回路基板の表面処理方法を提供することをその目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記方法により製造され、銅の変色がない表面処理層を有する印刷回路基板を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題を解決するための一実施形態による印刷回路基板の表面処理方法は、印刷回路基板の表面をプラズマ処理する段階と、前記プラズマ処理された基板に有機半田付け性保存剤を処理する段階と、前記有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理する段階と、前記熱処理された基板に半田ペーストを印刷する段階と、前記半田ペーストが印刷された基板をリフローする段階と、前記基板をデフラックス洗浄する段階と、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記熱処理は、昇温段階−維持段階−下温段階の3段階からなることが好ましい。
【0014】
前記熱処理において、前記昇温段階は常温から180℃まで行い、前記維持段階は100から180℃の温度で行い、前記下温段階は180℃から常温まで行うことが好ましい。
【0015】
前記熱処理時、前記昇温段階は1〜60分、前記維持段階は10〜120分、前記下温段階は10〜120分間行われることが好ましい。
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、前記熱処理段階の前に、CuOコーティングを形成する段階をさらに含むことができる。
【0017】
前記CuOコーティングは、0.01〜1μmの厚さに形成されることが好ましい。
【0018】
また、本発明の他の課題を解決するために、表面処理層を含む印刷回路基板において、前記表面処理層は、有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理したものであることを特徴とする。
【0019】
また、前記印刷回路基板は、変色が発生しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のように、有機半田付け性保存剤を処理した後、一定の条件で熱処理することにより、銅の酸化による変色問題を解決することができる。従って、従来の製品に比べ、多様なマルチ−リフロー(Multi−Reflow)仕様に対応することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の印刷回路基板の表面処理過程を示す模式図である。
【図2】従来の有機半田付け性保存剤で表面処理した後、銅がCuOに変化された形態を示す図面である。
【図3】図2の表面SEM写真である。
【図4】従来の有機半田付け性保存剤で表面処理した後、銅がCuOに変化された形態を示す図面である。
【図5】図4の表面SEM写真である。
【図6】本発明による印刷回路基板の表面処理過程を示す模式図である。
【図7】比較例1による方法により製造された印刷回路基板の表面処理層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】実施例1による方法により製造された印刷回路基板の表面処理層の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0023】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられ、本発明を限定しようとするものではない。本明細書に用いられたように、単数型は文脈上異なる場合を明白に指摘するものでない限り、複数型を含むことができる。また、本明細書で用いられる「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」は言及された形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせが存在することを特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、段階、動作、部材、要素、及び/またはこれらの組み合わせの存在または付加を排除するものではない。
【0024】
本発明は、銅の変色を防止することができる印刷回路基板の表面処理方法及び前記方法により製造された表面処理層を含む印刷回路基板に関するものである。
【0025】
本発明による印刷回路基板の表面処理方法は、図6に示す一連の過程により行われることができる。
【0026】
まず、基板の表面をプラズマ処理する段階が行われる。半田レジストを除き露出される銅の表面に粗さを形成するために、基板をプラズマ処理する。前記プラズマ処理により、有機半田付け性保存剤を処理するための銅パッドが容易に準備されることができる。プラズマ処理の条件は、通常の印刷回路基板の製造において用いられる程度であればよく、特にその条件が限定されるものではない。
【0027】
次の段階は、前記プラズマ処理された基板に有機半田付け性保存剤を処理する段階である。前記有機半田付け性保存剤の具体的な物質は特に限定されず、通常の印刷回路基板の表面処理に用いられるものであればよい。
【0028】
本発明は、前記有機半田付け性保存剤を処理した後に熱処理段階を行うことを特徴とする。前記熱処理は、昇温段階−維持段階−下温段階の3段階からなることが好ましい。
【0029】
熱処理の具体的な過程は、常温から180℃まで昇温させる段階と、100から180℃の温度で維持させる段階と、180℃から常温まで下温させる段階と、からなることが好ましい。
【0030】
前記昇温段階は常温から180℃まで1〜60分間昇温させることが好ましく、維持段階は約100から180℃の温度で10〜120分間維持させることが好ましい。また、下温段階は約180℃から常温まで10〜120分間下温させることが好ましい。前記条件の3段階の熱処理を行うことにより、表面の変色を誘発する因子を抑制することができる。
【0031】
また、本発明は、前記熱処理段階の前に、CuOコーティングを形成する段階をさらに含むことができる。これは、デフラックスの後、純粋な銅の表面が酸化されてCuOに変化されないように、CuOが形成される前にCuOをCuの表面にコーティングすることにより、変色を予防するためである。CuOが一定にコーティングされた表面は、CuOと反応しにくいため、変色を予防することができる。前記CuOコーティングは、0.01〜1μmの厚さに形成することが、変色予防の面で好ましい。
【0032】
次に、半田ペースト(Solder Paste)を印刷する段階が行われる。前記半田ペーストは、半田ペースト組成物を印刷してもよく、ドットされたフラックス上に半田ボールをピックアップ手段を利用して搭載してもよい。
【0033】
次の工程として、前記半田ペーストを融着及び固定させるためのリフロー工程が行われる。前記リフロー工程は、高温の輻射熱または熱風を加えることによりなされることができるが、その条件が特に限定されるものではない。
【0034】
この際、前記フラックスの一部は揮発されずに半田ボールの全体表面を包む形態に付けられる。従って、前記半田ボールの表面を包んでいるフラックスを除去するためのデフラックス工程が必要である。前記デフラックス工程は、基板がデフラックス装備を通過する時、蒸溜水を半田ボール側に噴射することにより、半田ボールの表面に付いたフラックスを除去することによりなされる。
【0035】
また、本発明は、表面処理層を含む印刷回路基板において、有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理した表面処理層を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明による印刷回路基板は、銅の変色を予め防止し、銅の酸化による変色が発生しない特徴を有する。従って、従来の製品に比べ、多様なマルチ−リフロー(Multi−Reflow)仕様に対応することができる効果を有する。
【0037】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されて解釈されてはならない。また、以下の実施例では、特定化合物を利用して例示しているが、これらの均等物を用いる場合においても、同等類似の程度の効果を奏することができるということは、当業者において自明である。
【0038】
実施例
図6に示す工程を利用して印刷回路基板を製造した。
【0039】
まず、半田レジスト(SR)を除き露出されるCuの表面に粗さを形成するために、基板をプラズマ処理した。前記プラズマ処理された基板の表面に有機半田付け性保存剤の被膜(0.3μm)を塗布した後、ボックスオーブン(Box Oven)を利用して、昇温(常温〜150℃、10分)段階、維持(150℃、30分)段階、下温(150℃〜常温、30分)段階を経ることにより熱処理した。
【0040】
次に、パッケージング(Packaging)のためのバンピング(Bumping)工程により半田ペーストの印刷(Solder Paste Print)段階を行い、添付された半田ボール(Solder Ball)をリフロー工程によって固定した。また、半田ボールの表面に残存するフラックス(flux)成分を除去するために、デフラックス洗浄段階を行うことにより、表面処理層を有する印刷回路基板を製造した。
【0041】
比較例
熱処理段階を行わず、図1の過程により印刷回路基板を表面処理して製造した。
【0042】
実験例:不良率及び表面変色の有無を確認
前記実施例と比較例により製造された印刷回路基板において、不良率と銅表面の変色の有無を走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して確認し、下記表1、図7、図8にその結果を示した。
【0043】
【表1】

【0044】
前記表1の結果のように、本発明の方法により、有機半田付け性保存剤を処理した後、熱処理過程を経た実施例による印刷回路基板の表面処理層は、銅パッドの変色が顕著に減少されたことを確認することができる。これは、図7の結果からも確認することができるように、銅表面層の変色が殆ど発生せず、銅と同一の色を示すことが観察された。
【0045】
しかし、従来方法により製造された比較例の印刷回路基板の表面処理層は、銅の変色による不良率が高いだけでなく、図8の結果からも確認することができるように、銅が酸化されて激しい変色が発生したことが分かる。
【0046】
この結果から、有機半田付け性保存剤を処理した後に熱処理過程を経ることにより、銅の酸化による変色の問題を解決することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷回路基板の表面をプラズマ処理する段階と、
前記プラズマ処理された基板に有機半田付け性保存剤を処理する段階と、
前記有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理する段階と、
前記熱処理された基板に半田ペーストを印刷する段階と、
前記半田ペーストが印刷された基板をリフローして、前記半田ペーストを固定する段階と、
前記基板をデフラックス洗浄する段階と、
を含む印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項2】
前記熱処理は、昇温段階−維持段階−下温段階の3段階からなる請求項1に記載の印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項3】
前記熱処理は、
前記昇温段階は常温から180℃まで遂行し、
前記維持段階は100から180℃の温度で遂行し、
前記下温段階は180℃から常温まで遂行してなる請求項2に記載の印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項4】
前記熱処理時、
前記昇温段階は1〜60分、前記維持段階は10〜120分、前記下温段階は10〜120分間遂行する請求項3に記載の印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項5】
前記熱処理段階の前に、CuOコーティングを形成する段階をさらに含む請求項1に記載の印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項6】
前記CuOコーティングは、0.01〜1μmの厚さに形成される請求項5に記載の印刷回路基板の表面処理方法。
【請求項7】
表面処理層を含む印刷回路基板において、前記表面処理層は、有機半田付け性保存剤が処理された基板を熱処理したものである印刷回路基板。
【請求項8】
前記印刷回路基板は、変色が発生しないものである請求項7に記載の印刷回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−30760(P2013−30760A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137547(P2012−137547)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】