説明

印刷方法および印刷装置

【課題】可撓性被印刷基材、とりわけ生産効率に優れる長尺状の可撓性被印刷基材に、再現性も優れた高精細パターンを印刷する方法及び印刷装置の提供する。
【解決手段】インキ液膜30の形成工程が、可動ステージ40上に固定した剥離用基板上へ、インキを塗布、予備乾燥して、インキ液膜30を形成するインキ液膜の形成工程であること、画像パターン転写工程が、フィーダーより可撓性被印刷基材5を送り出し、送り出された可撓性被印刷基材5を走行させつつ、バックロール26で押圧して前記画像パターン31に接触させて前記可撓性被印刷基材5上に画像パターン31を転写する工程とすることにより、インキ液膜30のインキ濡れ性および転写性の向上が可能となり、高精細パターンが印刷できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、特に生産効率のよい長尺状のプラスチックフィルム等の可撓性基材上へ高精細パターンを形成する印刷方法および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、省エネルギー、省スペース、可搬性などの点から据え置き型、壁掛け型、携帯型の様々な用途の画像表示装置として利用されている。
特に携帯型においては、携帯時に落下させても破損しないような耐衝撃性や、軽量化、薄
型化などの点からプラスチック化への要求がある。
また、壁掛け型においても円柱状の柱へのディスプレイの設置という点から可撓性のディスプレイへの要求がある。
【0003】
しかしながら、従来のフラットパネルディスプレイは、何れもガラス基板上に製造された物であり、プラスチック基板上に製造することは難しかった。
その理由は、従来のフラットパネルディスプレイの部材の作製には高温での加熱工程とフォトリソ工程が含まれているためである。
例えば、液晶ディスプレイ用のカラーフィルタの製造にあたっては、感光性樹脂のパターニングにあたって、現像、洗浄、ベーキングなどの工程があり、プラスチック基板の熱による損傷や伸縮が生じてしまう。
また、ディスプレイの駆動電極である薄膜トランジスタの製造工程では、シリコン半導体や、絶縁膜の形成には300℃以上の高温工程を含み、プラスチック基板の耐熱性を上回っていた。
また、フォトリソ工程は、製膜、露光、現像、剥離を材料毎に行うので、製造設備も大掛かりとなり、製造のコストが高い。
【0004】
以上のことから、プラスチック上で精密なパターニングが可能な印刷方法が求められていた。
【0005】
印刷法の一つとして、インクジェット法が検討されている。
インクジェット法は、所定の部分にのみ所定の材料をパターニングできることから材料の利用効率が高く、版も使用しないことから、もっとも簡便なパターニング方法として期待されている。
しかしながら、現状のインクジェットのインク液滴の直径は数十μm程度であり、また着
弾精度も数μm程度ある。
インクジェット法を用いて精密なパターニングをするためには、あらかじめ基板上にフォトリソ工程により隔壁を形成しなければならず、カラーフィルタのブラックマトリクスや印刷方式の薄膜トランジスタ配線などの10μm程度のパターンを形成する方法としては、採用することができない。
【0006】
インクジェット法以外の方法としては、スクリーン印刷法が挙げられる。
スクリーン印刷法は、電子部品における配線や抵抗体、誘電体の印刷などで実用化されている。
しかしながら、孔版印刷であることからインキはペースト状の高粘度のものに限られ、また、スクリーンメッシュの精細度から数十μm程度の厚膜の印刷法としては採用できても、やはり10μm前後のパターンを形成する方法としては、採用できない。
【0007】
インクジェット法およびスクリーン印刷法以外の方法として、反転印刷法が試みられている。
【0008】
反転印刷法は、シリンダに巻き付けたブランケット上にインキを塗工、予備乾燥してインキ液膜を形成し、その後、非画像部パターンが形成された凸版をインキ液膜に押圧することによりブランケット上に画像パターンを形成し、最後に、ブランケット上の画像パターンを被印刷基材上に転写して、被印刷基材上に画像パターンを形成する印刷法である。(特許文献1参照)
【0009】
反転印刷法は、インキ膜厚を調整することが容易である。
また、インキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成することから、被印刷基材へのインキ転写性が良好である。
また、薄膜での微細パターン形成が可能である。
【0010】
【特許文献1】特開2001−56405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、反転印刷は、シリコーンゴムまたはシリコーン樹脂からなるブランケット上でインキの予備乾燥を行う時に、ブランケット表面のインキ濡れ性や転写性が不安定になるという問題点を有していた。
【0012】
本発明の課題は、プラスチックフィルムの如く可撓性基材、特に生産効率に優れる長尺状の可撓性基材に高精細パターンを形成する印刷方法および印刷装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、インキ剥離性のガラス基板上へインキ液膜を形成するインキ液膜の形成工程、
該インキ液膜に、回転可能な円筒状の版胴に装着された樹脂製凸版の凸部を接触することにより、前記インキ液膜の非画像パターンを前記樹脂製凸版の凸部に転移して、前記インキ剥離性のガラス基板上に画像パターンを形成する画像パターン形成工程、
前記画像パターンを可撓性被印刷基材に接触することにより、可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する画像パターン転写工程を有する印刷方法であって、
前記インキ液膜の形成工程が、可動ステージ上に固定したインキ剥離性のガラス基板上へ、インキを塗布、予備乾燥して、インキ液膜を形成するインキ液膜の形成工程であること、
前記画像パターン転写工程が、フィーダーより可撓性被印刷基材を送り出し、送り出された可撓性被印刷基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記画像パターンに接触させることにより前記可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する工程であることを特徴とする印刷方法である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記インキ剥離性のガラス基板の表面に、シリコーン樹脂層を積層することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記インキ剥離性のガラス基板に、シランカップリング剤を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の少なくとも一つを化学結合することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記可撓性被印刷基材の印刷面にインキ受理層を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の印刷方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記画像パターン形成工程後に前記樹脂製凸版の凸部に残った非画像パターンをクリーンアップし、再度、前記樹脂製凸版を用いる印刷方法であって、フィーダーより粘着性基材を送り出し、送り出された粘着性基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記非画像パターンに接触して前記粘着性基材上に非画像パターンを転写することにより前記樹脂製凸版の凸部から非画像パターンをクリーンアップすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の印刷方法である。
【0018】
請求項6に記載の発明は、インキ剥離性のガラス基板にインキ液膜を形成する手段と、前記インキを予備乾燥しインキ液膜を形成する手段と、前記インキ液膜から非画像パターンを除去して画像パターンを形成するための樹脂製凸版と、該樹脂製凸版を固定するための樹脂製凸版固定用ロールと、可撓性被印刷基材と、可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段と、前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段とを有する印刷装置であって、
インキ剥離性のガラス基板にインキ液膜を形成する手段が、可動ステージと、該可動ステージに固定可能なインキ剥離性のガラス基板と、該インキ剥離性のガラス基板にインキを塗工するための塗工用ダイを有し、
可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段が、前記可撓性被印刷基材を画像パターンに押圧するためのバックロールと、前記可撓性被印刷基材のフィーダーおよび前記画像パターンが形成された可撓性被印刷基材のホルダーを有し、
前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段が、粘着性基材と、該粘着性基材を前記非画像パターンに押圧するためのクリーンアップ用ロールと、前記粘着性基材のフィーダーおよび前記非画像パターンが付着した粘着性基材のホルダーを有することを特徴とする印刷装置である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明は、インキ剥離性のガラス基板上へインキ剥離層を形成するインキ液膜の形成工程、
該インキ液膜に、回転可能な円筒状の版胴に装着された非画像部パターンとなる樹脂製凸版の凸部を接触することにより、前記インキ液膜の非画像部パターンを前記樹脂製凸版の凸部に転移して、ガラス基板上に画像パターンを形成する画像パターン形成工程、
前記画像パターンを可撓性被印刷基材に接触することにより、可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する画像パターン転写工程を有する印刷方法であって、
前記インキ液膜の形成工程が、可動ステージ上に固定した剥離用基板上へ、インキを塗布、予備乾燥して、インキ液膜を形成するインキ液膜の形成工程であること、
前記画像パターン転写工程が、フィーダーより可撓性被印刷基材を送り出し、送り出された可撓性被印刷基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記反転画像パターンに接触させて前記可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する工程とすることにより、インキ液膜のインキ濡れ性および転写性の向上が可能となる。
また、プラスチックフィルムなどの可撓性被印刷基材、とりわけ長尺状のプラスチックフィルムへ高精細パターンが印刷できる。
【0020】
請求項2の発明は、前記インキ剥離性のガラス基板表面に、シリコーン樹脂を積層することにより、インキ剥離性のガラス基板表面のインキ液膜の濡れ性を悪くして、インキ剥離性のガラス基板から樹脂製凸版へのインキ液膜の転移性を上げ、高精細パターンを印刷できる。
【0021】
請求項3の発明は、前記インキ剥離性のガラス基板に、シランカップリング剤を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の少なくとも一つを化学結合することにより、ガラス基板のインキ液膜の濡れ性を悪くして、ガラス基板から樹脂製凸版へのインキ液膜の転移性を上げ、高精細パターンを印刷できる。
【0022】
請求項4の発明は、前記可撓性被印刷基材の印刷面にインキ密着層を設けることにより、樹脂製凸版から可撓性被印刷基材へのインキ液膜の転移性が良くなり、高精細パターンを印刷できる。
【0023】
請求項5の発明は、前記反転画像パターン形成工程後に前記樹脂製凸版の凸部に残った非画像部パターンをクリーンアップし、再度、前記樹脂製凸版を用いる反転印刷方法であって、フィーダーより粘着性基材を送り出し、送り出された粘着性基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記非画像パターンに接触して前記粘着性基材上に非画像パターンを転写して前記樹脂製凸版の凸部から非画像部パターンをクリーンアップすることにより、
連続して印刷する際に、新しいインキ液膜のみ(前回の印刷で残った古いインキ液膜が無い状態で)ガラス板上に形成することが可能となり、印刷再現性を向上できる。
【0024】
請求項6の発明は、剥離用基板にインキ液膜を形成する手段と、前記インキを予備乾燥しインキ液膜を形成する手段と、前記インキ液膜から非画像パターンを除去して画像パターンを形成するための樹脂製凸版と、該樹脂製凸版を固定するための樹脂製凸版固定用ロールと、可撓性被印刷基材と、可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段と、前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段とを有する印刷装置であって、
剥離用基板にインキ液膜を形成する手段を、可動ステージと、該可動ステージに固定可能なインキ剥離性のガラス基板と、該インキ剥離性のガラス基板にインキを塗工するための塗工用ダイとし、
可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段を、前記可撓性被印刷基材を反転画像パターンに押圧するためのバックロールと、前記可撓性被印刷基材のフィーダーおよび前記画像パターンが形成された可撓性被印刷基材のホルダーとし、
前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段を、粘着性基材と、該粘着性基材を前記非画像パターンに押圧するためのクリーンアップ用ロールと、前記粘着性基材のフィーダーおよび前記非画像パターンが付着した粘着性基材のホルダーとすることにより、プラスチックフィルムなどの可撓性被印刷基材、とりわけ長尺状のプラスチックフィルムへ再現性に優れる高精細パターンが印刷できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の印刷方法の例を、図1を基に説明する。
【0026】
まず、ガラス基板1上にインキ剥離性表面2を形成する。(図1(a))
【0027】
ガラス基板は、清浄な面であれば一般に表面エネルギーが大きく、各種のインキが濡れ易いが、インキ離れが良くない。
そこで、印刷に用いるインキに応じてガラス基板上にインキ剥離性表面2を形成する。
【0028】
インキ剥離性表面2の材料としては、シリコーン樹脂を用いることができる。
シリコーン樹脂層の厚みは、500μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは10μm以下を用いることができる。
シリコーン樹脂層の厚さが500μmを超えると、基板となるガラスの平坦性が損なわれて印圧のムラが生じ易く、また、インキ成分の溶媒や樹脂分がシリコーン樹脂層に過度に浸透する。
シリコーン樹脂層に浸透したインキ成分の溶媒や樹脂分が、印刷条件を変化させる。
より安定な印刷を行うためには、シリコーン樹脂層に浸透したインキ成分の溶媒や樹脂分の影響を少なくする必要が有り、シリコーン樹脂層の厚さは500μm以下にすることが好適である。
【0029】
また、インキ剥離性表面2の材料としては、シランカップリング剤を用いることもできる。
シランカップリング剤の例としては、トリメトキシシラン類、トリエトキシシラン類などが挙げられる。
シランカップリング剤の一部位としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などの有機化合物との反応性基を選ぶことができる。
また、アルキル基や、その一部にフッ素原子が置換された基や、シロキサンが結合して、表面エネルギーの小さな表面を形成できる置換基を選ぶことができる。
反応性基を有するシランカップリング剤を用いる場合には、シランカップリング剤でガラス基板の表面を処理した後、所定の表面自由エネルギーになるように他のモノマー成分を塗工し結合させても良い。
反応性基を有するシランカップリング剤としては、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができ、モノマーとしては、スチレン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチルプロパントリグリシジルエーテル、ラウリルアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどを用いることができる。
また、反応性基を有さないシランカップリング剤としてはメチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシランなどを用いることができる。
但し、アルキル基に限定されるものではない。
これにより平面性を有し、分子レベルの膜厚でインキ成分の浸透が実質的に無いインキ剥離性表面2を形成することができ、安定した印刷を行うことができる。
【0030】
シランカップリング剤をガラス基板1に固定化する方法としては、シランカップリング剤を水、酢酸水、水−アルコール混合液、或いは、アルコール溶液に希釈させた溶液を、スピンコート法、ロールコート法、アプリケータ法などを用いてガラス表面に塗工、乾燥する方法を用いることができる。
【0031】
インキ剥離性表面2の濡れ性は、インキ剥離性表面2上へインキを滴下した際の接触角が、10°以上90°以下にするのが好ましく、より好ましくは20°以上70°以下である。
接触角が10°より小さいと、インキ剥離性表面2からのインキ液膜3の剥離性が低下してパターンの欠陥(再現性不良など)が発生し易くなり、接触角が90°より大きいとインキ液膜を形成する際にハジキが生じて、均一なインキ液膜30を形成することが困難になる。
【0032】
次に、インキ剥離性表面2上にインキ液膜30を形成する。(図1(b))
【0033】
インク液膜30の材料としては、一般に有機系等のインキ材料は勿論、その他に金、銀、銅、ニッケル、白金、パラジウム、ロジウムなどの金属微粒子分散液に、必要に応じ各種添加物を加えたものを用いることができる。
分散媒としては、水またはアルコールを用いることができる。
【0034】
インキ剥離性表面2上へインキ液膜30を形成する方法としては、スピンコート法、ダイコート法、キャップコート法、ロールコート法、アプリケータ法、スプレーコート法、ディスペンサ法などを用いた後、予備乾燥する方法を用いることができる。
中でもスピンコート法、ダイコート法、キャップコート法、ロールコート法、アプリケータ法は、広い範囲の粘度のインキについて均一なインキ液膜を形成することができ、さらにその中でも可動するインキ剥離性表面2上へ連続的に形成する場合は、ダイコート法が最も効率的で好適な方法である。
【0035】
予備乾燥する方法としては、自然乾燥法、冷風乾燥法・温風乾燥法、マイクロ波乾燥法、減圧乾燥法、および、紫外線や電子線などの放射線乾燥法などを用いることができる。
【0036】
予備乾燥の目的はインキ液膜30の粘度、チキソトロピー性、脆性を上げることである。
予備乾燥が不十分な場合は、インキ液膜30に樹脂製凸版23を接触させた後剥離する際に、インキ液膜30が断裂してしまい、また、乾燥し過ぎる場合は、樹脂製凸版23上にインキ液膜30を転写することができない。
【0037】
次に、樹脂製凸版23をインキ液膜30に接触させて、非画像部パターン39を樹脂製凸版23上に転写することにより、画像部パターン31をインキ剥離性表面2上へ形成する。(図1(d))
【0038】
樹脂製凸版23の材料としては、ナイロン、アクリル、シリコーン樹脂、スチレン−ジエ
ン共重合体、および、エチレンプロピレン系、ブチル系、ウレタン系のゴム等を用いることができる。
【0039】
樹脂製凸版23の製造方法としては、型に樹脂を流し込む方法、彫刻する方法などを用いることができる。
【0040】
次に、可撓性被印刷基材5上にインキ受理層6を形成する。
【0041】
可撓性被印刷基材5の材料としては、ガラスのように可撓性を有さないもの以外であって、インキの乾燥温度に合わせて選定すればよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ナイロン、アラミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロース等のフィルムやシートを用いることができき、中でも、耐熱性のポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドなどが好適である。
また、無機フィラーを上記樹脂に添加して耐熱性を向上させたものでも良い。
フィルムおよびシートは、延伸でも未延伸でも良い。
また、可撓性被印刷基材5には必要に応じてガスバリア層、平滑化層、すべり層が積層されていても良い。
【0042】
インキ受理層6の材料としては、ポリビニルアルコール、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、アセタール系樹脂などの樹脂成分に、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、珪酸塩、珪酸カルシウム、ポリスチレンなどのフィラー成分を添加した材料、或いは、ウレタン系樹脂のエマルジョン、ゼラチン、硬膜剤などで構成される材料を用いることができる。
【0043】
可撓性被印刷基材5上へインキ受理層6を形成する方法としては、スピンコート法、ダイコート法、キャップコート法、ロールコート法、アプリケータ法、スプレーコート法、ディスペンサ法などを用いた後、乾燥する方法を用いることができる。
【0044】
最後に、インキ受理層6に画像部パターン31を、バックロール26で押圧することにより、インキ受理層6上に画像部パターン32を形成する。(図2(f))
【0045】
本発明の樹脂製凸版23から非画像部パターン39をクリーンアップする例を、図2を基に説明する。
【0046】
まず、樹脂製凸版23上の非画像部パターン39を粘着性基材25と接触させる。(図2(e))
【0047】
粘着性基材25の材料としては、アクリル系、オレフィン系、ポリウレタン系、シリコーン系、合成ゴムなどからなる粘着シートを用いることができる。
【0048】
非画像部パターン39を粘着性基材25と接触させる方法としては、粘着性基材25に非画像部パターン39をクリーンアップ用ロール24で押圧する方法を用いることができる。
【0049】
最後に、樹脂製凸版23から粘着性基材25を離すことにより、樹脂製凸版23をクリーンアップする。(図2(f))
【0050】
樹脂製凸版23から粘着性基材25を離す方法としては、クリーンアップ用ロール24を樹脂製凸版23から離す方法を用いることができる。
【0051】
次に、本発明の印刷装置の例を、図1を基に説明する。
【0052】
印刷装置には、可動ステージ40、塗工ダイ21、樹脂製凸版23、樹脂製凸版23を固定するための樹脂製凸版固定用ロール22、クリーンアップ用ロール24、バックロール26、インキ剥離性表面2を有するガラス基板1が配設される。
【0053】
可動ステージ40は、ボールネジやリニアモータなどで駆動するものを用いることができる。
また、可動ステージ40は、少なくとも水平方向に水平を保ったまま往復運動することができ、この可動ステージ40には、ガラス基板1を固定する。
【0054】
塗工ダイ21には、別に用意されたインキ供給用のポンプから所定のインキを供給することができる。
塗工ダイ21のダイヘッドとインキ剥離性表面2との距離は、印刷開始前に設定する。
前記可動ステージ40の搬送に合わせてダイヘッドを上下動させて、インキ剥離性表面2とダイヘッドの距離を調整する機構を設けてもよい。
【0055】
可動ステージ40の搬送により、インキ剥離性表面2が塗工ダイ21の下に達した時に塗工部ダイヘッドからインキの吐出を開始して、インキ剥離性表面2上にインキ液膜30を形成する。
【0056】
インキ剥離性表面2は、樹脂製凸版固定用ロール22の方向に搬送されるが、途中にオーブン、温風送風機、減圧乾燥機、紫外線照射機などの乾燥機を設けてもよい。
【0057】
樹脂製凸版固定用ロール22には樹脂製凸版23を固定する。
樹脂製凸版固定用ロール22には、可動ステージ40の搬送状態に合わせて、上下動させる機構を設けても良い。
【0058】
可動ステージ40の搬送に合わせて樹脂製凸版固定用ロール22を回転させ、樹脂製凸版固定用ロール22に固定された樹脂製凸版23と接したインキ液膜30の非画像部のパターン39が、樹脂製凸版23に転移する。
【0059】
インキ受理層6を有する可撓性被印刷基材5は、バックロール26によって、画像パターン31に接触することができる。
このバックロール26の回転により、インキ剥離性表面2上に形成されたインキ液膜30が、可撓性被印刷基材5上にあるインキ受理層6に転写され印刷パターンを得ることができる。
【0060】
次に、樹脂製凸版23に付着した非画像部パターン39をクリーンアップするする装置の一例を、図1を基に説明する。
【0061】
クリーンアップ用ロール24は、粘着性基材25を介して樹脂製凸版23と接しており、クリーンアップ用ロール24の回転により、樹脂製凸版23上の非画像部パターン39が粘着テープ等からなる粘着性基材25に転移して、樹脂製凸版23から非画像部パターン39をクリーンアップすることができる。
【実施例1】
【0062】
まず、下記の組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、サンドミルで5時間分散した後、5μmメッシュフィルタで濾過して赤色顔料の分散体を作製した。
C.I.Pigment Red 254 (チバ スペシャルティ ケミカルズ社製
イルガフォーレッド B−CFJ) 18重量部
C.I.Pigment Red 177 (チバ スペシャルティ ケミカルズ社製 クロモフタールレッド A2BJ) 2重量部
・アクリルワニス(固形分20%) 108重量部
【0063】
次に、下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmメッシュフィルタで濾過してカラーフィルタ用赤色インキを得た。
・上記赤色顔料の分散体 100重量部
・メチル化メチロールメラミン:MW−30(三洋化成社製) 20重量部
・レベリング剤:メガファックF−483SF(大日本インキ化学工業社製) 1重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 85重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 45重量部
【0064】
インキ剥離性のガラス基板は次の要領で表面を処理した。
厚さ700μmのガラス基板上に、n−ヘキシルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールに溶解させた溶液を、スピンコート法を用いて塗布した後、120℃で乾燥し、インキ剥離性表面を形成した。
【0065】
次に、インキ剥離性のガラス基板上に、カラーフィルタ用赤色インキを塗布した後、60℃で予備乾燥してカラーフィルタ用赤色インキ液膜を形成した。
【0066】
次に、フレキソ版(東洋紡績社製)の凸部をインキ液膜に接触させた後に離すことにより、インキ剥離性のガラス基板上に画像パターンを形成した。
【0067】
最後に、画像パターンにPEN(ポリエチレンナフタレート)(帝人デュポン社製)
を接触させ、PEN基材上に画像パターンを形成した。
【実施例2】
【0068】
次に、厚さ700μmのガラス基板上に、ドデシルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールに溶解させた溶液を、スピンコート法を用いて塗布した後、120℃で乾燥し、インキ剥離性表面を形成した。
【0069】
次に、インキ剥離性のガラス基板上に、銀粒子水分散液(平均粒径20nm)(体積平均粒径(Dv))からなる導電性インキを塗布した後、60℃で予備乾燥してインキ液膜を形成した。
【0070】
次に、フレキソ版(東洋紡績社製)の凸部をインキ液膜に接触させた後に離すことにより、インキ剥離性のガラス基板上に画像パターンを形成した。
【0071】
次に、ポリエチレンテレフタレート(PET)上へアクリル系水系エマルジョン材料をバーコーターで塗布後、60℃で乾燥して形成しインキ受理層積層を形成した。
【0072】
最後に、画像パターンにポリエチレンテレフタレート(PET)(東レ社製)
を接触させ、PEN基材上に画像パターンを形成した。
【0073】
上記実施例1および実施例2では、優れた再現性を有する高精細パターンが安定して印刷できた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の印刷方法および印刷装置は、プラスチックフィルム等可撓性基材、とりわけ長尺状の可撓性基材へ高精細パターンの薄膜印刷を安定して行うことができるので、ブラックマトリクス、ホワイトマトリクス、カラーパターン、スペーサなどのカラーフィルタ部材、
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、ゲート絶縁膜、有機半導体材料などのトランジスタ部材、
発光層などの高分子型有機EL部材の作製に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の印刷方法および印刷装置の一例を説明するための断面図である。
【図2】本発明の印刷方法および印刷装置の一例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・・ガラス基板
2・・・・インキ剥離性表面
5・・・・可撓性被印刷基材
6・・・・インキ受理層
21・・・塗工用ダイ
22・・・樹脂製凸版固定用ロール
23・・・樹脂製凸版
24・・・クリーンアップ用ロール
25・・・粘着性基材
26・・・バックロール
30・・・インキ液膜
31・・・画像パターン
32・・・画像パターン
39・・・非画像部パターン
40・・・可動ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ剥離性のガラス基板上へインキ液膜を形成するインキ液膜の形成工程、
該インキ液膜に、回転可能な円筒状の版胴に装着された樹脂製凸版の凸部を接触することにより、前記インキ液膜の非画像パターンを前記樹脂製凸版の凸部に転移して、前記インキ剥離性のガラス基板上に画像パターンを形成する画像パターン形成工程、
前記画像パターンを可撓性被印刷基材に接触することにより、可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する画像パターン転写工程を有する印刷方法であって、
前記インキ液膜の形成工程が、可動ステージ上に固定したインキ剥離性のガラス基板上へ、インキを塗布、予備乾燥して、インキ液膜を形成するインキ液膜の形成工程であること、
前記画像パターン転写工程が、フィーダーより可撓性被印刷基材を送り出し、送り出された可撓性被印刷基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記画像パターンに接触させることにより前記可撓性被印刷基材上に画像パターンを転写する工程であることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記インキ剥離性のガラス基板の表面に、シリコーン樹脂層を積層することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インキ剥離性のガラス基板に、シランカップリング剤を介してアルキル基、シロキサン基、フッ素原子の少なくとも一つを化学結合することを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記可撓性被印刷基材の印刷面にインキ受理層を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記画像パターン形成工程後に前記樹脂製凸版の凸部に残った非画像パターンをクリーンアップし、再度、前記樹脂製凸版を用いる印刷方法であって、フィーダーより粘着性基材を送り出し、送り出された粘着性基材を走行させつつ、バックロールで押圧して前記非画像パターンに接触して前記粘着性基材上に非画像パターンを転写することにより前記樹脂製凸版の凸部から非画像パターンをクリーンアップすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項6】
インキ剥離性のガラス基板にインキ液膜を形成する手段と、前記インキを予備乾燥しインキ液膜を形成する手段と、前記インキ液膜から非画像パターンを除去して画像パターンを形成するための樹脂製凸版と、該樹脂製凸版を固定するための樹脂製凸版固定用ロールと、可撓性被印刷基材と、可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段と、前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段とを有する印刷装置であって、
インキ剥離性のガラス基板にインキ液膜を形成する手段が、可動ステージと、該可動ステージに固定可能なインキ剥離性のガラス基板と、該インキ剥離性のガラス基板にインキを塗工するための塗工用ダイを有し、
可撓性被印刷基材に画像パターンを転写する手段が、前記可撓性被印刷基材を画像パターンに押圧するためのバックロールと、前記可撓性被印刷基材のフィーダーおよび前記画像パターンが形成された可撓性被印刷基材のホルダーを有し、
前記非画像パターンを前記樹脂製凸版からクリーンアップする手段が、粘着性基材と、該粘着性基材を前記非画像パターンに押圧するためのクリーンアップ用ロールと、前記粘着性基材のフィーダーおよび前記非画像パターンが付着した粘着性基材のホルダーを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−185778(P2007−185778A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3342(P2006−3342)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】