説明

印刷用マスク及びこれを用いた基板への印刷方法

【課題】 低コストで印刷品質の向上を図ることができる印刷用マスクを提供する。
【解決手段】 枠体2と、枠体2に設けられた紗材4と、紗材4に接着された板状のマスク本体6とを備え、紗材4は、張力を作用させた状態で枠体2に固定され、マスク本体6のパターン孔が露出するように開口領域41が形成されている印刷用マスクであって、マスク本体6は、被印刷面と接する裏面側に、長尺状の補強部材62を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用マスク及びこれを用いた基板への印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンダや樹脂ペースト等の印刷材料を基板にスクリーン印刷するために、メタルマスク等の印刷用マスクが従来から使用されている。例えば、特許文献1には、支持用スクリーンメッシュと印刷用スクリーンメッシュとを組み合わせたコンビネーション張りスクリーン版からなる印刷用マスクが開示されている。支持用スクリーンメッシュは、張力を付与した状態で版枠に固定され、印刷用スクリーンメッシュは、この支持用スクリーンメッシュの中央に接着されており、ロール原反から切り出されて巻きぐせがついた印刷用スクリーンメッシュが、支持用スクリーンメッシュの張力により矯正されるように構成されている。
【特許文献1】特開2005−305979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した従来の印刷用マスクにおいては、支持用スクリーンメッシュに作用する張力が過大となった場合に、印刷用スクリーンメッシュが上に凸となるように湾曲することがあった。このため、被印刷物である基板上に印刷用マスクを配置すると、印刷用マスクの中央と基板との間に隙間が生じ、印刷用マスクを介して塗布した印刷材料がこの隙間に流れ込んで、印刷材料が滲むという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、低コストで印刷品質の向上を図ることができる印刷用マスクおよびこれを用いた基板への印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前記目的は、枠体と、前記枠体に設けられた紗材と、前記紗材に接着された板状のマスク本体とを備え、前記紗材は、張力を作用させた状態で前記枠体に固定され、前記マスク本体のパターン孔が露出するように開口領域が形成されている印刷用マスクであって、前記マスク本体は、被印刷面と接する裏面側に、長尺状の補強部材を備えることを特徴とする印刷用マスクにより達成される。
【0006】
この印刷用マスクにおいて、前記補強部材は、前記マスク本体の裏面に対して直交方向に延びるリブを備えることが好ましい。
【0007】
また、前記補強部材は、前記紗材に対する張力の作用方向と長手方向が略一致するように配置されていることが好ましい。
【0008】
また、本発明の前記目的は、上述した印刷用マスクを用いて基板に印刷する方法であって、溝部が形成されたテーブルの載置面に基板を載置するステップと、前記補強部材が前記溝部に収容されるように前記印刷用マスクを配置し、前記印刷用マスクの下面を前記基板に密着させるステップと、前記印刷用マスク上に印刷材料を供給し、前記パターン孔を介して前記基板に印刷材料を塗布するステップとを備える基板への印刷方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の印刷用マスクおよび基板への印刷方法によれば、低コストで印刷品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る印刷用マスクの表面図及び裏面図である。また、図3は、図1におけるA−A断面図である。図1から図3に示すように、印刷用マスク1は、額縁状に形成された金属材料などからなる高剛性の枠体2と、枠体2に紗張りして設けられた紗材4と、紗材4に接着されたマスク本体6とを備えている。
【0011】
紗材4は、ポリエステルなどの合成樹脂繊維糸やステンレスなどの金属線材などからなる伸縮可能なメッシュ状の部材であり、図3に矢示するように張力を作用させた状態で、縁部全体が接着や溶接などの手段で枠体2に固定されている。紗材4の中央には開口領域41が形成されている。
【0012】
マスク本体6は、ステンレスやセラミック等からなる薄板状あるいはメッシュ状の部材であり、外縁全体が紗材4に接着されて固定されている。マスク本体6の中央には、基板に対して所定のパターンで印刷するためのパターン孔61が形成されており、このパターン孔61は、紗材4の開口領域41を介して外部に露出するように配置されている。マスク本体6の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は0.2〜3.0mm程度であり、特に0.5〜1.5mm程度である。
【0013】
以上の構成は、従来の印刷用マスクと同様であるが、本実施形態の印刷用マスク1は、マスク本体6の裏面側に補強部材62を備えることを特徴とする。
【0014】
補強部材62は、ステンレスやアルミ等の金属材料のように高剛性の材料からなる長尺状の部材であり、互いに平行となるように複数配置されている。本実施形態においては、各補強部材62の長手方向が、紗材4に対する張力の作用方向と略一致しており、マスク本体6の裏面側に貼着された両面テープに補強部材62を重ね合わせた後、接着部分をエポキシ樹脂などのシール材で被覆することにより、洗浄用の溶剤による剥離を防止している。マスク本体6に対する補強部材62の固定は、接着以外に、連結具による取り付けや溶接など特に限定されるものではない。また、マスク本体6と各補強部材62とを一体成形することも可能である。
【0015】
補強部材62の長手方向に垂直な断面の形状は、図4に示すようにコ字状であり、マスク本体6の裏面に対して直交方向に延びる2つのリブ621,621を備えている。補強部材62の厚みtは、小さすぎると十分な補強効果が得にくい一方、大きすぎると、後述するテーブルの加工作業が煩雑になりやすいことから、0.3〜1.5mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。
【0016】
次に、図5に示す工程側面図を適宜参照しながら、上記の構成を備える印刷用マスク1を用いて基板に印刷する方法を説明する。
【0017】
まず、図5(a)に示すように、テーブル8の載置面8aに基板wを載置する。テーブル8の載置面8aには、補強部材62に対応して設けられた複数の溝部81が形成されており、各溝部81は、互いに平行となるように間隔をあけて配置されている。基板wは、真空吸引や磁力あるいは、吸着テープなどの手段により、載置面8aの所定位置に固定される。
【0018】
ついで、基板wの上方に印刷用マスク1をセットし、印刷用マスク1の各補強部材62がそれぞれテーブル8の各溝部81に収容されるように印刷用マスク1を下降させて、図5(b)に示すように、マスク本体6の裏面側を基板wの上面に密着させる。
【0019】
この後は常法に従い、マスク本体6の表面側に封止用樹脂などの印刷材料を供給し、スキージの作動により印刷材料をマスク本体6のパターン孔61に押し込むことで、基板wの所定位置に印刷材料を塗布することができる。
【0020】
本実施形態の印刷用マスク1によれば、紗材4に作用する過大な張力によってマスク本体6の中央部が凸状に隆起するおそれがある場合でも、マスク本体6の裏面側に設けた補強部材62によってこの隆起が抑制され、マスク本体6を平坦な状態に維持することができる。したがって、基板wの上面全体を印刷用マスク1の裏面側に密着させることができ、印刷の滲みを防止して印刷品質を高めることができる。
【0021】
また、印刷用マスク1に補強部材62を設けることで、基板wを載置するテーブル8の加工が必要になるが、この加工作業は、補強部材62を収容するのに十分な深さを有する溝部81を形成するだけでよく、上述した効果を低コストで得ることができる。すなわち、本発明は、印刷用マスク1を単に補強部材62で補強したものではなく、テーブル8に溝部81を形成するという新規な発想に基づいて、補強部材62をマスク本体6の裏面側に配置したことを特徴とするものであり、これによって、マスク本体6の補強効果をより高めて印刷品質の向上を図ったものである。
【0022】
補強部材62の配置は、マスク本体6の裏面側であれば特に限定されるものではない。例えば、マスク本体6の矩形状裏面の対角線や中心線に沿って、長尺状の補強部材62を交差するように配置してもよく、紗材4に対する張力の作用方向が多方向(例えば4方向)の場合には、特に効果的である。図6は、2つの補強部材62,62を十字状に配置した一例を示している。
【0023】
一方、紗材4に対する張力の作用方向が、本実施形態のように直線の2方向である場合や、多方向であっても各方向の張力に強弱を有する場合には、マスク本体6の変形が生じやすい張力の作用方向に長手方向が略一致するように補強部材62を配置することにより、紗材4の張力に起因するマスク本体6の隆起を確実に防止することができる。補強部材62の数も特に限定されないが、少なくとも1つはマスク本体6の裏面中心を通過するように配置することが好ましい。
【0024】
また、補強部材62がマスク本体6の裏面に対して直交方向に延びるリブ621を備えることにより、補強強度を高めることができる。このようなリブを有する補強部材62の断面形状としては、本実施形態のコ字状の他に、直方体状、ロ字状、E字状、L字状、T字状などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷用マスクの表面図である。
【図2】図1に示す印刷用マスクの裏面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1に示す印刷用マスクの要部正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板への印刷方法を説明するための工程側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る印刷用マスクの裏面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 印刷用マスク
2 枠体
4 紗材
41 開口領域
6 マスク本体
61 パターン孔
62 補強部材
621 リブ
8 テーブル
8a 載置面
81 溝部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、前記枠体に設けられた紗材と、前記紗材に接着された板状のマスク本体とを備え、前記紗材は、張力を作用させた状態で前記枠体に固定され、前記マスク本体のパターン孔が露出するように開口領域が形成されている印刷用マスクであって、
前記マスク本体は、被印刷面と接する裏面側に、長尺状の補強部材を備えることを特徴とする印刷用マスク。
【請求項2】
前記補強部材は、前記マスク本体の裏面に対して直交方向に延びるリブを備える請求項1に記載の印刷用マスク。
【請求項3】
前記補強部材は、前記紗材に対する張力の作用方向と長手方向が略一致するように配置されている請求項1または2に記載の印刷用マスク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の印刷用マスクを用いて基板に印刷する方法であって、
溝部が形成されたテーブルの載置面に基板を載置するステップと、
前記補強部材が前記溝部に収容されるように前記印刷用マスクを配置し、前記印刷用マスクの下面を前記基板に密着させるステップと、
前記印刷用マスク上に印刷材料を供給し、前記パターン孔を介して前記基板に印刷材料を塗布するステップとを備える基板への印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120286(P2010−120286A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296554(P2008−296554)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】