説明

印刷用メタルマスク

【課題】スクリーン印刷に用いられる印刷メタルマスクに於いて、マスクの開口部の形成方法や形成条件を変更せず、且つ、印刷転写性を維持したまま印刷耐久性を向上させた印刷用メタルマスクを提供する。
【解決手段】印刷用メタルマスク101の、印刷時に被印刷基板の端部が接触する部分で、スキージの移動方向と平行な部分に樹脂材料からなる突起107を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷等に用いられる印刷用メタルマスク及びそれを用いた印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を実装するために、導電性ペーストをスクリーン印刷して、バンプを形成する方法が広く実用に供されている。近年、電子部品の実装の高密度化が求められ、それに伴いスクリーン印刷に用いる印刷用メタルマスクの薄膜化が進んでいる。しかし印刷用メタルマスク(マスクと略記)の薄膜化に伴い、印刷時にマスクが損傷する不具合が発生しやすくなっている。
【0003】
以下、従来のマスクが損傷する不具合について図1を用いて説明する。
導電性ペーストをマスクを用いて印刷する際に、マスク(101)が被印刷基板(基板と略記)(104)の端部(106)に接触する部分にスキージにより局所的な力が加わる。この状態で繰り返し印刷を行うとマスクが損傷する。また、基板によっては図2に示したように端部(106)にバリが突出した形状になっているものもありマスクの損傷を加速させる。損傷が激しいとマスクは使用不能になり、マスクを交換しなければならず、多大な手間を必要とし、経済上も問題がある。
【0004】
特に、前記したように電子部品の高密度実装のためにマスクが薄膜化するにつれ、損傷によりマスクが使用不能になる頻度が増加し、マスクの耐久性を向上させることが強く望まれている。
【0005】
高密度実装用のマスクの作製方法としては、めっきによるアディティブ法やレーザで加工する方法が一般的であり、従来はマスクの材料強度を上げることにより耐久性を向上させていた。
例えば、アディティブ法に於いては、めっきする金属やめっき条件、レーザで加工する方法に於いては、使用する基板材料、等を変更することにより、耐久性を向上させていた。
【0006】
しかし作製条件を変更するだけでは十分な耐久性は得られず、更なる耐久性の向上が望まれている。又、作製条件を変更すると、導電性ペースト印刷用の開口部(以下開口部と略記)の状態が変わってしまい印刷転写性が低下するという問題も起こっている。
【0007】
さらに、マスク作製条件の検討や、マスク変更に伴う印刷条件の調整も必要となるため、多大な手間とコストがかかるという問題もある。
【0008】
マスクの耐久性を向上する方法として、金属枠にテトロンメッシュを貼り付けた版に金属メッシュを積層し、前記金属メッシュ部に金属めっきを行った後、エッチングで前記金属部に開口部形成を行うマスクの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−83067号公報
【0009】
しかし、前記した方法で作製したマスクは開口部内にメッシュが存在しているため、導電性ペーストの抜け性が悪く、高密度実装用の印刷には使用できない。さらに、2種類のメッシュを積層した構造となっているため、薄型化に対応することも困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、スクリーン印刷により導電性ペーストを印刷し、高密度実装のためのバンプを形成するために使用されるマスクにおいて、印刷転写性を維持したままマスクの耐久性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、印刷転写性を維持したまま耐久性を向上した高密度実装用に対応したマスクの検討を行い、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
スクリーン印刷等に用いられる印刷用メタルマスクにおいて、印刷時に被印刷基板の端部が接触する部分で、スキージの移動方向と平行な部分が突起している印刷用メタルマスクであって、前記突起部が樹脂材料からなることを特徴とする印刷用メタルマスク、及び
前記した印刷用メタルマスクを紗を介して枠に貼り付けた印刷用メタルマスク版、である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来のマスクの開口部の形成方法を変更せず、従って印刷転写性を損なうことなく、マスクの耐久性を向上させることができる。
【0013】
以下本発明のマスク、及びそれを用いた印刷用メタルマスク版(印刷版と略記)に関して具体的に説明する。
図3は本発明のマスクを紗を介して枠に貼り合わせた印刷版の1例を示す。又、図4は図3のb部の拡大図を表す。
本発明のマスク(101)は基板(104)と接触する部分に突起(107)を有し、紗(102)を介して枠(103)に貼り合わされている。
【0014】
この突起は印刷時に基板の端部が接触する箇所の一部又は全部に設けることができるが、印刷時にスキージのスムースな移動の妨げにならないように、図5に示したようにスキージの移動方向と平行に連続して設けることが望ましい。又、突起の角部は丸めるのが望ましい。突起の形状は特に限定はないが、高さが10〜100μm程度、幅は5〜40mm程度が好ましい。
【0015】
本発明のマスクの製造方法に関して説明する。先ず公知の方法、例えば、レーザ加工法、めっき法、エッチング加工等の方法で開口部を形成したマスクを作製する。次に突起を形成するが、突起の形成方法としては、突起部にポリイミド等の樹脂材料からなる突起部材を接着して形成する。また、突起を形成してから開口部をレーザ加工法やエッチング加工法で形成して本発明のマスクを作製することもできる。
【0016】
マスクの製造方法は特に限定しないが、印刷転写性が良好なめっきで作製することが望ましい。
【0017】
突起部材の樹脂材料は特に限定しないが、印刷時の耐久性を考慮するとポリイミドが望ましい。
【0018】
マスクに突起部材を接着する方法は特に限定しないが、板厚の均一性を確保するために、厚さの均一な接着シートで貼り付ける方法、もしくは突起部材に複数の貫通孔を設け、突起部材をマスク表面の貼り付け箇所に設置した後、突起部材の貫通孔に接着剤を注入して接着する方法が望ましい。
【0019】
マスクに突起部材を接着するための接着剤の種類は特に限定しないが、マスク使用時及び洗浄時に突起が剥がれないようにするため、耐薬品性及び接着強度の良好なエポキシ系、シアノアクリレート系、アクリル系、フェノール樹脂系等が挙げられる。
【0020】
マスクに突起部材を接着する際は、マスクとの接着力を向上させるため、マスク及び又は突起部材の接着面を物理研磨、化学研磨等により、十点平均の粗さ(Rzjis)を0.02〜20μm程度に粗面化することが望ましい。
【0021】
突起部材の接着は、マスクをめっき母材から引き剥がす前に行ってもよく、マスクを紗を介して枠に貼り付ける前に行ってもよく、貼り付けた後で行ってもよい。
【0022】
本発明のマスクは紗を介して枠に貼り付けて使用するのが望ましい。紗の種類は特に限定しないがポリエステルメッシュや金属メッシュが望ましい。
具体的な実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0023】
SUS304製のめっき母材にドライフィルムレジストをラミネートし、画像パターンが形成された露光用マスクを介して紫外線を照射し、現像することにより紫外線の照射されていない部分のレジストを除去し、ドライフィルムレジストで開口部に対応する像を形成した。この像が形成された前記めっき母材上に定法によりNiめっきを約30μm析出させ、残存するドライフィルムレジストを剥離した。
【0024】
前記したマスクに突起部材をエポキシ系の熱硬化型の接着シート(厚さ30μm、幅20mm)で貼り付けた。突起部材を接着した位置は図5に示したように、印刷時に基板の端部が接触する部分の中でスキージの移動方向と平行な部分とし、スキージの移動方向と直行する基板の端部を越え、マスクの端部近くまで、基板の端部が接着シートの幅の略中央に位置するように貼り付けた。このようにして突起を接着したマスクをめっき母材から引き剥がし、本発明のマスクを作製した。尚、突起部材は厚み20μmのポリイミドシートを、角を丸めた短冊状(幅20mm)に切断して作製した。
【0025】
次に、180メッシュのポリエステル紗を張力のかかった状態で金属枠に貼り付けたメッシュ・スクリーン版の中央部に前記マスクの外周部を接着し、接着部より内側のポリエステル紗を切除することにより印刷版を作製した。
【0026】
実施例1で作製した印刷版、及び比較例として、突起を設けないマスクを用いた印刷版の印刷耐久性と印刷転写性を評価した。結果は、印刷耐久性は実施例1のマスクは2000回以上の印刷が可能であったが、比較例のマスクは950回で損傷を発生し、使用不可能となった。尚、印刷転写性は両者とも良好であった。
【実施例2】
【0027】
実施例1と同じようにしてドライフィルムレジストで開口部に対応する像を形成した後、めっき母材上にNiめっきを厚み約30μm析出させ、残ったドライフィルムレジストを剥離した後、母材を引き剥がして開口部を有するマスクを作製した。次に、180メッシュのポリエステル紗を張力のかかった状態で金属枠に貼り付けたメッシュ・スクリーン版に前記マスクの外周部を接着し、接着部の内側のポリエステル紗を切除することにより印刷版を作製した。
【0028】
次に、前記印刷版に実施例1で用いたのと同じ突起部材を実施例1と同じ位置に液状の接着剤で貼り付けた。但し、突起部材にφ0.5mmの貫通孔を2mmピッチで形成し、該貫通孔からシアノアクリレート系接着剤を注入し貼り付けた。
【0029】
実施例2にて作製した印刷版の印刷耐久性を評価したところ、2000回以上の印刷が可能であった。

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のマスクは従来のマスクの作製方法を変更すること無く、また、印刷転写性を損なう事無くマスクの耐久性を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のマスクを用いた印刷用メタルマスク版
【図2】図1のa部の拡大図
【図3】本発明の印刷用メタルマスク版の断面図
【図4】図3のb部の拡大図
【図5】本発明の印刷用メタルマスク版を上から見た図
【符号の説明】
【0032】
101:印刷用メタルマスク
102:紗
103:枠
104:被印刷基板
105:スキージ
106:基板の端部
107:突起
108:開口部
109:印刷時の基板端部の位置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷等に用いられる印刷用メタルマスクにおいて、印刷時に被印刷基板の端部が接触する部分で、スキージの移動方向と平行な部分に樹脂材料からなる突起部を形成したことを特徴とする印刷用メタルマスク。
【請求項2】
請求項1の印刷用メタルマスクを紗を介して枠に貼り付けた印刷用メタルマスク版。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−290351(P2008−290351A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138461(P2007−138461)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(592173412)株式会社プロセス・ラボ・ミクロン (30)
【Fターム(参考)】