説明

印刷装置、印刷状態判定装置、および、印刷状態判定方法

【課題】本発明は、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることを目的とする。
【解決手段】印刷装置は、複数の印刷媒体に同一の画像を印刷する印刷部と、複数の印刷媒体に印刷された画像をそれぞれ読み取る読取部と、読取部により読み取られた画像をそれぞれ記憶する記憶部と、印刷部により画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、読取部により読み取られた画像と、予め設定されている比較画像とを比較して印刷媒体に印刷された画像の印刷状態を判定し、画像の印刷状態が悪いと判定すると、記憶部に記憶されている画像を用いて、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷部により印刷された画像について印刷状態の良否を判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷状態判定装置、および、印刷状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷物の良否を検査する印刷物検査装置において、印刷物を撮像して生成した画像と、基準となる良品の画像とを比較することにより、印刷物の印刷状態の良否を判定する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−64486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、印刷物を撮像して生成した画像と、基準となる画像とを比較するための処理負荷が大きいため、処理時間の増大に伴い印刷速度に制限が生じるなど、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性については改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされた発明であり、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するために本願発明は以下の態様を採る。
【0007】
第1の態様は、印刷装置を提供する。本発明の第1の態様に係る印刷装置は、複数の印刷媒体に同一の画像を印刷する印刷部と、前記複数の印刷媒体に印刷された前記画像をそれぞれ読み取る読取部と、前記読取部により読み取られた前記画像をそれぞれ記憶する記憶部と、前記印刷部により前記画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、前記読取部により読み取られた前記画像と、予め設定されている比較画像とを比較して前記印刷媒体に印刷された前記画像の印刷状態を判定し、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記記憶部に記憶されている前記画像を用いて、前記判定をおこなった画像より時間的に前に前記印刷部により印刷された前記画像について印刷状態の良否を判定する判定部と、を備える。
【0008】
第1の態様に係る印刷装置によれば、印刷媒体の所定の枚数ごとに、印刷された画像の印刷状態を判定し、印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された印刷媒体の画像について印刷状態の良否を判定するため、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることができる。
【0009】
第1の態様に係る印刷装置において、前記判定部は、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記判定をおこなった画像より時間的に前に前記印刷部により印刷された複数の前記画像について、前記印刷部により印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を判定してもよい。この場合、印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を順に判定することにより、印刷物の印刷状態の良否を効率よく判定することができる。
【0010】
第1の態様に係る印刷装置において、前記記憶部は、印刷状態の悪い前記画像が前記読取部により読み取られた後、前記判定部により印刷状態が悪いと判定されるまでに要した時間の間に、前記印刷部により他の印刷媒体に印刷される前記画像の数のN倍(Nは2以上の整数)の数の画像を記憶する記憶領域を備えていてもよい。この場合、判定部により印刷状態の良否を判定するための画像が記憶部に記憶されていない状態となる可能性を抑制することができる。
【0011】
第1の態様に係る印刷装置はさらに、前記判定部により、前記画像の印刷状態が悪いと判定されると、前記印刷を停止し、印刷状態を回復させるための処理をおこなった後、前記印刷を再開するように前記印刷部を制御する印刷制御部を備えていてもよい。この場合、印刷状態の悪い印刷媒体の数を抑制することができる。
【0012】
第2の態様は、印刷状態判定装置を提供する。本発明の第2の態様に係る印刷状態判定装置は、複数の印刷媒体に印刷された同一の画像をそれぞれ読み取る読取部と、前記読取部により読み取られた前記画像をそれぞれ記憶する記憶部と、前記画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、前記読取部により読み取られた前記画像と、予め設定されている比較画像とを比較して前記印刷媒体に印刷された前記画像の印刷状態を判定し、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記記憶部に記憶されている前記画像を用いて、前記判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された前記画像について印刷状態の良否を判定する判定部と、を備える。
【0013】
第2の態様に係る印刷状態判定装置によれば、印刷部を備えていなくても、印刷媒体の所定の枚数ごとに、印刷された画像の印刷状態を判定し、印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された印刷媒体の画像について印刷状態の良否を判定するため、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることができる。
【0014】
本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、プリンター、印刷状態判定装置、印刷物検査装置等で実現することができる。また、印刷状態判定方法、印刷物検査方法、および、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータープログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例における印刷装置の構成を概略的に示す説明図である。
【図2】インク吐出ノズルの配置構成を例示した説明図である。
【図3】第1実施例における印刷装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施例に係る印刷装置のスキャンレートと積分ドット数との関係を例示した説明図である。
【図5】読取画像を説明するための説明図である。
【図6】不良印刷画像を説明するための説明図である。
【図7】入力画像と正常印刷画像と不良印刷画像を例示した説明図である。
【図8】図7の正常印刷画像および不良印刷画像の同一部分をそれぞれ拡大した説明図である。
【図9】読取画像(正常時)と読取画像(不良発生時)と比較画像を例示した説明図である。
【図10】図9の取得画像(不良発生時)の一部を拡大した説明図である。
【図11】判定対象となる印刷媒体を説明するための説明図である。
【図12】印刷状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】不良箇所の集計方法を説明するための説明図である。
【図14】不良検出時において判定対象となる印刷媒体を説明するための説明図である。
【図15】不良印刷画像が印刷された印刷媒体Pの排出を説明するための説明図である。
【図16】リングバッファに記憶される取得画像データを説明するための説明図である。
【図17】リングバッファに記憶させる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様である印刷装置について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。
【0017】
A.第1実施例:
A1.印刷装置の構成:
図1は、第1実施例における印刷装置の構成を概略的に示す説明図である。本実施例の印刷装置10は、図示しないインターフェイスを介して接続されているコンピューター等から取得した画像データに基づき画像を印刷するインクジェット式カラープリンターである。印刷装置10は、ヘッドユニット200と、搬送部300と、読取部400と、制御回路500と、を備えている。印刷装置10は、搬送部300により搬送される紙などの印刷媒体Pに対し、ヘッドユニット200からインク滴を噴射して画像の印刷を行うとともに、印刷した画像を読取部400により読み取る。
【0018】
ヘッドユニット200は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色のインク毎のインク吐出ノズルを含む噴射ヘッドを備える。噴射ヘッドは、図示しないピエゾ素子の電圧調整によってインク吐出ノズルからインクを噴射する。本実施例では、印刷装置10は、4色のインクにより印刷をおこなうとしているが、使用する色の種類や色の数については上記と異なっていてもよい。
【0019】
図2は、インク吐出ノズルの配置構成を例示した説明図である。ヘッドユニット200は、印刷媒体Pと対向する面(下面)に複数のインク吐出ノズル210を備えている。インク吐出ノズル210は、搬送部300による原稿(印刷媒体P)の搬送方向(以後、単に「搬送方向」とも呼ぶ)に各色のインク吐出ノズル210が並んで配置されている。各色のインク吐出ノズル210は、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)ごとにそれぞれ千鳥状に配置されている。千鳥状に配置された各色の複数のインク吐出ノズル210は、搬送方向と直交する方向(以後、単に「原稿幅方向」とも呼ぶ)において、印刷媒体Pの原稿幅と幅が等しくなるように構成されている。すなわち、本実施例に係る印刷装置10は、いわゆるラインプリンターである。各色のインク吐出ノズル210は、原稿幅方向において、所定の解像度(例えば、720dpi)でインク滴を吐出できるように配置されている。
【0020】
読取部400は、ヘッドユニット200の搬送方向下流側に配置され、搬送部300により搬送される印刷媒体Pに印刷された画像の読み取りをおこなう。読取部400は、図示しない受光部と光源部とミラーとを含んでいる。受光部は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)などのイメージセンサーと、光をイメージセンサー上に集めるレンズにより構成されている。本実施例では、CCDに原稿を縮小投影する縮小光学系が構成されている。光源部は、例えば、基板上に複数の白色LEDが配置された構成を有する。
【0021】
読取部400は、光源部により印刷媒体Pに光を照射し、印刷媒体Pで反射した反射光ミラーを介して受光部により受光する。読取部400は、受光部により受光した光の強度に応じた大きさの電圧を出力する。読取部400から出力される電圧値(アナログ値)は、制御回路500によりデジタル値に変換される。なお、本実施例に係る読取部400は、CCDに原稿を縮小投影する縮小光学系のスキャナーとして説明するが、CIS(Contact Image Sensor)を用いたいわゆる密着型のスキャナーとしてもよい。また、受光部を構成するイメージセンサーは、CCDに限られず、例えば、CMOS撮像素子により構成されていてもよい。
【0022】
搬送部300は、2つの搬送ローラ310、320と、搬送ローラ310、320の間に架設された搬送ベルト330と備える。搬送部300は、図示しない駆動モーターにより搬送ベルト330を駆動させることにより、搬送ベルト上の印刷媒体Pを搬送方向に搬送する。
【0023】
制御回路500は、ROM、RAM、CPUからなる汎用コンピューター、および、AFE(Analog Front End)や画像処理チップなどの図示しない専用処理回路を備え、印刷装置10の全体の動作を制御する。図1に示すように制御回路500は、汎用コンピューターおよび専用処理回路により実現される機能ブロックとして、ヘッドユニット200を制御する印刷制御部510と、読取部400を制御する読取制御部520と、搬送部300を制御する搬送制御部530と、画像処理部540と、判定部550と、記憶部560と、を含んでいる。制御回路500は、他に、ユーザーからの操作を受け付ける入力部やディスプレイに文字や画像を表示させる表示制御部など各種機能を含んでいるが、これらについては省略する。
【0024】
印刷制御部510は、画像処理部540により生成される印刷データに基づいて、ヘッドユニット200を制御するための制御信号HPを出力する。読取制御部520は、センサ制御信号SCを出力してイメージセンサーを制御する。また、LED制御信号LCを出力して発光部のLEDを点灯制御する。搬送制御部530は、駆動信号DSを出力して駆動モーターを制御する。ここでは、搬送制御部530は、印刷媒体Pに印刷をおこなうために搬送ベルト330上の印刷媒体Pをヘッドユニット200の下方に移動させ、ヘッドユニット200による印刷後、印刷媒体Pに印刷された画像を読取部400に読み取らせるために印刷媒体Pを読取部400の下方に移動させる。
【0025】
画像処理部540は、読取制御部520を介して読取部400から出力される電気信号COを受け付ける。画像処理部540は、受け付けた電気信号COに対して、ノイズ除去、増幅、A/D変換、デジタル画像処理などを施して、デジタル画像データを生成する。画像処理部540は、生成したデジタル画像データを記憶部560に格納する。以後、画像処理部540により生成されたデジタル画像データを「読取画像データ」とも呼ぶ。
【0026】
また、画像処理部540は、インターフェイスを介してコンピューター等から取得した画像データ(以後、「入力画像データ」とも呼ぶ)について、色成分(RGB値)を印刷に応じた色成分(CMYK値)に補正する色変換処理、階調値をドットの記録密度で表現するためのハーフトーン処理、画像データをヘッドユニット200の走査(パス)毎に分割するパス分解処理、および、ヘッドユニット200に転送する順にデータを並び替えるデータ並び替え処理をおこない印刷データを生成する。
【0027】
判定部550は、印刷状態判定処理をおこなう。印刷状態判定処理とは、読取画像データと、後述する比較画像データとを比較して、印刷媒体Pに印刷された画像(以後、「印刷画像」とも呼ぶ)の印刷状態の良否を判定するための処理である。印刷状態判定処理の具体的な内容は後に詳述する。
【0028】
記憶部560は、読取画像データを複数格納するリングバッファ561と、比較画像データが格納されるイメージバッファ562とを含んでいる。リングバッファ561に格納可能な読取画像データの数については、任意に設定可能であるが、本実施例で採用した数およびその根拠については後述する。
【0029】
A2.印刷装置の動作:
図3は、第1実施例における印刷装置の動作の流れを示すフローチャートである。本実施例の印刷装置10は、複数の印刷媒体Pに対して同一の画像を順次印刷するとともに、印刷媒体Pに印刷された印刷画像を順次読み取り、読み取った画像から印刷状態の良否を判定する。
【0030】
印刷装置10は、ユーザーから印刷のための入力を受け付けることにより印刷媒体Pに対する画像の印刷を開始する。印刷装置10の制御回路500は、ユーザーからの入力を受け付けると、内部に備えるカウンタに、n=0を設定する(ステップS101)。カウンタは、印刷状態の判定をおこなう判定対象となる印刷媒体Pを決定する際に用いられる。印刷装置10は、後述するように印刷した印刷媒体Pから画像を読み取る都度カウンタをインクリメントし、カウンタが所定値となるときの印刷媒体Pに対してのみ印刷状態の良否を判定する。
【0031】
読取制御部520は、印刷媒体Pから画像を取得する(ステップS102)。具体的には、読取制御部520は、ヘッドユニット200を制御して印刷媒体Pに印刷されている印刷画像を読み取り、読取画像データを生成する。読取制御部520は、生成した読取画像データをリングバッファ561に格納する。印刷装置10は、この読取画像データにより表される読取画像の画素値を用いて印刷画像の印刷状態の良否を判定する。以下にヘッドユニット200により読み取られた読取画像の詳細について説明する。
【0032】
図4は、本実施例に係る印刷装置のスキャンレートと積分ドット数との関係を例示した説明図である。図5は、読取画像を説明するための説明図である。図4に示されているスキャンレートとは、読取部400により印刷画像の1ライン分を読み取るのに必要な時間をいう。搬送速度とは、読取部400による読み取りの際に搬送部300が印刷媒体Pを搬送する速度をいう。印刷解像度とは、印刷媒体Pに印刷された印刷画像の搬送方向の解像度(ドット数密度)をいう。積分ドット数とは、読取部400が読み取る印刷画像の1ラインに含まれるドット数をいう。このとき、本実施例に係る印刷装置10は、図4の太枠で示すように、スキャンレートが7ms/line、読み取り時の搬送速度が254mm/s、となるように設定されている。そのため、ライン幅は1.78mmとなり、印刷解像度が1440dpiとなるように設定されていることから、積分ドット数は100.8dotとなる。
【0033】
すなわち、印刷装置10は、印刷画像の搬送方向約100ドット分が1画素となるように印刷画像を読み取る。よって、図5(a)に示すように、読取画像Isは、印刷画像の原稿幅方向と対応する方向(以後「横方向」とも呼ぶ)の1ラインを構成する各画素の画素値は、それぞれ、印刷画像の搬送方向約100ドット分の平均値となっている。そのため、図5(b)に示すように、読取画像Isは、印刷媒体Pに印刷された印刷画像Imを搬送方向の解像度が1/100になるように圧縮した画像に相当する。以後、読取画像Isにおいて、印刷画像の搬送方向に対応する方向を「縦方向」とも呼ぶ。
【0034】
続いて、ヘッドユニット200により印刷された印刷画像のうち、印刷状態の悪い不良印刷画像の詳細について説明する。図6は、不良印刷画像を説明するための説明図である。図6では、不良印刷画像が印刷されている印刷媒体Pと、不良印刷画像を構成するインクのドット位置とインク吐出ノズル210の位置とを対応させたヘッドユニット200の一部が示されている。図6では、ヘッドユニット200に配置されている各色のインク吐出ノズル210のうち、1つの色のインク吐出ノズル210についてのみ示している。また、説明のため、インク吐出ノズル210の左側から順に♯1〜♯16の番号を付している。図6では、インク吐出ノズル♯5はインクが噴射できない状態の不良ノズルであり、インク吐出ノズル♯11は、他のインク吐出ノズルに比べてインクの吐出量が少ない状態の不良ノズルである。このとき、印刷媒体Pに印刷された印刷画像には、搬送方向に縦線が現れる。この縦線は、不良ノズルから必要な量のインクが噴射されなかったことによる色抜けにより生じる。
【0035】
色抜けについての具体例を示す。比較のため、入力画像データにより表される入力画像と、入力画像データに基づいて正常に印刷された正常印刷画像と、入力画像データに基づいて印刷された不良印刷画像をそれぞれ例示する。図7は、入力画像と正常印刷画像と不良印刷画像を例示した説明図である。図7(a)は、入力画像Imsを示している。図7(b)は、入力画像Imsを表す入力画像データに基づいて正常に印刷された正常印刷画像Imgを示している。図7(c)は、入力画像Imsを表す入力画像データに基づいて印刷された不良印刷画像Imnを示している。図8は、図7の正常印刷画像および不良印刷画像の同一部分をそれぞれ拡大した説明図である。
【0036】
図7に示すように、不良印刷画像Imnは、正常印刷画像Imgと比較すると、色抜けによる縦線が多い。一方、正常印刷画像Imgは、入力画像Imsとほぼ同様の画像を表している。色抜けによる縦線は、図8の矢印間に示すように、各色のインク吐出ノズル210のうち、少なくとも1以上のノズルが不良ノズルとなることにより搬送方向に形成される。縦線は、不良ノズルが発生した色によって異なる色となる。
【0037】
続いて、図7(b)で示した、正常印刷画像Imgを読取部400により読み取った読取画像(正常時)と、図7(c)で示した、不良印刷画像Imnを読取部400により読み取った読取画像(不良発生時)と、図7(a)で示した、入力画像Imsを読取画像と対応させるために変換した比較画像について説明する。
【0038】
図9は、読取画像(正常時)と読取画像(不良発生時)と比較画像を例示した説明図である。図9(a)は、正常印刷画像Imgを読み取って生成した読取画像データにより表される読取画像(正常時)Isgを示している。図9(b)は、不良印刷画像Imnを読み取って生成した読取画像データにより表される読取画像(不良発生時)Isnを示している。図9(c)は、入力画像Imsを変換した比較画像Issを示している。図10は、図9の取得画像(不良発生時)の一部を拡大した説明図である。
【0039】
読取画像は、上述のとおり、印刷媒体Pに印刷された印刷画像を搬送方向の解像度が1/100になるように圧縮した画像に相当する。そのため、印刷画像において圧縮方向と同じ搬送方向に形成されている色抜けによる縦線は、図9(b)の矢印間に示すように、読取画像においても、印刷画像と同様に縦線として現れる。これは、読取画像において印刷画像の色抜け部分に対応する各画素の画素値は、それぞれ色抜け部分の搬送方向約100ドット分の平均値となるためである。図10に示すように、読取画像(不良発生時)Isnには、印刷画像の色抜け部分に対応した画素値を有する各画素が縦方向に直線状に構成されている。
【0040】
また、印刷装置10は、入力画像データについて、入力画像Imsの縦方向および横方向の各画素数がそれぞれ読取画像と同様となるように画像変換をおこない、図9(c)に示す比較画像Issを表す比較画像データを生成する。比較画像データの生成は、ユーザーから印刷のための入力を受け付けた際に制御回路500によりおこなわれる。生成された比較画像データは、制御回路500によりイメージバッファ562に格納される。以上により、読取画像の詳細についての説明を終わる。
【0041】
図3に戻り、読取制御部520により印刷媒体Pから画像が取得されると(ステップS102)、制御回路500は、カウンタを1つインクリメントする(ステップS103)。そして、制御回路500は、カウンタがn=4m−1(mは整数)であるか否かを判定する(ステップS104)。カウンタがn=4m−1である場合(ステップS104:YES)、制御回路500は、ステップS102において画像を取得した印刷媒体Pについて印刷状態を判定するために印刷状態判定処理をおこなう(ステップS105)。一方、カウンタがn=4m−1ではない場合(ステップS104:NO)、制御回路500は、ステップS102において画像を取得した印刷媒体Pについて印刷状態判定処理をおこなわない。すなわち、本実施例に係る印刷装置10は、画像が印刷された印刷媒体Pのすべてについて印刷状態を判定するのではなく、画像が印刷された印刷媒体Pの所定の枚数ごとに印刷状態の判定をおこなう。
【0042】
図11は、判定対象となる印刷媒体を説明するための説明図である。本実施例では、カウンタがn=4m−1である場合の印刷媒体Pを判定対象とするため、印刷が開始されてから、3枚目(m=1)、7枚目(m=2)、11枚目(m=3)・・・の印刷媒体Pが印刷状態の判定対象となる。本実施例において、読取部400により印刷画像の読み取りがおこなわれた後、判定部により不良印刷画像であると判定されるまでに要した時間を「判定時間」と呼ぶ。印刷装置10において、連続的に複数の印刷媒体Pに対して同一の画像を印刷する場合、判定対象となる印刷媒体が印刷される時間間隔は、この判定時間よりも長くなるように設定される。なお、本実施例では、カウンタがn=4m−1のときの印刷媒体Pを判定対象としているが、判定対象とする印刷媒体Pの間隔は、任意に設定可能であり、例えば3mや4m−2など、これ以外の値が設定されていてもよい。
【0043】
カウンタがn=4m−1ではない場合(ステップS104:NO)、制御回路500は、印刷終了か否かを判定する(ステップS113)。印刷終了か否かの判定は、例えば、ユーザーから印刷を終了するための入力を受け付けたか否かにより判定してもよいし、予め設定された枚数の印刷が終了したか否かにより判定してもよい。制御回路500は、印刷終了ではないと判定した場合には(ステップS113:NO)、ステップS102に戻り、新たな印刷媒体Pから画像を取得する。制御回路500は、印刷終了であると判定した場合には(ステップS113:YES)、印刷動作を終了する。
【0044】
カウンタがn=4m−1である場合(ステップS104:YES)、制御回路500は、以下に説明する印刷状態判定処理をおこなう(ステップS105)。図12は、印刷状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
制御回路500の判定部550は、読取画像Isの1ラインの読込みをおこなう(ステップS201)。具体的には、判定部550は、リングバッファ561に格納されている読取画像データから横方向1ラインを構成する各画素の画素値を読み込む。最初に読込をおこなう1ラインの縦方向における位置には特に限定はないが、本実施例では、読取画像Isの上端を構成する1ラインを最初に読み込む。なお、画素値は、各画素の輝度値であってもよいし、RGBのいずれかの値であってもよい。
【0046】
判定部550は、比較画像Issの1ラインの読込みをおこなう(ステップS202)。具体的には、判定部550は、イメージバッファ562に格納されている比較画像データから、ステップS201において読み込んだ読取画像Isの1ラインと対応する位置の1ラインを構成する各画素の画素値を読み込む。
【0047】
判定部550は、画素値の差分を算出する(ステップS203)。具体的には、判定部550は、ステップS201において読み込んだ読取画像Isの1ラインを構成する各画素の画素値と、ステップS202において読み込んだ比較画像Issの1ラインを構成する各画素の画素値との差分を算出する。差分は、それぞれ対応する画素同士について算出されるため、1ライン分の各画素の差分値が算出される。
【0048】
判定部550は、不良箇所の検出をおこなう(ステップS204)。具体的には、ステップS203において算出された1ライン分の各画素の差分値と閾値とを比較し、閾値よりも差分値が大きい画素を不良箇所として検出する。これは、読み取った印刷画像が正常印刷画像である場合、読取画像の画素値と比較画像の画素値とはほぼ等しくなるため、差分値は小さくなる。一方、読み取った印刷画像が不良印刷画像である場合、色抜けの部分に該当する画素の画素値は、比較画像の画素値と異なるため、読取画像と比較画像との差分値が大きくなる。判定部550は、差分を算出したライン上の各画素のうち、不良箇所として検出された画素の位置を記憶する。
【0049】
判定部550は、上記のステップS201〜S204を読取画像Isの全ラインについておこなう(ステップS205)。具体的には、判定部550は、ステップS201において、前回読み込んだラインから縦方向に1段ずらした位置のラインを読み込み、ステップS202〜S204の処理をおこなう。判定部550は、読み込むラインを1段ずつずらして順次、ステップS202〜S204の処理をおこない、全ラインについて処理が完了すると(ステップS205:YES)、不良箇所についての集計をおこなう(ステップS206)。
【0050】
不良箇所についての集計方法について説明する。図13は、不良箇所の集計方法を説明するための説明図である。制御回路500は、読取画像Isのラインごとに不良箇所として検出された画素について縦方向にそれぞれ集計をおこなう。色抜けの縦線は、読取画像Isの縦方向に形成されているため、図13に示すように、色ぬけ部分の集計値は他の部分と比べると大きな値となる。
【0051】
判定部550は、集計値と閾値とを比較し、印刷媒体Pの印刷状態を判定する(ステップS207)。判定部550は、読取画像Isにおいて集計値が閾値より大きい箇所がある場合には、印刷画像に色抜けの縦線が存在し、印刷媒体Pの印刷状態は悪いと判定する(ステップS207:YES)。印刷媒体Pの印刷状態が悪い場合には、印刷装置10は、不良の検出を図示しない通知部により通知して(ステップS208)、印刷状態判定処理を終了する。通知部による通知とは、例えば、モニターの表示や紙の出力であってもよいし、音声による通知であってもよい。不良箇所がない場合には(ステップS207:NO)、通知をおこなわずに印刷状態判定処理を終了する。
【0052】
図3に戻り、制御回路500は、印刷状態判定処理において不良印刷画像が検出された場合には(ステップS106:YES)、印刷を停止する(ステップS107)。一方、不良印刷画像が検出されなかった場合には(ステップS106:NO)、制御回路500は、印刷終了か否かを判定する(ステップS113)。印刷終了か否かの判定は、上述と同様である。制御回路500は、印刷終了ではないと判定した場合には(ステップS113:NO)、ステップS102に戻り、新たな印刷媒体Pから画像を取得する。制御回路500は、印刷終了であると判定した場合には(ステップS113:YES)、印刷動作を終了する。
【0053】
制御回路500は、ステップS107において印刷を停止すると、前回取得した読取画像データを読み出す(ステップS108)。すなわち、制御回路500は、不良印刷画像が検出された印刷媒体Pの1枚前に印刷された印刷媒体Pから読み取った読取画像データをリングバッファ561から読み出す。制御回路500は、読み出した読取画像データを用いて、ステップS105において不良印刷画像が検出された印刷媒体Pの1枚前に印刷された印刷媒体Pについて印刷状態推定処理をおこなう(ステップS109)。制御回路500は、ステップS109による印刷状態判定処理の結果、不良印刷画像が検出された場合には、ステップS108に戻り、前々回取得した読取画像データを読み出して同様に印刷状態判定処理をおこなう。これを正常印刷画像が検出されるまで繰り返しおこなう。ステップS108〜S110について、以下に具体例を用いて説明する。
【0054】
図14は、不良検出時において判定対象となる印刷媒体を説明するための説明図である。図14(a)に示すように、ステップS106において、判定部550が印刷開始から7枚目の印刷媒体Pに不良印刷画像が存在すると判定すると、図14(b)に示すように、制御回路500は、6枚目の印刷媒体Pについて読取画像データを読み出し(ステップS108)、6枚目の印刷媒体Pについて印刷状態判定処理をおこなう(ステップS109)。
【0055】
さらに、ステップS109の印刷状態判定処理において、判定部550が6枚目の印刷媒体Pについて不良印刷画像が存在すると判定すると(ステップS110:YES)、図14(c)に示すように、制御回路500は、5枚目の印刷媒体Pについて読取画像データを読み出し(ステップS108)、5枚目の印刷媒体Pについて印刷状態判定処理をおこなう(ステップS109)。5枚目の印刷媒体Pについて不良印刷画像が存在しない場合には(ステップS110:NO)、制御回路500は、次のステップに進む。以上からわかるように、印刷装置10は、リングバッファ561に記憶されている読取画像データを用いて、不良印刷画像であると判定された印刷画像より時間的に前に印刷媒体Pに対して印刷された印刷画像の印刷状態の良否を判定する。
【0056】
ステップS110において、判定部550により不良印刷画像でなないと判定されると(ステップS110:NO)、制御回路500は、排出・回復処理をおこなう(ステップS111)。排出・回復処理とは、不良印刷画像が印刷された印刷媒体Pを排出するための処理と、印刷画像を正常な状態に回復させるための処理である。印刷画像を正常な状態に回復するための処理には、ヘッドユニット200に生じている不良ノズルの機能を回復させるための処理や、印刷画像を修正する処理が含まれる。
【0057】
不良ノズルの機能を回復させるための処理にはクリーニング動作などが含まれる。具体的には、ノズルからインク受け部に向けて強制的にインクを噴射させるフラッシング動作や、インク受け部の底面に接続したチューブにポンプを設けて圧力室内のインクを強制的に吸引する動作などが含まれる。印刷画像を修正する処理には、印刷データを補正する処理などが含まれる。具体的には、印刷制御部510は、印刷中に不良ノズルを検出すると、不良ノズルと隣接するノズルのドットサイズを大きくし、不良ノズルが割り当てられた画素の濃度を他のノズルのドットによって補うような処理をおこなう。
【0058】
図15は、不良印刷画像が印刷された印刷媒体Pの排出を説明するための説明図である。印刷装置10は、印刷媒体Pの搬送方向の下流側に印刷媒体Pを振り分けるための不良紙排出機構600を備えている。印刷装置10は、不良紙排出機構600により不良印刷画像が印刷されている印刷媒体Pと正常印刷画像が印刷されている印刷媒体Pにそれぞれ振り分ける。振り分けられた印刷媒体Pは、それぞれスタッカにスタックされる。
【0059】
図14では、6枚目の印刷媒体Pに不良画像が検出されたため、1枚目〜5枚目までを正常印刷画像が印刷されている印刷媒体P(以後「正常印刷物」とも呼ぶ)をスタックするスタッカに振り分ける。不良ノズルは一度発生すると回復処置をおこなわずに勝手に回復することが稀であるため、3枚目、5枚目が正常印刷物であれば、1、2、4枚目についても正常印刷物であると考えられるためである。
【0060】
6枚目から印刷中の12枚目までを不良印刷画像が印刷されている印刷媒体P(以後「不良印刷物」とも呼ぶ)をスタックするスタッカに振り分ける。上記と同様の理由により、6枚目が不良印刷物であれば、それ以降、回復処理がなされる前までに印刷された印刷物は不良印刷物であると考えられるためである。
【0061】
制御回路500は、ステップS111の排出・回復処理の後、印刷を再開する(ステップS112)。ステップS111において不良ノズルの機能を回復させるための処理がおこなわれることにより、再度、正常印刷画像を印刷することができるためである。印刷再開と並行して制御回路500は、印刷終了か否かを判定し(ステップS113)、印刷終了ではないと判定した場合には(ステップS113:NO)、印刷を再開するとともに、ステップS102において、新たな印刷媒体Pから画像を取得する。制御回路500は、印刷終了であると判定した場合には(ステップS113:YES)、印刷動作を終了する。以上が印刷装置の全体の動作である。
【0062】
A3.リングバッファの記憶量:
リングバッファ561に格納可能な読取画像データの数について説明する。図16は、リングバッファに記憶される取得画像データを説明するための説明図である。リングバッファ561は、図16に示すように、読取画像データ1から読取画像データN(N:整数)までのN個の読取画像データを格納可能な記憶領域を備えている。このNの値は、図11に示す判定時間の間に、ヘッドユニット200により印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数M(M:整数)の2倍となる数である。
【0063】
本実施例では、図11に示すように、判定時間の間に、ヘッドユニット200により印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数が4であるため(M=4)、リングバッファ561の記憶領域は、N=M×2=8となる。これは、図11において、7枚目の印刷媒体Pについて印刷状態の判定が完了すると、10枚目の印刷画像について読み取りが完了している。7枚目の印刷状態が悪い場合には、6枚目、5枚目、4枚目の読取画像データを用いて印刷状態を判定する可能性があるため、少なくとも4〜10枚目の読取画像データが同時に格納できる記憶領域が必要となる。よって、判定時間の間に印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数の2倍の数が必要となる。
【0064】
図17は、リングバッファに記憶させる処理の流れを示すフローチャートである。制御回路500は、上述のステップS102において、印刷媒体Pから画像を取得し読取画像データを生成すると(ステップS301)、生成した読取画像データを含め、リングバッファ561に蓄積される読取画像データの数が最大蓄積可能データ数より大きいか否かを判定する(ステップS302)。蓄積される読取画像データの数が最大蓄積可能データ数より大きくなる場合(ステップS302:YES)、蓄積されている読取画像データのうち、取得された時期が最も古い読取画像データを削除して(ステップS303)、生成した読取画像データを格納する(ステップS304)。蓄積される読取画像データの数が最大蓄積可能データ数以下となる場合(ステップS302:NO)、読取画像データの削除をおこなわずに、生成した読取画像データを格納する(ステップS304)。
【0065】
ヘッドユニット200は、特許請求の範囲における「印刷部」に該当する。特許請求の範囲において、画像の印刷状態が悪いと判定された印刷媒体Pは、例えば、図14の7枚目の印刷媒体Pが該当し、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された画像とは、例えば、図14の6枚目、5枚目、4枚目の印刷媒体Pが該当する。
【0066】
以上説明した、第1の実施例に係る印刷装置10によれば、印刷媒体の所定の枚数ごとに、印刷された画像の印刷状態を判定し、印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された印刷媒体の画像について印刷状態の良否を判定するため、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることができる。具体的には、所定の枚数ごとに印刷状態を判定するため、すべての印刷媒体について印刷状態を判定する場合に比べて、印刷状態の判定により生じる処理負担を軽減させることができる。また、印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された印刷媒体の画像について印刷状態の良否を判定するため、印刷状態が不明な印刷媒体の発生を抑制することができる。判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された印刷媒体の画像について印刷状態の良否を判定すると印刷状態が不明な印刷媒体の発生を抑制することができる根拠は以下に述べる。
【0067】
印刷装置は、不良ノズルが発生した場合、回復処理をおこなわずに勝手に回復することが稀だという性質を持っている。そのため、一度、不良印刷画像が印刷された場合には、それ以降の印刷画像は、回復処理をおこなった場合を除き、不良印刷画像であると推定することができる。また、正常印刷画像であると判定された印刷媒体Pより時間的に前に印刷された印刷画像についても正常印刷画像であると推定できる。よって、本発明は、一定間隔ごとに印刷状態の良否を判定し、印刷状態が悪いと判定された場合には、判定された印刷画像より時間的に前に印刷された印刷画像について印刷状態の良否を順番に遡って判定し、印刷状態が悪くない印刷画像が検出されると、印刷状態が悪くない印刷画像が印刷された印刷媒体P以前に印刷された印刷画像は正常印刷画像であると推定し、印刷状態が悪くない印刷画像が印刷された印刷媒体Pの次以降に印刷された印刷画像は不良印刷画像であると推定できるため、印刷状態が不明な印刷媒体の発生を抑制することができる。
【0068】
第1の実施例に係る印刷装置10によれば、判定部550は、印刷画像の印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった印刷画像より時間的に前に印刷された複数の印刷画像について、ヘッドユニット200により印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を判定するため、印刷物の印刷状態の良否を効率よく判定することができる。これは、判定部550は、正常印刷画像の検出よりも不良印刷画像の検出の方が処理の負担が少ないため、ヘッドユニット200により印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を判定することで、印刷物の印刷状態の良否を効率よく判定することができる。
【0069】
第1の実施例に係る印刷装置10によれば、記憶部560は、印刷媒体Pに印刷状態の悪い印刷画像が印刷された後、判定部550により印刷状態が悪いと判定されるまでに要した時間の間に、ヘッドユニット200により他の印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数の2倍の数の画像を記憶する記憶領域を備えているため、判定部550により印刷状態の良否を判定するための読取画像データが記憶部560に記憶されていない状態となる可能性を抑制することができる。具体的には、図11において、7枚目の印刷媒体Pについて印刷状態の判定が完了すると、10枚目の印刷画像について読み取りが完了している。7枚目の印刷状態が悪い場合には、6枚目、5枚目、4枚目の読取画像データを用いて印刷状態を判定する可能性があるため、少なくとも4〜10枚目の読取画像データが同時に格納できる記憶領域が必要となる。よって、判定時間の間に印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数の2倍の数の画像を記憶できる記憶領域を備えることにより、判定部550により印刷状態の良否を判定するための読取画像が記憶部560に記憶されていない状態となる可能性を抑制することができる。
【0070】
第1の実施例に係る印刷装置10によれば、判定部550により、印刷画像の印刷状態が悪いと判定されると、印刷を停止し、印刷状態を回復させるための処理をおこなった後、印刷を再開するように印刷部を制御する印刷制御部を備えているため、不良印刷画像が印刷された印刷媒体Pの発生を抑制することができる。具体的には、不良印刷画像が発生した場合、回復処理をおこなわない限り、その後印刷される印刷画像も不良印刷画像となる可能性が高い。そのため、印刷制御部により、印刷を停止し、回復処理をおこなった後に印刷を再開することにより、不良印刷画像が印刷された印刷媒体Pの発生を抑制することができる。
【0071】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
B1.変形例1:
本実施例では、印刷装置により発明の一態様を説明しているが、本発明は、印刷装置に限られず、それ以外の態様によっても実現することができる。例えば、印刷状態を判定する印刷状態判定装置として実現することもできる。この場合、本実施例の印刷装置10は、ヘッドユニット200と、搬送部300と、読取部400と、制御回路500と、を備えているが、印刷状態判定装置は、ヘッドユニット200や搬送部300を備えていなくてもよい。それ以外の装置の構成や、装置の動作、印刷状態判定処理の内容は実施例と同様である。この印刷状態判定装置によっても、印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることができる。
【0073】
B2.変形例2:
本実施例では、リングバッファ561は、図11に示す判定時間の間に、ヘッドユニット200により印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数の2倍の数の印刷画像を記憶可能な記憶領域を備えているものとして説明したが、リングバッファ561の記憶領域は、これ以上の印刷画像を記憶可能な記憶領域であってもよい。例えば、ヘッドユニット200により印刷媒体Pに印刷される印刷画像の数のK(K:2以上の整数)倍の数の印刷画像を記憶可能な記憶領域を備えていてもよい。この場合であっても、判定部550により印刷状態の良否を判定するための読取画像が記憶部560に記憶されていない状態となる可能性を抑制することができる。
【0074】
B3.変形例3:
本実施例に係る印刷装置10は、印刷画像の印刷状態が悪いと判定すると、判定をおこなった印刷画像より時間的に前に印刷された複数の印刷画像について、ヘッドユニット200により印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を判定するとしたが、これ以外の順序により、この複数の印刷画像について印刷状態の良否を判定してもよい。例えば、判定部550は、ヘッドユニット200により印刷された順番と同じ順番によりこの複数の印刷画像の印刷状態の良否を判定してもよいし、ヘッドユニット200により印刷された順番と無関係な順番によりこの複数の印刷画像の印刷状態の良否を判定してもよい。この場合であっても、印刷物の印刷状態の良否を効率よく判定することができる。
【0075】
B4.変形例4:
本実施例に係る印刷装置10は、印刷画像の印刷状態が悪いと判定すると、印刷を停止し、印刷状態を回復させるための処理をおこなった後、印刷を再開すると説明したが、これらの処理の少なくとも一部を備えていなくても印刷物の印刷状態の良否を判定する処理の効率性を向上させることができる。すなわち、印刷装置10は、印刷を停止させずに回復処理をおこなう構成であってもよいし、印刷を停止するのみで、回復処理をおこなわない構成であってもよい。また、印刷の停止も回復処理もおこなわず、例えば、ユーザーに不良印刷画像の発生を通知する構成であってもよい。
【0076】
B5.変形例5:
本実施例に係る印刷装置10は、印刷状態判定処理において、読取画像の画素値と比較画像の画素値との差分値が閾値以上となる画素の数を縦方向に集計し、集計値と閾値とを比較することにより、印刷画像が不良印刷画像か否かを判定しているが、不良印刷画像か否かを判定する方法は、これ以外の方法によってもおこなうことができる。例えば、読取画像の画素値と比較画像の画素値との差分値を縦方向に積算し、積算した積算値と閾値とを比較することにより不良箇所の有無を判定してもよい。
【0077】
B6.変形例6:
本実施例に係る印刷装置10は、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。
【0078】
B7.変形例7:
本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、プリンター、印刷状態判定装置、印刷物検査装置等で実現することができる。また、印刷状態判定方法、印刷物検査方法、および、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータープログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…印刷装置
200…ヘッドユニット
210…インク吐出ノズル
300…搬送部
310…搬送ローラ
330…搬送ベルト
400…読取部
500…制御回路
510…印刷制御部
520…読取制御部
530…搬送制御部
540…画像処理部
550…判定部
560…記憶部
561…リングバッファ
562…イメージバッファ
600…不良紙排出機構
P…印刷媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
複数の印刷媒体に同一の画像を印刷する印刷部と、
前記複数の印刷媒体に印刷された前記画像をそれぞれ読み取る読取部と、
前記読取部により読み取られた前記画像をそれぞれ記憶する記憶部と、
前記印刷部により前記画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、前記読取部により読み取られた前記画像と、予め設定されている比較画像とを比較して前記印刷媒体に印刷された前記画像の印刷状態を判定し、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記記憶部に記憶されている前記画像を用いて、前記判定をおこなった画像より時間的に前に前記印刷部により印刷された前記画像について印刷状態の良否を判定する判定部と、を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記判定部は、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記判定をおこなった画像より時間的に前に前記印刷部により印刷された複数の前記画像について、前記印刷部により印刷された順番と反対の順番から印刷状態の良否を判定する印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記記憶部は、印刷状態の悪い前記画像が前記読取部により読み取られた後、前記判定部により印刷状態が悪いと判定されるまでに要した時間の間に、前記印刷部により他の印刷媒体に印刷される前記画像の数のN倍(Nは2以上の整数)の数の画像を記憶する記憶領域を備える印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置はさらに、
前記判定部により、前記画像の印刷状態が悪いと判定されると、前記印刷を停止し、印刷状態を回復させるための処理をおこなった後、前記印刷を再開するように前記印刷部を制御する印刷制御部を備える印刷装置。
【請求項5】
印刷状態判定装置であって、
複数の印刷媒体に印刷された同一の画像をそれぞれ読み取る読取部と、
前記読取部により読み取られた前記画像をそれぞれ記憶する記憶部と、
前記画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、前記読取部により読み取られた前記画像と、予め設定されている比較画像とを比較して前記印刷媒体に印刷された前記画像の印刷状態を判定し、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、前記記憶部に記憶されている前記画像を用いて、前記判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された前記画像について印刷状態の良否を判定する判定部と、を備える印刷状態判定装置。
【請求項6】
印刷状態判定方法であって、
複数の印刷媒体に印刷された同一の画像をそれぞれ読み取る工程と、
読み取られた前記画像をそれぞれ記憶する工程と、
前記画像が印刷された印刷媒体の所定の枚数ごとに、読み取られた前記画像と、予め設定されている比較画像とを比較して前記印刷媒体に印刷された前記画像の印刷状態を判定し、前記画像の印刷状態が悪いと判定すると、記憶されている前記画像を用いて、前記判定をおこなった画像より時間的に前に印刷された前記画像について印刷状態の良否を判定する工程と、を備える印刷状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−116023(P2011−116023A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275258(P2009−275258)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】