説明

印刷装置およびそれを用いた印刷方法

【課題】導電性塗料の物性の変動によるセラミックグリーンシート上の塗膜厚みのばらつきや、グラビアロールの幅方向における凹みの深さの差によるセラミックグリーンシート上の塗膜厚みのばらつきを解消することができる印刷装置と、それを用いた印刷方法を得る。
【解決手段】印刷装置20は、表面に凹部24を有する版胴22と、版胴22と対向して配置される圧胴30とを含む。貯留槽26に蓄えられた導電性ペースト28を凹部24に充填し、版胴22と圧胴30との対向部において、セラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写する。版胴22内に第1の電磁石34を配置し、圧胴30内に第2の電磁石36を配置する。第1の電磁石34や第2の電磁石36の励磁電流を調整することにより、セラミックグリーンシート32への導電性ペースト28の転写量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置およびそれを用いた印刷方法に関し、特にたとえば、積層型電子部品に用いられるセラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷するための印刷装置およびそれを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品を得るために、導電性ペーストなどで電極パターンを形成したセラミックグリーンシートが積層され、得られた積層体を焼成することにより内部電極を有する基体が形成される。この基体の端部に、内部電極に接続される外部電極を形成することにより、積層型電子部品が形成される。図7は、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷するためのグラビア印刷装置の一例を示す図解図である。グラビア印刷装置1は、円筒状のグラビアロール2を含む。グラビアロール2の表面には、セラミックグリーンシート上に形成される電極パターンの形状の凹み3が形成される。グラビアロール2の下側部分は、インキパンに入れられた導電性塗料4に浸漬され、グラビアロール2を回転させることにより、凹み3に導電性塗料4が導入される。グラビアロール2の表面には、ドクターブレード5が圧接され、このドクターブレード5によって回転するグラビアロール2の表面に付着した導電性塗料が掻き落とされる。
【0003】
グラビアロール2に対向して、円筒状の圧胴6が配置される。圧胴6の内部には、磁石7が配置され、グラビアロール2と圧胴6との対向部分において、グラビアロール2の表面に対して直交する磁力線からなる磁界が印加される。そして、回転するグラビアロール2と圧胴6の間にセラミックグリーンシート8を通すことにより、グラビアロール2の凹み3に導入された導電性塗料4がセラミックグリーンシート8上に転写される。ここで、導電性塗料4に磁性体粉末を含有させておくことにより、グラビアロール2と圧胴6との対向部において、磁石7によって発生する磁力線によって、導電性塗料4がセラミックグリーンシート8側に引き付けられる。そのため、グラビアロール2からセラミックグリーンシート8への導電性塗料4の転写率を高めることができ、転写された導電性塗料4の印刷厚みの安定性を確保することができる(特許文献1参照)。
【0004】
なお、図8に示すように、圧胴6の円周方向にN極とS極とが隣接して配置されるように形成されてもよい。この場合、圧胴6の表面に対して若干傾斜した向きに磁力線が発生するが、上述のような効果を得ることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−316091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
積層型電子部品に用いられるセラミックグリーンシートにおいては、導電材料が印刷されて形成された電極パターンの塗膜厚みが、予め定められた厚みの許容範囲内に入るように制御する必要がある。セラミックグリーンシート上に転写された導電性塗料の厚みは、グラビアロールの凹みへの導電性塗料の充填量とセラミックグリーンシートへの転写量によって決定される。導電性塗料の転写量は、導電性塗料の粘度やレオロジー特性などのばらつきによって変動し、セラミックグリーンシート上に印刷された導電性塗料の膜厚は変動する。また、圧胴に磁石を組み込んでも、グラビアロールの凹みに充填された導電性塗料の全てを転写できるわけではないため、導電性塗料の物性の変動による塗膜厚みの制御は困難であり、安定した厚みを得ることは難しい。
【0007】
また、グラビアロールの凹みは、用いられた製版機による加工ばらつきをもっており、例えばグラビアロールの幅方向の両端側において、深さの差が3μm程度ある場合がある。このように、グラビアロールの幅方向において凹みの深さに差があると、セラミックグリーンシートの幅方向において塗膜厚みの差が生じることとなる。圧胴内に磁石を配置した場合においても、このようなセラミックグリーンシートの幅方向における塗膜厚みの差を解消することはできない。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、導電性塗料の物性の変動によるセラミックグリーンシート上の塗膜厚みのばらつきや、導電性ペーストを保持する凹部の深さの差によるセラミックグリーンシート上の塗膜厚みのばらつきを低減することができる印刷装置と、それを用いた印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、導電性ペーストを充填するための凹部を表面に有する版胴と、版胴表面に対してセラミックグリーンシートを接触させるための圧胴とを備え、版胴と圧胴との間にセラミックグリーンシートを通過させることにより、版胴の凹部に充填された導電性ペーストがセラミックグリーンシート上に転写されるように動作する印刷装置であって、版胴内に配置される第1の磁石と、圧胴内に配置される第2の磁石とをさらに備え、第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方により発生する磁力線が、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストが転写される転写部位に及ぶようにして、第1の磁石および第2の磁石が配置されていることを特徴とする、印刷装置である。
このような印刷装置において、向かい合う第1の磁石と第2の磁石の極性が異なっていてもよい。
また、第1の磁石の磁力線および第2の磁石の磁力線は、セラミックグリーンシートの面内方向と同じ方向であるようにすることができる。
さらに、磁石は、電磁石であることが好ましい。
版胴内に配置された第1の磁石や圧胴内に配置された第2の磁石で発生する磁力線が、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストが転写される転写部位に及ぶことにより、転写部位において、版胴の凹部に保持された導電性ペーストに磁力線が作用する。ここで、導電性ペーストに磁性体粉末を含ませておき、第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方で発生する磁力線の密度を調整することにより、版胴の凹部からセラミックグリーンシート上に引き付けられる導電性ペーストの量を調整することができる。
【0010】
また、この発明は、上述の印刷装置を用いた印刷方法であって、版胴の凹部内部に磁性体粉末を含有する導電性ペーストを充填し、第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方により磁力線を発生させた状態で、版胴と圧胴との間にセラミックグリーンシートを通過させて、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを転写することを特徴とする、印刷方法である。
上述のような印刷装置を用いて、第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方により磁力線を発生させた状態で、版胴と圧胴との間にセラミックグリーンシートを通過させることにより、版胴の凹部に導入された磁性体粉末を含有する導電性ペーストに磁力線が作用する。ここで、第1の電磁石や第2の電磁石による磁力線の密度を調整することにより、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストが転写される転写部位における磁力線の影響を調整することができる。それにより、セラミックグリーンシート上への導電性ペーストの転写量を調整することができる。
【0011】
このような印刷方法において、セラミックグリーンシート上に印刷された導電性ペーストの膜厚を測定し、予め定められた基準膜厚と実測膜厚とを比較し、基準膜厚と実測膜厚とが一致しない場合に、新たに印刷される導電性ペーストの膜厚が基準膜厚に近づくように第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方の磁力を調整して、セラミックグリーンシート上に転写される導電性ペーストの量を調整することが好ましい。
セラミックグリーンシート上に転写された導電性ペーストの膜厚を実測し、予め定められた基準膜厚と比較して、第1の磁石および第2の磁石の少なくとも一方の磁力を調整することにより、セラミックグリーンシート上に転写される導電性ペーストの膜厚を基準膜厚に近付けることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、第1の磁石や第2の磁石の磁力を調整することにより、セラミックグリーンシート上への導電性ペーストの転写量を調整することができるため、セラミックグリーンシート上における導電性ペーストの膜厚を予め定められた基準膜厚に近付けることができる。特に、セラミックグリーンシート上に転写された導電性ペーストの膜厚を実測し、基準膜厚と比較して磁石の磁力を調整することにより、より正確な膜厚調整を行なうことができる。
【0013】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】積層型電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを示す図解図である。
【図2】この発明の印刷装置の一例を示す図解図である。
【図3】図2に示す印刷装置の使用方法の一例を示す図解図である。
【図4】図2に示す印刷装置の使用方法の他の例を示す図解図である。
【図5】図2に示す印刷装置の使用方法の別の例を示す図解図である。
【図6】図2に示す印刷装置を用いてセラミックグリーンシートに導電性ペーストを印刷する工程を示すブロック図である。
【図7】従来の印刷装置の一例を示す図解図である。
【図8】従来の印刷装置の他の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、積層型電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを示す図解図である。積層セラミックコンデンサ10は、基体12を含む。基体12は、複数の誘電体セラミック層14を含み、隣接する誘電体セラミック層14間に内部電極16a,16bが形成される。一方の内部電極16aの一端側は、基体12の対向する端部の一方側に引き出され、内部電極16aの他端側は、基体12の対向する端部の他方側近傍まで延びるように形成される。また、他方の内部電極16bの一端側は、基体12の対向する端部の他方側に引き出され、内部電極16bの他端側は、基体12の対向する端部の一方側近傍まで延びるように形成される。これらの内部電極16a,16bは、基体12の厚み方向において、交互に配置される。したがって、基体12の内部において、内部電極16a,16bが重なり合い、隣接する内部電極16a,16bが、基体12の反対側の端部に引き出される。基体12の両端部には外部電極18a,18bが形成され、外部電極18a,18bには、それぞれ内部電極16a,16bが接続される。したがって、外部電極18a,18b間に静電容量が形成される。
【0016】
このような積層セラミックコンデンサ10を作製する場合、誘電体セラミック材料を用いて、PETフィルムなどのキャリアフィルム上にセラミックグリーンシートが形成される。セラミックグリーンシート上には、導電性ペーストを印刷することにより、内部電極16a,16bの形状の電極パターンが形成される。内部電極16a,16bの形状の電極パターンを有するセラミックグリーンシートを積層し、その両側に電極パターンのないセラミックグリーンシートを積層して圧着することにより、積層体が形成される。得られた積層体を切断することにより、内部電極16a,16bの形状の電極パターンが交互に積層されたチップが形成される。このチップを焼成することにより、誘電体セラミック層14を挟んで内部電極16a,16bが対向する基体12が形成される。得られたチップを例えばバレル研磨し、内部電極16a,16bの引出し部を露出させるとともに、必要に応じて基体12の角部に丸みが形成される。そして、内部電極16a,16bが露出した基体12の端部に導電性ペーストを塗布し、焼結することによって、外部電極18a,18bが形成される。
【0017】
ここで、セラミックグリーンシート上に電極パターンを形成するために、印刷装置が用いられる。図2は、この発明の印刷装置の一例を示す図解図である。印刷装置20は、円筒状の版胴22を含む。版胴22の表面には、積層セラミックコンデンサ10の内部電極16a,16bの形になるように、複数の凹部24が形成される。凹部24は、例えば、1辺が30〜300μmで深さが1〜50μmとなるようにして、版胴22の円周方向および幅方向に間隔を隔てて形成される。凹部は、例えば、フォトマスク原版を用いたエッチングや彫刻などによって形成される。
【0018】
版胴22の下方には、貯留槽26が配置され、貯留槽26には、導電性ペースト28が蓄えられる。導電性ペースト28は、例えば、導体材料として、0.03〜2.00μmの粒子径を有するNi粉末などが用いられる。Ni粉末は、導体材料として用いられるだけでなく、磁性体材料としても用いられる。導体材料としてNi以外の非磁性体が用いられる場合、例えば磁性樹脂などの磁性体粉末が添加される。また、バインダとして、エチルセルロースやアクリルなどが使用される。さらに、焼結時の収縮を制御するためのセラミック材料、分散剤などが添加されている。この導電性ペースト28が貯留槽26に蓄えられ、版胴22の下方部分が導電性ペースト28に浸漬される。それにより、版胴22の表面の凹部24に導電性ペースト28が導入される。
【0019】
さらに、版胴22の上方において、版胴22と対向するようにして、円筒状の圧胴30が配置される。版胴22と圧胴30とは平行に配置され、版胴22と圧胴30との間にセラミックグリーンシート32が通される。
【0020】
版胴22内には、第1の磁石34が配置される。第1の磁石34は、例えば、圧胴30側に向かって伸びる磁力線が形成されるように配置される。また、圧胴30内には、第2の磁石36が配置される。第2の磁石36は、例えば、版胴22側に向かって伸びる磁力線が形成されるように配置される。第1の磁石34および第2の磁石36は、電磁石を用いるのが好ましい。電磁石を用いることにより、励磁電流を調整し、発生する磁力を容易に調整することができる。
【0021】
この印刷装置20では、貯留槽26に蓄えられた導電性ペースト28が版胴22の凹部24に導入され、セラミックグリーンシート32との接触部分まで導電性ペースト28が運ばれるが、その途中において、ブレード38が版胴22の表面に押し当てられる。このブレード38によって、凹部24外の版胴22表面に付着した導電性ペースト28が掻き落とされる。
【0022】
この印刷装置20を用いて、セラミックグリーンシート32に導電性ペースト28を転写して電極パターンを形成するには、版胴22および圧胴30を回転させた状態で、版胴22と圧胴30の間にセラミックグリーンシート32が通される。それにより、セラミックグリーンシート32は、圧胴30によって搬送されるとともに、版胴22の表面に押し当てられる。
【0023】
版胴22の表面には、貯留槽26において導電性ペースト28が付与されるが、版胴22の回転方向に配置されたブレード38によって余分な導電性ペースト28は掻き落とされる。それにより、版胴22の凹部24にのみ導電性ペースト28が導入された状態で、セラミックグリーンシート32が版胴22に押し当てられる。そして、圧胴30によってセラミックグリーンシート32が版胴22に押し当てられることにより、凹部24に充填された導電性ペースト28がセラミックグリーンシート32上に転写される。
【0024】
ここで、版胴22の製造工程の加工ばらつきにより、複数の凹部24の間で開口率にばらつきが生じた場合、印刷時において、セラミックグリーンシート32上に転写された導電性ペースト28の膜厚にばらつきが生じる。また、版胴22の凹部24に充填された導電性ペースト28の全てがセラミックグリーンシート32上に転写されるわけではなく、その転写率は50%程度である。印刷を続けることにより、凹部24に残った導電性ペースト28の粘度が高くなり、セラミックグリーンシート32上への導電性ペースト28の転写量が時間とともに少なくなってくる。そのため、セラミックグリーンシート32上に転写された導電性ペースト28の膜厚が、時間とともに薄くなってくる。
【0025】
この印刷装置20では、第1の電磁石34や第2の電磁石36の励磁電流を調整することにより、セラミックグリーンシート32上の導電性ペースト28の膜厚を調整することができる。導電性ペースト28には磁性体粉末が含まれているため、第1の電磁石34や第2の電磁石36で磁力を発生させることにより、導電性ペースト28を版胴22側や圧胴28側に引き付けることができる。たとえば、図3に示すように、第2の電磁石36のみをONにして励磁電流を増加させることにより、導電性ペースト28を圧胴30側に引き付けることができ、セラミックグリーンシート32上に転写される導電性ペースト28の量を多くすることができる。反対に、第1の電磁石34のみをONにして励磁電流を増加させることにより、導電性ペースト28を版胴22側に引き付けることができ、セラミックグリーンシート32上に転写される導電性ペースト28の量を少なくすることができる。
【0026】
また、図4に示すように、第2の電磁石36をONにしてセラミックグリーンシート32の圧胴30側にN極を形成し、第1の電磁石34をONにしてセラミックグリーンシート30の版胴22側にS極を形成することができる。この場合、図4に示すように、版胴22と圧胴30とが対向する部分において、セラミックグリーンシート32の両側にN極とS極とが対向して配置される。この状態では、導電性ペースト28は、版胴22側および圧胴30側の両方に引き付けられている。したがって、第2の電磁石36の励磁電流を増加させることにより、第2の電磁石36に発生する磁力が大きくなり、導電性ペースト28は圧胴30側により強く引き付けられ、セラミックグリーンシート32上に転写される導電性ペースト28の量を多くすることができる。また、第1の電磁石34の励磁電流を増加させることにより、第1の電磁石34に発生する磁力が大きくなり、導電性ペースト28は版胴22側により強く引き付けられ、セラミックグリーンシート32上に転写される導電性ペースト28の量を少なくすることができる。
【0027】
第1の電磁石34および第2の電磁石36をONにしてセラミックグリーンシート32の両側にN極およびS極を形成し、それぞれの励磁電流を一致させることにより、図4に示すように、版胴22と圧胴30との対向部近傍において、磁力線の向きを圧胴30の表面に対してほぼ直交する向きにすることができる。したがって、版胴22と圧胴30との対向部近傍において、磁力線の向きは、圧胴30の表面に沿って配置されるセラミックグリーンシート32の面に対してほぼ直交する向きに一致する。それぞれの電磁石の励磁電流を平衡状態から増減させることにより、リニアリティの高い制御を行うことができる。
【0028】
また、図5に示すように、版胴22と圧胴30との対向部分において、N極どうしが対向するように、第1の電磁石34および第2の電磁石36を制御してもよい。この場合、版胴22と圧胴30との対向部分において、第1の電磁石34および第2の電磁石36による磁力線の向きが、セラミックグリーンシート32の面にほぼ直交した向きとなり、第1の電磁石34と第2の電磁石36から発生する磁力線は、第1の電磁石34と第2の電磁石36とを結ぶ線上において、セラミックグリーンシート32の面にほぼ並行する向きに変化する。例えば、第2の電磁石36の励磁電流が第1の電磁石34の励磁電流より大きい場合、図5に示すように、セラミックグリーンシート32より版胴22側において磁力線の向きが変化する。反対に、第1の電磁石34の励磁電流が第2の電磁石36の励磁電流より大きい場合、セラミックグリーンシート32より圧胴30側において磁界の向きが変化する。
【0029】
このような磁力線を発生させる場合、第1の磁石34と第2の磁石36の磁力を一致させることにより、版胴22と圧胴30との対向部分におけるセラミックグリーンシート32面上に磁力線の向きを沿わすことができる。このような磁力線に沿って、Ni粉末は、セラミックグリーンシート上の面内で流動し、均一な導電パターンを形成することができる。
【0030】
これらの調整方法は、第1の電磁石34および第2の電磁石36の励磁電流の向きおよび大きさを調整することによって制御することができるため、目的とする制御範囲および精度に合わせて、適宜切り換えることができる。
【0031】
この印刷装置20を用いてセラミックグリーンシート32に電極パターンを形成するために、図6に示すように、巻回されたセラミックグリーンシート32が巻き出される。巻き出されたセラミックグリーンシート32は印刷装置20に搬送され、上述のようにして導電性ペースト28がセラミックグリーンシート32上に転写される。セラミックグリーンシート32に転写された導電性ペースト28は乾燥させられ、セラミックシート32は巻き取られる。
【0032】
ここで、転写された導電性ペースト28の膜厚を測定し、その実測値に対応して、印刷装置20で転写される導電性ペースト28の膜厚を調整することができる。例えば、第1の電磁石34および第2の電磁石36に励磁電流を流さず、磁界が発生していない状態でセラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写し、その膜厚を測定することにより、その面内の膜厚傾向が把握される。この膜厚傾向を緩和してセラミックグリーンシート32の全面において均一な膜厚となるように、第1の電磁石34および第2の電磁石36の励磁電流が調整される。
【0033】
なお、この場合、例えば、版胴22および圧胴30の幅方向に複数の電磁石が配置され、版胴22の周期に合わせて、各磁石の磁力線の密度を制御することにより、セラミックグリーンシート32の面内の膜厚ばらつきを低減することができる。
【0034】
また、図6に示すように、セラミックグリーンシート32へ導電性ペースト28を転写した後、乾燥前あるいは乾燥後に膜厚の測定を行ってもよい。この場合、予め定められた膜厚と実測した膜厚とが比較され、これらの膜厚の差が小さくなるように、第1の電磁石34の励磁電流および第2の電磁石36の励磁電流が調整される。それにより、測定した膜厚をフィードバックして、リアルタイムで導電性ペースト28の膜厚調整を行なうことができる。
【0035】
このように、第1の電磁石34および第2の電磁石36に励磁電流を流さずに導電性ペースト28の転写を行い、その膜厚傾向を把握することにより、版胴22のばらつきによる膜厚ばらつきを低減することができる。また、導電性ペースト28の転写後の膜厚の実測値をフィードバックすることにより、導電性ペースト28の粘度の変化などによる経時的な膜厚ばらつきを低減することができる。したがって、これらの方法を併用することにより、セラミックグリーンシート32の全面において、均一な膜厚で電極パターンを印刷することができる。
【0036】
したがって、このようにして電極パターンを印刷したセラミックグリーンシート32を用いて積層セラミックコンデンサを作製することにより、内部電極の厚みのばらつきを小さくすることができ、容量ばらつきの少ない積層セラミックコンデンサを得ることができる。また、内部電極の厚みばらつきを低減することにより、内部電極の厚みの平均値を小さくすることができ、電極材料の使用効率を高くすることができる。
【0037】
なお、このようにして得られたセラミックグリーンシート32は、積層セラミックコンデンサだけでなく、内部電極を有する他の積層型電子部品にも使用可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
20 印刷装置
22 版胴
24 凹部
26 貯留槽
28 導電性ペースト
30 圧胴
32 セラミックグリーンシート
34 第1の電磁石
36 第2の電磁石
38 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ペーストを充填するための凹部を表面に有する版胴と、
前記版胴表面に対してセラミックグリーンシートを接触させるための圧胴と、
を備え、
前記版胴と前記圧胴との間に前記セラミックグリーンシートを通過させることにより、前記版胴の前記凹部に充填された導電性ペーストが前記セラミックグリーンシート上に転写されるように動作する印刷装置であって、
前記版胴内に配置される第1の磁石と、
前記圧胴内に配置される第2の磁石と、
をさらに備え、
前記第1の磁石および前記第2の磁石の少なくとも一方により発生する磁力線が、前記セラミックグリーンシート上に前記導電性ペーストが転写される転写部位に及ぶようにして、前記第1の電磁石および前記第2の電磁石が配置されていることを特徴とする、印刷装置。
【請求項2】
向かい合う前記第1の磁石と前記第2の磁石の極性が異なることを特徴とする、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1の磁石の磁力線および前記第2の磁石の磁力線は、セラミックグリーンシートの面内方向と同じ方向であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記磁石は、電磁石であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
請求項1に記載の印刷装置を用いた印刷方法であって、
前記版胴の前記凹部内部に磁性体粉末を含有する導電性ペーストを充填し、
前記第1および第2の磁石の少なくとも一方により磁力線を発生させた状態で、前記版胴と前記圧胴との間にセラミックグリーンシートを通過させて、前記セラミックグリーンシート上に前記導電性ペーストを転写することを特徴とする、印刷方法。
【請求項6】
前記セラミックグリーンシート上に印刷された前記導電性ペーストの膜厚を測定し、
予め定められた基準膜厚と実測膜厚とを比較し、
前記基準膜厚と前記実測膜厚とが一致しない場合に、新たに印刷される前記導電性ペーストの膜厚が前記基準膜厚に近づくように前記第1の磁石および前記第2の磁石の少なくとも一方の磁力を調整して、前記セラミックグリーンシート上に転写される導電性ペーストの量を調整することを特徴とする、請求項5に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−78895(P2013−78895A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220264(P2011−220264)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】