説明

印刷装置およびUSBデバイスの認識方法

【課題】USBデバイスとの接続を確実に行うことができるようにする。
【解決手段】USBホストコントローラ711は、USBルートハブ800に接続されたUSBデバイス16,18,13,17の信号線D+,D−のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、当該USBデバイス16,18,13,17へバスリセット信号を出力する(ステップS110)。したがって、USBホストコントローラ711は、USBポートに接続されたUSBデバイス16,18,13,17の初期化が完了した後に当該USBデバイス16,18,13,17にバスリセット信号を出力することとなるため、USBホストコントローラ711はバスリセット信号の出力後、当該USBデバイス16,18,13,17を確実に認識することができるとともに、当該USBデバイス16,18,13,17との接続を確実に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置にUSBデバイスを接続する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
USBインターフェースは、USBホストとUSBデバイスとの間で通信を行うための2本の信号線(D+/D−)と、USBホストからUSBデバイスへの給電を可能とする電源線(VBUS)とを備えており、パーソナルコンピュータ(PC)やプリンターなどのUSBホストに接続されたフロッピー(登録商標)ディスクドライブ(FDD)などのUSBデバイスへ給電可能に構成されている(例えば特許文献1参照)。ところで、USB規格では、USBデバイスは電源線VBUSやACアダプタなどを介して電源供給されると、USBデバイスの通信速度に応じて信号線D+,D−のうちいずれか一方をプルアップすることにより、USBホストに対してデバイス自身の通信速度を通知するように規定されている。このように、信号線をプルアップする方法の一例として図5に示す方法がある。
【0003】
図5は信号線のプルアップ方法の一例を示す図である。図5に示すように、USBデバイスがUSBホストに接続されていない状態では信号線D(D+/D−)がプルダウンされるように、信号線Dにはプルダウン抵抗Rが接続されている。そして、USBデバイスが有する2本の信号線の一方はデバイス自身の通信速度に応じて電源線VBUSにプルアップ抵抗Rを介して接続されており、USBデバイスがUSBホストに接続されると同時にプルアップされる。この信号線DのプルアップによりUSBホストはUSBデバイスが接続されたことを検出する。そして、USBホストはUSBデバイスの検出後、USBデバイスへバスリセット信号を出力する。USBデバイスはUSBホストからバスリセット信号を受信すると、当該バスリセット信号の出力が解除されるまでの期間(最小10msec)に、USBデバイスが備えるUSBインターフェースの初期設定を行うように構成されている。そして、バスリセット信号の出力が解除され、USBインターフェースの初期設定が完了した後、USBホストによりUSBデバイスのアドレス設定などを行う、いわゆる、エニュメレーション処理が実行される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−202856号公報(段落0015、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、USBホストとUSBデバイスとの間で通信を正常に行うためには、USBデバイスが備えるUSBインターフェースの上記した初期設定のみならず、当該初期設定の前にUSBデバイスが備えるCPUやメモリなどの初期化などが完了している必要がある。ところが、この初期化処理にはバスリセット信号が出力されている期間以上の時間が必要であるため、上記した構成では、まだUSBデバイス自体の初期化が完了していないにも関わらず、USBデバイスがUSBホストに接続されると同時に信号線Dがプルアップされるおそれがある。このように、USBデバイス自体の初期化が完了していなければ、信号線Dのプルアップに基づいてUSBホストがバスリセット信号を出力しても、バスリセット信号の出力後に行われるUSBホストとUSBデバイスとの間の通信は正常に行われないこととなる。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、USBデバイスとの接続を確実に行うことのできる印刷装置およびUSBデバイスの認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる印刷装置は、上記目的を達成するため、USBホストコントローラと、 複数のUSBポートを有するUSBルートハブとを備え、前記USBホストコントローラは、前記複数のUSBポートのうち少なくとも1つの特定ポートへ接続されたUSBデバイスが有するD+/D−信号線のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、前記特定ポートへ接続されたUSBデバイスへバスリセット信号を出力することを特徴としている。
【0008】
また、この発明にかかるUSBデバイスの認識方法は、複数のUSBポートを有するUSBルートハブに接続されたUSBデバイスをUSBホストコントローラにより認識するUSBデバイスの認識方法において、前記USBホストコントローラは、前記USBルートハブが有する前記複数のUSBポートのうち少なくとも1つの特定ポートに接続された前記USBデバイスが有するD+/D−信号線のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、前記特定ポートへ接続された前記USBデバイスへバスリセット信号を出力することを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、USBホストコントローラは、USBルートハブが有する複数のUSBポートのうち少なくとも1つの特定ポートに接続されたUSBデバイスが有するD+/D−信号線のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、当該USBデバイスへバスリセット信号を出力するため、信号線がプルアップされたときに当該USBデバイスの初期化が完了していなくても、待機時間の間に初期化が完了することとなる。したがって、USBホストコントローラは、特定ポートに接続されたUSBデバイスの初期化が完了した後に当該USBデバイスにバスリセット信号を出力することとなるため、USBホストコントローラはバスリセット信号の出力後、当該USBデバイスを確実に認識することができるとともに、当該USBデバイスとの接続を確実に行うことができる。このとき、種々のUSBデバイスが初期化に要する時間を予め求めておき、この求めた値に基づいて待機時間を設定するのが望ましい。
【0010】
また、前記USBホストコントローラは、前記特定ポートへ接続されたUSBデバイスへ前記バスリセット信号を出力した後、再度、前記USBデバイスへ前記バスリセット信号を出力するようにしてもよい。このようにすれば、USBホストコントローラが待機時間の経過後にバスリセット信号を出力したにも関わらず、特定ポートへ接続されたUSBデバイスと正常に接続できなかった場合であっても、再度、当該USBデバイスへバスリセット信号を出力することで、当該USBデバイスとの接続を確実に行うことができる。
【0011】
また、前記特定ポートは、外部機器を接続するための前記USBポートである構成でもよい。このような構成とすれば、USBデバイスとしての外部機器として、USBホストコントローラとの接続について調整が行われた純正品ではなく、外部機器自体の初期化が完了していないにも関わらずD+/D−信号線のプルアップを行うものが接続されたとしても、待機時間の間に当該外部機器の初期化が完了した後にバスリセット信号を出力することとなるため、当該外部機器との接続を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の印刷装置の一実施形態であるフォトプリンタを示す斜視図である。また、図2はフォトプリンタの内部構成の概略を示す図である。このフォトプリンタ10では、プリンタ本体12の内部にはプリント機構50(図2参照)が内蔵されており、フォトプリンタ10の全体の制御を司るコントローラ70(図2参照)からの動作指令に応じて用紙Pへの印刷を実行する。そして、こうして印刷された用紙がプリンタ本体12の前面に排紙される。
【0013】
このプリンタ本体12の前面には、図1に示すように、前面扉14が開閉自在に取り付けられている。この前面扉14はプリンタ本体12の前面を開閉するための蓋である。そして、開状態のときには、プリント機構50から排紙される用紙Pを受けるための排紙トレイとして機能する。また、プリンタ本体12の前面に設けられた各種のメモリカードスロット16をユーザが利用可能な状態となる。つまり、この状態でユーザは印刷対象となる画像ファイルを記憶したメモリカードMをメモリカードスロット16に差し込むことができる。さらに、この実施形態では、記録媒体としてメモリカード以外に音楽CD(Compact Disc:コンパクトディスク)や映像DVD(Digital Versatile Disc:デジタル多用途ディスク)などのディスクDCを利用可能となっている。つまり、プリンタ本体12のベース部分に光ディスクドライブ(ODD:Optical Disc Drive)13が設けられている。
【0014】
また、プリンタ本体12の上面には操作パネル20が設けられる一方、プリンタ本体12の上面の奥の一辺に対してカバー30が開閉自在に取り付けられている。このカバー30は、プリンタ本体12の上面を覆うことのできる大きさに成型された樹脂板であり、開状態では操作パネル20の表面を外部に露出する(図1参照)。一方、カバー30が閉状態に閉じられると、操作パネル20全体を覆う。
【0015】
この操作パネル20には、文字や図形、記号などを表示する表示部22と、この表示部22の周囲に配置されたボタン群24とを備えている。ボタン群24は、図2に示すように、電源のオンオフを行うための電源ボタン24a、メインメニュー画面を呼び出すためのメニューボタン24b、操作を途中でキャンセルしたり用紙Pへの印刷を途中で中断したりするためのキャンセルボタン24c、用紙Pへの印刷実行を指示するための印刷ボタン24d、メモリカードスロット16に挿入されたメモリカードMに編集画像等を保存するための保存ボタン24e、表示部22に表示された複数の選択肢の中から所望の選択肢を選択したりカーソルを移動したりするときに操作される上下左右の各矢印ボタン24f〜24i、この上下左右の各矢印ボタン24f〜24iの中央に配置され各矢印ボタン24f〜24iによって選択されている選択肢に決定したことを指示するためのOKボタン24j、表示部22での画面表示を切り替えるための表示切替ボタン24k、表示部22に表示される左ガイドを選択する左ガイド選択ボタン24l、表示部22に表示される右ガイドを選択する右ガイド選択ボタン24m、排紙トレイとしての機能を備えた前面扉14を開く排紙トレイオープンボタン24nなどで構成されている。
【0016】
また、表示部22の表示内容を確認するために、カバー30には表示部22と同じ大きさの窓32が設けられている。つまり、カバー30が閉状態にあるときにはユーザはこの窓32を介して表示部22の表示内容を確認することができる。一方、カバー30は開状態のときには、表示部22を図1に示すように好みの角度に調整することが可能となっている。
【0017】
このようにカバー30を開状態としたときには、操作パネル20に対して斜め後方に傾斜した状態でカバー30は保持され、用紙Pをプリント機構50へ供給するためのトレイとして利用可能となっている。また、操作パネル20の奥には、プリント機構50の給紙口58が設けられるとともに、ガイド幅が用紙の幅に合うように左右方向にスライド操作される一対の用紙ガイド59,59が設けられている。
【0018】
そして、給紙口58を介して用紙Pがプリント機構50に送り込まれて印刷が実行される。このプリント機構50には、図2に示すように、キャリッジ53が左右方向にループ状に架け渡されたタイミングベルト51により駆動されガイド52に沿って左右に往復動する。このキャリッジ53には、紙端検出センサ57が設けられ、用紙Pの左右端や上下端を検出する。つまり、紙端検出センサ57は、給紙口58にセットされた用紙に対して印刷前にキャリッジ53が左右方向に走査したときにその用紙の左右端を検出して用紙幅の認識を可能にしたり、印刷途中で用紙の後端を検出して用紙長さの認識を可能にしたりする。
【0019】
また、このキャリッジ53には、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック等の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ54が搭載されている。これらのインクカートリッジ54はそれぞれ印刷ヘッド55に接続されている。そして、印刷ヘッド55はインクカートリッジ54からのインクに圧力をかけてノズル(図示省略)から用紙Pに向かってインクを吐出する。この実施形態では、印刷ヘッド55は圧電素子に電圧をかけることにより該圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用しているが、発熱抵抗体(例えばヒータなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。こうして印刷された用紙Pは搬送ローラ56によって開状態の前面扉(排紙トレイ)14へ送り出される。
【0020】
また、プリンタ本体12の背面にはバッテリパックを装着可能となっており、商用電源に接続しなくとも本プリンタ10をバッテリにより動作させることが可能となっている。この点および本プリンタ10がホストコンピュータに接続しなくても使用することができるスタンドアロンプリンタとなっている点により、本プリンタ10は持ち運び容易でどこでも使用できるようになっている。
【0021】
コントローラ70は、図2に示すように、USB(Universal Serial Bus)ホストコントローラ711を備えており、USB規格に従って、Bluetooth(登録商標)規格やIrDA規格の無線通信機器17、ODD13、ホストコンピュータやUSBメモリなどの外部機器18、メモリカードスロット16などの機器が接続されている。そして、このコントローラ70に対して、メモリカードスロット16に挿入されたメモリカードMの画像ファイルのデータなどが入力されるほか、プリント機構50の紙端検出センサ57からの検出信号、操作パネル20のボタン群24やホストコンピュータからの指令信号等が入力される。また、コントローラ70は、メモリカードMに編集画像などを保存するほか、プリント機構50の印刷ヘッド55への制御信号や操作パネルの表示部22への制御信号を出力する。さらに、コントローラ70は、ユーザによるボタン群24の各ボタン操作を受け付けて操作に応じた制御処理を実行する。次にコントローラ70について図3を参照してさらに詳細に説明する。
【0022】
図3はコントローラ70の構成の要部を示すブロック図である。コントローラ70のシステムバス700には、図3に示すように、CPU701、ROM702、RAM703、不揮発性メモリ704、VRAM705、画像処理部707、ASIC708、USBホストコントローラ711などが接続されている。CPU701は、プリント機構50の動作制御を実行するための演算処理などを行う。ROM702は、CPU701の制御に必要なプログラム(ファームウェア)などを記憶する。RAM703には一時的にデータが記憶され、不揮発性メモリ704にはCPU701の制御に必要な各種データやテーブルなどが格納され、VRAM705には表示部22に描画すべき画像データが格納される。
【0023】
また、USBホストコントローラ711にはUSBケーブル810を介してUSBルートハブ800が接続されており、このUSBルートハブ800にはUSBケーブル810を介してメモリカードスロット16が接続されている。そして、USBホストコントローラ711は、USBルートハブ800のUSBインターフェース801を介してメモリカードスロット16(USBインターフェース16a)との通信を行い、メモリカードスロット16に挿入されたメモリカードMなどの外部記憶媒体の画像データを読み取り可能に構成されている。また、USBホストコントローラ711は、編集画像などをメモリカードMに保存するためにメモリカードスロット16(USBインターフェース16a)と通信を行って画像データをメモリカードスロット16に送信する。このUSBホストコントローラ711については後で説明する。
【0024】
画像処理部707は、USBホストコントローラ711を介して読み取られたメモリカードMなどの外部記憶媒体から与えられる画像データに対し必要な画像処理を行う。また、画像処理部707は、表示部22に表示させるためのメニュー画面などのプリンタ固有の画像に対応する表示データを生成する機能を有する。この表示データと画像処理された画像データとが合成されたデータは、画像処理部707からLCDコントローラ709に与えられ、このLCDコントローラ709によって表示部22の表示が制御される。ASIC708は、プリント機構50に設けられている用紙Pを搬送するモータ(図示省略)やタイミングベルト51を回転させるモータ(図示省略)などの速度制御を行う制御回路、印刷ヘッド55の駆動制御を行う制御回路などを内蔵している。そして、ASIC708は、CPU701からの制御信号などに基づいて生成したモータ制御信号や印刷ヘッド55の制御信号を駆動回路(ドライバ)710に送出する。また、センサ57などの検出データは、ASIC708を介してCPU701に取り込まれる。
【0025】
次に、図3を参照してUSBホストコントローラ711を介して接続されたUSB接続機器(デバイス)16,18,13,17について説明する。図3に示すように、USBホストコントローラ711にはケーブル810を介して複数のUSBポートPort1〜Port4を有するUSBルートハブ800が接続されている。そして、USBホストコントローラ711とUSBルートハブ800のUSBインターフェース801との間で、USBの物理的な接続やデータ通信が確立されるように構成されている。また、この実施形態では、USBルートハブ800のUSBポートPort1,Port3,Port4には、それぞれ、メモリカードスロット16、ODD13および無線通信機器17がUSBケーブル810を介して接続されている。なお、メモリカードスロット16、ODD13および無線通信機器17はプリンタ本体12に内蔵されており、USBポートPort2と接続されたUSBコネクタ(図示省略)がUSBポートPort2に外部機器18を接続できるよにプリンタ本体12の外部に露出するように配設されている。
【0026】
また、USBホストコントローラ711と、メモリカードスロット16、ODD13および無線通信機器17がそれぞれ備えているUSBインターフェース16a,13a,17aとは、USBルートハブ800のUSBインターフェース801を介してUSBの物理的な接続やデータ通信が確立されるように構成されている。また、外部機器18がUSBポートPort2に接続されている場合には、他のUSB接続機器と同様に、USBホストコントローラ711と、外部機器18のUSBインターフェース18aとは、USBルートハブ800のUSBインターフェース801を介してUSBの物理的な接続やデータ通信が確立されるように構成されている。以上のように、メモリカードスロッ16、外部機器18、ODD13、無線通信機器17が本発明の「USBデバイス」に相当している。
【0027】
なお、本実施形態では、フォトプリンタ10の電源が投入されれば、コントローラ70が備えるCPU701やメモリ702〜705、ASIC708、USBホストコントローラ711などの初期化が行われるように構成されている。そして、USBホストコントローラ711の初期化が完了すれば、電源線VBUSを介してUSBルートハブ800、メモリカードスロッ16、外部機器18、ODD13、無線通信機器17に電源供給が開始される。この電源線VBUSを介した電源供給(VBUS出力)を受けて、メモリカードスロッ16、外部機器18、ODD13、無線通信機器17は、それぞれのデバイスの通信速度(フルスピード、ロースピード、ハイスピード)に応じて信号線D+,D−をプルアップすることにより、自己の通信速度をUSBホストコントローラ711に通知するように構成されている。そして、USBホストコントローラ711はこの信号線D+,D−のプルアップに応じて各USBデバイス16,18,13,17にバスリセット信号を出力するとともに、各USBデバイス16,18,13,17にアドレス設定などを行うエニュメレーション処理を実行して各USBデバイス16,18,13,17を認識し、各USBデバイス16,18,13,17との接続処理を行う。次に、フォトプリンタ10の電源が投入されたときにUSBホストコントローラ711がUSB接続機器を認識するUSB認識処理の一例について、図4を参照して説明する。
【0028】
図4はUSB認識処理の一例を示す図である。なお、本実施形態では説明を簡単にするために、メモリカードスロット16、外部機器18、ODD13、無線通信機器17のそれぞれはフルスピードの通信能力を有するUSBデバイスであり、USBホストコントローラ711から電源線VBUSを介して電源が供給(VBUS出力)されると信号線D+がプルアップされるものとして説明を行うが、各USBデバイス16,18,13,17の通信速度についてはロースピードで信号線D−がプルアップされるものであってもよいし、ハイスピードの通信能力を有するUSBデバイス16,18,13,17であってもよい。まず、フォトプリンタ10の電源が投入されるとコントローラ70の初期化が開始される(ステップS101)。そして、USBホストコントローラ711の初期化が完了すれば(ステップS102)、USBルートハブ800の検出と接続が行われる(ステップS103)。
【0029】
次に、USBルートハブ800のUSBポートPort1〜Port4に接続された各USBデバイス16,18,13,17に対して電源線VBUSを介して電源を供給し(VBUS出力、ステップS104)、各USBポートPort1〜Port4の状態が変化したかどうか、具体的には信号線D+がプルアップされたかどうかを検出する(ステップS105)。そして、USBホストコントローラ711により、各USBポートPort1〜Port4のうちいずれか1つ、すなわちメモリカードスロッ16、外部機器18、ODD13、無線通信機器17のうちいずれかの信号線D+がプルアップされたことが検出されれば(ステップS106〜S109)、USBホストコントローラ711は予め設定された待機時間(200msec〜250msec)が経過するまで待機する(ステップS110)。
【0030】
そして、USBホストコントローラ711は、信号線D+のプルアップが検出されたUSBデバイスに対してバスリセット信号を出力する(ステップS111)。具体的には、最小10msecの間、信号線D+,D−の電圧をローレベルに維持することでバスリセット信号を出力する。USBホストコントローラ711は、バスリセット信号の出力後、ディスクリプタを取得することによりUSBデバイス情報を取得し(ステップS112)、USBデバイスのアドレスを設定し(ステップS113)、最後にUSBデバイスの構成を行って(ステップS114)、ステップS105に進む。
【0031】
ステップS105において、他に信号線D+がプルアップされたUSBデバイスが存在すれば、当該USBデバイスに対して、再度、ステップS110〜S114の処理を実行する。そして、ステップS105においてNOと判定されれば、すなわち、接続された全てのUSBデバイス16,18,13,17についての認識処理が完了すれば、USB認識処理を終了する。以上のように、この実施形態では全てのUSBポートPort1〜Port4を本発明の「特定ポート」として機能させている。
【0032】
以上のように、この実施形態では、USBホストコントローラ711は、USBルートハブ800が有する複数のUSBポートPort1〜Port4に接続されたUSBデバイス16,18,13,17の信号線D+,D−のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間(200msec〜250msec)の経過後に、当該USBデバイス16,18,13,17へバスリセット信号を出力するため、信号線がプルアップされたときに当該USBデバイス16,18,13,17の初期化が完了していなくても、待機時間の間に初期化が完了することとなる。したがって、USBホストコントローラ711は、USBポートPort1〜Port4に接続されたUSBデバイス16,18,13,17の初期化が完了した後に当該USBデバイス16,18,13,17にバスリセット信号を出力することとなるため、USBホストコントローラ711はバスリセット信号の出力後、当該USBデバイス16,18,13,17を確実に認識することができるとともに、当該USBデバイス16,18,13,17との接続を確実に行うことができる。このとき、種々のUSBデバイス16,18,13,17が初期化に要する時間を予め求めておき、この求めた値に基づいて待機時間を設定するのが望ましい。
【0033】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、USBホストコントローラ711は、USBデバイス16,18,13,17へバスリセット信号を出力した後、エニュメレーション処理が失敗すれば、再度、USBデバイス16,18,13,17へバスリセット信号を出力するようにしてもよい。このようにすれば、USBホストコントローラ711が待機時間の経過後にバスリセット信号を出力したにも関わらず、USBポートPort1〜Port4へ接続されたUSBデバイス16,18,13,17と正常に接続できなかった場合であっても、再度、USBデバイス16,18,13,17へバスリセット信号を出力することで、USBデバイス16,18,13,17との接続を確実に行うことができる。
【0034】
また、上記した実施形態では、全てのUSBポートPort1〜Port4を本発明の「特定ポート」として機能させたが、USBポートPort1〜Port4のうち一部を本発明の「特定ポート」として機能させてもよい。この場合、外部機器18を接続するためのUSBポートPort2を本発明の「特定ポート」として機能させることで以下の効果を奏することができる。すなわち、プリンタ本体12に内蔵されるメモリカードスロット16、ODD13および無線通信機器17は純正品としてフォトプリンタ10を構成するものであるため、製品の設計段階で、各々のUSBデバイス16,13,17は、内部のCPU、メモリ等の初期化が完了した後にUSBホストコントローラ711のVBUS出力に応じて信号線D+のプルアップを行うように構成すれば、USBホストコントローラ711は信号線D+のプルアップ検出後、待機時間が経過する前にバスリセット信号を出力しても正常にUSB機器の認識処理(エニュメレーション処理)を行えることとなる。
【0035】
一方、外部機器18としてUSBポートPort2に接続されるUSBデバイスが信号線D+,D−をプルアップするタイミングは、外部機器18の設計に依存するため、信号線D+,D−がプルアップされても外部機器18を構成するCPU、メモリ等の初期化が完了していないおそれがある。特に、外部機器18を構成するICチップ等の信号処理速度が遅く、電源が投入され後、当該ICチップ等の初期化に相応の時間を要するものであれば、USBホストコントローラ711がバスリセット信号を出力したときに外部機器18自体の初期化が完了していない蓋然性が高くなる。しかしながら、USBポートPort2を本発明の「特定ポート」として機能させることで、USBホストコントローラ711は、待機時間が経過し、外部機器18の初期化が完了した後にバスリセット信号を出力することとなるため、外部機器18との接続を確実に行うことができる。したがって、上記したもののほか、機器自体の初期化が完了するのに時間がかかる外部機器18など、どのような外部機器18を接続しても確実に当該外部機器18との接続を行うことができる。
【0036】
また、上記した実施形態では、USBルートハブ800にUSBポートが4つある構成について説明したが、USBポートの数としてはこれに限られるものではなく、USBルートハブ800にさらにUSBハブを接続することでUSBポートの数を増加することもできる。また、上記実施形態では、インクカードリッジ方式のフォトプリンタ10を例として説明したが、その他のインクジェット式プリンタ等の印刷装置にも本発明を適用してもよい。また、USB機器の接続において本発明を広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の印刷装置の一実施形態であるフォトプリンタを示す斜視図。
【図2】フォトプリンタの内部構成の概略を示す図。
【図3】コントローラの構成の要部を示すブロック図。
【図4】USB認識処理の一例を示す図。
【図5】信号線のプルアップ方法の一例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10…フォトプリンタ(印刷装置)、13…ODD(USBデバイス)、16…メモリカードスロット(USBデバイス)、17…無線通信機器(USBデバイス)、18…外部機器(USBデバイス)、D+,D−…信号線、Port1〜Port4…USBポート、711…USBホストコントローラ、800…USBルートハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
USBホストコントローラと、
複数のUSBポートを有するUSBルートハブとを備え、
前記USBホストコントローラは、
前記複数のUSBポートのうち少なくとも1つの特定ポートへ接続されたUSBデバイスが有するD+/D−信号線のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、前記特定ポートへ接続されたUSBデバイスへバスリセット信号を出力することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記USBホストコントローラは、
前記特定ポートへ接続されたUSBデバイスへ前記バスリセット信号を出力した後、再度、前記USBデバイスへ前記バスリセット信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記特定ポートは、外部機器を接続するための前記USBポートであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
複数のUSBポートを有するUSBルートハブに接続されたUSBデバイスをUSBホストコントローラにより認識するUSBデバイスの認識方法において、
前記USBホストコントローラは、前記USBルートハブが有する前記複数のUSBポートのうち少なくとも1つの特定ポートに接続された前記USBデバイスが有するD+/D−信号線のプルアップを検出した時から予め設定された待機時間の経過後に、前記特定ポートへ接続された前記USBデバイスへバスリセット信号を出力することを特徴とするUSBデバイスの認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−151415(P2009−151415A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326866(P2007−326866)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】