説明

印刷装置の搬送制御機構及び搬送制御方法

【課題】インクジェットプリンタ等の印刷装置において、用紙障害時における画像形成部にある記録ヘッドの破損を防止し、搬送経路に滞留する用紙の取り除き作業を容易にする。
【解決手段】搬送経路上のプラテンベルト160上流において、搬送経路上を搬送されている用紙の浮き上がりを検出するジャム検出部331と、搬送経路に含まれ、ヘッドユニット110による画像形成が行われる画像形成経路CR1と、プラテンベルト160を搬送経路CRから分離させて退避させる退避機構と、搬送経路上を搬送されている用紙の排出処理を切り換える排紙制御部334とを備え、排紙制御部334は、ジャム検出部331が、用紙の浮き上がりを検出した場合に、退避機構によりプラテンベルト160を退避させるとともに、退避させられたプラテンベルト160上に、搬送中の用紙を排紙する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなど、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置の搬送制御機構及び搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置では、画像形成処理の高速化の要請があり、多数枚の用紙に対して連続して画像形成処理を行う場合、複数枚の用紙が短い間隔で連続して給紙部から給紙される。このように高速で画像形成処理を行う画像形成装置では、搬送経路の一部で用紙のジャムが発生すると、搬送経路中に多数枚の用紙が存在する状態で装置の動作が停止する。このジャム解除作業時に搬送経路中にある全ての用紙を取り除くことは、ジャム解除作業が煩雑になるとともに、使用可能な用紙も破棄することとなって資源の無駄となる。
【0003】
従来では、これらに応える技術として、搬送経路の一部で用紙のジャムが発生したときに、ジャムした記録媒体より搬送方向下流側において記録処理が完了している搬送途中の記録媒体を排紙できるようにすることである。(特許文献1)
ここで、両面印刷を行う印刷装置において印刷用紙を自動反転させる手法として、印刷用紙を循環させる経路中にスイッチバック用の経路を設け、印刷用紙をスイッチバックすることにより表裏を反転させる方式が広く用いられている。
【特許文献1】特開2002−137849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、用紙のジャムが発生時の緊急停止に該スイッチバック機構に印刷用紙が滞留する場合がある。このような場合、上述した特許文献1に開示された技術では、スイッチバック経路の用紙を完全に廃止することができないことから、該印刷用紙はユーザー自身によって取り除く必要があり、そのうえ、スイッチバック機構が複雑であるので、そのジャム解除作業はさらに煩雑となり、ユーザーの負担が増大する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、用紙障害時における画像形成部にある記録ヘッドの破損の可能性を極力防止し、搬送経路に滞留する用紙の取り除き作業を容易にすることができる印刷装置の搬送制御機構及び搬送制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置の搬送制御機構であって、搬送経路上の画像形成部上流において、搬送経路上を搬送されている用紙の浮き上がりを検出する浮上検出部と、搬送経路に含まれ、画像形成部による画像形成が行われる画像形成経路と、画像形成経路を搬送経路から分離させて退避させる退避機構と、搬送経路上を搬送されている用紙の排出処理を切り換える排紙制御部とを備え、排紙制御部は、浮上検出部が、用紙の浮き上がりを検出した場合に、退避機構により画像形成経路を退避させるとともに、退避させられた画像形成経路上に、搬送中の用紙を排紙する。
【0007】
このような本発明によれば、浮上検出部が用紙の浮きを検出した場合には、退避機構により、画像形成経路が搬送経路から分離するので、搬送経路中の用紙を画像形成経路上に収集でき、用紙を一括して除去することができる。また、画像形成部にある記録ヘッド等に用紙が衝突することを回避し、記録ヘッドが破損するのを防止することができる。
【0008】
上記発明において、浮上検出部は、用紙の重送を検出する機能を備え、退避機構は、用紙の重送を検出した場合にも、画像形成経路を退避させることが好ましい。この場合には、浮上検出部は、用紙重送についても検出することができるので、用紙の重送によって記録ヘッド等に用紙が衝突することを回避し、記録ヘッドが破損するのを防止することができる
上記発明において、搬送経路の駆動及び停止を制御する搬送経路制御部をさらに備え、搬送経路は、用紙を供給する給紙経路から画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、通常搬送路に分岐接続され、通常搬送路から用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常搬送路に戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路とを含み、搬送経路制御部は、退避機構により画像形成経路が退避された場合に、退避させられた画像形成経路上に、反転経路中の用紙を排紙することが好ましい。この場合には、反転経路を有する印刷装置において、用紙障害が生じた場合には、反転経路内に滞留する用紙を搬送経路制御部が画像形成経路側へ搬送することで、退避機構により画像形成経路上に収集できる。そのため、機構が複雑な反転経路に残留した用紙を容易に除去することができる。
【0009】
他の発明は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置の搬送制御方法であって、
(1)搬送経路上の画像形成部上流において、浮上検出部によって搬送経路上を搬送されている用紙の浮き上がりを検出する浮上検出ステップと、
(2)浮上検出部が、用紙の浮き上がりを検出した場合に、搬送経路に含まれ、画像形成部による画像形成が行われる画像形成経路を、搬送経路から分離させて退避させるとともに、退避させられた画像形成経路上に、搬送中の用紙を排紙する排紙制御ステップと
を有する。
【0010】
このような他の発明によれば、浮上検出部が用紙の浮きを検出した場合には、退避機構により、画像形成経路が搬送経路から分離するので、搬送経路中の用紙を画像形成経路上に収集でき、用紙を一括して除去することができる。また、画像形成部にある記録ヘッド等に用紙が衝突することを回避し、記録ヘッドが破損するのを防止することができる。
【0011】
上記発明において、浮上検出ステップにおいて、用紙の重送を検出し、排紙制御ステップでは、用紙の重送を検出した場合にも、画像形成経路を退避させることが好ましい。この場合には、浮上検出部は、用紙重送についても検出することができるので、用紙の重送によって記録ヘッド等に用紙が衝突することを回避し、記録ヘッドが破損するのを防止することができる。
【0012】
上記発明において、搬送経路は、用紙を供給する給紙経路から画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、通常搬送路に分岐接続され、通常搬送路から用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常搬送路に戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路とを含み、排紙制御ステップでは、画像形成経路が退避された場合に、退避させられた画像形成経路上に、反転経路中の用紙を排紙することが好ましい。この場合には、反転経路を有する印刷装置において、用紙障害が生じた場合には、反転経路内に滞留する用紙を搬送経路制御部が画像形成経路側へ搬送することで、退避機構により画像形成経路上に収集できる。そのため、機構が複雑な反転経路に残留した用紙を容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発によれば、インクジェットプリンタ等の印刷装置において、用紙障害時における画像形成部にある記録ヘッドの破損を防止し、搬送経路に滞留する用紙の取り除き作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す構成図である。本実施形態では、印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタを例に説明する。
【0015】
図1に示すように印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置であり、搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、この給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されてる。
【0016】
給紙系搬送路FRにおいて、印刷用紙の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。また、印刷済の印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0017】
サイド給紙台120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに搬送方向側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられたプラテンベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0018】
印刷済の印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0019】
一方、印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。このため、印刷装置100は、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙は、反転経路SRに引き込まれる。
【0020】
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させてることにより用紙の表裏を反転させる、いわゆるスイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙されて、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0021】
なお、本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。これにより、利用者が誤って反転動作中の印刷用紙を引き抜いてしまうことを防ぐことができる。また、排紙台150は、本来印刷装置100に備えられているものであり、排紙台150内の空間を利用してスイッチバックを行うことにより、印刷装置100内に、別途スイッチバック用の空間を設ける必要がなくなる。したがって、筐体のサイズが増大してしまうことを防ぐことができる。さらに、排紙経路と反転経路とを共用しないため、スイッチバック処理と他の用紙の排紙とを並行して行うことができる。
【0022】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済の印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の搬送経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、用紙の送り出しを行う。
【0023】
なお、本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、上述したように通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。図2は、給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した説明図である。なお、同図では、駆動部を構成するローラの個数は適宜省略している。
【0024】
給紙系搬送路FRには、サイド給紙台120からの給紙を行うためのサイド給紙駆動部220、給紙トレイ130(130a、130b、130c、130d)からの給紙を行うためのトレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…が備えられている。これらによって、レジスト部Rに用紙を送り出す給紙手段が構成されている。
【0025】
さらに、上述した給紙系搬送路FRにおけるいずれの駆動部(トレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…)も複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、給紙台又は給紙トレイに積載された印刷用紙を1枚ずつ取り込んで、レジスト部R方向に搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、給紙を行う給紙機構に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0026】
また、給紙系搬送路FRには、搬送センサが複数個配置され、給紙系搬送路FRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。すなわち、各搬送センサは、印刷用紙の有無又は印刷用紙の先端を検出するセンサであり、例えば、搬送経路上に複数の搬送センサを適当な間隔で並べ、給紙側に設けられた搬送センサが印刷用紙を検出してから所定時間内に搬送方向側の搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャムが発生したと判断することができる。
【0027】
これら搬送センサのうち、用紙の送り出しを行うレジスト部R手前のレジストセンサは、搬送中の用紙サイズを計測し、例えば、用紙の通過速度及び通過時間に基づいて、通過中の用紙のサイズを測定したり、サイド給紙駆動部220、トレイ1駆動部230a等を駆動させてから所定時間内に搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャム(給紙エラー)が発生したと判断することができる。
【0028】
通常経路CRは、循環搬送路の一部を構成し、用紙を供給する給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て、排紙経路DRへ至る経路であり、この通常経路CR上において用紙上面に画像が形成される。この通常経路CRには、レジスト部Rに印刷用紙を導くレジスト駆動部240、ヘッドユニット110の対向面に設けられたプラテンベルト160を無端移動させるために駆動するベルト駆動部250、搬送方向側に順に配置される第1上面搬送駆動部260及び第2上面搬送駆動部265、排紙口140に印刷済の用紙を導く上面排出駆動部270、裏面印刷用に印刷用紙を反転経路SRに引き込む駆動手段が備えられている。いずれの駆動部も1又は複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、搬送経路に沿って印刷用紙を1枚ずつ搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、印刷用紙の搬送状況に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0029】
さらに、通常経路CRにも搬送センサが複数個配置され、通常経路CRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。さらに、レジスト部Rにおいても適切に印刷用紙が搬送されていることを確認できるようになっている。通常経路CRでは、駆動部対応に搬送センサが設けられており、通常経路CRのどの駆動部で搬送ジャムが発生したかを特定することができるようになっている。
【0030】
反転経路SRは、通常経路CRに分岐接続され、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復(スイッチバック)させて通常経路CRに戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路及び搬送機構であり、この反転経路SRには、用紙を反転させて合流地点に導く反転駆動部281が備えられている。そして、反転経路SRでは、通常経路CRと異なる速度で搬送が可能であり、通常経路CRから用紙を引き継ぐ際に、加速・減速させたり、スイッチバックの際の停止時間を延長したり短縮したりすることができる。
【0031】
そして、本実施形態においては、ある印刷用紙を給紙した後、その印刷用紙に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙が排紙される前に、後続の印刷用紙を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して1/2の生産性を確保することができる。
【0032】
前記プラテンベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。また、プラテンベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つのインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0033】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0034】
(搬送制御機構)
本実施形態において、用紙搬送機構にかかる制御は、演算処理部330において行われる。図3は、本実施形態の用紙搬送機構にかかるモジュールを示すブロック図である。図3に示すように、本用紙搬送機構にかかるモジュールとして、ジャム検出部331と、緊急停止機構332と、搬送経路制御部333と、排紙制御部334とを備えている。
【0035】
ジャム検出部331は、ヘッドユニット110の上流に設置された浮きセンサ301及びその他の搬送路センサからの検出結果に基づいて、搬送経路中の障害発生を検出するモジュールである。本実施形態において、ジャム検出部331は、さらに用紙の重送を検出する重送検出部331aと、用紙端の浮き上がりを判別する先端後端判別部331bとを備えている。
【0036】
重送検出部331a及び先端後端判別部331bは、搬送経路中におけるジャムのうち、特にレジスト部Rからヘッドユニット110に至る経路中における用紙の浮き上がりと、複数枚の用紙が重なって搬送される、いわゆる重送を検出するモジュールである。浮きセンサ301は、搬送経路上のヘッドユニット110上流において用紙の浮き上がりを検出し、この浮きセンサ301が用紙の浮きを検出した場合に、重送検出部331a及び先端後端判別部331bは、この浮きセンサ301の前後に位置する他の搬送路センサからの検出信号を解析し、当該浮きが用紙の先端及び後端のいずれで生じているものなのかを検出する。
【0037】
搬送経路制御部333は、退避機構とプラテンベルト160、及び反転経路SR及び通常経路CRを含む各搬送経路を駆動させる各駆動機構の駆動及び停止を制御するモジュールである。排紙制御部334は、排紙のための駆動機構を制御するモジュールである。また、これらの搬送経路制御部333や排紙制御部334は、緊急停止後に搬送経路に停滞した用紙を排出する、いわゆるリカバリー動作をも制御する。
【0038】
緊急停止機構332は、緊急停止に際し、搬送や印刷処理を停止させるタイミングや動作速度、動作方向を制御するとともに、継続して動作すべき搬送経路については、緊急停止をせずに、動作を継続させる制御を行う。
【0039】
そして、本実施形態では、これらの緊急停止機構332や搬送経路制御部333,排紙制御部334による制御によって、搬送経路における浮き上がりや重送等の障害(ジャム)を検出した場合に、プラテンベルト160を退避機構によって退避させ、通常経路CR又は反転経路SRにおける往路に位置する用紙については、搬送ローラを一時停止させたり、用紙を排出する等の制御を行う。
【0040】
特に、浮きセンサが、図5(a)に示すように、用紙の先端を検出した場合と、図5(b)に示すように、用紙の後端を検出した場合とで、搬送経路の駆動及び停止を変化させる。具体的に、搬送経路制御部333は、浮きセンサ301が、用紙の先端の浮き上がりを検出した場合、搬送経路へ用紙を供給する給紙機構を緊急停止させるとともに、既に搬送経路上で搬送中の用紙については継続して搬送する。一方、搬送経路制御部333は、浮きセンサ301が用紙の後端の浮き上がりを検出した場合には、プラテンベルト160の搬送駆動を停止させるとともに、図5(c)に示すように、退避機構によりプラテンベルト160を退避させる。
【0041】
なお、上述した退避機構としては、プラテンベルト160は、プラテンベルト160を周回させるローラ161及び162、及びこれらの駆動部をひとまとまりにして下降させる装置であり、この下降させる装置としては、例えば、アクチュエーターやモーター、或いはスプリングなどの付勢手段による弾性力で下方に移動させる機構が考えられる。また、本実施形態では、プラテンベルト160を下降させる場合を例とするが、プラテンベルト160上の用紙がヘッドユニット110に衝突するのを防止できる方向であれば、いずれの方向に退避させるようにしてよい。
【0042】
(搬送制御方法)
上述した搬送制御機構により、本実施形にかかる搬送制御方法を実施することができる。図4(a)は、本実施形態にかかる用紙搬送機構の動作を示すフローチャート図であり、図5は用紙搬送機構の動作を模式的に示す説明図である。
【0043】
図4(a)に示すように、通常の動作により、搬送経路にて用紙の搬送及び印刷が行われている間(S101)、ヘッドユニット110の上流において、用紙の浮き上がりを監視する(S102)。用紙の浮き上がりが検知されない場合(S102における”N”)は、通常動作が継続される(S101)。
【0044】
ステップS102において、ヘッドユニット110の上流で用紙の浮き上がりが検知されると(S102における”Y”)、緊急停止機構332の制御により、直ちにレジスト部Rのレジストローラを緊急停止する(S103)。このレジストローラの緊急停止後、検出した浮きが用紙の先端であるか、後端であるかを判断する(S104)。
【0045】
ステップS104において、用紙の後端の浮き上がりが検知された場合(S104における“後端”)、退避機構によって画像形成経路部(プラテンベルト160、駆動ローラ161、従動ローラ162等)を緊急停止するとともに、退避機構により、画像形成経路部を下降させ(S105)、図5(c)に示すように画像形成経路部を、通常の搬送経路から分離するように退避させる。その後、プラテンベルト160よりも下流の用紙については、通常の搬送経路を搬送して、排紙経路DRから排出する。
【0046】
一方、ステップS104において、用紙の先端の浮き上がりが検知された場合には、S105のステップを行わず、レジストローラを停止したまま、プラテンベルト160よりも下流の用紙を、排紙経路DRから排出する。
【0047】
その後、用紙排出終了(S107)まで(S107における”N”)、既に搬送経路上で搬送中の用紙については下流側用紙搬送動作を継続し(S106)、全ての用紙の排出が終了した後(S107における”Y”)、下流側用紙搬送動作を停止(S108)して、用紙搬送を終了する。
【0048】
なお、本実施形態において、排紙制御部334は、上述したステップS106における用紙搬送動作において、下降されたプラテンベルト160を排紙台として利用する制御を行う。図4(b)は、本実施形態にかかる用紙搬送機構の動作を示すフローチャート図であり、図6は、用紙搬送機構の動作を模式的に示す説明図である。
【0049】
図6に示すように、用紙の通常経路CRは、プラテンベルト160等から構成される画像形成経路CR1と、用紙を画像形成後、排紙経路DRまで搬送する下流側搬送経路CR2を有し、退避機構は、画像形成経路CR1を搬送経路から分離させて退避させる。搬送経路制御部333及び排紙制御部334は、退避機構によりプラテンベルト160が退避された場合に、退避させられているプラテンベルト160上に、反転経路SR中の用紙を排紙する。
【0050】
具体的に、この画像形成経路CR1への排紙は、本実施形態では、図4で示すように、プラテンベルト部の緊急停止・下降(S105)が行われた際に、レジストローラーを低速に駆動させて、図6で示すように、退避させられた該画像形成経路CR1上に、搬送経路で搬送中の用紙を排紙する。
【0051】
具体的には、図4(a)のステップS106において、図4(b)に示すように、下流側において用紙搬送動作を継続する際、プラテンが下降されているか否かに応じて(S201)、反転経路に用紙があるか否かを判断し(S203)、プラテンベルトが下降され、且つ反転経路に用紙がある場合には(S201における“Y”及びS203における“Y”)、反転経路SR内に残留した用紙を、下降されたプラテンベルト160上に排出した後、プラテンベルト160よりも下流の用紙を排出する(S202)。それ以外の場合は、反転経路SR内のリカバリーは行わず、下流の用紙の排出のみを実行する(S202)。
【0052】
なお、本実施形態では、反転経路中に用紙が残留している場合を例に説明したが、反転経路のみならず、他の経路(例えば、下流経路CR2)に残留している用紙も、プラテンベルト160上に排出するようにしてもよい。この場合は、上記ステップS204において、下流経路の駆動手段を逆転させて、搬送中の用紙が全てプラテンベルト160上に収集させる。
【0053】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、用紙の浮上を検出した際に、その浮きが用紙の先端であるか後端であるかに従って、レジストローラの緊急停止後の動作を変更する。これによりヘッドユニット110と用紙の浮き部分との接触を回避して、ヘッドユニット110を保護できるとともに、印刷完了の用紙については、下流側搬送経路CR2により通常の排紙経路DRに排出させることで、印刷物の無駄を省くことができ、印刷未完了の用紙については、印刷処理を緊急停止したり、用紙を他の経路に退避させるなどして記録ヘッドの保護を優先させる等、状況に即した対応を取ることができる。
【0054】
詳述すると、本実施形態では、用紙の先端に浮きを検出したとき、給紙機構の緊急停止により、印刷未完了の用紙については、画像形成部の記録ヘッドの破損防止を優先させることができる一方、画像形成経路CR1にある印刷中の印刷物及び下流側搬送経路CR2にある印刷が完了した用紙については、通常通りの通常経路CRを経由して排紙することができ、用紙の無駄を省くことができる。
【0055】
他方、用紙の後端に浮きを検出した場合には、その浮きが検出された画像形成経路CR1上の用紙については印刷処理が途中まで進行しているため、この印刷未完了の用紙を、退避機構により画像形成経路CR1ごと、ヘッドユニット110から離間させ、用紙がヘッドユニット110に接触して破損することを防止することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、浮上検出部が用紙の浮きを検出した場合に、退避機構により画像形成経路CR1が退避されたとき、退避させられた画像形成経路CR1上に、反転経路SR中の用紙を排紙するため、反転経路SRにおいて、用紙障害が生じた場合には、反転経路SR内に滞留する用紙を、下降されたプラテンベルト160上へ搬送することで、用紙を排出することができ、機構が複雑な反転経路SRに残留した用紙を容易に除去することができる。
【0057】
以上述べたように、本実施形態によれば、用紙の浮き上がりを用紙の先端及び後端で検出することで、用紙が画像形成部の記録ヘッドに衝突することを防止することができ、且つ、搬送経路の一部で印刷媒体のジャムが生じた場合に、ユーザーが行うジャム解除作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す構成図である。
【図2】実施形態に係る給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した説明図である。
【図3】実施形態に係る用紙搬送機構にかかるモジュールを示すブロック図である。
【図4】実施形態にかかる用紙搬送機構の動作を示すフローチャート図である。
【図5】実施形態に係る用紙浮きの検出及び搬送機構の動作を模式的に示す説明図である。
【図6】実施形態に係る用紙搬送機構の動作を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
CR…通常経路
DR…排紙経路
FR…給紙系搬送路
R…レジスト部
SR…反転経路
100…印刷装置
110…ヘッドユニット
120…サイド給紙台
130…給紙トレイ
140…排紙口
150…排紙台
160…プラテンベルト
161…駆動ローラ
162…従動ローラ
170,172…切替機構
220…サイド給紙駆動部
230a,230b…トレイ駆動部
240…レジスト駆動部
250…ベルト駆動部
260…第1上面搬送駆動部
265…第2上面搬送駆動部
270…上面排出駆動部
281…反転駆動部
301…センサ
330…演算処理部
331…ジャム検出部
331a…重送検出部
331b…先端後端判別部
332…緊急停止機構
333…搬送経路制御部
334…排紙制御部
340…操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置の搬送制御機構であって、
前記搬送経路上の前記画像形成部上流において、該搬送経路上を搬送されている前記用紙の浮き上がりを検出する浮上検出部と、
前記搬送経路に含まれ、前記画像形成部による画像形成が行われる画像形成経路と、
前記画像形成経路を前記搬送経路から分離させて退避させる退避機構と、
前記搬送経路上を搬送されている用紙の排出処理を切り換える排紙制御部と
を備え、前記排紙制御部は、前記浮上検出部が、前記用紙の浮き上がりを検出した場合に、前記退避機構により前記画像形成経路を退避させるとともに、退避させられた該画像形成経路上に、搬送中の前記用紙を排紙する
ことを特徴とする印刷装置の搬送制御機構。
【請求項2】
前記浮上検出部は、用紙の重送を検出する機能を備え、
前記退避機構は、前記用紙の重送を検出した場合にも、前記画像形成経路を退避させる
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の搬送制御機構。
【請求項3】
前記搬送経路の駆動及び停止を制御する搬送経路制御部をさらに備え、
前記搬送経路は、
前記用紙を供給する給紙経路から前記画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、
前記通常搬送路に分岐接続され、該通常搬送路から前記用紙が受け渡され、該用紙を往復させて該通常搬送路に戻すことにより該用紙の表裏を反転させる反転経路と
を含み、
前記搬送経路制御部は、前記退避機構により前記画像形成経路が退避された場合に、退避させられた該画像形成経路上に、前記反転経路中の用紙を排紙する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置の搬送制御機構。
【請求項4】
搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置の搬送制御方法であって、
前記搬送経路上の前記画像形成部上流において、浮上検出部によって該搬送経路上を搬送されている前記用紙の浮き上がりを検出する浮上検出ステップと、
前記浮上検出部が、前記用紙の浮き上がりを検出した場合に、前記搬送経路に含まれ、前記画像形成部による画像形成が行われる画像形成経路を、該搬送経路から分離させて退避させるとともに、退避させられた該画像形成経路上に、搬送中の前記用紙を排紙する排紙制御ステップと
を有することを特徴とする印刷装置の搬送制御方法。
【請求項5】
前記浮上検出ステップにおいて、用紙の重送を検出し、
前記排紙制御ステップでは、前記用紙の重送を検出した場合にも、前記画像形成経路を退避させる
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置の搬送制御方法。
【請求項6】
前記搬送経路は、
前記用紙を供給する給紙経路から前記画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、
前記通常搬送路に分岐接続され、該通常搬送路から前記用紙が受け渡され、該用紙を往復させて該通常搬送路に戻すことにより該用紙の表裏を反転させる反転経路と
を含み、
前記排紙制御ステップでは、前記画像形成経路が退避された場合に、退避させられた該画像形成経路上に、前記反転経路中の用紙を排紙する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の印刷装置の搬送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−131859(P2010−131859A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309928(P2008−309928)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】