説明

印刷装置及び印刷方法

【課題】 搬送量が大きな印刷モードに対しては印刷処理のスループットを改善しながらも、搬送量が小さな印刷モードに対しては搬送モータの発熱を有効に抑制可能な印刷装置等を実現する。
【解決手段】(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置としてのインクジェットプリンタは、所定の移動方向へ移動しながら用紙等の媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、を備えている。そして、前記ヘッドを移動させながらインクを吐出する移動動作と、前記搬送モータに前記媒体を搬送させる搬送動作と、を交互に繰り返して印刷を行うようになっている。
【0003】
このようなプリンタのなかには、印刷処理のスループットを高める目的で、前記移動動作中に行われるインクの吐出動作の終了時点を起点に、用紙の搬送動作を開始させるものがある。また、これに加えて、搬送動作の終了時点を予め予測しておき、前記搬送動作の終了時点に先行させて、次回の移動動作を開始することも行い、これによって、前記搬送動作が終了したら即座に前記次回のインクの吐出動作を開始して、更なるスループットの向上を図っているものもある(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2001−232882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、搬送動作の搬送量が大きい印刷モードの場合には、前記次回の移動動作の開始待ち時間が長くなることがある。そして、この開始待ち時間を短くする目的で、搬送動作の速度プロファイルの加速度を大きくするケースがある。
しかしながら、この加速度の大きい速度プロファイルは、搬送量が小さい印刷モードに対しては、無駄に短時間で搬送動作を終えるのみであって、印刷処理のスループットの向上には何等寄与しない。
それどころか、搬送モータの小型化が追求され、その小さい熱容量のために発熱の抑制が重要な課題となりつつある昨今、前記搬送量の小さい印刷モードにおいては、その大きな加速度に起因して前記発熱の問題を招いてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みたものであって、その目的は、搬送量が大きな印刷モードに対しては印刷処理のスループットを改善しながらも、搬送量が小さな印刷モードに対しては搬送モータの発熱を有効に抑制可能な印刷装置及び印刷方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための主たる発明は、
(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、
(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、
(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、
(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷装置である。
【0007】
本発明の他の特徴は、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0009】
(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、
(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、
(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、
(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷装置。
【0010】
一般に、搬送量が大きい印刷モードでは、印刷処理のスループットは搬送動作によって律速され易く、他方、搬送量が小さい印刷モードでは、印刷処理のスループットは搬送動作によっては律速され難い。
ここで、上記印刷装置によれば、印刷モードを介して、搬送動作の搬送量と、その搬送動作の加速度とは対応付けられている。よって、搬送量が大きい印刷モードに対しては、大きな加速度を対応付けることによって、搬送動作に要する時間の短縮化が図れ、その結果、印刷処理のスループットを改善することができる。他方、搬送量が小さい印刷モードに対しては、小さな加速度を対応付けることによって、印刷処理のスループットを阻害しない程度に搬送動作をゆっくりと行うことができて、搬送モータの発熱を有効に抑制可能となる。
【0011】
かかる印刷装置において、
前記印刷モードとして、第1印刷モードと第2印刷モードとが用意され、
前記第1印刷モードには、第1搬送量と第1加速度とが対応付けられ、
前記第2印刷モードには、前記第1搬送量よりも小さい第2搬送量と、前記第1加速度よりも小さい第2加速度とが対応付けられているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、搬送量が大きい第1印刷モードに対しては、大きな第1加速度が対応付けられているので、印刷処理のスループットを改善できる一方、搬送量が小さい第2印刷モードに対しては、小さな第1加速度が対応付けられているので、搬送モータの発熱を有効に抑制可能となる。
【0012】
かかる印刷装置において、
前記インクが前記媒体に着弾して形成されるドットの、前記搬送方向に関する形成ピッチを規定する解像度を、少なくとも高低の二種類について設定可能であり、
低い解像度が設定された場合には、第1印刷モードが選択され、
高い解像度が設定された場合には、第2印刷モードが選択されるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、低い解像度で印刷する場合には、印刷処理のスループットを改善でき、高い解像度で印刷する場合には、搬送モータの発熱を有効に抑制可能となる。
【0013】
かかる印刷装置において、
前記媒体の前記搬送方向における下流側の端部及び上流側の端部に向けてインクを吐出する場合には、前記第2印刷モードが選択され、
前記媒体の前記搬送方向における下流側の端部と上流側の端部との間の部分に向けてインクを吐出する場合には、前記第1印刷モードが選択されるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記下流側の端部と上流側の端部との間の部分に向けてインクを吐出する場合には、印刷処理のスループットを改善でき、下流側の端部及び上流側の端部に向けてインクを吐出する場合には、搬送モータの発熱を有効に抑制可能となる。
【0014】
また、かかる印刷装置において、
前記搬送動作における前記媒体の搬送速度を規定する搬送速度プロファイルを、前記印刷モード毎に有し、
前記搬送速度プロファイルは、停止状態の前記媒体を前記所定の搬送速度まで前記加速度で加速する加速域と、前記所定の搬送速度を維持しながら前記媒体を搬送する定速域と、前記停止状態まで所定の減速度で減速する減速域と、を規定することとしても良い。
【0015】
かかる印刷装置において、
前記ヘッドの移動動作は、所定の移動速度プロファイルに基づいて行われ、
前記移動速度プロファイルは、停止状態の前記ヘッドを所定の移動速度まで加速するのに要する加速時間と、前記所定の移動速度で移動する前記ヘッドを停止状態まで減速するのに要する減速時間と、を規定し、
前記移動動作におけるインクの吐出は、前記ヘッドが前記所定の移動速度で移動中にのみ行われ、
前記移動速度プロファイルにおける前記減速時間と前記加速時間との和よりも、前記搬送動作に要する時間の方が短くなるように、前記第2印刷モードの搬送速度プロファイルは設定されているのが望ましい。
このような印刷装置によれば、前記第2印刷モードの搬送動作の動作時間を、前記ヘッドの移動動作における減速域と加速域とを合わせた範囲に完全に収めることができる。従って、前記搬送動作は、前記移動速度で移動中にのみ行われるインクの吐出の開始時点に、全く影響を及ぼすことはなく、その結果、第2印刷モードにおいては、搬送動作が印刷処理のスループットを律速してしまう事態を完全に無くすことができる。
【0016】
かかる印刷装置において、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度、前記所定の搬送速度、及び前記減速度の点で互いに異なり、
前記加速度が大きいほど、前記所定の搬送速度及び前記減速度が大きいのが望ましい。
このような印刷装置によれば、搬送速度プロファイルの相違によって、搬送動作の動作時間や、搬送モータの発熱量に大きな差を付けることができて、もって、第1印刷モードにおける印刷処理のスループットの改善や、第2印刷モードにおける搬送モータの発熱の抑制を確実に達成可能となる。
【0017】
かかる印刷装置において、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度の点で異なり、前記所定の搬送速度及び前記減速度の点では同じであるのが望ましい。
このような印刷装置によれば、最も発熱に影響する加速度を、搬送速度プロファイル毎に異ならせて、前記所定の搬送速度及び前記減速度は同じにしている。従って、搬送速度プロファイル同士の間に大きな発熱量の差をつけて設定することが可能であり、その結果、第2印刷モードで印刷する際の搬送モータの発熱を、最も有効に抑制可能となる。
【0018】
かかる印刷装置において、
前記ヘッドは、前記移動方向の往路方向の移動動作と、該往路方向の逆方向たる復路方向の移動動作と、を交互に行うのが望ましい。
このような印刷装置によれば、所謂双方向印刷を実行可能であり、もって、印刷処理のスループットを著しく高めることができる。
【0019】
また、(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、
(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、
(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、
(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有しており、
前記印刷モードとして、第1印刷モードと第2印刷モードとが用意され、
前記第1印刷モードには、第1搬送量と第1加速度とが対応付けられ、
前記第2印刷モードには、前記第1搬送量よりも小さい第2搬送量と、前記第1加速度よりも小さい第2加速度とが対応付けられており、
前記インクが前記媒体に着弾して形成されるドットの、前記搬送方向に関する形成ピッチを規定する解像度を、少なくとも高低の二種類について設定可能であり、
低い解像度が設定された場合には、第1印刷モードが選択され、
高い解像度が設定された場合には、第2印刷モードが選択され、
前記搬送動作における前記媒体の搬送速度を規定する搬送速度プロファイルを、前記印刷モード毎に有し、
前記搬送速度プロファイルは、停止状態の前記媒体を前記所定の搬送速度まで前記加速度で加速する加速域と、前記所定の搬送速度で移動する前記媒体を停止状態まで所定の減速度で減速する減速域と、を規定し、
前記ヘッドの移動動作は、所定の移動速度プロファイルに基づいて行われ、
前記移動速度プロファイルは、停止状態の前記ヘッドを所定の移動速度まで加速するのに要する加速時間と、前記所定の移動速度で移動する前記ヘッドを停止状態まで減速するのに要する減速時間と、を規定し、
前記移動動作におけるインクの吐出は、前記ヘッドが前記所定の移動速度で移動中にのみ行われ、
前記移動速度プロファイルにおける前記減速時間と前記加速時間との和よりも、前記搬送動作に要する時間の方が短くなるように、前記第2印刷モードの搬送速度プロファイルは設定されており、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度、前記所定の搬送速度、及び前記減速度の点で互いに異なり、
前記加速度が大きいほど、前記所定の搬送速度及び前記減速度が大きく、
前記ヘッドは、前記移動方向の往路方向の移動動作と、該往路方向の逆方向たる復路方向の移動動作と、を交互に行うことを特徴とする印刷装置。
このような印刷装置によれば、既述の全ての効果を奏するため、本発明の目的がより有効に達成される。
【0020】
また、所定の移動方向へヘッドを移動しながら、前記ヘッドから媒体へ向けてインクを吐出する移動動作と、搬送モータによって、前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送する搬送動作とを繰り返して印刷する印刷方法において、
各印刷モードに対応付けて前記搬送動作の搬送量が設定され、
前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷方法の実現も可能である。
【0021】
===印刷装置の概要===
図1乃至図4は、本実施形態に係る印刷装置としてのインクジェットプリンタ1の説明図である。図1はインクジェットプリンタ1の外観斜視図である。図2はインクジェットプリンタ1の内部構成の斜視図である。図3はインクジェットプリンタ1の搬送部の断面図である。図4はインクジェットプリンタ1のシステム構成を示すブロック構成図である。
【0022】
このインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、背面から供給された用紙等の媒体(不図示)を前面から排出する構造を備えており、その前面部には操作パネル2および排紙部3が設けられ、その背面部には給紙部4が設けられている。操作パネル2には、各種操作ボタン5および表示ランプ6が設けられている。また、排紙部3には、不使用時に排紙口を塞ぐ排紙トレー7が設けられている。給紙部4には、カット紙(不図示)を保持する給紙トレー8が設けられている。なお、インクジェットプリンタ1は、カット紙など単票状の用紙のみならず、ロール紙などの連続した媒体にも印刷できるような給紙構造を備えていても良い。
【0023】
このインクジェットプリンタ1の内部には、図2に示すように、キャリッジ41が設けられている。このキャリッジ41は、所定の移動方向(以下、キャリッジ移動方向と言う)に沿って相対的に移動可能に設けられている。キャリッジ41の周辺には、キャリッジモータ42と、プーリ44と、タイミングベルト45と、ガイドレール46と、が設けられている。キャリッジモータ42は、DCモータなどにより構成され、キャリッジ41を前記キャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させるための駆動源として機能する。また、タイミングベルト45は、プーリ44を介してキャリッジモータ42に接続されるとともに、その一部がキャリッジ41に接続され、キャリッジモータ42の回転によってキャリッジ41を前記キャリッジ移動方向に沿って相対的に移動させる。ガイドレール46は、キャリッジ41を前記キャリッジ移動方向に沿って案内する。
【0024】
この他に、キャリッジ41の周辺には、キャリッジ41の位置を検出するリニア式エンコーダ51と、用紙Sをキャリッジ41の移動方向と交差する方向に沿って搬送するための搬送ローラ17Aと、この搬送ローラ17Aを回転させる搬送モータ15とが設けられている。
【0025】
一方、キャリッジ41には、各種インクを収容したインクカートリッジ48と、用紙Sに対して印刷を行うヘッド21とが設けられている。インクカートリッジ48は、例えば、イエロ(Y)やマゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)などの各色のインクを収容しており、キャリッジ41に設けられたカートリッジ装着部49に着脱可能に装着されている。また、ヘッド21は、本実施形態では、用紙Sに対してインクを吐出して印刷を施す。このためにヘッド21には、インクを吐出するための多数のノズルが設けられている。このヘッド21のインクの吐出機構については、後で詳しく説明する。
【0026】
この他に、このインクジェットプリンタ1の内部には、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するためのクリーニングユニット30が設けられている。このクリーニングユニット30は、ポンプ装置31と、キャッピング装置35とを有する。ポンプ装置31は、ヘッド21のノズルの目詰まりを解消するために、ノズルからインクを吸い出す装置であり、ポンプモータ(不図示)により作動する。一方、キャッピング装置35は、ヘッド21のノズルの目詰まりを防止するため、印刷を行わないとき(待機時など)に、ヘッド21のノズルを封止する。
【0027】
次にこのインクジェットプリンタ1の搬送部の構成について説明する。この搬送部は、図3に示すように、紙挿入口11A及びロール紙挿入口11Bと、給紙モータ(不図示)と、給紙ローラ13と、プラテン14と、搬送モータ15と、搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bと、フリーローラ18Aとフリーローラ18Bとを有する。
【0028】
紙挿入口11Aは、用紙Sを挿入するところである。給紙モータ(不図示)は、紙挿入口11Aに挿入された用紙Sをインクジェットプリンタ1内に搬送するモータであり、パルスモータ等で構成される。給紙ローラ13は、紙挿入口11Aに挿入された用紙Sを図中矢印A方向(ロール紙の場合は矢印B方向)に沿わせて、インクジェットプリンタ1の内部へと自動的に搬送するローラであり、給紙モータによって駆動される。給紙ローラ13は、略D形の横断面形状を有している。給紙ローラ13の円周部分の周囲長さは、搬送モータ15までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて用紙Sを搬送モータ15まで搬送することができる。
【0029】
給紙ローラ13により搬送された用紙Sは、紙検知センサ53に当接する。この紙検知センサ53は、給紙ローラ13と、搬送ローラ17Aとの間に設置されており、給紙ローラ13により給紙された用紙Sを検知する。
【0030】
紙検知センサ53により検知された用紙Sは、プラテン14へと搬送される。プラテン14は、印刷中の用紙Sを支持する支持部である。搬送モータ15は、用紙Sを搬送方向に送り出すモータであり、DCモータで構成される。なお、この搬送方向は前述のキャリッジ移動方向と直交している。搬送ローラ17Aは、給紙ローラ13によってインクジェットプリンタ1内に搬送された用紙Sを印刷可能な領域まで送り出すローラであり、搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Aは、搬送ローラ17Aと対向する位置に設けられ、用紙Sを搬送ローラ17Aとの間に挟む。
【0031】
排紙ローラ17Bは、印刷が終了した用紙Sをインクジェットプリンタ1の外部に排出するローラである。排紙ローラ17Bは、不図示の歯車により、搬送モータ15によって駆動される。フリーローラ18Bは、排紙ローラ17Bと対向する位置に設けられ、用紙Sを排紙ローラ17Bとの間に挟むことによって用紙Sを排紙ローラ17Bに向かって押さえる。
【0032】
<システム構成>
次にこのインクジェットプリンタ1のシステム構成について説明する。このインクジェットプリンタ1は、図4に示すように、バッファメモリ122と、イメージバッファ124と、コントローラ126と、メインメモリ127と、EEPROM129とを備えている。バッファメモリ122は、コンピュータ140から送信された印刷データ等の各種データを受信して一時的に記憶する。また、イメージバッファ124は、受信した印刷データをバッファメモリ122より取得して格納する。また、メインメモリ127は、ROMやRAMなどにより構成される。
【0033】
一方、コントローラ126は、メインメモリ127またはEEPROM129から制御用プログラムを読み出して、当該制御用プログラムに従ってインクジェットプリンタ1全体の制御を行う。本実施形態のコントローラ126は、キャリッジモータ制御部128と、搬送制御部130と、ヘッド駆動部132と、ロータリー式エンコーダ134と、リニア式エンコーダ51とを備えている。キャリッジモータ制御部128は、キャリッジモータ42の回転方向や回転数などを駆動制御する。また、ヘッド駆動部132は、ヘッド21の駆動制御を行う。搬送制御部130は、搬送ローラ17Aを回転駆動する搬送モータ15など、搬送部に配置された各種駆動モータを制御する。
【0034】
コンピュータ140から送られてきた印刷データは、一旦、バッファメモリ122に蓄えられる。ここで蓄えられた印刷データは、その中から必要な情報がコントローラ126により読み出される。コントローラ126は、その読み出した情報に基づき、リニア式エンコーダ51やロータリー式エンコーダ134からの出力を参照しながら、制御用プログラムに従って、キャリッジモータ制御部128や搬送制御部130、ヘッド駆動部132を各々制御する。
【0035】
イメージバッファ124には、バッファメモリ122に受信された複数の色成分の印刷データが格納される。ヘッド駆動部132は、コントローラ126からの制御信号に従って、イメージバッファ124から各色成分の印刷データを取得し、この印刷データに基づきヘッド21に設けられた各色のノズルを駆動制御する。
【0036】
また、コントローラ126には、紙検知センサ53から出力された、用紙Sを検知しているか否かを示す信号が入力される。これにより、コントローラ126は、紙検知センサ53が用紙Sを検知しているか否かを知ることができる。
【0037】
<ヘッド21>
図5は、ヘッド21の下面に設けられたノズルの配列図である。ヘッド21の下面には、同図に示すように、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色ごとにそれぞれ複数のノズル♯1〜♯180からなるノズル列211Y、211M、211C、211Kが設けられている。そして、各ノズル列のノズルから用紙Sへ向けてインクが吐出され、用紙Sにドットが形成される。
【0038】
各ノズル列211Y、211M、211C、211Kの各ノズル♯1〜♯180は、用紙Sの搬送方向に沿って、ノズルピッチk・D(図示例では、4・D)で直線状に配列されている。ここで、Dは、前記搬送方向において形成可能な最小のドットピッチ(用紙Sに形成されるドットの最小間隔)である。各ノズル列211Y、211M、211C、211Kは、ヘッド21の移動方向(キャリッジ移動方向)に沿って相互に間隔をあけて平行に配置されている。各ノズル♯1〜♯180には、インク滴を吐出するための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。
【0039】
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯180から吐出され、用紙Sにドットが形成される。
【0040】
===印刷処理===
次に前述したインクジェットプリンタ1の印刷処理について説明する。ここでは、「双方向印刷」を例に説明する。図6は、インクジェットプリンタ1の印刷処理の手順の一例を示すフローチャートである。以下で説明される各動作は、コントローラ126が、メインメモリ127又はEEPROM129に格納されたプログラムを読み出して、当該プログラムに従って制御することにより実行される。
【0041】
コントローラ126は、コンピュータ140から印刷データを受信すると、その印刷データに基づき印刷を実行すべく、まず、給紙動作を行う(S102)。給紙動作は、印刷しようとする用紙Sをインクジェットプリンタ1内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)まで搬送する動作である。コントローラ126は、給紙ローラ13を回転させて、印刷しようとする用紙Sを搬送ローラ17Aまで送る。コントローラ126は、搬送ローラ17Aを回転させて、給紙ローラ13から送られてきた用紙Sを印刷開始位置に位置決めする。
【0042】
次に、コントローラ126は、キャリッジ41を用紙Sに対してキャリッジ移動方向に相対移動させながら当該用紙Sに印刷する、キャリッジ移動動作(以下、CR移動動作とも言う)を実行する。ここでは、まず、キャリッジ41をガイドレール46に沿って往路方向に向かって移動させながら、ヘッド21からインクを吐出する往路印刷を実行する(S104)。すなわち、コントローラ126は、キャリッジモータ制御部128を介してキャリッジモータ42を駆動してキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッド21を駆動してインクを吐出する。ヘッド21から吐出されたインクは、用紙Sに到達してドットとして形成される。
【0043】
このようにして印刷を行った後、次に、用紙Sを所定の搬送量だけ搬送する搬送動作を実行する(S106)。この搬送動作では、コントローラ126は、搬送制御部130を介して、搬送モータ15を駆動して搬送ローラ17Aを回転させて、用紙Sをヘッド21に対して相対的に搬送方向に所定の搬送量だけ搬送する。この搬送動作により、ヘッド21は、先ほどの印刷した領域とは異なる領域に印刷をすることが可能になる。
【0044】
このようにして搬送動作を行った後、排紙すべきか否か排紙判断を実行する(S108)。ここで、印刷中の用紙Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙動作を実行する(S116)。一方、印刷中の用紙Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙動作は行わずに、復路印刷を実行する(S110)。この復路印刷は、前述したCR移動動作を、往路方向と逆方向の復路方向について行うものであり、すなわち、キャリッジ41をガイドレール46に沿って復路方向に移動させて印刷を行う。ここでも、コントローラ126は、キャリッジモータ制御部128を介して、キャリッジモータ42を先ほどとは逆に回転駆動させてキャリッジ41を移動させるとともに、印刷データに基づきヘッド21を駆動してインクを吐出し、印刷を施す。
【0045】
復路印刷を実行した後、搬送動作を実行し(S112)、その後、排紙判断を行う(S114)。ここで、印刷中の用紙Sに印刷すべき他のデータがあれば、排紙動作は行わずに、ステップS104に戻って、再度往路印刷を実行する(S104)。一方、印刷中の用紙Sに印刷すべき他のデータがなければ、排紙動作を実行する(S116)。
【0046】
排紙動作を行った後、次に、印刷終了か否かを判断する印刷終了判断を実行する(S118)。ここでは、次にコンピュータ140から印刷データに基づき、次に印刷すべき用紙Sがないかどうかチェックする。ここで、次に印刷すべき用紙Sがある場合には、ステップS102に戻り、再び給紙動作を実行して、印刷を開始する。一方、次に印刷すべき用紙Sがない場合には、印刷処理を終了する。
【0047】
===搬送モータ15の駆動制御===
<搬送制御部130の機能>
搬送モータ15の駆動制御は、搬送制御部130により行われる。搬送制御部130は、コントローラ126からの搬送指令に基づいて、所定の駆動量にて搬送モータ15を駆動させる。搬送モータ15は、指令された駆動量に応じて搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bとを回転させる。これにより、搬送ローラ17Aと排紙ローラ17Bとが回転して、用紙Sは所定の搬送量分だけ搬送される。用紙Sの搬送量は、搬送ローラ17Aの回転量に応じて定まる。したがって、搬送ローラ17Aの回転量が検出できれば、用紙Sの搬送量も検出可能である。ここでは、搬送ローラ17Aの回転量を検出するために、ロータリー式エンコーダ134が設けられている。
【0048】
<ロータリー式エンコーダ134>
図7は、ロータリー式エンコーダ134の構成の説明図である。ロータリー式エンコーダ134は、ロータリー式エンコーダ符号板402と、検出部404とを備えている。
このロータリー式エンコーダ符号板402は、同図に示すように、円盤状に形成されている。ロータリー式エンコーダ符号板402の外周縁部には、所定の間隔置きに小さなスリット406が多数形成されている。ロータリー式エンコーダ符号板402は、用紙Sを搬送する搬送ローラ17Aの軸端部に一体的に設けられた大歯車408に隣接して一体的に設けられている。大歯車408は、小歯車410を介して搬送モータ15に接続されていて、搬送モータ15の回転駆動によって、小歯車410を介して回転する。これにより、搬送ローラ17Aが搬送モータ15の回転駆動によって回転し、ロータリー式エンコーダ符号板402も、大歯車408および搬送ローラ17Aと同期して回転する。一方、検出部404は、ロータリー式エンコーダ符号板402に隣接して設けられたもので、ロータリー式エンコーダ符号板402の回転量を検出する。
【0049】
<検出部404の構成>
図8は、ロータリー式エンコーダ134の検出部404の構成の説明図である。検出部404は、発光ダイオード412と、コリメータレンズ414と、検出処理部416とを備えている。検出処理部416は、複数(例えば4個)のフォトダイオード418と、信号処理回路420と、例えば2個のコンパレータ422A、422Bとを有している。
【0050】
発光ダイオード412の両端に抵抗を介して電圧V1が印加されると、発光ダイオード412から光が発せられる。この光はコリメータレンズ414により平行光に集光されてロータリー式エンコーダ符号板402を通過する。ロータリー式エンコーダ符号板402には、所定の間隔(例えば1/180インチ(1インチ=2.54cm))毎にスリット406が設けられている。
【0051】
ロータリー式エンコーダ符号板402を通過した平行光は、図示しない固定スリットを通って各フォトダイオード418に入射し、電気信号に変換される。4個のフォトダイオード418から出力される電気信号は信号処理回路420において信号処理され、信号処理回路420から出力される信号はコンパレータ422A、422Bにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。コンパレータ422A、422Bから出力されるパルスENC−A、ENC−Bがロータリー式エンコーダ134の出力信号となる。
【0052】
図9A及び図9Bは、搬送モータ15の正転時及び逆転時におけるロータリー式エンコーダ134の2つの出力信号の波形を示したタイミングチャートである。図9Aは、搬送モータ15が正転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。図9Bは、搬送モータ15が反転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。
【0053】
図9A及び図9Bに示すように、搬送モータ15の正転時及び逆転時のいずれの場合も、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。搬送モータ15が正転しているとき、すなわち、用紙Sが図7に示すように搬送方向に搬送されているときには、パルスENC−Aは、パルスENC−Bよりも90度だけ位相が進む。一方、搬送モータ15が反転しているとき、すなわち、用紙Sが搬送方向とは逆方向に搬送されているときには、パルスENC−Aは、パルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れる。各パルスの1周期Tは、搬送ローラ17Aがロータリー式エンコーダ符号板402のスリット406の間隔(例えば、1/1440インチ(1インチ=2.54cm))分だけ回転する時間に等しい。
【0054】
そして、ロータリー式エンコーダ134の出力パルスENC−A、ENC−Bの各々の立ち上がりエッジ、立ち上がりエッジがシステムコントローラ126により検出され、その検出されたエッジの個数が計数されれば、システムコントローラ126は、その計数値に基づいて搬送モータ15の回転位置を演算することができる。この計数は、搬送モータ15が正転しているときは、1個のエッジが検出されると「+1」を加算し、逆転しているときは、1個のエッジが検出されると「−1」を加算する。パルスENC−A及びENC−Bの各々の周期は、ロータリー式エンコーダ符号板402の、あるスリット406が検出部404を通過してから、次のスリット406が検出部404を通過するまでの時間に等しく、かつパルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。このため、上記計数のカウント値「1」はロータリー式エンコーダ符号板402のスリット406の間隔の1/4に対応する。これにより、上記計数値にスリット406の間隔の1/4を乗算すれば、その乗算値に基づいて、計数値が「0」に対応する回転位置からの搬送モータ15の搬送量を求めることができる。このとき、ロータリー式エンコーダ134の解像度はロータリー式エンコーダ符号板402のスリット406の間隔の1/4となる。
【0055】
<搬送制御部130の構成>
次に、図10乃至図12Bを参照しつつ、搬送制御部130の構成について説明する。図10は、搬送制御部130の構成を示すブロック図である。図11は、搬送動作に用いる搬送速度プロファイルである。図12A及び図12Bは、モータ駆動信号Sdrと、搬送モータ15の特性との関係を示す説明図である。
【0056】
図10に示すように、搬送制御部130は、搬送モータ制御回路200と、搬送モータ駆動回路150とを含んでいる。
ロータリーエンコーダ134の出力信号Senは、搬送モータ制御回路200内の位置演算回路230と速度演算回路232とに入力される。これらの回路230、232は、エンコーダ134の出力信号Senの前記パルスENC−A及びパルスENC−B(不図示)に基づいて、搬送モータ15の現行回転位置Pと現行回転速度Vとをそれぞれ求める。第1の減算器202は、与えられた目標回転位置Ptと現行回転位置Pとの偏差△Pを求めて目標回転速度発生回路204に入力する。
目標回転速度発生回路204は、この回転位置偏差△Pに応じた目標回転速度Vtを、図10に示す搬送速度プロファイルに基づいて発生する。
【0057】
この搬送速度プロファイルは、停止状態の用紙Sを所定の搬送速度Vccまで加速する加速域と、前記搬送速度Vccで搬送される用紙Sを停止状態まで減速する減速域とを規定するものであり、メインメモリ127の搬送速度プロファイルテーブルには、搬送速度プロファイルを規定するパラメータとして、加速時間Tacc、減速時間Tbcc、及び搬送速度Vccが記録されている。そして、これらパラメータが、コントローラ126を介してメインメモリ127から目標回転速度発生回路204へと送信され、これらパラメータに基づいて目標回転速度発生回路204が搬送速度プロファイルを形成する。
【0058】
なお、加速域の回転量Lacc及び減速域の回転量Lbccは、各領域の面積で表されるため、それぞれ下式(11),(12)で求められる。
Lacc=(Tacc×Vcc)/2 …… (11)
Lbcc=(Tbcc×Vcc)/2 …… (12)
【0059】
また、加速域と減速域との間の、搬送速度Vccで用紙Sを搬送する定速域の回転量Lc及び時間Tcは、搬送量Lに応じて変化するが、これについては下式(13),(14)で求められる。但し、後述するように、本実施形態の場合は、印刷モード毎に搬送量Lが一義的に定まるので、Tcも固定値である。よって、予めTcを求めておき、上述のパラメータ(加速時間Tacc、減速時間Tbcc、及び搬送速度Vcc)と共に、前記搬送速度プロファイルテーブルに予め記録しておいても良い。
Lc=L−Lacc−Lbcc …… (13)
Tc=Lc/Vcc …… (14)
【0060】
図10の第2の減算器206は、この目標回転速度Vtと現行回転速度Vとの偏差△Vを求め、この回転速度偏差△Vを比例要素210と積分要素212と微分要素214とに入力する。これらの3つの演算要素210、212、214の演算結果QP、QI、QDは、加算器216で加算されて、加算結果ΣQが算出される。
【0061】
各演算要素210、212、214の出力QP、QI、QDと、それらの加算結果ΣQは、例えば以下の式(21)〜(24)で与えられる。
QP(j)=△V(j)×Kp …… (21)
QI(j)=QI(j−1)+△V(j)×Ki …… (22)
QD(j)={△V(j)−△V(j−1)}×Kd …… (23)
ΣQ(j)=QP(j)+QI(j)+QD(j) …… (24)
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲインである。また、出力QP、QI、QDは、所定の出力周期Δtcで出力され、上記のjは現時点を、またj−1は、前記現時点jよりも前記出力周期Δtcだけ前の前回時点を表している。
【0062】
デューティ調整回路220は、この加算結果ΣQ(j)に応じて、駆動回路150に供給するデューティ信号Dtのレベルを調整する。このデューティ信号Dtは、加算結果ΣQ(j)に比例した信号であり、搬送モータ15のデューティを示す信号である。そして、これによって搬送モータ15は、所謂PWM(Pluse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって制御される。
【0063】
搬送モータ駆動回路150は、トランジスタブリッジで構成されたDC−DCコンバータ154と、ベースドライブ回路152とを備えている。ベースドライブ回路152は、搬送モータ制御回路200から供給されたデューティ信号Dtに応じて、DC−DCコンバータ154のトランジスタのベースに印加するベース信号を発生する。DC−DCコンバータ154は、このベース信号に応じてモータ駆動信号Sdrを生成して搬送モータ15に供給する。
【0064】
図12Aは、モータ駆動信号Sdrの信号変化を示している。モータ駆動信号Sdrのデューティは、オンレベルにある期間Tonを、駆動信号の1周期Tpで割った値である。搬送モータ15としてブラシ付き直流モータを使用した場合には、そのトルク/回転数特性は、図12Bに示すように、デューティに比例する。搬送モータ駆動回路150は、駆動信号Sdrのデューティがデューティ信号Dtに比例するように駆動信号Sdrを生成する。この結果、搬送モータ15は、搬送モータ制御回路200から与えられるデューティ信号Dtに応じた駆動力を発生して用紙Sを搬送する。
【0065】
===キャリッジモータ42の駆動制御===
<キャリッジモータ制御部128の機能>
キャリッジモータ42の駆動制御は、キャリッジモータ制御部128により行う。キャリッジモータ制御部128は、コントローラ126からのキャリッジ移動指令に基づいて、所定の駆動量にてキャリッジモータ42を駆動する。キャリッジモータ42は、指令された所定の駆動量分だけ駆動される。キャリッジ41の移動量は、キャリッジモータ42の駆動量に応じて定まる。本実施形態では、キャリッジ41の移動量の検出はリニア式エンコーダ51により行われている。キャリッジモータ制御部128は、リニア式エンコーダ51からの出力をモニタしながら、キャリッジモータ42を指示された所定の駆動量分だけ駆動して、キャリッジ41を所定の距離移動させる。
【0066】
なお、リニア式エンコーダ51は、ロータリー式エンコーダ134と同様に、リニア式エンコーダ符号板511と(図2を参照)、検出部(不図示)とを備えている。リニア式エンコーダ符号板511は、図2に示すように、インクジェットプリンタ1内部のフレーム側に取り付けられている。一方、検出部(不図示)は、キャリッジ41側に取り付けられている。検出部は、図8、図9A、及び図9Bで説明したようなロータリー式エンコーダ134の検出部404の構成とほぼ等しい構成を備えている。つまり、この検出部は、キャリッジモータ42の回転方向、即ちキャリッジ移動方向に応じて異なる2つのパルスを出力する。これらリニア式エンコーダ符号板511と検出部とにより、キャリッジ41の現在位置を検出することができる。
【0067】
<キャリッジモータ制御部128の構成>
次に、図13乃至図15Bを参照しつつ、キャリッジモータ制御部128の構成について説明する。図13は、キャリッジモータ制御部128の構成を示すブロック図である。図14は、CR移動動作に用いるCR移動速度プロファイルである。図15A及び図15Bは、モータ駆動信号Sdrと、キャリッジモータ42の特性との関係を示す説明図である。
【0068】
図13に示すように、キャリッジモータ制御部128は、キャリッジモータ制御回路200aと、キャリッジモータ駆動回路150aとを含んでいる。
リニア式エンコーダ51の出力信号Senは、キャリッジモータ制御回路200a内の位置演算回路230aと速度演算回路232aとに入力される。これらの回路230a、232aは、エンコーダ51の出力信号Senの前記二つのパルス(不図示)に基づいて、キャリッジモータ42の現行回転位置Pと現行回転速度Vとをそれぞれ求める。第1の減算器202aは、与えられた目標回転位置Ptと現行回転位置Pとの偏差△Pを求めて目標回転速度発生回路204aに入力する。目標回転速度発生回路204aは、この回転位置偏差△Pに応じた目標回転速度Vtを、図14に示すCR移動速度プロファイルに基づいて発生する。
【0069】
このCR移動速度プロファイルは、停止状態のキャリッジ41を所定の移動速度Vcaまで加速する加速域と、移動速度Vcaで走行する定速域と、前記移動速度Vcaのキャリッジ41を停止状態まで減速する減速域とを規定するものであり、メインメモリ127のCR移動速度プロファイルテーブルには、CR移動速度プロファイルを規定するパラメータとして、加速時間Tacca、減速時間Tbcca、定速時間Tca、及び移動速度Vcaが記録されている。そして、これらパラメータが、コントローラ126を介してメモリ127から目標回転速度発生回路204aへと送信され、これらパラメータに基づいて目標回転速度発生回路204がCR移動速度プロファイルを形成する。
【0070】
なお、加速域の回転量Lacca、定速域の回転量Lca、及び減速域の回転量Lbccaは、各領域の面積で表されるため、それぞれ下式(31)〜(33)で求められる。
Lacca=(Tacca×Vca)/2 …… (31)
Lbcca=(Tbcca×Vca)/2 …… (32)
Lca=Vca×Tca …… (33)
【0071】
図13に示す第2の減算器206aは、この目標回転速度Vtと現行回転速度Vとの偏差△Vを求め、この回転速度偏差△Vを比例要素210aと積分要素212aと微分要素214aとに入力する。これらの3つの演算要素210a、212a、214aの演算結果QP、QI、QDは、加算器216aで加算されて、加算結果ΣQが算出される。
【0072】
各演算要素210a、212a、214aの出力QP、QI、QDと、それらの加算結果ΣQは、例えば以下の式(41)〜(44)で与えられる。
QP(j)=△V(j)×Kp …… (41)
QI(j)=QI(j−1)+△V(j)×Ki …… (42)
QD(j)={△V(j)−△V(j−1)}×Kd …… (43)
ΣQ(j)=QP(j)+QI(j)+QD(j) …… (44)
ここで、Kpは比例ゲイン、Kiは積分ゲイン、Kdは微分ゲインである。また、出力QP、QI、QDは、所定の出力周期Δtcで出力され、上記のjは現時点を、またj−1は、前記現時点jよりも前記出力周期Δtcだけ前の前回時点を表している。
【0073】
デューティ調整回路220aは、この加算結果ΣQ(j)に応じて、駆動回路150aに供給するデューティ信号Dtのレベルを調整する。このデューティ信号Dtは、加算結果ΣQ(j)に比例した信号であり、キャリッジモータ42のデューティを示す信号である。そして、これによってキャリッジモータ42は、所謂PWM(Pluse Width Modulation:パルス幅変調)制御によって制御される。
【0074】
キャリッジモータ駆動回路150aは、トランジスタブリッジで構成されたDC−DCコンバータ154aと、ベースドライブ回路152aとを備えている。ベースドライブ回路152aは、キャリッジモータ制御回路200aから供給されたデューティ信号Dtに応じて、DC−DCコンバータ154aのトランジスタのベースに印加するベース信号を発生する。DC−DCコンバータ154aは、このベース信号に応じてモータ駆動信号Sdrを生成してキャリッジモータ42に供給する。
【0075】
図15Aは、モータ駆動信号Sdrの信号変化を示している。モータ駆動信号Sdrのデューティは、オンレベルにある期間Tonを、駆動信号の1周期Tpで割った値である。キャリッジモータ42としてブラシ付き直流モータを使用した場合には、そのトルク/回転数特性は、図15Bに示すように、デューティに比例する。キャリッジモータ駆動回路150aは、駆動信号Sdrのデューティがデューティ信号Dtに比例するように駆動信号Sdrを生成する。この結果、キャリッジモータ42は、キャリッジモータ制御回路200aから与えられるデューティ信号Dtに応じた駆動力を発生してキャリッジ41を移動する。
【0076】
===印刷モード===
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1にあっては、高低の二種類の印刷解像度で印刷可能であり、これら印刷解像度に対応付けられて二つの印刷モードが用意されている。そして、ユーザは、希望の印刷解像度の印刷モードを、例えば前記コンピュータ140のユーザインターフェースから入力し、これによってプリンタ1は、ユーザの希望の印刷解像度で印刷画像を印刷する。なお、ここで言う印刷解像度は、搬送方向についての解像度である。
【0077】
図16に印刷モードと印刷解像度との対応関係を示すが、第1印刷モードには低い印刷解像度(例えば360dpi(dpiは1インチ当たりのドット数))が対応付けられ、第2印刷モードには高い印刷解像度(例えば、1440dpi)が対応付けられている。そして、第1印刷モードでは、所謂バンド印刷を実行することにより低解像度の印刷を達成し、第2印刷モードでは、所謂インターレース印刷を実行することで高解像度の印刷を達成する。
【0078】
図17、図18A、及び図18Bは、バンド印刷及びインターレース印刷の説明図である。なお、これら図では、説明の便宜上、ヘッド21の代わりとして示すノズル列が、用紙Sに対して移動しているように描かれているが、同図はノズル列と用紙Sとの相対的な位置関係を示すものであって、実際には用紙Sが搬送方向に移動されている。また、実際のヘッド21のノズル数は180個であるが(図5を参照)、ここではノズル数を8個として説明する。同図において、黒丸で示されたノズルはインク滴を吐出可能なノズルであり、白丸で示されたノズルはインク滴を吐出不可なノズルである。また、以下では、前記CR移動動作のことをパスとも言う。
【0079】
図17に示すように、バンド印刷は、パス毎に、ヘッド高さ(=ノズル数×ノズルピッチ)分の印刷領域を完成させる印刷方式である。ヘッド21は8つのノズルを有し、ノズルピッチk・Dが4・Dであるので(図5を参照)、ヘッド高さは32・D(=8×4・D)となり、この大きさの印刷領域がパス毎に完成される。従って、搬送量Lは32・D(=8×4・D)という大きなものになる。但し、1回のパスで完成される各印刷領域には、ノズルピッチ4・Dでしかラスタライン(キャリッジ移動方向に沿って並ぶドットの列)を形成できず、印刷解像度は低解像度になる。
【0080】
一方、インターレース印刷は、図18A及び図18Bに示すように、前記ノズルピッチ4・Dよりも小さいドットピッチ(図示例では1・D)で印刷画像を印刷するものである。すなわち、インターレース印刷では、用紙Sが搬送方向に一定の搬送量Lで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインの隣のラスタラインを記録する。このように搬送量Lを一定にして記録を行うためには、インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあり、搬送量LはN・Dに設定される。
【0081】
ヘッド21は8つのノズルを有し、またノズルピッチk・Dは4・Dなので、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、7つのノズルを用いてインターレース印刷が行われる。また、7つのノズル(♯1〜♯7)が用いられるため、用紙Sは、搬送量7・Dという、前記バンド印刷の場合の32・Dと比べると小さい搬送量で搬送される。そして、これによって、4・Dのノズルピッチのノズル列を用いて、1・Dのドット間隔にて連続して並ぶラスタラインが用紙Sに形成され、印刷解像度は高解像度となる。
【0082】
なお、上述からわかるように、第1印刷モードを選択した場合には、搬送動作の搬送量Lは32・Dに決定され、他方、第2印刷モードを選択した場合には、搬送動作の搬送量は4・Dに決定される。従って、図16に示すように、各印刷モードには、搬送動作の搬送量Lが対応付けられているとも言うことができる。このことは、この後で説明する本実施形態に係る特徴的事項に関係する。
【0083】
===印刷処理中の搬送動作及びCR移動動作の動作タイミングについて===
図19A乃至図19Cは、印刷処理中の用紙Sの搬送動作及びCR移動動作の動作タイミングの説明図であり、いずれも、印刷処理中の用紙Sの搬送速度とキャリッジ41の移動速度との関係を示している。なお、横軸は時間であり、縦軸は速度の大きさである。
【0084】
図19Aに示すように、印刷処理中には、用紙Sの搬送動作とCR移動動作とが、それぞれに既定の速度プロファイル(前記搬送速度プロファイル又はCR移動速度プロファイル)に従って交互に繰り返され、前記CR移動動作の定速域においてインク吐出動作が行われる。
【0085】
そして、図16Aに示す従来制御にあっては、印刷処理のスループットを高める目的で、CR移動動作中に行われるインク吐出動作の終了時点tieを起点に、用紙Sの搬送動作を開始させている。また、これに加えて搬送動作の終了時点tteを予め予測しておき、前記搬送動作の終了時点tteに先行させて、次回のCR移動動作を開始させることも行っており、これによって、前記搬送動作が終了したら即座に前記次回のインク吐出動作を開始して、更なるスループットの向上を図っている。
【0086】
なお、この予測は、前回のCR移動動作の終了時点tceたるキャリッジ41の停止時点tce毎に行われ、この予測に基づいて、次回のCR移動動作の開始時点tcsを調整している。すなわち、前記予測に基づいて、前記停止時点tceを起点とする停止時間Tc1の幅を変化させることによって、前記次回のインク吐出動作の開始時点tisが前記搬送動作の終了時点tteに一致するように、次回のCR移動動作の開始時点tcsを調整している。
【0087】
但し、上述は、搬送動作の搬送量Lが大きい第1印刷モードの場合であって、搬送動作の搬送量Lが小さい第2印刷モードの場合には、図19Bに示すように、CR移動動作の方が、印刷処理のスループットを律速することになる。つまり、前回のCR移動動作の減速が終了したら即座に次回のCR移動動作の加速を開始しなければならず、その場合には、前回のCR移動動作と次回のCR移動動作との間の停止時間Tc1は、瞬間的にしか現れない。そして、このようになると、これ以上のスループットの向上は望めない。
【0088】
一方、ここで、搬送モータ15の発熱について考えてみると、同じ搬送量Lであれば、図20に示す「搬送動作をさせることが可能な時間Ta」において、搬送動作を急激に(つまり大きな加減速度で)短時間で行って搬送モータ15の停止時間Ta1を長くするよりも(実線を参照)、搬送動作を極力ゆっくりと(つまり小さな加減速度で)時間をかけて行って前記停止時間Ta1を短くする方が(一点鎖線を参照)、搬送モータ15が高温にならずに望ましい。
【0089】
そして、この点に注意して再度図19Bを見ると、この小さな搬送量Lの第2印刷モードの場合には、「搬送動作をさせることが可能な時間Ta」、すなわち、前回のインク吐出動作の終了時点tieから次回のインク吐出動作の開始時点tisまでの所要時間Taにおいて、搬送動作の停止時間Ta1が長時間に亘って生じている。従って、この第2印刷モードの場合には、前記停止時間Ta1が極力小さくなるように時間をかけて(つまり小さな加減速度で)搬送動作を行った方が、発熱の抑制の観点からは望ましく、また、前記所要時間Taの範囲内であれば、搬送動作を幾ら延長しても印刷処理のスループットに対して何等影響を与えない。
【0090】
しかしながら、上述の従来制御にあっては、搬送動作の搬送速度を既定する搬送速度プロファイルの加減速度は、印刷モードが異なっても同一であり(図19Aの第1印刷モードも図19Bの第2印刷モードも、共に加速度はa1で同値、また、減速度もb1で同値)
、もって、印刷モード毎に搬送動作の加減速度を変更できない。つまり、各印刷モードの搬送量Lにとって最適となる加減速度を設定することができない。
【0091】
そこで、本実施形態のプリンタ1では、複数種類の搬送速度プロファイルを備えるようにするとともに、各印刷モードに対して、その印刷モードの搬送量Lに最適となる加速度を対応付けている。すなわち、搬送量Lの大きな第1印刷モードに対しては、加速度の高い搬送速度プロファイルを対応付けることによって、印刷処理のスループットを高める一方、搬送量Lが小さくて搬送動作によるスループット低下の事態が起き難い第2印刷モードに対しては、加速度の小さい搬送速度プロファイルを対応付け、これによって、図19Cのように搬送動作をゆっくりと実行させて、搬送モータ15の発熱を有効に抑制している。
【0092】
===本実施形態に係る搬送動作の搬送速度プロファイルについて===
図21に、本実施形態に係る搬送速度プロファイルを示す。本実施形態では、複数種類の一例として二種類の搬送速度プロファイルが用意されている。すなわち、前記メインメモリ127の搬送速度プロファイルテーブルには、これら二種類の搬送速度プロファイルについて前記パラメータ(加速時間Tacc、減速時間Tbcc、及び搬送速度Vcc)が記録されている。そして、制御部としてのコントローラ126が、前記コンピュータ140から入力された印刷モードに対応するパラメータを、前記搬送速度プロファイルから読み出して、前記目標回転速度発生回路204へ送信することによって、印刷モードに対応する搬送速度プロファイルに基づいた搬送動作が実行される。
【0093】
なお、図21に示すように、いずれのプロファイル形状も三角形であって定速域が無い理由は、前述したように、定速域の大きさは搬送量Lに応じて決まるからである。但し、本実施形態の場合には、印刷モード毎に搬送量Lの大きさが予め決まっており、このため、印刷モードが決まれば定速域の時間の大きさTc(図11を参照)も一義的に定まることになる。よって、このTc(図11を参照)を予め求めておき、前記搬送速度プロファイルテーブルに記録しておいても良い。
【0094】
これら二種類の搬送速度プロファイルは、互いに、加速域の加速度、定速域の搬送速度Vcc、及び減速域の減速度の点で異なっており、第1搬送速度プロファイルの方が、加速域での加速度、定速域での搬送速度Vcc、減速域での減速度のいずれにおいても、第2搬送速度プロファイルよりも大きい値に設定されている。従って、搬送量Lが同じであれば、第1搬送速度プロファイルの方が、第2搬送速度プロファイルよりも搬送動作を短時間で終えることになる。
【0095】
図22に、これら搬送速度プロファイルと印刷モードとの対応付けを示すが、当然ながら、搬送量Lが大きい第1印刷モードには第1搬送速度プロファイルが対応付けられ、搬送量Lが小さい第2印刷モードには第2搬送速度プロファイルが対応付けられている。なお、上記対応付けの理由は明らかと思えるが、一応、以下に説明しておく。
【0096】
第1印刷モードでは、前述のバンド印刷が実行されるため、その搬送量Lは大きい(例えば、L=32・D)。よって、搬送動作に要する時間は長くなり、この場合には、図23Aに示すように、印刷処理のスループットを搬送動作が律速することになって、キャリッジモータ42の停止時間Tc1が長くかつ頻繁に現れる。従って、この停止時間Tc1を短くして印刷処理のスループットを高めるべく、この第1印刷モードには、搬送動作を短時間で行える第1搬送速度プロファイルを対応付けている。
【0097】
一方、第2印刷モードでは、前述のインターレース印刷が実行されるため、その搬送量Lは小さい(例えば、L=7・D)。そして、この場合には、図23Bに示すように、キャリッジモータ42の停止時間Tc1は瞬間的にしか現れず、搬送動作が、印刷処理のスループットを律速する頻度は非常に希である。従って、この場合には、搬送モータ15の発熱を有効に抑制すべく、印刷処理のスループットに影響を及ぼさない範囲で搬送動作の動作時間が長くなるように、第2搬送速度プロファイルを対応付けている。
【0098】
なお、ここで、望ましくは、この第2搬送速度プロファイルは、下式(51)の関係を満足するように設定されていると良い。
Tt≦Tbcca+Tacca …… (51)
ここで、左辺のTtは、図23Bに示すように、第2搬送速度プロファイルに基づいて第2印刷モードの搬送量L(=7・D)だけ搬送動作をさせた場合に、その搬送動作に要する時間である。また、右辺のTbcca及びTaccaは、それぞれに、キャリッジ41の減速及び加速に要する時間である。そして、式(51)の関係を満足するように設定していれば、搬送動作が印刷処理のスループットを阻害することを完全に無くすことが可能になる。
【0099】
この理由は、上式(51)の右辺の「Tbcca+Tacca」は、キャリッジ41の減速と加速とに要する時間であって、この定速域でない前記時間中においてインク吐出動作が行われることは絶対に無いからである。よって、この「Tbcca+Tacca」よりも、前記搬送動作に要する時間Ttを短くしておけば、搬送動作が、次回のCR移動動作におけるインク吐出動作の開始時点Tisに影響を及ぼすことを完全に防止でき、その結果、第2印刷モードにおいては、搬送動作が印刷処理のスループットを律速する事態を完全に無くすことができる。
【0100】
但し、搬送モータ51の発熱の観点からは、搬送動作に要する時間Ttは極力長い方が望ましく、これを考慮すると、最も好ましくは、第2搬送速度プロファイルが、下式(52)の関係を満足するように設定されていると良い。
Tt=Tbcca+Tacca …… (52)
ここで、式(52)を満足するように、第2搬送速度プロファイルを設定可能な理由を、図24を参照しつつ説明する。なお、図24は、第2搬送速度プロファイルに基づいて実行される第2印刷モードの搬送動作の説明図である。
【0101】
先ず、図24を参照してわかるように、式(52)の左辺であるところの搬送動作に要する時間Ttは、以下の導出過程(式(53)〜(55))を経て、最終的には、下式(56)に示すように、第2搬送速度プロファイルを規定する前記三つのパラメータ(加速時間Tacc、減速時間Tbcc、及び搬送速度Vcc)と第2印刷モードの搬送量Lとを用いて表される。すなわち、
Tt=Tbcc+Tacc+Tc
=(Tacc+Tbcc)+(L−Lacc−Lbcc)/Vcc……(53)
ここで、式(53)のLacc及びLbccは、それぞれに、加速域での搬送量及び減速域での搬送量であって、下式(54)、(55)のように表せるので、
Lacc=(Tacc×Vcc)/2 …… (54)
Lbcc=(Tbcc×Vcc)/2 …… (55)
これらLacc及びLbccを式(53)に代入すると、最終的には下式(56)のようになる。
Tt=(Tacc+Tbcc)
+{L−[Tacc×Vcc]/2−[Tbcc×Vcc]/2}/Vcc……(56)
【0102】
一方、式(52)の右辺のTbcca及びTaccaは、それぞれに、キャリッジ41の減速時間及び加速時間であり、これらは、図14を参照して前述したように、CR移動速度プロファイルを規定するために予め決められた既知の数値である。
よって、第2搬送速度プロファイルの三つのパラメータ(加速時間Tacc、減速時間Tbcc、及び搬送速度Vcc)を、第2印刷モードの既知の搬送量Lと、前記既知の数値からなるTbcca+Taccaとに応じて適宜設定すれば、式(52)の関係を満足させることは可能である。
【0103】
===印刷モードのその他の態様について===
上述してきた実施形態では、印刷モードは印刷解像度に対応付けられていたが、これに限るものではなく、印刷モードが各種の印刷方法に対応付けられていても良い。図25に示す対応関係の例は、印刷モードを各種の印刷方法に対応付けており、詳しくは、第1印刷モードには、所謂通常印刷(搬送方向の下流側の端部と上流側の端部との間の部分を印刷する際に用いる印刷方法)を対応付けており、第2印刷モードには、所謂上端印刷及び下端印刷(搬送方向の下流側の端部又は上流側の端部を印刷する際に用いる印刷方法)を対応付けている。
【0104】
なお、このように対応付けている理由は、次の通りである。第2印刷モードの上端印刷及び下端印刷にあっては、この後で説明するように、その搬送量Lが1・D〜2・Dと小さいからであり、他方、第1印刷モードの通常印刷は、その搬送量Lが7・Dと大きいからである。
【0105】
以下、上端印刷、下端印刷、及び通常印刷について説明する。
始めに、通常印刷について説明する。
上述のインターレース印刷の説明では、説明を簡単にするため、ノズルの数は8つであった。しかし、実際のノズル数は180個である。この場合のインターレース印刷方式について説明する。
図26Aは、実際の通常印刷の説明図である。同図では、ヘッド21と用紙Sとの相対的な位置を示している。ここでは、ヘッド21は搬送方向に沿って配列された180個のノズルを有するが、ノズルピッチk・Dは4・Dなので、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすために、179個のノズル(♯2〜♯180)を用いてインターレース印刷が行われる。また、179個のノズルが用いられるため、用紙Sは搬送量179・Dにて搬送される。
【0106】
あるパスにおいて、ヘッド21Aは、キャリッジ移動方向に移動しながらインクを吐出して、用紙Sの領域1にドット(ラスタライン)を形成する。次に、用紙Sが179・Dにて搬送され、用紙Sに対してヘッド21Aが図中のヘッド21Bの位置に相対的に移動する。次のパスにおいて、ヘッド21Bは、キャリッジ移動方向に移動しながらインクを吐出して、用紙Sの領域1及び領域2にドット(ラスタライン)を形成する。ここでは、このような動作を、ヘッド21Eが用紙Sにドットを形成するまで続けるものとする。
【0107】
図26Bは、ヘッド21Eが用紙Sにドットを形成した後の各領域のドット形成状況の説明図である。同図において、白丸は、ドットが形成されていない画素を示している。また、黒丸は、ドットが形成された画素を示している。
【0108】
領域1では、ヘッド21A〜ヘッド21Dによって、4回のパスによってドット(ラスタライン)が形成されている。また、領域2では、ヘッド21B〜ヘッド21Eによって、4回のパスによってドットが形成されている。このように、4回のパスを経過した領域では、その領域内の全ての画素に、ドットが形成されている。領域3では、ヘッド21C〜21Eによって、3回のパスによってドットが形成されている。このように、3回のパスを経過した領域では、4つのラスタラインのうちの3つのラスタラインの画素に、ドットが形成されている。領域4では、ヘッド21D及び21Eによって、2回のパスによってドットが形成されている。このように、2回のパスを経過した領域では、4つのラスタラインのうちの2つのラスタラインの画素に、ドットが形成されている。領域5では、21Eによって、1回のパスによってドットが形成されている。このように、1回のパスを経過した領域では、4つのラスタラインのうちの1つのラスタラインの画素に、ドットが形成されている。なお、領域6では、まだドットが形成されていない状態である。
【0109】
このように、通常印刷では、ヘッド21が1回パスしただけでは、その領域の全ての画素にドットが形成されるというわけではない。具体的には、ある領域の全ての画素にドットが形成されるには、k回(ここでは4回)のパスを経過する必要がある。このため、通常印刷だけでは、印刷画像の上端部分又は下端部分において、連続するラスタラインが形成できない。例えば、前述の図18Aにおいて、上端部分及び下端部分では連続するラスタラインが形成できていない。また、図26A及び図26Bにおいて、領域3〜領域6は連続するラスタラインが形成できていない。
そこで、通常印刷の前後において、上端印刷及び下端印刷が行われる。
【0110】
図27は、上端印刷及び下端印刷の説明図である。なお、本来、搬送方向に並ぶノズル数は180個であるが、説明を簡単にするため、ここではノズル数を8個とする。
上端印刷では、印刷画像の上端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量よりも少ない搬送量にて、用紙Sが搬送される。例えば、パス1−パス2間、パス2−パス3間、パス3−パス4間に行われる搬送動作では、用紙Sが1・Dの搬送量で搬送される。また、パス4−パス5間に行われる搬送動作では、用紙Sが2・Dの搬送量で搬送される。また、上端印刷では、インクを吐出するノズルが一定していない。例えば、パス1ではノズル♯2〜♯4、パス2ではノズル♯2、パス3ではノズル♯2〜♯7、パス4ではノズル♯2〜♯5、パス5ではノズル♯2〜♯8からインクが吐出される。パス5以降からは通常印刷が行われるので、用紙Sは7・Dの搬送量で搬送され、7個のノズル(ノズル♯2〜♯8)からインクが吐出される。これにより、印刷画像の上端部分において、連続するラスタラインを形成することができる。
【0111】
下端印刷では、上端印刷と同じように、印刷画像の下端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量よりも少ない搬送量にて、用紙Sが搬送される。また、下端印刷では、上端印刷と同じように、インクを吐出するノズルが一定していない。これにより、印刷画像の下端部分において、連続するラスタラインを形成することができる。
【0112】
なお、通常印刷だけでラスタラインが形成される領域を通常印刷領域と呼ぶ。また、通常印刷領域よりも用紙Sの上端側(搬送方向の下流側)に位置する領域を上端印刷領域と呼ぶ。この上端印刷領域には、上端印刷により形成される全てのラスタラインと、通常印刷により形成されるラスタラインが混在している。また、通常印刷領域よりも下端側(搬送方向の上流側)に位置する領域を下端印刷領域と呼ぶ。この下端印刷領域には、下端印刷により形成される全てのラスタラインと、通常印刷により形成されるラスタラインが混在している。
【0113】
上端印刷領域には、30本のラスタラインが形成される。同様に、下端印刷領域にも、30本のラスタラインが形成される。これに対し、通常印刷領域には、用紙Sの大きさにもよるが、およそ数千本のラスタラインが形成される。
【0114】
通常印刷領域のラスタラインの並びには、規則性がある。図27の通常印刷領域の最初から7番目までのラスタラインは、それぞれ、ノズル♯3、ノズル♯5、ノズル♯7、ノズル♯2、ノズル♯4、ノズル♯6、ノズル♯8、により形成される。そして、通常印刷領域の8番目以降の7本のラスタラインは、これと同じ順序の各ノズルで形成されている。一方、上端印刷領域及び下端印刷領域のラスタラインの並びには、通常印刷領域のラスタラインと比べると、規則性を見出し難い。
【0115】
以上説明したように、用紙Sに印刷画像を印刷する際に、上端印刷を行い、次に通常印刷を行い、最後に下端印刷を行う。これにより、上端印刷領域に連続するラスタラインが形成された後、通常印刷領域に連続するラスタラインが形成され、その後、下端印刷領域に連続するラスタラインが形成される。
【0116】
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき、印刷装置の一例としてインクジェットプリンタ1について説明したが、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更または改良され得るとともに、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれる。
【0117】
前述の実施形態では、印刷装置としてインクジェットプリンタ1を例に説明したが、このような印刷装置に限らず、インクを吐出しないタイプのプリンタ、例えば、ドットインパクト式プリンタや熱転写プリンタ、またレーザービーム式プリンタなど、印刷機能を備えた装置であれば、どのような装置であっても本発明の印刷装置に含まれる。
【0118】
前述の実施形態では、媒体として用紙Sを例示したが、この用紙Sの種類としては、普通紙やマット紙、カット紙、光沢紙、写真用紙等が挙げられる。また、媒体は、用紙Sに限るものではなく、OHPフィルムや光沢フィルム等のフィルム材や布材、金属板材などであっても構わない。すなわち、インクの吐出対象となり得るものであれば、どのような媒体であっても構わない。
【0119】
前述の実施形態では、印刷モード及び搬送速度プロファイルの種類数を二種類としたが、この種類数は、複数種類であれば何等これに限るものではなく、三種類以上であって良い。
【0120】
また、前述の実施形態では、二種類の搬送速度プロファイルが、互いに、加速域の加速度、定速域の搬送速度Vcc、及び減速域の減速度の点で異なっている例を示したが、何等これに限るものではない。例えば、図28に示すように、二種類の搬送速度プロファイルを、前記加速度の点でのみ異ならせて、定速域の搬送速度Vcc及び前記減速度の点では同じにしても良い。なお、この場合には、最も発熱に影響する加速度のみを、搬送速度プロファイル毎に異ならせているので、互いの加速度に大きな差をつけて設定することができる。よって、これら搬送速度プロファイル同士の間に大きな発熱量の差をつけることができて、その結果、搬送モータ15の発熱量を最も有効に抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の説明図である。
【図2】前記インクジェットプリンタ1の内部構成の斜視図である。
【図3】前記インクジェットプリンタ1の搬送部の断面図である。
【図4】前記インクジェットプリンタ1のシステム構成を示すブロック構成図である。
【図5】ヘッド21の下面に設けられたノズルの配列図である。
【図6】印刷処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】ロータリー式エンコーダ134の構成の説明図である。
【図8】ロータリー式エンコーダ134の検出部404の構成の説明図である。
【図9】図9Aは、正転時のロータリー式エンコーダ134の出力波形のタイミングチャートであり、図9Bは、逆転時のロータリー式エンコーダ134の出力波形のタイミングチャートである。
【図10】搬送制御部130の構成を示すブロック図である。
【図11】搬送動作に用いる搬送速度プロファイルである。
【図12】図12A及び図12Bは、モータ駆動信号Sdrと、搬送モータ15の特性との関係を示す図である。
【図13】キャリッジモータ制御部128の構成を示すブロック図である。
【図14】CR移動動作に用いるCR移動速度プロファイルである。
【図15】図15A及び図15Bは、モータ駆動信号Sdrと、キャリッジモータ42の特性との関係を示す説明図である。
【図16】印刷モードと印刷解像度との対応関係を示す図である。
【図17】バンド印刷の説明図である。
【図18】図18A及び図18Bは、共にインターレース印刷の説明図であり、図18Bは図18Aよりも1パス多い状態を示している。
【図19】図19A乃至図19Cは、印刷中の搬送動作及びCR移動動作の動作タイミングの説明図である。
【図20】搬送モータ15の発熱の観点から考えて好ましい搬送動作を説明するための図である。
【図21】二種類の搬送速度プロファイルの説明図である。
【図22】搬送速度プロファイルと印刷モードとの対応付けを示す図である。
【図23】図23A及び図23Bは、搬送速度プロファイルと印刷モードとの対応付けの理由の説明図である。
【図24】第2搬送速度プロファイルに基づいて実行される第2印刷モードの搬送動作の説明図である。
【図25】印刷モードと印刷方法との対応関係を示す図である。
【図26】図26Aは実際の通常印刷の説明図であり、図26Bは、ヘッド21Eが用紙Sにドットを形成した後の各領域のドット形成状況の説明図である。
【図27】上端印刷及び下端印刷の説明図である。
【図28】搬送速度プロファイルのその他の実施形態の説明図である。
【符号の説明】
【0122】
1 インクジェットプリンタ、2 操作パネル、3 排紙部、4 給紙部、
5 操作ボタン、6 表示ランプ、7 排紙トレー、8 給紙トレー、
11A 紙挿入口、11B ロール紙挿入口、13 給紙ローラ、14 プラテン、
15 搬送モータ、17A 搬送ローラ、17B 排紙ローラ、
18A フリーローラ、18B フリーローラ、21 ヘッド、
30 クリーニングユニット、31 ポンプ装置、35 キャッピング装置、
41 キャリッジ、42 キャリッジモータ、44 プーリ、
45 タイミングベルト、46 ガイドレール、48 インクカートリッジ、
49 カートリッジ装着部、51 リニア式エンコーダ、53 紙検知センサ、
122 バッファメモリ、124 イメージバッファ、126 コントローラ、
127 メインメモリ、128 キャリッジモータ制御部、129 EEPROM、
130 搬送制御部、132 ヘッド駆動部、134 ロータリー式エンコーダ、
140 コンピュータ、150 搬送モータ駆動回路、152 ベースドライブ回路、
154 DC−DCコンバータ、200 搬送モータ制御回路、
202 第1の減算器、204 目標回転速度発生回路、206 第2の減算器、
210 比例要素、212 積分要素、214 微分要素、216 加算器、
220 デューティ調整回路、230 位置演算回路、232 速度演算回路、
150a キャリッジモータ駆動回路、152a ベースドライブ回路、
154a DC−DCコンバータ、200a キャリッジモータ制御回路、
202a 第1の減算器、204a 目標回転速度発生回路、
206a 第2の減算器、210a 比例要素、212a 積分要素、
214a 微分要素、216a 加算器、220a デューティ調整回路、
230a 位置演算回路、232a 速度演算回路、211Y ノズル列、
211C ノズル列、211M ノズル列、211K ノズル列、
402 ロータリー式エンコーダ符号板、404 検出部、
406 スリット、408 大歯車、410 小歯車、412 発光ダイオード、
414 コリメータレンズ、416 検出処理部、418 フォトダイオード、
420 信号処理回路、422A コンパレータ、422B コンパレータ、
511 リニア式エンコーダ符号板、S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、
(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、
(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、
(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記印刷モードとして、第1印刷モードと第2印刷モードとが用意され、
前記第1印刷モードには、第1搬送量と第1加速度とが対応付けられ、
前記第2印刷モードには、前記第1搬送量よりも小さい第2搬送量と、前記第1加速度よりも小さい第2加速度とが対応付けられていることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記インクが前記媒体に着弾して形成されるドットの、前記搬送方向に関する形成ピッチを規定する解像度を、少なくとも高低の二種類について設定可能であり、
低い解像度が設定された場合には、第1印刷モードが選択され、
高い解像度が設定された場合には、第2印刷モードが選択されることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記媒体の前記搬送方向における下流側の端部及び上流側の端部に向けてインクを吐出する場合には、前記第2印刷モードが選択され、
前記媒体の前記搬送方向における下流側の端部と上流側の端部との間の部分に向けてインクを吐出する場合には、前記第1印刷モードが選択されることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の印刷装置において、
前記搬送動作における前記媒体の搬送速度を規定する搬送速度プロファイルを、前記印刷モード毎に有し、
前記搬送速度プロファイルは、停止状態の前記媒体を前記所定の搬送速度まで前記加速度で加速する加速域と、前記所定の搬送速度で移動する前記媒体を停止状態まで所定の減速度で減速する減速域と、を規定することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷装置において、
前記ヘッドの移動動作は、所定の移動速度プロファイルに基づいて行われ、
前記移動速度プロファイルは、停止状態の前記ヘッドを所定の移動速度まで加速するのに要する加速時間と、前記所定の移動速度で移動する前記ヘッドを停止状態まで減速するのに要する減速時間と、を規定し、
前記移動動作におけるインクの吐出は、前記ヘッドが前記所定の移動速度で移動中にのみ行われ、
前記移動速度プロファイルにおける前記減速時間と前記加速時間との和よりも、前記搬送動作に要する時間の方が短くなるように、前記第2印刷モードの搬送速度プロファイルは設定されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の印刷装置において、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度、前記所定の搬送速度、及び前記減速度の点で互いに異なり、
前記加速度が大きいほど、前記所定の搬送速度及び前記減速度が大きいことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の印刷装置において、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度の点で異なり、前記所定の搬送速度及び前記減速度の点では同じであることを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の印刷装置において、
前記ヘッドは、前記移動方向の往路方向の移動動作と、該往路方向の逆方向たる復路方向の移動動作と、を交互に行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
(A)所定の移動方向へ移動しながら媒体へ向けてインクを吐出するヘッドと、
(B)前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送するための搬送モータと、
(C)前記ヘッドを移動させる移動動作と、前記媒体を所定の搬送量だけ搬送させる搬送動作とを繰り返して印刷を行うための制御部であって、各印刷モードに対応付けて前記搬送量を設定する制御部とを備え、
(D)前記制御部は、前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有しており、
前記印刷モードとして、第1印刷モードと第2印刷モードとが用意され、
前記第1印刷モードには、第1搬送量と第1加速度とが対応付けられ、
前記第2印刷モードには、前記第1搬送量よりも小さい第2搬送量と、前記第1加速度よりも小さい第2加速度とが対応付けられており、
前記インクが前記媒体に着弾して形成されるドットの、前記搬送方向に関する形成ピッチを規定する解像度を、少なくとも高低の二種類について設定可能であり、
低い解像度が設定された場合には、第1印刷モードが選択され、
高い解像度が設定された場合には、第2印刷モードが選択され、
前記搬送動作における前記媒体の搬送速度を規定する搬送速度プロファイルを、前記印刷モード毎に有し、
前記搬送速度プロファイルは、停止状態の前記媒体を前記所定の搬送速度まで前記加速度で加速する加速域と、前記所定の搬送速度で移動する前記媒体を停止状態まで所定の減速度で減速する減速域と、を規定し、
前記ヘッドの移動動作は、所定の移動速度プロファイルに基づいて行われ、
前記移動速度プロファイルは、停止状態の前記ヘッドを所定の移動速度まで加速するのに要する加速時間と、前記所定の移動速度で移動する前記ヘッドを停止状態まで減速するのに要する減速時間と、を規定し、
前記移動動作におけるインクの吐出は、前記ヘッドが前記所定の移動速度で移動中にのみ行われ、
前記移動速度プロファイルにおける前記減速時間と前記加速時間との和よりも、前記搬送動作に要する時間の方が短くなるように、前記第2印刷モードの搬送速度プロファイルは設定されており、
前記各印刷モードの搬送速度プロファイルは、前記加速度、前記所定の搬送速度、及び前記減速度の点で互いに異なり、
前記加速度が大きいほど、前記所定の搬送速度及び前記減速度が大きく、
前記ヘッドは、前記移動方向の往路方向の移動動作と、該往路方向の逆方向たる復路方向の移動動作と、を交互に行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項11】
所定の移動方向へヘッドを移動しながら、前記ヘッドから媒体へ向けてインクを吐出する移動動作と、搬送モータによって、前記移動方向と交差する搬送方向に前記媒体を搬送する搬送動作とを繰り返して印刷する印刷方法において、
各印刷モードに対応付けて前記搬送動作の搬送量が設定され、
前記搬送動作において前記媒体を所定の搬送速度まで加速するための加速度を、前記各印刷モードに対応付けて有していることを特徴とする印刷方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2006−272764(P2006−272764A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95605(P2005−95605)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】